2021年3月19日金曜日

フランス・3回目のロックダウンの衝撃と実質的な制限

   

            Discours de Castex : nouveau confinement, couvre-feu à 19h... Les annonces

      

 1月末頃から、いつロックダウンになるかと思っていました。その時がとうとうやってきました。毎日毎日、感染状態を気にしながら、いよいよヤバいと思っていました。

 ロックダウン発表の前日の段階で、感染状態が特に深刻なイル・ド・フランス(パリ近郊の地域)、オー・ド・フランスは、これまで以上のさらに厳しい制限が敷かれることが発表されていたので、ロックダウンもあるとは思っていました。

 しかし、ここのところの政府のやけに強気なロックダウン回避の対応に、週末のみのロックダウンかと思っていました。今年に入ってからというもの、ロックダウンは最終手段と言い続けてきたフランス政府は、とうとうその最終手段を取らなければならない状態にまでなってしまったということです。

 結局、感染状態は、想像以上に深刻で、すでに集中治療室も満床状態のイル・ド・フランスの発生率は一週間で23%も増加しており、すでに第2波のピーク時の数字を超え、イギリス変異種が感染の75%以上を占め、もう生半可な対応では済まなくなっていたのです。

 とうとう19日金曜日の夜、午前0時から、正確には20日の午前0時から4週間、イル・ド・フランス、オー・ド・フランスなどの16の地域は、最低4週間、ロックダウンされることになりました。

 いつかいつかと思ってはいたものの、実際にロックダウンとなると、やはり、ショックです。

 いみじくも、結局、昨年と同じ時期にロックダウンになってしまったわけです。

 一時は、この深刻な状況にも関わらず、4月には、レストランの営業が開始されるという噂もちらほらしていただけに、急転直下のこのロックダウンには、まだまだ先の道のりが長いことを再確認させられた形になりました。

 これで3回目のロックダウン。対象地域2000万人、23万店舗の営業がストップします。

 しかし、学校は継続され、外出証明書携帯の上、10㎞以内の明確な理由のある外出(買い物、散歩、運動)(しかも時間制限なし)は許可されます。

 よくよく考えてみれば、ロックダウンという言葉は充分に衝撃的である反面、なんだかんだと理由をつければ、かなり外出はできるわけです。

 しかも、これまで行われていた夜間外出禁止は、これまでの18時から19時に延長されます。

 昨日のカステックス首相とオリヴィエ・ヴェラン保健相の会見では、1月29日の段階で、科学評議会(Conseil scientifique)のロックダウンするべきだという警告を聞かずに進んできて、現在の状況に陥ったことは、政策の失敗だったのではないか?という質問に対しても、依然として、政府側は、失敗とは認めず、経済的、国民の心理的な負担を考えれば、決して失敗ではなかったと言い張っています。

 しかし、今年に入ってから亡くなっている27,000人以上の人の命、家族の悲嘆を考えると、これが失敗ではなかったとあっさり片付けられてしまうことには、かなり疑問が残ります。

「ウィルスと共に生きる」とスローガンを掲げながら、生きられなかった人がこんなにいるのです。

 外出したところで、生活必需品以外のお店は閉店しているわけですが、この生活必需品として認められている範囲は、想像以上に広く、食料品、薬局はもちろんのこと、本屋、通信機器、大型電気店、園芸用品店、DIY用品店、眼鏡屋、銀行、郵便局、保険屋等・・・これでは、閉店しなければならない店舗をあげた方が早いのでは?と思ってしまうくらいです。

 結局のところ、ロックダウンという衝撃的な言葉とはうらはらに、10㎞以内であれば、これらの買い物のためという理由だけでも、外出証明書さえ携帯すれば、外出し放題です。

 どんな状況になっても、全く懲りないフランス人、ロックダウンも3回目で、ウィルスの回避の仕方以上にロックダウン等の制限の網の目をかいくぐることにも慣れてきています。

 最も、あくまでもロックダウンを回避してきたフランス政府からしたら、ある程度、国民の心理的なダメージを考えて、ある程度、緩いロックダウンに変化させているとは思うものの、実質的なロックダウンの効果を考えれば、蓋を開けてみれば、これで、本当に大丈夫なのだろうか?と思う結果になりそうな気配です。

 少なくとも、昨日の首相の会見は、ここ数週間の会見とは明らかにテンションが違い、危機感は伝わってきたものの、結局のところ、いくらでもかいくぐることのできるゆるゆるなもので、結局のところ、国民の意識との乖離を感じずにはいられないのです。

 考えれば考えるほど、これは、本当にロックダウンなのだろうか?という気がしています。

 それでもやはり縛られることを嫌い、パリを逃れたい人がいっぱいで、ロックダウン発表翌日のTGVは、ギリギリのタイミングでパリを脱出したい人で、あっという間に満席になりました。


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「なかなかロックダウンを決断できないフランス政府と国民感情の動き」

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「まだロックダウンしないフランスの真意」

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「ロックダウンしないフランス政府の決断は正しかったか?」

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「ロックダウンは最終手段という姿勢は崩さないフランス カステックス首相の記者会見」

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「このままロックダウンせずに乗り切ることは可能なのか?」

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2021年3月18日木曜日

フランスは完全に第3波の波に乗った

  


 もういつロックダウンになっても仕方ない状態がずっと続いていたフランスは、これまで、あくまでもロックダウンは、最終手段であるとし、ロックダウン回避の姿勢をとってきました。

 ロックダウン回避のためにできることは、全てやると言って、人気YouTuberにまで協力を呼びかけたりしてきた政府も、結局のところ、年明けから変わったことと言えば、警備が多少、強化された程度で、今から考えると、直接、感染を減少させる追加対策は、取られていなかったような気がします。

 10月末に迎えた第2波によるロックダウン以来、レストランやバーなどは、ずっと閉店したまま、18時以降の夜間外出禁止も続いたままにも関わらず、感染は一向に減少しないどころか、イギリス変異種の拡大により、ジワジワと感染は増加してきました。

 ジワジワとはいえ、すでに年明けの段階で、1日の感染者数が2万人超えの状態でのジワジワですから、毎日2万人以上も増えている感染者から感染がさらに広がっていくのは、当然です。

 つい先日のテレビのニュース番組に長時間のインタビューに答えたカステックス首相が言っていたように、第3波を迎えつつある状態で、「フランスは、予防のためにロックダウンはしない」という対策、つまり、最悪の状態になった場合にだけロックダウンということです。

 そして、その最悪の時が来つつあります。

 最終的なロックダウンの決定をするのは、マクロン大統領ですが、マクロン大統領があくまでもロックダウン回避の方針に大きく舵取りを始めたのは、高等教育機関(大学以上)の学生からのマクロン大統領への手紙のやりとりが話題になった頃からで、この学生を始めとする若者の声の高まりが彼を動かしたような気もしています。

 これを機に、学校はとにかく継続、貧窮する学生への食事の援助(1ユーロで供給されるキャンティーンなど)も始まりました。

 医療崩壊さえ起こらなければ、ロックダウンはしないという言葉どおり、集中治療室の占拠率が90%を超えて、逼迫し始めた段階で、できる限り、集中治療室の空きを作るために、まだ少し余裕のある病院への患者の移送をすることを発表しました。

 少しずつ患者の移送が始まりはしたものの、実際のところは、リスクも伴う移送に患者や患者の家族が同意しない場合も多く、政府の算段どおりには、移送は進まず、逆にそれ以上の集中治療室に入る患者数が大きく上回り、問題となっていたイル・ド・フランス(パリを中心とする地域)の集中治療室の占拠率は、患者の移送を開始してすぐに、100%を超えてしまいました。

 さらに、1日の新規感染者数もこれまで2万人台に止まっていたものが、昨日(17日)には一気に38,501人までに跳ね上がり、これまで高い数字とはいえ、なんとか微増の状態で持ち堪えていた状態が、一気に第3波の波に乗ってしまった感じです。

 第2波がおさまらないまま続いているのだから、これは第3波ではないと失笑してしまうコメントを出している人もいましたが、大きな波に乗ってしまったことは間違いありません。

 失笑するコメントには、「悪いのはフランス人じゃない!マスクの性能が悪いんだ!」なんていうのもあって、ずっこけました。

 ここへきて、悪いことにアストラゼネカのワクチンの安全性をめぐって、ワクチン接種もほとんどストップしている状態で、まさに待ったなし、崖っぷちの最終手段を取らなければならない状態です。

 とはいえ、フランス全土がこの危機的な状況であるわけではなく、これまですでに週末のみのロックダウンが施行されているニース・アルプマリティーム県やダンケルクに加えて、オード・フランス、イル・ド・フランスが今後、週末のみ、あるいは、2回目のロックダウンと同様の制限(学校は継続)になることは、確実です。

 フランスの現在の感染拡大は、イギリス変異種が全感染の70%まで達して、猛威をふるっていることが、大きな原因ですが、そもそもイギリス変異種が警告されて、慌てて、イギリスとの国境を閉鎖したのが、昨年のクリスマス直前のことでした。

 あまりの急な国境閉鎖にたくさんのトラックが国境付近で足止めを食い、PCR検査をしないと入国できなくなったトラックの運転手がクリスマスどころか、トラックで数日間、寝泊まりする事態にも陥りました。

 イギリス変異種の感染の勢いと重症化から、マスクがこれまでのサージカルマスクでは充分ではなく、FFPマスクでなければイギリス変異種の感染は避けられないのではないか?などとFFPマスクについても話題にもなりました。

 しかし、年が明けてから、何回も、もうこれはヤバいのではないか?という状態でも、あくまでもロックダウンはしないという政府の姿勢から、イギリス変異種への危機感も何となく、認識が薄れてきてしまったのが現実です。

 実際に、1月半ばの段階で、Inserm (Institut national de la santé et de la recherche médicale) (国立保健医療研究所)は、イギリス変異種が本格的に拡大・急増するのは、3月半ばすぎであると発表しており、それまでに少しでも感染を減少させて、病床を空けて備えなければならない」と警告していました。

 最初のロックダウンが始まってから一年、経済的にも、国民の精神的な疲弊も考慮しつつ、ロックダウンはできる限り避け、ワクチン接種が拡大するまで、何とか凌ごうとしていたフランスですが、結果的には、さらに感染は拡大し、この拡大してしまった感染を抑えるのは、さらに長い時間がかかることになります。

 昨日の病院の現場を視察に出たマクロン大統領が、「この厳しい状況は、4月半ばまで続くだろう」と語ったことが話題になっていますが、今、すぐにロックダウンをしても、すぐに感染がおさまるものでもなく、ロックダウン後もしばらく上昇を続けて、下降し始めるのは、少なくとも2週間後、4月の半ばではとても済む状況ではありません。

 ここまで拡大した状況になると、もはや、ロックダウンする日が1日でも遅れれば、それだけ、感染は拡大し、回復するまでには、さらに時間がかかります。

 結局のところ、もっと早くロックダウンしていれば、こんなに酷いことにはならなかったのではないか?と、やっぱり思ってしまいます。

 今年に入ってからだけでも、フランスのコロナウィルスによる死亡者数は26,805人、1日平均350人が亡くなっています。

 もはやロックダウンか?というニュースとともに、世界一ワクチン接種が進んでいるイスラエルでは、外出の際のマスクは義務付けられているものの、全てのお店がオープンし、ほぼ日常の生活を取り戻し始めているというニュースが流れています。

 国の対応の違いで、こんなに変わるものなのか?と楽しそうにしているイスラエルの光景をフランス人はどんな思いで見ているのだろうか?と、ちょっと切なくなりました。


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「フランスの感染がおさまらないのは政府の責任というフランス人」

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「マクロン大統領のユーチューバーとのチャレンジ企画 Mcfly et Carlito(マクフライとカーリト)」

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「フランスの高等教育機関の授業体制への抗議に対するマクロン大統領の手紙」

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「変異種による2回目のパンデミックが起こる」

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「コロナウィルス変異種感染拡大によるイギリスからの入国制限が引き起こした混乱」

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「FFPマスクの義務化の是非とフランス人の義務と補償と権利」

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2021年3月17日水曜日

PCR検査で検出できないブルターニュ変異種の出現

    

      Image



 フランス保健総局は、15日、コロナウイルスの新しい変異種がブルターニュのクラスターに出現し、少なくともこの変異種に8人が感染していることを発表しました。

 これは、2月22日に確認されたブルターニュのコートダモールの病院内のクラスターから特定された79例の感染のうち、3週間後に8例の新しい変異種が発見されたものです。この新しい変異種は典型的な新型コロナウィルスの症状を示していますが、厄介なことは、鼻咽頭サンプルによるPCR検査では陰性を示していた点です。つまり、PCR検査では、検出ができなかったわけです。

 現在の段階で発見されている、この新しい変異種の感染者は、すでに死亡しているため、この変異種の変化については、確認が容易ではありません。

 この新しい変異種の危険性(感染性や重症化のリスク)については、現在、調査が進められています。

 PCR検査で発見できなかったのは、ウィルスが上気道で検出されなかったということで、これは、ウィルスが急速に肺に移動したと考えられ、エアロゾルを介した感染経路が減少するため、伝染性が低いと考えることもできますが、一方、急激な病状悪化の可能性が高いとも言えます。

 ましてや、PCR検査で検出できないとなれば、感染の回避は困難になるため、結果として、感染性が高いことになります。

 ウィルスの突然変異は、ウィルス自体が生き残るために、時間の経過とともに変異を続ける自然なプロセスとは言うものの、これまでのPCR検査を逃れるように変異するとは、なかなかな変異ぶりです。

 この新しいブルターニュ変異体が、より感染しやすいものなのか? 免疫を逃れるものであるかどうか? より重症化するものなのか? ブルターニュで2月末に起こったクラスターの追跡が続いています。

 これまでもイギリス、南アフリカ、ブラジルなどの変異種が出現し、パンデミックを長引かせています。日本変異種も一時、話題に上がりましたが、すっかり、なりを潜めているので、新しい変異種と言えども、必ずしも脅威的な存在になるとは限りません。

 しかし、今やイギリス変異種の感染者が全体の感染者の70%以上にとってかわり、1日の新規感染者数が3万人にものぼる勢いで、医療状態も逼迫し、今にもロックダウンかもしれない現在のフランスの状況を考えると、新しい変異種の出現は、フランス国内ということもあり、見逃すことはできない、新しい変異種の出現です。

 悲観的に考えれば、現在は、亡くなっている人からしか確認されていないということは、致死率100%なわけで、それ以外は、PCR検査で検出できないのですから、発見のしようがありません。

 次から次へとトラブル続きのフランス。

 集中治療室の満床を防ぐための患者の移送も思うように進まず、頼みの綱のワクチン接種も中断したと思ったら、今度は、新しい変異種出現で、春がまた遠くなった気がしているのです。


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「イル・ド・フランス 崖っぷちの政府の対応策は患者の他地域への移送」

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「アストラゼネカのワクチン使用停止が招く混乱と不信感」

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「フランスが恐れるイギリス・南アフリカ・ブラジル変異種の拡大」

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2021年3月16日火曜日

アストラゼネカのワクチン使用停止が招く混乱と不信感

 

  Le vaccin AstraZeneca a été suspendu au Danemark, en Islande et en Norvège. (ARTUR WIDAK / NURPHOTO / AFP)


 アストラゼネカ社のワクチンについては、先週、すでにその安全性が確認できるまで使用を中断することをデンマーク、ノルウェー、アイスランド、ブルガリア、アイルランド、オランダ、スペインが発表していました。

 いずれの国も同社ワクチンによる副反応(血栓症)への懸念によるものです。

 今週になって、ドイツが血栓ができるリスクは低いものの、リスクを排除することはできないとして、ポール・エーリッヒ研究所(PEI)の助言に従い、アストラゼネカのワクチン接種を中止することを発表しました。

 このドイツの発表から雪崩式に、フランス・マクロン大統領が欧州医薬品庁(EMA)によるアストラゼネカ製ワクチンの精査が16日に完了するまで、予防措置として、同ワクチンの接種を停止することを発表しました。

 イタリアも同様の決断を下しています。

 フランスでは、つい数日前に、オリヴィエ・ヴェラン保健相が「アストラゼネカのワクチンについては、リスクは大きいものではなく、ワクチン接種を中断する理由はない」と記者会見で発表したばかりです。

 多くの医療従事者は、副反応のリスクについてはゼロではないものの、特に事例が急増したわけでもなく、今回のマクロン大統領のワクチン接種中断の発表は大いに政治的な発言であると遺憾の意を示しています。

 あくまで「予防措置」として中断するという発表ではあったものの、この急なアストラゼネカワクチン接種中断の発表は、その中断という内容だけでなく、数日前まで、かなり強い調子で言っていたことを否定するもので、政府の発表、決定に対する不信感と混乱を招いています。

 タイミングも悪く、先週の保健相の発表の舌の根も乾かないうちのこの発表は、ただでさえ、感染状況も深刻に悪化しているフランスの現在の状況には、さらなる混乱を招き、かなりのマイナスポイントです。

 ドイツのように、血栓ができるリスクは低いものの、リスクを排除することはできない以上、使用は中止するというはっきりした決定ならば、いざ知らず、数日前まであれだけ勧めておいて、精査ができるまで一応、中断するというどっちつかずの発表は、不安と不信感を募らせます。

 すでにワクチン接種をしてしまった人も微妙な気持ちでしょうし、していない人も動揺します。

 開発されたばかりのワクチンが急激に広まるのですから、この種のトラブルが起こることは、充分に考えられることです。政府は、これに対するもう少し慎重な対応が必要でした。

 ただでさえ、ロックダウンを回避し続けながら、感染はすごい勢いで拡大し続ける中、アストラゼネカのワクチン接種を中断することで、頼みの綱であるワクチン接種が大幅に遅れていくのは、大きな痛手であるに違いありません。

 特にフランスで現在、最も出回っていたアストラゼネカのワクチンです。

 フランスでは、曖昧な態度でお茶を濁すような発表や対応では国民は納得しません。中断するにしても、それなりの明解な説明が必要です。

 ただでさえ、感染拡大、感染悪化は、政府のせいだ!と言い張る人が多いフランスです。明瞭な説明がなされない限り、政府に対する反発はさらに大きくなります。

 すでに一回目のワクチン接種を済ませている人(アストラゼネカワクチンで)は、二回目の接種に足止めを食い、この混乱から宙ぶらりんな状況に置かれ、不安な状況に陥っています。

 ただでさえ、今にも再びロックダウンかもしれない・・すでに多くの制限下で不安な状態に置かれているフランス人にとって、このアストラゼネカワクチンの可否、是非についての混乱は、不安をさらに募らせることになってしまいました。

 マクロン大統領は、このワクチン接種の中断とともに、欧州医薬品庁(EMA)の再審査の結果、許可がおり次第、ワクチン接種は再開すると発表していますが、このバタバタでさらに募った国民の不信感を回復するのは、大変です。

 早くも一晩にして、アストラゼネカのワクチンに対する国民の不信感は激増し、世論調査によれば、アストラゼネカのワクチンを信頼していると答えた人は、20%のみ、52%がアストラゼネカのワクチンを拒否し始めました。

 これでは、たとえEMAのOKが出て、政府がワクチン接種を再開させても、スムーズにワクチン接種が進むとは思えない状況です。このワクチン再開には、まずこのワクチンの安全性に対する信頼を取り戻すことから始めなければなりません。

 ちなみにフランスでこれまで接種されたアストラゼネカワクチンは、1,344,118件、ヨーロッパ全体では500万件中、血栓症が報告されているのは、30件だそうです。

 私もワクチン接種の予約をしていましたが、今週あたり、もう一度、お医者さんに電話して聞いてみようと思っていたのですが、これでは、当分、無理そうです。


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「フランスはアストラゼネカのワクチン接種は続行 アストラゼネカのワクチンの安全性への波紋」

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2021年3月15日月曜日

コロナウィルス セルフ検査キット発売開始

    


 今週から、フランスの薬局やスーパーマーケットでは、コロナウィルス感染を自宅で自分でチェックできる検査キット(Auto Test Covid)の発売が解禁になります。

 これには、偽陰性、偽陽性の科学的な信頼性への懸念もあり、また、陽性の場合のフォローアップが難しいために、長いことフランス政府では、この発売許可を保留、検討し続けてきましたが、最近、これと同種の市販のデバイスが、スイス、スロベニア、オーストリア、イギリスなどの他のヨーロッパの近隣諸国で採用され、数日間、子供たちの学校への復帰などをサポートしている実績も踏まえ、フランスもこの検査キットの販売許可に踏み切ることになりました。

 この自宅に買い置きもできるテストにより、感染の疑いをもった瞬間に、すぐ検査(鼻腔検査)ができ、結果が15分後に出ることから、より早く隔離ができる有効性を期待しています。 価格は、5つのパッケージで21ユーロから25ユーロと見込まれています。

 しかし、セキュリテソーシャル(国民健康保険)のカードさえあれば、検査施設、薬局などでは、PCR検査が無料でできるフランスで、一般的に広まるかどうかは、甚だ疑問でもあります。

 また、陽性者の隔離についても、検査機関で行った検査でさえも、隔離がきっちりされていないフランスでは、検査キットを発売したところで、隔離問題は、さらに曖昧になります。

 フランスの感染状態は、日々、勢いをあげて、深刻さを増しており、現在、最も問題になっているイル・ド・フランス(パリ近郊の地域)の集中治療室の占拠率は、98.9%にまで上昇しており、病院のプログラムを40%組み直し、さらに患者の他地域への大掛かりな移送まで開始しているにもかかわらず、上昇し続ける集中治療室の占拠状態は、もうすでにパンク状態を通り越しているのです。

 もしも、東京中の全ての病院が満床になり、患者をヘリコプターや飛行機、新幹線で移送する状態を想像できますか? フランスでは、昨年にも同じことが起こっているので、もはや、珍しい光景ではなくなってしまっているのですが、やはり、何度見ても、衝撃的です。

 そんな状態ですから、感染しても、病院では余程、重症でなければ、扱ってももらえず、陽性になって、多少の症状があるくらいでは、ドリプラン(フランスで最も一般的な解熱・鎮痛薬・パラセタモール)を飲んで、様子を見るように言われて帰された・・という話をいくつも聞いています。

 今や集中治療室は、ほぼ満床、重症になっても、たらい回しになる可能性大です。

 検査場、薬局における最大限の検査の拡大に加えて、検査キットの発売と、そしてワクチン接種の拡大と、できる限りのことはなんでもやっているフランスですが、残念ながら、イギリス変異種の感染拡大のスピードは、それを上回り、新しい対策も虚しい感じが拭えません。

 とはいえ、家庭内に体温計を常備しているように、コロナウィルス検査キットを常備するようになる日が来るとは、なんということでしょうか?

 「えっ?もしかしたら・・」と感じた時に、とりあえず検査ができるのは、安心かもしれません。とりあえず家で検査してみてから・・なんだか、妊娠検査薬みたいだな・・とも思ってしまったのです。


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「フランスのPCR検査 感染者を責めないフランス人のラテン気質」

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「フランスのロックダウンは遅すぎた コロナウィルスと戦う大移動作戦」

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2021年3月14日日曜日

フランスはアストラゼネカのワクチン接種は続行 アストラゼネカのワクチンの安全性への波紋

 Le vaccin AstraZeneca a été suspendu au Danemark, en Islande et en Norvège. (ARTUR WIDAK / NURPHOTO / AFP)


 デンマーク、ノルウェー、アイスランドの3ヶ国は、アストラゼネカのワクチンが血栓を形成する懸念があることから、このワクチン接種を当面の間、停止することを発表しました。

 まだ、開発されて間もないワクチンで、疑心暗鬼になりやすい中、いくつかの副反応例が報告されていましたが、オーストリアでの49歳の看護師がワクチン接種後に重篤な出血性疾患を起こして死亡したことがワクチン接種の停止決定の引き金を引いたようです。

 しかし、同様の問題が起こったイタリアでの症例等も合わせて調査した結果、この問題が、アストラゼネカの同じロットから起こっていることが判明し、同じロットから配送されたワクチンを使用していた、他の4つのヨーロッパ諸国、エストニア、リトアニア、ラトビア、ルクセンブルグは、このロットからのワクチン接種を直ちに停止しました。

 欧州医薬品庁(EMA)による調査によると、その地域(欧州連合、ノルウェー、アイスランド)でワクチン接種を受けた300万人以上の血栓症が報告されたのは22例のみ、これまでのところ、ワクチン接種を受けた人々の血液凝固が高いリスクを示すものはないことを明らかにし、アストラゼネカのワクチンとオーストリアでの死亡事故?との間に関連性はないことを強調しています。

 デンマーク、ノルウェー、アイスランドのアストラゼネカのワクチン接種停止の発表後、ロンドンは、スウェーデンとイギリスの研究所とオックスフォード大学によって開発されたこのワクチンを擁護し、「安全で効果的」であるとし、全世界で使用され続けることを保証しました。

 イギリスでは、これまでにファイザー、ビオンテック、アストラゼネカのワクチンのみを使用して、2200万人以上に初回接種を行っています。

 アストラゼネカのスポークスマンは、「ワクチンの安全性は第3相臨床試験で広範囲に研究されており、レビューされたデータはワクチンが一般的に十分に許容されることを確認している」と保証しました。

 このアストラゼネカのワクチンへの波紋が広がり始めるのに対して、フランス保健相オリヴィエ・ヴェランは、即刻「フランスで、アストラゼネカのワクチン接種を中断する理由はありません。ドイツもイギリスもこのワクチン接種を継続しています。ワクチン接種の利点は、この段階でのリスクよりも大きいと考えられています。」と発表しました。

 都合よく、ドイツやイギリスを引き合いに出すあたり、なかなかだな・・とも思いました。 

 ようやく、ワクチン接種の拡大にアクセルがかかってきたフランスですが、まだまだ感染が拡大する速度に追いつく数のワクチン接種の進行には至っていないのです。

 ところが、アストラゼネカは、生産体制の遅れから、ワクチンの配達がさらに遅れることを発表し、当初予定されていた1億2,000万回分のワクチンのうち、第一四半期にEU加盟国に提供できるのは、その三分の一の4,000万回分であると報告してきています。

 私は、ひょんなことから、ワクチン接種の予約をしてありますが、予約の際にどこのメーカーのワクチンなのか尋ねたところ、「今は、アストラゼネカしか入らない」とのことでした。

 今のところ、ワクチン接種ができる知らせは来ていませんが、この調子だといつやってくるのかは、わかりませんし、ワクチンを自分で選べる状況でもありません。

 ワクチンをするリスクもしないリスクもありますが、現在のフランスの状況では、私は、ワクチン接種をしないで感染するリスクの方が圧倒的に高いと思うので、アストラゼネカだろうとワクチン接種は受けようと思っています。

 4月中旬には、フランスで4つ目に認可されたジョンソン&ジョンソンのワクチン接種が開始されるようで、このワクチンは1回の投与で済むようで、もしかしたら、4月以降まで待って、こちらにした方が結局は早道なのかも??と思ったりもします。


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「混乱状態のフランスのワクチン接種 コロナウィルスワクチン接種の申し込みをした!」

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2021年3月13日土曜日

フランスのコロナウィルスによる死亡者数9万人突破

  


 マクロン大統領によるコロナウィルス感染対策の最初のスピーチがあったのは、昨年の3月12日、保育園、幼稚園、小学校、中学校、高校、大学とフランスの全ての学校を閉鎖するという内容のものでした。

 生まれて初めての経験で、私は、その頃は、まだまだパンデミックという状況をはっきりとは自覚していませんでした。

 しかし、それから数日後、生活必需品の買い物以外は、一切、外出禁止という厳しいロックダウンが発表され、しかも、発表の翌日の正午から・・という急転直下の展開でした。

 人々は、買いだめに走り、街には、「ソーシャルディスタンスを取れ!」とがなり立てる警察が闊歩し、軍用車が走り、マクロン大統領が「我々は、今、戦争状態にある」と言った、その通りの状況に国中が一変しました。

 あの頃は、ウィルスに関する情報も充分ではなく、厚生相が堂々と公の場面で、「一般の人には、マスクは必要ではない」などと言っていたのでした。今から考えれば、なんと恐ろしい情報発信だったことでしょう。

 少なくとも今の時点では、マスクなしの生活は、考えられません。

 それから2ヶ月ほどのロックダウンを経て、感染が減少し始め、夏のバカンスシーズンには、まさかの結構な人数の人がバカンスに出かけ、秋になると案の定、感染は再び増加し始め、10月末には、再び、ロックダウンでした。

 2回目のロックダウンは、学校は閉鎖せず、工場なども稼働したままのロックダウンで、最初のロックダウンほど厳しいものではありませんでしたが、1ヶ月のロックダウンで、ある程度、感染は減少したため、フランス人が命とバカンスの次に大切にしているノエルを家族と過ごすことは許されました。

 しかし、ノエルの時期を前後して登場したイギリス変異種を始めとする変異種の拡大により、再び、フランスは危機的な状況を迎えています。

 いみじくも、最初のマクロン大統領のスピーチから、ちょうど一年のこの日、フランスのコロナウィルスによる死亡者数は9万人の王台を突破(90,146人)、集中治療室の患者数は、4,000人を突破(4,033人)、これまでの総感染者数が400万人を突破(4,015,560人)しました。

 一年間で9万人の死亡者(ちなみに日本は8,451人です)とは、あらためて、恐ろしい数字です。そして、これは、まだまだ終わってはいないのです。

 特にイル・ド・フランス(パリを中心とする地域)の感染状況は深刻で、すでに90%以上は埋まっている集中治療室の患者を100人以上、週末の間に他の地域に移送することが決まり、大移送作戦が始まっていますが、想像以上の混乱状態で、移送するそばから、新たに入ってくる患者の対応におおわらわです。

 それもそのはず、ただでさえ、人員不足の病院で、患者の移送には、一人に対して数名のスタッフが付き添わなければならず、新たに入ってくる患者と交差する状況が混乱を生むのも当然のことです。

 また、これは、イギリス変異種による感染の特徴として、入院=ただちに集中治療室へ直行という重症化へのスピードが早いため、病床、しかも集中治療室の占拠率が必然的に高くなるわけです。

 そして、イギリス変異種感染のもう一つの特徴は、これまでの感染者よりも低年齢化しているということです。比較的、若い世代の急激な病状の悪化は、最低でも2週間は集中治療室での治療が必要なだけでなく、一旦、症状が治っても、症状の満ち引きを繰り返す長期コロナ感染症(COVID LONG)を引き起こすケースが多いということです。

 今、ヨーロッパは、この変異種(特にイギリス変異種)の猛威に襲われており、来週からイタリアも3度目のロックダウンに入ることが決定しています。

 周囲のロックダウンしている国でも感染はなくならないのだから・・とロックダウン回避の道をとっているフランスですが、感染はとどまることを知らず、ちょうど最初のロックダウンから一年が経とうとしているこのタイミングで、再び、危機的な状況を迎えています。

 ワクチン接種も開始され、フランスでは480万人に対して、少なくとも1回目のワクチン接種が済んでいますが、感染拡大の大きな波を抑えられる数には、到底達してはいません。

 一年が経過して、ある程度の情報が蓄積されている一方で、医療従事者も国民も、長引く制限下での生活に経済的にも精神的な疲弊も蓄積されて、二次災害のような事件も続出しています。

 一年前には、思ってもみなかったことが起こったと思いましたが、一年経ってもまだまだ終わりが見えないどころか、再びかなり深刻な状況にいることも、一年前には、思ってもみなかったことでした。

 


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「長期コロナ感染症 症状の満ち引きを繰り返す症状 COVID LONG」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/02/covid-long.html


「フランスのコロナウィルス対策・非常事態宣言 外出禁止・フランスのロックダウン」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/03/blog-post_18.html