2020年11月2日月曜日

再ロックダウンが完全なロックダウンではないことから生まれる混乱


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パリ郊外・サルトルビル(イル・ド・フランス)で放火されたバス


 フランスは、再ロックダウンとはいえ、今回のロックダウンは、前回のロックダウンとは、かなり違うスタイルのロックダウンで、前回のロックダウン時には、本当に街は静かで、人が出歩いているのを見かけることも稀なくらいだったのに比べると、今回のロックダウンは、ずっとたくさんの人が街に出ています。

 もちろんレストランやカフェなどは、テイクアウトや宅配のみの営業とはいえ、それができている店舗は少なく、ほとんど閉鎖状態ですが、以前は生活必需品、主に食料品、医薬品を扱う店舗のみの営業だったのに比べて、情報機器、電化製品、ガーデンセンター、DIYショップなどのちょっと生活必需品かどうかの境界線がつきにくい店舗の営業が許可されています。

 当然、生活必需品かどうかということだけでなく、営業することによって、感染が懸念されるかどうかという観点から、危険はないだろうということで、営業許可を求める小売店の声があとを絶ちません。

 この不公平感是正のために、なんと、大型スーパーマーケットなどで扱っている生活必需品ではない商品のコーナーは3日(火)から閉鎖されることが発表されました。思わず、そっち??(すでに営業している店のコーナーを閉める?)と思いましたが、後を絶たない営業許可を求める声を封じるには、手っ取り早い方策なのかもしれません。

 前回は、閉鎖されていた学校も(昨日までは、トゥーサンのバカンスでした)再開されます。本日から1200 万人の学生が登校します。(学校では6歳以上からマスクが義務化)フランスの場合、小学生には、送り迎えの保護者も登下校の際には付き添うので、実際には、保護者も含めるとその1.5倍くらいの人が街に出ます。

 これだけの学生・保護者が普通に登下校すれば、街中の様子は、前回のロックダウンとは随分と違ったものになり、当然、緊張感も緩むことでしょう。

 まだ、再ロックダウンになってから3日しか経っていないにも関わらず、相次ぐテロに加えて、ロックダウンという事態に耐えられない、受け入れられないと思われる人の暴力行為が後を経ちません。

 昨日は、カンヌで取り締まりに当たっていた警官がハンマーで頭を殴られ重症。モンペリエでは、黒い服を着た約10人ほどの銃撃事件が発生(ドラッグを巡る抗争と見られています)。そして、パリ郊外、サルトルビル(イブリンヌ・イル・ド・フランス)では、回送中のバスから運転手が引き摺り下ろされ、バスが放火・・明らかに病んでいると思われる人々が急増し、フランス・・どうしちゃったの??大丈夫かな??と心配になります。

 辛抱強い日本人に比べて、明らかにメンタルが弱いフランス人。抑圧されたり、制限されたり、緊張状態に耐えられない人が多いです。前回のように、全く外に出られないという状態ではなく、仕事も学校も継続され、街には結構、人が出ている状態では、網の目を潜って、このようにメンタルが崩壊してしまった人も街に出て、何かしら事を起こします。

 コロナウィルスの原因を中国人だとして、中国人(アジア人)攻撃を企む人々も同じです。

 メンタル弱めで、我慢ができずに何かと爆発して暴れるのは、多かれ少なかれ、フランス人に共通する傾向です。

 たしかに、3月から2ヶ月間近くは、ロックダウン状態でしたが、夏の間は、多くの人が、バカンスに出て、充分に楽しんだではないですか? その結果が今なのです。とりあえず、ここ1ヶ月くらいのロックダウン(しかも、完全なロックダウンでもない)、我慢ができないのか? 甘ったれるな!いい加減にしろ!と腹立たしい気持ちです。

 政府は、もっと、現在の深刻な状況を具体的にわかりやすく国民に説明し、何のために今、ロックダウンをしなければならないのかを国民に納得させなければなりません。

 再ロックダウンを発表した際は、「このロックダウンを乗り切って、何とか家族でノエル(クリスマス)を迎えられるように祈っています」などと言っていた政府も、早くも「今年のノエルは、いつものノエルと同じようには過ごせない」と言い始めました。

 そんなことは、最初からわかっていたことで、どの時点でよし(ロックダウン解除)とするのかは別として、この再ロックダウンも到底1ヶ月のみで終わるとは思えません。冬の間(気温が下がっているからこそ起こっている感染拡大でもありますが・・)のしかも、フランス人にとってバカンスの次に大切なノエルを過ごす権利を脅かされたフランス人のメンタル崩壊が今から心配です。


<関連>

「ロックダウン中のDV 心理学的に強い強制への反発心 ストレスに弱いフランス人」

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2020年11月1日日曜日

コロナウィルスによる中国人・アジア人種差別再燃 「アジア人狩り」

 


 

 2度めとはいえ、「ロックダウン」という国全体の一大事と言える事態が起こって、本来ならば、ニュースは、ロックダウン一色になっているだろうタイミングで、フランスでは、毎日、ロックダウンのニュースを塗り替えるような出来事がここ数日、次から次へと起こっています。

 近々では、パリ郊外で起こった、表現の自由の講義を担当していた教師が路上で首を掻き切られて殺されたり、ニースのカトリックの教会内で祈りを捧げていた信者3名が刺し殺されたり、昨日は、リヨンのギリシャ正教会の司祭が銃で打たれるという事件が起こりました。

 いずれも、イスラム過激派によるテロと見られていますが、物騒なこと極まりありません。

 表現の自由に対する暴力的な抵抗、反抗、テロ行為は、絶対に許されないことは、大前提ではありますが、表現の自由とはいえ、人を傷つけるほどの表現は、ある程度、考慮されるべきであると思います。

 しかも、昨日はすでにロックダウン下の出来事で、街中は、通常以上に警察の取り締まりが多いはずで、このようなテロリストが教会内に普通に侵入できることからも、いかに今回のロックダウンの中、かなりの人が街を往来している状況であるかがわかるような気がします。

 とはいえ、別にテロ対策のためのロックダウンではないわけで、警戒するとは言っても、こうテロ事件が全国的に散らばって起こっていては、警戒にも限界があります。

 コロナウィルスを警戒し、テロを警戒し、警戒だらけのフランスです。

 そして、もう一つ、警戒しなければならない動きは、SNS上で「すべての中国人(アジア人)を攻撃せよ!」という呼びかけが起こっていることです。

「アジア人狩り」の呼びかけです。

 フランスでは、今年、2月にコロナウィルスが広がり始めた頃に、すでに、中国人差別、アジア人差別問題が起こっており、メトロの中、街中などでも、アジア人がコロナウィルス扱いされて、暴言を吐かれたり、時には暴力を振るわれたりした事件が相次いだのですが、ここへ来て、その動きが再燃しているようです。

 「すべての中国人を攻撃せよ!」という呼びかけと同時に、「アジア人は、最大限の注意を払ってください!そして、あなたがもしもアジア人でないならば、あなたの周りの隣人を見守ってください!」という呼びかけも同時に広まっています。

 ほとんどのフランス人(ヨーロッパの人)から見れば、中国人も他のアジアの国の人も区別はできないため、差別となれば、十把一絡げに差別されるわけです。実際に襲われて被害にあった中国人が傷だらけになった自分の顔をSNSに挙げたりもしています。

 この「アジア人狩り」の動きに関しては、パリ検察庁が調査を開始しています。問題のおおもととなったと思われるツイートは、すでに削除されていますが、このような動きが存在していることに代わりはありません。

 残念なことですが、フランスに差別は存在します。平常時には表面化しにくいものの、このようなパンデミックの異常事態が長く続き、抑圧された生活や経済危機が続くことにより、日頃は表面化しない差別が浮上します。

 鬱屈した感情を異人種に向けての憎悪として発散し、感染拡大の原因を責任転嫁し、スケープゴートを探して、行き場のない感情を爆発させようとするのです。もちろん、すべての人がこのような感情を持っているわけでもなく、ごく一部の人たちの行為ではあるものの、その一部の人に遭遇する機会がいつやってくるかはわかりません。

 恐ろしいこと極まりありません。ある程度、この種のゴロツキとも思われる人々の多いと思われる地域などには、行かないようにするか、フランス人と行動を共にするように心がけるとか、できる対策は限られています。

 もっとも、今は、ほとんど外を出歩けないので、危険も少ないとは思いますが、このパンデミックがおさまるまでは、ずっと続く恐怖です。

 コロナウィルスの陽性率は現在20%というフランス。5人に一人は感染者という状況で、感染する恐怖、テロの恐怖、加えて「アジア人狩り」にあう恐怖。

 強制されなくとも当分、ロックダウンします。



アジア人狩り


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「「災害に免疫のないフランス人がパニックになり、アジア人全体を傷つけている」


2020年10月31日土曜日

フランスのロックダウン突入 営業許可と営業禁止の境界線

 

  Fnac  (Photo d'illustration)


 フランスのロックダウンが俄かに現実味を帯びて、囁かれ始めてから、一週間も経たないうちに、あっという間に、フランスは、再びロックダウン状態に突入しました。いつ、ロックダウンになってもおかしくない状況だと思いつつも、いざ、実際にロックダウンになるのは、やはり、残念なことに違いありません。

 だって、少なくとも、11月一ヶ月は、まるまるロックダウンなのですから・・。

 ロックダウン寸前の数日は、皆が買い物に走ったり、冬ごもり支度をするような動きはありましたが、ロックダウンも2回目ということで、パリでは、一部のお店が混雑したり、行列ができたりしたものの、前回のようなパニック状態にはならずに、皆、淡々と準備を進めるという感じでした。

 実際に、今回のロックダウンでは、学校も継続され、基本的には、仕事も継続されるため、家族で狭いアパートで一日中、ぎゅうぎゅうに、悶々と過ごすということもなく、何より子供が学校に行ってくれることで、家族4〜5人分の昼食を含めた一日3食の食事の支度全てを家でする必要がないので、食料品の買い物なども、大幅に違ってくると思われますし、精神的、金銭的な負担も少ないのではないかと思います。

 まだ、一日しか経っておらず、これからどんなことが起こってくるのか、わかりませんが、街の様子を眺めるに、街中は前回のようなシンとした感じはなく、意外と皆が外に出ている・・そんな印象を受けました。

 私は、ロックダウンの初日、本当は、歯医者さんの予約が入っていたのですが、出かけようとしていたら、急に電話で、今日は、閉めなくてはならなくなったから、来週に予約を変更してほしいと連絡が入り、医者には、行けるはずなのに、今日は閉鎖・・何だろう?と、ちょっと不可解でした。

 今回は、仕事や学校の継続や、公共行政機関の継続、公園の解放など、ロックダウンとはいえ、前回のロックダウンに比べると、若干、緩いロックダウンではあります。基本的に、生活必需品以外の商店は、閉鎖ということになってはいますが、これにも営業許可と営業禁止の境界線が不明瞭な点があり、ちょっとした論争が生まれています。

 Fnac・フナック(フランスの書籍、情報機器、電化製品等を扱う総合小売店)などは、店舗は営業していますが、書籍コーナーは閉めています。その他、ガーデンセンター、DIYショップなども営業を継続しています。この一見、生活必需品か否かの区別がつきにくい店舗の営業により、不公平感を抱く店主が少なからずいて、特に、特別警戒地域ではなかった地域などの市長などが、店舗の営業許可を求めて、論争を起こし始めています。

 私のところにも、さっそくメガネ屋さんからメールが届きました。「うちは、開けてますよ〜!」っていうメール。どうやらメガネ屋さんは営業できるようです。

 だいたい、フランスは、コロナの前からデモだのテロだのストライキだの、昨年末からまともに営業できないお店が多かったのです。

 とにかく黙って引き下がらないフランス人ですが、本来ならば、ノエル(クリスマス)前の一年のうちでも最も書き入れ時のシーズン、なんとか少しでも挽回しようと必死になるのもわからないではありません。

 この営業許可と営業禁止の境界線を巡っては、今後、ロックダウン中にひと騒動を迎えそうな気がしています。

 政府は、これに対して、とりあえず、ロックダウンから2週間、様子を見て、営業許可ができるような状況であれば、検討するとしていますが、先日のマクロン大統領の発表によれば、11月の半ばには、感染状況は、かなりの危機的な局面を迎えることが予想されており、現段階での営業許可範囲を拡げることは、ロックダウン自体の意味が揺るぐことにもなりかねません。

 とはいえ、一般市民としては、前回よりは、少し、慣れたこともあり、また、規制が少し緩いこともあり、少しは、凌ぎやすそうなロックダウン、一日、一時間の自宅から1km圏内の運動目的の外出も外出許可証さえ携帯すれば可能だし、また、公園に多くの人が集まって、やはり、公園は立ち入り禁止・・なんてことにならなければ、前回ほどの鬱屈した感じにはならないかもしれません。

 ただし、妙な慣れから調子に乗って、現在、許されていることが、明日には禁止事項になる可能性も高いフランス。ほどほどに息抜きしながら、なんとか、一日も早く、感染がおさまってくれるのを待ちたいと思います。


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「コロナウィルス対策の外出禁止 パリでは、日中の運動のための外出も禁止」

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2020年10月30日金曜日

ロックダウン前日 大荒れのフランス ロックダウン・テロ・デモの全てが一日に起こった日


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まるで何もなかったような、ロックダウン前日の夜のパリのカフェのテラス



 マクロン大統領のロックダウン宣言から一夜、自由に動けるのも、今日一日限り・・何かやり残したことはないか?(考えながら、なんだか我ながら、大げさだと思いました・・)と思いつつ、昨日、あまり考えることもなく、買い物に出かけて、エラい人出だったので、残りの買い物をしようと、朝、開店5分まえに近所のスーパーマーケットへ行きました。

 ロックダウンになっても、外出証明書を持っていれば、買い物には出かけられるし、外出証明書のダウンロードも大した手間ではないのですが、やはり、気が重いのは、なぜでしょうか? 

 ロックダウンになれば・・と考え始めれば、前回のロックダウンの様子などがまざまざと思い出され、スーパーマーケットなども、入場制限で、いつ行っても長蛇の列・・そんな思いが、ロックダウン前に買えるものは買っておこう・・という気持ちにさせるのです。

  

カーフール開店5分前、すでに行列が・・

 考えることは、皆、一緒のようで、 5分前には、すでに行列が出来始めている状態で、今日のところは、想像はついていたものの、やっぱりビックリ!

 そして、店内に入って、すでに平日にも関わらず、結構な人・・しかも、男性客が多く、明らかに買い貯め用の買い出しの体制。フランスでは、日常から男性が買い物に来ているのは珍しいことではありませんが、ロックダウンのための買い物となると、さらに男性の比率が高くなるような気がします。

         

ロックダウン前の買い物は男性が多い

 まだ、開店直後というのに、すでに、ガラガラの棚もあり、またまたビックリ!第一波の時には、スーパーマーケットの職員にも犠牲者が出ていたため、緊迫感が漂っていましたが、今回は、今のところ、そこまでの緊迫感はなく、ただ、皆、淡々と買い物をしていました。

               

朝から空っぽのオイルの棚

 私が、そうして買い物をしていた頃、ニースでは、大変な事件が起こっていました。ニースのノートルダム教会で、刃物を持った男が複数の人に襲いかかり、死者3名、複数の負傷者が出るカトリックの教会を狙った凶悪事件、先日のパリ近郊で起こった路上でのテロ事件に続き、イスラム過激派のテロ事件が再び起こっていました。             

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テロの起こったニースの教会前

                               

 犯人は、21歳のチュニジア国籍の男、イタリア経由でつい数週間前にフランスに入国したばかり、犯人の持ち物からは、コーランとナイフが発見されています。テロ目的で入国した可能性もありますが、警察の反撃のため、現在、犯人は重体、事情は聞けていません。

 明日には、ロックダウンというタイミングで、ロックダウンと並んで、まさかの再びイスラム過激派のテロ。トップニュースとして、扱われる驚愕のニュースとなりました。ロックダウンの詳細が発表されるとともに、フランスには、テロに対する警戒が最大レベルに引き上げられました。 

      

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明日からロックダウンとは思えない賑わいぶりのパリのレストランのテラス

       

 夜には、ロックダウンについての詳細が発表される中、パリのカフェやレストランには、最後の時間を惜しむかのごとくに集まる人々。ロックダウンされるほど、感染状況が危険な状態だとは考えずにギリギリまでカフェやレストランでの時間を過ごす人を見ながら、これだから、フランスは、ロックダウンしなければ、どうしたって、感染拡大は抑えることが出来ないんだ・・と、もはや、私には、ため息すら出ません。

             

あと数時間でロックダウンを控えてロックダウン反対のデモ


 カフェやレストランでの賑わいぶりに拍車をかけるように、あと数時間でロックダウンというのに、パリ・リパブリック広場では、ロックダウン反対のデモ。昨日のマクロン大統領のロックダウン発表の放送は、3,270万人もの人が見ていたと言われているのに、聞いていなかったのでしょうか? 

 第二波は、第一波以上の死者を出す恐れがあるということを・・。

 こんなパリの街の様子を見るにつけ、やっぱりフランスには、ロックダウン以外の道はなかったのだ・・ということを思い知らされる一日でした。

 それにしても、コロナウィルスの恐怖に加えて、デモ、テロ・・と、なんでもありの一日で、ロックダウンは気が重いながらも、どこかホッとさせられる気もするのです。


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「フランスは、いつも誰かが何かを訴え、戦っている フランスは、デモの国」

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2020年10月29日木曜日

フランス 再びロックダウン・・少なくとも12月1日まで


フランス 大統領からの発表の前に流れる映像



 この約1年あまり、この映像をどれだけ見たことかと思います。大統領からの重大な発表が行われる度に、大統領の発言が流れる前に、フランス国歌マルセイエイズとともに、威風堂々としたエリゼ宮(大統領官邸)を背景にしたこの映像が流れます。

 フランスは、今年、それだけ、重大な局面を何度も迎えているということです。

 昨夜は、前日からの予告どおり、マクロン大統領から、10月30日(金)午前0時より、少なくとも12月1日まで、再びフランスは全土にわたり、ロックダウンの措置が取られることが発表されました。

 特にここ2週間のフランスのコロナウィルスの感染拡大は、予想を遥かに超えたスピードで進み、感染者数等全てが倍以上の数に膨れ上がり、また、前回の第1波に比べると感染は、全国くまなく広がっており、パリ・イル・ド・フランスの病院の集中治療室の75%は、コロナウィルスの患者で埋まっています。

 今回の第二波で、すでに医療崩壊を起こしているオー・ド・フランスなどの地域では、すでに患者の移送が始まっており、この感染が増加し続けている状況では、他の地域の病院でも患者が増え続けている中、その患者の移送さえも困難な状況に陥るのも時間の問題です。

 現在のところ、毎日3000人前後の人が新たに入院しており、すでに3045床の集中治療室の病床が埋まっている状態。現在の感染状況から、11月半ばには、9000床の集中治療室の病床がいっぱいになる事が見込まれるため、ロックダウンは、待ったなしの状況で、約2週間前に取られた21時以降外出禁止の効果が表れるのを待つまでもなく、もう後には、引けない状況なのです。

 このロックダウンの話が具体的に上がり始めて、当初は、「金曜日の夜からロックダウン」という事であったのに、それが一日繰り上げられて、木曜日の夜からになったのには、もう一日たりとも猶予がない状態であることに他なりません。

                

店外まで行列ができるスーパーマーケット

         

 もはや誰もがロックダウンだ・・とわかっていた証拠に、昨日は、すでにスーパーマーケットには、ものスゴい人出、そういう私も、家から少し離れたところにあるアジア食材店には、ロックダウンになったら、行きにくくなるだろう・・と買い物に出かけたところ、午前中の比較的早い時間に出かけたにも関わらず、すでに店の外まで長蛇の列。

 しかし、わざわざ出かけてきたのに、買い物せずに帰るのも馬鹿らしく、列に並ぶこと15分くらい? 近所のカーフールなどのスーパーマーケットでは手に入りにくい日持ちしそうな大根やキャベツなどの野菜や調味料などを物色してきたのです。

 安全対策のために、入場制限を行なっているのかと思いきや、店内にも、ものすごい人、レジにも長蛇の列・・買い物を済ませるのにも、いつもの倍以上の時間がかかりました。

 5月にロックダウンが解除されて以来、久しぶりにロックダウンを見据えての買い物。つい忘れていましたが、ロックダウン時の買い物というのは、こんな感じ(どこでも行列・時間が異常にかかる)なのだった・・と、実感として思い出したのでした。

 今回のロックダウンは、幼稚園から高校までの学校は閉鎖せず、仕事もできる限り継続(工場や農場なども継続)、EHPAD(エパッド・老人介護施設)の面会が許可されている事が前回と違う点として挙げられています。

 全ての外出に際して、再び、外出証明書の携帯が必要になり、不携帯の場合は、135ユーロの罰金が課せられます。レストランに関しては、宅配、持ち帰りのみの営業となり、店内での飲食はできなくなります。

 詳細については、翌日発表とのことでしたが、つい一週間ほど前までは、あくまでロックダウンはせずにコロナと共に生きる、経済を回しながら、衛生管理を行う姿勢を崩さなかったマクロン大統領がロックダウンに踏切らざるを得なかったのには、フランスのあまりに急激で深刻な感染拡大があります。

  

再ロックダウンを発表するマクロン大統領

 それでも、今回の発表でも、現在の感染拡大は、ヨーロッパ全体で起こっていること・・というマクロン大統領。たしかにヨーロッパ全体で起こっていることには違いはありませんが、フランスは、他のヨーロッパ諸国とは群を抜いていることには言及しません。

 私の穿った見方かもしれませんが、あくまでヨーロッパ全体のこととしようとする不透明感からか、いつもの発表に比べて、力強さもオーラも感じられませんでした。

 しばらく自由に出かけられなくなるフランスでは、最後の一日、どこでも、大変な人出になること間違いありません。


<関連>

「ヨーロッパのコロナウィルス感染拡大 国の対策の取り方で明暗を分けた理由」

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2020年10月28日水曜日

フランスのコロナウィルスによる1日の死亡者500人突破 

 

メトロの駅で清掃・消毒している人を見かけるのは久しぶりだった

  

 毎日毎日、悪いニュースばかりのフランス。昨日は、1日のコロナウィルスによる死亡者が523人を記録しました。うち288人が病院、235人がEHPAD(エパッド・老人介護施設)における死亡者となっています。

 老人介護施設でのコロナウィルス感染については、第1波から甚大な被害を出していましたが、にも関わらず、ロックダウン解除後も、面会の家族との接触の問題などが叫ばれつつも、感染が全国的に拡大している状況下、一番リスクが高いことがわかっていた(実証済みだった)老人介護施設で再び多くの犠牲者が出ていることに憤りを感じます。

 実証済みといえば、第2波ともなれば、ほとんどのケースにおいて、実証済みなわけで、結局のところ、再びロックダウン・・という状況を招いてしまったフランスでは、全てが甘かったわけで、「ウィルスと共に生きる!」を掲げてきたものの、ウィルスとともに生きることはできなかったわけです。

 こんな年に限って、私は、滞在許可証の書き換えの年(10年に1回)、おまけに銀行のカードも今月末で期限切れで新しいものに切り替わるタイミング。今や、振り込みや送金などは、全てオンラインでできるので、滅多に銀行に行く必要もないのにこんな時に限って銀行へ。

 銀行のカードがないのは、かなり困るので、ロックダウンになる前になんとか取りに行かなければ・・と、昨日は、慌てて銀行へカードを引き取りに行ってきたのでした。銀行のサイトを見ると、現在は、午前中のみの営業になっていて、なんとか朝のうちに行かなければなりません。

 

感染防止用の手袋をしている人を見つけてちょっと感動


 何週間ぶりかで乗ったメトロは、なかなかの混雑ぶり、当然、人との距離を取るために座席に貼られていたステッカーなどは、何処へ行ってしまったのやら? しかし、マスク率はさすがに100%、メトロの中では、初めて感染防止用の手袋をしているおばさんを見つけて、こんなに気をつけている人もいるんだと妙に感激し、また、乗り換えの駅の構内では、いつになく、清掃・消毒(手すりなどをアルコールで除菌していました)をしている人を見かけて、さすがに緊迫感が増してきたことを実感しました。

 しかし、家に戻ってきてから、ふと、駅で清掃?消毒をしている人を見かけただけで、なんだかすごく特別なことだと感じている自分に、この程度の駅の掃除、日本だったら、平常時にもやっていること・・こんなことに驚いている自分に苦笑してしまいました。

 銀行に着いてみると、サイトには午前中のみの営業と書いてあったのに、実は一般の窓口の受付はすでに、終日、閉鎖されていました。なんのためのサイト??なんてことは、フランスでは通用しませんが、銀行から来ていた「カードの用意ができました」というレターを持っていたので、カードを受け取ることはでき、ついでに他のお願いまでしてくることができたのでした。

 ダメと言われて、あっさり引き下がっていては、フランスでは暮らしていけません。

 そんな、コロナウィルスで緊迫し始めている中、パリでは、凱旋門周辺、およびエッフェル塔付近(シャンドマルス)において、爆発物が仕掛けられたという、まさかの爆弾騒ぎまであり、近接するメトロ3線、郊外線1線の運行が一時停止するという事態が起こりました。

 先日起こったテロ事件から、いくらも時間が経っていないこともあり、不審物に対する警戒も高まっているのでしょう。先日のテロの際のマクロン大統領の「表現の自由は、断固として守る!」との声明に憤慨しているイスラム教の数カ国では、フランス製品の不買運動が起こるなど、摩擦も高まっています。

 コロナウィルス感染に加えて、テロの脅威も抱えるフランス・・フランスに平和が戻る日は遠そうです。

 一昨日あたりから、フランスのツイッターでもトレンドの上位は#confinement2(confinement=ロックダウン)(ロックダウン2)で占められ、夜に発表になるとされている再ロックダウンの詳細に国民も戦々恐々としています。


<関連> 私の予想は残念ながら当たってしまいました・・

「コロナウィルス第2波は、いつ来るか?」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/07/blog-post_10.html


2020年10月27日火曜日

コロナウィルス感染第2波 待ったなしのフランスに残された道

 

   Des patients atteints du Covid-19 transférés depuis le CHU de Strasbourg arrivent à la gare Saint-Jean de Bordeaux, le 3 avril 2020


 一昨日のフランスの1日の新規感染者数は52,010人を記録し、この日の世界の感染者数を見ても、アメリカ 61,117人、インド 45,158人に次いで、世界第3位、いやいや、インドは超えて、世界第2位・・。しかし、人口を考えるとアメリカの人口はフランスの5倍、インドに至っては、21倍の国、実質的には、フランスは世界一とも言えます。

 この感染拡大は、フランス人の多くが本格的にバカンスに出始めた8月頃から徐々に増え始めましたが、特に、10月に入った頃(ここ1ヶ月ほど)からの上昇は、グラフの上昇曲線が斜めから縦線になるのではないかと思うほどの増加の仕方です。

 これには、Conseil Scientifique Covid-19 (コンセイユ サイエンティフィック)(フランスのコロナ対策の科学評議会・フランス政府に科学的助言を提言する機関)の議長・フランソワ・デルフレシ教授は、「フランスの1日の新規感染者数について、直近の公式発表の倍にあたる10万人程度になっている可能性がある。感染は、予想以上に早く拡大している。早急に次の対策を講じる必要がある」と発表しています。

 すでに、フランス北部を中心に医療崩壊が始まり、患者の移送も始まっています。先週の段階では、すでにオー・ド・フランス(フランス北部の地域圏)から、2人の患者がベルギーに移送され、先週末から週明けにかけて、ルーベ(フランス北部・ノール県)の病院では26人の患者が、リヨンから4名、ヌーベル・アキテーヌから8名が、飛行機やTGVを使って、国内の他地域に、移送されており、3月末から4月にかけて、フランスが必死に行なっていた国内大移動作戦が始まりました。

 今回は、感染がフランス全域に広がっているため、この移動大作戦がいつまで持つのかは、この感染の速度を考えると非常に悲観的になります。

 特別警戒地域での夜間ロックダウンが始まって、すでに、10日が経とうとしていますが、一向にこの夜間外出禁止の成果が表れず、それどころか、感染状況が悪化の一途を辿っていることから、新たな制限がここ一両日中にも発表されるようです。

 もはやフランスに残された道は、3月同様のフランス全土にわたる完全なロックダウン状態か? 地域によって夜間のみではなく終日ロックダウンを行うか、夜間の外出禁止に加えて、週末の外出禁止、もしくは、外出禁止時間帯を夜21時からではなく、19時からとか17時からにするという案も出ているようです。

 いずれにしても、もはや現在の夜間のみの外出禁止だけでは、フランスの感染は止められる状況ではなく、テレビのニュースなどでも、フランスはコントロールできていない状況になっていることを憚らずに述べるようになり、(当然だけど・・)、恐らく、ロックダウンしない限り、フランスで感染がおさまることはないかもしれない・・と多くの人が思い始めていると思います。

 検査で陽性になった人の隔離も、フランスのような観光大国にはホテルの空き部屋は山ほどあるので、それを利用すれば良かったと思いますが、感染者が1日、5万人も出ている状況では、もはや、その人たちを毎日毎日、隔離することも不可能で、家にいろと言っても、何かと理由をつけては出歩く陽性者を管理できないのであれば、ロックダウンしかないのではないか? と思ってしまうのです。

 前回のマクロン大統領の会見では、フランスはコントロールできている状態だと言い張っていましたが、コントロールできている状況で今の事態はありえないのです。

 ロックダウンが感染状態の最も深刻な地域のみだとしても、パリ(イル・ド・フランス)は、オー・ド・フランス(フランス北部)に次いで深刻な地域。私もロックダウン生活突入を覚悟して、今日もこれから銀行の用事を済ませに行ってきます。

 フランスでは、「国民のショックを考えて・・」という政府の発言をよく聞きますが、ロックダウンは、ショッキングなことではあっても、もはや、誰も驚かないと思います。


<関連>

「パリ、イル・ド・フランスをはじめとするフランス8都市での夜21時以降の外出禁止」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/10/21.html