2020年10月1日木曜日

恐ろしく物騒になってきたフランス

 

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               殺された18歳の女性


 ここのところ、フランスでは、この深刻なコロナウィルスの感染状況を吹き飛ばすような物騒な事件が立て続けに起こっています。

 まさに、コロナウィルスのニュースを一掃したかのごとくの大ニュースになったパリ11区で起こったテロ事件からまだ一週間も経っていません。

 シャルリー・エブド(風刺週刊紙)(2015年のテロの標的になった会社)の元本社前で休憩中だった数人が肉切りナイフで襲われ、突然のテロ騒ぎに周辺の学校などは、その日の午後は、俄かにロックダウン状態になりました。

 主犯の二人はすぐに逮捕され、共犯者と見られる数名も後日、逮捕されており、彼らの供述から実際の事件以上に壮大なテロを計画していたことがわかっています。

 また、今週に入ってからは、オーヴェルニュ・ローヌのイゼール県で18歳の女性が行方不明になり、その2日後にヴィルフォンテーヌの小川で遺体で発見されるという痛ましい事件がありました。

 彼女は、事件当日、帰宅途中、午後7時頃に帰宅途中である旨を家族に電話を入れており、いつまでも帰宅しない娘を案じて、その夜のうちに家族が警察に通報しています。

 翌朝には、彼女の姉がフェイスブックで妹が行方不明になったことを投稿し、その後、すぐに警察や憲兵隊、地元の住民などによる大規模な捜索が開始され、2日後には、通常アクセスが困難な森林地帯の中の小川に沈んでいる遺体が発見されました。

 夜も早い時間にバスがなくなってしまったことから、いつもはバスに乗る道を彼女は歩いて帰宅しようとしていたと見られています。近隣は、夜になると、ひと気もなく、街灯もなく、監視カメラもないことから目撃者も今のところ現れていません。

 遺体は解剖され、直接の死因は第三者の介入による溺死であり、事故ではなかったことが発表されていますが、それ以外の詳細な解剖結果は、発表されていません。

 家族にとっては、ほんの数時間前に電話で話した娘が遺体となって発見されるなどとは、とても受け入れがたいことに違いありません。ごくごく普通の生活から、あまりに突然の家族の死、しかも殺されるなどということがどうして受け入れられるのでしょうか?

 敬虔なカトリックの家庭に育った彼女は、滅多に夜、外出することもなく、真面目な生活を送る明るく聡明な女性だったそうです。

 遺体の近くで発見された彼女の所持品は、犯人の手掛かりになるものを発見するために、パリの科捜研に送られ、詳細に調べられているそうですが、今のところ犯人は逮捕されておらず、今も逃走中です。

 捜査のためには仕方ないこととはいえ、被害者である彼女や彼女の家族の私生活も詳しく調べられ、その一部は世間にも公表されるという耐えがたいであろう二次被害に遭っています。

 我が家でも、つい最近、娘が地方の会社でスタージュのために一人暮らしを始めたばかりで、とても人ごととは思えず、不気味で恐ろしい事件に心穏やかにはいられません。

 そして昨夜、パリの20区でナイフで滅多刺しにされた二人の女性の遺体が発見されたというニュースが飛び込んできました。猟奇的な残酷な殺人で、ナイフは頭蓋骨にまで達していたというのですから、恐ろしいことこの上ないです。

 こちらの方は、精神科に通院歴もある男が逮捕されていますが、なんだかもう次から次へと物騒な話ばかり・・コロナウィルスの感染が警戒状態に達している上に、殺人事件がこう立て続けに起こる恐怖には、だんだん精神的にも疲弊してしまいそうです。

 しかし、逆に言えば、このような事件が多発するようになってきたのは、コロナウィルスによる様々な生活の制限や経済状態の悪化も影響しているとも考えられ、特に、ストレスに弱い、抑えつけらることに反発するフランス人(と勝手に私は、思っている)にとっては、コロナウィルスが他の病的かつ暴力的な事件を生む一端を担っているような気がしてなりません。

 このような負の連鎖を断ち切るためにも、コロナウィルス根絶への道は遠いとしても、政府には、上手にコロナウィルスと共存していく道をうまく導いてもらわないと困る!と強く思うのです。


<関連記事>

「ロックダウン中のDV 心理学的に強い強制への反発心 ストレスに弱いフランス人」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/04/blog-post_68.html







2020年9月30日水曜日

パリは最大警戒地域に指定されるのか?

 

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 フランスのコロナウィルスの感染拡大により69の地域が警戒地域に指定され、13ヶ所のパリ、ボルドー、リヨン、ニースなどの地域が特別警戒地域に指定され、さらにマルセイユ、グアドループが最大特別警戒地域に指定されてから、一週間も経たないうちに、パリ(イル・ド・フランス)の感染状況に赤信号が灯り始めました。

 先週末から最大特別警戒地域に指定されたマルセイユでは、レストランの営業が禁止になり、パリでも22時以降の営業が禁止になりました。

 政府からのお達しにも関わらず、大人しく従う人ばかりではないのがフランスです。それでも強引に営業を続けるレストランの様子が報道されていました。

 先週の段階では、フランス本土内では、最悪の感染状況だったマルセイユですが、今週に入って、パリ(イル・ド・フランス)の感染状況がマルセイユを上回っています。

 感染発生率(10万人あたりの感染者数)がパリを含むイル・ド・フランス地域で、レッドゾーンのライン250例を超え、259.6例に突入しました。これは、警戒基準の5倍、フランスの全国平均の2.5倍の数字です。病院でも、この地域だけで、現在、2000人以上(2064人)がコロナウィルスのために入院しており、集中治療室でのコロナウィルスの患者の割合が32.1%を超え、増加が止まりません。

 先週、政府が出した指標により、レストランの全時間帯営業停止に追い込まれたマルセイユの例に習うならば、パリのレストランもいつ営業停止になってもおかしくない状況です。

 現在のところは、パリでは22時までの営業は認められていますが、22時閉店でさえも、受け入れられないと、一部のレストランのオーナーが集まって、お鍋を叩きながら、営業時間制限反対を訴えるデモが起こっています。

 感染状況から見ても、営業停止になっても不思議はない状態で、22時閉店に抗議するデモ。どうにも危機意識にズレがあるように思えてなりません。

 AP-HP(パリの病院の統括部門)は、先週末から、通常の病院操作プログラムを解除し、コロナウィルス患者増加への対応との調整に取り掛かり始めました。ロックダウン時にはなかった交通事故や他の病気の患者に加えて、これからインフルエンザの季節が到来すれば、コロナウィルスの患者と相まって、再び、一気に医療崩壊が起こってしまうことも大いにあり得ることなのです。

 現在のところ、フランスでのクラスターの発生している場所の一位は会社、次いで学校とされていますが、それは、レストランやバーでの感染者の追跡ができていないからです。

 コロナウィルスとの共存していくには、徹底的に検査を続けることと、感染源を追跡して、感染の拡大を防ぐしかありません。ロックダウン後には、治まりかけた感染が再びこのように悪化してしまったのは、この検査の徹底と感染者の追跡、隔離ができていないからです。

 感染が増えたからといって営業停止やロックダウンを繰り返すのは、愚かです。

 今ほどの感染状況になってしまえば、一時的にでも、感染を抑えるために、営業時間の制限や停止もやむを得ないかもしれませんが、本来ならば、感染の危険が考えられ、しかもマスクという武器が使えないレストランやバーの営業にあたっては、感染者の追跡が可能になるようにレストランを利用するお客さんに対して、利用した時間帯とともに連絡先を控える等の対策がなされるべきなのではないかと思います。

 それができれば、実際にどの程度、飲食店で感染が起こっているのかも測定することができるし、感染者を追跡できれば、むやみやたらに営業を停止する必要もありません。

 ただ、ソーシャルディスタンスを取れとか、マスクをしろとか、手を洗えとか、それだけをがなりたてても、フランスでのコロナ感染は止まりません。

 3月〜4月のような医療崩壊が起こるようなギリギリの状態にならなければ、フランスはロックダウンをすることはないように思います。ならば、感染者を徹底的に追跡できるシステムを作っていかなければなりません。せっかくお金をかけて作ったコロナウィルス感染者追跡アプリ「STOP COVID」もほとんど活用されていません。

 先日、テレビ番組でジャーナリストに「STOP COVID」のアプリをダウンロードしていますか?と聞かれたカステックス首相が、「していない・・」と答えて、皆、唖然となりました。

 感染者を追跡し、隔離するように厳しく警戒しなければ、フランス人はおとなしく自粛などしていません。

 フランスには、日本のように、自粛警察なる人々はいないのです。

<関連>

「フランスの感染拡大対策 69の地域を警戒地域に指定 マルセイユはレストラン・バー営業停止へ」https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/09/69.html



2020年9月29日火曜日

コロナウィルスの煽りを受けて、急遽、フランスの田舎暮らしが始まった娘

 


 10月からの娘の日本への留学が、コロナウィルスのために、ドタキャンになったのは、9月に入ってからのことで、私としては、日本への渡航のチケットがパーになってしまったことに憤慨していましたが、娘としては、10月から半年間の予定が急にパーになってしまったわけで、9月は、その留学するはずだった期間に入れるスタージュ(企業や大学での研修)探しに躍起になっており、その後の予定も含めて大幅に変更しなければならなくなったために、落ち込んでばかりもいられませんでした。

 10月からのスタージュを9月に探している人など、ほとんどなく、10月からのスタージュはすでにほとんどが決まってしまっているわけで、かと言って、それでも何もせずに半年間過ごすのは、あまりにもったいないことで、彼女の専門分野の研究をしている会社の募集を見ては、CVを10ヶ所以上も送り、ようやく正式にスタージュ先が決まったのが一週間ほど前のことでした。

 「最初から10月からのスタージュを探していれば、もっと理想的な会社が見つかったのに・・」と、こぼしながらも、会社もフランス国内では業界最大手、研究自体も興味深い内容なのだとかで、やれやれ、この土壇場の職探しの中では、上出来と言えるものなのかもしれません。

 しかし、問題は、その会社の研究所がパリではなく、自宅からは通えないブルターニュのど田舎にあることで、そのど田舎での半年間のアパート探しをしなければなりませんでした。

 彼女は、昨年までの2年間、ボルドーにあるグランドエコールに通うために、一人暮らし(といっても、シェアハウスでしたが・・)をしていましたが、それでもボルドーは、地方とはいえ、大都市で、田舎・・という感じではありませんでした。

 今回の研究所のある街は、Google mapで辺りを見てみると、まあ、のどかなこと・・最寄り?の駅も思わず見過ごしてしまうような駅舎で、最初に駅を見つけた時には、これが駅なのかと、しばし呆然としてしまったほどです。

 おそらく、近辺の人は、通勤などの移動には、車を使う人が多い場所なのでしょう。これまで、ことごとく、運転免許を取り損ねてきた娘にとっては、なかなか大変な場所です。

 9月の最終週からの勤務をと言われて、なんとか目安を付けたアパートの家主と連絡をとり、内見と家主との面会の約束が取れたのは、引っ越し当日、そのアパートがダメだった場合のために、到着当日から数日間は、ホテルを予約して、昨日、娘は田舎へと旅立って行ったのです。

 しかし、出発直前に、彼女はポツリと、「この数週間は、これまでの自分の歴史上、記憶にある限りで、最悪の数週間だった・・」と言ったのを聞いて、ハッとさせられたのでした。急な展開で少なからず痛手を受けていた彼女、表には見せなかった彼女の心情を思うと、それを充分に分かち合えていなかったことを申し訳ないような気持ちにさせられたのです。

 とはいえ、一先ず、なんとか落ち着き先も決まって、ヤレヤレでもあります。

 パリからの距離は、それほど遠くないにも関わらず、TGVの到着する駅から乗り換える電車のアクセスが悪く、とても時間がかかります。それでも、彼女は取り敢えず、一週間ほど分の荷物を持って出発し、休日には、電車が1日2本という、ど田舎暮らしが始まりました。

 しかし、考えようによっては、パリよりも余程、人は少なく、勤務先も研究所ということで、滅菌状態で最大限の衛生環境ゆえに、コロナウィルスの感染に関しては、危険も少なく、この期間にお給料を貰いながら、勉強ができることは、ラッキーだったかもしれません。

 そして、これまで大都市以外で生活をしたことのなかった娘の田舎暮らしの良い経験となることでしょう。

 ちなみに、この会社のキャンティーン・・フランスの田舎らしく、パンとチーズは食べ放題なのだそうです。パンはともかく、乳製品が苦手でごくごく限られたチーズしか食べない彼女にとっては、新しいチーズの魅力に出会えるチャンスにもなるかもしれません。


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「娘の留学 コロナウィルスによる被害」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/09/blog-post_20.html

 

 

2020年9月28日月曜日

死にたいと思う時に・・

 


 

 私が娘を産んだ時、分娩台の上で赤ちゃんを見せてもらった時に、これは大変なことをしてしまった・・一人の人間が私から誕生してしまった・・これは、大変な責任だ!と改めて思ったのと同時に、この子がなんとか無事に育つまでは、何があっても死ぬわけにはいかない・・と思ったことを、なぜかその瞬間を切り取るようにハッキリと覚えています。

 その後、アフリカからフランスに引っ越し、フランスでの生活が落ち着くまでには、色々なことがあり、主人も仕事のことなどで、うつ状態になったりして、にっちもさっちも行かずに、まだ、赤ちゃんだった娘を抱えて、私にとっても、とてもしんどい時期がありました。

 心配した母が滅多にかけてこない国際電話をかけてきてくれた時に、私は、思わず母に、「死にたいけど、娘がいるから死ねない・・」とこぼしてしまったことがありました。

 日頃は、我関せずで、自分勝手でわがままな振る舞いの多い父も、それを母から伝え聞き、ちょっと離れたところから冷静に状況を分析し、「おまえは、多くを語らないが、芯が強く、自分の意思をはっきりと持ったプライドの高い人間だったではないか・・気を確かに持って、起こっていることを冷静に受け止め、毎日毎日の生活を過ごし、毅然と生きて欲しい」というような内容のファックスが届いたりしました。

 思えば、遠く離れた両親にも心配をかけてきました。

 死にたいと思うことと、実際に実行に移すまでに至るまでには、大きな隔たりがあるなと思います。しかし、そのギリギリのところで、綱渡り状態でいる人も実際は、少なくないのかもしれません。

 そんな時は、淡々と日常をこなしていくことで、いつの間にか死神は、消えてなくなっていくかもしれません。私の場合、具体的に死に方を探していたわけではなく、ついうっかり、「死にたいけど、死ねない・・」などと母に漏らして口にしてしまったことが、その後の生活を淡々と送っていくきっかけとなったかもしれません。

 しかし、あの時の母からの国際電話が私の気持ちを危険な方向に向かってしまうのを食い止めてくれたのかもしれません。

 そして、子供を置いては死ねないという、理屈ではなく、本能的とも思える気持ちが私を救ってくれたかもしれません。もともと、私は、あまり精神的に強い方ではありませんが、子供のためにという気持ちが、私を少しだけ強くしてくれました。

 先日、日本の女優さんが自殺したという話を聞いて、まだ小さいお子さんがいらっしゃるのに、なぜ? と思い、自分の過去の話を思い出しました。

 実際に、自らの死を選んで、実行に移してしまう状態は、病的状態だと思うので、理由はわかりませんが、病気だったと思うしかありませんが、私がつい母にこぼしてしまったように、何か、ふと人に弱音を吐いたりする瞬間があれば、それがわずかでもガス抜きになっていたかもしれません。

 自分の弱さを見せることが苦手な人は、苦しむことが多いと思うのです。時には、弱音を吐いたり、愚痴を言ったりすることも精神衛生上、必要なことです。

 「死ぬほど辛い」ことも、時にはありますが、実際に自ら死んでしまうことは、何より家族や身近な人を強烈に傷つける行為に他なりません。なぜ、気付いてあげられなかったのか?なぜ救えなかったのか? 子供にとったら、捨てられたような気持ちにもなるかもしれません。

 自分の死後、いかに家族や身近な人が傷つくかに思いが至れば、思いとどまれることもあるかもしれません。


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「フランス人の夫との離婚の危機」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/10/blog-post_28.html

 

 

2020年9月27日日曜日

ジャック・シラク元大統領の一周忌


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 私がフランスに来た頃のフランスの大統領は、シラク大統領でした。まだ、フランスという国をよく知らなかった私にも、シラク大統領のカリスマ的な存在は、とても頼もしく、また長身で、スマートでどこかエレガントな姿も、フランスの大統領として、どこか誇らしく、たまに目にする彼の演説を大統領というものは、さすがに話も上手で説得力のあるものだなぁと感心しながら聴いていました。

 彼は、フランス国民に絶大な人気の大統領で、官僚出身のエリートでありながら、気取らず、庶民的な一面も見せつつも、威厳と気品の感じられる圧倒的なオーラがある人でした。

 一般庶民に嫌われている現在のマクロン大統領と違って、下層階級の人にも、とても人気のある大統領でした。シラク大統領からサルコジ大統領へと変わった時に、会社のお掃除のおばちゃんまでが、シラクとサルコジの大統領としての格の違いをとうとうと語り、夫人も含めてべた褒めしていたのをなるほどという気持ちで聞いていました。

 その上、シラク大統領は、大変な親日家でもあり、相撲が好きで、自分の愛犬に「スモウ」という名前をつけているとか、熱燗と天ぷらが好きだとか、ついには、京都に愛人がいるなどという噂まで聞いて(あくまで噂で、本当かどうかは知りませんが・・)、親日家の大統領の国にいて、どこか日本人の私としても、居心地が良いような気分でもありました。

 一年前にシラク大統領が亡くなった日は、追悼の意を表して、夜のエッフェル塔も消灯し、それから数日間、エリゼ宮には、お別れの記帳に訪れる国民の長蛇の列が続きました。これが一年後の今であったならば、あれほどの人出ができたでしょうか?(いや、きっと、フランス人には、コロナは関係なしに、やっぱり凄い人出になっただろうな・・)

 シラク大統領の葬儀には、フランス国民だけでなく、海外からも多くの要人が出席しましたが、それも今年だったら、無理だったかも・・スター性のある人というのは、亡くなるタイミングまで、図られているようだと思ってしまいます。

 モンバルナス墓地の彼のお墓には、今でも多くの人が訪れており、一周忌の昨日には、彼の肖像画が刻印されたジャック・シラク記念切手が50万部限定で発売になり、今度は、郵便局に行列ができています。

 愛国心旺盛なフランス人に人気のあった大統領のパワーは、その死後も光を放ち続けています。コロナやテロに脅かされている現在のフランスにシラクのような圧倒的なパワーを持つ存在がいてくれたらなぁと、切手を見ながら、ぼんやりと思うのです。

 日本では、中曽根元首相の葬儀に1億円近くの予算が計上されていることが炎上しているようですが、どれだけの国民が支持するのか、記念切手でも発売してみたらどいかがでしょうか?


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「フランス人のプライド」

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2020年9月26日土曜日

シャルリー・エブド元本社前でのテロ事件でパリ11区、俄かロックダウン

 Soldats déployés à Paris après une attaque à l'arme blanche le 25 septembre 2020 près des anciens locaux de Charlie Hebdo


 警察はおろか、軍隊が出動する光景は、パリでは見慣れた光景になりました。テロ・デモの暴動化・コロナウィルス・・その度に警察、消防、救急、軍隊とが出動し、街中に物々しいテープが貼られ、厳戒態勢が敷かれるのがさほど珍しくなくなっていることにパリ(フランス)が異常な状況であることを実感させられます。

 25日(金)の昼ごろ、パリ11区にあるシャルリー・エブド(風刺週刊紙)の元本社前で、休憩中であった数名がナイフで襲われ、うち2名が重傷を負うテロと思われる事件が起こり、フランスは、大騒動になっています。

 パリでは、社員が建物の前で数人がたむろして、休憩時間にタバコを吸っている様子は、どこでもよく見かける光景です。そんな平和な時間に、突如、訪れたこの事件にフランス中が震撼としています。

 3週間ほど前から、2015年に起こった同時多発テロ・シャルリー・エブド本社襲撃事件の共犯者とされる被告らの公判が始まっており、毎日のようにその様子が報道されていました。

 そんな報道を、私は、「もう5年も経ったんだ・・今ごろやっているのか・・フランスの裁判もずいぶんと時間がかかるんだな・・」などと、のんきに見ていましたが、この裁判の報道から、被害者、加害者側ともに様々な感情を揺さぶられている人が多くいたことは確かなようです。

 今回の事件の実行犯の一人は、犯行から1時間以内にバスチーユ広場付近で、もう一人は、1時間半後にパリ市内のメトロの駅付近で逮捕され、この事件に関わったと見られている5人が、別の場所で身柄を確保されています。

 この騒ぎに事件の起こったパリ11区では、近隣の125校・32000人の生徒が昼過ぎからロックダウン状態に・・近隣の店舗も閉鎖され、緊迫状態に陥りました。

 主犯は、18歳のパキスタン出身の男性と33歳アルジェリア人の男性で、被害者の身体だけでなく、頭から顔にかけてナイフで叩き切ろうとしており、その犯行の異常さをあらわしています。単に命を狙うならば、顔を切りつける必要はなく、そこには、風刺画でイスラム教徒を怒らせたシャルリー・エブドへの何らかのメッセージ性があったのではないかと私は勝手に思っています。

 しかし、シャルリー・エブド社はすでに2015年のテロ直後に移転しており、被害に遭った人もシャルリー・エブド社の社員ではなく、その場所が犯人にとってシャルリー・エブド社のシンボル的な意味を持っていたというだけで狙われたのかは現在のところは不明です。

 また、犯人の男性は、赤いスポーツシューズに黄色いTシャツという、これでもかというほどの人目に付きやすく、印象に残りやすい服装で、逃げ切るつもりがなかったのか?計画的な犯行としては、まことに杜撰な感じなことも不可解です。

 昨日は、コロナウィルスの感染が急激に増加しているフランスで、コロナウィルス関連のニュースがほとんど消えた異常な1日でした。

 今後、しばらくの間は、恐らくパリはテロ警戒体制に入り、少しのことでもいちいち大騒ぎになるのではないかと思っています。今回は、5年前のテロのような銃や爆弾を使った大規模なものではありませんでしたが、背景等がわからないため、当分は、緊迫した状況になることは間違いなく、昨夜も警察のサイレンの音が途切れることはありませんでした。

 5年前のテロの直後は、金曜日に事件が起こって、土日は怖くて多くの人が引きこもり、つまりはロックダウンのような状態、月曜日に仕事に行く際には、なんとなく怖くてドキドキしたのを覚えています。

 事件後、しばらくしてから、仕事中に会社の入っている建物に、数人の警察官が踏み込んできたと思ったら、会社の前のバス停に停車しているバスの中に不審物があるので、今から出来るだけ遠くに走って避難してください!と言われて、同僚と共に必死でパリの街を走った恐怖をまざまざと思い出しました。

 コロナウィルスの蔓延に加えてテロの恐怖、全く性質の違う恐怖が同時に存在するフランスは、どうなってしまうのだろうか?と底知れない問題を抱えたフランスの現状を思います。

 華麗なパリのイメージとはかけ離れた現実です。

 コロナウィルスによる再ロックダウンだけでなく、テロによるロックダウン状況が起こることは、想定外でした。


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「フランスのテロの報道と対応」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/08/blog-post_29.html

  










2020年9月25日金曜日

新規感染者1万6千人超えのフランス 全仏オープン・ローランギャロス2020は継続されるか?



 フランスの新規感染者数が1万人を突破したのは、9月12日(土)のことなので、それから、約一週間後に1万3千人を突破し、また一週間も経たないうちにさらに3千人増加の1万6千人も突破しました。

 一週間弱の間に3千人ずつ増えていく感染者数に、もはや、数字の感覚が麻痺してきました。昨日は、新規感染者数の大幅増加だけでなく、ICU(集中治療室)の患者数も1000人を突破し、ロックダウン解除以降の記録を伸ばしています。

 一昨日に政府から発表された69の地域の警戒地域指定や、特別警戒地域、最大特別警戒地域に対する行動制限政策は、大きな波紋を呼び、特に飲食店閉鎖が決まったマルセイユでは、飲食店経営者の怒りや、顧客側もレストランが閉鎖される土曜日の前に駆け込みで外食を楽しむ人が増加しています。

 ロックダウンが決まった際にも前日の夜には、まるでカウントダウンを楽しむかのように、レストランやバーなどが異常に賑わった時と同じ状況が再び起ころうとしています。

 思えば、ロックダウン解除後も最後まで、なかなか営業を許可されず、テラスのみの営業からようやく開店できるようになっていた飲食店が、どこよりも先に再び営業停止になることは、大変な憤りであり、大打撃であると思われます。

 ジャン・カステックス首相は、この飲食店の経営者の怒りと、なぜ?レストランだけが営業停止になるのかという質問にテレビ番組で、「公共の場所でどうしてもマスクをすることができない場所であるから・・」との理由を述べていましたが、駆け込みで外食を楽しんでいる人々は、レストランが閉鎖されれば、別の方法を探すしかない・・と、なんとか人と集おうとする懲りない様子をうかがわせていました。

 そんな中、フランスでは、9月27日(日)には、全仏オープンテニス・ローランギャロスが始まります。例年は5月末から6月の初旬に開催されるこの大会もコロナウィルスの影響で、延期されていました。

 すでに予選は、始まっていますが、27日(日)からのトーナメントは、今のところ、開催予定に変わりはありませんが、大会の行われるイル・ド・フランスの警察からの勧告で、トーナメント中のローランギャロスのスタジアムにアクセスできる観客の数を1000人に制限しています。

 5月末に延期した段階で、全仏オープンテニス協会は、強固に観客を入れての開催にこだわっており、チケットは、すでに7月からオンライン予約が開始され、今年は、当日券は発行されない予定です。

 一度、錦織選手を応援に行こうかと、チケットを取ろうとして、びっくり!ローランギャロスのチケットは、155€〜190€・・高いものだと300€を超える高額で、断念しました。

 協会は万全の対策を取っていることをアピールしており、選手は到着時及び72時間後にPCR検査を行うことが義務付けられ、以後5日おきに検査、指定されたホテルで隔離されています。

 つい先日、延期されていたツールドフランス(自転車のロードレース)が開催されて、終了したばかりですが、同様に延期されていたローランギャロスの開催。両者とも、当初の予定の日程時以上に感染状態が悪化した状態での強行開催に結果論ではありながら、より悪い結果をもたらすことばかりのタイミングの悪さがもどかしいばかりです。

 おまけにローランギャロスは長いこと、屋根の無い、クレーコートで雨が降るたびに試合が中断する事態に悩まされてきましたが、皮肉なことに今年からセンターコート「フィリップ・シャトリエ」には、開閉式屋根が設置されたばかり・・。

                          

            ローランギャロスのセンターコート「フィリップ・シャトリエ」


 屋内が敬遠されるこのタイミングに長いことできなかった開閉式屋根付きのセンターコート。コロナウィルス感染では、ことごとく、全てが裏目に出ているフランスでは、ローランギャロスのセンターコートの屋根までもがタイミングの悪いことに、嫌な予感しかしないのです。


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「ことごとくフランス人の習慣が裏目に出ているコロナウィルスの感染拡大」

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