2021年8月5日木曜日

フランスと日本のコロナウィルスの感染状況・対策の違い

   


 フランス暮らしも長くなって、色々なトラブルや、物事がスムーズに運ばないことも多い生活で、大抵のことは、「ここはフランスなんだから、仕方ないな・・」と諦めて腹を立てないようにするようにしてきました。

 逆に言えば、「やっぱり日本はスゴいんだな・・」と海外生活をして、あらためて気付くことも多かったし、今もそのように思うことも沢山あります。

 しかし、このところ、パンデミックが起こって以来、殊に世界でワクチン接種が始まり、その上、オリンピックという、とてつもない重荷を背負ってしまった日本の様子を見ていると、なんだか微妙です。

 開発されたばかりの新しいワクチンに対して、慎重に検討を重ねていたのもわからないではありませんが、オリンピックを開催するのならば、せめて、オリンピック開催を理由に早くにワクチン確保する術はあったであろうし、多くの国民が反対する中、このようにオリンピックを結局は、強行開催するならば、せめて、それなりの準備(ワクチン接種の拡大)をして、オリンピックに臨むべきであったはずです。

 オリンピックは、海外から、多くの外国人が入国するだけでなく、結果的に日本国民も「オリンピックだってやってるんだから・・」と若干、開放モードになり、もうやってられない!となっている人もいるかもしれません。

 これまでフランスのようなロックダウンをせずに、あれだけ感染を抑えられてきた日本が、コロナウィルス史上最悪の感染状態(日本での)に陥ってしまっているのは、デルタ変異種の威力もあるでしょうが、これまで、すでに長い間、対策をとって、改善すべき点を(感染者の受け入れる医療体制の強化など)放置し、挙句の果てには、菅首相が「重症患者でなければ、自宅待機」などと言い出すとは・・本当に酷すぎる話です。

 真面目に我慢強く行動制限していた日本国民をいいことに、日本政府の言い続ける「ご理解とご協力」ばかりに頼って感染を抑えられてきたことにも限界があります。

 かえすがえすもワクチンの開始が遅れたことは、残念ではありますが、遅くに開始したことは、百歩譲って、世界のワクチン接種の状況や方法を参考にできるという利点もあったはずなのに、予約方法なども多くの人の手を介し、また、ワクチン接種をした証明書とワクチンパスポートを別物にして、書類申請して作らなければならないという妙なやり方をして、これだけ、ワクチン接種を急いでいる状況で、なぜ、そのような手間暇がかかる方法をを取るのか?まるで意味がわかりません。

 フランスは、反対の声も上がりながらも、ヘルスパスの施行でワクチン接種をしていない人に行動制限をかける方向に進んでいるので、感染者数も増加はしていますが、これだけ好き放題にバカンスに出かけているフランスでも、これでも、ある程度は、感染を抑えられているのだと思います。

 感染者は増加しても重症患者数の増加は、第3波ほどスピードは遅く、ワクチン接種をなんとか進めることを最大目標とし、現在、フランスのコロナウィルス感染に関するサイト(国が作っている感染者追跡アプリ+コロナ関係情報+ヘルスパス)を開くと、まず一番に出てくるのは、感染者数ではなく、ワクチン接種がどれだけ進んだかというパーセンテージが出てきます。

 そして、自分の住んでいる地域と国全体の新規感染者数、集中治療室の占拠率がそれぞれ表示されます。

 日本は、特に地域ごとに対応しているということもあるのでしょうが、まず東京などの大都市の感染者数を追い続け、国全体の数字はわかりにくくなっています。

 一度、動き始めれば、コツコツとこなしていくことは、さすがの日本、1日120〜130万件のワクチン接種が進んでいるようですが、なんといってもフランスの倍も人口の多い日本でワクチン接種率が飛躍的に上昇していくのは、これまたなかなか厳しいものです。

 ましてや、現在の日本の感染増加のスピードにワクチン接種のスピードが追いついていく前にさらに悪化していけば、被害はさらに甚大なものになります。

 しかし、日本国民一人一人の感染対策の取り方は、やはり、フランスなどとは、比べ物にならないほど、優れていると思うので、結局は、国民の方々の「ご理解とご協力」に大きく依存している形になると思います。

 もう少し、効率的な方法をワクチン接種の先陣を切っていた国々を参考にして、上手く始動していれば、日本人の真面目な国民性と合わされば、鬼に金棒だったはずなのに、ひたすら苦悩している様子の日本には、憤りを感じます。

 このバカンスシーズンのフランス人のバカンスを満喫する様子を見るにつけ、彼らは実に楽しそうで、「ご理解とご協力」どころか、ヘルスパスに反対する人は、警察が催涙ガスや放水車を使って出動しなければならないほど騒ぎまくりです。

 我慢に我慢を重ねて耐えている日本人は、オリンピックに何百億円も使いながら、未だに満足にPCR検査もできずに、しかも有料、オリンピックのためにさらに自粛を強いられる生活というどうにも理解し難い状況に疑問を感じるのを通り越しています。

 オリンピックが終わっても、さらにパラリンピックが続き、どの国でも感染悪化が深刻になっている中、日本の状況は、さらに心配が続きます。

 今後もまだまだ長いこと戦っていかなければならないパンデミックに、ワクチンが進んだら進んだで、現在、フランスで揉めているヘルスパスのような問題が生じます。

 これまで私にとって、日本はいつも、誇らしい国であったので、このパンデミック・オリンピック対応を目の当たりにすると、「どうなっちゃったの?日本?」と思わずにはいられません。

 もともと何かあるたびに、大騒ぎして反発するフランス人を導くフランス政府は、もともと国民の「ご理解やご協力」に頼ることは考えておらず、数回のロックダウンに罰則・罰金まで加えて締め付けつつ、援助はかなり手厚く実行し、国民をなだめすかしながら、ここまで進んできましたが、日本は日本で、日本人の真面目さや我慢強さを政府に利用されるという最悪なシナリオにため息も出ません。

 海外にいると、「日本人は黙って我慢するからいけない!」と外国人から言われることも多く、日本人としては、それはそれで美徳と感じる部分もありながら、海外では、黙って我慢ばかりしていては、生きていけないので、海外モードに切り替えて暮らしています。

 しかし、日本で、それを同じ日本人、しかも国を動かす政府に利用される構図は、外から見ていても、我慢ならないことなのです。

 マクロン大統領は、高齢者とリスクの高い人に対しての3回目のワクチン接種を年度初め(9月)から開始することを発表しています。


フランスと日本


<関連記事>

「日本のワクチンパスポートの不思議」

「日本人は、黙って我慢すると思われている」

「海外生活でのご近所の騒音トラブル 黙って我慢してたらダメ」

「フランスは、ヘルスパスがないと身動きが取れなくなる! 義務化という言葉を使わない事実上の義務化」

 

2021年8月4日水曜日

フランスのアンチワクチン・アンチヘルスパス論者の言い分

    


 バスに乗ると、時々、運転手さんの横に立って、延々と立ち話をしている人を時々、見かけますが、「運転手さん、迷惑じゃないのかな? まあ、いつも同じルートを単調に運転しているから、退屈しのぎなのかな? それにしても、気が散って危なくないのかな?」などと思うことがあるのですが、まあ、何を話しているのか、聞き耳を立てることもなく、何気に見過ごしています。

 ところが、今日、見かけたのは、アンチワクチン論者の運転手と乗客で、運転手はさすがにマスクはしていたものの、乗客は、マスクなし・・で、二人はともに、アンチワクチン派で意気投合していたようです。

 現在、パリ市内のバスは(パリだけではないと思うけど・・)、運転手席付近は、プラスチックのバリアで仕切られているのですが、運転手がマスクなしの乗客を容認しているためか、そのバリアの運転手エリアにその乗客が入り込んで、かなり熱心に話が弾んでいました。

 どうやら、二人ともアンチワクチン・アンチヘルスパス・アンチマクロン論者のようで、「ワクチンは、絶対しない!」と熱く語り続けていました。

 現在、フランスでは、公共交通機関は、マスク着用は義務付けられていて、ずいぶん前にマスクをせずにバスに乗り込もうとしていたところを運転手に注意された乗客が運転手をバスから引きずり下ろして殴る蹴るの暴行を働いて、殺してしまったという陰惨な事件も起こったことがありましたが、今回は、アンチワクチン論者の運転手がマスクなしの乗客を運転手席に招き入れて、アンチワクチン論を語り合い、盛り上がるという、真逆?の光景でした。

 現在、フランスでは、ヘルスパス(ワクチン2回接種証明書、48時間以内のPCR検査陰性証明書、6ヶ月以内にコロナウィルスに感染した証明書)がないと、長距離の移動ができなくなり、50人以上集客可能な場所には立ち入れなくなり、レストラン・カフェ等も利用できなくなる措置が8月9日から施行されることになっていて、そのためにヘルスパスに反対する人々がデモが3週連続して続いていて、先週は20万人以上の人がデモに参加しています。

 私の周囲には、アンチワクチン論者はいないので、いったい、どこから、こんなに人が沸いてくるんだろう?と思っていたくらいなので、思わぬバスの車中で、やれやれ、ここにいた・・と思って彼らの話をそれとなく聞いていました。

 ヘルスパスの施行に伴い、ヘルスパスの提示が求められる場所で働く職員に関しては、事実上、ワクチン接種が求められるようになるわけで、9月以降は、それらの人々に対しては、ヘルスパスがないと解雇・・というわけではないのですが、無給となるそうで、事実上の解雇と同じことです。

 8月9日の段階では、バスやメトロには、ヘルスパスなしに利用できなくなるわけではありませんが、その運転手さんは、その後の更なるヘルスパスの拡大を恐れてか、「ワクチンをしなければ、仕事を続けられないなら、仕事を辞める!」と息巻いていました。

 運転手さんと、その乗客ともに、中年の男性でしたが、頑としてワクチンをしないという意見が合致して、二人で、「あの強引なやり方は、本来あるべきフランスのやり方ではない!だいたい、マクロンは、富裕層の味方ばかりして、ファイザーから賄賂でも受け取ってるのではないか?」とめちゃくちゃな議論に口泡を飛ばして話していました。

 言わせてもらえば、アンチワクチン・アンチヘルスパスを唱える人は、ワクチンどころか、この乗客のようにマスクさえもしたがらず、さらには、このような人に限って、人の多く集まる場所に行きたがる傾向があるようで、ヘルスパス反対のデモなどの様子を見ていると、屋外とはいえ、あれだけたくさんの人が集まっているにもかかわらず、マスクをしていない人がほとんどで、「ワクチンをしたくないなら、せめて、マスクぐらいしろよ!」と言いたくなります。

 誰だって、リスクがあるかないか、現時点では、よくわからないワクチンは、本当は、したくはないと思いますが、現在のパンデミックの状況をなんとか抑えるためには、ワクチンをするしか方法がないから、ワクチン接種を受け入れているのです。

 ワクチンは嫌!マスクも嫌!でも、ロックダウンも嫌!では、どうしようもありません。

バカンス中ゆえポロシャツ姿のマクロン大統領・・若い・・


 現在、バカンス中のマクロン大統領は、バカンス中にもかかわらず、インスタグラムやツイッターを使って、ワクチン・ヘルスパスの必要性を訴え続けています。

 「今、ワクチンを、ヘルスパスを施行していかなければ、再びロックダウンしなければならなくなる! 感染が悪化しつつある中、ロックダウンしなくて済んでいるのは、ヘルスパスのおかげだ!」と。

 彼は、脅しで言っているわけではありません。実際に感染が悪化しているマルティニークなどでは、真夏の今でさえ、ロックダウンがすでに再開されているのです。

 ワクチン接種・ヘルスパスに反対する人には、「だったら、重症化しても病院に行かないんだな・・」と大人気ないことを思ったりもしますが、彼らの言い分には、何の解決策も含まれていません。


アンチワクチン アンチヘルスパス

 

<関連記事>

「3回目のヘルスパス反対のデモ 参加者20万人超え」

「フランス領マルティニーク島・レユニオン島 再ロックダウン」

「フランスは、ヘルスパスがないと身動きが取れなくなる! 義務化という言葉を使わない事実上の義務化」

「フランス第4波突入宣言 ボルドーのナイトクラブでクラスター ヘルスパスが機能していない現実」 

「WHOが警告するより危険な新しい変異種の出現の可能性」




2021年8月3日火曜日

パリのバカンス期間中の空き巣被害

   


 最近は、友人でも、会社でも、お役所関係でも、知らせているのは、携帯電話の番号で、ほとんど、家の電話は使わなくなったので、あまり家の電話は、ほとんど使っていない状態なのに、ここのところ、やたらと家に電話がかかってくるようになって、しかも、それが、無言電話なので、ちょっと気持ちの悪い、嫌な感じがしています。

 それでも、たまには、家の電話には、日本からの電話やアナログな友人からの電話だったりもするので、電話が鳴れば一応、出るのですが、ここのところは、その9割がたが無言電話で気味が悪いことこの上ないのです。

 今、フランスは、バカンスシーズン真っ只中で、長期で家を留守にする人が多く、(だいたい、フランス人の夏のバカンスは、2〜3週間から1ヶ月と長く、また、周囲の家も留守宅が多いために人目にもつきにくく、しかも、この時期、新年度を前にして、引っ越しをする人なども少なくないために、留守宅に押し入り、引越し業者を装って、あたかも引っ越しのように家財道具、一切合切を運び出してしまうという大掛かりな空き巣が存在するのです。

 以前、知人がバカンスから戻ったら、家が空っぽになって、呆然とした・・というちょっと信じられない話もあるので、なんだかとても怖い思いをしています。

 バカンスが終わって家に戻ると、自分の家が空き家のようになっているなんて、ちょっと、あまりにえげつないことで、思いもよらないことに茫然自失の状態だったそうです。

 金目のものだけ漁っていくのではなく、一切合切を持っていかれてしまうのですから、たまったものではありません。

 空き巣のプロたちは、その家が留守であるかどうかを郵便ポストをチェックしたりして、郵便物が溜まっているかどうかで判断したり、家の電話に電話をかけて、人が家にいるかどうかを確認してから、犯行に及ぶという話を聞くので、長期に留守にする場合は、近所の信頼できる人に声をかけて、郵便物をとっておいてもらったり、家の様子を何気で気にしておいてもらうのは、必要かもしれません。

 フランスは、治安が良いとは決して言えず、また、ちょっとやそっとのことでは、ロクな捜査もされずに、犯人が逮捕されたとしても大した刑罰もなく、簡単に釈放になるので、犯罪が減らないのも無理もありません。

 街中に自動販売機というものがあまりないのも、自動販売機ごと盗難に遭うからで、くたびれた自転車でさえ、頑丈な鍵がかかっていても、鍵を外せない部分を残して、ハンドルやタイヤやサドルだけでも盗まれてしまうので(そんなものを盗んでどれだけの利益になるのかわからないのですが・・)考えてみれば、留守宅で一切合切を盗んでいけば、どれだけ纏めて、色々なものが手に入るかと思えば、このようなバカンス中の空き巣というのは、ずっと割が良いのかもしれません。

 しかし、これまで、こんなこと(こんなに頻繁に在宅確認と思われる無言電話)はなかったので、どういうわけかと考えてみれば、ここ1年半以上、パンデミックのために、昨年とて、いつもよりはバカンスに出かける人も少なく、この期間中は、ほとんどの人がいつもよりは「ステイホーム」で家にいる時間が多かったために、空き巣のプロは、ようやくみんなが本格的にバカンスに出るようになって、これまで長い間できなかった仕事を急ピッチでここぞとばかりに再開しているのではないかと思っています。

 相手は、プロですから、鍵を壊すことなどお手のもので、SECOMのような警備会社に頼めば良いのでしょうが、一般的な家庭でSECOMを使っている家など、そうそうありません。

 我が家は空き巣被害にあったことはありませんが、この無言電話に、バカンスで出かける時は、充分、注意しなければと、気を引き締めなければ・・と、思っています。

 どちらにしても、長期の旅行の際には、我が家は猫が一人?で留守番をしているので、猫の世話のために、毎日、知り合いに家に来てもらうように、頼んでいるのですが、これは、意外な空き巣対策にもなっていたのかもしれないと、ちょっと彼には、感謝しています。


バカンス 空き巣


<関連記事>

「パリの盗難被害 パリの泥棒は、なかなか捕まえてもらえない」

「ノエルに向けて治安の悪化するパリ」

「恐ろしく物騒になってきたフランス」


2021年8月2日月曜日

フランス病院連盟が政府に要求する全国民ワクチン義務化 

  


 フランスでは、ヘルスパス反対のデモが毎週のように起こり、週を追うごとにデモの規模も拡大しています。

 しかし、残念ながら、フランスの感染状況は、日々悪化しており、現在、フランス人がバカンスに出かけている地域を中心に事態は深刻になりつつあり、先日もロックダウン・夜間外出禁止が再開したマルティニークからは、集中治療室飽和状態のために、3人の重症患者がイル・ド・フランス地域に移送されました。

 医療状態が逼迫しているのは、マルティニークやレユニオンばかりではなく、フランス公衆衛生局の統計によると、フランス全体のコロナウィルス感染による入院、救命救急患者の数は増加を続け、7,500人以上の患者が入院しており、一週間で30%近く増加しています。

 7月12日のマクロン大統領によるヘルスパスの発表以来、ワクチン接種は拡大している中で、それでもなお、確実に感染が拡大しつつある状況には、デルタ変異種の強力な感染力とその感染のスピードがどれほどのものであるかを認識せざるを得ない状況です。

 このデルタ変異種の拡大に危機感を強めているのは、フランスだけではなく、中国(ここ数ヶ月でこれまでで最悪の感染拡大)、アメリカなどでも、ワクチン接種が済んでいない人の間を縫って感染が再拡大しており、世界全体を見ても、悠長に構えているわけにはいかないことを示しています。

 これらの状況を鑑み、この第4波の前例のないスピードに、フランス病院連盟は、政府に対し、「全国民に対するワクチン接種義務化」を求め始めました。

 「ヘルスパス」(ワクチン接種2回証明書、48時間以内のPCR検査陰性証明書、6ヶ月以内にコロナウィルスに感染した証明書)でさえ、反対する人のデモが激化している状態ではありますが、8月9日から実施される、このヘルスパスも開始されるにあたって、そのチェックの複雑さは目に見えており、もっと、単純明快な方法を取るべきで、もはや、ワクチン接種は次の段階に進むべきであると説明しています。

 事実上、ワクチン接種義務化と思われるヘルスパスではありましたが、結果的には、「真の集団免疫を達成するには、充分ではなく、もはや中途半端な方策をとっている時間的な余裕はない」「至るところで、あらゆるデータとされる指標は上昇しており、中途半端な措置の限界を示している」としています。

 マクロン大統領も12日のヘルスパス発表の段階で、「状況の進展に応じて、私たちは、間違いなく全てのフランス人に対する強制ワクチン接種の問題を考えなければならないだろう」と語っていましたが、フランス病院連盟は、今がその時であると言っているのです。

 昨年の12月に最初のワクチン接種を開始するにあたって、マクロン大統領は、「ワクチン接種は、強制ではない。しかし、全てのワクチン接種を希望する人に対しては、無料でワクチン接種を供給する」と発表しています。

 あの時は、まだイギリス変異種でさえもさほど問題になっていたわけではなく、ましてやそれからさらに威力を増したデルタ変異種など影も形もなかった時の話です。

 状況に応じて、対応を変化せざるを得ないのは仕方がないことなのですが、アンチワクチン派は、「マクロン大統領は、ワクチンは義務化ではないと言った!嘘つき!」などと騒ぎ立てるのですから、これでは駄々をこねている子供と同じです。

 当時は、希望者にワクチンをすること、でなんとかなるかもしれない程度であると、ウィルスの感染力をまだまだ軽く考えていた?のかもしれませんが、ウィルスは変異を繰り返し、よりパワーアップし、ワクチンをしなければどうにもならない事態になってしまったのですから、仕方ありません。

 イタリアはすでに5月末に、ギリシャは7月末に医療従事者にワクチン接種の義務化の道を選択していますが、フランス病院連盟は、「個人主義的すぎるアプローチ」から抜け出し、「ワクチン接種義務化のパイオニア国」となることを望んでおり、「ワクチン接種義務化を支持する世界的な運動を開始する」と発表しています。

 ワクチン接種にアレルギー等のある人は別として、今や「ヘルスパス=事実上のワクチン接種義務化」というまわりくどいやり方(ヘルスパスがないと入場できない場所が増える→PCR検査が有料になる→48時間ごとに検査を受け続けることは不可能→ワクチンをするしかない)ではなく、はっきりと「全員に対してワクチン接種義務」とした方が、単純なのかもしれません。

 もはや、ワクチン接種が開始されてから8ヶ月以上が経過し、ワクチン接種の効果は、明白になってきて、さらに強力な変異種が登場し続け、迷い考える時間は、もうないということです。

 医療従事者に関しては、もちろんのことですが、ヘルスパスが求められる場所で働く人々に関しても事実上、ワクチン接種は義務化されることはほぼ決まっています。社会の中で生きていく以上、感染の危険がつきまとうのは、これらの人ばかりでは、ありません。

 ワクチンに反対する人々は、それがヘルスパスであろうとワクチン接種の完全な義務化であろうと反対し続けることは、目に見えています。

 それならば、いっそのこと、ヘルスパス=事実上のワクチン接種義務化ではなく、はっきりと「ワクチン接種義務化」してしまうこともありなのではないか?とも思えてきます。

 バカンス地を中心に感染が拡大しつつあるフランス、バカンスが終わって、みんながパリに戻ってきた時にどこまでワクチン接種が拡大しているかがこの秋以降の感染拡大の鍵を握っています。

 たしかに、もう曖昧な措置では間に合わない深刻な事態がすぐそこまで迫っているのかもしれません。

 現在のフランスのワクチン接種率は62.20%(2回済の人は51.94%)、まだまだ道のりは長いのです。


フランス ワクチン接種義務化


<関連記事>

「フランスは、ヘルスパスがないと身動きが取れなくなる! 義務化という言葉を使わない事実上の義務化」

「フランスの感染状況再び上昇へ転換 今のフランスに感染が減少する理由はない オリンピックは本当にヤバいかも?」

「フランスのコロナウィルスワクチン接種」

「バカンス中にも関わらず、ヘルスパス反対のデモ」

「3回目のヘルスパス反対のデモ 参加者20万人超え」



2021年8月1日日曜日

3回目のヘルスパス反対のデモ 参加者20万人超え

   


      

 「自由!自由!自由!」というスローガンを掲げて、フランス全土では、「ヘルスパス反対」の3回目のデモが起こっています。

 7月12日にマクロン大統領から発表のあった「ヘルスパス」については、その後、12歳から17歳に関しては、猶予期間が設けられることや、コマーシャルセンターのヘルスパス提示義務については、地域ごとの感染状況により、自治体の判断に任せることや、ヘルスパスの実施開始が、8月1日から8月9日に延期になったり(これは、正式には、この法律の有効性については、8月5日に決定される予定)、色々と刻々、変化しています。

 7月12日の発表直後は、ワクチン接種予約サイトがパンク寸前になるほどに、ワクチン接種にかなりの人が傾きましたが、依然としてアンチワクチンの人は、バカンス中にもかかわらず、毎週デモを行い、強く反対を続けています。

 政府としては、これはどうしても譲ることはできないはずで、現在のところは、ワクチン接種以外に救われる道はなく、デモがいくら行われたところで、変更することはあり得ないと思うのですが、デモは、週を追うごとに過激化しています。

 今週末のフランスのデモは20万人を超え、度を重ねる毎に拡大しています。



 パリでは、先週、大変な騒ぎになったシャンゼリゼは、今週は、厳戒態勢を敷き、警察車両がシャンゼリゼを囲み、シャンゼリゼの中央にもたくさんの警察車両が控え、この気候の良い時期のシャンゼリゼが物々しい雰囲気になりました。

 このデモは、なぜかいつも土曜日で、デモ隊の行進する近辺の商店などは、とても商売にはならないどころか、下手をすると、お店自体もメチャクチャに破壊される恐れがあるわけで、観光客がまだまだ通常のように戻ってきていないパリの店舗にとっては、バカンス中とはいえ、土曜日に閉店せざるを得ないことは、大変な痛手で、「ヘルスパス」云々以上に、本来ならばかき入れどきの土曜日のデモによる営業妨害でお店の存続に悲鳴をあげています。

 黄色いベスト運動が続いた時も、デモのコースにかかっていた近辺のお店が甚大な被害を受けており、高級食料品店フォションの倒産なども、テロに続いて、度重なったデモも原因の一つとして挙げられていました。

 パンデミックは、ロックダウンの末にこのデモによって、経済的な打撃も生んでいます。

 この現在の状況で、彼らが叫ぶ「自由」は、身勝手で、とんだ自由のはきちがえで、彼らに「ワクチンをしない自由」はあっても、人を感染させる「自由」はないはずです。

 デモに参加している人々は、これまでもワクチンをしなくても、深刻な状態には陥ってこなかったのに・・、自分は重症化してこなかった・・なのに安全性が確認できていないワクチンをなぜしなければならないのか? ワクチンをしない自由が自分たちにはある!と主張している人がほとんどですが、もしかしたら、自分は感染して、それを他の人に感染させている可能性があるにもかかわらず、自分が助かっているから良いという・・まるっきり周囲の人に対する思いやりを感じられない主張です。

 もう一度、ウィルスの性質を考え直し、感染してもなんともない人が、感染拡大媒体となって、人の命を危険に晒している、奪っていることに気付いてほしいと思っています。

 人の命を奪ってまで尊重される自由はないはずです。

 フランスでは、これまでに111,867人の方がコロナウィルスのために亡くなっています。


ヘルスパス反対デモ


<関連記事>

「「生きながら死んでいる」と言っていたフランスの若者を思う ワクチンで自由を勝ち取れ!」

「バカンス中にも関わらず、ヘルスパス反対のデモ」

「フランスは、ヘルスパスがないと身動きが取れなくなる! 義務化という言葉を使わない事実上の義務化」

2021年7月31日土曜日

パリのラーメン一杯の値段 パリのラーメン屋さん


一見、ラーメン屋さんには、見えない小洒落たラーメン屋さん


 パリに旅行に来たときに、日本の食べ物が恋しくなって、思わず気軽に食べられるラーメン屋さんに入ったことのある人は、少なくないのではないか?と思います。

 私も以前、イギリスに住んでいた頃、当時は、イギリスにもそんなに日本食屋さんがたくさんあったわけでもなく、パリに旅行に来たときに、ラーメン屋さんに駆け込んだことがありました。

 しかし、パリのラーメン屋さんは、意外な落とし穴でもあり、そんなに高級なラーメン屋さんでなくとも、二人でラーメンと餃子を食べて、それにビールでも頼めば、あっという間に1万円近くなることもあり、旅行中で通貨が違って金銭感覚が麻痺していることも手伝って、なんだか、後から考えてみたら、やけに高かったと思うこともあるかもしれません。

 私は、特にラーメンが好きというわけではありませんが、パリに来たばかりの頃は、今ほどラーメン屋さんもパリにたくさんあったわけではないので、何となく、ラーメン屋さんの近くに用事があったりすると、思わず食べに入ったりしたこともありましたが、最近は、ラーメンは、あっという間にフランス人の間で人気になり、昼時などは、並ぶのが嫌いなはずのフランス人がどこのお店の前にも行列を作っているので、並んでまでは行かなくてもいいかな・・と、逆にすっかり寄り付かなくなっていたのです。

 まだまだ今のような日本食ブームになる前までは、パリのサンタンヌ通りとその近辺にある数軒のみで、ひぐま、北海道、来々軒、サッポロラーメン、金太郎など、ごくごく限られたお店だけでした。

 中には、クォリティも今ひとつのところもあったりして、麺がこれ、ラーメンの麺?とか、スープもイマイチだったり、酷いところになると、猫舌のフランス人仕様になっているのか?湯気のたっていないラーメンだったりすることさえありました。

 ところが、今や、すっかり、ラーメンは定着し、本格的なラーメンの店舗がパリに進出するにつれ、パリのラーメン屋さんのクォリティも上がってきました。

 しかし、上がったのは、クォリティだけでなく、値段もうなぎのぼりで、先日、人気のラーメン屋さんの前を通ったので、ちょっと覗いて、メニューを見て、その値段にびっくり!ラーメン一杯で、13ユーロ〜19ユーロ(約1,700円〜2,500円)でした。

  


 もともとパリでの外食は、高いので、外食してこの値段で済むのは、決して高い方ではないのですが、それにしてもラーメン一杯の値段としては、ちょっと日本円に換算すると、なかなか抵抗のある値段です。

 それでもお客さんがひっきりなしに入るのですから、すごいものです。それは、他の外食の値段がそれにも増して高く、しっかりしたクォリティの、しかも、ちょっと小洒落たお店だったりすれば、フランス人はイチコロな訳で、物珍しいラーメンという食べ物は、この程度の値段のものであるという認識がフランス人には定着してしまったわけですから、日本でのラーメンのだいたいの値段を刷り込まれている私のような在仏邦人にとっては、なかなか抵抗があります。

 しかし、おそらくパリで最も古い部類に入るラーメン屋さん「ひぐま」などは、シンプルに塩、みそ、醤油ラーメンは8ユーロ(約1,000円程度)とまだ許容範囲内です。

 もともとケチなフランス人も、つまらない外食にも結構なお金を使う独特な文化に支えられ、パリのラーメン屋さんは、今や大繁盛の堂々たる地位を獲得しているのです。

 それでもフランスで育ったのに大の日本食党の娘(フランス料理が苦手)などは、この値段で必ず美味しいラーメン屋さんは、決して悪くない・・などと、かなり好意的です。

 私でさえも、生まれ育った日本ではどちらかというとお蕎麦派で、ラーメン屋さんというものには、数えるほどしか行ったことがなく、一時帰国で日本に帰った時も限られた食事の回数の中で、ラーメン屋さんは、私の食べたいものリストには、入ってはおらず、私の人生においては、結果的にパリでの方がラーメン屋さんに行った回数は多いという皮肉な結果です。


パリ ラーメン屋

<関連記事>

「夏にバカンスで閉めるフランスのプールとラーメンを出さないラーメン屋」

「フランスで日本の餃子(GYOZA)が浸透し始めた!」

「日本はフランス人になぜ愛されるのか? フランス人は日本をどう見ているのか?」

「パリのランチ、お弁当、外食、日本食事情」

「交換留学生のドイツ人の女の子」 

 


2021年7月30日金曜日

フランス領マルティニーク島・レユニオン島 再ロックダウン

   



 やはり、デルタ変異種を甘く見てはいけない・・と、このところ、つくづく思わされています。

 このところのフランスの感染状況は、悪化の一途を辿っており、しかも、見事にバカンスで人が賑わっている地域で地図はどんどん色濃くなっていっています。(感染状況を色分けして表示しているので、フランスのどの地域がヤバいのか一目瞭然)

 感染状態が悪化しているのは、見事にバカンスで賑わっているビーチ沿いで、デルタ変異種は、暑さにもめっぽう強いようなのが恐怖です。

 昨年の夏は、ワクチンがなかったにもかかわらず、気温の上昇とともにウィルスの感染も夏の間は、落ち着いていたのですが、どうやら確実にウィルスはパワーアップしているようです。

 そんな中、フランス領マルティニーク島は感染の急激な悪化により(特に今週に入ってからは、医療崩壊寸前)、島内の病院の集中治療室は、限りなく100%に近く、感染者数は先週の2,241件から3,537件に跳ね上がり、1週間で58%増で、バカンス中にもかかわらず、すでに実施されていた夜間外出禁止(午後9時〜朝5時)に加えて、週末から少なくとも3週間、再ロックダウンになることになりました。

 レユニオン島も2週間の再ロックダウンです。

 この真夏のバカンスの真っ只中に、再びロックダウンとは・・誰が予想していたでしょうか?

 住民及び旅行者は、住居から半径10キロを超えて移動するには、ワクチン証明書か、正当な理由を証明する何かがなければ、身動きが取れません。レストランやスポーツジムなど、マスク着用が不可能な場所は閉鎖されます。仕事もリモートワークが推奨されます。

 また、夜間外出禁止は、午後7時からに繰り上げられます。

 マルティニーク、レユニオンは、フランス領なので、フランス国内と同じ扱いです。

 バカンスシーズン突入の際には、「バカンスの旅行は海外ではなく、できるだけ国内で!」と呼びかけられていたために、マルティニークやレユニオンでバカンスを過ごしている人、これからバカンスに行く予定であった人も少なくないはずです。

 フランス本土からの旅行者も、ワクチン接種証明書かやむ負えない理由を提示する必要があります。

 すでにマルティニークで満床状態の集中治療室では、フランス本土への患者の移送も予定されています。この真夏のタイミングでの患者の移送です。

 この地域の問題点は、極端にワクチン接種率が低いことで、フランス全国でのワクチン接種は、2回の接種が51%以上に至っているのに比べて、この地域では20%を下回っています。

 重症化している患者の97%はワクチン未接種者で、このような地域が出てくれば、ワクチン接種がいかに急がなければならないものであるかがわかります。

 カステックス首相は、すかさず会見に登場し、このマルティニークを例に挙げ、ワクチン接種の緊急性、必要性を強く訴えています。

 またマルティニークだけでなく、他のフランスの海外領、グアドループでは感染者数が一週間で3倍、集中治療室の占拠率は1週間で30%以上アップの81.5%、ここでもすでに患者の移送計画を開始しています。ギアナでも2倍に増加しています。

 フランス本土内では、ここまでワクチン接種率が低い地域はありませんが、最後にワクチン接種が開始された12歳〜17歳の年齢層に加えて、若年層はワクチン接種率が低いことを考えると、ワクチンをしていなければ、あっという間にこれだけ感染拡大してしまうデルタ変異種に打ち勝つためには、9月に学校が始まる前までには、なんとしてでも、このティーンエイジャーのワクチン接種を広めることが必要です。

 ワクチンができていないこれらの若年層に加えて、「何が何でもワクチン接種をしない!」とマスクもせずにデモを続けている一定数の人が頑として存在し続けているのは、今やフランスにとって着火を待つ爆弾のような存在です。

 このパンデミックの中、日本でオリンピックが開催されることでの感染拡大を心配していましたが、フランス人のバカンスと日本のオリンピック、いったい、どっちが危険なんだろう?と、妙なことを考えています。

 フランス人のバカンスは、なんといっても8月がシーズンのピークを迎えます。パリは人が減ってくれて、大気汚染もこの間は一時解消され、空も心なしか青く見えるほど、清々しいのですが、このまま感染が悪化していけば、バカンス先でロックダウン・・なんていうこともあり得ないことではないかもしれません。

 これからバカンス先を選ぶには、その地域のワクチン接種率を調べてから・・なんていう方法も必要かもしれません。


マルティニーク・レユニオン 再ロックダウン


<関連記事>

「バカンスを何よりも優先するフランス人 フランスに Go Toキャンペーンはいらない」

「バカンス中にも関わらず、ヘルスパス反対のデモ」

「WHOが警告するより危険な新しい変異種の出現の可能性」