いつまでも、年金改革問題抗議デモ・ストライキが一向におさまらないフランスでは、数日まえから、今週末からの英チャールズ国王のフランス公式訪問はどうなるのだろうか?と少しずつ話題になり始めていました。
23日(木)は、以前からCGT(全国組合連合)が再び(非公式デモが何日も続いているために公式デモが何度目だったかわからない)予告されていた日でもあり、ここ1週間以上、日々、暴動のようになっているデモを大きく上回る大変な動員数になりました。
また、それに紛れて、ブラックブロックと呼ばれる破壊行動を起こすグループやデモがエスカレートして、暴れ出す人がもうどこにでも登場するようになり、山積みにされたゴミの山への放火もダイナミックになり、また、それだけでは飽き足らずに、キオスクに火がつけられたり、ショーウィンドーが割られたり、スプレーで落書きをされたりと、カオス状態になりました。
山積みにされたゴミにネズミがたかる・・など、衛生状態が問題視されてもいましたが、これではネズミもびっくりです。
翌日は、焼けただれたゴミなどは、ざっと片付けられてはいるものの、まだゴミは散らかり、焼かれたアパートの扉やキオスクには立ち入り禁止のテープが貼られていましたが、こんな汚いパリは見たことない・・感じでした。
パリの中にも、日常から、「えっ?ここ、パリなの?」と思うような地域もあるにはあるのですが、この汚い状態がパリの中心地のまさにパリらしい華麗なイメージの場所でのことなので、歩いていても胸が痛む気がしました。
いくらなんでも、これはやりすぎで、一般市民の住居であるアパートや商店やキオスクなどが攻撃対象になるのは、酷すぎる話です。
とにかく、パリ(フランス)は、今、こんな状態で、怒り狂っている暴徒や、同じように政府に対しては怒りつつも、暴力行為に動揺、困惑している国民にとっては、チャールズ国王どころの話ではないのが正直なところだと思います。
23日の夜にボルドー市庁舎の大扉が勢いよく燃やされている時に、チャールズ国王のフランス公式訪問については、あまり詳細な日程は公開されていない中、ベルサイユ宮殿での晩餐会とともに、訪問先になっていたボルドーは、市長が半泣き状態で、来週初めのチャールズ国王ボルドー訪問について、「我々は時間をかけて万全の警備体制を準備してきているので、国王をお迎えすることに問題はないです」と語っていたのは、とても印象的でした。
また、内務相も、23日の夜の段階では、チャールズ国王のフランス公式訪問は問題はないと発表していました。
しかし、翌日になって、エリゼ宮から発表されたのは、「英チャールズ国王のフランス公式訪問は社会情勢を考慮して延期されました」というもので、その日の午前中にマクロン大統領とチャールズ国王が直接電話で話し合い、マクロン大統領の申し出により、延期されたとのことでした。
もっとも決定的であったのは、チャールズ国王がフランス滞在を予定していた3月26日~29日にぶつけるように、次回のCGTが動員するデモ・ストライキがその期間中の28日に設定されたことにあります。
ここ1週間ほどのパリ(フランス)の荒れ様を見ていると、デモや暴動は予定された以外の日に起こらない保証はどこにもなく、何よりもブレグジット後にイギリスとフランスの友好的な外交の象徴として計画されていた今回の英チャールズ国王の訪問は、祝福ムードの中で迎えられるべきであるもので、現在のフランスには、祝福モードのかけらもありません。
また、現在のフランスはデモやストライキ・暴動から日常生活を守るための警備だけでも大変な数の警察官や憲兵隊が動員されており(毎晩最低でも2000人といわれている)、とても、ヴェルサイユで予定されていた夕食会だけでも、ヘリコプター、地雷除去員、800 人の警官が現場に配置される予定であったために、デモと国王の両方の警備はかなり厳しい状態であったに違いありません。
これは、ともかくも全てフランス側の問題でのキャンセル・・しかも、イギリス国王の予定をキャンセル(延期)するのですから、イギリスのフランスに対するイメージに深刻な打撃を与えるものであり、なんとバッシングを受けても仕方ないことで、何よりもマクロン大統領にとっては大変に屈辱的なことに違いありません。
反マクロン派の政治家たちは、ここぞとばかりに「フランスの恥!」と声をあげています。
しかし、英王室の話題が大好きなフランス人は、エリザベス女王のご逝去の際などには、昼夜をあけずに、まるで自分の国の女王様が亡くなったかのごとく大騒ぎしていたものの、チャールズ国王が就任して以来、どうにも熱が冷めてしまった感じもします。
正直、エリザベス女王ほどには人気がないチャールズ国王のフランス訪問は、この時期ではさらに微妙な感じになってしまう可能性も大でした。
ついに、国内だけでなく、外交問題にまでも影響が及び始めたフランスの年金改革問題ですが、この英チャールズ国王のフランス公式訪問キャンセルをCGT側はデモの勝利の一つとして掲げようとしており、また、このフランスの恥をさらす事態は反マクロンの声をさらに大きくしつつあります。
英チャールズ国王フランス公式訪問延期
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