2023年3月25日土曜日

年金改革デモ・ストライキのため、英チャールズ国王のフランス公式訪問延期へ

 


 いつまでも、年金改革問題抗議デモ・ストライキが一向におさまらないフランスでは、数日まえから、今週末からの英チャールズ国王のフランス公式訪問はどうなるのだろうか?と少しずつ話題になり始めていました。

 23日(木)は、以前からCGT(全国組合連合)が再び(非公式デモが何日も続いているために公式デモが何度目だったかわからない)予告されていた日でもあり、ここ1週間以上、日々、暴動のようになっているデモを大きく上回る大変な動員数になりました。

 また、それに紛れて、ブラックブロックと呼ばれる破壊行動を起こすグループやデモがエスカレートして、暴れ出す人がもうどこにでも登場するようになり、山積みにされたゴミの山への放火もダイナミックになり、また、それだけでは飽き足らずに、キオスクに火がつけられたり、ショーウィンドーが割られたり、スプレーで落書きをされたりと、カオス状態になりました。

 山積みにされたゴミにネズミがたかる・・など、衛生状態が問題視されてもいましたが、これではネズミもびっくりです。

 翌日は、焼けただれたゴミなどは、ざっと片付けられてはいるものの、まだゴミは散らかり、焼かれたアパートの扉やキオスクには立ち入り禁止のテープが貼られていましたが、こんな汚いパリは見たことない・・感じでした。

 パリの中にも、日常から、「えっ?ここ、パリなの?」と思うような地域もあるにはあるのですが、この汚い状態がパリの中心地のまさにパリらしい華麗なイメージの場所でのことなので、歩いていても胸が痛む気がしました。

 いくらなんでも、これはやりすぎで、一般市民の住居であるアパートや商店やキオスクなどが攻撃対象になるのは、酷すぎる話です。

 とにかく、パリ(フランス)は、今、こんな状態で、怒り狂っている暴徒や、同じように政府に対しては怒りつつも、暴力行為に動揺、困惑している国民にとっては、チャールズ国王どころの話ではないのが正直なところだと思います。

 23日の夜にボルドー市庁舎の大扉が勢いよく燃やされている時に、チャールズ国王のフランス公式訪問については、あまり詳細な日程は公開されていない中、ベルサイユ宮殿での晩餐会とともに、訪問先になっていたボルドーは、市長が半泣き状態で、来週初めのチャールズ国王ボルドー訪問について、「我々は時間をかけて万全の警備体制を準備してきているので、国王をお迎えすることに問題はないです」と語っていたのは、とても印象的でした。

 また、内務相も、23日の夜の段階では、チャールズ国王のフランス公式訪問は問題はないと発表していました。

 しかし、翌日になって、エリゼ宮から発表されたのは、「英チャールズ国王のフランス公式訪問は社会情勢を考慮して延期されました」というもので、その日の午前中にマクロン大統領とチャールズ国王が直接電話で話し合い、マクロン大統領の申し出により、延期されたとのことでした。

 もっとも決定的であったのは、チャールズ国王がフランス滞在を予定していた3月26日~29日にぶつけるように、次回のCGTが動員するデモ・ストライキがその期間中の28日に設定されたことにあります。

 ここ1週間ほどのパリ(フランス)の荒れ様を見ていると、デモや暴動は予定された以外の日に起こらない保証はどこにもなく、何よりもブレグジット後にイギリスとフランスの友好的な外交の象徴として計画されていた今回の英チャールズ国王の訪問は、祝福ムードの中で迎えられるべきであるもので、現在のフランスには、祝福モードのかけらもありません。

 また、現在のフランスはデモやストライキ・暴動から日常生活を守るための警備だけでも大変な数の警察官や憲兵隊が動員されており(毎晩最低でも2000人といわれている)、とても、ヴェルサイユで予定されていた夕食会だけでも、ヘリコプター、地雷除去員、800 人の警官が現場に配置される予定であったために、デモと国王の両方の警備はかなり厳しい状態であったに違いありません。

 これは、ともかくも全てフランス側の問題でのキャンセル・・しかも、イギリス国王の予定をキャンセル(延期)するのですから、イギリスのフランスに対するイメージに深刻な打撃を与えるものであり、なんとバッシングを受けても仕方ないことで、何よりもマクロン大統領にとっては大変に屈辱的なことに違いありません。

 反マクロン派の政治家たちは、ここぞとばかりに「フランスの恥!」と声をあげています。

 しかし、英王室の話題が大好きなフランス人は、エリザベス女王のご逝去の際などには、昼夜をあけずに、まるで自分の国の女王様が亡くなったかのごとく大騒ぎしていたものの、チャールズ国王が就任して以来、どうにも熱が冷めてしまった感じもします。

 正直、エリザベス女王ほどには人気がないチャールズ国王のフランス訪問は、この時期ではさらに微妙な感じになってしまう可能性も大でした。

 ついに、国内だけでなく、外交問題にまでも影響が及び始めたフランスの年金改革問題ですが、この英チャールズ国王のフランス公式訪問キャンセルをCGT側はデモの勝利の一つとして掲げようとしており、また、このフランスの恥をさらす事態は反マクロンの声をさらに大きくしつつあります。


英チャールズ国王フランス公式訪問延期


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2023年3月24日金曜日

フランス全土で350万人動員の記録的なデモ 一晩に140ヶ所で炎が立ち上るパリ

 


 

 前日のマクロン大統領のインタビューを聞いて、「なんか火に油を注いだ感じだな・・」と思ったのが、まさに文字どおり、火に油を注いでパリの街はあちこちが燃え盛り、特に今回はオペラ界隈近くのサン・マルク通りなどは、山積みにされたゴミにつけられた火が建物に燃え移る、かなり危険な火災にまで発展したり、ブルバード・イタリアンのキオスクが燃やされたり、もはやゴミが燃やされるだけでなく、建造物が燃やされる火災にまで発展しています。

 49.3条(首相の責任のもと、採択せずに法案を通してしまう法律)発令から8日連続のデモ+暴動騒ぎは収まるどころか、手が付けられない状態になっています。

 依然として続いているゴミ収集業者のストライキのために、あちこちに山積みにされているゴミには火がつけられ、消火された後は、まことに見るに堪えない惨状ぶりを強調しています。

 この日は、以前からCGT(全国組合連合)が大規模なデモ・ストライキを予告していた日で、CGTの発表によるとフランス全土で350万人がデモに参加した(当局の発表によると109万人)とのことで、記録的な動員であったと言われています。

 なにしろ、パリだけでも119,000人動員したというのですから、えらいことです。

 こうなってくると、山積みにされたゴミは、不衛生なだけでなく、近隣の住民や店舗などにとっても、いつ火がつけられるかわからない恐怖の対象でもあります。


 この日はなんと、大小含めて、少なくとも140ヶ所で火がつけられたとのことで、放火や破壊に乗じての略奪行為なども起こり始める危険も孕んでいるため、内務相をはじめとする政府の面々もこれらの暴力行為はとうてい、容認できないとしています。

 これは、パリだけではなく、ボルドー市庁舎の大扉も燃やされています。

 また、警察・憲兵隊もかなり乱暴な場面もみかけないではありませんが、彼らも命がけで、任務についているわけで、この日だけで負傷した警察官・憲兵隊は149人にも上ったということです。

 私の勝手な想像ですが、この警察官や憲兵隊の中にも、同じフランス国民として、抗議デモに参加したいくらいの気持ちの人はいるだろうに、まことに気の毒な気がしてきます。

 もともとの年金改革デモは、長いこと続いていましたが、比較的、暴力的な面が少ないデモだという印象でしたが、一気に暴力的な暴動の様相にシフトしたのは、49.3条発令が発端で、暴力的な行為は許せないことながら、この怒りに火をつけてしまった49.3条というものが、この激しやすい国民を持つフランスで、あってよい法令なのかどうか、考えてしまいます。

 私は年金改革は恐らく必要なことなのだとは理解しますが、やはり、フランス人の国民性を考慮したら、49.3条は使うべきではなかったと思います。やり方を間違えたと思います。

 国会での規定どおりの採決を通すにはリスクがあったためのこの49.3条発令で早道をとったつもりが、このパリの、いやフランス全土の荒れようを見れば、もはや、とんだ回り道になってしまったことは、もはや言うまでもありません。

 49.3条には、「首相の責任のもとに・・」という文言がついていますが、こんな破滅的な状況になって、首相が一人で責任をとれるものでもないでしょう。


年金改革問題 パリ 大規模デモ 暴動 放火


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2023年3月23日木曜日

火に油を注いだマクロン大統領35分間のインタビュー

 


 もはや、今のフランスの大混乱状態でマクロン大統領が何かを話して解決できるとは、あまり期待してはいませんでしたが、ともかくも、49.3条(首相の責任のもと、採択せずに法案を通してしまう法律)発令以来、初めてテレビで公に向けてマクロン大統領が口を開くということで、このインタビューはかなりの注目を集めていました。

 これまでも、ワクチンパスポートを導入した際なども、(ワクチンパスポートを持たない人は飲食店に入れないとか、長距離の交通機関を利用できないとか)かなり強引なやり方を押し通してきたマクロン大統領でしたが、あの時は、当初は相当な反発を生み、大規模なデモなども組織されたりもしましたが、かなりの割合で賛同する人々も多く、また自分達の健康が人質で、タイミング的にも夏のバカンスの直前のタイミングということで、騒ぎは少しずつおさまっていきました。

 結果的には、あの時のワクチンパスポートの導入は、かなり強引な手段であったとはいえ、結果オーライで、後々、評価されており、マクロン大統領にとっては、ある意味、強行突破の成功体験だったかもしれません。

 しかし、今回の年金改革問題、49.3条問題は、どうやら雲行きが違います。正直、私の印象では、2期目になってからのマクロン大統領、マクロン政権はどうにも人が変わったような、暖かみが消え失せたように感じるのです。

 今期の閣僚のメンバー構成のためでもあるとも思うのですが、それを選んだのは、マクロン大統領本人なのです。

 今回のインタビューに関しては、やはり、どうにも、その設定自体からしても、不自然な感じが拭えず(放送時間帯(13時からの生放送)、このインタビューがマスコミが申し込んだものだとしても、エリゼ宮にジャーナリストを招くというカタチをとっており、あくまでこのインタビューの主導権は自分にあるという印象のうえ、質問に答えるという形式をとりつつ、時にはインタビュアーの質問を遮り、自分の言いたいことだけを言っている感じで、途中で聞いているのが苦痛な感じになってきました。

 質問をすりかえ、言いたいことだけを言って、国民を説得しようとするのであれば、いっそのこと、インタビュー形式などとらずに、何かとことあるごとに大統領の演説として夜20時から流すいつものやり方をすれば、まだマシだったかもしれないと思ったくらいです。

 このインタビューの中で彼は「正当性」という言葉を多く使っていますが、そもそもこのような国民の怒りに対しては、ここまで悪化してしまった状況で、国民のデモの在り方の「正当性」を疑問視したり、自分の法案の「正当性」を語ったりしても、もはや、何の解決にもなりません。

 かと思うと、根拠も理由も異なり、ましてや同じ政治的方針をもたない、アメリカ大統領選挙でのドナルド・トランプの敗北を拒否したアメリカの極右による国会議事堂への侵略デモなどを例に挙げたりして、やはり、通常のマクロン大統領なら考えられないおかしな話の展開があったりもしました。

 彼は一貫して、この年金改革の必要性を貫いているし、それこそ、それは正当性があることであるとは思うのですが、どうにも彼の言動は、反発を生むもので、この49.3条発令に際して、辞任か?などと騒がれてもいたボルヌ首相は完全に自分の信頼をおいている人物であるとか、国民の怒りに耳を傾けるとしながらも、現実とは全く正反対の方向へ進んでいるように見えます。

 この場で国民が聞きたかったことは、彼の言う正当性のある「年金改革」を怒り狂っている国民をどう説得するかであり、ただ、これは正しいこと、必要なことというだけでは、もはや、何の解決にもならないことを彼は理解していない印象で、「マクロン大統領からは 19 世紀のブルジョア的で不平等な人間関係の中で築かれた想像力がにじみ出ている・・」などと言われています。

 このインタビューを聞いて、決意を新たに反抗の意思を固めた国民は多そうな感じで、直後の世論調査によると、フランス人の70%は、インタビューで大統領が説得力があるとは思わなかった、また、44%はまったく説得力がないと答え、回答者の 67% は、改革に反対する抗議運動を支持すると答えています。

 概ね、彼のこのインタビューは火に油を注いでしまったという印象で、大統領候補の対抗馬であったマリーヌ・ル・ペンなどは、「現実と、外の世界との接触をすべて失ったように見える孤独な男」と酷評しています。


年金改革問題 49.3条 マクロン大統領インタビュー


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2023年3月22日水曜日

パリだけでも毎晩警察官2000人が動員されている! デモは日に日に過激になっています・・

  


 49.3条(首相の責任のもと、採択せずに法案を通してしまう法律)が発令されて以来、毎晩、続いているデモ?はもうこれで6日連続になりました。

 こんなことが毎日、続いていて良いはずはありません。しかも、このデモは日に日に過激になっている感があり、昨日、年金改正法案がついに通ってしまったのを区切りに、より暴動に近い暴力的な要素が色濃くなってきた感じがあります。

 前夜も夜遅くまで群衆が集結していたパリ・リパブリック広場が昨夜の舞台の中心となりました。

 そもそも、ここ数日のデモは、届け出の出されていない(フランスはデモの権利がとても尊重されていますが、事前の許可を届け出る必要があります)無認可の自然発生的に近いデモで、この日は学生の集団抗議デモが日中から、パリ近郊から12区にかけて行進していました。(この段階ではまだ、暴力的ではなかったようなのですが・・)

 しかし、どこからとなく声があがり始めた「18時リパブリック広場に集結!」の号令に合わせたように、18時を待たずして、夕刻からリパブリック広場には、すごい人が集まり始めました。

 そして、すぐに、山積みにされたゴミとともに近くに停めてあったバイクが勢いよく燃えはじめ、その火の勢いとともに、盛大な黒煙がたちのぼり、一気に物騒な感じになりました。

 また、この集まりは、すでに単にゴミを燃やすだけにはとどまらず、警護にあたる警察、憲兵隊に向けて、ロケット花火が発火されたりして、一時はこの警備隊も後ずさりせざるを得ない、まことに危険な状況に陥りました。

 もうロケット花火などの武器を持参してデモに参加している時点で、これはもうかなり暴力的なものになっているわけで、暴力行為がエスカレートしてきていることは明白で、応戦する警察もたまったものではありません。

 そもそも49.3条が発令された木曜日以来、パリだけでも連日連夜(もう6日間)、毎晩遅くまで2000人の警察官が動員されているそうで、警察も疲れ果てていることと思います。

 もう法案は決定してしまったというのに、この暴動がおさまらないということは、終わりが見えないということです。

 これまで、公にはこの件で沈黙を守ってきたマクロン大統領は、22日、ジャーナリストからのインタビューに答えるという形で生放送でようやく重たい口を開くようですが、また、この放送時間帯が13時ということで、この映像は、繰り返し流されることになるとはいえ、この放送時間帯の視聴者は、すでに引退している人向けの時間帯で、どこか消極的な姿勢が見え隠れする空気もあり、あまり大したことを話すとは見られていません。

 現在のフランスの状況で、マクロン大統領がいつもの調子で正当性を全面にかざして話をしたところで火に油を注ぐだけだと思われます。

 しかし、だからといって、このままで良いわけはなく、どうするつもりなのか、本当にマクロン大統領に聞いてみたいです。

 そもそも3月7日から始まっているパリのゴミ収集業者のストライキはまだ一向に終わる気配もなく、少なくとも来週の月曜日までは続くと言われています。

 このゴミ問題だけでも大変な被害で、ゴミ収集場所の近隣の飲食店などは、さすがのパリジャンも、もう客足の減少が著しく、臭いも強烈で、ましてや毎晩のように山積みのゴミが街中で燃やされているのですから、その燃え上がる炎の映像だけでも衝撃的ですが、映像では伝わらない、街中で数日放置されたゴミが燃える臭いは、強烈です。

 パリの住民もさすがに、もうこれには、辟易してきて、ゴミ収集分の税金を支払わないなどと言いだしている人まで出没しています。

 世の中の動きや政治の動きなどは、長い歴史の中で時間がたってからでないと、その良し悪しが判断できないものが多いですが、今回のこのフランスの年金改革騒動、かなりの痛みを伴っていますが、あとになって、痛みを伴ってでさえも、あの時の判断は正しかった・・となるのかどうか・・ともかくも、痛みは最小限にとどめてもらいたいです。


49.3条 年金改革反対デモ ゴミ問題


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2023年3月21日火曜日

年金改革法案採択され、さらに増すばかりの国民の怒り

燃えるゴミの山に遮断されるパリ・オペラ通り

 

 フランス中を大混乱に陥れている年金改革法案は、国民議会により、政府に対する 2 つの非難動議が却下された後、月曜日に自動的に採択されました。

 先週木曜日にボルヌ首相により発表された 49条3項の適応に対して、今週の月曜日に国会で 2 つの非難動議が議論されました。 しかし、政府とその法案を撤回するのに必要な数の票を獲得できずに、年金改革法案は自動的に採用されることになりました。

 こんなに国民が抗議して、毎晩のようにパリの街はゴミ焼却炉と化しているというのに、あまりにあっさりと決まってしまって「へっ??ほんと??」と拍子抜けしてしまいそうになるのですが、国民の怒りの炎は消えることはなく、ここ数日は無許可のデモがあちこちで起こり続け、とどまるところを知りません。

 毎日のように、パリのゴミ焼却炉の場所は変わるのですが、昨夜は、かなりあちこちで炎が立ち上っている様子には、なんだか切なくなってきます。

 昨夜は最初、パリ6区のオデオン地区からグランブルバード、ブルバードサンジェルマン界隈が燃えていると思ったら、今度はオペラ座を背景にオペラ通りの中央を遮るようにゴミの山が散らばって同じ通りでいくつもの炎があがっており、次には、パリ市庁舎近くからサマリテーヌ(デパート)のあたりと、それぞれがそんなに離れた場所ではないにせよ、かなりパリ市としては、象徴的な場所で炎が上がるのには、ため息が出てしまいます。


 特に在仏日本人にとっては馴染みの深いオペラ通り(オペラ界隈は日本食のお店が固まってある場所で日本人街とも言われる場所でもある)は、長い間、職場があった場所でもあり、それほど長くもない(シャンゼリゼなどと比べると)通りのあちこちに山積みのゴミに火がつけられ、その周りにゴミが散らばり、荒れ果てている様子に、なんだか妙に悲しみが湧いてきてしまいました。

 しかし、パリ市の消防隊ももう慣れたもので、わりと、すぐに鎮火してしまうところもスゴイもんだと妙な感心もしてしまいます。

 テレビのニュースでは、このデモの様子を中継しながら、ジャーナリストが解説したり、法案採択についての意見を述べたりしているのですが、「今回のデモは、黄色いベスト運動のように過激に暴徒化はしていない!彼らはゴミを燃やしているだけで、何も破壊していない!」と解説?する人までいて、「なるほど、考えてみれば黄色いベスト運動の時には、銀行を燃やしたり、商店のウィンドーを壊して物を強奪したりしていたな・・」などとも思ったのです。

 しかし、これだけパリの街を荒らして、ゴミを燃やしているだけ・・というのも、物は言いようだ・・と彼らの屁理屈?に今さらのように感心させられるのです。

 この年金改革法案が自動的に採択されたことを受け、これに異議を唱える左派は共有イニシアチブ(RIP)をとり、国民投票の要求が、憲法評議会に提出されています。

 マクロン大統領は相変わらず、国民向けへの発信(ツイッターなど)は、この問題には一切ふれずにいますが、火曜日には昼夜にわたって、多数派の指導者、多数派の議員と上院議員を迎える予定であるとエリゼ宮が発表しています。

 これは、何が何でも国民投票には持ち込まないための説得作業だと思われますが、たとえ、これで指導者たちや議員たちを説得できたとしても、ちょっと順番が違ったというか、本来の話し合いは49.3条を発令する前に行われるべきものであって、その前に彼らを説得できていれば、49.3条は発令する必要もなく、これほど国民を怒らせることもなかったと思うのです。

 いずれにしても、これで法案が通ったとしても国民の怒りが鎮まるものではなく、毎晩のようにパリのあちこちでゴミを燃やし続けるだけでは済まなくなり、今度は本当に破壊行動が始まるかもしれません。


年金改革法案採択


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2023年3月20日月曜日

家の固定電話を外したら、私の行方不明騒ぎが起こっていた・・ 

 


 ある朝、パリにいる日本人の友人から携帯に電話(messengerで)があって、電話に出るなり、彼女には開口一番「あ~やっと捕まった~~!」 と言われて、「???」となりました。

 彼女曰く、「ジャンピエールから連絡があって、あなたにずっと電話してるんだけど、全然、連絡がつかないけど、彼女は無事なんだろうか?」とすごく心配していたとかで、彼と彼女はあたふたと私を探し回ってくれていたそうなのです。

 彼女とジャンピエールはそれぞれに存在は知っているけど、知り合いではないくらいの間柄で、そんな彼がわざわざ彼女の連絡先を探し出してまで彼女に連絡を取ること自体、大変なことだったと思うのです。

 ジャンピエールは私の元同僚であった男性で、家が比較的近いために、私が日本に一時帰国する時には、すでに引退している彼にポニョ(猫)の世話を頼んで、家の鍵を渡して毎日、ポニョのごはんやトイレの世話を頼んでいる人で、あとは、たまにお誕生日やノエルとか年明けの時に電話をくれるくらいで、あんまり普段は連絡をとってはいませんでした。

 ジャンピエールに頼まれて私の捜索をしてくれていた女性は、以前は、比較的、近所に住んでいたために、たまに家に行ったり、犬の散歩を頼まれたりと時々、連絡をとってはいたのですが、彼女も断捨離をして、少しコンパクトなアパートに買い替えて引っ越してしまって以来、あまり連絡をとらなくなっていたのです。

 彼の方には、以前、日本に行く際に、「何かあったら電話して!」と、以前、私が日本の実家の電話番号を渡していたことがあったらしく、それを大事に持っていたのか?彼女は彼に頼まれて、日本の実家にまで電話してくれたそうで、それも繋がらなかったと大変、心配してくれていたようなのです。

 実のところ、私は、昨年から家の固定電話はもう必要なしと思って、繋いでおらず、もう必要な連絡はすべて携帯の方に連絡が入るし、家の固定電話の方には、ほぼ 99.9%がなにかの勧誘とか広告の電話ばかりで、もう鬱陶しいことこのうえないので、外してしまっていたのでした。

 頻繁に連絡を取る人は、携帯電話か、what's upか、messengerかLINEでの電話かメッセージで連絡をとっているので、私が家の電話を外していることさえも、とりたてて知らせることもしていなかったのです。

 ところが、そういえば、ジャンピエールは今から思えば、いつも電話をくれていたのは、家の固定電話の方だった気がするのですが、彼に電話を外してしまったことを伝えていなかったのです。(彼には携帯の番号も教えてあった気がしていたのですが・・)

 どちらにしても、第三者まで挟んで、私が行方不明になったと日本にまで電話をするほどの大騒ぎになっているとは、思いもしないことでした。

 実は日本の実家の方も現在は娘が一人で暮らしているのですが、インターネットの契約の際に家の固定電話とネットの関連がややこしく、娘も家の固定電話は必要ないと言って、切ってしまったのでした。

 そもそも固定電話とか携帯とかにかかわらず、電話というものがあまり好きではない私、滅多に電話というものをすることはないのです。

 私は携帯電話ですら、かなり持ちたくなくて、けっこう長いこと持たずに抵抗し続けてもいたのですが、もはや携帯電話は電話というよりも他の機能があるために持っているようなもので、一体、今、どのくらいの人が家の固定電話を持ち続けているのかなぁ?と思います。

 とはいえ、家の電話を外してしまったことが、こんなに大騒ぎになってしまうとは、申し訳なかったと少々、反省もしておりますが、されど、もともと友達も多くはなく、これで、今度こそ家の電話は必要なくなった・・とも思うのでした。


行方不明騒ぎ 家の固定電話


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2023年3月19日日曜日

3夜連続デモ デモと暴動の境界線

  


 あくまで個人的見解ですが、政府の提案している「年金改革」は残念ながら必要なことで、間違ったことを言っているのではないと思っています。

 フランスは日本ほどの少子高齢化ではないにせよ、フランス人は意外にも、長寿国であり、平均寿命も82歳を超えており、寿命は依然よりも長くなっているわけで、単純に考えても年金受給年月が長くなっているわけで、単純に考えても、それだけでも年金制度を圧迫していることは明白で、長生きするようになった分だけ、余計に働かなければならなくなるのは、当然のことなのです。

 しかし、正しいことでも、やり方を間違えると、それが通らなくなってしまうのだと、まざまざと見せつけられているような気がします。

 そもそも今期のマクロン政権は与党の議席数が議決権に達しておらず、そこが災いの始まりでした。そうでなければ、49条3項(採決せずに法案を通す)を使う必要もなく、議会で正当な採決を行い決定されていたことなので、ここまで国民を怒らせる結果にはならなかったはずです。

 しかし、元をただせば、与党の議席数が達していない時点で、マクロン政権には暗雲がかかり始めていたのです。

 現在は、もはや年金改革問題以上に「49条3項」の強制執行に対する抗議の声が高くなり、昨日行われた世論調査によると80%以上の国民が「49.3」の執行に反対しているとのことで、さすがにこれは法律にのっとったこととはいえ、この国民の声を無視するのには、無理があります。

 パリでは3日連続のデモが大荒れに荒れており、パリ警察は2日間デモの集合場所に使用されていたコンコルド広場でのデモを禁止したため、今度はパリ13区の「PLACE D'ITALIE(プラス イタリー)」を中心に4,000人以上が集結し、ゴミ収集業者のストライキのために山積みになっているゴミ箱をはじめとして、自転車、車、廃材などに火がつけられ、トラムの走っている道路を封鎖するために道路を遮断するようにゴミ箱を並べて燃やすという悪質なものに発展しています。


 また、デモ隊はシャトレ・レアールの駅の駅ビル内までに突入し、駅ビル内で噴煙があがる騒ぎにもなってしまったようです。

 あちこちに炎が立ち上り、火花が飛び散り、催涙ガスが立ち込め、放水車が出動し、相当数の警察官と憲兵隊が出動する中、大声をあげて行進しつづけるデモ隊とを見て、私は「暴動」という言葉を忘れていたけど、もしかして、これって「暴動」なの?とちょっと、自分でも動揺を感じました。

 公共交通機関のストライキも続いてはいるものの、このデモの異常な数の動員のため、普段は、自動運転のためにまず、ストライキで運転が止まることのないメトロ1号線なども、警察の命令により、8か所の駅が閉鎖されるという異常事態が起こっています。

 ここまでくると、これが一体、何日続くのかはわかりませんが、全国の組合が組織する大々的なデモ・ストライキは23日(木)に予定されており、この日のストライキやデモの規模が相当なものになるのは不可避であるような雲行きです。

 フランスでは、「デモの権利」は非常に重く尊重されているものの、あくまでも、デモを行うためには、その地域の許可を申請してのうえでのことなのですが、もうその許可なしのデモを止めきれないギリギリの状態で、デモと暴動の境界線はどこにあるのだろう?と考えてしまうくらいです。

 しかし、一方では、与党がガッチリ議決権を握っている日本では、やけにすんなり重要なことがどんどん決定されていく様子にも、フランスのこの暴動とは別の意味で底知れない不気味さや不安を感じているのです。


年金改革デモ 暴動


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