フランスのコロナウィルスの感染状況は、夜間外出禁止、ニースやダンケルクなどの地域的な週末ロックダウンの対策をとりながらも、急激な感染増加は避けられているものの、確実に悪化を続けています。
急激な感染増加はしていないとはいえ、すでに先日も1日の新規感染者数が3万人を突破し、年明けには、2,634人だった集中治療室の患者数も約50%増加し、3,918人にまで達しています。
すでに、フランスは、ヨーロッパ内で、最も感染が悪化している国になっています。
中でも、イル・ド・フランス(パリを中心とする地域)の集中治療室の占拠状態は、最も深刻な状況で、すでに90%以上が埋まっている状況、現在(3月11日現在)1,056人が集中治療を受けています。イル・ド・フランスだけで、全国の集中治療室の患者数の約4分の1を占めているのです。
現在のイル・ド・フランスの集中治療室の占拠状況の悪化は、イギリス変異種の拡大によるものです。今や感染者の67%がイギリス変異種による感染に置き換わっています。
イギリス変異種の重症化、致死率は1月の段階でイギリスの首相が発表した内容(感染率、重症率、致死率が高い)を裏付ける実際のデータが発表され始めています。
最近は、政府の感染対策に対する記者会見があることで、もう木曜日か・・と思うくらいになっていますが、昨日のその会見で、オリヴィエ・ヴェラン保健相は、この深刻なイル・ド・フランスの状況に対する対策として、イル・ド・フランスから、他の余裕がまだある地域への患者の移送で、医療崩壊を避ける方針を発表しました。
また、ヘリコプターやTGVによる物々しい患者の移送が大量に始まるわけです。
昨年の3月末には、ロックダウン状態の中、すでに医療崩壊を起こして患者の移送が盛んに行われていました。嫌なことに、また同じ時期に患者の大移動です。
昨年の今頃、ロックダウンして、家の中に閉じ込められた状態で、家の窓から、やけに青い空の上をヘリコプターが飛んでいくのを見るたびに、あのヘリコプターも患者を運んでいるのだろうか?などと不安に感じたのを覚えています。
単に患者の移送というには、それは、あまりに物々しく、一人の患者に何人ものスタッフが付き添い、呼吸器を装着したまま、しかも感染を防ぐための防御をしながら、移送するのですから、かなりの大掛かりなもので、人出も費用も半端なくかかります。
TGVなども車内を患者の移送用に改造されたものが使われていました。
患者の移送以前にも、すでに、それまでに予定されていた手術の予定などをできる限り(40%)キャンセルし、集中治療室に隙間を作っていたはずでした。これだけでも、すでに助かるはずの患者が手遅れとなって助からなくなっている可能性も大きいのです。
しかし、現在、一番、深刻な状態になっているイル・ド・フランスは、一時はあわやロックダウンか?と俄に震え上がり始めた時期もあったにも関わらず、その時よりも感染が悪化しているにも関わらず、週末のみのロックダウンという対策も、あまり話題にも上がらなくなりました。
ギリギリの状態にも関わらず、敢えてロックダウンを回避しているという状況を世間は、ロックダウンは必要ないまだ安心な状態と勘違いしている感もあり、世間の状況を見ていると、逆にリモートワークでさえ、減っているのではないか?と思われるような、交通機関や街の人出です。
本来ならば、ロックダウンをせずとも、個々が充分に注意すれば、かなりの感染は、減らせるはずなのですが、それができないのがフランスです。
今回の政府が発表した対策「イル・ド・フランスの集中治療室の患者の他地域への移送」は、感染を減少させていく対策ではありません。ひたすら、全国の集中治療室をくまなく埋めていくのです。
ワクチン接種が広まるまでの時間稼ぎなのでしょうが、頼みの綱のワクチン接種も感染の速度には、間に合うほどには、進んでいません。
何もしなければ、イル・ド・フランスの集中治療室の患者数は、3月末には1,500人を突破する見込みだそうですが、感染者の増加を減少させる状態が取られない以上、感染者は他の地域の病床占拠率をも圧迫していくだけです。
それでも、「ロックダウン措置をとっている他のヨーロッパ諸国でも感染は悪化している」として、ロックダウンを回避しながら、過ごしているフランスの強気がいつまで続くものやら、本当に心配しています。
コロナウィルス感染が始まって約1年、対策が後手後手に回って多くの犠牲者を出してきたフランスは、敢えて、ロックダウンを避けて、さらに犠牲者を増やし続けていることが、もどかしくてならないのです。
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「フランスのロックダウンは遅すぎた コロナウィルスと戦う大移動作戦」
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