2022年3月11日金曜日

美しすぎるヴェルサイユ宮殿でのEU首脳会議

  


 3月10日〜11日の2日間にわたり、ベルサイユ宮殿でEU(欧州連合)首脳会議が開かれています。

 今回のEUサミットは危機管理サミットとも呼ばれ、ロシアのウクライナ侵攻で浮き彫りとなったその弱点をより主権的なものにするための基礎作りと言われています。

 このサミット開催に先駆けて、エリゼ宮は「プーチン大統領によって開始されたウクライナ戦争とそれに関する次のステップをこのサミットの夕食会で議論することを発表。

 27カ国の首脳は、ウクライナ戦争がもたらす経済・安全保障上の課題について議論し、2月24日に始まったロシアの侵攻の衝撃に対する経済的・軍事的対応を図るために話し合いをし、欧州全体としての方針を統一し、ヨーロッパ全体の連帯を強めていくとしています。

 マクロン大統領は、「ヨーロッパはパンデミックの打撃を受けて変化したが、戦争の打撃を受けてより速く、より強く変化するだろう」と宣言しました。



 2週間にわたる紛争の後、欧州諸国の制裁はロシアに降り注いでおり、ヨーロッパ諸国では、すべてまたは一部の関係を切断する企業が増えるなど、影響が拡大しています。 しかし、ウクライナのEU加盟が加速することはなく、ウクライナのEU加盟について、オランダのマーク・ルッテ首相は「迅速な手続きはない」と述べています。

 キエフは「遅滞なく」加盟することを希望して申請していますが、欧州連盟は、「ウクライナと集中的に協力したい」ということを再確認するにとどまっています。

「戦争をしている国に、今すぐに、加盟手続きを開始することができるのか? それは現実的な話ではありませんが、この戦争によって、27カ国は「ヨーロッパの構造を完全に再定義するための「歴史的な決定」を下すことになるだろう」と、マクロン大統領は述べています。

 プーチン大統領によって解き放たれた戦争は、冷戦終結後に27の加盟国が予算を大幅に削減したことによるヨーロッパの軍事力の欠如を浮き彫りにしています。

 またロシアへのエネルギー依存についても、EUが消費の40%を占めるロシアの輸入ガスに極度に依存しており、モスクワに対して行動する能力が制限されていることも浮き彫りにしました。

 現在のヨーロッパは、経済制裁を強める一方で、エネルギー購入を通じてロシアに資金を提供し続けているのです。

 このロシアへのエネルギー依存の現状は、コロナウィルスによるパンデミックという歴史的にも強い衝撃を受けたヨーロッパが、さらに強固な経済基盤を必要としているEU加盟国にとっての脅威でもあります。

 このサミットでは、今後数ヶ月の間に実施される政策ガイドラインが示される予定になっており、NATOの重要な役割を再確認した27カ国は、「軍事力により多く、より良く」投資する意志を強調し、防衛戦略は月末までに発表される予定です。

 具体的には、今年からロシアのガスへの依存度を3分の2に減らし、供給元の多様化や再生可能エネルギー、水素などの代替エネルギーの開発により、ロシアからの石炭と石油の輸入を削減するという計画も検討されています。 

 ガス貯蔵の強化はもちろん、スペインやフランスが求める「電力市場の機能最適化」にも言及し、欧州消費者のエネルギー価格上昇の影響を緩和するための新たな緊急措置にも取り組むとしています。

 現在、フランスでは、ガソリンが1リットル2ユーロ(約260円)を超え、過去?の「黄色いベスト」運動に見られたような社会不安が懸念されています。

 しかし、このサミットの内容はもちろんのこと、このサミットが行われた場所がベルサイユ宮殿で、ちょっとこれは、反則・・と思われるほどの美しさ。このサミットに参加した欧州各国の首脳も圧倒されたであろうし、この映像が全世界に流れることを十分に意識した会場のセッティング。

 フランスは、自国を美しく見せることにかけては天才的、パリ祭のパレードなどは、圧巻の美しさですが、このような全世界に発信されるイベント?の一つ一つにもその演出、ステージ作りはちょっとずるいくらい美しいのです。

 そもそも、ベルサイユ宮殿という、存在そのものがすでに圧倒的に美しい場所を使用し、最高の美しさを演出することを怠らないのです。

 おフランスのイメージは、こんな場面を見せつけられることの積み重ねで築かれ、保ち続けられているのだろうな・・とそんな下世話な感想も持ったのでした。

 この報道とともに流されていたのは、2017年にベルサイユ宮殿を訪れた時の映像で、マクロン大統領とプーチン大統領がナポレオンが侵攻していた頃の大きな何枚もの絵画が壁面に飾られたベルサイユ宮殿の中を歩いている様子。

 



 今回の侵攻にあたって、プーチン大統領の思考回路には、過去の歴史が根付いていることが語られている今、この空間を当時のプーチン大統領は、どんな気持ちで歩いていたのだろうか? などということまで考えてしまいます。


ベルサイユ宮殿EU首脳会談 EUサミット


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2022年3月10日木曜日

パリから日本行きの直行便キャンセル 国際郵便も届かない

  


 

 私が最後に日本に行ったのは、パンデミックが始まりかけた2020年の2月のことでした。2月末にフランスに戻る際は、日本でのダイヤモンドプリンセス号でのコロナ感染拡大が騒ぎになっていた頃で、むしろ、日本からの入国を断られるかと心配だったくらいでした。

 その際に私が日本に帰国したのは、色々な用事があったのですが、特には、その後に日本に留学する予定になっていた娘が日本滞在時に使用できるカードを作りに行くのが目的でした。

 その後、すぐにコロナウィルスは、あっという間に広がり、特にヨーロッパの被害は甚大で、娘の留学のチャンスも2度キャンセルになった挙句に結局、実現せず、せっかく作ったカードも使われることもなく終わり、当然、私もこの間、日本に行くことはできませんでした。

 この間、親が危篤になっても、亡くなっても日本へ行けなかった在外邦人はたくさんいたはずです。

 そして、今年に入ってしばらくして、コロナウィルスもようやくおさまり始め(とはいっても、全く感染の心配がないわけではありませんが)、2月に入って、日本の入国規制が緩和され始めた時に、たまたま日本での用事ができて、フランスから日本への入国のための強制隔離施設での隔離が撤廃された段階で、日本行きのチケットを予約していました。

 先方から、「感染対策を含めて、日本へは直行便でお願いします」という縛りもあり、JALのパリ⇄羽田便を予約していました。(この時点で、すでにエールフランスの便は欠航を決定済み)

 予約した際には、ウクライナ問題は不穏な空気ではありましたが、まさか、これほどの状況にはなるまいとたかを括っていたのです。

 その間に、フランスから日本への入国はワクチン3回接種済みの人に関しては、隔離も撤廃され、これ幸いと思っていたのですが、ロシアのウクライナへの侵攻が日に日に悲惨になり、ヨーロッパ⇄日本便もロシア上空を飛べなくなりました。

 しかし、ロンドンからの便は、迂回経路を使って、直行便が飛んでいるにもかかわらず、パリ(欧州)からの便はキャンセル・・そのうち、パリからの便も迂回経路を飛んでくれるようになるだろうと思っていたのに、私の予約した便は、1週間前になって、まさかのキャンセルになり、呆然。

 予約を変更しようにも、一体、いつになったら、この戦争がおさまるかもわからずに一体、いつに変更すれば良いのかもわからないので、とりあえずキャンセルする羽目になりました。

 今の戦況を見ていると、しばらくは悪化することはあっても、改善される希望は少ないです。

 ようやく日本への入国制限が緩和されて間もないというのに、今度はまさかの戦争のために日本への帰国は、また一層、難しくなってしまいました。しかも、イギリス、ベルギー、ドイツ、フィンランド、フランスなど18カ国への国際郵便でさえもストップしてしまいました。

 経由便でさえも、戦況の変化によっては、いつ欠航になるかもわからない、また、なんとか帰国できても、今度は、帰る頃に、無事にフランスに戻る便が飛んでいるかどうかもわからないのです。

 こんなことなら、隔離期間があっても、もう少し前に行っておくべきだったと思わないでもありませんが、一難去って、また一難、娘の留学の際にも受け入れ先の大学のドタキャン(コロナ対策のために留学生は受け付けないとのことでした)のために、チケットを紙屑にしています。

 一体、日本行きへの障害はいつまで続くのか?と、もう本当にうんざりしています。


JALパリ・羽田直行便キャンセル



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2022年3月9日水曜日

ヨウ素剤の服用法が話題にあがり始めている物騒な世の中

  


 在ウクライナフランス大使館が250万人分のヨウ素剤を用意したと発表されて以来、俄かに「ヨウ素剤」についての報道をちらほら見かけるようになってきました。

「原子力災害時のヨウ素剤の用途は?」、「ヨウ素剤服用の効用」、「ヨウ素剤服用の注意点」などなど・・。

 そもそも話題に「ヨウ素剤」が取り上げられる時点で、なかなかな物騒な状況です。

 「ヨウ素剤」など、日頃、話題にあがらない単語でもあり、そのような単語が話題に持ち上がること自体が受け入れ難い気がしていますが、同時に無視しきれない現実でもあります。

 「ロシアは最も強力な核保有国」と威圧し、実際にウクライナの原子力発電所の一部を占拠しているプーチン大統領の発言と攻撃は、これまでの各国首脳との話し合いがことごとく無視されている経過からも、「核を本気で使いかねない」というムードがフランスでも高まっているのです。

 そのムードがフランス国内でも「ヨウ素剤」が話題に上がり始める異様な状況を生み出しており、実際に、薬局にヨウ素剤を買い求めに行こうとする人まで登場しています。

 ヨウ素とは、そもそも健康に絶対必要な天然微量元素。甲状腺で作られるホルモンの成分で、吸い込んだり摂取したヨウ素と結合します。放射性物質を含まない安定ヨウ素剤は、放射能汚染から甲状腺を守る役割を果たします。

 原子力施設で重大事故が発生した場合、放射性ヨウ素が大気中に放出される可能性があり、この放射性元素を吸引したり、汚染された食品を摂取することで、甲状腺がんのリスクを高める放射線照射の一因となると言われています。 

 1986年のチェルノブイリ原発事故では、放射性ヨウ素が大量に放出され、ベラルーシ、ウクライナ、ロシア連邦西部の汚染地域に住む人々には、甲状腺がんの発生率が高いことが確認されています。

  甲状腺が放射性ヨウ素と結合するのを防ぐため、安定ヨウ素剤摂取が被ばく者の健康を守る一つの方法です。 スポンジのように安定ヨウ素で飽和した甲状腺は、放射性ヨウ素を固定することができなくなるのです。そのため、尿から速やかに自然に排出することができます。

 しかし、安定ヨウ素剤は、すべての危険を防いでくれるわけではなく、 原子力安全局(ASN)は、「安定ヨウ素剤が守るのは甲状腺という一つの臓器だけであり、原発事故が起きた場合、まず固い建物に避難することが第一の防御策である」との見解を示しています。

 また、この薬は、放射線防護ワクチンでも永久治療薬でもなく、放射能にさらされる1時間前、遅くともその後6~12時間以内に服用するのが理想的とされています。

 しかも、予防のために安定ヨウ素剤を服用しても意味がなく、役に立たないばかりか、アレルギーなどの副作用を引き起こす可能性があるとも伝えられています。また、過剰摂取は、甲状腺機能障害やある種の心臓や腎臓の副作用を引き起こす可能性もあり、これを無秩序に服用する危険性も説明しています。

 フランスでは、この放射能対応のヨウ素剤は、1997年以来、公的機関によって、原子力発電所周辺、半径20キロメートル以内の地域においては、配備されているようです。

 一般的に薬局で市販されているヨウ素剤(サプリのようなもの)は、放射能対策として使用される錠剤(130mg)に対して、150マイクログラムのみで、放射能汚染に有効なものではありません。

 昨日、たまたまかかりつけのお医者さんにいつも飲んでいる薬の処方箋をもらいに行った時、「この安定ヨウ素剤というものは、買うことができるの?」と聞いてみたところ、「パリでは、APHP(パリ公立病院連合)がまとめて管理していて、必要な事態になったら、配布される準備がなされているとのこと。

 しかし、彼女は、「でも、もしパリでそんな薬が配布される事態になったら、薬を飲む間もなく、私たちはもう生きていない・・」と絶望的なひとこと。

 コロナウィルス対応のワクチン接種が始まった当時は、副作用などを恐れてワクチン接種を躊躇していましたが、今回のヨウ素剤に関しては、どうやら12時間以内という待ったなしです。

 この狂気の戦争がこれ以上の悲劇を生まないうちに終結してくれますように・・。


ヨウ素剤 安定ヨウ素剤


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2022年3月8日火曜日

言論統制・報道規制の恐怖 プーチン大統領を止められるのは誰か? 

   



 戦時下となった今、世界の動向や報道は見逃せないので、色々な国の報道に目を通しているのですが、どこでも「プーチン大統領を止められるのは誰か?」、「なぜ、このような事態に陥ったのか?」など、現在の状況に加えて、それを検証するようなテーマの記事が並んでいます。

 過去の歴史を引きずっている歴史的な背景やプーチン大統領の軌跡、経歴、人格の変化や彼がここまでの暴挙に及んだタイミングがなぜ、今だったのか?などなど、似たようなテーマがならんでいます。

 中には、パンデミックが彼を孤独にした・・とか、彼の年齢(ロシア人男性の平均寿命に近い年齢であること)までもが語られています。

 海外の政治的な情勢、特にアメリカの大統領がトランプ大統領からバイデン大統領に、ドイツの首相がメルケル氏からショルツ首相に変わったことなども挙げられ、もしかしたら、プーチンを止められるのは、メルケル首相だったかもしれない・・などという人もいます。

 ユーロ危機、クリミア危機での外交をこなしながら、16年間もの長期政権を築き、ヨーロッパの母のような存在でもあり、世界から一目置かれる存在であったうえに、プーチン大統領もメルケル元首相もお互いにドイツ語、ロシア語が堪能で、お互いの母国語で通訳を介することなく、ほぼ母国語と同レベルで話すことができたということなどもその理由に挙げられています。

 このような局面ではないにせよ、また、どんな人にとっても、言語の壁を越えて話ができるということは、すごく大切なことです。

 しかし、彼女が首相を退陣している現在では、対等に話せる立場ではなく、また、プーチン大統領が他人をまるで寄せ付けないようになっている現在では、そんなことも望めません。

 彼の周囲の政府陣営でさえ、誰も彼に物申すことができる人がいない今、彼を止めることができるのは、ロシア国民の大衆の大きな声、うねりだけかもしれません。

 そんなことを本人も察しているのか、ロシア政府は、厳しい言論統制、報道統制を敷き、自分に都合のよいニュースを都合のよいこじつけと嘘にまみれたニュースのみを流し、声をあげようとする国民を拘束したり、報道陣を締め出したり、フェイスブックやツイッターなどをシャットダウンしたり、国民に情報が入らないようにしています。

 この世界中を騒がしている渦の中心にいるロシア人が一番、現状を知ることができないという恐ろしい状況です。他に情報が入らない中、唯一入るニュースが政府に都合のよいニュースだけとは、一種の洗脳のようなものでもあります。

 一昨年のロックダウン中に一時、家のネット環境がダウンした数日がありましたが、それでさえ、とても不安になった覚えがあります。

 テレビの報道というのは、政府や世間への忖度もあり、少なからず偏りもあります。ネットなどのより多くの情報が必要です。しかし、ネットというものは、自分でニュースを選ぶという点から、自分が受け入れやすい内容のものばかりを選んでしまうという危険もあります。

 テレビ自体を持たない、テレビを見ない世代が増え、テレビ業界は、危機に瀕しているとも言われていますが、テレビしか見ないという一定の層が存在します。ロシアの現在は極端な例としても、テレビの情報だけというのは危険でもあります。

 現在のロシアの状況は、異常な報道規制下にありますが、情報が十分に入らなくても、現在のロシアへの経済制裁から、ロシア国内でも反発は広がっているようです。ここは、当のロシア国民が結束して、反発してくれない限り、今こそロシア国民が立ち上がってプーチン大統領を追放しない限り、さらなる戦況の悪化は避けられないような気がしています。

 フランスのニュースでは、「プーチン大統領を止められるのは誰か?」ではなく、「プーチン大統領は制御不能か?」というタイトルに変わりつつあります。


ロシアの報道規制 言論統制


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2022年3月7日月曜日

在ウクライナ フランス大使館250万人分のヨウ素剤の用意とウクライナからの国民退避についての国の対応

   


 先日、一時、総理大臣候補とも言われた日本の衆議院議員のツイートで、「ロシアの侵略開始によって、ウクライナ残留を希望しておられた在留邦人約120名の方々は退避を決意して下さったのかと外務省に確認しましたが、ごく少数の方以外の状況はかわっていないそうです。よって、大使はじめ邦人保護に携わっておられる大使館員も退避できず、邦人の安否が心配でなりません。」というツイートを見て、愕然としました。

 戦場となっている惨状の中で退避できない邦人には、余程の事情があるか、余程の覚悟があるはずです。また、ウクライナにいる日本人が「PCR検査で陽性になったために、帰国できない・・」というツイートも目にしています。

 この日本の政治家は、ウクライナの日本大使(大使館員)ではないので、実際に在ウクライナ日本大使館がどのように在留邦人に接しているのかはわかりませんが、日本でも名の知れた政治家のこのような発言の意味は決して小さいものではなく、かなりショッキングなものでした。

 捉えようによっては、「在留邦人のために大使および大使館員が退避できずに迷惑している」ということで、挙句の果てに「邦人の安否が心配でならない」という偽善者めいた言葉が添えられていることに、えも言われぬ不快感を感じました。

 大使館の仕事には、災害や事件などが起こった際に自国民の命を守ることも含まれています。しかし、その命には、その人の人生や生活も含まれています。未だウクライナに残る人は、退避を希望していても、物理的に不可能だという場合は別として、命をかけてでも守りたいものがそこにあるということです。

 非常時ゆえ、退避を勧告するのは、当然としても、残留する人のために大使、大使館員が退去できない・・というのは、あまりの言い方です。これは在ウクライナ大使の発言ではありませんが、この日本の政治家には、ガッカリさせられたのでした。

 一方、昨日、在ウクライナ フランス大使がテレビのニュースのインタビューで、「ウクライナに残留しているフランス人は何人くらいですか?」との問いに、「在留届を出している人ばかりとは限らないので、正確な人数は、把握できていませんが、おそらく300人程度だと思います」と答えています。

 インタビュアーが「その方々の退避の目処はついていますか?」と続けると、「もちろん、退避するフランス人の援助は続けますが、この時点で残留を希望している人々には、それなりの理由もあるので、残留するのも致し方ない」と答えていました。

 一見、見捨てているようにも取られかねない発言でもありますが、大使は、「どちらにしてもウクライナに残って、最後まで国民を守る」と静かに語っていました。個人の生活や人生を尊重して、国民を守ってくれる・・私には、そんなふうに頼もしく感じられました。

 しかし、それよりも、在ウクライナ フランス大使館は、「核の危険のために、250万人分のヨウ素剤を用意」と発表。プーチン大統領がこの戦争で核を使う危険への現実的な対応を開始したのです。

 マクロン大統領は、同日、プーチン大統領と電話会談し、「ロシア軍のウクライナ侵攻がもたらす原子力安全、セキュリティ、保障措置へのリスクについて重大な懸念」を表明し、これに対する具体的な措置が急務であることを伝え、また、国際原子力機関(IAEA)の規則と事務局長の提案に従って、ウクライナの民間原子力施設の安全性とセキュリティが保証されなければならず、その完全性に対するいかなる損害も避けることが絶対的に必要であると強調した」と伝えています。

 また、エリゼ宮は、プーチン大統領が、「IAEAがこの方向で遅滞なく作業を開始することに同意した」と発表していますが、これまでマクロン大統領との会談での同意がプーチン大統領にはことごとく破られていることからか、また、電話会談の感触で危険を感じた結果なのか、この核に対する危険をこれまでよりも切実で具体的な対応を開始したものと思われます。

 250万人分のヨウ素剤の用意など、大使館が独自にできるものではなく、この日のプーチン大統領と会談したマクロン大統領が決断したものであるのは、間違いありません。まさか、そんなことをするはずがない・・そこまではしないであろうという多くの国の予想をことごとく裏切ってきたプーチン大統領、追い詰められて、「窮鼠猫を嚙む」状態になる危険を感じます。


在ウクライナ フランス大使館 ヨウ素剤250万人分手配


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2022年3月6日日曜日

137万人のウクライナからの退避難民の受け入れと海外生活の不安

  


 昨日のウクライナ戦争に反対するデモは、フランス全土で4万人以上動員したと伝えられています。同じ主旨の抗議デモが世界中で起こっていることも同時に伝えられ、なぜか、日本からポルトガルまで・・と日本でのデモの様子もフランスのテレビで報道されていました。

 すでに、世界各国からウクライナ在住の国民に対しての避難勧告が出されていますが、当然、ウクライナ国民もまた、国外を脱出し、ロシアからの侵攻が開始されて以来、約137万人が国外脱出しています。

 ヨーロッパ各国は、ウクライナから避難する人々については、交通機関を無料で提供したり、ポーランドなどの国境では、食糧や生活必需品などを提供したり、車での他のヨーロッパ諸国への交通手段を提供したりして避難民を受け入れています。

 しかし、またこの一方で、「この人々が一体、どこに行くのか? ウクライナの現在の壊滅的な状況から、一時的な避難とはなり得ないであろうことから、この避難民受け入れを長期的なスパンで考えなければならない」という声が上がっています。

 日本の岸田首相もウクライナからの難民を受け入れることを発表し、「まずは、家族が日本にいる人々から・・」と説明していましたが、とりあえず逃げるのに、日本は遠すぎて、あまり現実的でもないかな?と思ったりしました。

 そこは、地続きのヨーロッパ、命からがら逃げてくる人々を一先ず受け入れることは、人道的に当然のことです。事実、案外簡単に難民を受け入れているヨーロッパの人々も少なくないことに、素晴らしいなぁと思う反面、長期化すれば、それはそれで問題が起こるかもしれない・・と、私は、穿った見方もしてしまいます。

 例えば、もしもフランスに逃げてきた人がいたとして、誰かを家に泊めてあげたり、食料を提供したりできるか?と言われれば、それは簡単な話ではありません。なんとか、力になってあげたいという気持ちはあっても、せいぜい食料品や生活必需品の一部を寄付する程度しかできません。

 この長期化しそうな戦争の状態を見ても、そうそう易々とは、本国に帰ることは不可能で、一時的な避難場所を提供したつもりが、家を乗っ取られたりするかもしれない・・などと思ってしまうのです。

 ただでさえ、国を変えて生活するということは、大変なことで、戦時下でなくとも、海外(外国)で生活しているだけでも、常に問題は山積みなのです。よほど懐が大きい人でなければ(経済的、精神的にも)とても、個人が背負い切れるものではありません。国や団体などでの対応が求められる問題です。

 外交と制裁で戦争回避の道を探っているヨーロッパではありますが、マクロン大統領との直近のプーチン大統領との電話会談でも、プーチン大統領は、まるで侵攻をやめる兆しがありません。

 戦争回避の道を探ると同時に、ヨーロッパ諸国は、このウクライナからの避難民の受け入れ後の長期滞在対策を考えなければなりません。

 ロシアは、国民の退避のために、ウクライナでの一部地域での一時停戦を受け入れたと言われていますが、これは、あくまでも一時的な停戦で戦争を止めるということではありません。

 ロシアからの国民の退避のために一時停戦の申し入れなど、これまでの経過を見ると、不気味でしかなく、その後にドカンと核などの兵器を使って猛攻撃を予定しているのではないか?あとになって、「だから、逃げろと言っただろ・・」と言い訳をするような気がしてなりません。

 避難民受け入れどころか、パンデミックから戦争に突入して、「やっぱり日本にいた方がいいのかも・・」などという考えが時々、頭をよぎる私。実際、海外在住者がこの際、本帰国すると言っている人の話もちらほら聞こえてきます。かといって、生活の基盤である国を変えるというのは、そんな簡単な話ではありません。

 しかし、ヨーロッパにも飛び火しないとも言えないこの戦争にいつ、私自身が避難民になるかわからない、とても他人事ではない問題なのです。


ウクライナ難民問題


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2022年3月5日土曜日

マクロン大統領が書面で出馬表明した理由

   

 


 マクロン大統領が次期大統領選に立つことは、公然の事実でした。しかし、マクロン大統領は、ギリギリまで正式な出馬表明をしないまま、本当に公示締切寸前に、ようやく正式に次期大統領選挙に立候補することを表明しました。

 もともと、かなり、遅いタイミングに出馬表明をする予定にはしていたものの、ウクライナ戦争が勃発したことにより、現在の大統領としての任務のために、それは、本当に最後の滑り込みのような発表になりました。

 マクロン大統領は、コロナウィルス感染の状況が、ある程度、落ち着き始めた段階で、立候補を表明し、候補者としてテレビのインタビューや、彼に対する批判の多い地域への遊説行脚を予定していました。

 しかし、これらの予定は、プーチン大統領のウクライナ侵攻により、現職大統領としての職務が予断を許さない状況になったことで、すべてキャンセルされ、自らを候補者と宣言するチャンスを失ってしまいました。

 何よりも、現在の緊迫したロシア・ウクライナをはじめとする世界各国との連携とそれをフランス国民やヨーロッパ全体にメッセージを送る立場にある彼が、ここで大統領選挙への出馬を自分の口から表明することは、この現職の大統領としての戦争危機に対する発信をぼやかしてしまうことになり、敢えて、書面での立候補の表明というかたちを取ったものと思われます。

 現職の大統領である彼にとっては、この世界中を巻き込む危機への対応をこなしていくことが何よりも国民の信頼を得ることになり、また、この戦争危機対応においては、何よりも優先されて報道されていますから、この重大な責務を果たしていくことが何よりもの彼のアピールにもなるのです。

 マクロン大統領は、この立候補表明の書面で、彼が大統領に就任して以来の5年間が、テロ、黄色いベスト運動、パンデミック、そしてヨーロッパでの戦争とフランスがかつてないほどの危機に直面してきた中で、私たちは威厳と友愛をもって、それらの問題ひとつひとつに私たちは決して諦めることなく取り組んできたと綴っています。

 このような数々の危機が襲いかかる中でも、私たちは様々な改革によって、雇用を取り戻し、失業率はこの15年間で最低の水準になり、国民の努力のおかげで病院や研究への投資、軍隊の強化、警察官、憲兵隊員、裁判官、教師の採用、ガス・石油・石炭などの燃料への依存度の低減、農業の近代化の継続が可能になりました。

 おかげで、パンデミックの赤字を減少させ、5年間を通じて、前例のないほど税金を下げることができました。その結果が、私たちの信頼性を高め、主要な隣国に対して、自らを守り、歴史の流れを左右することのできるヨーロッパの大国の建設を始めるよう説得することを可能にしたのです。

 この5年間の功績についての文面は、マクロン大統領にしては、非常に謙虚な感じではありますが、お得意の自画自賛でもあります。

 「しかし、私たちはすべてを達成したわけではなく、今までの経験を生かせば、間違いなく違う選択をするはずです。そして、この2年間に経験した危機への取り組みは、これこそが進むべき道であることを示している」と続けています。

 この書面の中で、興味深いのは、彼が「子供たちのためにフランスを築いていくこと、民主主義への脅威、格差の拡大、気候変動、人口動態の変化、テクノロジーの変革など急速な激変を経験している中、間違えてはいけないのは、私たちは撤退を選択したり、ノスタルジーを抱いたりすることでこれらの課題に対応するのではなく、謙虚に、そして明晰に現在を見つめ、未来への大胆さと強い意志を捨てずに子供たちのフランスを作っていく」という部分です。

 これは、現在のウクライナやロシアの問題を示唆しているとも読み取ることができます。過去を蒸し返すのではなく、現在、そして未来を見つめて決して諦めずに前に向かって進む姿勢を崩さないということです。

 そして、彼は、最後に「私たちは、この危機の時代を、フランスとヨーロッパの新しい時代の出発点にすることができるのです。あなたと一緒に。あなたのために 私たちみんなのために。」と締めくくっています。

 とりあえずは、現在のフランスは、大統領選挙関連のニュース以上に戦争に関するニュースが流される中、通常ほどには、大統領選挙がとりあげられないことから、これまで公式に立候補せずに選挙活動もほとんどしてこなかったマクロン大統領の活躍が逆にクローズアップされ、マクロン大統領の支持率が、他を引き離して上昇する、他の候補者からしたら、皮肉な結果となっています。



 戦争の状況が緊迫していることもありますが、マクロン大統領がこの正式な立候補の発表の前日に、敢えて、選挙の話題ではなく、国民に向けて「ウクライナ戦争についての対応」についての演説を行ったことは、この国民世論の結果を踏まえて、彼が評価されている部分を決定づけることでもあり、充分に大統領選挙も考慮されたものであったと思われます。 

 しかし、これは、これまでの彼の戦争への対応が評価されてきたことによるもので、戦争の状況がさらに悪化していくようなことがあれば、いつ、彼に対する国民の評価が一変するかもわからない危険も孕んでいます。

 大統領選挙は、5週間後。それまでに現在の戦争状態がどのようになっているかで、また、彼の運命も変わってくるかもしれません。「この危機を逆にフランスとヨーロッパ全体の転換期とする」と綴っている彼の立候補の書面は、別の候補者とは一線を画し、逆に強いインパクトを与えています。


フランス大統領選挙 マクロン出馬表明


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