2021年2月15日月曜日

フランス保健省 各病院に危機管理体制通告

  


 年が明けて、クリスマス・年末年始の人が集まった結果を警戒していたフランスは、ビクビク怯えながら、年明け早々には、ワクチン接種が周囲の国々に比べて極端に遅れていることが発覚して以来、ワクチン問題で大騒ぎになっていました。

 ワクチン問題とともに、感染の爆発状態には、ならないものの、毎日毎日の新規感染者は、25,000人前後、集中治療室の患者数は、3,300人前後とジワジワと増加を続け、政府からの会見があるたびに、いよいよ3度目のロックダウンか?とドキドキしながら過ごしてきました。

 実際に感染症の専門家達は、ロックダウンの必要性を叫び続ける中、フランス政府は、頑として「あくまでもロックダウンは最後の手段」「ロックダウンをせずにできることは全てやる」という姿勢を崩さないまま、夜間外出制限を18時に前倒しにしたり、コマーシャルセンター内の生活必需品以外の店舗を営業停止にしたり、それらの取り締まりを強化することで、爆発的な感染拡大を現在までは、何とか回避してきました。

 2月に入ったあたりから、イギリス変異種を始めとする南アフリカやブラジル変異種の拡大が顕著になり始め、綱渡り状態の綱がだんだん細く、貧弱になっている感があります。

 ここへきて、今のところ、すぐにロックダウンには、ならないものの、フランス保健省が全国の各病院、クリニック宛に、「危機管理体制」への準備を2月18日(木)までにするようにという通達を出したことが明らかになっています。

 「危機管理体制」とは、具体的には、病院においての急激なコロナウィルスによる患者の増加に備えて、病床を増やすことや、以前から予定している緊急を要する手術以外の手術予定の組み直しをして、感染爆発状態の病院受け入れ体制を取り始めたということです。

 このところ、毎週木曜日に行われる政府からの会見では、依然として大変深刻な状態であることが発表され続けていますが、いつでもロックダウンする準備はあるとしつつも、制限が少しずつ強化されたり、検査を拡大したり、ワクチン接種をさらに急ぐというような対応策の発表のみで、最近は、世間も一時のように今すぐにでもロックダウンになるかもしれないといった気配が薄れつつありました。

 しかし、政府が病院宛に具体的な日付指定でこのような通達を出すということは、この綱渡りの状況が、さらに深刻な状態に陥っているということに他ならない事実です。

 私の母は拡張型心筋症という病気で亡くなりましたが、死後、解剖した結果、想像以上に心臓が肥大しており、「普通の人がいきなりこの心臓の状態になった場合は窒息するほどの苦しさであったでしょう」と言われて、驚いたことを思い出しました。

 母の場合は、病気が発症してから10年をかけて、徐々に悪化していったので、心臓の苦しさに少しずつ慣れていったので、恐らく母はその窒息するような苦しさにも慣れながら生活してきたのであろう・・と。

 今のフランスの状態は、それと似たような状況ではないかと、ふと思ったのです。爆発的ではないとはいえ、徐々に悪化している感染状況も、考えてみれば1日2万5千人の感染者が出て、一週間に2,500人近くの人が亡くなっている状況は、すでに、充分に爆発状態であるのです。

 具体的な危機的な状況全てが、公になることはありませんが、政府が分析している数字は、病人の大量増加に備えての病院の体制を組み替えることを通達するほどの状況になっているのです。

 ロックダウンにならずとも、今のフランスは、綱渡りの綱が切れそうな状況であることを自覚しておかなければなりません。

 昨年3月、4月の悲劇が、同じ時期に、繰り返されるかもしれません。


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「コロナウィルスによる医療崩壊の事実と社会の崩壊の危機に直面するフランス」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/04/blog-post_23.html

 

2021年2月14日日曜日

南アフリカ変異種による再感染患者の重症例が示しているもの

  


 ここのところ、南アフリカ変異種の拡大がモゼル県(フランス北東部・グラン・テスト地域)での感染が多数検出されたことから、不安視されていますが、この南アフリカ変異種が恐れられている理由の一つに「再感染」が可能であることが挙げられていました。

 これまでにも、イギリス、南アフリカ、ブラジルの変異種による再感染の症例はすでに科学文献に記載されていますが、ほとんどの場合、2回目の感染は最初の感染よりも重症度が低くなるというのが定説とされてきました。

 ところが、フランスで、南アフリカ変異種に再感染した58歳の患者が重症化したケースが発表され、これまで「2回目の感染は、重症化しにくい」という説が崩された結果となりました。

 喘息の病歴を持つこの男性患者は、発熱、中程度の呼吸困難を訴え、昨年9月にコロナウィルス陽性と診断されて入院しましたが、症状は、数日内におさまり、12月には、2回に渡るPCR検査の結果、陰性と診断されています。

 ところが、今年の1月に入って、彼は再び発熱と呼吸困難のため、パリ近郊のコロンブにあるルイ=ムリエ病院(AP-HP)の緊急治療室に再入院しました。

 彼のPCR検査は再び陽性であり、遺伝子配列決定は南アフリカの変異体に特徴的な突然変異の存在を示していました。

 彼の症状は再入院の7日後に急性呼吸窮迫症候群を発症し、挿管して生命維持装置に繋がれる重篤な状況に陥りました。

 彼の再入院時に行われた、血清学的検査は、過去の感染を証明する抗体の存在を検出していますが、これは、最初の感染後に免疫が変化したため、南アフリカ変異種による再感染を防ぐことができなかったことを示しています。

 パンデミックの発症から1年後、コロナウイルスに対する免疫の持続期間は依然として、はっきりとしたことがわかっていませんが、ここ数ヶ月でより伝染性の高い変異体の出現によってさらに、免疫に関する疑問は拡大しています。

 それらの変異種の中でも、南アフリカ変異種は特に懸念されています。また、この特定の遺伝的特徴のために、ワクチンの有効性を減少させる可能性も孕んでいます。(実際に南アフリカでは、アストラゼネカのワクチン接種を保留しています)

 免疫があるにもかかわらず再感染するという恐ろしい状況ですが、幸いにも現在、世界中で接種が開始されているワクチンは、免疫を作るというワクチンではなく、RNAという遺伝物質を人工合成して作られているワクチンで、体内の細胞を抗ウィルス薬を製造する細胞として利用するというものです。

 そのため、たとえ、免疫が変異種の再感染を防ぐことはできないとしても、ワクチンの有効性に影響を及ぼすとは考え難いのですが、変異種のウィルス自体がワクチンにより作られた体内の細胞を使って作られた抗ウィルス薬が太刀打ちできない強力な威力を持っているとすれば、また別問題です。

 こうしている間にも、また別の変異種が出現しないとも言えないことを考えると、まだまだこのワクチン開発とウィルスの発達や変異とのイタチごっこが続くのかもしれません。


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「フランスが恐れるイギリス・南アフリカ・ブラジル変異種の拡大」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/02/blog-post_12.html

「変異種による2回目のパンデミックが起こる」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_26.html

2021年2月13日土曜日

パリ17区で日本人が塩酸を顔にかけられる傷害事件発生 

   

  

 「2月10日(水)夕刻、パリ17区の公共空間において、邦人被害者が友人と3人でいたところ、フードをかぶり、下を向いて歩いてきた3人組(男女不明)から、いきなり顔に向けて液体強酸をかけられるという傷害事件が発生しています」というメールが在仏日本大使館から届きました。

 この事件は、現在のところ、フランスの一般メディアでは一切報じられていないので、詳細やその後の捜査については、わかりませんが、つい先日もパリ15区のボーグルネル(特に危険だと見られていなかった地域)で14歳の少年が10人前後の暴漢から酷い暴行を受けて重症を負うという事件が起こったばかりだったため、パリの治安の悪化を再び思い知らされた気がしました。

 この被害者は、近くに見えた不審なグループに警戒をしていたものの、グループのうちの一人が液体の入ったボトル(工具店などで普通に購入できるもの)を取り出した瞬間に危険を察知し、手で顔をガード。幸にして顔には液体はかからなかったものの、掌に火傷を負ったため、すぐにその場を避難した後に医者の診断を受けたところ、火傷は塩酸によるものであることが判明。もしも、塩酸が目に入っていたら、失明などの取り返しのつかないことになっていました。

 怖い!怖すぎます!

 これが、無差別テロのようなものなのか、個人的な恨みによるものなのか、アジア人狩りとも言われるアジア人を狙っての襲撃なのかわかりませんが、いずれにしても同じ日本人の被害にとてもショッキングな事件です。

 いきなり見ず知らずの人に塩酸を顔にかけられるのですから、こんなに恐ろしいことは、ありません。なぜか、ちょっと危険な雰囲気を醸し出して歩いている人は、必ずヨットパーカーやトレーナーのフードをかぶって歩いているのです。

 この事件で、これから以前にもまして、フードを被っている人を警戒するようになります。ところが、こういう人、結構、多いのです。しかも、最近は、皆マスクまでしているので、怪しいと思えば、ますます怪しく見えてきます。

 コロナウィルスが発生し始めた昨年2月頃から、ウィルスが発生した震源地の中国を疎ましく思う気持ちからか、フランスでは、アジア人差別や「アジア人狩り」なる動きが起こっており、一時は、「全ての中国人を攻撃せよ!」などという呼びかけがSNSで出回り、中国人だけでなくアジア人全体が攻撃対象になり、街中でコロナウィルス扱いを受けて、暴言を吐かれたり、暴力を振われたりした事件が相次いだのです。

 この恐ろしい「アジア人狩り」の動きには、パリ検察庁なども捜査に乗り出し、沈静化したように思われていたのですが、決して根絶したわけではありません。

 もしかしたら、今回のこのパリ17区で起こった傷害事件もこの「アジア人狩り」の一端であった可能性もないわけではありません。

 2019年2月には、メトロ11号線で、2日後には、1号線内において、乗客が硫酸をかけられて重症を負うという事件が起こっていますが、この手の犯罪は、あまり多い事件ではありません。

 とはいえ、現在は、長引くパンデミックによるたくさんの制限の中で生活を続けなければならないストレスから、精神的に不安定になっている人も多いため、攻撃的な暴力を伴う犯罪は増加しています。

 しかし、なぜ、このような危険な事件をフランスのマスコミが取り上げないのか?公にならないのか?は疑問です。日々、犯罪が多発しているフランス、マスコミが事件を追い切れていないのかもしれません。

 もしも、被害に遭った場合、恐れずに声をあげることも必要です。ツイッターでもインスタでもいいから、SNSを使って、被害を受けたことを世間に訴えることが必要です。これにより、犯罪が公になり、警察・検察がようやく本格的に捜査を真剣に進めてくれることにも繋がります。

 犯罪が多発するフランスで、よほどの犯罪でなければ、徹底的に捜査されることはなく、多くの犯罪に埋もれていってしまうのです。そのことが犯罪をのさばらせる悪循環となっています。

 とはいえ、日本大使館がこのような事件を知らせてくれるのは、とても心強いことです。大使館は、このような事件に関することだけでなく、フランス国内での日々、更新される生活制限・渡航制限などに関するニュースなども、オンタイムですぐにメールで知らせてくれるので、とても助かっています。

 在留届を出して、登録すれば、このようなニュースが自動的に送られてくるので、海外で生活されている方は、登録されることをおススメします。

https://www.fr.emb-japan.go.jp/itpr_ja/zairyutodoke.html

 この場を借りて、日本大使館のメールを送ってくださる方、いつもありがとうございます。


パリ・日本人塩酸襲撃事件 

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「コロナウィルスによる中国人・アジア人種差別再燃 「アジア人狩り」」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/11/blog-post.html

「災害に免疫のないフランス人がパニックになり、アジア人全体を傷つけている」




2021年2月12日金曜日

フランスが恐れるイギリス・南アフリカ・ブラジル変異種の拡大

  


 フランスでは、イギリス変異種に引き続き、南アフリカ・ブラジル変異種の感染拡大が心配され始めています。

 イギリス変異種は、その威力を拡大し続け、先週は、感染者全体の15%程度であったものが、今週には、20〜25%にまで拡大しています。

 そして、さらにモゼル県(フランス北東部・グラン・テスト地域)では、ここ4日間に南アフリカ、ブラジル変異種が300件も検出されており、さらに過去を遡れば、これに加えて200件(つまり合計500件以上)が検出されています。

 このモゼル県での変異種拡大については、ことに心配されているのは、この感染拡大が、海外旅行によるもの、あるいは旅行者からの感染でもなく、クラスターによる感染でもないことで、感染経路が全く不明の状態で、これだけ拡大してしまっていることです。

 南アフリカ・ブラジル変異種に関して、フランス政府がことさら心配しているのは、この変異種は伝染性がこれまでのウィルスに比べて、より伝染性が高く、再感染が可能なことです。しかも、ワクチンの有効性が低いというのですから、余計にたちが悪いウィルスです。

 また、このモゼル県の例を見てもわかるように、感染拡大の経路がわからないことからも、感染のシステムが掴めないことも、この変異種の不気味なところです。

 どこから来たかわからない・・でも、急に湧き出したように、気がついてみたら、こんなに感染者がいた・・そんな感じです。

 これらの変異種の特徴の一つが比較的、年少者・若い世代の間で感染が広まりやすいということから、モゼル県では、小学校、中学校、高校、大学など、全ての学校が12日(金)から閉鎖されることになりました。

 また、全国的にも地域ごとにバカンス明けを迎える全ての小学校において、唾液検査を大規模に展開し、一般化していき、週20万件のテストを行っていく方針を発表しています。

 これまでの鼻咽頭検査と違い、小さな子供にとっても不快感が少なく、受け入れやすく、検査の整合性もこれまでの検査と比較的遜色がないため(実際には、3%〜13%低下)に採用された模様です。

 いずれにしても、今後の感染拡大で最も心配されるのは、イギリス、南アフリカ、ブラジル変異種の感染拡大で、これまでも、昨年末から年明けにかけて、深刻な感染爆発を起こしている3カ国(イギリス、アイルランド、ポルトガル)は、いずれも変異種の影響を大きく受けている国であることがわかっています。

 すでに、年末から厳しいロックダウン状態が続いているヨーロッパの国々も次々とロックダウンの延長を発表しており、昨日もドイツが3月7日までのロックダウンを延長しましたが、ドイツが1日の新規感染者がかなり減少し、1万人を切った状態の現在でさえもロックダウンを延長するのは、このいくつかの変異種の感染拡大を恐れてのことだと言われています。

 ドイツは、昨年の3月から、コロナウィルス感染対策に対して、常にフランスでは注目されている存在ですが、現在は、非常に危険な状態を続けながらも、極力ロックダウンを避ける方針を取っているフランスとは、全く違う「厳しいロックダウンを続けて、感染をとことん減少させていく」体制を取っています。

 一度ロックダウンしてしまえば、下手に解除をすれば、これまでの努力が一瞬にして水の泡となってしまう可能性があり、ロックダウンせずに高い感染状態のまま綱渡りしていれば、ひとたび感染爆発が起これば、危機的な状況を生む可能性を孕んでいます。どちらにしても究極の選択です。

 ロックダウンを行っている周囲のヨーロッパ諸国は、当然のことながら、新規感染者はかなり減少してきており、昨日の段階では、ロックダウンをしないフランスは、新規感染者数は相変わらず、2万人以上というヨーロッパでトップの座を奪還しています。

 感染が減少してきている国々でさえ恐れている変異種に、この状況でフランスが再感染も可能であるという変異種の拡大を特別に警戒するのは当然のことです。

「ロックダウン回避するためにできることは全てやる!」と必死に頑張っているフランス。この危なっかしいギリギリの綱渡り状態で、いいかげん、よくねばるなぁ〜と半ば感心しつつも、次から次へと登場する変異種問題にハラハラさせられっぱなしです。


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「世界中が警戒しているイギリス変異種」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_14.html

「他国の感染悪化を余裕で語るフランスに唖然とする」

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2021年2月11日木曜日

娘の日本への留学・再びキャンセル 日本の国立大学は4月以降の留学生を受け付けない

  


 本当なら、我が家の娘は、昨年の9月から、日本の国立大学の大学院に半年間、留学する予定になっていました。

 彼女の通うグランゼコールの最後の1年間は、ほぼ、海外でのスタージュや留学での予定で埋められていました。ところが、このコロナウィルスによるパンデミックにより、予定は、大幅に狂ってしまいました。

 海外留学を予定していた人の多くは、ここ1年間の世界の変わり様で、予定を変更せざるを得なくなった人が多いと思います。

 留学といえば、人生においてのなかなかの重大イベントです。留学する決断をするということも、なかなか勇気のいる決断ですが、それを諦めなければならないというのも、なかなかショッキングなことでもあります。

 前回の9月からの留学のキャンセルは、本当にギリギリまで返事を待って、「到着便、時間を知らせてください」という連絡をもらって、慌ててチケットをとってから出発2週間前になってのまさかのドタキャンで、せっかく取ったチケットもパーになり、その対応の悪さに怒りまくりました。

 その際に、9月からの留学はキャンセルになりましたが、一応、延期という形になり、4月からの留学ということに変更してもらっていたのです。

 ところが、1週間ほど前に、4月からの海外からの留学生は、受け付けませんという連絡が入り、娘の日本への留学は、キャンセルになってしまいました。

 現在の世界の感染状況や感染対策の仕方を見ていると、仕方ないとも思うのですが、彼女は日本人でもあり、72時間前までのPCR検査をして、2週間の隔離生活を過ごせば、普通に日本で生活している人とは、同じ条件になるのに、何で受け入れてくれないのだろう?と、日本の大学側の判断をとても残念に思っています。

 今回は、早めに知らせてくれただけ、まだマシですが、オリンピックの開催中止は決まっていないのに、留学生の受け入れ中止は早々に決めてしまうことも、少々、恨めしく思います。

 彼女は、日本人でありながら、日本には何回も行ったことはあっても、日本で生活したことはなく、長年に渡って、日本への留学やスタージュ(インターンシップ)の機会を探ってきていましたが、どうにも日本の大学も企業も、留学生やスタージュの受け入れに対して、あまり積極的ではありません。(特に企業でのスタージュ・インターンシップに関しては、その位置付けもヨーロッパとは、どうも観念的に違う印象)

 私は、フランスに留学したことはないので、詳しいことはわかりませんが、周囲の人から聞こえてくる話からは、奨学金、健康保険、住宅費援助など、海外からの留学生に対して、フランス政府は、とても寛大です。

 娘は、昨年、夏は、3ヶ月間、イギリスの大学の研究室でスタージュの予定にしていましたが、これも現地には行くことができませんでした。しかし、イギリスの大学は、リモートワークを受け入れてくださり、内容には、多少、変更があったものの有意義な3ヶ月を過ごすことができています。

 日本の大学は、リモートさえも受け入れてくれない模様で、とてもがっかりしています。

 このパンデミックによって、学業、就職などのタイミングに直面していた人の多くは、人生の重大な局面で、色々なことを断念せざるを得なくなってしまった人、予定が狂ってしまった人が大勢いると思います。

 特に人生の重大な転換期にこのパンデミックに遭遇してしまった人々はどれだけ悔しい思い、また不安な思いをしているかと思うと、単に気の毒という言葉では片付けられない気持ちです。

 娘にとっての学生の期間での最後のタイミングに控えていた彼女の念願であった日本への留学も、もうこれ以上先には延期することもできずに、完全に断念して、他の道を考えなければなりません。

 しかし、これも自分ではどうにも変えようのない現実で、これを機に彼女が日本への留学の代わりに選ぶ道が、「結局は、日本へ行くより良かったじゃない!」と言えるような道が開かれることを親バカな私は、ひたすら祈っているのであります。


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「娘の留学ドタキャン コロナウィルスによる被害」

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2021年2月10日水曜日

このままロックダウンせずに乗り切ることは可能なのか? コロナウィルスによる死亡者8万人突破


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ワクチン接種よりも肉体美が話題を呼んだオリヴィエ・ヴェラン保健相


 昨日のテレビ番組のインタビューに応じたオリヴィエ・ヴェラン保健相が、現在のフランスの感染状況や感染対策について、「現在も非常に危険な状況にあることに変わりはないが、現在は、コントロールが不可能な感染拡大や医療崩壊は起こっていない」「このまま、ロックダウンしないまま、乗り切れる可能性もある」と発言したことが、大変な反響を生んでいます。

 また、ようやく承認され、接種が開始されたアストラゼネカのワクチンが南アフリカ変異種に対応しないために、南アフリカでのアストラゼネカのワクチン使用を停止になった騒ぎに対しては、自らがアストラゼネカのワクチン接種を行っているところを公開し、フランスでのワクチン戦略は変更しないことを明言しました。

 しかし、この大臣のワクチン接種は、アストラゼネカのワクチンの有効性云々以上に、ワイシャツを左半身脱いで、また、半身を隠した様子が妙に色っぽいとか、なかなか鍛えられた美しい肉体だとか、ワクチンそのもの以外の思わぬ方向で話題をさらっています。

 政府ができることなら、ロックダウンを回避して、このパンデミックを乗り切りたいと思っているということは、わかっていましたが、実際にテレビカメラの前で、「ロックダウンせずに乗り切る可能性もある」と公言することは、意味が違います。

 すでに数週間にわたり、感染者のうちのイギリス変異種の割合が増加しており(一週間で50%ずつ割合が増えている)、科学者、医師、労働組合等は、厳格なロックダウンを要求するために、もう何週間も声をあげ続けているのです。

 奇しくも、彼がこの発言をした日には、フランスのコロナウィルスによる死亡者数が、8万人を突破しました。死亡者数7万人を突破したのが、1月16日、1万人の増加に一ヶ月もかかっていない状況です。

 また、変異ウィルスは重症化する割合(集中治療室に入る割合)が高く、感染者自体は、目に見えて増加している状況ではないにも関わらず、集中治療室に入る人数は増加しています。

 オリヴィエ・ヴェランは、このインタビューの中で、感染状況、医療対応はもちろんのこと、社会的、経済的なバランスを大事に考えていると語っていますが、もはや、着々と増加しつつある死亡者数よりも医療崩壊が起こるかどうかに焦点が当てられています。

 現在の医療対応の状況は、新規感染者数こそ、10月末のような爆発的な上昇にはなってはいないものの、毎日の入院者数、集中治療室の患者数は、ほぼ2回目のロックダウン時と同程度にまで悪化している状態です。

 もっとも、ロックダウンという言葉の定義自体がもはや、疑問で、現在もロックダウンという言葉を使っていないだけで、実質的には、かなりの制限下にあり、レストランやカフェは当然、ずっと営業停止の状態で、一般の小規模の店舗の営業が認められてはいるものの、大規模なコマーシャルセンター等は、2回目のロックダウンでは営業が認められていた通信機器や電気製品店なども休業状態、部分的にはロックダウン時以上に厳しい状態が続いています。

 ロックダウン時には、外出許可が必要でしたが、それもほぼ、外出許可を携帯するかどうかだけのことで、実際には、外出できないわけでもありません。(距離の制限等はありましたが・・)

 こうして考えると、最初のロックダウン時のような、学校から役所などの全てが閉鎖されたロックダウンは別として、国民のショックを抑えるために「ロックダウン」というショッキングな言葉を使わずに、実は、ほぼロックダウンのような制限下のまま、なんとか爆発的な感染拡大を防ぎながら、時間稼ぎをしています。

 その間にワクチン接種を着々と進めながら、2月、3月の寒い時期を乗り切りさえすれば、それ以降は気候の変化の助けも借りることもでき、夏の終わりまでにはワクチン接種も終わらせ、次の秋のシーズンを迎えられることを目指しています。

 「ロックダウンせずに乗り切る」ということは、実は、「ロックダウン」という言葉は使わないというだけのような気もしてきました。


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「フランス 再びロックダウン・・少なくとも12月1日まで」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/10/12.html



2021年2月9日火曜日

パリで、たまに見かける子供に日本語を教えようとしない日本人の親 バイリンガル教育

  



 娘が生まれて以来、私は、何の疑問もなく、娘に日本語を教えることを自分の使命のように思っていました。日常では、私以外には、日本語を使う人がいない環境で、私が娘に日本語を教えることを諦めてしまえば、絶対に娘は日本語を話すことはできなくなってしまいます。

 日本語ができないということは、日本の私の家族や親戚、友人たちとも関わりを持てない、日本人でありながら、日本人ではないような、日本から一枚の壁を隔てた存在になってしまうということです。

 そして、私が娘にできる教育の中で、日本語を教えるということは、とりあえずは、私にしかできない、私ができることの中で、最も有意義な教育だとも思っていたのです。

 私自身は、やはり日本が大好きですし、海外に出てみれば、余計に、日本の良いところも優れているところも実感し、日本人であることを誇りに思っています。

 言語の習得には、適した年齢というものもあり、言葉を覚えていくときに、それを日常の言語として、自然に覚えていくことができれば、本人にとっては、こんなに楽に言語を習得する機会は、なかなかありません。

 そんな機会をみすみす逃す手はありません。

 それでも、一歩、家を出れば、100%フランス語の世界で、日本語を自然に話すことができるようにするのは、親の側からすると、なかなか根気のいることでもあります。

 私との会話は、日本語のみ、娘が小さい時は、家でのテレビは、ビデオやDVDでの日本の番組のみ、2歳になった頃から公文に通い、フランスの学校に行って、フランス語の読み書きを始める前から日本語の読み書きを始めました。

 毎日、仕事が終わって娘を迎えに行って、帰宅してから、食事の支度をしながら、公文の宿題を5枚ずつやらせるのが、日課でした。大変でしたが、公文をやらない子は日本には、行けない・・と、日本行きを餌にして、ずっと続けてさせてきました。

 そんな娘への日本語教育は、ほとんど私の執念に近いものでもありました。

 娘自身は、日本語を苦労して覚えたという感覚は全くなく、今では、ほぼ普通の日本人と遜色ないほどに日本語を話し、読み書きもできるようになりました。

 結果から見れば、当たり前のことが当たり前にできるようになっただけなのですが、海外在住の場合、子供を放置しておいては、あっさりと日本語ができない子になってしまいます。だって、日常生活には、必要ないのですから・・。

 それでも私は、自分の子供に日本語を教えることは、当然のことだし、私の義務であると思っていました。

 ところが、パリの街中では、たまに、小さい子供連れの日本人で、子供にフランス語で話している人を見かけます。日本語は、教えないとはっきりと言い切る人もいてびっくりすることもあります。

 自分の家族が日本にいながら、子供と自分の家族との繋がりを断ち切ってしまうのでしょうか? それぞれに事情はあるので、一概に否定もできませんが、子供の可能性を奪ってしまっているようで、どうにも残念に思います。

 子供が自然に言語を覚えるには、ある一定の期間しかないのです。もちろん、ある程度の年齢になってから、自分で勉強して語学を習得することはできますが、より楽に確実にできる機会を逃してしまっているのです。

 パリには、日本人でありながら、日本が嫌いな人もいるのも確かですが、海外で生まれ育った自分の子供を自ら、日本から隔離してしまうような状況に追い込むことには、不自然な気もします。何より、自分の生まれ育った国をそこまで嫌うのは、気の毒な気さえしてしまいます。

 また、科学的なデータに基づくものではありませんが、日本語のみに関わらず、複数言語を話す子供には、優秀な子供が多い気もします。これは、私の周りの外国人とその子供を見ていて感じることです。

 それだけ、親が子供の教育に対して熱心であるということもあるかもしれませんが、かなりの割合で概して学校の成績も良い子が多いのです。脳の発達などとも関係があるのかもしれません。

 パリの街中で、自分の子供にフランス語で話しかけている日本人を見かけるたびに、私は、もったいないなぁ〜と思ってしまうのです。


バイリンガル教育

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「バイリンガルに育てる方法」

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「フランスの教育・学校・バイリンガル教育 ①」

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「フランスの教育・学校・バイリンガル教育 ②」

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「バイリンガルになった娘の日本語 複数言語を使う生活」

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「夏の帰国時の日本の学校への編入体験 バイリンガル教育の生体験」

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