2022年12月23日金曜日

日本の教師とフランスの教師

  


 フランスで日本の学校の先生の過労死についての報道されていて、なるほど、フランス人から見たら、日本の学校の先生の驚異的な忙しさと負担の多さは驚愕すべきことなのだろうと思いました。

 私自身は、ほぼすべての教育を日本の学校で受けてきたので、先生というものは、こんなもんなんだろうな・・という感じがあったので、逆にフランスに来て、娘をフランスの現地校に通わせていて、逆に「え??フランスの学校ってそうなの?」とびっくりすることは、多々ありました。

 今回、フランスで報道されている内容は、「日本の学校の先生の仕事は夜中まで終わらない・・」という説明から始まり、授業だけでなく、課外活動の指導などまでしなければならない・・」と説明しています。

Japon : le ras-le-bol des enseignants, victimes de surmenage #AFP pic.twitter.com/DzGZbrry7F

— Agence France-Presse (@afpfr) December 22, 2022 >

 私が娘をフランスの学校に通わせて、驚いたのは、まさにその逆の驚きで、フランスの学校は、日本人からするとびっくりするほど分業制で、先生は授業を担当し、勉強を教えるのが仕事で、例えば昼食の時間はキャンティーンに子供たちが移動して、食事の指導?監督をする先生は別にいるので、子供たちにも給食当番のようなものもありません。また、部活のような課外授業のようなものもありませんし、学校の掃除は掃除の仕事をしている人がやることなので、掃除当番のようなものもありません。

 一般の授業が終わった後に、宿題などをするエチュードという時間がありますが、それは、生徒も希望者だけで、先生はまた別の先生が担当します。

 だいたい、入学式とか、始業式、終業式、卒業式などのセレモニーもありませんし、日常は、父兄も校内には、気軽には入ることはできませんし、いわゆる日本のPTAのようなものもありませんでした。

 以前、娘が小学生の頃に授業中に気分が悪くなった子供がいて、子供が申し出たら、先生が「私はあなたの医者じゃない・・」と言ったとかで、さすがにこれは、保護者たちが学校に苦情を申し立てたようですが、そんなことを言う教師がでてくるほど、全くの分業体制をとっているのです。

 学校外で起こったことに対しては、基本的に学校は関知しないというのが基本的な姿勢で、よほどの深刻な問題が起こらない限り、学校の先生が解決に走るようなこともありません。つまり、フランスでは、金八先生はあり得ないことなのです。

 そのうえ、公立の場合は学校でも、堂々とストライキをするので、日本のような教師の過労死などという問題がおこれば、教職員組合をはじめ、社会がそんなことは許されないと大問題になると思われます。

 日本の先生のように授業以外にも関わりを持ってくれる体制は温かみがあって、よいところも多いにあるとは思いますが、しかし、その実、考えてみれば教師の負担というものは、大変なもので、もう少し分担したらよいのではないか?とフランスの学校を見ていると思います。

 逆に自分たちの学校を自分たちできれいにする掃除当番のようなものは、あってもいいことではないのかとも思って、娘を日本の小学校に夏の短い期間、行かせてもらったときは、お客さん扱いしないで、そういうこともやらせてくださいと先生にお願いしたくらいです。

 要は、教師の仕事を分業制にするには、そのための予算がないということや、そのような体制に変える原動力もないのかもしれませんが、子供の将来を担う教師というのは、日本にとっても大切な存在。子供の将来を考えても、もう少し、なんとかするべきではないか?と思うのです。

 そんなフランスでも学校の先生は不足しています。

 我が家の娘は、学生時代に私立校のエチュードの先生のアルバイトをしていて、話を聞いていて、なかなか厳しい先生だな・・と思ったものの、わりと向いているんじゃないかな?と思って、先生になったら?と言ったことがあったのですが、「有意義な仕事だとは思うけど、あまりにお給料が安くて、とてもできない・・」と言っていました。

 フランスでの教師不足は、何よりも給料が安いのが原因なようです。

 しかし、今回、フランスでも取り上げられている日本の先生の過労死問題、日本人の私でもびっくりするのですから、フランス人が聞いたら、狂気の沙汰と思うに違いありません。


日本の教師の過労死 フランスの教師


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2022年12月22日木曜日

ノエルの予算 フランスの平均568ユーロは安いか高いか?

  


 フランス人が最もお金を使うのは、バカンスとノエルと言われますが、調査によると、今年のフランス人のノエルの予算は568ユーロ(約8万円)で前年に比べると35ユーロ増加しているそうです。

 この予算は、23〜34歳の若者の平均が420ユーロ(約6万円)と、若い世代に焦点を当てるともっと低くなり、65歳以上の平均は725ユーロ(約10万円)と、高齢者の方がずっと高くなります。

 歳をとればとるほど、一大行事であるノエルを大切に思い、また孫はこの上なく可愛く、ノエルにお金を惜しみなく使う傾向があるようで、孫に甘いのは万国共通なのかもしれません。私も祖父母には大変、甘やかされたタイプです。

 このノエルの予算は、クリスマスプレゼントやクリスマスツリーなどの装飾から、ブッシュドノエル(クリスマスケーキ)やクリスマスディナー、洋服、交通費などなどをひっくるめた金額です。

 しかし、昨年よりも35ユーロ増加しているとはいっても、あらゆるものが値上がりしていることを考えれば、たとえば、昨年と同じものを買ったとしても、500ユーロ分くらいだと値上がりしている値段は35ユーロ以上だと思うので、実質的には、減少傾向にあるのではないかと思っています。

 私は大変な、ざる勘定の人間なので、何にいくら使ったということをほとんど計算したことがないために、(それでもつつましく生きてはいるつもり・・)これまでノエルのためにいくら使ってきたかと言われても、あまり記憶がないのですが、我が家には、地方に親族はいないため、ノエルの時期に家族に会うために移動するということもなく、私自身は、あまりクリスマスというものを特別にも思っていないので、少しごちそうを食べるくらいで、変わったこともしません。

 それでも娘が小さくて、まだサンタクロースを信じていた頃は、一応、人並みにクリスマスツリーを飾って、ツリーの木の下に家族全員のくつとオレンジを置いて、夜中のうちに、それまでに集めていたプレゼントをツリーの下に置いたりしていました。

 クリスマスプレゼントは、それまでに親戚が送っておいてくれたものや、私たちが買ってきたもの、そして夫の勤め先からのプレゼント(あらかじめカタログが送られてきて自分たちで選ぶことができる)などを合わせると結構な量になり、ほんとに子供一人だけ?というくらいになっていましたが、そんなに特別にお金を使った記憶はありません。

 何よりも、サンタクロースを信じていて、朝になると喜んでクリスマスツリーに駆け出して、目を輝かせながらプレゼントを開けていく様子が可愛くて、それが私たちの楽しみの一つで、何よりのクリスマスプレゼントでもありました。

 毎年、クリスマスが近づくとメトロに乗っていたりしても、プレゼントらしきものが入っている紙袋や包みを抱えている人がだんだん増えてきて、ケチなフランス人も、さすがにノエルの買い物は違うな・・と感心するのですが、昨年は特に前年には、ロックダウンの制限などもあったりして控えていたこともあったのか、特にノエル前の買い物をする人が多かったような気もします。

 しかし、心なしか、今年は昨年ほどプレゼントを抱えている人が多くないような気がするのは、私の気のせいなのでしょうか?

 それは多分、私の気のせいだけではなく、ある調査によると、クリスマスプレゼントのための2022年の予算は、子供一人当たり132ユーロ(昨年は148ユーロ)で10%減少していて、値上がりしているのに10%減少しているということは、かなり減らしている感触です。

 しかも、5人に1人が中古のおもちゃを買うと答えていますし、64.6%の人が経済的に厳しいので(インフレのために)クリスマスプレゼントに使う費用を抑えるという人が多いようです。

 なにしろ、これから、さらにインフレが続くとなれば、先行きが不安というのは、当然のことで、ノエル以前に経済が圧迫されているわけで、特に華やかなはずのノエルという行事に、今年の夏の段階で、マクロン大統領が「私たちは豊かさの終焉の時を生きている」と演説したとおりのシナリオをなぞっているような気がします。

 たしかに、昨年などは、クリスマスプレゼントがすぐに転売サイトに載せられるなどという現象が問題にもなりましたが、反面では合理的だとは思いますが、すぐに転売サイトに載せられるような不要なプレゼントの出費を控えるのは、当然のような気もします。

 しかし、ノエルの予算を控えている中でも、クリスマスディナーの予算を削るという人は少なく、今年は海産物やフォアグラが特に値上がりしているものの、ノエルのごちそうだけは譲れないということらしいです。

 不況の時には食品業界は強いと言われますが、まさにそのとおりです。


ノエルの予算 クリスマス費用


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2022年12月21日水曜日

ノエルまでのカウントダウン開始 またストライキで大混乱の兆し

  


 ノエルのお休みは、2週間で、学校はまるまる2週間お休みですが、仕事をしている人は、そのうち前半1週間か後半1週間のどちらかだけお休みをとることが多く、その年のカレンダー(何曜日が祝日にあたるか)によって、お休みの取り方が変わることが多いのですが、今日、たまたま、たむろしておしゃべりしていた職場の同僚らしき人たちが、「今年は、2週目にお休みをとる人が多いみたいね・・」と話していました。

 今年はクリスマスイブとクリスマス、そして大晦日と元旦が土日にあたり、フランスのカレンダーだと、祝日と重なってしまうために、なんか損した感じになってしまうのです。(フランスには、振替休日というものがありません)

 もともと、フランスでは、ノエルと年越しでいえば、どちらかというとノエルの方が大々的で日本でいうお正月のような感じで家族で集まったりするので、年明けのお休みは元旦のみで、今年の元旦は日曜日にあたるために仕事も2日から始まります。

 なので、家族に会うための帰省ラッシュは通常は、ノエル前の週末ということになるのですが、その今週末は、またまたSNCF(フランス国鉄)のストライキが予定されているため、大きな混乱が予想されます。

 SNCFは、今週末は3本に2本は運航する予定と、まるで大部分が運航するかのごとく、発表していますが、3本に2本は運航するということは、3本に1本は運航しないということで、この週末は本来80万人の人が移動する予定だと見られていますが、少なくとも、そのうちの20万人に影響が及ぶと言われています。

 これに加えて、予約がストライキによってキャンセルになった場合は、無料で返金すると、これまた恩着せがましく言っていますが、運航しない分のチケットを払い戻すのは当然のこと、なんなら、迷惑を被った人に補償金も上乗せしてもらいたいくらいです。

 ストライキはいつも同じですが、内輪の労働条件や賃上げの要求交渉に第三者の全く関係ない人々を苦しめて人質にとるやり方は、巻き込まれる人々にとってはたまったものではありません。むしろ、ストライキをやっている彼らよりも悪い労働条件や安い賃金で働いている人も少なくないのです。

 このストライキのためにチケットがキャンセルになった人々は、代わりのチケットを出発間近の高い金額でとらなければならず、それでも代わりのチケットが取れればまだマシで、ただでさえ混雑時のチケットで便数も減っているとなれば、高くてもなんでも、チケット入手は至難のわざです。

 代わりにレンタカーを借りようとしても、すでにかなりが予約済のうえ、このレンタカー料金のうえに、値上がりしているガソリン代までがのっかる形になるわけで、大変な痛手、家族分のクリスマスプレゼントもそろえ、さぁ、もう少しで帰省・・というときに、帰れなくなるかもしれないというストレス満載の状態になります。

 もともと、フランス人にとって、バカンスの次にお金を使うのはノエルと言われていますが、ただでさえインフレですべてが高騰しているなか、出費がさらにかさむことになります。

 それ以外にも、ノエルといえば・・という食品、フォアグラなどは、今年は昨年と比べて平均で44%も、シャンパンは5.9%が値上げしているとかで、私も先日、スーパーマーケットでフォアグラ祭りが始まったな・・と思って、覗いたら、思わず二度見してしまうような値段で、えっ??こんなに高かったっけ??とびっくりして目が丸くなりました。

 どちらにしても、なにかにつけて、以前のようにはいかなくなっている生活。とりあえず、無事に年越しできるだけでもありがたいことです。


SNCFフランス国鉄ストライキ ノエル


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2022年12月20日火曜日

フランスサッカーチーム帰国後のコンコルド広場の盛り上がりは多分、歴史的な出来事

 


 サッカーワールドカップでフランスチームが優勝したら、シャンゼリゼで凱旋パレードを行うつもりにしていたようですが、残念なことにギリギリのところで優勝を逃してしまい、選手たちは、想像以上に悲嘆にくれていたようで、このパレードはどうなるのか?と前日の段階では行方を見守っていました。

 観客側からしたら、ギリギリのところで猛反撃して、延長戦、そしてPK戦にまで持ち込む手に汗を握る素晴らしい試合でしたが、選手たちにとっては、本当にあとちょっとのところで優勝を逃してしまったことは、普通の試合であっさり敗れるよりも、ずっと悔しい試合だったのだと思います。

 当初、選手たちは、フランスに帰国後、公に姿をあらわすことを望んでいないと伝えられていて、そんな気持ちもわからなくはないと思っていましたが、試合が終わってすぐに、マクロン大統領は、おそらくコンコルド広場に皆があらわれることになると公言していました。

 結局、フランスサッカー連盟の説得で選手たちは、カタールからのフライト到着後すぐにサポーターに感謝を伝えるために、コンコルド広場にやってくることになりました。

 前日は、フランス敗退と同時にお通夜のようになったシャンゼリゼから一変して、シャンゼリゼと繋がる場所に位置するコンコルド広場には、夕方からサポーターが集まり始め、最寄りのメトロの駅(コンコルドとチュイルリー)は閉鎖され、あたりは通行止めになり、選手たちの到着を選手たちに「ありがとう」の感謝を伝えたいと約5万人の人が集まりました。

 選手たちは、コンコルド広場に面したホテル・クリヨン(日本の天皇陛下もご利用になる五つ星の高級ホテル)のバルコニーから挨拶しました。

 選手たちの乗った飛行機が到着する様子から、実況中継が始まり、タラップから降りてくる選手をADP(パリ空港公団)の職員が「Paris vous aime」(Paris loves you)と書いたボードを何枚も掲げて迎える様子を中継するレポーターは、「パリだけじゃない、フランス全体、フランス人全部だ!」と訴えていました。

 もちろん、決勝戦まで進み、試合内容に皆が感動しているからこそのことですが、負けてなお、このフィーバーぶりを見ていると、頑張った選手たちに感謝を伝えたい、彼らを讃えたい、そして、これからも、さらに支えて応援していきたいという気持ちが集結していることで、むしろ、あっさり優勝するよりも、フランス人の優しさや絆を強めたような印象を受けます。

 シャルルドゴール空港に到着した選手たちは、ジャーナリストの質問に答えることもなく、どちらかといえば、硬い表情でしたが、昨夜は落胆に暮れていたフランス国民はすっかり立ち直り、彼らを讃えるために集結して大興奮状態。

 すでにノエルのバカンスに突入していることもあり、子供も学生もおじさんもおばさんもみんな歓喜に沸き溢れていました。

 選手たちの乗ったバスは、空港から警察車両に先導され、バスが通る道の沿道には、バスを歓迎する人々が立ち止まって大きく手を振る人々。選手たちは、裏口からホテルに入っていきました。

 つい、先週も前を通ったばかりのホテルクリヨンは、その時よりもずっと美しく見えました。神々しくライトアップされた全景を見ると、それは宮殿のように美しく、決して広すぎない正面口の前は、セキュリティのために大きくスペースがとられ、その後ろに広がるコンコルド広場と広場を埋め尽くしきれないほどの人・人・人、大群衆、そして、同時に映像に入るエッフェル塔とその前に並ぶシャンゼリゼのイルミネーションと、なかなか見られない驚愕の光景が広がっていました。

 バルコニーに現れた選手たちは、この群衆に手を振りながら応えていましたが、むしろ、彼らの態度は冷静で、浮かれた感じは微塵も感じられないところは、さすがにプロフェッショナル・・彼らのサッカーへの想いの深さが見えます。

 とにかく、デモならばしょっちゅう人が集結するフランスですが、なにか、共通のポジティブな感情でこれだけの人が集まることは、なかなかないことで、フランスでは、きっと歴史に残る一場面になるような気がしています。

 負けてなお、フランス人の心をこんなにも動かすフランスのサッカーは、たしかに国の宝かもしれません。おそらく、サッカー選手は、フランス中の誰よりも人気者で彼らのヒーローに違いありません。

 

フランスサッカー選手凱旋 コンコルド広場


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2022年12月19日月曜日

ワールドカップ決勝戦 フランス敗退 喜びも落ち込みも激しいフランス

  


 フランスはサッカー・ワールドカップを勝ち進み、とうとう決勝戦にまで進出し、勝ち進むにつれて、その盛り上がりもどんどん増して、準決勝の時点でも、すでに大騒ぎであちこちで花火が上がり、シャンゼリゼは人に埋め尽くされ、決勝戦は大変なことになると思っていました。

 在仏日本大使館からは、「試合当日には、シャンゼリゼ近辺は混乱が生じたり、思わぬ騒動に巻き込まれる可能性がありますので、試合開催時間以降には、この周辺には、近づかないことをお勧めします」などとお知らせが来ていました。

 私は、特にサッカーファンというわけでもなく、言われなくとも出かけるつもりはありませんでしたが、SNSを通じて、朝、日本のテレビ局から、「ワールドカップで盛り上がっている街の様子を撮影してきてもらえませんか?」というメッセージが入ったので、「取材のご依頼ですか?」と聞いてみたら、「いや、動画を撮影して送って頂くだけですので、取材ではありませんので、お支払い等はできません」とのことで、見ず知らずの人間をパシリに使おうとする日本のテレビ局の勘違い?になかなか不快な気分でお断りしました。

 以前にも、ロックダウンの際に外出禁止の中、街の様子を撮影してほしいとかいう依頼が突然あったりして驚かされたこともありました。

 当日は朝からマイナス3℃、当然、出かけるつもりもなく、試合はフランス時間で午後4時からだったので、それまでは、家の中の仕事をしばらくして、一休みしてから見ようと思っていたら、ついついウトウトしてしまい、突然、隣人の「ウェ~い!」という雄たけびに目を覚まして、サッカーの試合が始まっていることを知りました。

 慌ててテレビをつけると、その時はすでに2-0でフランスが負けており、しばらく見ていましたが、どうにも今回はフランスは精彩にかける感じ、なんだか試合の流れが全くアルゼンチンになっていて、フランスの選手たちの顔つきも冴えないし、依然として2-0で残り15分くらいになったところで、あ~あと15分で2点は無理・・今日はさすがにダメそうだから、なんか、他の映画でも見ようかな?とiPadをつけたとたんに、テレビから歓声があがり、フランスが1点を得点し、それからは試合の風向きが一転して、あっという間に同点になりました。

 こうなってくると、もしかして、一番感動的なパターンかも?とテレビにくぎ付けになりました。

 延長戦に入って、またアルゼンチンに先行されたものの、延長戦でも1点ずつをとって、試合はとうとうPK戦に突入。今回の試合はメッシ対エムバッペのように煽られていましたが、いかにもフランスで最も活躍したのは、エムバッペに違いありません。

 フランスの敗退が決まって、フランスの選手たちは、呆然状態、特にエムバッペ選手は、フィールドに呆然と立ち尽くしていたかと思うと、その後は長いこと、涙するわけでもなく、怒りを爆発させるわけでもなく、ただただ深い感情を押し込めたような表情で足をかかえて座り込んでいました。

 大物はそんな姿・表情もカッコいい・・やっぱり普通の人じゃない・・静かな怒りや悔しさのあらわれまでが、さすが王者の感じ。

 そこへ、彼をなぐさめに現れたのは、まさかのマクロン大統領で、彼に声をかけて、彼の肩を抱き寄せて、励まそうとしていましたが、彼はほとんどマクロンとは目も合わすことなく、うなだれていました。

 マクロン大統領は彼自身、大変なサッカーファンであるということもあり、サッカーはフランスの大切な原動力であると考えているところもあって、以前、エムバッペ選手がレアル・マドリードに移籍の話が上がった時にもマクロン大統領自らが彼のもとに出向いて、「君はフランスの宝だ!」とパリサンジェルマンに引き留めたとも言われています。

 準決勝に続いて、決勝までやってきたマクロン大統領には、「政治利用だ」とか、「こんなことは大統領の仕事ではない」などという声も上がっていますが、政治利用しているかどうかは別として、試合がエキサイトしていくにしたがって、上着を脱いで、両手をあげて歓喜して応援している様子は、一青年のようでもあり、彼のサッカーへの気持ちの表れでもありますが、試合後に、フランス選手のロッカールームに訪れて、「非常に残念だったけど、このチームは多くの人を歓喜させ、チカラを与えている、私たちはあなたたちを誇りに思っています。これからも頑張ってほしいです」というような演説めいたことをした様子が報道され、また物議を醸しています。



 しかし、彼が望むか如何にかかわらず、フランスがワールドカップを勝ち進んだことで、経済効果が上がって、大型テレビを買う人が増えたとか、宅配の売り上げが、ポテトチップスが・・ピザが・・これもあれも売上げ爆上げ・・などとも言われています。

 どこへ行っても彼の存在は大統領なのですが、しかし、選手たちが、それほど大統領に忖度している様子が見られず、ロッカールームに現れたマクロンの話も選手はあまり耳に入らない様子だし、ちょっと浮いている感じがするくらいなところが、また、フランスらしくて、すがすがしい気さえするのです。

 エムバッペ選手はまだ若干23歳にして、すでにレジェンド感満載、今月20日にはお誕生日を迎えて24歳になりますが、まだまだ、これからのフランスサッカーをけん引していってくれることと思います。

 しかし、喜び方も半端ない代わりに、落胆ぶりも甚だしいフランス。勝つ気まんまんだったフランスは、シャンゼリゼからも人が消え去り、おまけに寒さの中、小雨までが降り続き、打ちあがるはずだった花火もあがることなく、早々に通行止めになっていたシャンゼリゼには、車が流れ出し、一挙にお通夜のようになりました。


フランス ワールドカップ決勝戦敗退


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2022年12月18日日曜日

フランスと日本 政府と国民の関係性 防衛費増税

  


 私がフランスに来たばかりの頃は、「なんで?フランスって、こんなにデモやストライキばっかりやってるんだろう?」と、「フランス人って、ほんと、しょうがないな・・少しは我慢しろよ!文句言うまえにしっかり働けよ!」などと腹立たしく、彼らのデモ行為は全く理解しがたいものでした。

 特に学校や交通機関のストライキなどには、もろに被害を被り、学校がストライキをやっているからといって、私は仕事を休むわけにもいかず、子供の預け先に右往左往したり、長期間にわたる交通機関のストライキには、間引き運転のために、通勤時間も倍増し、ひと月近く続いたときには、もうこっちがヘロヘロ状態で、「RATPやSNCF(パリ交通公団やフランス国鉄)の方がよっぽど、労働条件がいいじゃないか・・ストライキをやりたいのはこっちの方だ!」と腹立たしく思ったものでした。

 しかし、デモは、政府の政策に対しても、その大小にかかわらず、たびたび起こるもので、最近で、一番長期化して、暴徒化したのは、有名な「黄色いベスト運動」と呼ばれるもので、一部の地域では、デモの行われる土曜日になると、デモが暴徒化して、危険な事態に陥るために、営業ができずに店のシャッターをおろさなければならないような状態が続きました。

 この「黄色いベスト運動」のそもそもの発端はマクロン大統領が提案した「燃料税増税」で、これに反発した国民がこのデモのシンボルとして黄色いベストを着て、全国規模のデモを集結したのが始まりでした。

 これは、なかなかな規模のデモで、結局、マクロン大統領燃料税値上げは撤回したのですが、もうその時には、勢いは止まらず、違うターゲットがいくつもできあがって飛び火して、収拾がつかない状態になっていました。

 皮肉なことに、この黄色いベストの勢いがストップしたのは、突如やってきたパンデミックによるロックダウンで、デモ隊の熱も勢いもコロナウィルスによりストップしたようなものでした。

 その後、ロックダウンが解除されてから、再び、「黄色いベスト運動シーズン2」などという動きが見られたこともありましたが、現在のところは、日常のデモやストライキはあるのものの、あれほど大きな動きはありません。

 しかし、一歩、間違えれば、このような大騒ぎになるため、フランス政府は国民の反応というものにとても気を使っているのがわかります。時には、政府は国民のご機嫌とりをしているの?と思われるような発言を耳にすることもあります。

 一方、外から日本を見るにつけ、最近は、国民感情が全くつかめていないとしか思えない日本政府に、日本人はおとなしすぎるのではないか?もっと、起こって暴れてもいいんじゃないか?と思っています。

 国葬問題にしても、どうにもわけのわからない状態で押し切り、統一教会の問題にしても、はっきりとした対応をなかなか示さず、今度は、防衛費増税は、あっという間に決めてしまう強引さ。

 日本の税金については、よくわかりませんが、以前にコロナ予備費とかで使途不明金が11兆円もあるなどという話も上がっていたのに、そういう説明のつかないお金の使い方をしておいて、足りないから国民から税金を徴収して補うというのは、全く納得がいかない話。

 これがフランスだったら、「黄色いベスト運動」なみの大騒ぎになるのは必至なのに、黙って我慢して税金を払い続けるしかないなんて、やっぱりおかしいのではないか?と、むしろ、やりすぎなところはあっても、政府の不穏な動きに納得がいかなくて、デモを引き起こすフランスの方が健全なのではないか?とまで思ってしまうのです。

 フランス政府はデモを警戒し、恐れながらも、「主張すること、言論の自由を尊ぶ精神」を誇りにしており、デモの権利を認め続け、反論も甘んじて受けるという姿勢をとりつづけているのは、やはり、大事なことなのかもしれないと思うのです。

 今の日本を見ていると、あれだけ、苦々しく思っていたフランスのデモも、時には、必要なことなんだ・・と思うようになりました。

 デモに乗じて、暴徒化して、暴れたり、破壊行動に出る人が登場するのは、やりすぎで、迷惑極まりない話ことですが、何もしないで政府にやりたい放題にされ、完全に国民をなめ切っている日本にももどかしさと苛立ちを感じます。

 対話どころか、まともに説明もできない、一方通行の日本政府と国民の関係はお行儀がよく、一見、スムーズなのかと勘違いするところもあるかもしれませんが、その実、バランスが悪く、非常に不健全な状態であると言わざるを得ません。

 意見、意思をしっかりと持って、主張しあいながら、議論ができない社会は不健全です。日本の教育に足りないのは、話すこと、主張すること、議論することかもしれません。


防衛費増税 日本政府 デモ 


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2022年12月17日土曜日

ワールドカップ フランス対モロッコの試合 大フィーバーの影の超極右勢力の暴挙

  


 14日のワールドカップの準決勝フランス対モロッコの試合はフランスでは大きな盛り上がりを見せ、さらにフランスが勝利したことで、パリではシャンゼリゼには信じられない数の人々が集まり、その勝利に歓喜していました。

 なにか一つのことに対して、国全体を挙げてこんなに感動でき、人々を喜ばせることができることを素晴らしいと思い、在仏日本人の私としては、フランスの勝利を嬉しく思いつつも、少々、フランスがうらやましいような気もしていたのです。

 この応援や勝利を祝う集い?には、在仏モロッコ人など、どちらが勝っても嬉しいというようなモロッコのユニフォームを着ながらフランス国旗を振り回して喜ぶような人たちもいて、日本を応援しつつも、フランスも応援する自分ともダブる気もして、そんな様子を微笑ましいな・・などとも思っていたのです。

 しかし、このフランス対モロッコの試合に際しては、残念ながら、フランスの超極右勢力の一部の人々がパリ、リヨン、ニース、モンペリエなど、いくつかの都市で動員されており、パリ17区では、12月14日夜から15日にかけて、暴力的な右翼運動関係者38人が逮捕され、拘束されています。

 警察関係者が報道関係者に語ったところによると、彼らの中にはブラスナックルやスパナなどの武器や大量破壊兵器を持っており、シャンゼリゼ通りでモロッコ人サポーターと攻撃しようとした疑いが持たれています。

 彼らは、「暴力や損害を与える目的でグループに参加した」「危険カテゴリーに入る武器を携帯した」「武器や顔を隠した集会への参加」で逮捕され、検察は司法調査を開始し、彼らが「人種差別的な性質の暴力を振るう」ことを望んでいた疑いがあるとしています。

 戦うのはルールにのっとったスポーツの場だけでよく、なにも対戦国のサポーターを攻撃するのはお門違いだと思いますが、彼らにとっては、サッカーの試合は単なるきっかけに過ぎず、彼らは常に攻撃する機会を探っているのだそうです。

 フランスという国は、単に群衆が集まる危険だけでなく、このような危険な集団が何かのお祭り騒ぎに乗じて、ことを図る危険もはらんでいるのです。

 また、次は決勝戦ともなれば、さらに高まる興奮で危険が高まるかと思いきや、政治学者の見解によれば、超極右勢力のターゲットはマグレブ諸国(モロッコ、アルジェリア、チュニジアなどのアフリカ北西部の地域の国々)であり、アルゼンチンとの間に特に争いはないことから、彼らの動員は起こらないのではないかと見ています。

 超極右勢力の活動家はフランス全体でも数十人に過ぎないとも言われていますが、このような機会に乗じて、武器まで携えて、人を埋め尽くしているシャンゼリゼなどに現れれば、騒ぎは大変なことになることは間違いなく、彼らは危険人物としてリストアップされ、内務省によって、追跡されているといいます。

 「フランスが負けるようなことがあって、フランスが屈辱を受けることは許されない」という彼らの理屈は理解できませんが、彼らの目的は攻撃することにあり、サッカーの勝敗などは、口実なのです。

 このような暴力行為が目的の人もいれば、単に興奮して騒ぎを起こすサポーターなど、サッカーの試合は、歓喜を引き起こすとともに、衝突も巻き起こしています。

 それを数千人の警察官がガードしながら、みんなが喜びあうあたり、デモ行進を警察や憲兵隊がガードしつつも、決してデモの権利を損なわないように保つ日常とも似ている気がして、そんな様子もフランスらしいな・・と思うのです。


ワールドカップ 超極右勢力暴動


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