2023年7月11日火曜日

暴動後、パリ祭に向けて、いつにない警戒ぶり 花火の販売・輸送禁止

  


 暴動後、といってよいのか? もう完全におさまったのかはよくわからない今回の暴動は、おそらくフランスの今年の10大ニュースに入ると思われる大変な出来事でした。

 この暴動の火種がおさまったのかおさまらないのか、まだよくわからない現時点で、フランスは一年に一度のパリ祭・革命記念日の祭典を控え、いつも以上に警戒を強めています。

 そうでなくとも、例年、パリ祭の夜には、フランスの光と影の部分が同時に表れる日で、華々しいシャンゼリゼのパレードや花火などが打ち上げられる、その華やかな光景と同時に、一方では、必ず怒りをぶちまけて、車を燃やしたり、ふつうの花火とは違う攻撃的な花火(花火迫撃砲)などの応酬が起こったりするのは、珍しくはないことです。

 そんなパリ祭を数日後に控えたフランス政府は、この革命記念日までの個人への花火の販売、輸送、使用を禁止する法令を発令しました。

 また、ボルヌ首相は、「この花火禁止と同時に大規模なセキュリティ手段が配備される」と発表しています。

 今回の暴動に関しての後始末がまだまだつかないうちから、次の暴動対策をとらなければならない政府も気の毒といえば気の毒ではありますが、このフランスにとっての一大イベントの一つであるパリ祭が暴動の再燃になることだけは、なんとしても避けなければなりません。

 逆に言えば、今回の暴動で暴徒たちは、この暴動の起こし方、やり方の多くを学んだとも言えるわけで、ここで、彼らの行動を完全にブロックし、今もくすぶっている今後の暴動の火種を消し去り、また、今回の暴動で使われたツールが流通することを避けなければならないのです。

 また同時に、今回の暴動により車などを燃やされたりした個人に対しては、「被害者保証基金」を通じて補償される予定で、政府首脳はまた、若い暴力加害者の家族に制裁を加える可能性も検討、「既存の法的枠組みが十分でない場合は、必要に応じて法律を変える」と強気の姿勢を示しています。

 こうした暴動を起こした人に対する制裁・罰則の強化も、おそらくは、再発予防になると思います。

 そして、今回の暴動で使用されたツールの一つであったインターネット(SNS)に関しても、先日、マクロン大統領の「私たちは、おそらく、緊急時(暴動発生時)は、SNSを規制するか、遮断する立場にある」という発言から、よもやネット切断?と物議を醸したりもしましたが、実際のところは、完全にネットを遮断するというのは、現実的な話ではなく、「位置情報などの機能を停止する」、あるいは、「特定のプラットフォームの機能を停止する」ことを検討していると言われています。

 とりあえず、近々に、この暴徒たちを興奮させかねないパリ祭まで、あとわずか数日、検討しているというよりも、もうこのネットに関する件はある程度は水面下では決定しているものだと思います。

 しかし、暴動のツールとして使われているとすれば、仕方ないとは思いつつ、先日、暴動に巻き込まれて、コマーシャルセンター内に閉じ込められ、わけのわからない出口から避難するように追い出され、何の誘導もなしに次の駅まで歩かなければならなかった身からすると、その時、なんとか、知らない次の駅まで歩いて行けたのは、ネットの位置情報サービスのおかげであり、こんな時にこそ欲しいサービスでもあるのです。

 例年ならば、パリ祭を控えた今頃の時期は、パレードの予行演習の兵隊さん街を制服姿で歩いていたり、飛行機がパリの上空を隊列を組んで飛んでいく様子が見える、なんだかワクワクするような時期でもあるのですが、今年は警戒の話ばかりで、なんだか、パリ祭でさえも、これまでのようには、おこなえなくなっていることをとても残念に思うのです。


花火の販売・輸送禁止


<関連記事>

「手がつけられなくなっているフランスの暴動に巻き込まれて、しばし、お店に閉じ込められた・・」

「大惨事となっているフランスの暴動とSNSの関係」

「子育ての恐ろしさ やっぱり親の責任は大きい」

「度を越えている暴動と信じられないほどの穏やかさが共存しているフランス」

「2020年 フランス革命記念日・パリ祭の光と影」




2023年7月10日月曜日

夏休み・夏のバカンス短縮で不公平は是正できるか?

  


 日本で生まれて、日本で育った私にとって、海外で生活していれば、否応なしに感じるのは、文化の違いですが、その中でも「バカンス」に関しては、感覚が大きく違うものの一つでもあります。

 なんといっても、フランス人のバカンスは長い!

 私はフランスに来て、ちょうど1年後くらい、娘がちょうど1歳になるかならないかくらいの時に仕事を始めたので、フランスで学生生活を送ったことはありませんが、代わりに娘の長い夏休みやその他の時期のバカンス(学校のお休み)の多さには、つくづく辟易してきました。

 ヨーロッパの人は大胆に長期間のバカンスをとるということは、なんとなく知ってはいましたが、実際に体験してみると、なかなか大きな違いです。

 職種によっても違うかもしれませんが、普通に会社務めをしている場合、約1ヶ月間の有給休暇は仕事を始めて、1年後からとれるようになっていますし、当然の権利として考えています。

 日本の会社で長期間の有給はとりにくいとか・・有休を消化しきれないとかいうのは、フランス人にはそれこそ、逆に意味のわからないことだと思います。

 しかし、それ以上に学校のお休みは長いし、多いし、夏は2ヶ月強、その他、約1ヶ月おきくらいに2週間くらいのバカンス(トゥーサンやノエル、冬休み、イースターなど)があり、おまけに小学校までは、水・土・日が休みです。

 あまりにお休みが多いので、一度数えたことがありましたが、これらのお休みの合計は1年のうちの約3分の1に相当します。つまり、自分の有給休暇だけでは、なんとかできるはずもなく、子供の長い学校のバカンス期間(特に夏)をどう都合をつけるかは、大変な問題だったのです。

 夏休みの場合、多くのフランス人は、子供の長いバカンスの半分は、子供をパピーやマミー(おじいさん、おばあさん)のところに行かせて、半分は家族でバカンスへ・・という家庭が多い気がしていましたが、それができない我が家はもっぱら、コロニー(スポーツなどを体験させてくれる合宿のようなもの)のお世話になり、むしろ、コロニーをやっていない時期に私はバカンスをとるようにしていました。

 学校のお休みとコロニーとをパズルのように組み合わせて予約をして(また、この予約がかなり前から必要)埋めていく作業は、私の仕事の都合でバカンスをとれる時期が限られていたこともあって、母子家庭だった我が家にとっては常に頭の痛い問題でした。

 それが、最近、マクロン大統領が学生間の不平等を是正し、また日常のキツ過ぎる授業日程を緩和するために、授業を年間を通じて、より適切に分散するために、夏の学校のバカンス期間を短縮したいと言い始めました。バカンス期間が長いだけあって、日常の学校の授業は、小学校から16時半まで、エチュード(宿題や補修の時間(希望者のみ)も含めれば18時までと長いのです。

 特に送り迎えが小学校が終わるまでは必要なフランスで(高学年になれば、必須ではないものの、一応、多くの家庭では送り迎えをしている)、これは、共働きが多い親の都合に合わせてくれているのかとも思いますが、子供によっては、かなりキツい日程かもしれません。

 子育てが終わってしまった我が家にとっては、「遅いよ~今頃・・」という話なのですが、特にこの長期間のバカンス期間に旅行や文化、スポーツ活動をする財力に乏しい家庭の子供たちの不公平感を是正するという考え方には、少々、疑問を感じます。

 とにもかくにもバカンス期間が長すぎるという意味では異論はないのですが、バカンス期間を短縮することで、不公平感を是正できるというのは、あんまり納得できません。

 そもそも、それぞれの家庭、様々な事情があるのは当然のことで、そもそもは世の中は公平ではないものだし、公平というものは、なかなか測りきれるものでもありません。

 むしろ、何かあるたびに不公平だとか騒ぐ方が私には抵抗があります。バカンスが長いにしろ、短いにしろ、平等に与えられているのは時間で、その時間をそれなりにどのように有意義に子供に過ごさせるかは、必ずしも経済的なことに依存するばかりではありません。

 むしろ、フランスは援助の手を辿っていけば、現時点でも結構な援助が受けられるようになっています。

 結局は、全ての問題が格差社会の問題につながっているような気もするのですが、バカンス期間を短くしたとて、これが緩和されることはなく、もっと別の問題なような気がします。

 また、このバカンス短縮問題は、逆に言えば、長いバカンス期間を享受している教職員組合からは、ブーイングが必須であろうし(一般的に、教師は低賃金で、バカンスが長いということが取り柄と言われている)、観光関係者連盟(CAT)もバカンス期間が短縮されれば、それだけ、短い期間にバカンス客が集中することになり、価格の高騰を招きかねないとの見解を発表しています。

 これだけ多くの人が長期間にわたり、バカンスに出て、お金を使うフランスでは、観光産業は決して侮れない金額、200億ユーロが動く産業で、GDPの13%を占めていると言われています。

 これまで、過去の大統領、サルコジ政権、オランド政権などの時にもこの夏のバカンス短縮の声は上がっていましたが、結局のところ、現実化はしませんでした。

 短縮するどころか、「フランスはヨーロッパの中でも夏休みが最も少ない国の一つ」、アイルランド、ポルトガル、ラトビアなどは13週間休む・・など、ホントかウソかわかりませんが、そんなことを言いだす人までいます。

 どちらにしても、フランス人にとって、重要な位置を占めるバカンス問題、増やすならともかく、短縮となれば、そんなに簡単なことではありません。


夏休み 夏のバカンス短縮計画


<関連記事>

「フランス人の金銭感覚 フランス人は、何にお金を使うのか?」

「バカンスを何よりも優先するフランス人 フランスに Go Toキャンペーンはいらない」

「夏にバカンスで閉めるフランスのプールとラーメンを出さないラーメン屋」

「子供のために使うお金 フランスのコロニー(子供の合宿・サマーキャンプ)」

「おたくのお嬢さんが刺されそうになりました!?・・バカンス中のサマーキャンプでの話」




2023年7月9日日曜日

フランス国家安全保障名目でTikTok停止の危機 6ヶ月間の最後通告

  


 「フランスでTikTok廃止?」というニュースを聞いて、ようやくおさまりつつある今回の暴動劇にもTikTokが利用されていたせいなのか? それにしても、リアクションが早いな・・と思っていたら、この話は、もっと前から調査が続けられていたものでした。

 フランス上院調査委員会は、4ヶ月間にわたる調査と専門家、研究者、学者、政治指導者、TikTok側のフランスの代表らとの約30回の公聴会を経て、ソーシャルネットワークの利用と個人データの利用に関する報告書の結論を発表しました。

 この報告書によると、現在、フランスでのTikTokのユーザーは特に低年齢層に爆発的に浸透しており、11歳~13歳の45%がTikTokに登録していると言われています。SNSは大変、便利なツールであると同時に、多くの時間を人々から奪います。

 「なかでもTikTokは、非常に中毒性が高いアルゴリズムを有しており、ユーザー、主に子供や十代の若者たちを何時間も画面上に留めておく」と報告されています。

 また、中国で誕生したこのサービスは、中国当局との強力な連携の上に成り立つものであり、ユーザーに関する情報がアルゴリズムファイリングを通じて全て中国当局に収集されていることに対する懸念も報告されています。

 もう 1 つの非常に懸念すべき観察結果は、危険なコンテンツや過度に性的なコンテンツが強調されていることです。 TikTokのアルゴリズムは、ユーザーを時には危険なフィルターバブルに閉じ込めることにつながると調査委員会は警告しています。 

 デジタルヘイト対策センターによる2022年12月の調査によると、このアプリケーションは「弱い立場にある人々により危険なコンテンツを提供する傾向があり、標準的なプロフィールと比較して、メンタルヘルス問題に関心を示しているユーザーには12倍の自殺関連動画が提供される」と報告されています。

 個人的には、今の時代、携帯なしというものは、考えられないのも事実ではあり、全面的に否定するつもりはありませんが、特に低年齢の子供には、せめて時間制限があってよいと思っています。1日24時間をSNSにその大半を侵略されて過ごすのは、その年齢にしかできない体験が削られるということで、心身ともに不健康だと思うのです。

 このフランス上院調査委員会は、これまでTikTokに対して、年齢制限、時間制限、危険なコンテンツについて扱いなどについて、少なくとも21項目に関して、再三、要請を行ってきましたが、回答があったのは、その20%ほどで、残りの80%に対しては、なんら対策がとられていない状態ということで、今回は、6か月間の猶予期間を設け、2024年1月までに、これが改善されない場合は停止措置をとると発表しています。

 また、1500万人以上のフランス人が利用するサービスの停止の可能性は、欧州の新たな規制であるデジタルサービス法(DSA)に基づき、引き続き政府、さらには欧州委員会の主導で行われることになります。

 フランス政府の要請に対して、80%が無回答というのは、あまりに不透明で、反論するよりもたちが悪く、フランス側にしてみれば、今回の暴動などのツールとしても使用されていたことがわかっていることから、「弱い立場にある人々により危険なコンテンツを提供する傾向がある」などという調査結果が上がってきている、ということもあり、もう待ったなしの状態に来ているのかもしれません。

 SNSを利用しているつもりが、これに支配され、先導されかねない状況、そのうえ、情報までが吸い取られているとなれば、それこそ国家安全保障に関わる大問題です。

 これをTikTok側が海外の声をどこまで受け入れるか? 一部ではTikTokはファーウェイの二の舞になるのではないか?との声も上がり始めています。いずれにしても、ものすごい速さで浸透していくSNSの世界、野放しにしているわけにはいかない時が来ています。


TikTok フランス国家安全保障名目で停止の危機


<関連記事>

「大惨事となっているフランスの暴動とSNSの関係」

「手がつけられなくなっているフランスの暴動に巻き込まれて、しばし、お店に閉じ込められた・・」

「フェイスブック(Facebook)でマクロン大統領を「ゴミ」と呼んだ女性が逮捕・拘留」

「一日にして、フランス中のヒーローになったバックパックの男」

「度を越えている暴動と信じられないほどの穏やかさが共存しているフランス」



 


  

2023年7月8日土曜日

ノートルダム大聖堂の今 工事中でも、とにかく見せる姿勢

  


 パリのノートルダム大聖堂が炎に包まれたのは、2019年4月のことでした。考えてみれば、あれはまだ、パンデミックの前のことでしたが、突如、火に包まれて建物の尖塔と身廊、聖歌隊席、翼廊を覆う屋根全体が焼失する前代未聞の大火災でした。

 この大火災は、当時、ノートルダム大聖堂着工850周年のプロジェクトの一環として行われていた改修工事中のことで、その日は夕方、ノートルダムが火災!というニュースにテレビは生中継でその姿を映し出し、炎はすぐにおさまると思いきや、一向に火の勢いはおさまることはなく、ついには、尖塔部分が崩れ落ちる光景は、充分に衝撃的で、また、近隣の住民や信者さんたちが大聖堂から少し離れた裾野にひざまづいて祈る姿は、ノートルダム大聖堂の悲惨な姿とは対照的に、人々が真に祈る姿というものは美しいな・・などと不謹慎なことを思ったりしました。

 ノートルダム大聖堂はパリのというよりもフランスの歴史的な文化遺産の一つで、12世紀から13世紀にかけて造られた建築物で、世界遺産にも登録されており、世界中から寄付を募って、復興工事が始まりましたが、焼け残った部分の安全性を確認しながら、一部は、外したりしながらの修復工事のために、大変な時間と労力がかかっています。

 幸か不幸か、パンデミックのために、観光客は一時、ストップしたものの、工事自体もストップした期間があり、なかなか大変な道のりを歩んでいます。

 しかし、現在のパリはすっかり観光客も戻り、場所によってはものすごい人でもあり、パリの一大観光地であるノートルダム大聖堂も工事中でも観光客を迎え入れる準備が整いつつあり、現に、中には入れないにもかかわらず、大勢の観光客が訪れています。

 もう、かなり前からですが、工事中のノートルダム大聖堂には、囲いができており、もちろん中には入ることはできませんが、その囲いの壁面には工事の様子をパネルにしたものと説明書きがフランス語と英語で書かれています。そのパネルだけでも、けっこう別の意味で見応えのあるものでもあり、こんな状態でも「見せる」姿勢を崩すことはありません。







 つまり、現在は残された原形とともに、工事そのものを見せるように工夫がされています。また、これはわりと最近だと思いますが、大聖堂の正面には、大きな階段のようなものが設置されていて、そこには大勢の観光客が座って、工事中の大聖堂を眺められるようになっています。

 

 ノートルダム大聖堂の周囲を一周すると、裏側は、足場が組まれ、網がはられているため、全くの工事中で中はほとんど見えませんが、周囲には、こんなにあったのか?とおもわれるほどの、いわゆるお土産屋さん、観光客目当てのレストランなどは、全てオープンしています。




 中が一般公開されるのは、2024年の予定、できればパリオリンピックに間に合うようにということだったので、あと1年あまりですが、「間に合うんだろうか?」と思っていたところに、今回の暴動で、フランスには、他にも修復しなければならない場所が増えてしまいました。でも、考えようによっては、工事中のいつもとは違うノートルダム界隈の景色は、今しか見られない景色でもあり、また充分に鑑賞に堪えられるようにきれいにカッコよく整えられています。

 

ノートルダム大聖堂 パリ


<関連記事>

「岸田首相のパリ訪問 海外首脳として初めての工事中のノートルダム大聖堂訪問」

「一日にして、フランス中のヒーローになったバックパックの男」

「パリの老舗アイスクリーム屋さんといえば、ここ!サンルイ島 ベルティヨン Berthillon」

「パリ市内観光の新しい移動手段 トゥクトゥクには、ご注意ください」

「モンマルトルの丘 サクレクール寺院あたりのガラの悪さにげんなり」

2023年7月7日金曜日

フランスのガン患者 約30年で2倍に増加

  


 フランス公衆衛生局、国立がん研究所の調査によると、1990年から2023年の間にフランスにおけるガン症例数が2倍に増加した(男性は98%増、女性は104%増)と発表しています。

 2023年は、まだ約半年しか過ぎていないというのに、すでに43万人以上の人が新たにガンと診断されています。

 これは、フランスの人口動態の進化(人口の増加と高齢化)や、ライフスタイルに関連したリスクの増加が関連していると言われていますが、特に生活習慣、タバコ、アルコール、偏った食事、運動不足、紫外線なども、大きな原因だと見られています。

 男性に多いのは、前立腺ガン、肺ガン、結腸直腸ガン、女性では、乳ガン、結腸直腸ガン、肺ガンの順に続いています。

 ガンは男性の死亡原因の1位、女性の死亡原因の2位(1位は循環器系疾患)、ガンによる死亡年齢の平均は男性73歳、女性75歳です。

 一方では、早期発見と治療の技術の進歩により、死亡率は減少しているとのことで、前立腺ガンの5年生存率は、93%、乳ガンは88%まで上昇しています。(ただし、肺、肝臓、食道、すい臓のガンに関しては20%以下と言われています)

 行動やライフスタイルを変えることでガンのほぼ、半数を回避できるとする学者もいます。

 フランスはかなり、力を入れて、この早期発見、早期治療を促進しようとしているようで、ここ数年、私自身の個人的な印象によれば、年齢を重ねていることもあるのでしょうが、以前よりも、多くの種類のガン検診の通知を受け取るようになった気がします。

 しかし、一般的なフランス人のガン罹患のケースとは異なるかもしれませんが、これまで数少ない私の在仏の日本人の知り合いで亡くなった人々は、全てガンが原因だったのも事実で、彼らはそれほど、高齢でもなく、やはり、海外生活はストレスも多いからかなぁ?などと、漠然と思ったりしていました。

 その中でも、最も私の身近にいた人は、大腸ガンでしたが、最初のガンが発見された時には、彼女がミューチュエル(国民健康保険をカバーする保険)に入っていないという話を聞いて、「えっ??どうするの?」と病気そのものだけでなく、治療費の心配をしたのですが、幸か不幸か?フランスではガン治療は基本的には無料(というか国が負担してくれる)とのことで、びっくりした覚えがあります。

 しかし、手術をして、5年経つか経たないかのギリギリのタイミングで再発してしまい、それからの治療は、トラブルも重なり、本当に悲惨なもので、彼女自身も、手術後にどのような状態になるのかを具体的に把握していなかったこともあり、また、結果的にとことん、ガンと闘うという治療法を選択したために、最後の最後には、この状態でよく生きている・・とお医者さんに言われる状態でも、意識ははっきりしていて、最後にお見舞いに行った時も、(たまたま彼女のお誕生日だった・・)「気分が悪いのに、食事にステーキとかが出てくるのよ・・」などと話していたのを覚えています。

 彼女が亡くなったのは、それから1~2週間後のことでした。

 日本人に多いと言われる胃ガンが男女ともにトップ3に入っていなかったりするのも、食習慣の違いも体質の違いもあるのでしょうが、日本とて、4人に1人とか6人に1人はガンに罹ると言われている今、フランス人とて、例外ではないということなのかもしれません。

 しかし、まあ、ものすごく楽観的に考えれば、検査数が増えているのも、この数字が増加している理由かもしれないし、今まで発見されなかったガンが発見されるようになり、治る可能性が高まったということかもしれません。

 私など、検査というものがものすごく億劫で敬遠しがちなのですが、進行して手が付けられない状態になることを考えれば、せっかく無料でやってくれる検査・・ちゃんとやろうかな・・と思い始めています。


フランス ガン患者数30年で2倍に増加


<関連記事>

「海外生活中、もし、ガンにかかったら、あなたは日本に帰りますか?」

「イギリスのホスピスにいた、ある青年とお母さんの話」

「パリ一人暮らしの日本人女性の死」

「絶対に入院したくないフランスの病院」

「フランスでの婦人科検診 子宮頸がん検診」

2023年7月6日木曜日

暴動後、略奪品が転売サイトへ 流出  売る人はもちろん、買う人にも刑罰

  


 警察官の未成年射殺事件から1週間が過ぎて、ものすごい暴動で、一時は、どうなることかと思いましたが、どうにか、沈静化の兆しが見えてきて、マクロン大統領も「暴動のピークは過ぎたのではないか?」などと発言したものの、まだまだ、安心はできないという感じは残っていて、「そんなこと言って大丈夫かな?」とまだ心配な日が続いています。

 しかし、この全国規模に及んだ大規模な暴動による甚大な被害は、(破壊されたり、燃やされたり、略奪されたりした被害)は少なく見積もっても、2億ユーロ(約312億円)を超えるだろうと言われています。

 そんな中で、まあ、あり得るとは思っていたものの、さっそく、略奪された商品がLeboncoin(ルボンカン)や Vinted(ヴィンテッド)などの転売サイトに登場しはじめています。

 一見、やたらめったら、とにかく破壊しているようにも思えていましたが、彼らはしっかり、後に捌きやすい、儲かりそうなものを選んで略奪していたふしもあり、携帯電話、洋服、バッグ、スニーカー、アクセサリーなどなどは、さっそくこの手のサイトに登場しているのです。

 私も日頃から、これらのサイトは利用しているのですが(もっぱら、買ったまま、結局、使っていないバッグや洋服、子供の服や靴などなど、もっぱら断捨離したものを売る方ですが・・)、日々、便利に変化して、ちょっとしたお小遣い稼ぎになっています。

 これらのサイトの運営側は、盗品の販売には、常日頃から目を光らせているとしており、「不審はユーザーの行動が制限されるように構成されている」「日常の数倍も警戒を強めている」と回答しています。

 暴動後、明らかに目に見えて増えた全くの新品、未開封の商品、急いで雑な感じで同じ写真で、ろくな商品の説明もなく、同一人物からなど微塵も感じられることがないように、「明日はみなさんをルボンカンにご招待します!楽しみにしていてください!」などと、ツイートしていたり、「暴動のおかげで、半年間欲しかったバッグを破格の値段で手に入れました!」などというのもあったりで、暴動のおかげって? もう、この子たちは、どうなっちゃってるの?」と思ってしまいます。

 私はどちらかと言えば、ヴィンテッドを利用することの方が多いのですが、毎回の取り引きには、評価がつけられるようになっており、コメントも入るようになっていて、この取り引き相手がどの程度、信頼できる相手であるかの判断基準の一つになっています。

 ですから、この盗品転売のために新しくアカウントを作成した場合は、その評価が全くない状態であるはずなので、「これは!」というものを見つけても、それが盗品であったりする場合もあり得るかな?と警戒すると思うのですが、そもそも、「暴動のおかげで、欲しかったものが安く手に入った!」などといわれてみれば、ハナから、盗品を買うことに全く躊躇いがないということで、これに対しては、買い手側も盗品であることを受け入れて・・というよりも、むしろ喜んでいるため、よい評価をつけてしまうということなので、このサイトの評価の信頼性も低下することになりかねません。

 しかし、サイト運営側には、盗品を販売している疑いがある場合に通報する権限があり、 アカウントの停止やブロックも可能になっているし、事実上、プラットフォームはユーザーに対して不審なオブジェクトを報告します。

 これらのプラットフォームはこの問題を真剣に受け止めており、チームを結集しているとし、 盗品の可能性に関する情報を要求する際には「警察と緊密に連携」していると説明している。 盗品の売買(売った場合も買った場合も)には、5年の懲役と37万5,000ユーロの罰金が科せられる可能性があります。 

 ですから、しばらくの間は、これらのサイトでは、それが盗品であるかどうか、よく検討する必要があるということなのです。

 ただでさえ、ネット販売に顧客を奪われている商店は、破壊、略奪行為にあったうえ、奪われた商品が破格で出回ることで、さらに、営業妨害を被ることになっています。

 フランスでお店をやるのは、つくづくリスクが大きいと思ってしまいます。


盗品 転売サイト Vinted Leboncoin


<関連記事>

「フリマサイトVinted(ヴィンテッド)(フランス版メルカリ)でコカインの転売をしていた男逮捕」

「Kookaï(クーカイ)、Pimkie(ピンキー)相次ぐ中堅どころの衣料品ブランドの経営危機」

「フランス版メルカリ ヴィンテッド Vintedの急成長」

「メルカリとルボンカン(フランス版メルカリ)に見る、やたら礼儀正しい日本人とめんどくさいフランス人」

「ロックダウン解除後のフランス版メルカリサイトでの人気商品」








2023年7月5日水曜日

未成年を射殺した警察官の家族へのクラウドファンディングに150万ユーロ

  


 今回のフランスでの暴動の引き金を引いた結果となった検問拒否による警察官の未成年射殺事件の家族を支援するためのクラウドファンディングを募っているというので、私はてっきり、被害者の少年の家族へのクラウドファンディングだとばかり思っていました。

 しかし、それは、加害者となった警察官の家族を支援するクラウドファンディングで、しかも、7万5千人の寄付者を集め、しかも、それが150万ユーロにも達したというので、2度びっくりしました。

 たしかに、加害者となり、起訴された警察官の家族は、それこそ、事件以来、生きた心地がしないほどに苦しんでいるであろうし、その家族に罪はありませんが、一瞬、「えっ?そっち?」と思ってしまったことも事実です。

 また、150万ユーロという金額も、まったく普段、縁のない金額なので、まるで子供の金銭感覚と一緒で、漠然と「たくさんだな・・」と思うだけで、正直、あまりピンと来なかったのですが、日本円に換算すると、約2億3575万円にもなります。

 一方、亡くなった少年の遺族へのクラウドファンディングも存在していますが、こちらは、17万ユーロ(約2670万円)で、この金額とも比較されています。

 このクラウドファンディング(警察官の家族のための)を立ち上げたのは極右の立場をとる人物で、「任務を遂行し、高い代償を払った警察官の家族のために」と説明しています。

 その家族のために・・という意味ではわからないこともないとはいえ、コトはそんなに単純な話でもないようで、「これを支援することで、警察の連帯を示し、これだけの結果を得たということは、フランス人が警察を支持しているということである!」と警察の力を誇示し、イデオロギーの勝利のような意味の解釈に利用しているような気もします。

 このクラウドファンディングを立ち上げて以来、極右はそのアカウントを使って中継を行い、これだけの金額を集めることで、意図的殺人の罪で起訴されている警察官を「任務を遂行した(だけ)」と正当化している気がしてなりません。

 同時にこのクラウドファンディングに関しては、Twitter上で、論争が拡大しており、数万人が「#GofundmeComplice」というハッシュタグを使ってこのプラットフォームの閉鎖を呼び掛けています。

 当のプラットフォーム側は、この資金は直接、家族へと直接支払われるため、この取り組みは、利用条件に準拠していると回答していますが、同時に権力乱用とみなされる行為を扇動または助長するコンテンツを禁止するという規定もありますがこれには該当しないのでしょうか?

 しかし、被害者の家族や、被害者側の立場に立っている人々にとっては、加害者である警察官を擁護するような盛り上がりは許しがたいこと、一部の政治家たちからは、暴徒の怒りをさらに煽る行為、暴動の残り火に向かって息を吹きかけ、さらに炎の勢いを増す行為であると非難の声が上がっています。

 実際に、被害者家族の弁護士は、このクラウドファンディングを立ち上げた人物を告訴したと発表しています。


フランスの暴動とクラウドファンディング


<関連記事>

「手がつけられなくなっているフランスの暴動に巻き込まれて、しばし、お店に閉じ込められた・・」

「燃え上がる警察への怒り 燃える炎は全国に飛び火」

「大惨事となっているフランスの暴動とSNSの関係」

「服従拒否で警察官発砲 17歳の青年死亡の後、警察官のウソがばれた・・」

「子育ての恐ろしさ やっぱり親の責任は大きい」