2021年1月7日木曜日

海外から見る日本の緊急事態宣言

  

 

 ここ数日前から、日本で緊急事態宣言を要請、検討・・というニュースを耳にしてきました。「緊急事態宣言」というのは、「緊急」なのではないのか? 何日、検討しているのだろうか?と思いながら・・。 

 昨年の3月にヨーロッパでのコロナウィルスの感染拡大が始まって以来、コロナウィルスが蔓延し始めたことが公になって、フランスは、あっという間にロックダウンになりました。(フランス政府では、どうやら、これは危険な状態であるということは、2週間ほど前からわかっていたそうですが・・)

 1回目のロックダウンは、衝撃的で、突然、生活必需以外の外出は一切できず、学校も閉鎖というほぼ経済が止まってしまうようなロックダウンでした。なぜ、フランス(ヨーロッパ)でコロナウィルスが広まるのか? フランス人は、マスクをしないし、不潔だし、フランスは、これだからいけないんだ・・などと、色々と感じ、考えながら、この一年を過ごしてきました。

 当初は、ウィルスについても、まるで未知のものであったので、どのように感染が広まっていくのかもわからずに、「日本は大丈夫だろうか?」「日本もコロナウィルスを甘く見てはいけないよ!・・」などと思ったりもしていました。

 しかし、これまで日本は、世界一の高齢化社会であり、人口の過密具合もフランスの比ではないにもかかわらず、フランスのような極端なロックダウンの措置を取ることもなく、自粛要請、緊急事態宣言とあくまでも、国民の規律に頼る形で感染を抑えてきたことは、フランスにおいても、日本の事例や感染症対策を参考に挙げられることも多く、奇跡的なこととして見られてきました。

 そして、私も、このまま日本は、何とかこのコロナウィルスの危機を乗り越えて行くものだろうと思っていました。現在でも1日の新規感染者数を見れば、日本が緊急事態宣言か否かと危機感を高めている数字は、もしも、それがフランスの数字であったならば、もうコロナウィルスはフランスから消滅したとでも言いかねないほどの数字なのですが、どうも日本の報道の様子を見ていると、かなりの緊迫状態のようで、驚いています。

 フランスは、毎日、数万人単位の新規感染者が出ることにももう慣れてしまっていることもあるのですが、日本の医療環境や検査環境の不備の状態には、これが日本なのか?と驚いてしまうこともいくつか聞こえてきます。

 感染拡大を回避するには、日常生活をいかに注意しながら送るかということも大切ですが、注意して生活していても、感染してしまうことも少なくないことから、検査をいかに拡大し、病状が悪化することを防ぐことはもちろんのこと、無症状の感染者が感染を広げることを防ぐことも重要です。

 日頃、フランスで生活していれば、日本では当たり前のことが当たり前にいかないことが多く、大抵のことは、日本の方が数段、便利に合理的にできるので、「ここは日本じゃないんだし、フランスだから仕方ない・・」と諦めることも多く、私の中には、日本の方が優れているという気持ちがあるのです。

 日本の感染者に対するホテル隔離の話なども聞いて、すごいなと思っていたのです。フランスは、陽性になっても自主隔離1週間が普通ですから・・。

 しかし、例えば、肝心のPCR検査に関してなどは、今やフランスでは、薬局でも、誰もが無料で、容易に受けられるものになっていますが、日本は、検査も容易ではない様子。「フランスにできることがなぜ?日本にできない?」と信じ難い気持ちです。

 また、何より、政府の、いつまでも、一方的に国民の善意に頼り続けるはっきりしない曖昧な態度には、やるせなさを感じます。営業時間短縮、営業自粛などを呼びかけ、自粛要請に応じない店舗の店名を公表するなど、強い立場の側から弱い立場の人を吊し上げるなど、脅迫行為、そんなことをフランス政府がしたら、クーデターでも起こりかねません。

 ましてや自粛警察が厳しすぎるほど厳しい日本社会において、そのような店名の公開をすれば、致命的な痛手となることは間違いありません。たまたま日本の友人からのメールに、「フランスは感染者を責める空気がなくて良いですね・・」と書いてあり、なるほど・・と思ったばかりでした。

 みんなが真面目に規則を当たり前のように守っている日本は、素晴らしいなと思う反面、その規則を守ることを皆が見張り合うようなキツキツな感じ、そして、挙げ句の果てには、政府が名前を公表して吊し上げるという緊張状態では、コロナが怖いのか、そんな社会が怖いのかわからなくなってきます。

 これまで、日本が世界から見たら、奇跡的と言えるほどに感染を抑えてこれたのは、ひとえに日本国民の真面目さのおかげであり、この厳しさこそが感染ここまで抑えてこれたのですが、それは日本政府の手柄ではありません。

 緊急と言いながら、ずるずると国民の不安を煽り、国民にお願いばかりの政府は、具体的に1日の感染者数が何人まで下がれば、またコロナ対応のできる病床がどこまで空きがある状態になればなどの目標数値を示し、ここまでになるまで、一緒に頑張ろうと国民に寄り添う熱意ある態度を示さなければ、日本人の緊張状態もそうそう続くものではありません。

 昨日のフランスの新規感染者数は、25,379人、日本は、4,357人、感染が一度波に乗ってしまえば、現在のイギリスのようにしばらくは手が付けられない状態になってしまうので、日本のような狭い土地に莫大な数の人口、しかも多くの高齢者を抱える国で、同じことが起こったら、それこそ大変なことになると思いますが、それにしても、1日、2万5千人以上の感染者を出しながら、日本に比べたら、ずっとのびのびと暮らしているようなフランスに、困ったもんだ・・と思いながらも、どこかホッとしたりもしてしまうのでした。


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「コロナウィルス対応 日本人の真面目さ、辛抱強さ、モラルの高さ、衛生観念はやっぱり凄いなと思う」

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「フランス(ヨーロッパ)でコロナウィルスが広まる理由」

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2021年1月6日水曜日

ワクチン問題、さらに混乱状態のフランス

  


 コロナウィルスのワクチン接種が極端に遅れていることが問題になって以来、政府もワクチン対応に躍起になって、混乱状態の様相を呈してきています。

 明らかに初動態勢に抜かりがあり、華々しくフランスでの最初のワクチン接種の様子を報道したりしたものの、その実、うまく事は運んでいなかったのです。

 まずは、高齢者施設から、1月末までは、100万人、2月からは・・などと、目標数値やスローガンを立派に掲げたものの、実際の接種に際しての準備が追いついていなかったのです。

 このワクチン接種の数字が各国から具体的に上がってきて、フランスの初動失敗の様子が報じられると、政府は、あたふたと昨日は、「5,000人の接種を行った」ことを報道し、その上、ワクチン接種の最優先の縛りを、これまでの高齢者施設の居住者と50歳以上の医療従事者に加えて、50歳以上の救急隊員とホームヘルパーもワクチン接種が受けられるようになったことを発表しました。

 高齢者施設でのワクチン接種が思ったよりもスムーズに運んでいないこともあり、今、より多くの人に少しでもワクチン接種を行っていくことは必要なことでもありますが、これには、とりあえずの数字稼ぎのような気がしないでもありません。

 なぜ、高齢者施設の居住者を最優先にしたか? それがスムーズに行っていないなら、そのための解決策を、まず、取らなければなりません。

 目標とするスローガンや数字を大々的にアピールすることは、フランスの得意とするところではありますが、論理的には可能なことが、スムーズには運ばないのがフランスなのです。そんなフランスの理想と現実がこのワクチン接種では顕著に露呈した一例であったような気がしています。

 また、スムーズに運ばなかったワクチン接種のこれまでの結果から、貴重なワクチンを無駄にしてしまっているかもしれない可能性まで露見し始めています。

 このワクチンは、ー70℃という冷凍状態で輸送、保存する必要があり、投与前に5日間冷蔵庫に保管、準備ができて5時間以内に使用する必要があります。一度、解凍したワクチンは、食品同様、再度、冷凍することは不可能です。

 そして、現在、使われているファイザー、バイオンテックのワクチンは、6回分のワクチンがまとめてパッケージングされており、ある程度、纏まったワクチン接種が行われない場合、解凍されたままのワクチンを無駄にすることになってしまいます。

 これまで実際にワクチン接種が行われた数字と開封されたワクチンから、すでに少なくとも20%のワクチンが無駄になってしまっていることが問題になっています。

 また、このワクチンがさらにややこしいことには、最初のワクチン接種から2〜3週間以内に2回目のワクチン接種を行わなくてはならないところです。ですから、これからワクチン接種が進むに従って、1回目の接種と2回目の接種の人を同時にこなしていかなくてはならないのです。このまま、急激にワクチン接種を増やしていくということは、自ずと2倍3倍の数をこなしていかなければならないわけです。

 そもそもワクチンに関しては、フランスの最大手製薬会社サノフィのワクチン開発が昨年末になって、高齢者への有効性が低いことから、フランスで製造できるワクチンの完成は2021年の年末にずれ込むことが発表された時点から、雲行きが怪しくなってきていました。

 現在は、ワクチンを100%輸入しているフランスは、そのワクチンの確保も容易いことではなく、現在は、50万回分のストックが確保できているとしていますが、現在、認可されているファイザーとバイオンテックに加えて、数日中には、急遽、モデルナ社のワクチンが認可されるようです。

 バカンス後の感染拡大も大いに心配される中、ワクチン問題ばかりに問題が集中していることがかえって不安に思います。

 負けず嫌いでプライドの高いフランスが、ドイツ、イギリス、オランダ、イタリアなど各国と比較されて、極端に劣っているなどとされることは耐えられないことでもあるかもしれませんが、ここは慌てずに、フランスの実情を踏まえて、ワクチンの有効性をできるだけ保てるように慌てず、確実に進めて欲しいと思っています。


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「フランス人のプライド」

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「フランス人は、イタリアを下に見ている」

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2021年1月5日火曜日

フランスのワクチン接種が大幅に遅れをとっている理由



 ノエルのバカンスも終わって、現在のフランスは、このクリスマスから年末年始の休暇をどの程度、感染回避ができて過ごしてこれたかの成績を恐る恐る待っているような状態です。

 漏れ聞こえてくる若者のパーティーの様子などを見る限り、あまり良い成績は期待できないのですが、にわかに人々の関心は、コロナウィルスのワクチン接種に移行しつつあります。もはや頼みの綱はワクチンしかないと思い始めたのでしょうか?

 というのも、ヨーロッパの多くの国では、昨年末からコロナウィルスワクチン接種が始まっており、イギリスやドイツが着々とワクチン接種の数を増やしているのに比べて、フランスのワクチン接種の数が極端に少ないことに、疑問を持ち始めたからです。

 イギリスではすでに95万人に対してのワクチン接種が行われており、ドイツもほぼ、これに続いている数字です。ところが、フランスは、年明けの段階で、まだ数百件という桁違いの少なさに政府に対する避難が高まっているのです。

 私も、当初は、フランスは、慎重を期しているのかと思っていましたが、このあまりの数字の違いは、どうやら、単なる段取りの悪さが原因のようで、ワクチン接種の極端な遅さに対するあまりの非難に、政府も4日の午後にはエリゼ宮でワクチン接種に関するフォローアップ会議が午後中行われ、6日に行われる予定の防衛評議会もワクチン接種が最優先事項となっているようです。

 フランスでワクチン接種が遅れているのは、もしやワクチンがまだフランスに到着していないのでは?と思いきや、少なくとも12月26日には、19,500回分のワクチンはフランスに到着しているのです。これがまだ、数百件のみのワクチン接種とは・・・。

 フランスでは、高齢者施設の居住者と50歳以上の医療従事者を最優先にしていますが、高齢者施設の居住者に対しては、同意書が必須とされており、この同意書作成がノエルのバカンスに中断したために、他国に比べて大幅に遅れをとった理由の一つにあげられています。

 またしても、あくまでもノエル優先のフランスのお国柄が裏目に出てしまったわけです。

 とはいえ、計画では、2月末までには、第1段階の最優先対象者100万人へのワクチン接種を行うことになっています。つまり、1日あたり、1万9000人にワクチン接種を行わなければなりません。しかし、これまでにワクチン接種を行うことができたのは、たった20カ所の施設だけだったようで、これを1月末までに100カ所にまで拡大するそうです。(このあたりにも、これまでの段取りの悪さが垣間見えます)

 これだけの急激な量のワクチン接種には、保存が難しいワクチン(ー70℃以下での保存)の管理の問題もあります。ワクチン接種にかかる人出の問題もあります。問題は山積みです。

 フランスで現在、投与されているワクチンは、ファイザーとバイオンテックの2種ですが、医師との相談により、自分で選択することができるそうです。また、他社のワクチンについての早急な認可も求められています。

 ワクチン接種に関しては、「自由選択」という姿勢をとっているフランスで、アンチワクチン論者も少なくないために進まないのかと思いきや(現在のワクチン接種対象者には、アンチは少ない)、現在、ワクチン接種が滞っているとなれば、大バッシングになるのですから、ややこしいことです。

 このワクチン接種の遅さに対する大バッシングには、マクロン大統領も「不当に遅れることを防ぐ」ことを約束し、オリヴィエ・ヴェラン厚生相なども、必死に弁明しています。

 どちらにしても「物申す」フランス人。主張も結構、目標数値を堂々と掲げるのは、得意ですが、まず、やるべきことを着々と進めてもらいたいものです。

 フランスのコロナウィルスワクチン接種に関する情報は、「CovidVaccine」(コヴィッドワクチン)と呼ばれるワクチン接種監視情報システムに入力されます。 ワクチン接種を希望する人、またはワクチン接種を受けていない人の名前、名、性別、生年月日、住所、電話番号などの個人情報を収集することが、12月末の法令で認可されています。

 ワクチン接種によるコロナウィルスの流行を抑える効果が見えるまでには、少なくとも3月末までに1000万人がワクチン接種を受ける必要があり、まだまだ時間がかかりそうです。

 現在のフランスのコロナウィルスによる入院患者は24,995人(昨日1日で1,258人増加)、ワクチン接種のスピードはコロナウィルスの感染速度に追いつくようになることは、当分、先の状況のようです。


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「フランス・コロナウィルスワクチン接種開始」

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「実践よりも、まず、理論のフランスの教育」

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2021年1月4日月曜日

ノエルのバカンス終わり 学校も再開 日常生活が再開する

  


 フランスには、お正月の三ヶ日(さんがにち)という観念はありません。例年ならば、年末年始は、クリスマスの日(25日)は祝日ですが、それ以外は、カレンダーどおり、年末の御用納めというものもありません。

 しかし、ノエルの前から学校がバカンスに入るし、ノエルは、フランス人にとっての大イベントでもあるために、お休みを取る人も少なくありません。とはいえ、年末は31日まで働き、元旦は祝日で休みでも2日からは、仕事に戻るのが普通です。

 ところが、今年は、元旦が金曜日に当たったことから、土日がお休みである一般的な仕事についている人にとっては、珍しく、お正月の三ヶ日をゆっくり過ごせるフランスにいるにしては、珍しい年周りでした。

 学校のノエルのバカンスも終わって、4日からは、学校も再開します。ヨーロッパのいくつかの国(ドイツ、オランダ、ポーランド、ギリシャなど)では、コロナウィルス感染のために学校は再開されないそうです。

 フランスでは、現在のところ、予定どおり、学校は再開されるようです。現在のところは、ノエルや大晦日で多くの人が行き来して、広げてしまっているはずの感染拡大の結果は、まだ顕著にはなってきていないので、学校も、行ける時には、行っておいた方が良いのかもしれません。

 どちらにしても、フランスは学校も、年がら年中バカンスで、2月の半ばになれば、また冬休みでバカンスに入ります。最初に娘がフランスで学校に生き始めた時には、このバカンスの多さには、仕事を持っている私にとっては、四六時中、学校のバカンスに追い回される感じで、学校は水・土日と休み、おまけに一ヶ月おきくらいにバカンスで、「どんだけ休むの?フランスの学校? こうして働かないフランス人が作られるんだ・・」などと思って、学校の休みの日を数えたことがあります。

 結果、フランスの学校は、一年の3分の1は休みで、ビックリしたのを覚えています。

 話はそれましたが、去年から引き続き、今は、コロナ禍中の特別な時、1回目のロックダウンの時点で、リモート等の授業が続いていたものの、学力の差はいつも以上に広がり、6人に一人の若者が学業を放棄している状態だと言います。

 将来のある子供や若者の未来を考えれば、このコロナウィルスによる学校閉鎖は、思わぬつまづきになってしまうきっかけにもなりかねないので、できるだけ学校は継続すべきであると思っています。

 娘が小さい時には、学校に傘を持っていくことは禁止になっていました。傘が危険であるということからだったのですが、(送り迎えが必須であるため必要ないといえば無いのですが・・)そこを傘を禁止するのではなく、傘を安全に使うことを覚えることも必要なのではないか?と思った記憶があります。

 今回のコロナウィルスに関しても、学校は、どうやって感染を回避するかを教える場所であっても良いと思うのです。

 また、1月2日から、フランスの15の地域(フランスの北東部中心の地域)では、夜間外出禁止が午後8時だったものが午後6時に前倒しになっており、実際の社会生活が始まれば、問題も多々起こってくるとは思いますが、完全なロックダウンにならないだけでも、まだマシだと考えるべきなのかもしれません。

 この夜間外出禁止は、現在のところは、1月20日まで、そして、2度目のロックダウンの段階的な解除の計画によると、1月7日頃に映画館、劇場等の再開を再検討することになっていましたが、年末年始の人の動きや現在の感染状況を見る限り、映画館、劇場等の再開は絶望的と見られています。

 もはや頼みの綱であるワクチン接種もフランスは、他のヨーロッパ諸国に比べて格段に遅れており、国民の70%はワクチン接種をしなければ、通常の日常は戻ってこないと言われている現在、暗い冬を迎えそうであることは、ほぼ確実のようです。


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「フランス・コロナウィルスワクチン接種開始」

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2021年1月3日日曜日

年末から年を超えて引き続くフランスの犯罪 車を燃やす競争??



 まだ、年が明けて何日も経っていないと言うのに、ニュースは犯罪に関するものが目白押しで、あらためて、フランスは、なんて恐ろしいところなんだと思わずにはいられません。

 大晦日の夜から元旦にかけて、フランスで燃やされた車は861台だと言います。しかも今は、コロナウィルスの蔓延するコロナ禍中、夜間外出禁止で、特に大晦日の夜には、年越しのカウントダウンを祝うためにバカ騒ぎをする人を警戒して10万人の警察官が警備にあたっていたにも関わらず起こったことです。

 そう思って調べたら、なんと、これでも例年よりは、大晦日に燃やされた車の数はずっと少ないそうで、一昨年末の大晦日に燃やされた車は1,457台だったそうで、昨年よりは、40%減少していることになります。

 今年のこの数字は、大晦日の事件報告に関する内務長官のプレスリリースには載っておらず、内務大臣のジェラルド・ダーマナンの指示で、「各地の競争(車を燃やす競争?)を避けるために、これらの数字が地元で伝えられないように」伏せられたと後に発表されています。

 一体、このコロナ禍中、何の競争をしているのだ?と思います。この種の破壊行動を繰り返す人々の心理はわかりませんが、あり得ないことではないのかもしれません。 

 また、大晦日の夜から36時間も続き、ブルターニュで2,500人を集めたパーティーを主催した人物が特定され、逮捕されました。このパーティーでは、単なるレイブパーティーだけではなく、麻薬などの薬物までもが横行していました。

 何より感染拡大のクラスターになった危険が高いことから、参加者には、7日間の隔離生活が要請されていますが、あくまでも要請、監禁されるわけでもないので、このようなパーティーに参加する人々ゆえ、一週間の隔離生活の要請が守られるとは考えにくいのが実情です。

 このパーティーでも、憲兵隊の車が燃やされたり、警察に抵抗して攻撃したりしたことなどで、すでに、662人が逮捕、407人が勾留され、参加者のうち1,600人以上が罰金を課せられています。

 このパーティー主催の中心人物2名を含む運営に関わっていた8名は2日の夕刻には特定され逮捕・勾留されましたが、これらの中心人物は、単なる参加者とは別格の犯罪であり、10年の投獄と750万ユーロの罰金の可能性があると言われています。

 このパーティーがクラスターになっていることは確実であり、それがどれだけの人々の命を奪うことになるのか?また、このために拡大した感染により、さらに国民の生活に制限がかかり、経済活動が低迷するのかを考えれば、重罪です。

 日頃から、フランスの刑務所は、満員で、ちょっとやそっとのことでは捕まえてもらえず、簡単な調書を取られただけで、すぐに帰されてしまうことを遺憾に思っていましたが、年明け早々、まだ数日しか経っていないのに、これだけの犯罪や逮捕者の数を聞けば、フランスの警察が犯罪者をいつまでも拘留し続けるのは無理な話です。


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「パリの盗難被害 パリの泥棒は、なかなか捕まえてもらえない」

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2021年1月2日土曜日

大晦日から続くブルターニュ地方で開かれた2,500人が集まるレイブパーティー 

 



 10万人の警察官を動員して大晦日の夜の外出禁止の警戒をしていたフランス。大晦日のシャンゼリゼは、静まりかえり、取り締まりの警官のみが練り歩く異様な光景で都会の街は空っぽになったように映っていました。

 しかし、それは、都会の目立つ場所のみのことで、大晦日以来、ブルターニュ地方のレンヌ南部・リューロンでは、2,500人が集まるレイブパーティー(ダンス音楽を一番中流すパーティー)が行われていました。

 パーティーの場所に選ばれたリューロンの倉庫のようなスペースには、31日の夕方から数百台の車が集まり始め、夜通しのパーティーが始まりました。パーティーの参加者は、フランス国内だけではなく、イタリアやスペイン、ベルギーなどの隣国からも人が集まっていました。

 警察が介入した時には、すでに簡単に解散させることができないほどの人数になっており、憲兵隊が発砲する事態にまで発展し、警察官25人が負傷しましたが、参加者を傷つけることはできないことから、警察も憲兵隊も手がつけられない状態が続き、一昼夜以上、続いていました。

 若者が夜間外出禁止(特に大晦日)に反発して、躊躇なく、屋内でのパーティーをしようとしていることは知っていましたが、まさか、これほどの人数の、しかも国境を超えてまで人が集まるパーティーが行われるなどとは、思ってもみませんでした。

 今や、大勢の人が集まっている光景を見かけると、それがたとえ、映画やドラマの中のことであっても、思わずギョッとしてしまう私です。

 このレイブパーティーの映像を見る限り、皆、屈託なく、音楽に合わせて楽しそうに踊り、マスクをしている人などほとんどおらず、たまにマスクが見えても顎マスク。ビールなどのアルコールを口に含んで、人に吹きかけている人までいます。これでは、飛沫が飛ぶどころの騒ぎではありません。

 このパーティーが行われた地域は、現在、フランスの中で特に感染が悪化している場所には、指定されてはいませんが、この屋内での光景には、思わず第1波が全国に拡大する根源となったミュールーズの教会の集会が頭をよぎります。

 この教会の集会もフランス全土だけでなく、海外からも人が集まり、集会の終了後、全国にウィルスを持ち帰って感染をフランス全土に拡散させたのです。

 このパーティーが警察や憲兵隊までが容易に踏み込めないことが理解できません。しかし、少なくとも、このパーティーで662人が逮捕、407人が勾留されています。

 ただでさえ、ノエルで人が国内大移動し、家族で集い、感染者数も2万人台に増加しているフランスです。このパーティーが解散させられたとしても、全国から集まった人々が、何食わぬ顔をして、それぞれ、自分の地域に散っていくことを思うと恐怖でしかありません。

 いみじくも、ブルターニュは、現在、娘がスタージュのためにここ半年間、滞在している地域です。娘がこのパーティーに参加してはいなくとも、この地域でクラスターが起これば、危険も高まります。他人事ではありません。

 ロックダウンや夜間外出禁止に反抗する気持ちはわからないではありませんが、今は、それが許されない状況なのです。結果として、自分たちの行動がさらに厳しい制限やロックダウンを招いていることをわからないバカが大勢いることに憤りを感じます。

 なぜ、いつまでもレストランが営業できないのか? 映画館や劇場も営業できないのか? こんなことをしていては、いつまでも、フランスに日常は、戻ってきません。

 年末は、よく日本語でも、「年忘れ○○」などと言いますが、昨年起こったコロナウィルス感染の惨状は、まだ、忘れてはいけない出来事なのです。このパーティーでは、1200人以上が罰金を課せられましたが、お金を払って済む問題ではありません。

 2日の夜には、このパーティーの主催者は逮捕。10年の投獄と750万ユーロの罰金の可能性があるそうです。しかし、このパーティーがもたらした被害はあまりにも大きいのです。

 やっぱり、フランスは、大晦日の1日だけでも、夜間外出禁止ではなく、ロックダウンにすべきでした。


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「フランスはどこまで甘いのか? 年越しに関する制限は、現状どおり」















 

2021年1月1日金曜日

2020年〜2021年 年越しのフランスの夜

  

大晦日のシャンゼリゼ 夜間外出禁止の厳重な警戒体制


 2020年は、思っても見なかった大変な年になりました。たまたま、用事で2月に日本に帰国した際の飛行機に乗った時に、ここ数年、日本行きの飛行機の9割方の乗客がフランス人になっていたはずの、そのフランス人の乗客が消えていました。

 2月の時点では、フランスでは、まだまだコロナウィルスは、アジアで起こっている感染症という認識で、ダイヤモンドプリンセスでの感染が盛んに騒がれていた頃です。

 私が日本から帰国した2月末には、フランスに無事に入国させてもらえるかどうかを心配していたくらいです。しかし、フランス入国に際しては、ノーチェック、いつもと何ら変わりはありませんでした。

 そのフランスの水際対策の甘さは、現在は、一応、検査場などは用意されてはいるものの、あまり進展は、ありません。(現在は、イギリスからの入国は厳しいようですが・・)

 それが3月に入った頃から、あっという間に立場は逆転し、3月半ばには、フランスは、ロックダウンになりました。街には、警察や憲兵隊が控え、「家から出てはいけない」などという状況が、自分の人生のうちに起こるなどとは、夢にも思ってはいませんでした。

 長年生活しているとはいえ、異国の地で、よく正体のわからない恐ろしいウィルスが蔓延している状況で、不安でニュースをテレビで毎日、一生懸命見る習慣ができました。当初、フランスでは、マスクが圧倒的に不足しており、日常生活を普通に送る分には、一般人(医療従事者等以外)は、マスクは必要ないなどと言われていました。

 実際に一般人がマスクを買うこともできませんでした。

 しかし、そんなことはあり得ない!しないよりはした方が良いに決まっています。私は、家の中のどこかにはあるはずのマスクを探し出し、政府が何と言おうとマスクはすることにしていました。情報は得つつも、その情報を元に自分で判断することが必要だと実感しました。

 といっても、最初のロックダウン中は、買い物に2回出たのみで、それ以外は外出することはありませんでした。5月に1度目のロックダウンが解除される頃になって、どうやらマスクは必要だということになり、市役所からマスクが配布され、高価ではありましたが、一般人もマスクが買えるようになりました。

 5月から徐々に感染は、減少しましたが、ウィルスが消えることはなく、人々は日常のデモを再開し、多くの人が夏のバカンスに出かけるのをハラハラする思いで見ていました。案の定、フランス人がバカンスから戻り、気温が低下するとともに、フランスには、第2波がやってきて、10月には、1日の感染者が6万人までにも膨れ上がり、10月末には、再びロックダウンになりました。

 ノエルを目前に控えたロックダウン、しかし、その頃の感染状況には、さすがのフランス人も「この状況では、ロックダウンも仕方ない、今、我慢して、何とかノエルを家族とともに祝いたい・・」との思いから、約1ヶ月のロックダウンで、奇跡的に1日の感染者は、1万人台までに減少しました。

 とはいえ、それでも1日1万人以上の感染者が出ている状況で、ロックダウンを解除し、ノエルを家族と過ごすことを禁じきれないフランスを遺憾に思っていましたが、年越しに関しては、20時以降の夜間外出禁止が敷かれました。

 いつもは、大晦日には、人で溢れかえるシャンゼリゼも人影がなく、街路樹の赤いイルミネーションと警備にあたる警察官のみの静かで、しかし異様な光景が広がっていました。

  

街路樹のイルミネーションがなければシャンゼリゼに見えない

 大晦日の夜は、フランス国内では、10万人の警察官が動員され、この夜間外出禁止を取り締まりにあたりました。

 しかし、外出さえしなければ良いと考えている若者は多く、夜20時までに友人宅に集まり、一晩中、皆で家で過ごせば良いのです。この日に備えて、寝袋や簡易ベッドがあっという間に完売状態、若者は、外出しない、年越しのパーティーの準備をしていました。

 地域によっては、31日の16時からアルコール販売禁止などの措置をとったところもあるようですが、焼石に水です。

 街の中が静かな分、屋内では、どれだけの人がパーティーを開いているかと思うとその皮肉な状況が恨めしく思えてならないのです。実際に、リヨンやレンヌでは、1000人、2000人規模の違法パーティーが行われていた模様です。

 2020年のフランスのコロナウィルスによる死亡者は、64,632人でした。これだけの犠牲者を出してもなお、今の状況が理解できていない人がいることを悲しく思います。

 それでも、2021年はノエルも年越しも心おきなく過ごせるようになるように・・というよりも、普通の生活が普通に送れるようになるといいなと祈るような気持ちでいます。

 もはやフランスを救うのは、ワクチンだけなのでしょうか? ワクチンを一般人が受けられるようになるのは、春以降になるようです。

 今年は、シャンゼリゼもエッフェル塔も花火はなし。ベルサイユ宮殿の庭園で花火が上がりました。


 

 

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「心配の種は尽きないフランス ノエルの後は、年越し」

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