彼女と知り合いになってから、ちょっと年数を明かすのも歳がバレる・・とはばかられるほどの月日が経っています。
私は、昨年も一時帰国をしていましたが、その時は、彼女の職場でコロナウィルス感染者が出たために、彼女は濃厚接触者として分類され、泣く泣く会うのを諦めていました。なので、考えてみれば、パンデミックの期間プラス1年余計に彼女には会えなかったわけです。
彼女とは、若い頃、一時、同じ会社に勤めていた時期があり、その時以来、付き合いが続いているのですが、それからお互いに職場を変わっても、そして、私が海外に出てからも、ずっと付き合いは続いていました。
今のようにネットが一般的ではなかった頃は、彼女は実に筆まめな人で、頻繁に手紙のやりとりをしていましたし、その後、ネットが通じるようになってからは特に定期的に連絡をとりつづけてきたので、遠く離れていても、会えば、すぐに昔のようにいつまでも話していられる・・そんな存在です。
会えるはずだったのに会えなかった昨年、私がフランスに帰国してしばらくして、彼女は彼女の人生において、なかなか大変な出来事、二人暮らしであった母親を看送るという一大事を経験していたのです。
お互いに大変な食いしん坊で、彼女は、仲間うちでは、食べログなどのサイトができる前から、「歩くグルメマップ」と呼ばれるほどの食通で、とにかく「食」へのこだわりがものすごく、また、その味覚もたしかなことから、帰国して、何が食べたい?どこで?というリクエストだけで、瞬時にいくつものお店の名前が出てくる・・そんな人なのです。
彼女がそんな仕上がりになったのも彼女の母親の影響が大きく、また若い自分からお互いを知っているだけあって、彼女の家に電話したりして、たとえ、彼女がいなくても、ついつい彼女のママと長話をしてしまう・・そんな付き合いだったのです。
海外で一人で子育てしていた私たち親子を彼女親子はいつも暖かく見守ってくれていて、娘が成人した時などは、まるで自分の家族のことのように喜んでくれたりしていたのです。
彼女の住まいは葉山の方にあり、私の実家からはえらく遠いために、大昔に一度、娘を連れてお邪魔したことはあったものの、たいていは都内のどこか美味しいお店で美味しいものを食べながら、おしゃべりするという感じでした。
しかし、今回ばかりは、彼女は母親を亡くしたばかり、彼女のママのお参りもかねて、今回は、彼女の家でゆっくりおしゃべりをしようと彼女とのおうち時間を過ごしに行ったのです。
長年、二人で暮らしてきた家に一人になった彼女の傷はまだ、癒えてはおらず、話をしながら、彼女は度々、涙ぐんでしまうこともあったのですが、そうして、彼女のママのことやらなんやらを二人で話続けていると、私にとっては、なんと至福のリラックスできる時間なのだろうかと思わされるのでした。
彼女のママが突然ガンを宣告されて4ヶ月、彼女の家族は深く話し合い、積極的な治療は受けずに自宅で最期を送るという選択をしたのです。日に日に弱っていく母親のもとで、彼女は献身的に介護を続け、とうとう最期を家で看取った話を静かに話してくれました。
この大変な決断をするにあたって、私が昔、イギリスのホスピスで勉強をしていた時の話がとても影響していたと話してくれました。
時にはぶつかることもあったようですが、それでも、最期の時間を自宅で過ごせたことは、大変な勇気のいることだったと同時に看取った後には、淋しい気持ちはもちろんあるものの、やれることはやったという自信が感じられました。
どんな人でも人生を全うするということは大変なこと。その大切な最期の時間をお互いの尊厳を傷つけずに乗り切った彼女を私はすごいな・・えらかったな・・と素直に思います。
そして、今さらのように気がついたことなのですが、(彼女のママには、「そんなこと、ずっと前からわかってたわよ!」と言われそうですが、)彼女のママについて、こんな人だった・・とか、あんなことを言っていたのよ・・という話を続けていると、実は私は、彼女のママに芯の部分が似ているところを持っている・・ということにあらためて気付かされ、二人がずっと仲良く付き合ってこられたのは、こんなところに秘密があったのではないか?と思わせられました。
しかし、こんな話を延々としつづけることのできる、私にとって、まさにかけがえのない親友の存在が、やっぱり私を満たしてくれることをあらためて、再認識し、とてもありがたいことであると思っています。
まだまだ、彼女の傷が癒えるのには時間がかかると思いますが、焦らず、無理をしないで、少しずつ自分の生活を大事にしていってほしい、そして、私と彼女がこういう時間を積み重ねていくことで、ますます絆を深め、ずっとずっと友達でいてほしいと思った夜でした。
親友
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