2020年10月19日月曜日

フランス全土で行われた先週末に殺された教師の追悼デモ

                                                                                                                                

          Image


 サミュエル・パティは、今やフランスで最も有名な教師になりました。

 この週末は、パリ、マルセイユ、ボルドー、リール、リヨンなどの多くの都市で、金曜日の夕方に路上で首を掻き切られるという衝撃的な殺され方をした教師サミュエル・パティの追悼デモが行われました。このデモは、フランス全土で数万人規模のデモになり、その衝撃の大きさを物語っています。

 彼が行った表現の自由についての講義が物議を醸し、結果、テロリストの標的になったことから、全国から、多くの教師や教師を志している人々が参加し、追悼デモということもありますが、いつものデモとは、少々異なるものでした。

 コロナウィルス感染の第二波を迎えているフランスで、また・・デモ・・と憂鬱な気分になりましたが、様子を見ると、暴れる人もおらず、何よりマスク率が高くて、行儀が良い・・さすがに教育者が多いデモなのだと変なところに感心しました。

 パリのリパブリック広場には、ジャン・カステックス首相、パリ・アン・イダルゴ市長なども参加し、テロに屈しないと声明を発表しました。

 表現の自由の講義を担当していたこの教師が殺されたのは、いくつかの誤解も重なっているようで、彼が惨殺された原因となったマホメットの風刺画を表現の自由の講義で使用した際に、イスラム教徒の生徒には、「ショックが大きいかもしれないので、退席してもよい」と言ったことが、「イスラム教徒は教室から出て行け!」と言ったとSNSで拡散されており、実際の犯人も実際の授業に参加していたわけではなく、この間違った情報により、この凶行に及んだと思われます。

 しかも、犯人は、標的であった教師を自分で確認することができず(それほどよく知らない相手だということ)、同校の学生に300ユーロを現金で支払い、ビデオを撮りたいから、彼が出てきたら、教えてほしいと頼んでいます。

 教えた生徒も、知らなかったとはいえ、まさか、このような殺人事件の片棒を担いでしまったことにさぞかし後味の悪い思いをしていることでしょう。 

 それにしても、反抗したり、話し合ったりするわけでもなく、いきなり首を掻き切られるのですから、恐ろしいことです。

 このデモには、イスラム教徒も参加しており、これはイスラム教がやらせた凶行ではない、これはテロリストの犯行だ!と訴えているグループもありました。

 私の周りにも、娘の元同級生で、敬虔なイスラム教徒のママ友家族がいますが、パパ、ママともにお医者さんで、至極、真っ当で、本当に親切で勤勉な優しい家族です。あの人たちがこれらのテロリストと同じに見られることには、とても納得がいきません。

 確かに過激派とされるイスラム教徒がいるのは確かですが、イスラム教全体をアンチとすることには、注意しなければなりません。

 宗教の話題は、なかなかセンシティブで、誰とでも気軽に宗教の話ができるわけではありませんが、表現の自由を教えるならば、違う宗教、違う意見の人それぞれを認め、話し合うことができるということを教えて欲しいと思うのです。

 フランス人は、一般的に数人が集まって話していても、それぞれが自分の言いたいことを言って、話全体としては、収集がつかなくなっていることが多いのですが、それは、それで良いのです。それぞれが自分の言いたいことを言って、スッキリ、討論になっても根に持つことはあまりありません。

 そんな一般的なフランス人の討論会のようなことにはならずに、意見をぶつけあうこともなく、いきなり凶行に及ぶのがテロだと思うのですが、やはり、彼らの社会的な居心地の悪さが鬱屈した結果なのではないかと思うのです。

 犯人の18歳の青年は、射殺されてしまいましたが、関係者と見られる周囲の人11人が拘留されています。実際に亡くなった犯人よりも周囲の人の方が危険人物としてマークされていた人が多かったようで、周囲に洗脳されて犯行に及んだのか?煽られて犯行に及んだのか? どちらにしても、一人の犯行ではなさそうで、さらなる追求が待たれます。

 この手の事件に関しては、事件そのものは大々的に報道されるのですが、その後に発覚したであろう犯行の背景にあるものなどを報道してくれないので、すぐに事件も忘れられていきます。本当は、そこのところまで、しっかり報道して世間に疑問を投げかける・・そんな風に報道してほしいものです。


<関連>

「閑静な住宅街で起きた路上で首を掻き切られる陰惨なテロ事件発生 18歳のテロリスト」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/10/18.html  


 





2020年10月18日日曜日

もうカーフールで魚は買わない

    


 我が家の近くにはマルシェがないので、食料品の買い物は、ほぼカーフールで済ませています。

 フランス人は、圧倒的に肉食で、スーパーマーケットで買える魚は一年を通して、ほぼ季節感のない、いつもいつも同じ魚ばかり、サーモン、スズキ、舌平目、鯛、アンコウ、イワシ、マグロ、見事にオレンジ色に茹で上がったエビ、プラスチックのような肉厚のイカなどなど、結構な値段がするにも関わらず、そのクォリティには、今まで、ほとほと散々な目にあってきました。

 いつか、たまには、ちょっと贅沢に舌平目のムニエルでも・・と思って、高いな・・と思いつつも買ったのに、身はコチコチ、味は、なぜか牛タンの味というショッキングなことがありました。

 それ以来、カーフールでは、滅多に魚を買うことはなく、魚といえば、もっぱらPICARD(ピカール)の冷凍のサバを食べています。このPICARDのサバばかりは、本当にいつ買っても安定のクォリティで、間違いがないのです。

 それでも、日本人、魚好きの私としては、買い物に行けば、いじましく、一応、魚売り場を確認し、もしかしたら、美味しい魚があるかもしれないと儚い希望を捨てきれないのです。

 昨日、いつも通り、魚売り場をのぞいてみると、なんと、珍しいことにアジを売っていたのです。なぜか、フランスでは、アジという魚が売っていることは、稀で、しばらくアジの目の前であれこれと考え、パックになっているものだと量が多すぎるので、売り場で直接おじさんに頼んで、アジを2匹だけ買ったのです。

 「え??2匹??って言った?」と聞き返されましたが、「ハイ、2匹だけ・・生で食べても大丈夫?」と確認して、一匹は、アジのタタキに、もう一匹は、焼いて食べようと、いそいそと家に帰って来ました。

 さっそく、買ってきたアジの一匹を開き、皮を剥ぎ、細かく刻んで、生姜をすり、ネギと紫蘇の葉を刻んで、アジのタタキを作りました。カーフールで買ったとは思えないほど、身はプリプリしていて、まことに美味しいアジでした。

 思わず、2匹しか買わな買ったことを悔いて、追加に買いに走ろうと思ったくらいでした。

 しかし、その日は、アパートの排気口の点検の人が来ることになっていたので、外出はできずに思い留まったていたのです。こんなに美味しいならば、アジの干物も作ろうかな?アジフライもいいな・・小ぶりのものなら、南蛮漬けもいいなと、アジを使ったお料理をぐるぐると考え始めていたのです。

 しかし、とりあえず、あともう一匹あるのだし、欲張るのは止めようと、デザートを食べながら、最近、また一人暮らしを始めた娘に「ちょー美味しい!食べさせてあげられなくて、残念!」などと、アジのタタキの写真を送ったりしていたのです。

 ところが、食事が終わって3時間後くらいに、急にムカムカ、気持ちが悪くなってきて、ちょっと吐いたら、楽になるかな?と思って一度、吐いたのを機に、もうそれからは吐き気が止まらなくなり、トイレに駆け込むことになったのです。

 強烈な胃の痛みと、吐き気と下痢に、アブラ汗が止まらず、もはやトイレに座っているのも辛い状態になりました。身体を支えるために、トイレにスーツケースを引っ張り込んで、バケツ片手にぐったり身体をスーツケースにうつ伏せて、ひたすら耐え続けたのです。

 これまで何かを食べて食あたりしたりしたことはまるでない私です。いつもと違うもので、食べたといえば、間違いなくアジ・・あんなに美味しかったアジを今では、恨めしく、もう二度とカーフールでお魚を買うものか!!と思いながら、なんとか、ベッドに這っていける状態になって、ひたすら、水を飲みながら、ベッドに横たわりました。

 もはや、ipadでYouTubeを見たりする元気もなく、あぶら汗をかいていたと思ったら、今度は、強烈な寒気に襲われ、手足が冷たくなってくるのを震えながら、いつの間にか眠ってしまったのでした。

 夜中に目を覚ますと、少し、症状はおさまっていましたが、さすがに何かを食べる勇気はなく、また、ひたすら水を飲んで、今日はもうダメだ・・寝よう!と思いましたが、こんなに昼間に寝てしまって、また眠れるか?と心配でしたが、身体はぐったりしていて、横になると、たちまち、グッスリ眠りました。

 こんな状態では、一人で医者に出かけることもできない・・ひたすら、おさまるのを祈るように待ち、翌日、冷蔵庫に残っていたもう一匹のアジを再び、顔を見るのも怖いくらいで、そのまま捨てました。

 食あたりのあまりに暴力的な痛みと恐ろしさに今後、二度とカーフールで魚を買うものか!!と私は、固く心に誓ったのでした。


<関連>

「やっぱりフランス人は、肉食だなと思わされるパリのスーパーの魚売場」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/01/blog-post_74.html

2020年10月17日土曜日

閑静な住宅街で起きた路上で首を掻き切られる陰惨なテロ事件発生 18歳のテロリスト


         Neuf personnes interpellées dans le cadre de l'enquête sur l'assassinat d'un professeur d'histoire vendredi à Conflans-Sainte-Honorine dans les Yvelines.


 閑静な住宅街で突如起こった陰惨な事件にフランスは、震撼としました。金曜日の午後5時頃、パリ近郊のイブリンにあるコンフラン-サンテ-ホノリンで中学校の歴史の教師が路上で首を掻き切られて殺されたのです。

 犯人は犯行に使った長さ数十センチのナイフを手に、通りすがりの通行人を人質にとり、逃げようとしていたところを数分後、ヴァルドワーズの隣の町エラニーで警官に射殺されました。

 殺された教師は、表現の自由に関する講義を行っており、授業中にモハメッドの風刺画などを引用したことから、その講義がイスラム教徒の生徒やその家族などの間で、物議を醸しており、その様子などがSNSで取り上げられていたようです。

 授業には、イスラム教徒には、特に出席を促されており、かなり挑発的であったことも確認されています。だからと言って、殺す理由には、なりませんが・・。

 この授業に関しては、教育顧問(CPE)と校長との話し合いの時間が持たれたりしましたが、今週初めに喧騒は落ち着いたように見られていました。 

 犯人の18歳の青年は、その教師の講義を直接に受けていたではなく、さっそく、彼がこの凶行に及んだ経緯の捜査が始まり、関係したと見られる9名(犯人の家族が中心)が拘留されました。

 この青年は、警察も全くノーマークだった人物で、新たな背景が調査されています。

 政府はこの事件をテロと認定し、当日、ベルギーに出かけていたマクロン大統領もその日の夜のうちに現場に駆けつけ、現場から非常に厳しい面持ちで、国民に向けて、「このようなテロ行為を放ってはおかない 国民の安全を守る」と宣言しました。

 フランスでは、今年に入ってからのテロ事件は5回目で、つい3週間前もパリ11区にあるシャルリー・エブド(風刺週刊紙)の元本社前で、休憩中であった数名がナイフで襲われ、うち2名が重傷を負うテロと思われる事件が起こり、パリ11区は俄かにロックダウン状態になりました。

 あの時も凶器はナイフで、被害者は、顔を切りつけられており、数時間のうちに逮捕されています。

 共通するのは、18歳という年齢と、前回の犯人もパキスタン出身だったり、アルジェリア出身だったりの移民で、今回の犯人もロシア出身のチェチェン国籍、彼ら個人だけの犯行とは考え難く、背後にいる人間の存在が認められることです。

 フランスでは、18歳は成人ではありますが、まだほんの大人の入り口に立っている若者、前回の犯人たちは、逮捕されていますが、今回の青年は、命を落としています。

 まだ、人生において、経験も少なく、未来があったはずの18歳の青年たちが、自分の人生を台無しにしてまで、人を傷つけ、命を奪うほどの怒りや恨みにかられて凶行に及んでしまう背景は何なのでしょう?

 今回の犯人は、射殺されてしまいましたが、彼がどのように育ち、何を考えていたのか?なぜ、このような凶行に及んだのかを知ることができないのは、とても残念です。

 18歳という年齢は、血気盛んな年齢ということもあるのかもしれませんが、ある意味、純粋に思い込む年齢と考えることもでき、また、移民ということで、その虐げられた生い立ちなどにも原因があるかもしれません。

 彼らは、加害者ではありますが、別の観点からすれば、被害者でもあるかもしれません。特に、イスラム教という宗教がらみだと、闇はなおさら深いのです。テロ行為が宗教のもとでは、正当化されるのも恐ろしい現実です。

 そして、しかも、実際に凶行に及ぶのが、まだ大人になりきっていない若者であることにやり切れなさを感じるのです。

 今回のテロは、到底、事件とは、無縁と思われている住宅街で起こったことがさらに衝撃を大きくしていますが、National Antiterrorist Prosecutor's Office(PNAT)は、「テロに関連する暗殺」と「刑事テロ協会」のために開設された調査を直ちに開始したと発表しました。

 しかし、この事件をテロと認定して抑えつけるだけでは、この種の事件は、永遠に続きます。彼らが犯行に及ぶ背景を詳しく知ること、そして、これを正しく報道することも何らかの解決の糸口になるのではないかと思っています。


<関連>

「シャルリー・エブド元本社前でのテロ事件でパリ11区、俄かロックダウン」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/09/11.html












2020年10月16日金曜日

フランスの新規感染者3万人超えの中の医療介護者のデモ

    Manifestation des personnels de santé, du social et du médico-social à Avignon ce jeudi 15 octobre pour demander des moyens et de meilleurs salaires


 とうとうフランスの1日の新規感染者数が3万人を超え、30621人を記録してしまいました。そんな中、この状況下に、最も深刻なデモが行われています。

 さすが、デモの国、フランス・・夜の外出禁止令が敷かれ、夜間ロックダウンの状態になるという時に、しかも、感染拡大を一番、身近に感じている医療介護者によるデモが起こり始めています。しかし、さすがに全員がマスクをしています。

 フランスでは、デモは日常茶飯事で、中には、理解できないデモも少なくありませんが、この医療介護者の訴えは、気持ちは十分に理解できます。

 3月のロックダウン時から、非常事態を迎えているフランスの医療機関で働く人々は、まさに命がけで働き続け、慢性的な人出不足、医療物資不足、低待遇に身体的にも精神的にも疲労や不満がマックス状態に達しています。

 そして、今、コロナウィルス感染の第2波を迎え、再び、医療崩壊が心配されるような状況で、黙っていられないのも当然です。

 コロナ以前から、問題になっていた病院の労働環境や労働条件の悪さは、コロナウィルス感染拡大によって、さらに深刻化し、介護者の57%が燃え尽き症候群、40%が転職を希望していると報告されています。

 人手不足や医療物資不足は、犠牲者も出しながら、さらに感染しても症状のない人は働き続けなければならない悲惨な状況を生んでいるのです。

 フランスの介護者の賃金は、ヨーロッパの中でも、数ある国々の中でも平均以下、介護者の賃金の低さは悪名高く、物価との対比を考えても、納得がいかないのも当然です。

 しかも、労働条件のキツさやリスクを考えれば、リスクが少なく、割のいい仕事に転職したいと思うのもわかります。それなりの志を持って勉強し、介護士という仕事を選択し、経験を積みながら、働いてきた人々が離職しようとしているのは、とても残念なことです。

 実際に離職してしまった人も少なくありません。

 政府は、医療介護士の訴えに対し、昇給のために82億ユーロを割り当て、15,000人の追加雇用を提示していますが、これでも到底、ヨーロッパの平均賃金には及ばず、また多くの人が離職したい職に新たにこれだけの人がこの仕事に着くことは、考えにくい状況です。

 また、政府は、病床は、まだまだ増やす余裕があると言っていますが、実際に、慢性的な人手不足のために現在すでにある病床も常に5%は使用できていない状況だと言われています。どうにも、政府の見解と現実には、隔たりがあるようです。

 現在のところは、それでもまだデモだけで?済んでいますが、これがさらにエスカレートして、ストライキ・・なんていうことも、フランスではあり得ない話ではありません。

 フランスは、デモだけでなく、ストライキの国でもあるのです。

 コロナウィルス感染の第2波をまっしぐらに突き進んでいるフランスで、ただでさえ医療崩壊か?というところに、医療介護者のストライキ・・なんてことになったら、目も当てられません。


<関連>

「ストライキ大国・フランス」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/10/blog-post_46.html


 

2020年10月15日木曜日

パリ、イル・ド・フランスをはじめとするフランス8都市での夜21時以降の外出禁止

                      

          Emmanuel Macron lors de son interview télévisée, dimanche 15 octobre sur TF1.


 フランスのコロナウィルス感染が爆発的に拡大していることを受け、さらに厳しい制限を敷かなければならないと発表していたマクロン大統領が、水曜日の夜に記者会見を行うというので、一体、どんな制限が敷かれるのだろうか?と、ここ数日、フランスのマスコミは、ああでもないこうでもないと大騒ぎでした。

 結果から言えば、感染状況の最も深刻な状況のパリ・イル・ド・フランスをはじめとするグルノーブル、リール、リヨン、エクサンプロバンス・マルセイユ、モンペリエ、ルーアン、サンテティエンヌ、トゥールーズなどの8都市での夜21時以降の外出禁止が発表されました。

 この措置は、10月17日(土)午前0時から最低でも4週間施行されます。

 つまり、夜間のみのロックダウンです。これに違反した場合は、135ユーロ(約1万7千円)の罰金が課せられます。(2回目200ユーロ・約2万5千円、4回目以降は3750ユーロ・約47万円及び6ヶ月以下の禁固刑)

 この取り締まりには、1万2千人の警察官が動員されます。

 可能な限り、経済を止めず、多くの人が仕事を続け、学生生活を送る社会生活を続けるために取れる措置には、選択肢がたくさんあるわけではありません。

 夜9時からの外出禁止となれば、レストランの夜の営業は、絶望的、(フランス人の夕食の時間は、20時あたりが普通で夕食の時間は遅いのです)、その他、映画館、劇場なども夜の営業ができなくなります。

 フランス人の食事は、(特に夕食、特に外食の場合は、)さっと食べるだけ食べて帰るというものではないのです。

 この夜間外出禁止によって、打撃を受けるレストラン等の損失に関しては、政府が保証することも同時に発表しています。

 しかし、このマクロン大統領の会見は、どうにもスッキリしないもので、現在のコロナウィルス感染の第2波は、ヨーロッパ全体で起こっているものだとし、その中でも特にフランスの状態が悪いことにも言及しないばかりか、「ドイツなどもさらなる厳しい制限を取っている」などと説明し、これでは、他の子を引き合いにして言い訳をする子供のような言いようで、しかも、感染状態が悪化しているとはいえ、フランスよりは、圧倒的にマシな状況のドイツのような国を引き合いに出す意味がわかりません。

 しかも、驚くことに、「週末から始まるトゥーサンのバカンスでの地域間の移動は禁止はしないので、節度を持って行動してほしい・・」「学生に対する特別な指導はしない、ただでさえ、困難な状況が続いているのに、これ以上、厳しいことは酷だ・・」と無駄に物分かりがいい発言。

 行動制限をしなければ、バカンス中は、パリを脱出して、夜間外出ができる地域に移動する人たちが絶対に現れ、また別の地域で感染を拡大させるのです。フランス人に節度を持って行動してほしい・・などという呼びかけは通用しません。

 コロナウィルス対策に対して、政府がコントロール不能の状態になっているのでは?というジャーナリストからの質問にも、妙にきっぱり、「我々は、コントロールを失ってはいない」と断言しています。

 コントロールできなかったから、今の状態になっているのではないのでしょうか? 国民が節度を持って行動できないから、制限をしなければならないのではないのでしょうか? 現実をハッキリとは認めずに夜間のみのロックダウンを行う、なんともスッキリしない会見です。

 コロナウィルス感染が長引き、少なくとも来年まで持ち越しそうなことから、コロナウィルスと共に生活しなければならないと強調し、テレワークもできる限りとは言わず、週に2〜3回、家族や友人の集まりも6人までなどと言っていますが、特に現在は、一日の感染者が2万人〜3万人近い状態、ウィルスと共に生きるなどと言っている時期は過ぎています。

 夜間の外出禁止をすることで、一時的に、感染は減るとは思いますが、今、フランスで最も肝心なのは、検査と隔離の問題です。

 政府は、検査をしてから検査結果が出るまでの2日間の期間を問題にしているようですが、これに対して、数分で結果が出る検査が使われるようになるとし、問題が解決されたように話していますが、実際には、検査結果が出た後、陽性であることがわかった人に対しての隔離ができておらず、パリ在住の日本人で、検査の結果、陽性と診断された人が、検査機関の人から、「マスクをすれば外出していい」と言われて、逆に困惑した・・という話も聞いています。

 陽性患者が出歩いているのでは、なんのための検査かわかりません。

 一先ず、この夜間の外出禁止措置を最低でも4週間、もしくは6週間を行い、感染状況が改善されれば、元に戻すとしていますが、このままでは、この外出禁止と解除を繰り返すのみです。

 今回のマクロン大統領の会見は、夜間のロックダウンという厳しめの発表をしたにも関わらず、フランスの現状を明確に認めず、負けず嫌いでプライドばかりが高い、いかにもフランス人なところ、しかし実のところは、あまあまなところが全面に表れている先行き不透明な印象が残る会見でした。

 

<関連>

「フランス人のプライド」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/08/blog-post_6.html

 


2020年10月14日水曜日

無料で受けられるフランスのインフルエンザのワクチン

  


 数日前に、セキュリテ・ソーシャル(Sécurité Sociale・国民健康保険)から、インフルエンザのワクチンへのご招待の通知が届きました。これは、いつ頃からだったか? 毎年、送られてくる「インフルエンザのワクチンを受けましょう」という案内です。

 フランスでは、この案内状を薬局に持っていけば、無料でインフルエンザのワクチンを受けることができます。

 毎年、フランスでは、200万から600万人がインフルエンザウィルスの影響を受けており、特に肺炎を発症したり、既存の慢性疾患が悪化する可能性の高い虚弱体質の人々は、インフルエンザは深刻な病状に陥るケースが多いのです。

 昨年のインフルエンザのシーズン中に、フランス公衆衛生局が重症インフルエンザの症例の統計をとったところ、集中治療を受けた人の4分の3がリスク要因(年齢、慢性疾患、妊婦、肥満)に当てはまる人であり、そのうちワクチンを受けていたのは、3分の1未満でした。

 ワクチンが推奨され、優先されるのは、65歳以上の人、慢性的な疾患(呼吸不全、心不全、糖尿病、腎不全、喘息、閉塞性肺疾患など)を持つ人(大人と子供)、肥満の人、妊娠中の女性、6か月未満の乳児および免疫力の低い人々の側近としています。

 今年は、コロナウィルスの感染状況が悪化していることもあり、昨日、インフルエンザのワクチンのサービスが始まるとともに、薬局には、ワクチン希望者が例年より多く、殺到し、薬局では、ワクチンの再注文に追われています。

 私のところにも、この案内状は、毎年、欠かさず送られてきていますが、私は、これまでワクチンを受けたことはありませんでした。

 私は、以前、アフリカに行く前に、アフリカに行くために義務化されていた黄熱病のワクチンを打った際に、死ぬほど怠く、辛い思いをしたために、それ以来、ワクチンというものが恐ろしくて、ずっと避けて通ってきたのです。

 あのいいようもない、身の置き場のないだるさは、忘れられません。

 しかし、今年は、一応、私には、心疾患もあり、さすがにちょっと打っておいた方が良いかもしれないと迷っています。

 さすがに黄熱病のワクチンとインフルエンザのワクチンとでは、違うとは思いつつ、私にとっては、ちょっとしたトラウマです。

 現在のパリでは、集中治療室の40%以上がコロナウィルス患者で占められている状況、この上、インフルエンザにかかって、重症化した場合にインフルエンザ用の病床が残っている保証はありません。

 今年は、感染に気をつけた生活を送っているために、いつも以上にインフルエンザも回避できている可能性も大きいのですが、万が一、かかってしまった場合のことを考えると、ワクチンを打っておいた方がいいのかも・・とも思っています。

 政府もこのインフルエンザの季節を迎えるにあたって、コロナウィルスの患者に加えて、インフルエンザの患者が医療崩壊を起こすことを恐れ、ワクチンも例年の20%増の生産体制を敷いていますが、早くも生産が間に合わない状態が起こっています。

 今年ばかりは、10人に4人が希望していると言われているインフルエンザのワクチン、コロナウィルスの恐怖がインフルエンザへの恐怖をも煽っています。

 我関せずで、相変わらず感染対策をリスペクトせずにいる人々も多数いるフランスには、同時に、コロナ禍の中、両方のウィルスを恐れて、インフルエンザのワクチンに群がる人もいることに、なんともわりきれない、もどかしい思いがするのです。


<関連>

「絶対に入院したくないフランスの病院」 

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/12/blog-post_53.html



2020年10月13日火曜日

フランス人は、マスクさえしていればいいと思っている・・フランスで感染が拡大する理由



 

 ここ1ヶ月ほどで、コロナウィルスが急激に感染拡大しているフランス、もはや、一部では、コロナウィルスの話題は、流行遅れ・・とでも言いたげな風潮もあります。「いつまで、コロナウィルスのニュースを一喜一憂して見ているのか?・・」「まあ、頑張ってみてれば・・」みたいな感じです。

 新規感染者が1万人〜2万人といっても、もはや、その数字に慣れてしまったのか? まるで、その驚異的な数字がほとんど彼らには、響いていないことを街の人の様子に感じます。

 一体、どこからそんな、余裕が生まれるのか? 余裕と言うよりは、現実から目を逸らしたいのかもしれません。

 バーやジムが閉鎖されたとはいえ、マスク着用が義務化されているだけで、ほぼほぼ、普通の生活を送ることができていることから、緊張感がまるで感じられません。(マスク着用の取り締まりもほとんど見かけることはありません・・次々と他に起こる凶悪事件などで、警察もそれほど暇ではないのです)

 検査数も拡大され、検査の陽性率が11%を超えたとはいえ、その11%の人々には、症状のない人も多く、陽性者の隔離生活が徹底されておらず、「マスクさえしていれば、いいでしょ!」とばかりに検査で陽性になった人も普通に外出している例が少なくありません。

 これでは、何のための検査なのか?わけがわかりません。フランスで感染が拡大するのも当然です。マスクを嫌悪しているくせに、マスクさえしていれば、それで全てが解決するかのような安直なご都合主義には、閉口してしまいます。

 マスクさえしていれば、外出してよい・・と自分で判断して、そのとおりに行動してしまうところが怖いところですが、これには、フランス人の仕事に対する認識の仕方にも起因していると思われます。

 例えば、フランスでは、学校の先生の仕事は、学校で勉強を教えること、それ以外の私生活の指導などは、しません。学校を一歩出れば、あとは、生徒が何をしようと先生は知ったことではない・・と言うのが、フランス人の仕事に対する認識です。つまり、フランスには、金八先生は、いないのです。

 生徒にも掃除当番や給食当番なるものもなく、学校の掃除には、掃除の人がおり、学校のキャンティーンには、給仕の人がいるので、生徒が掃除をしたり、食事を配ったりすることもありません。

 それと同じように、検査機関の人は、検査をして、検査結果を通知しますが、その結果によって陽性となった人に対しても、その後の生活に関する特別な指導はしないのです。検査機関の仕事は、検査をして、結果を通知するまでなのです。

 陽性者の隔離生活を管理、指導するのであれば、それは、また別の人の仕事で、検査機関の関知することではないということです。検査後の陽性者の管理が今のフランスのコロナウィルス対策には、抜けているのです。

 普通の仕事をしていても、フランス人はよく、「それは私の仕事ではない」と言います。ですから、余計な仕事を抱え込むことはありません。

 せっかく検査をしているのに、これではザルで水をすくうような状態で、マスクさえしていればいいと、陽性になった人も街を出歩いているのです。

 現在、海外在住者の多くが、日本に一時帰国するのを断念しているのは、日本に入国後、公共交通機関を利用することもできず、その上、2週間の隔離生活を強いられることから、滞在予定プラス2週間の予定を取らなければならないことを考えると、二の足を踏んでしまうのです。

 たとえ、検査で陽性にならなくとも海外から入国した人は、外出できない日本と比べたら、陽性になっても大腕を振って普通に外出するフランスのコロナ対策は、ザルです。

 夏の間と比べるとコロナウィルスが活発に動き、一度付着したコロナウィルスが生存する期間も長くなっています。

 CSILO(Commonwealth Scientific and Industrial Research Organisation)の研究結果では、携帯電話に付着したコロナウィルスの生存期間が気温30℃の状態では、7日間だったのが、気温20℃に下がると、少なくとも28日間は生存し続けるという研究結果を発表しています。

 今朝、出かけたら、もう吐く息も白く、気温もどんどん下がっているフランスです。フランスの病院関係者は、10月末には、かなり深刻な状況になることを危惧しています。

 今週半ばには、新たな感染対策がマクロン大統領から発表されることになっているそうですが、この陽性者が自由に動ける状態をなんとかしなければ、それはザル対策に違いありません。


<関連>「フランス(ヨーロッパ)でコロナウィルスが広まる理由」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/03/blog-post_19.html