2022年3月8日火曜日

言論統制・報道規制の恐怖 プーチン大統領を止められるのは誰か? 

    戦時下となった今、世界の動向や報道は見逃せないので、色々な国の報道に目を通しているのですが、どこでも「プーチン大統領を止められるのは誰か?」、「なぜ、このような事態に陥ったのか?」など、現在の状況に加えて、それを検証するようなテーマの記事が並んでいます。 過去の歴史を引きずっている歴史的な背景やプーチン大統領の軌跡、経歴、人格の変化や彼がここまでの暴挙に及んだタイミングがなぜ、今だったのか?などなど、似たようなテーマがならんでいます。 中には、パンデミックが彼を孤独にした・・とか、彼の年齢(ロシア人男性の平均寿命に近い年齢であること)までもが語られています。 海外の政治的な...

2022年3月7日月曜日

在ウクライナ フランス大使館250万人分のヨウ素剤の用意とウクライナからの国民退避についての国の対応

    先日、一時、総理大臣候補とも言われた日本の衆議院議員のツイートで、「ロシアの侵略開始によって、ウクライナ残留を希望しておられた在留邦人約120名の方々は退避を決意して下さったのかと外務省に確認しましたが、ごく少数の方以外の状況はかわっていないそうです。よって、大使はじめ邦人保護に携わっておられる大使館員も退避できず、邦人の安否が心配でなりません。」というツイートを見て、愕然としました。 戦場となっている惨状の中で退避できない邦人には、余程の事情があるか、余程の覚悟があるはずです。また、ウクライナにいる日本人が「PCR検査で陽性になったために、帰国できない・・」というツイートも目にしています。 この日本の政治家は、ウクライナの日本大使(大使館員)ではないので、実際に在ウクライナ日本大使館がどのように在留邦人に接しているのかはわかりませんが、日本でも名の知れた政治家のこのような発言の意味は決して小さいものではなく、かなりショッキングなものでした。 捉えようによっては、「在留邦人のために大使および大使館員が退避できずに迷惑している」ということで、挙句の果てに「邦人の安否が心配でならない」という偽善者めいた言葉が添えられていることに、えも言われぬ不快感を感じました。 大使館の仕事には、災害や事件などが起こった際に自国民の命を守ることも含まれています。しかし、その命には、その人の人生や生活も含まれています。未だウクライナに残る人は、退避を希望していても、物理的に不可能だという場合は別として、命をかけてでも守りたいものがそこにあるということです。 非常時ゆえ、退避を勧告するのは、当然としても、残留する人のために大使、大使館員が退去できない・・というのは、あまりの言い方です。これは在ウクライナ大使の発言ではありませんが、この日本の政治家には、ガッカリさせられたのでした。 一方、昨日、在ウクライナ...

2022年3月6日日曜日

137万人のウクライナからの退避難民の受け入れと海外生活の不安

   昨日のウクライナ戦争に反対するデモは、フランス全土で4万人以上動員したと伝えられています。同じ主旨の抗議デモが世界中で起こっていることも同時に伝えられ、なぜか、日本からポルトガルまで・・と日本でのデモの様子もフランスのテレビで報道されていました。 すでに、世界各国からウクライナ在住の国民に対しての避難勧告が出されていますが、当然、ウクライナ国民もまた、国外を脱出し、ロシアからの侵攻が開始されて以来、約137万人が国外脱出しています。 ヨーロッパ各国は、ウクライナから避難する人々については、交通機関を無料で提供したり、ポーランドなどの国境では、食糧や生活必需品などを提供したり、車での他のヨーロッパ諸国への交通手段を提供したりして避難民を受け入れています。 しかし、またこの一方で、「この人々が一体、どこに行くのか? ウクライナの現在の壊滅的な状況から、一時的な避難とはなり得ないであろうことから、この避難民受け入れを長期的なスパンで考えなければならない」という声が上がっています。 日本の岸田首相もウクライナからの難民を受け入れることを発表し、「まずは、家族が日本にいる人々から・・」と説明していましたが、とりあえず逃げるのに、日本は遠すぎて、あまり現実的でもないかな?と思ったりしました。 そこは、地続きのヨーロッパ、命からがら逃げてくる人々を一先ず受け入れることは、人道的に当然のことです。事実、案外簡単に難民を受け入れているヨーロッパの人々も少なくないことに、素晴らしいなぁと思う反面、長期化すれば、それはそれで問題が起こるかもしれない・・と、私は、穿った見方もしてしまいます。 例えば、もしもフランスに逃げてきた人がいたとして、誰かを家に泊めてあげたり、食料を提供したりできるか?と言われれば、それは簡単な話ではありません。なんとか、力になってあげたいという気持ちはあっても、せいぜい食料品や生活必需品の一部を寄付する程度しかできません。 この長期化しそうな戦争の状態を見ても、そうそう易々とは、本国に帰ることは不可能で、一時的な避難場所を提供したつもりが、家を乗っ取られたりするかもしれない・・などと思ってしまうのです。 ただでさえ、国を変えて生活するということは、大変なことで、戦時下でなくとも、海外(外国)で生活しているだけでも、常に問題は山積みなのです。よほど懐が大きい人でなければ(経済的、精神的にも)とても、個人が背負い切れるものではありません。国や団体などでの対応が求められる問題です。 外交と制裁で戦争回避の道を探っているヨーロッパではありますが、マクロン大統領との直近のプーチン大統領との電話会談でも、プーチン大統領は、まるで侵攻をやめる兆しがありません。 戦争回避の道を探ると同時に、ヨーロッパ諸国は、このウクライナからの避難民の受け入れ後の長期滞在対策を考えなければなりません。 ロシアは、国民の退避のために、ウクライナでの一部地域での一時停戦を受け入れたと言われていますが、これは、あくまでも一時的な停戦で戦争を止めるということではありません。 ロシアからの国民の退避のために一時停戦の申し入れなど、これまでの経過を見ると、不気味でしかなく、その後にドカンと核などの兵器を使って猛攻撃を予定しているのではないか?あとになって、「だから、逃げろと言っただろ・・」と言い訳をするような気がしてなりません。 避難民受け入れどころか、パンデミックから戦争に突入して、「やっぱり日本にいた方がいいのかも・・」などという考えが時々、頭をよぎる私。実際、海外在住者がこの際、本帰国すると言っている人の話もちらほら聞こえてきます。かといって、生活の基盤である国を変えるというのは、そんな簡単な話ではありません。 しかし、ヨーロッパにも飛び火しないとも言えないこの戦争にいつ、私自身が避難民になるかわからない、とても他人事ではない問題なのです。ウクライナ難民問題<関連記事>「ロシア人でもあり、ウクライナ人でもあった元同僚の話」「世界中の共通の敵への制裁という団結とフランスの大統領選挙」「3月からの日本への入国措置の緩和とウクライナからの日本帰国」「現在のウクライナ戦争へのフランスの対応とマクロン大統領のウクライナ・ロシア首脳との電話会談」「フランス政府...

2022年3月5日土曜日

マクロン大統領が書面で出馬表明した理由

     マクロン大統領が次期大統領選に立つことは、公然の事実でした。しかし、マクロン大統領は、ギリギリまで正式な出馬表明をしないまま、本当に公示締切寸前に、ようやく正式に次期大統領選挙に立候補することを表明しました。 もともと、かなり、遅いタイミングに出馬表明をする予定にはしていたものの、ウクライナ戦争が勃発したことにより、現在の大統領としての任務のために、それは、本当に最後の滑り込みのような発表になりました。 マクロン大統領は、コロナウィルス感染の状況が、ある程度、落ち着き始めた段階で、立候補を表明し、候補者としてテレビのインタビューや、彼に対する批判の多い地域への遊説行脚を予定していました。 しかし、これらの予定は、プーチン大統領のウクライナ侵攻により、現職大統領としての職務が予断を許さない状況になったことで、すべてキャンセルされ、自らを候補者と宣言するチャンスを失ってしまいました。 何よりも、現在の緊迫したロシア・ウクライナをはじめとする世界各国との連携とそれをフランス国民やヨーロッパ全体にメッセージを送る立場にある彼が、ここで大統領選挙への出馬を自分の口から表明することは、この現職の大統領としての戦争危機に対する発信をぼやかしてしまうことになり、敢えて、書面での立候補の表明というかたちを取ったものと思われます。 現職の大統領である彼にとっては、この世界中を巻き込む危機への対応をこなしていくことが何よりも国民の信頼を得ることになり、また、この戦争危機対応においては、何よりも優先されて報道されていますから、この重大な責務を果たしていくことが何よりもの彼のアピールにもなるのです。 マクロン大統領は、この立候補表明の書面で、彼が大統領に就任して以来の5年間が、テロ、黄色いベスト運動、パンデミック、そしてヨーロッパでの戦争とフランスがかつてないほどの危機に直面してきた中で、私たちは威厳と友愛をもって、それらの問題ひとつひとつに私たちは決して諦めることなく取り組んできたと綴っています。 このような数々の危機が襲いかかる中でも、私たちは様々な改革によって、雇用を取り戻し、失業率はこの15年間で最低の水準になり、国民の努力のおかげで病院や研究への投資、軍隊の強化、警察官、憲兵隊員、裁判官、教師の採用、ガス・石油・石炭などの燃料への依存度の低減、農業の近代化の継続が可能になりました。 おかげで、パンデミックの赤字を減少させ、5年間を通じて、前例のないほど税金を下げることができました。その結果が、私たちの信頼性を高め、主要な隣国に対して、自らを守り、歴史の流れを左右することのできるヨーロッパの大国の建設を始めるよう説得することを可能にしたのです。 この5年間の功績についての文面は、マクロン大統領にしては、非常に謙虚な感じではありますが、お得意の自画自賛でもあります。 「しかし、私たちはすべてを達成したわけではなく、今までの経験を生かせば、間違いなく違う選択をするはずです。そして、この2年間に経験した危機への取り組みは、これこそが進むべき道であることを示している」と続けています。 この書面の中で、興味深いのは、彼が「子供たちのためにフランスを築いていくこと、民主主義への脅威、格差の拡大、気候変動、人口動態の変化、テクノロジーの変革など急速な激変を経験している中、間違えてはいけないのは、私たちは撤退を選択したり、ノスタルジーを抱いたりすることでこれらの課題に対応するのではなく、謙虚に、そして明晰に現在を見つめ、未来への大胆さと強い意志を捨てずに子供たちのフランスを作っていく」という部分です。 これは、現在のウクライナやロシアの問題を示唆しているとも読み取ることができます。過去を蒸し返すのではなく、現在、そして未来を見つめて決して諦めずに前に向かって進む姿勢を崩さないということです。 そして、彼は、最後に「私たちは、この危機の時代を、フランスとヨーロッパの新しい時代の出発点にすることができるのです。あなたと一緒に。あなたのために...

2022年3月4日金曜日

フランスが3月14日からのワクチンパスポート廃止を発表した理由

    昨日行われた国防会議の結果、フランスは、3月14日からワクチンパスポートを撤廃することを決定しました。あれだけ大騒ぎして起用したワクチンパスも、オミクロン株への移行や、それによる感染の急激な減少と、何より「戦争」のために、想像以上に早い撤廃になり、あの騒ぎは一体、なんだったのか?と、なんだか拍子抜けな気もします。 ここのところ、フランスの報道は、「ウクライナ戦争」でほぼ一色となっており、コロナ関連のニュースはほとんど報道されないようになっていました。それだけコロナ問題はおさまる方向に進んでいたということでもありますが・・。 年末年始にかけてのフランスは、1日の新規感染者数が30万人超えまでになり、本当に一時はどうなってしまうのか?と思っていましたが、その後、ブースター接種も比較的、順調に進み、感染状況は、どんどん改善してきました。 2月に入ってテレワークの義務化が撤廃され、2月16日からはディスコ・ナイトクラブの営業が再開され、2月末には、ワクチンパスポートの提示が義務付けられている場所(公共交通機関や医療施設・高齢者施設は除く)でのマスク義務化が解除され、その時点では、ワクチンパスの廃止は、医療状態が平常状態に戻った場合には、3月末か4月に可能になるかもしれないと発表されていました。 当時、フランス政府はカナダで起こっていた「ワクチン接種義務化に反対する大規模なデモ「自由の車列(Freedom...

2022年3月3日木曜日

ロシア人でもあり、ウクライナ人でもあった元同僚の話

  ウクライナ・キエフから退避するための電車を待つ人々 久しく話をしていなかった友人と電話でおしゃべりをしていて、お互いの近況や家族のことや、少し先の予定の話などをして、話はロシアとウクライナの話になり、そういえば、この間、彼女と話したよ・・という話になったのです。 彼女とは、ロシア人の元同僚の女性の共通の知人のことでした。私は、その職場を離れて以来、連絡を直接取ってはいなかったのですが、私の友人は時折、彼女と連絡をとりあっていました。 私は、彼女とはそれほど親しくはなく、彼女はてっきりロシア人だと思っていたのですが、友人によると、彼女は、ウクライナ人で、彼女の家族はまだウクライナ...

2022年3月2日水曜日

世界中の共通の敵への制裁という団結とフランスの大統領選挙

  ジュネーブで開かれた国連人権理事会でのロシア外相演説で退席する外交団 緊迫するロシアのウクライナへの侵攻が続く中、世界中の国々がロシアを避難し、ロシアへの制裁に加わり、その輪が広がっています。 最初は、ロシア対ウクライナ、アメリカ間でのせめぎ合いに、フランスのマクロン大統領が仲介に入ってロシアへの説得を続け、プーチン大統領とバイデン首相の話し合いの段取りをつけた直後に、ロシアがウクライナへの侵攻を開始したのには、世界中が驚愕しました。 当初からロシアがウクライナに侵攻した場合の制裁を宣言していたアメリカに続き、イギリス、ドイツ、フランス・・から、その制裁参加国は、いつしかG7(日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ)に広がり、今や32カ国がロシアへの制裁に参加していると言われています。 これまで、武器供与などに関しては消極的な態度をとっていたドイツもドイツ自身にとっても歴史的な変換と言われる「国防費を昨年の倍以上の1,000億ユーロに大幅に増加させる」という大きな決断を下しました。 ロシアは、ウクライナへの侵攻により、結果的にウクライナとの間での争点のきっかけとなったNATO(北大西洋条約機構)参加国以外の国までも敵に回し、EU加盟国でありながら、NATOには加盟していないフィンランドやスウェーデンがウクライナに武器を供与する方針を発表しています。 いずれの国(フィンランド、スェーデン)も、これまで紛争国に武器を送らないという方針を長らく貫いていた国であり、フィンランドやスウェーデンにとっても歴史的な決断とされています。 また、永世中立国であるはずのスイスでさえも、EU(欧州連合)が課した経済制裁を全面的に適用することを発表。 英ガーディアン紙によると、スイス国立銀行には、ロシア関係の預金額が112億ドル(約1兆2800億円)に上ると言われています。ロシアの富裕層の隠し資産の最大の拠点であるスイス銀行までもが資産凍結という事態はさすがのプーチン大統領も予想できていなかったのではないかと思います。 プーチン大統領は、アメリカ、G7、NATOのみならず、世界の多くの国を敵にまわし、ロシア国民でさえも「この戦争をロシアの侵攻とは言わないでほしい(プーチンの侵攻と言ってくれ!)」と叫び、背を向けられ始め、四面楚歌に近づいています。 まさに共通の敵を持った世界中の国々が一見、結束しているようにも見えますが、一方では、共通の敵で団結したグループの繋がりは脆弱で長続きしないとも言われます。 現在のまさに戦渦、共通の敵ロシアに制裁を行うことは必要なことであると思われますが、この機に、これまでの掟破りに踏み切った国々が、これまでの蛇口を緩め、今後、どのように変化していってしまうかということも不安なことでもあります。 フランス国内でも、国民の目がウクライナ戦争に関する注目が集中し、大統領選挙に関する報道は大幅に削られています。 大統領選挙の公示期限が迫った現在でも、マクロン大統領は立候補を正式に表明する時間もなく、(昨日も日本の岸田首相をはじめ、アゼルバイジャン、フィンランド、リトアニア、インドの首脳と電話会談)、ましてや選挙活動なども全くできていないのですが、大統領選挙に関する世論調査では、マクロン大統領の支持率は、これまでの最高となっています。 マクロン大統領は2月にモスクワでプーチン大統領と会談したほか、ウクライナのゼレンスキー首相、プーチン大統領、バイデン大統領の他、世界の首脳と長時間電話対談を行い続けており、削られている大統領選挙の報道のかわりにマクロン大統領の活躍が逆にクローズアップされ、ウクライナを応援するフランス国民心情が、マクロン大統領への評価に繋がっているとも言えます。 現在、プーチン大統領はフランスの国民心情としても敵であり、その共通の敵と世界の首脳をリードして戦うマクロン大統領は、共通の敵を持つ頼もしい同士・リーダーと見られている感じがあります。 実際に今回のマクロン大統領の活躍はめざましいものではありますが、この「共通の敵」への盛り上がりは、世界にしても、フランス国内にしても、そして、ごくごく身近な私たちの人間関係におきかえても、考えさせられる面を孕んでいるような気がするのです。共通の敵 ウクライナ戦争 フランス大統領選挙<関連記事>「ロシア・ウクライナ問題 パンデミックの次は、本当の戦争の危機」「フランス政府...