2024年10月23日水曜日

30件目の誘拐警報は生後17日の未熟児の赤ちゃん

 


 週明け早々、月曜日の午後11時から午後11時30分の間に、オルネー・スー・ボワ(イル・ド・フランス地域圏セーヌ・サン・ドニ県)(パリ近郊)のロベール・バランジェ病院の産科病棟から生後17日の未熟児の赤ちゃんが誘拐されました。

 この赤ちゃんは2ヶ月も早く生まれた早産のために、病院での治療が必用な状態で、12時間以上、病院のケアが受けられない状態が続けば生命の危険が大きく、さらに2週間以上の入院が必用な状態で誘拐されたため、その安否が問われています。

 フランスでは、2006年から「誘拐警報」というものが存在しており、国民を動員するために未成年の子供の誘拐が発生した場合に大規模に警報を発令することで構成され、メディアだけでなくソーシャル ネットワークや公共交通機関ネットワークでも大規模に中継されます。

 今回の事件が30件目に発令された「誘拐警報」ということで、実際に起こっている失踪事件を含めた誘拐事件は、もっと多いはずなのに・・と思うところですが、これが「警報」レベルになるには、いくつかの条件を満たす必要があるということです。

 まず、それが失踪などではなく、誘拐であることが証明されなければならないということと被害者が未成年でなければならないということで、今回の事件に関しては、自分で動くことはできない生後17日の乳児ということで、ここは間違いなく問題ない話です。

 そして、被害者の生命または身体が危険にさらされていることですが、これもまた、今回は、本来は少なくともあと2週間は入院の必要があった乳児ということで、間違いなく該当します。

 最後に、検察官が子供の居場所を特定できる情報を持っていなければならないという条件がありますが、今回の事件に関しては、病院の監視カメラの映像から、この乳児を連れ去ったのは、子どもの両親と他3人が子どもを連れ去ったことがわかっており、すでにこの両親の家族5人が逮捕され、彼らの証言から、恐らく彼らは子どもを連れてベルギーに向かったと見られています。

 この両親は、23歳の父親と25歳の母親ですが、彼らだけで逃げているのではなく、他数名も一緒に逃げているとみられ、何のために子どもの命を危険に晒してまで逃げなければならなかったのかは、明らかになっていませんが、この2人は薬物中毒であると言われています。まったくもって気の毒な赤ちゃんです。

 この誘拐警報というシステムが誕生して18年間で、警報が失敗したのは、昨年7月にセーヌ・マリティームで6歳の男児が死亡した事件と2020年にナントで1歳の少女が死亡した2件だけということで、それなりの検挙率を挙げています。

 すでに逮捕されている逃亡中の両親の家族の証言から、容疑者らはベルギーに向かった可能性が高く、捜査依頼は、ベルギー司法当局にも送られ、悪質な犯罪捜査は、ベルギーの司法当局と警察当局と協力して続いていると検察官は説明しています。

 しかし、ここで説明されている乳児の安否(12時間以上病院のケアなしでは生命が危険に晒されるという点)は、すでに12時間以上はとっくに経過しているため、かなり危険な状態にあると考えられます。

 そして、不思議なことに、この乳児は発見されていないにもかかわらず、この「誘拐警報」は解除され、しかし、捜査は続いているという説明をしているのは、よく意味がわかりません。

 とにかく、この不可解な事件は大々的に報じられているのですが、この病院についての責任問題には、誰も触れていないのは、不思議なことだとも思っています。乳児の誘拐というのは珍しい話ではあるとはいえ、病院が責任を持って管理しているべきはずの子どもが誘拐されたのですから、その病院には問題はなかったのか?と管理責任を問う話があってもよさそうなものの、誰も話していません。

 もちろん、乳児を誘拐した人物が悪いけれど、新生児をしっかり管理できていない病院ってのもどうなのかな?とモヤモヤしています。


生後17日の乳児誘拐事件


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