2021年3月14日日曜日

フランスはアストラゼネカのワクチン接種は続行 アストラゼネカのワクチンの安全性への波紋

 Le vaccin AstraZeneca a été suspendu au Danemark, en Islande et en Norvège. (ARTUR WIDAK / NURPHOTO / AFP)


 デンマーク、ノルウェー、アイスランドの3ヶ国は、アストラゼネカのワクチンが血栓を形成する懸念があることから、このワクチン接種を当面の間、停止することを発表しました。

 まだ、開発されて間もないワクチンで、疑心暗鬼になりやすい中、いくつかの副反応例が報告されていましたが、オーストリアでの49歳の看護師がワクチン接種後に重篤な出血性疾患を起こして死亡したことがワクチン接種の停止決定の引き金を引いたようです。

 しかし、同様の問題が起こったイタリアでの症例等も合わせて調査した結果、この問題が、アストラゼネカの同じロットから起こっていることが判明し、同じロットから配送されたワクチンを使用していた、他の4つのヨーロッパ諸国、エストニア、リトアニア、ラトビア、ルクセンブルグは、このロットからのワクチン接種を直ちに停止しました。

 欧州医薬品庁(EMA)による調査によると、その地域(欧州連合、ノルウェー、アイスランド)でワクチン接種を受けた300万人以上の血栓症が報告されたのは22例のみ、これまでのところ、ワクチン接種を受けた人々の血液凝固が高いリスクを示すものはないことを明らかにし、アストラゼネカのワクチンとオーストリアでの死亡事故?との間に関連性はないことを強調しています。

 デンマーク、ノルウェー、アイスランドのアストラゼネカのワクチン接種停止の発表後、ロンドンは、スウェーデンとイギリスの研究所とオックスフォード大学によって開発されたこのワクチンを擁護し、「安全で効果的」であるとし、全世界で使用され続けることを保証しました。

 イギリスでは、これまでにファイザー、ビオンテック、アストラゼネカのワクチンのみを使用して、2200万人以上に初回接種を行っています。

 アストラゼネカのスポークスマンは、「ワクチンの安全性は第3相臨床試験で広範囲に研究されており、レビューされたデータはワクチンが一般的に十分に許容されることを確認している」と保証しました。

 このアストラゼネカのワクチンへの波紋が広がり始めるのに対して、フランス保健相オリヴィエ・ヴェランは、即刻「フランスで、アストラゼネカのワクチン接種を中断する理由はありません。ドイツもイギリスもこのワクチン接種を継続しています。ワクチン接種の利点は、この段階でのリスクよりも大きいと考えられています。」と発表しました。

 都合よく、ドイツやイギリスを引き合いに出すあたり、なかなかだな・・とも思いました。 

 ようやく、ワクチン接種の拡大にアクセルがかかってきたフランスですが、まだまだ感染が拡大する速度に追いつく数のワクチン接種の進行には至っていないのです。

 ところが、アストラゼネカは、生産体制の遅れから、ワクチンの配達がさらに遅れることを発表し、当初予定されていた1億2,000万回分のワクチンのうち、第一四半期にEU加盟国に提供できるのは、その三分の一の4,000万回分であると報告してきています。

 私は、ひょんなことから、ワクチン接種の予約をしてありますが、予約の際にどこのメーカーのワクチンなのか尋ねたところ、「今は、アストラゼネカしか入らない」とのことでした。

 今のところ、ワクチン接種ができる知らせは来ていませんが、この調子だといつやってくるのかは、わかりませんし、ワクチンを自分で選べる状況でもありません。

 ワクチンをするリスクもしないリスクもありますが、現在のフランスの状況では、私は、ワクチン接種をしないで感染するリスクの方が圧倒的に高いと思うので、アストラゼネカだろうとワクチン接種は受けようと思っています。

 4月中旬には、フランスで4つ目に認可されたジョンソン&ジョンソンのワクチン接種が開始されるようで、このワクチンは1回の投与で済むようで、もしかしたら、4月以降まで待って、こちらにした方が結局は早道なのかも??と思ったりもします。


<関連>

「混乱状態のフランスのワクチン接種 コロナウィルスワクチン接種の申し込みをした!」

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2021年3月13日土曜日

フランスのコロナウィルスによる死亡者数9万人突破

  


 マクロン大統領によるコロナウィルス感染対策の最初のスピーチがあったのは、昨年の3月12日、保育園、幼稚園、小学校、中学校、高校、大学とフランスの全ての学校を閉鎖するという内容のものでした。

 生まれて初めての経験で、私は、その頃は、まだまだパンデミックという状況をはっきりとは自覚していませんでした。

 しかし、それから数日後、生活必需品の買い物以外は、一切、外出禁止という厳しいロックダウンが発表され、しかも、発表の翌日の正午から・・という急転直下の展開でした。

 人々は、買いだめに走り、街には、「ソーシャルディスタンスを取れ!」とがなり立てる警察が闊歩し、軍用車が走り、マクロン大統領が「我々は、今、戦争状態にある」と言った、その通りの状況に国中が一変しました。

 あの頃は、ウィルスに関する情報も充分ではなく、厚生相が堂々と公の場面で、「一般の人には、マスクは必要ではない」などと言っていたのでした。今から考えれば、なんと恐ろしい情報発信だったことでしょう。

 少なくとも今の時点では、マスクなしの生活は、考えられません。

 それから2ヶ月ほどのロックダウンを経て、感染が減少し始め、夏のバカンスシーズンには、まさかの結構な人数の人がバカンスに出かけ、秋になると案の定、感染は再び増加し始め、10月末には、再び、ロックダウンでした。

 2回目のロックダウンは、学校は閉鎖せず、工場なども稼働したままのロックダウンで、最初のロックダウンほど厳しいものではありませんでしたが、1ヶ月のロックダウンで、ある程度、感染は減少したため、フランス人が命とバカンスの次に大切にしているノエルを家族と過ごすことは許されました。

 しかし、ノエルの時期を前後して登場したイギリス変異種を始めとする変異種の拡大により、再び、フランスは危機的な状況を迎えています。

 いみじくも、最初のマクロン大統領のスピーチから、ちょうど一年のこの日、フランスのコロナウィルスによる死亡者数は9万人の王台を突破(90,146人)、集中治療室の患者数は、4,000人を突破(4,033人)、これまでの総感染者数が400万人を突破(4,015,560人)しました。

 一年間で9万人の死亡者(ちなみに日本は8,451人です)とは、あらためて、恐ろしい数字です。そして、これは、まだまだ終わってはいないのです。

 特にイル・ド・フランス(パリを中心とする地域)の感染状況は深刻で、すでに90%以上は埋まっている集中治療室の患者を100人以上、週末の間に他の地域に移送することが決まり、大移送作戦が始まっていますが、想像以上の混乱状態で、移送するそばから、新たに入ってくる患者の対応におおわらわです。

 それもそのはず、ただでさえ、人員不足の病院で、患者の移送には、一人に対して数名のスタッフが付き添わなければならず、新たに入ってくる患者と交差する状況が混乱を生むのも当然のことです。

 また、これは、イギリス変異種による感染の特徴として、入院=ただちに集中治療室へ直行という重症化へのスピードが早いため、病床、しかも集中治療室の占拠率が必然的に高くなるわけです。

 そして、イギリス変異種感染のもう一つの特徴は、これまでの感染者よりも低年齢化しているということです。比較的、若い世代の急激な病状の悪化は、最低でも2週間は集中治療室での治療が必要なだけでなく、一旦、症状が治っても、症状の満ち引きを繰り返す長期コロナ感染症(COVID LONG)を引き起こすケースが多いということです。

 今、ヨーロッパは、この変異種(特にイギリス変異種)の猛威に襲われており、来週からイタリアも3度目のロックダウンに入ることが決定しています。

 周囲のロックダウンしている国でも感染はなくならないのだから・・とロックダウン回避の道をとっているフランスですが、感染はとどまることを知らず、ちょうど最初のロックダウンから一年が経とうとしているこのタイミングで、再び、危機的な状況を迎えています。

 ワクチン接種も開始され、フランスでは480万人に対して、少なくとも1回目のワクチン接種が済んでいますが、感染拡大の大きな波を抑えられる数には、到底達してはいません。

 一年が経過して、ある程度の情報が蓄積されている一方で、医療従事者も国民も、長引く制限下での生活に経済的にも精神的な疲弊も蓄積されて、二次災害のような事件も続出しています。

 一年前には、思ってもみなかったことが起こったと思いましたが、一年経ってもまだまだ終わりが見えないどころか、再びかなり深刻な状況にいることも、一年前には、思ってもみなかったことでした。

 


<関連>

「長期コロナ感染症 症状の満ち引きを繰り返す症状 COVID LONG」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/02/covid-long.html


「フランスのコロナウィルス対策・非常事態宣言 外出禁止・フランスのロックダウン」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/03/blog-post_18.html

2021年3月12日金曜日

イル・ド・フランス 崖っぷちの政府の対応策は患者の他地域への移送

 

 


 フランスのコロナウィルスの感染状況は、夜間外出禁止、ニースやダンケルクなどの地域的な週末ロックダウンの対策をとりながらも、急激な感染増加は避けられているものの、確実に悪化を続けています。

 急激な感染増加はしていないとはいえ、すでに先日も1日の新規感染者数が3万人を突破し、年明けには、2,634人だった集中治療室の患者数も約50%増加し、3,918人にまで達しています。

 すでに、フランスは、ヨーロッパ内で、最も感染が悪化している国になっています。

 中でも、イル・ド・フランス(パリを中心とする地域)の集中治療室の占拠状態は、最も深刻な状況で、すでに90%以上が埋まっている状況、現在(3月11日現在)1,056人が集中治療を受けています。イル・ド・フランスだけで、全国の集中治療室の患者数の約4分の1を占めているのです。

 現在のイル・ド・フランスの集中治療室の占拠状況の悪化は、イギリス変異種の拡大によるものです。今や感染者の67%がイギリス変異種による感染に置き換わっています。

 イギリス変異種の重症化、致死率は1月の段階でイギリスの首相が発表した内容(感染率、重症率、致死率が高い)を裏付ける実際のデータが発表され始めています。

 最近は、政府の感染対策に対する記者会見があることで、もう木曜日か・・と思うくらいになっていますが、昨日のその会見で、オリヴィエ・ヴェラン保健相は、この深刻なイル・ド・フランスの状況に対する対策として、イル・ド・フランスから、他の余裕がまだある地域への患者の移送で、医療崩壊を避ける方針を発表しました。

 また、ヘリコプターやTGVによる物々しい患者の移送が大量に始まるわけです。

 昨年の3月末には、ロックダウン状態の中、すでに医療崩壊を起こして患者の移送が盛んに行われていました。嫌なことに、また同じ時期に患者の大移動です。

 昨年の今頃、ロックダウンして、家の中に閉じ込められた状態で、家の窓から、やけに青い空の上をヘリコプターが飛んでいくのを見るたびに、あのヘリコプターも患者を運んでいるのだろうか?などと不安に感じたのを覚えています。

 単に患者の移送というには、それは、あまりに物々しく、一人の患者に何人ものスタッフが付き添い、呼吸器を装着したまま、しかも感染を防ぐための防御をしながら、移送するのですから、かなりの大掛かりなもので、人出も費用も半端なくかかります。

 TGVなども車内を患者の移送用に改造されたものが使われていました。

 患者の移送以前にも、すでに、それまでに予定されていた手術の予定などをできる限り(40%)キャンセルし、集中治療室に隙間を作っていたはずでした。これだけでも、すでに助かるはずの患者が手遅れとなって助からなくなっている可能性も大きいのです。

 しかし、現在、一番、深刻な状態になっているイル・ド・フランスは、一時はあわやロックダウンか?と俄に震え上がり始めた時期もあったにも関わらず、その時よりも感染が悪化しているにも関わらず、週末のみのロックダウンという対策も、あまり話題にも上がらなくなりました。

 ギリギリの状態にも関わらず、敢えてロックダウンを回避しているという状況を世間は、ロックダウンは必要ないまだ安心な状態と勘違いしている感もあり、世間の状況を見ていると、逆にリモートワークでさえ、減っているのではないか?と思われるような、交通機関や街の人出です。

 本来ならば、ロックダウンをせずとも、個々が充分に注意すれば、かなりの感染は、減らせるはずなのですが、それができないのがフランスです。

 今回の政府が発表した対策「イル・ド・フランスの集中治療室の患者の他地域への移送」は、感染を減少させていく対策ではありません。ひたすら、全国の集中治療室をくまなく埋めていくのです。

 ワクチン接種が広まるまでの時間稼ぎなのでしょうが、頼みの綱のワクチン接種も感染の速度には、間に合うほどには、進んでいません。

 何もしなければ、イル・ド・フランスの集中治療室の患者数は、3月末には1,500人を突破する見込みだそうですが、感染者の増加を減少させる状態が取られない以上、感染者は他の地域の病床占拠率をも圧迫していくだけです。

 それでも、「ロックダウン措置をとっている他のヨーロッパ諸国でも感染は悪化している」として、ロックダウンを回避しながら、過ごしているフランスの強気がいつまで続くものやら、本当に心配しています。

 コロナウィルス感染が始まって約1年、対策が後手後手に回って多くの犠牲者を出してきたフランスは、敢えて、ロックダウンを避けて、さらに犠牲者を増やし続けていることが、もどかしくてならないのです。

 

<関連>

「フランスのロックダウンは遅すぎた コロナウィルスと戦う大移動作戦」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/03/blog-post_30.html

2021年3月11日木曜日

東日本大震災から10年・マクロン大統領の日本へのメッセージ

 


 

 東日本大震災から10年、「FUKUSHIMA」は、世界中に知られる有名な場所になり、フランスでも、おそらく「FUKUSHIMA」を知らない人はいないでしょう。

 あの日、朝、起きて、習慣のようになっていたテレビの朝のニュース番組をつけると、まだ、ぼんやりとした頭に「ジャポン・TSUNAMI・・」という声が聞こえてきて、「えっ?」と思って、画面に目を向けると、流されていく車や家の映像に、思わず二度見して、果たしてこれは、現実の映像であるのだろうか?と、座り直して、テレビに釘付けになったのを覚えています。

 「TSUNAMI」という言葉は、あれ以来、フランスにもしっかりと定着し、今回コロナウィルスの感染状況を表すにあたっても、「TSUNAMI」がやってきた・・などの言い方をしているのを時々耳にします。

 フランスでは、現地のニュースで日本のニュースが流れることはあまりありませんが、あの時ばかりは、連日連夜、FUKUSHIMA・・FUKUSHIMA・・と、何日も特番が組まれ、荒れ果てた被災地の様子や被災者が避難所でもきちんと並んで配給を受けている様子なども逐一、報道されていました。

 その頃、通っていたスポーツジムなどでも、居合わせたフランス人に、「あなた、日本人でしょ、あなたのご家族は大丈夫だった? 大変だったわね・・日本人は、あんなに大変なことがあっても、慌てず、礼儀正しく、我慢強くて、きちんと並んで・・スゴいわね・・フランスであんなことがあったら、みんな殺し合いになるわよ・・」などと話しかけられることが何回もありました。

 あの時は、「なるほど、フランスであんなことがあったら、みんなパニックになって、さぞかし大変なことになるだろうな・・本人たちもちゃんとわかっているのだな・・」などと、心の中でこっそりと思ったりしていたものです。

 そして、形は違いえども、昨年から、コロナウィルスによるパンデミックというなかなかな困難な局面に世界中、ほぼ同時に直面している今、震災などの危機をくぐり抜けてきた日本とフランスはやっぱり違うんだな・・とあらためて感じています。

 それをどこまで実感しているかは別として、抜かりのないマクロン大統領は、3月11日、ツイッター上で震災から10年に際しての日本へのメッセージを発表しています。(以下全文)

 「Mon message au peuple japonais. Au nom de l'amitié qui nous unit.

   日本人へのメッセージ 私たちを結びつける友情の名において」. 

 「ちょうど10年前の2011年3月11日、日本はかつてない規模の大地震と津波に襲われました。今日、私は当然、何よりもまず、この恐ろしい震災の犠牲者と家族、全てを残してただちに避難しなければならなかった数十万人の被災者に思いを寄せます。

 フランスと世界中の多くの人びとと同様、私もこの日、これらの恐ろしい映像を通して、家族、町や村、すべての人々に想像を絶する苦しみを与えた荒れ狂う自然の驚異を思い知らされました。

 この悲劇に加え、原発事故と人々への影響に対する懸念が追い討ちをかけました。

 しかし、私はすべてのフランス人と同様に試練に見舞われた人々の勇気と尊厳、私たちも含め世界中に大きく広がった連帯と支援の輪、私たちを結ぶ友情の表れも目にすることができました。

 フランスの各都市、地方自治体、市民団体、企業、個人、日本在住のフランス人も含めフランス全体が被災者を支援しようと立ち上がりました。

 世界がパンデミックに直面している今、この場をお借りして日本国民の皆さんの抵抗する力、復元する力に敬意を表します。10年間、被災した地域を復興させ、活気を取り戻すために惜しみない努力が注がれてきました。

 今日、この希望のメッセージはフランス人と日本人、私たち皆にウィルスの試練を乗り越える力を与えてくれます。

 この希望のメッセージは、皆さんの国と皆さん一人一人が、この10年間、私たちに与えてくれたものです。

 「さあ、一緒に未来に目を向けましょう!」

 「MINASAN TO ISSYO NI MIRAI WO !」

https://twitter.com/EmmanuelMacron/status/1369887308854550531


 フランスは、たしかに困っている国を支援しようとする姿勢が強く、実際に行動も早いので、東日本大震災の時はもちろん、最近でも、私が覚えているだけでも、このコロナ禍の中、レバノンの湾岸地帯で大爆発が起こった後に暴動の様な状態になった時も、モーリシャス沖合で日本の貨物船が座礁して、大量の重油が流出した時も、すぐに声明を発表して、翌日には、救援隊を派遣しています。

 ちょっと、外面が良すぎる感は、ありますが、そのスピードと連帯の姿勢はスゴいなと思わされることも多いのです。

 しかし、このマクロン大統領の全編フランス語のメッセージ。

 日本人として、マクロン大統領が日本に向けてメッセージを発信してくれたことは、正直、嬉しかったのですが、なんだか、スッキリと響いてはきませんでした。

 日本へのメッセージというよりは、フランス国民、そして、世界に向けてのポーズであるようで、どこか空々しく、素直に私に伝わってこないのは、私が捻くれているせいでしょうか?

 日本語で語った最後の一言、「MINASAN TO ISSYO NI MIRAI WO」が虚しく響く気がしたのです。


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「モーリシャス沖合での日本貨物船座礁事故にだんまりを決める日本政府」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/08/blog-post_15.html

「100年に一度くらいのことが立て続けに起こる年 レバノンでの湾岸倉庫爆発事件」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/08/100.html

2021年3月10日水曜日

嫉妬による嫌がらせから起こった14歳の殺人事件 セーヌ川に捨てられた少女

  


 このところ、フランス各地で、10代の半ばのティーンエイジャーの事件が続発しています。

 その多くが地域のグループ同士による抗争がエスカレートした乱闘から、ナイフなどの凶器による傷害事件や殺人事件です。

 昨日もパリ16区の高校前で数十名が関与するグループ間の乱闘から3人が負傷し、1人が刺されるという事件が起こっています。ここのところ、このような傷害事件が続いているので、正直、またか・・という気持ちもありますが、これがパリ16区という高級住宅街で起こっていることはショッキングなことでした。

 この事件がこの高校の生徒が関係しているものかどうかはわかっていませんが、この高校(Lycée Jean de la fontaine)は、公立高校でありながら、日本語セクションがあり、正課で日本語が学べる高校で、一時は娘もその高校へ進学させようかと考えていたこともあったので、余計にショックが大きいです。

 先日もパリ15区で、14歳の少年が集団による凶暴な暴力を受けて、殺人未遂事件として扱われていますが、今度は、その隣の16区での事件、今や、この手の事件が必ずしも貧困する地域にばかり起こる事件ではなくなっていることがうかがえます。

 そして、同じ日に、14歳の少女が1人の少年を挟んだ三角関係から派生したトラブルから、セーヌ川で死体で発見されるという痛ましい事件が起こっています。

 彼らは、アルジャントゥイユ(ヴァルドワーズ・イル・ド・フランス)にある同じ高校に通う生徒でした。

 この事件は、血塗れになって交際中の彼女と共に帰宅した息子を不審に思った母親が少年に問いただしたところ、少年が母親に犯行を告白したため、母親は現場に行って確認したところ、血痕と髪の毛の付いた手袋を発見して、家に戻ったところ、彼らはすでに姿を消しており、取り乱した母親が隣人に相談、警察に通報しました。

 すぐに警察は、友人宅に隠れていた彼らを逮捕するとともに、すぐに遺体の捜索が行われました。

 具体的な犯行の動機はわかっていませんが、殺された少女は、数ヶ月にわたる嫌がらせを受け続けており、下着姿の写真をスナップチャットにあげられたり、一週間前には、この少年の交際相手の少女と激しい口論になっていたことを被害者の母親が語っています。

 この少女は顔や頭などを殴られた後に、橋の上からセーヌ川に落とされ(捨てられ)ており、この犯行が計画的なものであったのかどうかはわかっていません。

 しかしながら、この少年の交際相手の少女の嫉妬の感情が嫌がらせだけに留まることがなく、このような凶悪な暴力から殺人にまで至ってしまうことに震撼とさせられます。

 また、日本なら考えられないことですが、その日のうちに、被害者の両親と加害者の少年の母親が(別々にですが)、テレビのインタビューに答えて、顔を出して、彼らの思いをそれぞれに語っています。

 これまでも被害者の親が目撃証言などを求めて、テレビのインタビューに答えているのを見たことがありましたが、加害者の親がインタビューに顔を出して語っているのを見るのは稀なことです。

 彼の母親によれば、「昨年の9月に今の彼女と付き合い出してから、彼はすっかり変わってしまった。それまでは、どちらかといえば、内気でずっとパソコンに向かっているような子だったのに、彼に何が起こったのか、さっぱりわからない・・」と語っています。

 暗に、この事件は彼女にそそのかされたものであることを言いたかったのかどうかは、わかりませんが、彼自身がやったことを否定できるものではありません。

 しかし、ある日、息子が血塗れになって帰宅し、殺人を告白、夜中に殺人現場に確認に行かなければならなかった母親の苦悩も伝わってきます。

 14歳〜15歳といえば、感情をコントロールするのが難しい繊細な年頃でもありますが、それにしても、ここのところ耳にする暴力事件のほとんどは、この年頃のティーンエイジャーばかりです。

 娘が小さい頃(小学校低学年)に、日本で頂いてきたハローキティーの付いた帽子を学校にかぶって行ったら、嫉妬されて、その日のうちに、帽子を引きちぎられて帰ってきたことがあり、こちらの子供の嫉妬感情は激しいな・・と驚いたことがありましたが、中高校生、しかも恋愛感情が絡まれば、帽子を引きちぎる程度のことではすまないのかもしれません。

 しかし、普通、一般的には、健全な恋愛をしている年頃でもあり、加害者となった少年と少女には、何らかの精神的な問題があったかもしれません。

 彼らが通っていたのは、私立の学校で、今のところ、学校からのコメントは何も発表されていません。一般的にフランスの学校では、学校外で起こったことに関しては、感知しないとするケースが多いのですが、このように大々的で衝撃的に報道されてしまっている事件の加害者、被害者ともが通っていた学校としては、今後も知らない顔をして通すわけにもいかず、少なくとも、他の生徒の保護者に対しては、何らかの説明があると思われます。

 しかし、以前から、当事者同士で揉めごとになっており、スナップチャットに写真があげられるような嫌がらせを受けていたことがわかっていながら、このような深刻な事態にエスカレートする前に何とかならなかったものなのか?と周囲の人は悔やんでいるに違いありません。

 フランスでは、年間70万件の学校でのいじめ(嫌がらせ)の犠牲が報告されており、いじめに対する目撃証言や被害申告などを受け付ける無料電話サービス☎️3020が設けられています。


<関連>

「パリ15区での14歳の少年への集団襲撃事件」

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「グループ抗争による2件の乱闘事件で、中学生2名死亡 14歳は危険な年齢か?」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/02/14.html

「フランス人の嫉妬心と日本人の嫉妬心」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/09/blog-post_22.html



2021年3月9日火曜日

フランスの労働者保護の悪循環

   


 私は、長いこと、フランスで働いてきましたが、その間、良い意味でも悪い意味でも、日本にいたら、決して出会うことはなかったであろう人にずいぶん会ってきました。

 厳しい職場で、会社に言いたいこともたくさんありましたし、結構、言ってもきましたが、フランスで会社を良くしていくのは、大変なことで、特にできるスタッフの確保は大変なこと、話し合いをしても、結局、経営者に同情してしまう面も少なくありませんでした。

 というのも、フランスでは、法律で労働者が手厚く守られていて、一度、採用したら最後、社内で働かない人を解雇するのは、容易なことではないからです。

 雇用形態にもよるのですが、CDD(Contrat à Durée Déterminée )有期契約の場合はともかく、CDI(Contrat à Durée Indéterminée)(無期限契約)になると、会社の業績が悪化して、人員整理をしたい場合なども、勤続年数と給料を計算した法律による規定どおりの退職金を払わなければなりません。

 会社にとったら、有期契約を繰り返すのが、一番リスクが少ないのですが、同じ人との有期契約は、数回後の更新の際には無期限契約に切り替えなければなりません。

 ですから、フランスで人を雇うのは、大変なリスクで、たとえ、碌に働かない人がいても、解雇するのは、大変、難しいのです。また、フランス人の場合、その可能性も高いのです。

 だいたい、試用期間の間は、後に問題となる人も、大抵は、おとなしく、勤勉に働いたりしているのですが、その期間が終了し、契約が切り替わった時点で、人が変わったように、正体を表し始めるのです。

 そういう人は、大体、口だけは達者で、平気で嘘をつき、始末の悪いことに本人には、もはや嘘をついている自覚もありません。

「私のせいじゃない」「それは私の仕事ではない」は、フランスでとてもよく聞くセリフです。その上、時間にルーズ、おしゃべり、頑固、横柄、言い訳、責任転嫁・・フランス人にとても、多いタイプです。

 当然、その人のするはずの仕事が周囲の人に回っていくことになり、他の人の手柄を横取りし、周囲は、「やってられない・・」と、普通に仕事をしていた人までもが、士気が失せていきます。

 しかし、明白な背信行為や犯罪、余程の過失がない限り、経営者がその人を解雇するのは、大変、難しいことなのです。ですから、経営者は、試用期間中にその人の本性を見抜かなければなりません。

 それでも、解雇するには、その人の業務上の過失を正式な書面にして、本人に警告する手紙を送り、それが度重なる状態になって、初めて、解雇する話し合いに臨むことができます。

 大変な労力です。

 当然のことですが、勤続年数が長くなればなるほど、退職の際に支払う金額が跳ね上がるわけですから、経営者側は長く働いている人をやめさせることは、余程のことがなければ考えないわけで、逆に、勤続年数が長くなるほど、辞めさせられるリスクは減っていくわけで、長い人ほど、どんどん働かなくなっていき、終いには、会社に来ても、自分の退職後の年金の計算しかしなくなります。

 そうでなくとも、フランスでは、一週間の労働時間は、一週間35時間、バカンスは最低5週間と決められています。その上、税金、雇用保険、交通費補助、食事補助などのもろもろを含めて、経営者は、従業員の手取りの倍近くの金額を支払わなければなりません。

 立派な経歴や資格などが、必ずしもその人が、会社のためになる指標であるとは限りません。

 どこの世界でも、一度雇った人を解雇するのは、簡単なことではないとは思いますが、フランスの場合は、労働者を守る法律や労働者の権利の主張があまりに強く、また、黙って引き下がる人々でもないため、人を雇うということは、大変なリスクであるという気がしてなりません。

 逆に言えば、雇われている立場の方が余程、割り切ってしまえば、働かなくても、大きな顔をしていられるわけです。

 この労働者ファーストの労働者を異常に守るフランスの法律が、企業の足を引っ張る結果にもなっています。

 先日、起こったブリヂストンのべチューン工場閉鎖にまつわる労働組合の反発と国がかりの工場撤退への抵抗には、ここまでするのか?と、空恐ろしい感じさえしたものです。

 業績悪化に伴う工場閉鎖に対して、ブリヂストンは、正規の対応(くにの規定通りの退職金の支払い等)の段取りを踏んでいるにも関わらず、国がかりで、それは認めないなどと言い出すのですから、一度、フランスで工場など作ったら最後、撤退もままならない恐ろしい事態に陥るのです。

 ブリヂストンの話は、少し話が大きすぎる話ですが、しかし、この大きな話が小さな会社でも、基本的には、同じ理屈で作用しています。

 それは、フランスの格差社会とも関係があり、優秀な人が開発する素晴らしい技術などをこの労働者ファーストの制度を逆手にとって働かない人々が、せっかくの技術を使いきれないフランス社会の矛盾のようなものに繋がっているのです。


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ブリヂストン・フランス・べチューン工場閉鎖 ①」

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「ブリヂストン・フランス・べチューン工場閉鎖 ②」

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フランスの雇用問題」

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2021年3月8日月曜日

海外在住者の本人確認はパスポートではできない不思議




 私が日本に一時帰国するのは、家族や親戚、友人に会うためだったり、大量の日本食材の調達だったり、銀行などの用事だったり、その時々で色々あるのですが、その一つに、運転免許証の更新手続きがあります。

 もはや、たまに日本に行った時もほとんど日本で運転することはないのですが、私がどうしても日本の運転免許証を更新し続けなければならないのは、日本に行った時の身分証明書代わりに運転免許証が必要だからです。

 おかしなことに日本では、日本のパスポートを持っているのに、「パスポートでは本人確認ができません」と言われることが多いのです。

 パスポートを作る時には、戸籍謄本やそれなりの書類が必要で、その上で発行されているものでありながら、本人確認がその書類でできないというのは、どうにも意味がわかりません。

 身分証明するものは、「保険証」か、「運転免許証」あるいは、「マイナンバーカード」なのだそうです。

 長期間、日本にいない場合は、住民票を抜いているため、普通「保険証」はありませんし、「マイナンバーカード」を持っている人もあまりいないのが現実です。

 私自身も、「保険証」も「マイナンバーカード」も持っていないので、必然的に「運転免許証」が必要になるのです。

 パスポートではダメだと言われることはわかっているので、そこで無駄な押し問答をするのも嫌なので、「運転免許証」を更新し続け、身分証明書代わりに使っているのです。

 しかも、運転免許更新の期日間近のタイミングに必ずしも帰国できるとも限らないので、更新する必要のある年に帰る時には、期日前、半年くらい期限が残っていても、早めに更新してしまうので、その分は無駄にしてしまいます。だから、積算すれば、日本に住んでいる人よりも私は、多く免許証の更新をしていることになります。

 パスポートは、大使館でも更新できますが、運転免許証は更新できないので、えらく高くつく更新になりますが、仕方ありません。

 今は、簡単に日本に行くこともできず、免許証を更新できずにいる海外在住者もきっといるのではないかと思います。一度、失効すると手続きも面倒になってしまいます。

 しかし、私など日本で運転免許証を取っていたからまだ良いようなもので、免許証を持っていない人はどうしているのだろうか?と思います。一時的にでも、住民票を戻して保険証をもらうか? マイナンバーを登録してカードをもらうかしかありません。

 戸籍謄本まで提出して作られていて、おまけに写真までついていて、そもそも本人確認をするために存在するはずのパスポートです。しかも、日本のパスポートは世界一のパスポートなどと言われているのです。しかし、そのパスポートでは、日本国内では、本人確認ができないのですから、日本というのは不可思議な国です。

 フランスでは、全国民、また私のような外国人でさえも、IDカード(Carte d'identité)を持っているので、ほぼ全ての身分証明は、そのカードで済みます。逆にこれがないと大変です。

 カードには、それぞれナンバーがついているので、これが、日本でいうマイナンバーと同じ役割を果たしていると思われます。

 しかし、先日、娘がTGVの中でお財布を取られた際に、IDカードを一緒に取られて紛失した場合もフランスでは、パスポートで身分証明は可能でした。

 ついでに言わせてもらえれば、運転免許証などの和暦表示は、いいかげん、西暦表示にして欲しいものです。私の運転免許証の期限は、「平成36年1月」までとなっています。私がこの免許証を書き換えた時は、もうすでにその年には、平成が終わることになっていたのに、平成36年などとあり得ない記載をされて、すでに、今が令和何年であったかも危うくなっているのに、しかも平成・・。

 せめて、公的書類、証明書等は、西暦に変えて欲しいと思います。


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