2019年7月24日水曜日

オランウータンと友達になったフランス人




 まだ、娘が小さい頃、一度、ヴァンセンヌの動物園に行って、象の前で、娘に、
” Il est plus gros que toi !! " (パパより、デブだ!!)と大声で叫ばれて以来、夫は、動物園に行くのを避けていました。

 しかし、たまたま、行った、オーステルリッツにある、JARDIN DES PLANTS (植物園)に行った時に、偶然、動物園が併設されているのを見つけ、ひょんなことから、動物園をのぞいてみることになったのです。

 植物園の中の動物園ですから、大したことはないとタカをくくっていたのですが、意外にも、結構、ちゃんとしたもので、私たちは、楽しく動物を見物して回っていました。

 その一つに、オランウータンの檻がありました。

 ちょうど、お昼どきに近かったので、バカな私たち親子3人は、一生懸命にオランウータンに、” お昼、食べた? " とか、” お腹すいてないの? " とか、つぼめた手を口にあてて、”ご・は・ん・・・ご・は・ん・・食べたの?” と必死になって、三人三様、バラバラに話しかけていました。

 考えてみれば、オランウータンからしてみても、実に、マヌケな親子に映ったことでしょう。「こんな、人間、見たことない・・へんな奴らがやって来た・・」と。

 すると、その中のWATANA(ワタナ)という名前のメスのオランウータンが、夫に興味を持ったのか? もしくは、つぼめた手を口にあてたりしているので、私たちの方がお腹がすいているとでも思われたのか? 小さな木のかけらを檻の向こう側から夫に向けて、ポーンと投げて寄越したのです。

 感激した主人は、" Merci ! Merci ! " (ありがとう)と、オランウータンに何度も感謝の気持ちを伝えていました。すると、びっくりしている私と娘をよそに、オランウータンは、夫に次のモーションをかけてきたのです。

 自分が普段、持っていると思われる、長いボロ切れのような布を柵の上から、夫の前に垂らし、夫と二人(!?)で、布を引っ張ったり、離したりして、遊び始めたのです。

 これには、周りにいた、動物園を訪れている人もビックリで、中には、ビデオを撮り始める人までいました。

 残念ながら、私たちは、カメラも何も持っていなかったので、ワタナと夫との記念写真を撮ることはできませんでしたが、意外なハプニングに、十二分に楽しめた日曜日の午後のひとときでした。

 しかし、それにしても、ワタナがなぜ、夫を気に入ったのか? 
大きさが同じくらいだから、仲間だと思ったのか? 

 それとも、動物的な感で、この人は、自分と遊んでくれる人だと思って気に入ったのか?

 はたまた、彼がオスとしての魅力を放っていたのか?(笑) 

 だとしたら、もしかして、私は、ワタナと趣味が一緒ってことなのかしら?

 






















2019年7月23日火曜日

日本語で言いたい放題、言ってしまう悪い癖


  

 パリにいると、私は、娘と二人で外を歩いていても、日本語で話していると、周りの人には、通じないために、言いたい放題、言ってしまう悪い癖がついてしまっています。

 普通なら、心の中で、こっそりとつぶやくようなことを・・。

 買い物などに出かけても、” なにこれ〜!?あり得ないでしょ!!" とか、” これ、もう、腐ってるじゃない!? これもう、売り物じゃないし・・” とか・・。
(その暴言を吐かせるネタがパリにはあちこちに転がっています)

 私たちの暴言は、もはや、自分たちが公共の場にいる自覚がない、本来なら、人目を憚るようなことを平気で言ってしまっているのです。

 だから、日本に行くときは、正確には、日本行きの飛行機の中から、注意するように心がけています。飛行機の中には、すでに、日本人もいるし、外人でも、日本語がわかる人が多く乗っているからです。

 いつもの癖で、つい、口をついて出てしまいそうになるたびに、お互いに、”ほらほら!!ダメダメ!もう、ここからは、日本語がわかる人がいっぱいいるんだから、気をつけないと・・!” と、戒めあうことになります。

 しかし、先日、パリのメトロの中で、箱型の四人がけの席に座ると、すぐ、近くには、音楽を大音量で、演奏して、お金を集めて回る一団がいたのです。あまりの大音量に、” うるさいなあ・・頭がガンガンする!!”と言って、思わず耳をふさいだのです。

 すると、前に座っていた、アジア系の女性が私の耳を塞ぐしぐさからか、同調してくれるが如く、顔をしかめて、私に目配せをしてくれたのです。私も半分、困ったような顔をして、その女性に頷きました。
 心の中で、” ほんと、うるさすぎますよね〜” と言いながら・・。

 そして、何駅かが過ぎて、その楽隊の一団は降りていきましたが、その後も私と娘は、まだ、夢中になって、おしゃべりを続けていました。何を話していたかは、あまり、覚えていないのですが、例によって、パリの中ですから、自覚なしに言いたい放題だったに違いありません。

 すると、また、何駅か過ぎて、向かいに座っていたアジア系の女性が、” じゃ、お先に・・” といって、立ち上がったのです。私が、驚いて、” 日本人の方だったんですか?” と言うと、その方は、なぜか、ニッコリ笑って、” はい、3区に住んでます。” といって、降りていきました。(なぜ?3区に住んでいると言ったのかは、不明ですが・・)

 ・・・と言うことは、これまでの会話は、全部、彼女に聞かれていたと言うことです。特別なことを話していたわけではないと思うのですが、何ともバツの悪い思いをしました。まあ、その女性にしたって、何も、” 私も日本人です。"といちいち申告する必要もないし、それもまた、不自然です。

 しかし、これからは、パリの中でも、気を引き締めて、おしゃべりには、気をつけなくては・・と改めて、思わされた次第です。




















2019年7月22日月曜日

子供に自分で考えることを学ばせるためにすること。




 私は、娘に、” 勉強しなさい!" と言ったことは、ありません。

 日本語に関しては、熱心に教えたつもりですが、これでさえ、" 日本語の勉強をしなさい!” とは、言いませんでした。ただ、” 日本語のできない子は、日本に連れて行きません。” とだけ、言いました。

 学校の勉強に関しては、まあ、学校を追い出されない範囲であれば、別にいいよ!と言ってきました。だから、学校の成績に関しても、あまり、気にしていませんでした。
ましてや、他の子と比べるなどは、もってのほかです。

 私は、他人の子供の成績に興味はありませんし、その興味のない子供の成績と比べてどうこういう趣味もありませんでした。しかし、フランスでも、結構、他人の子供の成績が気になる親が結構いるもので、娘の学校の成績の順位を他のお母さんから聞くこともしばしばでしたが、個人主義に見えるフランスで、結構、意外な気もしました。

 だいたい、私は、子供を他の子と比べるということは、一番いけないことだと思っています。その子は、その子なりに良いところもあり、悪いところもあり、子供は、それぞれに違う個性を持っているのです。

 それを通り一遍の基準で、比べるなどもってのほか、ある一面だけで、いちいち、人と比べても、それは、不必要に子供を混乱させるだけで、何の意味もありません。

 勉強さえできれば、将来、安泰なわけでも、幸せになれるわけでもありません。
勉強が好きで、得意な子はその能力を伸ばせばいいし、それ以外のことが好きで得意な子は、そちらの方を大事に育てたほうが良いと思うのです。

 もともと、別の個性を持った子供を比べるのは、意味がありません。

 それよりも大切なことは、自分自身で、大切なものを見極め、自分自身でものごとを考えることができるようになることです。

 生きていれば、その場面、場面で、色々な人に出会います。
 そして、世間の人は、色々なことを言うこともあるでしょう。

 自分の考えをしっかり持って、それを貫く強さと信念を持って、進んでいければ、きっと子供はしっかりと自分の道を歩んでいけます。
 
 結果的にうまくいけば、世間なんて、調子のいいもので、まるで、過去に非難めいたことを言っていた人たちも、まるで、そんなことを忘れたかのように、同調していきます。

 一時の世間の風当たりなど、自分自身の信念がしっかりしていれば、何と言うことはありません。世間の目は、それくらい、いい加減なものなのです。

 そして、当たり前のことを当たり前と思わないことを気付かせること。
 そして、それに感謝ができる気持ちを持てるようになること。

 当たり前のことなど、一つもないのです。

 当たり前のことを当たり前と思っていては、感謝の気持ちは生まれないし、幸せを感じることはできません。

 能動的に自分自身で考えるようになること。

 それには、勉強しなさいとか、〇〇をしなさい、とできるだけ言わないことです。

 自ずと子供は、自分で考えるようになります。










 

 

 

2019年7月21日日曜日

権利を主張するわりには、義務をちゃんと果たさないフランス人





 「自己主張が激しく、権利を主張するわりには、義務をきちんと果たさない」これは、私の一般的なフランス人への印象です。
 簡単に言えば、「やることちゃんとやってから言えっつーの!」ということです。

 以前の私の職場にも、この典型のようなフランス人がいて、一緒に働く身としては、辟易としたものです。しかし、このような人でも決して、意地悪だとか、悪い人だとかいうわけではありません。

 これは、圧倒的にフランスの教育から来ているもので、権利を主張することにフランス人は誇りを持っています。義務を果たす部分に関しては、職場等にもよるでしょうが、本人の判断とモラルとに委ねられており、一般的には、日本に比べると格段にハードルが低いです。

 もちろん、なかには、猛烈に働く人もいますよ! うちの主人が日本に赴任していた時などは、それこそ、昼夜なく働いていましたから・・。
 でも、一般的には、なかなか・・・。

 特に、フランスは公務員天国と言われるように、一般の公務員の世界は、まさに、特に権利、そして、それ以上のものを享受しているように思えてなりません。

   高校を卒業してすぐに、娘は、夏休みの間だけ、主人の伝手で、財務省の事務職のアルバイトをしたのですが、その様子に、彼女は、びっくりして帰ってきました。

 部署にもよるのでしょうが、彼女が配置された部署では、

・出社して、少しすると、コーヒーブレーク。
・お昼の休憩は一時間のところ、一時間半はとる。
・定時で帰る、あるいは、定時より早めに帰る。
・一生懸命仕事をすると、仕事はゆっくりやるように注意される。
・子供が病気の場合は、医者の診断書があれば、欠勤扱いにはならない。
・もちろん、本人が病気の場合も医師の診断書があれば、欠勤扱いにはならない。
(最後の二つは、一般企業にもフランスでは、国で認められた法律です)

 中でも、一生懸命仕事をすると、ゆっくりやるように注意されるというのには、驚きを禁じ得ません。

 まあ、ざっとあげただけでも、こんなです。

 それが、少しでも、気に入らないことがあると、すぐにストライキです。

 まだ、パリに来たばかりの頃に、主人の友人に、フランスで印象的なことは?と聞かれて、”ストライキが多いこと!” と答えたら、とても誇らしげにしていたのには、逆にこちらの方がビックリしたものです。

 ユニクロがパリに進出した当時は、ユニクロは、日本のようなシステムを導入し、社員に機敏に働くことを教育しました。たとえ、店内が混雑しても、流れるような、レジのシステムにより、お客様を待たせない、お客様が手にとってみた洋服を端から綺麗に畳んで、常に棚を整頓し、商品を補充する。

 こんな、日本だったら、当然のことが、フランスでは、すごく特別なことなのです。

 今では、パリのユニクロでも定着しつつあるこのシステムも、パリ進出当初は、採用されたフランス人には、到底、耐えられるものではなく、店員がいつかずに、常に人材を募集していました。

 話は、公務員に戻りますが、公務員の特権は、他にも色々あります。

 うちの子供も利用させていただきましたが、春、夏のコロニー(子供のキャンプ)など、公務員の家族のために、その省庁によって、主催しているところもあり、そうでないところには、特別割引が適用されます。

 また、クリスマスの頃には、子供のためのクリスマスプレゼントのためのカタログのようなものがあり、自分で選べるようになっています。また、プレゼントとは別に、その年毎に違いますが、サーカスとか、演出付きの映画や、スケートのショーなどのご招待がありました。

 そんな待遇も権利を主張して勝ち得たものなのでしょうが、それに対して、あの働き様なのです。

 昨年末から行われている黄色のベスト運動や現在進行中のRATP、SNCFをはじめとするデモやストライキ、きっちり働くのも、それは、無理というものです。

 のうのうとストライキをやっていられる人こそが特権階級なのです。
ストライキやデモの被害を被る零細企業の人がどれだけいることか・・。

 











 


2019年7月20日土曜日

夫を誘惑しようとしたフランス人の女性の話



その女性が近づいてきたのは、私たち家族が今のアパートに引っ越してきて、まもなくのことでした。まだ、地域のことが、よくわからずに、手探りで、新しい生活を始めたばかりでした。

 その女性は、「子供にフランス語を教えます」という広告を出していた、近所に住む中年の女性でした。フランス語は、主人が充分に教えられるので、本当は、別に必要はなかったのですが、ちょうど、その頃、パリでは、長期にわたる学校のストライキが行われていて、なんと、一ヶ月近くも学校がストライキのために閉校となってしまったことがあったのです。

 私も主人も、小学校がストライキだからといって、そうそう、仕事を休むわけにもいかず、かといって、子供を一人で家に置いていくこともできないので、(フランスでは、子供を一人で放置するのは、法律違反になり、罰せられます)誰か、その間、子供を見てくれる人を探さなければなりませんでした。

 その時に、主人がその広告を見つけてきて、どうせ、子供を預かってもらうなら、ただ預けるだけでなく、勉強を教えてくれる人の方が良いということで、彼女にお願いすることになりました。

 最初は、私も近所には、知り合いもなく、娘のバレエのレッスンができるところを探していたりしたので、そんな情報も、彼女に聞いたりしていました。

 彼女は、結婚していて、ご主人も中学生くらいの娘さんもいらっしゃるとのことで、お嬢さんのおさがりの洋服や、おもちゃなどを持ってきてくれたりして、とても親切でした。バレエのレッスンに関しても、” うちの娘もやっているから、今度、紹介するわ!” などと調子良いことを言っていました。

 ところが、後になって、実際に、他からの情報で、娘がバレエのレッスンを始めてみると、そのお嬢さんは、バレエには、来ていないし、彼女が嘘をついていたことが、ばれ始めたのです。(私たちの街には、バレエのレッスンをできるところは、一ヶ所しかありません。)

 そのうえ、私に隠れて、主人にコンタクトを取ろうとしたりし始めたので、主人とは、ケンカにもなりました。

 でも、同時に、彼女がご主人がいる時間帯は外出できないとか、フランス人らしからぬことを言ったりして、妙だなと思っていると、そのうち、彼女が顔を腫らしたりしている姿を見かけ、どうやら、家でDVを受けているらしいことがわかりました。

 この街に、しばらく住んでみると、彼女の噂は、色々あって、とにかく、決まった仕事をしている様子もないのに、朝、早くから、外をウロウロしているのです。お客を取っているのではないか?という人もいました。

 昼間は、私も仕事に出ていていないので、わかりませんが、夜は、夜で、また、何をしているのかわかりませんが、必ず、外で、彼女の姿を見かけるのです。

 彼女がフラフラしているから、ご主人が怒るのか? ご主人が暴力を振るうから、彼女が外でフラフラしているのか? どちらが先かは、わかりません。

 ただ、子供の勉強を見るといって、男性を誘惑するのだけは、本当に、やめてもらいたいものです。子供を巻き込むなんて、最低です。

 それから、しばらくして、いつの間にか、彼女は、街から姿を消していました。








 







 

2019年7月19日金曜日

日本人の旅行の仕方が変わった理由 パリに日本人団体観光客がいなくなった?





 パリに日本人団体観光客が山のように訪れていたのは、やはり、日本がバブル景気の頃だったのでしょうか? 私は、その頃には、まだパリに住んでいなかったので、実際にその絶頂期を目の当たりにしたわけではありませんが、私がパリに来た当初は、まだ、その余韻が残っていました。

 大型バスで移動しながら、団体であちこちを練り周り、ブランド物を買い漁り、さぞかし、現地のフランス人には、異様な光景に映っていただろうなと、今、フランスで生活するようになって、改めて、思います。

 それでも、10年くらい前までは、日本行きの直行便の飛行機に乗ると、必ず、日本人の団体客のグループが2〜3個はあり、こちらの知り合いのガイドさんに空港で、ばったり!なんてことも、ありました。

 弾丸のようなスケジュールで、モンサンミッシェルを日帰りしたり、(モンサンミッシェルを日帰りするなどと言ったら、フランス人はビックリします)ロンドン・パリ・ローマを1週間で回るとか、早朝に、パリについて、そのままパリを1日観光して、翌日の午後には、ロンドンへ、なんていうツアーもありました。

 体力的にもきついだろうし、わけがわからないまま旅行が終わって、日本に帰った時には、放心状態ではないかと思っていました。

 実際に、観光客の中には、ヴェルサイユ宮殿のことを、” ほらほら、あの、赤い服を着た兵隊さんがさ〜、交代するところでさ〜・・” などと言うのを聞いたこともあります。

 それは、バッキンガム宮殿で、しかも、それは、パリですらなく、ロンドンの話です。

 しかし、そんな、日本人の団体旅行も、ここ数年で、あまり見かけ見かけなくなりました。逆に、ここ数年の日本行きの飛行機は、フランス人ばかりです。

 それでも、パリに観光客としてやってくる日本人が全くいなくなったわけではありません。団体ではなく、個人で、可愛らしいプチホテルなどを選んで、ゆったり、自分の足でパリを歩く旅行者です。

 パリは、決して大きな街ではありませんから、事前に自分の行きたいところをピックアップしておけば、自分の足で、メトロやバスを使ってでも、十分に周ることができます。

 私は、パリには、そのような観光があっている街だと思うのです。
伝統のある建物がそのまま残された街並みをゆったりと歩いてみてほしいのです。
 中には、汚い場所もありますが、概ね、街全体は、美術館のようです。

 そして、日本人の旅行の仕方も、ただ、がむしゃらに沢山の場所を回ったり、ブランド物を買い漁るのではない、ゆったりと自分のテイストにあった旅行に変わってきているのです。

 それは、日本人の求めているものが、効率が良いばかりのものでも、ブランド物などの物質的なものでもなく、他のものへ移行しているのだと思います。

 私は、そんな変化をとても好ましく思っているのです。












 

2019年7月18日木曜日

人の気持ちがわかる猫 我が家に猫がやって来た



    
 我が家に猫がやって来て、はや、10年くらい経ちました。

 当時、私たち家族に不幸があって、悲嘆にくれて、落ち込んでいた頃のことです。

 知り合いのフランス人が、私たちが、猫好きなことを知って、彼女の知り合いのところに猫が数匹、生まれたから、そのうちの一匹を譲ってもらえるという話を持って来てくれました。

 お休みの日に、娘がその方のところに行って、数匹いる、生まれたばかりの猫の中から、娘と相性がいいと思われる猫を一匹を選んできました。

 それから、少しずつ、猫を迎え入れるために、猫のご飯や、トイレやベッドや爪とぎ、など、猫のための品物を買い揃えていきました。猫が来る準備をするだけで、私たちの気持ちは少しだけ、上向きになり始めました。

 そして、数週間後、お母さんと離しても、もう大丈夫になった時、猫が我が家にやって来ました。生まれたばかりの女の子の子猫です。
 猫の名前は、ポニョと名付けました。

 ポニョは、ツンデレで、気ままで、でも、寂しがりやのところもある、とてもかわいい子猫でした。私が、おそばを食べようと支度をしていると、どんぶりの中に入って待っているようなおチャメなことをしてくれたりもしました。写真を撮っておけなかったのが、残念でなりません。

 猫が来てくれたことで、凍りついてしまった家の中の空気が溶けていくようで、私たちの心は、ようやく緩み始めました。

 娘がまだ、小学生だった頃、数学の宿題をやっていて、分数だったか、何だったかは、もう覚えていませんが、よくわからなくて、私に聞きに来たことがありました。その程度なら、まだ、私にも教えられるレベルだったので、そんなに難しいことをやっていたわけではありません。

 計算の仕方を説明して、方法は、理解したようだったので、あとは、練習問題をやって、慣れるだけだね!と言って、私は、突き放したのです。

 娘は、不服そうに部屋に戻って行きましたが、それから、かなり時間が経っても、娘が部屋から出てこないので、のぞきに行ってみると、娘は、宿題に行き詰まって、シクシク泣いていました。

 娘のすぐ側には、ポニョが右の前足の片手(?)を娘の手の上に置いて、じっと、心配そうに娘に寄り添っていました。

 それからというもの、しばらくの間は、娘が数学の勉強を始めると、娘から、嫌〜なオーラが発散されているのか、ポニョは、必ず、娘の側に寄り添うようになったのです。

 それ以来なのか? ポニョは、どうやら娘のことを自分の姉妹と思っているようで、ちょっかいを出されても、追いかけてついて行き、娘が長く家をあけていて、久しぶりに帰ってきたりすると、何とも言えない、満足気な平和な表情をしています。

 でも、ちょっと、上から目線で、やっぱり自分が面倒見てやらなきゃな!みたいな顔をしています。

 しかし、人の好き嫌いが激しく、嫌いな人だと、遠慮なく、激しく”カーッ!” と威嚇します。家に友人が来たりしても、嫌いな人だと構わずに、この ”カーッ!”をやるので、困ってしまう時もあります。

 でも、実のところは、誰にでも気安く、愛想よく、いい顔をしないところも私は、気に入っているのです。そんなところは、娘に良く似ています。

 一度、ポニョが病気になって、みるみるうちに、弱ってしまって、歩けなくなってしまったことがありました。焦って、娘などは、半べそを書きながら、今にも死んでしまうのではないかと心配して、夜中にヴァンセンヌにある24時間やっている動物病院に連れて行きました。

 とりあえず、3日間は、入院してくださいと言われ、泣く泣くポニョを病院に預けて、二人でガックリ肩を落として、家に帰りました。翌日の午後、13時から15時までなら、面会できると言われて、二人で、面会に行ってみると、ポニョは、点滴の効果でかなり回復していました。

 そして、獣医さんに説明を聞きに行くと、彼は、もう堪らない!という顔をして、” 何しろ、すごく怒ってるから・・” と言い、例の、”カーッ!”をやり続けるので、もう、おうちに連れて帰ってくださいと言われて、苦笑しながらもホッとして、ポニョを抱きかかえて家に帰りました。

 こんな、激しいポニョですが、彼女は、家の中が悲しい空気に満ちた時に来てくれたせいか、人が辛そうにしている時には、誰よりも敏感で、今でも、夜、眠れなくて、一人で起きていたりすると、心配そうにポニョが様子を見にやってきます。

 そして、” ママは大丈夫だから、ありがとう” というと、安心して、自分のベッドに戻って行きます。

 これも、あの頃の悲嘆にくれた家の空気の中で育ったポニョに染み付いてしまった、哀しい習性なのかと思うと、そんな、ポニョの優しい心配りにどこか痛々しさを感じてしまいます。

 ポニョは、大切な家族の一員なのです。
 
 猫って本当に可愛くて愛おしい。