2021年6月20日日曜日

高齢者施設の介護者へのワクチン接種がびっくりするほど進んでいない!ワクチン接種義務化の是非

  


 フランスでの新型コロナウィルスのワクチン接種は、現在、全国民の47.40%が少なくとも1回は、ワクチン接種を受けている状態にまで進んできており(2回の接種が済んでいるのは、26.70%)、国民の約半数がワクチン接種を受けた状態になるまで、あともう一歩となりました。

 1回目のワクチンを受けたと言うことは、2回目も受けることを受け入れているのがまずは、前提で、現在は、1回目を受けた時点で2回目のワクチン接種の予約を入れることになっているので、少なくとも50%以上の人のワクチン接種は、ここ1ヶ月くらいの間に2回目も完了することになると思われます。

 しかし、ここへきて、EHPAD(エパッド)と呼ばれる高齢者施設の介護者のワクチン接種率があまりに低い事実が浮上し、高齢者施設で働く介護者に対するワクチン接種を義務化するべきではないか?という話題が持ち上がっています。

 一般の病院、医療施設でのワクチン接種率が85%にまで達しているにもかかわらず、高齢者施設で働く介護者のワクチン接種率は50%程度で、感染した場合に重症化するリスクの高い高齢者施設においては、非常に危険なことです。

 ワクチン接種開始にあたって、当初、マクロン大統領は、「ワクチン接種を希望する者に対しては、全て無料でワクチン接種を行う」と発表していましたが、この「希望する者」という文言が入っていたということは、義務ではないということでもあります。

 当初はワクチンに対して懐疑的であった人もかなり多かったフランスですが、世界各国でのワクチン接種による感染減少の様子を目の当たりにして、ワクチン接種を希望する人がたくさんいます。

 しかし、依然として、一定数のアンチワクチン論者は、常に存在し続けるわけですが、ワクチンをしなければ、自分が危険なだけでなく、他人をも危険に晒すという観点からも、特に高齢者施設で働く介護者がワクチン接種を受けることは、倫理的にも、仕事の一環であるとも言えます。

 ワクチンはすべての人が無料で利用でき、現在は、困難なことではありません。オリヴィエ・ヴェラン保健相は、現在のこの深刻なワクチン接種が進んでいない高齢者施設の介護者とその雇用主に対して、できる限りワクチン接種を受けるように呼びかけていますが、夏の終わりまでにこの状況が改善しない場合には、義務化することも検討すると語っています。

 特にデルタ株(インド)と呼ばれている変異種の感染拡大によって、気温が低下する新年度が始まる秋頃になった頃に第4波を迎えてしまうことをフランス政府は、とても警戒しているのです。

 フランス政府は、この第4波を回避するために、8月末までに全国民の85%へのワクチン接種完了を新たな目標としています。

 我が家の娘は、4月から、パリにある病院内にある研究所でスタージュをしていますが、仕事を始めてすぐに病院側から、すぐにコロナウィルスのワクチン接種を受けてくるように言われ、その当時は、彼女の年齢では、普通はワクチン接種は不可能だったので、「ラッキー!」とばかりにワクチン接種を受け、とっくにワクチン接種は、完了しています。

 一緒に仕事をしている周囲の職場の人々も100%ワクチン接種が済んでいて、最初は、病院でスタージュ?と聞いて、危険ではないのかな?と思った私も、むしろ、全員がワクチン接種が済んでいる職場など他にはなかなかないかも・・と思い直したのでした。

 また、彼女が病院内の研究所でスタージュを始める前の段階で、これまでに彼女が受けてきたワクチン接種(幼少期からフランスでは、いくつもの義務化されているワクチン接種があります)の履歴全てを提出しなければならなかったりで、コロナウィルスに関わらず、病院(研究所)での感染症や疾病等の危険へのチェックは、かなりきっちりしているんだなぁと感心したくらいです。

 フランスでの幼少期から義務化されているワクチン接種は、かなりたくさんあり、フランスで育ってこなかった私は、フランスで義務化されているワクチン接種の種類やタイミングがわからず、かかりつけのお医者さんに定期的に娘の Carnet de Santé (カルネ・ド・サンテ=生まれてからの医者の記録を綴っているノート)を持って通っており、このワクチン接種をそろそろしなければいけない年齢を度々チェックしてもらい、娘のワクチン接種は、滞りなく進められてきました。

 コロナウィルスワクチンに関しては、まだ開発されたばかりのワクチンで、義務化はされる段階ではないのかもしれませんが、ワクチン接種を義務化するということは、不可能ではない事象で、今後、医療従事者や介護者に関わらず、コロナウィルスのワクチン接種が義務化される日は来るかもしれません。

 コロナウィルスワクチン接種の義務化に関して、マクロン大統領は、「当事者への信頼と信念に賭ける方が義務化するよりも、効果的である」と述べています。確かに本人が自らその気になってくれることの方が好ましいことではありますが、その崇高な親心がわからない国民は、けっこう、少なくないのです。

 しかも、医療介護者という仕事に付きながら、このような事態。

 しかし、このことで、ただでさえ人手不足のこのセクターがさらに人員不足になることも心配されているのです。



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2021年6月19日土曜日

フランスで日常が戻るとすかさず始まるのはストライキ



 5月の初旬にようやく10㎞以上の外出制限が解かれて以来、フランスは、あれよあれよという間に、レストラン・カフェのテラス席が再開し、美術館、映画館、デパートなどもオープンし、6月半ばにして、屋外でのマスク義務化が撤廃され、来週からは、夜間外出禁止もなくなり、ますますコロナ前の日常にグングン近づいていく感じです。

 もちろん、まだ、屋内ではマスクが義務付けられているし、人数制限なども行われているので、すっかり元の日常というわけにはいきませんが、かなり、これまで失っていた自由を取り戻しつつあります。

 それは、ワクチン接種も私が予想していた以上に、「これがフランス?」というほど、どんどん進んでいて、感染者も順調に減少し、一時は、集中治療室の占拠率が140%!と言っていたのがウソのように、現在は、50%ほどまでに下がっている現状に裏付けられています。

 しか〜し! 日常が戻り始めると、途端に戻ってくるのがストライキというのが、フランスです。ロックダウン解除の第4段階の繰上げ(夜間外出禁止撤廃や屋外のマスク義務化撤廃)が発表されたのとほぼ同時に、待ってましたとばかりに発表されたのは、SNCF(フランス国鉄)やパリ・シャルル・ド・ゴール空港、病院等のストライキの決行予定です。

 SNCF(フランス国鉄)は、6月21日(月)運転手がストライキを予定しています。これにより、大幅な減便になるため、SNCFは旅行者に対して、彼らの旅行を延期するように忠告しています。

 これは、経営者側がSNCFの過剰人員を整理しようとしていることに抗議するストライキです。SNCFの労働組合トップは、他のドライバーによる穴埋めを妨げるために、路線ごとに、要求は異なってはいても、ストライキを予定している路線は、全て同じスケジュールで同時にストライキを行うと発表しています。非常にタチが悪いです。

 彼らは、鉄道セクターを競争に開放することに反対し、将来の入札を視野に入れ、そのためにすでに開始されている会社側の人員整理の対応に、「鉄道労働者には保証がない」と抗議しているのです。

 ここがフランスのダメなところで、国営鉄道が一括して運営しているために、競争がなく、競争がないために、改善されるべきところも改善されず、「鉄道労働者には、保証がない」などと言うのは、一般市民からすると、「ふざけんな!」と言いたくなります。SNCFは、定年退職の年齢が著しく低かったり(特にドライバー)、一般の職業に比べて、特典もかなり多い職業なのです。

 しかし、彼らはこれまでの自分たちの権利が侵害されることに抵抗しているわけです。乗客という人質をとって・・。

 また、ストライキの予定は、国鉄だけではなく、パリ、シャルル・ド・ゴール空港も2日間のストライキを発表しています。

 彼らは、賃金低下に繋がる労働契約を締結させる計画に異議を唱えています。ストライキは、18日から3日間続く予定です。

 また、7月1日には、5日間にわたる別のストライキも計画されており、これは、夏のバカンスに出発する人で溢れる7月最初の週末にかかるため、影響はさらに大きくなります。

 これらの公共交通機関のストライキの場合、減便や人員不足のために必然的に屋内での混雑が起こり、現段階では感染悪化の危険も孕んでいますが、フランス政府は、ストライキやデモは国民の権利として尊重する態度を取らざるを得ないため、回避することはできません。

 これまで、ロックダウン中でもデモ活動は行われ続けていたフランスですが、営業していないセクターも多かったために、労働に対するストライキは影を潜めていました。

 しかし、一度、社会が動き出すと、パンデミックによる経営不振からの経営者側の対策として開始される賃金カットや人員削減が始まり、いよいよ労働者によるデモやストライキが始まるわけです。

 直に国民に影響を及ぼす公共交通機関や空港などの公共施設に加えて、救急隊、病院、ラジオ局、テレビ局など、ストライキの話は、次から次へと聞こえてきます。

 少しずつ日常が戻り始めて、経済も復興していくと思った途端にストライキ、感染が悪化して、営業停止になっていた時は、「このフランス人が働きたいと言っているんだ!」と営業再開を求める人が喚いていましたが、いざ再開すると、労働条件についてのストライキで途端にストップしてしまいます。

 フランスの経済復興の道のりは、長くて険しく、騒がしいものになりそうです。


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2021年6月18日金曜日

ディズニーランドパリ・ユーロディズニー8ヶ月ぶりに再開 一般社会よりも厳しい衛生管理

  


 2020年10月30日以来、閉鎖されていたディズニーランドパリ・ユーロディズニーが約8ヶ月ぶりに再開しました。コロナ前までは、パリ(フランス)の観光地の一つでもあったディズニーランドパリは、1日の入場者数は約5万人であったところ、現在の再開に関しては、入場者数は2万8000人に制限されています。

 しかし、再開当日は、熱狂的なディズニーランドファンは、夜明け前から開場の瞬間を待ち構え、8ヶ月ぶりのディズニーキャラクターがメインストリートをダンスをしながらやってくる様子を楽しみました。

 ディズニーランド内は、たとえ屋外であってもマスク着用が義務付けられており、公園内には、2000ヶ所にアルコールジェル配布のポイントが設けられ、来場者全員がアルコールジェルを頻繁に利用できるように配慮されています。

 現在のところは、ディズニーリゾート内のホテルは、ニューポート・ベイ・クラブのみが営業しており、その他の6つのホテルは、6月21日に営業を再開します。

 現在のところは、観光客もほとんどいないために、通常ならば、セキュリティーチェックのために長い時間を費やされるところ、ほとんど待ち時間もないようです。美術館も今なら、ガラガラだ・・という話を聞きつけて、私は、とりあえず、手近なルーブルにすっ飛んで行きましたが、観光客がいなくて、空いているのは、ディズニーランドも同じなようです。

 (正直、フランスに来て、なぜ?わざわざディズニーランド?と思わないでもないのですが、ディズニーランドがあるのは、アメリカ、日本、香港、中国で、ヨーロッパでは、フランスのみで、ヨーロッパ近隣国からの観光客には、意外とディズニーランドに行きたがる人も少なくないのです。特にロシア人なども多いと聞いています。)

 再開初日は、熱狂的なディズニーファンが多く、いつもは週に2〜3回通っていたという人までいて、「ディズニーのホームを守ってくれてありがとう!」などとプリントされたTシャツを着ている人など、もうファンと人気スターのような関係が垣間見れます。

 かつては、ファンに熱烈な抱擁を受けていたミッキーマウスやドナルドダック、グーフィーなどのキャラクターたちも、すっかり衛生対策モードになっており、張り巡らされているセキュリティーコードの向こうから挨拶しています。

 また、ミッキーマウスに会えるというポイントでも、ミッキーマウスやミニーマウスは、プレシキガラスの壁の向こうで踊っています。

 ディズニーランド内のレストランでは、TousAntiCovid(フランスの感染者追跡アプリ)にリンクしているQRコードを読み込むことを求められます。このQRコードにより、メニューが表示され、注文することができます。

 レストラン内でも、従業員が感染を防ぐために、訪問者間のソーシャルディスタンスを綿密にチェックしています。現在のところ、安全な衛生対策が取られていない場合は、営業停止に逆戻りですから、ディズニーランド側も感染対策には、ことのほか、気を使っているようです。

 ディズニーランドを一周できる電車は、グループ毎に、他のグループから隔離されるために、透明なプラスチックのシートを受け取り、独自のコンパートメントの空間で楽しめるようになっています。他のアトラクションに比べて、滞在時間が長くなるための特別な措置だと思われます。

 再開初日は、途中、停電のために、一部のアトラクションがストップするというアクシデントはあったようですが、この程度のことは、フランスでは、普通のこと、ましてやコロナウィルスとは関係ありません。

 ディズニーランドパリの衛生対策を見ると、一般社会(フランスの街中や、レストラン・カフェなど)よりも、数段、厳しく強化された衛生対策をとっているように見えますが、ディズニーランドが、これから先、フランスでのこの種のアトラクションパークの衛生対策の基準になっていくかもしれません。

 これから海外からの観光客も増え、とかく興奮しがちなアトラクションを抱えるリゾートパークは、かなり厳しめな衛生対策をとって、お客様を迎えようとしています。

 それにしても、普段なら、混雑する場所が、行列なしで楽しめる、今は、夏休みに入る前のもう少しの猶予期間なようです。


ディズニーランド・パリ Disneyland Paris

Disneyland Parisサイト


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2021年6月17日木曜日

当初の予定を前倒しで、屋外でのマスク義務化と夜間外出禁止の撤廃


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 カステックス首相は、16日、かねてからの予定だった6月30日の「屋外でのマスク着用義務化撤廃」を17日(木)からに前倒しにすること、そして、これまで夜間23時以降は禁止されていた夜間外出禁止に関しても、予定よりも10日早い6月20日(日)に解除することを発表しました。

 フランス政府は、このロックダウン解除の第4段階の日程を前倒しにすることについて、フランス国内の感染状況が予想よりも早いスピードで改善していることを示し、ここ一週間ほどの感染者数の平均が1日あたり3,200人となり、昨年の8月以来、最も低い数値となったことで感染状況が終息に向かっていると判断しているとし、現在、国内で憂慮すべき感染状況悪化が見られる地域はなく、集中治療室の患者数も2,000人を下回り、これまで深刻な状況に置かれていた医療機関が通常モードに戻りつつあるためと説明しています。

 4月末に発表されたロックダウン解除の段階的なカレンダー(予定していた日程)は、現状を踏まえて軌道修正する必要があると述べました。

 屋外でのマスク着用義務に関しては、集会の場、人混み、マルシェ、スタジアムの観覧席等に関しては、マスク着用義務は継続、また、商業施設、公共交通機関、職場等の屋内では、全面的にマスク着用義務が続きます。

 23時以降の夜間外出禁止についても、継続する必要はないと判断。しかし、飲食店やスポーツ施設、文化施設における収容人数制限は継続され、ソーシャルディスタンスを充分に取ることなどの衛生措置は、今後も引き続き必要であるとしています。

 つまり、屋外でのマスク着用義務や夜間外出禁止は、撤廃されても、今後も感染対策を講じられていないパーティー、や集会は禁止されたままではあります。

 しかし、これでフランス国民がさらに解除モードに突入し、浮かれまくる様子が目に浮かぶようで、せっかく感染が減少してきたところに危険因子がまた増加し、不安でもあります。

 ここ数日間、6月というのに30℃超えの暑さが続くフランスで、マスクはかなり厳しいものではありましたが、皮肉にも屋外でのマスク着用義務化が撤廃されるその日から、気温は、一気に下がっていく予報になっています。

 6月は、これからも、フェット・ド・ラ・ミュージック(音楽の日)や、サッカーのヨーロッパリーグの試合日程などが続き、血の気の多いフランス国民が興奮状態になる予定が目白押しです。

 中には、「イギリスを見ろ!早くに感染状態が改善したからといって、早くに色々な規制を解除した結果、感染の悪化が見られて、最終的な規制解除を延期しているではないか! イギリスの二の舞を踏みたいのか!」と不安をあからさまにしている人もいます。

 また、「このマスク着用義務化の撤廃や夜間外出禁止の撤廃の前倒しは、統一地方選挙を目前に控えた国民に迎合する人気取りの政治的な判断だ!」と批判する人もいます。

 たしかに、ロックダウン解除が進むに連れ、マスクをしていない人も増え、「23時以降の夜間外出禁止に何の意味があるのか?」などの声が上がっていたことは事実ではありますが、段階的な解除で予定していたとおりに進めていくことに、それほどの困難があったとも思えません。

 そして、この規制を早めた10日ほどの間にだけでも、どれだけワクチン接種ができて、その分の人が少しでも守られた状況でマスクの義務化や夜間外出禁止の撤廃の日を迎えた方がどれだけ、被害が少なくて済んだか?とも思います。

 イギリスで問題になっているデルタ株(インド変異種)に関しては、現在フランスでは、感染者の4%程度であると言われており、現段階ではさほど問題にはなっていません。しかし、この変異株自体は充分危険なものであり、今後、さらにこの変異株の選別のための措置を強化し、空港や港、国境における出入国時のコントロールを強化するとしています。

 また、これらの緩和の措置は、感染状況が急激に悪化した場合は、必要な規制を再び講じるとしています。

 しかし、規制はどうあれ、人のいない屋外はともかく、個人的には、まだ、到底、マスクを外す気にはなれそうもありません。

 ただ、多くのフランス国民は、これでさらに日常モードに近づき、これまでの鬱憤も合間って、一気にハメを外すのは、目に見えています。

 お祭り気分に拍車がかかり、フランスでは、「日本でのオリンピックなんて、全然、OKじゃん!」という流れになるかもしれません。


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2021年6月16日水曜日

6月15日から12歳から17歳の未成年もワクチン接種開始 未成年のワクチン接種の条件

 



 フランスは、現在までに3037万人へのワクチン接種が進み、全国民の45.34%が少なくとも1回のワクチン接種を受けています。(2回終了は、23.37%)

 フランスがとりあえずの目標としている全国民の60%へのワクチン接種まであと14.66%となりました。

 ここへ来て、ワクチン接種は、1回目のワクチン接種をする人と2回目のワクチン接種をする人とが、ほぼ同数になり、このままでは、2回目のワクチン接種をする人が上回り、後回しになっていた年少者へのワクチン接種がずっと先に取り残されることになります。

 このタイミングで、フランスは、12歳から17歳へのワクチン接種への門戸を開きました。もちろん、未成年ですから、両親の承諾書(webサイトでダウンロード可能)が必須で、ワクチンの種類は、現在のところ、ファイザー・ビオンテックのワクチンに限定され、薬局やかかりつけの医者ではなく、ワクチンセンターに出向かなければなりません。

 また、承諾書を書いた両親のどちらかは、ワクチン接種に立ち会うことが義務付けられています。

 また、これまでにコロナウィルスに感染後、小児多系統炎症性症候群(PIMS)を発症した子供は、重度の炎症反応のリスクを回避するために、ワクチン接種を受けることができません。

 これは、夏のバカンス後の学校再開時にの9月・10月に学校がクラスターとなる第4波を懸念しての対応でもあります。

 また、6月も半ば過ぎになってくると、2回目のワクチンがバカンス中に重なってしまうために、1回目のワクチンをしなくなる人が出ないように、オリヴィエ・ヴェラン保健相は、「7月にバカンスに行くために、今、一回目のワクチン接種をするのを躊躇ってはいませんか?」「1回目ののワクチン接種から21日から49日(3週間から7週間)の間に2回目のワクチン接種をスケジュールできるように、予約システムを変更しています。」とバカンス最優先のフランス国民の動向を慮る対応と説明を前もって発信しています。

 フランス人の夏のバカンスがいくら長いとはいえ、普通は、せいぜい1ヶ月のことです。3週間から7週間の間隔をあけられることがわかれば、バカンス前に1回目のワクチン接種をして、バカンスから戻って、2回目のワクチン接種をすることができます。

 また、フランスでは、ワクチンを少しでも無駄にしないために、1回でもコロナウィルスに感染して抗体を持っている人は、1回のみの接種で済ませられるため、ワクチンセンターにおける接種においては、ワクチン接種前の問診とともに、簡易の抗体検査を実施し始めました。

 この検査の実施により、すでに自分でも気づかないうちに感染して、抗体ができている人に対しては1回のワクチン接種で済ませることができ、ワクチンの節約と副作用の回避への対策にもなります。

 現在のところ、カナダ、イスラエル、イギリスなどの国々では、全国民の60%以上のワクチン接種率に到達しており、アメリカは、52%、イタリア、ドイツ、フランスが45%〜50%の間でスペインがそれを追う感じです。

 ワクチン接種開始当初は、大きく遅れをとったフランスですが、ワクチン接種に関しては、その後の追い上げでフランスは珍しく頑張りました。いつも、何をやってもグズグズと時間がかかるイメージなのに、こんなに遅れを取り戻せるなんて、やればできるんじゃないか!という上から目線で、その頑張りを讃えたくなります。

 当初は予約の電話が繋がらなくて、大変だったワクチン予約は、今では、高齢者でリスクの高い人から、ワクチン未接種者に保健所からワクチンの予約を促すために、一軒一軒、電話をしているというのですから、驚きです。

 ここで、「バカンスに出る前にできるだけワクチン接種をしてバカンスを安心して楽しもう!」キャンペーンをすれば、フランス人にとってはバカンスが鼻先にぶら下げられた人参になってさらにワクチン接種も進むかとも思いますが、ワクチンをしてもしなくともフランス人は、楽しくバカンスを過ごすに違いありません。


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2021年6月15日火曜日

フランス政府が若者に発行したカルチャーパスがMANGAパスになった!

 


 新型コロナウィルスにより停滞した文化事業推進・支援と若者への文化と芸術への好奇心を喚起させるために、マクロン大統領は、5月半ば過ぎに、現在、18歳(2003年生まれ)の若者、約80万人に対して、300ユーロのカルチャーパスを付与することを発表しました。

 マクロン大統領は、同時に、彼のTikTokアカウントでも、申請書のアカウントに名前を登録するだけで使うことができるカルチャーパスは、「映画、小説、マンガ、ビデオゲーム、劇場、ラップ、メタルなどなど・・あらゆる文化的な目的に使用することができます」と若者向けに拡散しています。

 若い世代には、若者の通信手段に向けて、自らのアカウントから直に発信するあたり、しっかりと時代を把握している感があります。

 このカルチャーパスの実現には2年以上の月日が費やされており、劇場、映画館、美術館、音楽、ショーのチケット、映画のサブスクリプション、芸術・美術材料、楽器のコースまでも提供しています。

 しかし、それには、ある程度の制限がかかっており、書籍は、書店からの購入に限られ、Amazonから配送することはできません。また、音楽の面では、SpotifyではなくDeezer、映画等の配信サービスは、Netflix、Amazon Prime、DisneyではなくCanal +、Madelenなど、フランスの産業を盛り立て、活性化するように意図されています。

 また、2022年1月には、このカルチャーパスは、中学生に年間25ユーロ、高校生にそれそれ50ユーロが割り当てられます。これは、一人当たり合計200ユーロで、若者が18歳になった時の300ユーロを加えると、500ユーロになります。

 この時点で、カルチャーパスは、中学生以上、400万人が該当する特大案件に膨れ上がります。18歳のカルチャーパスに関しては年間1億6000万から1億8000万ユーロが見積もられています。

 しかし、もともとフランスでは、ルーブルなどの主要国立美術館などに関しては、26歳以下は無料で、このカルチャーパスを使うまでもありません。 

 そして、いざ、蓋が開いてみると、これは、意外な?方向に偏り始めたのです。

 このカルチャーパスでは、本を購入することができるのですが、このうち、4分の3はMANGA(マンガ)で、日本の漫画コミックが爆発的に売れているのです。若者たちが、10 冊、20 冊、さらには 50 冊のマンガを抱えて店を出てきます。

 マンガを扱う書店におけるコミックの売上高トップ 40は、ほぼすべて日本語のタイトルで構成されています。書店においては、今や、「カルチャーパス=マンガパス」と呼ばれているほどです。

 「大多数は、普段は購入する余裕のない大規模なシリーズものを購入する」のだそうで、一人で10冊、20冊、50冊のマンガを抱えて店から出てくるのも頷けます。

 カルチャーパス運用のベストセラーマンガは、すでにトップセラーとなっているマンガです。フランスで2年間で200万部以上を売り上げた「鬼滅の刃」は、記録を塗り替え続けています。これは、先日、映画館の再開とともに、封切りになった映画「鬼滅の刃」の大ヒットも後押ししています。

 また、「進撃の巨人」の最終巻は10月13日に発売予定になっていますが、すでに、シリーズのすべての巻で在庫が落ちしています。

 フランスのカルチャーパスがまさかのマンガパスになるとは、フランスの文化継承に貢献することを見積もっていた政府の意向をよそに日本のマンガという文化がこれほど、フランスの若者に根付いていたことに驚きを隠せません。

 数年前から、フランスでは、普通の書店に行っても、当たり前のようにマンガが置いてあるようになり、メトロの中でもマンガを読んでいる若者を見かけたりすることに意外な驚きを持って眺めていましたが、このカルチャーパスにより、そのフランスの若者文化のほとんどをマンガが占めているということがさらにはっきりと浮き彫りになった形です。

 フランスで広まった日本食ブームの一旦は、マンガが担っていたとも言われており、日本のマンガの中に登場する日本のラーメン・餃子などの食べ物を食べてみたい・・と思って、最初は、パリにある日本食屋を訪れた・・という人も少なくありません。

 以前、家に遊びに来た女の子が「日本のラーメンを食べてみたい・・」というので、パリのラーメン屋さんに連れて行ったことがありましたが、「なぜ?ラーメン?」と聞くと、その子も日本のマンガが好きで、「マンガに出てきたラーメンを食べてみたかったから・・」とのことで、とても満足そうにしていました。

 日本のマンガを読んで、日本に行ってみたい!と、思う若者も少なくありません。コロナ前までは、日本行きの飛行機は、いつ乗っても、フランス人でいっぱいでした。

 残念ながら、現在は、日本へは簡単には、行ける状態ではありませんが、このカルチャーパス=マンガパスで、さらに日本を知る人が増え、パンデミックが終息したら、また多くのフランス人に日本を訪れて欲しいものです。

 それにしても、フランス文化の継承を目論んでいた政府が目の当たりにしたのは、「フランスの若者の文化=日本のマンガ」というフランスにしたら、ちょっと残念、でも日本人の私としては、フランスの若者から日本が愛されているような、ちょっと嬉しい現実でした。



カルチャーパス

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2021年6月14日月曜日

モンブランってフランスではマイナーな存在  アンジェリーナのモンブラン

 


 先日、数年ぶりにルーブル美術館へ行って、帰り道、あまりに閑散としているリヴォリ通り沿いのお店を気の毒だなぁと思いながら、それでも、久々に通るこのあたりの風景に、そういえば、ここには、こんなお店があったとか、もうちょっと行くとサン・ロック教会だな・・とか、サン・トノーレ通りだな・・とか、少しずつ思い出し、「あぁ・・そう言えば、もうちょっと行くと、アンジェリーナがある!」と思い出して、「久しぶりにアンジェリーナに寄って、モンブランを買って帰ろう!」と名案を思いついたのでした。

 本当は、ルーブルの中をさんざん歩いて、本当は、もう歩きたくはなかったけれど、モンブランのためだと思うと、元気に歩けるから現金なものです。

 私は、特にモンブランが好きで堪らないというわけでもないのですが、アンジェリーナのモンブランは、別です。というか、私は、アンジェリーナのモンブランを食べて以来、モンブランが大好きになりました。

 アンジェリーナは、1903年以来、パリのリヴォリ通りにある、今年で創立118年を誇る老舗の洋菓子のサロンです。店内は、ベル・エポックの有名な建築家、エドワード・ジャン・ニールマンスによってデザインされたもので、その装飾は、優雅さ、魅力、洗練を兼ね備えています。

                         
    


 歴史あるこのお店は、パリの貴族にとって欠かせない有名なお店で、プルースト、ココ シャネルなども通った場所として知られており、ことに「モンブラン」と「ホット・チョコレート」で有名なお店です。

 モンブランは、メレンゲの上にのった濃厚な生クリームがマロンクリームに包まれているだけのシンプルなものですが、小細工してない分だけ、生クリーム・マロンクリームそのものの味が引き立つ絶品です。

 一見、しつこいような感じもしますが、しっかり固まっているのにふわっとしているクセのない生クリームとマロンクリームは、素晴らしく相性がよく、上品な口どけに、後味もよく、あっという間に食べてしまいます。

 しかし、不思議なことに、フランスでは、モンブランを置いている洋菓子店は、そんなに多くありません。一般的なフランスの洋菓子店は、どこへ行っても、まるで決められているかのようにミルフィーユとかエクレアとか、タルトとか、同じものばかり・・モンブランを知らないフランス人も少なくないのではないかと思われます。

 意外なことですが、もしかしたら、モンブランという洋菓子自体の認知度は、日本よりフランスの方が低いかもしれません。

 我が家の近くの洋菓子店でも、まずモンブランを見かけることはなく、ようやく見つけても、どうしてもアンジェリーナに及ぶものではありません。

 一度、冷凍食品のお店PICARD(ピカール)でモンブランを見つけて、喜び勇んで買って帰りましたが、まあ、この値段なら、これで仕方ないか・・と思う程度のもので、また買おうとまでは思いません。(ゴメンねピカール!)

 ネットで調べてみたら、アンジェリーナのお店は、フランスで、10店舗。日本に7店舗、シンガポール、上海、ニューヨークにそれぞれ1店舗ずつ。日本にいかに美味しいものが入っているかが伺われます。

 フランスの洋菓子店などが海外進出をする場合、まずは、日本に出店して、様子を見る・・フランスにとって、日本は海外進出における大きなマーケットなのがわかります。

 しかし、日本に進出するような高級店舗や高級食料品は、フランスの一般庶民には、意外と知られていないのも皮肉なことです。
 
 以前、日本であれだけ高価な値段にも関わらず人気なエシレバターをフランス人は意外と知らないことにびっくりしたことがありましたが、とうとうとフランスの食べ物を語るわりには、意外と美味しいものを知らないフランス人は、食べ物に関しても意外と保守的で、質素です。

 灯台下暗しで、フランスにある本当に美味しいものを意外とフランス人は、知らないのです。

 お値段もなかなかで、モンブランは1個7ユーロ(現在のレートで約930円)、そうそう気軽に買える値段ではありませんが、モンブラン1個だけ買っていくという人も少なくないらしく、全然、気兼ねすることなく、「モンブラン1つ下さい」と言えるし、モンブラン1個用の箱や紙袋も用意されています。

 ここ数年、近くに寄ることがなくて、食べたいと思いつつも食べ損ねていたモンブランは、変わることなく、美味しくて、大満足。以前と全く変わることなく、変わったことといえば、「一緒にスプーン、つけますか?」と言われて、つけてもらったスプーンがプラスチックではなく、木のスプーンになっていたことぐらいでした。

 久しぶりのモンブランに寝た子を起こされた気分の私。

 また近いうちに、買いに行くつもりです。


アンジェリーナ本店 226 rue de Rivoli 75001 PARIS  10:00~19:00 無休
東京では、日本橋三越に入っているようです。



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