2021年4月30日金曜日

ロックダウンの段階的な解除日程 マクロン大統領がプレス公開とツイッターで発表した理由

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 マクロン大統領は、5月3日から、4段階に分けたロックダウンを解除していく日程を発表しました。数日前に、カステックス首相から、以前に発表されていた5月半ばからのロックダウン解除の日程については、週末にマクロン大統領から発表があることが知らされていたので、国民は、それを待っていました。

 ここのところ、フランスでは、ロックダウンにしても解除にしても、実際の発表の前にその内容の概ねは漏れ聞こえてくるか、発表した途端に内容が変更になったり、中止になったり、グタグタの状況で、わけがわからないことが多くなってきています。

 そして、ここへ来て、またマクロン大統領から発表されるとされていたロックダウン解除の日程は、プレスへの公開とマクロン大統領自身のツイッターで発表されるという前代未聞の公開の方法が取られました。

 


 まずは、5月3日から、別の地域への移動禁止が終了し、中学校と高校が再開されます。(これは、前回の発表の時にすでに折り込み済みの内容です)

 そして、5月19日には、現在閉鎖されているショップ、バー、カフェ、レストランのテラス(1テーブルあたり最大6人)、美術館、映画館、劇場、スポーツ施設が再開。これらの文化的およびスポーツ的な場所では、屋内で800人、屋外で1,000人の入場制限が敷かれます。

 また、夜間外出禁止令の時間が、5月19日の午後7時から午後9時までにシフトされます。

 6月9日からは、夜間外出禁止は午後9時から午後11時までに拡大され、バー、カフェ、レストランも屋内やスポーツホールで再開できます。オープンする文化的およびスポーツ施設の数は5,000人に増加します。見本市や展示会は、同じゲージで開催される場合があります。

 その同じ日に、在宅勤務に関する指示は、企業レベルのソーシャルパートナーと協力して緩和されていきます。

 そして、最終段階の6月30日には、夜間外出禁止は、撤廃されます。(ディスコはまだ閉鎖)

 これが、若干感染が減少している傾向にあるとはいえ、現在も1日の新規感染者が平均3万人を下ることがなく、1日300人前後の死亡者を出し、集中治療室の占拠率が116%超(イル・ド・フランスでは、152%超)のフランスが出した今後のロックダウン解除の日程です。

 もちろん、この計画には、「緊急事態に備えての中止・緊急ブレーキ」が用意されています。発生率が住民10万人あたり400例を超え、急激な感染増加の傾向が見られ、集中治療室が飽和状態になるリスクがある場合、再開はそこで停止されます。

 現在のパリ、イル・ド・フランスは、残念ながら、そのロックダウン解除、再開停止のカテゴリーに入っています。このゲージを尊重するのであれば、パリを含むイル・ド・フランスの一部の地域は、ロックダウン解除の日程を進んでいくことはできないことになります。

 しかし、この発表がなされる前の段階から、パリではすでにショップ再開の準備が始まっています。すでに、ロックダウンは、ロックダウンではないような状況にもなってきており、規則を尊重しない人が日々、増加しています。

 多くの国民が前のめりに、日常生活再開を待っている状況です。失われていた日常が戻ってくるという楽観的なニュースは、どんどん広まっていきます。恐る恐る日常に戻っていくという感覚を持つ期間は、恐らくフランス人には、極めて短い、ほぼないと思います。

 いつまで経っても、思うように感染が減少していかない先の見えない状況に国民は疲れ果て、段階的であっても、何らかの指標になるような目安がなければ、もう耐えられないのかもしれません。

 みんながかつての日常を待ちきれずにいます。

 しかし、この決断は、これまで一年以上の鬱憤が溜まっているフランス人が一気に街に出て、人と触れ合い、行動を爆発させ、感染を再爆発させ、第4波を迎える危険をはらんでいることは言うまでもありません。

 ということは、いつでもこの日程が解除される可能性を含んだ発表であるということです。

 昨年の6月のロックダウン解除では、「俺たちは、よくやった!」と勝利宣言をしたマクロン大統領ですが、現在の状況を見る限り、どんな選択をしても、厳しい結果しか期待できないマクロン大統領は、恐らく、これまでのように夜8時にマルセイエーズとともにテレビに登場して、大々的に国民に対して強く約束するような形の発表は避け、内容とは裏腹にインパクトの少ない形での発表の仕方を選んだと思います。

 今回のロックダウンの段階的な解除の発表の仕方は、パンデミック以来、いつも強気の会見を行ってきたマクロン大統領が選んだ苦肉の策だったような気がしてなりません。

 しかしながら、マクロン大統領のババだけでのババ抜き状態は、まだまだ続きそうです。


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2021年4月29日木曜日

モンペリエ近くの高齢者施設でクラスター ワクチンは完全無欠ではない

   


 もはや、フランスでの唯一の救いと思われるワクチン接種は、接種の権利を得られる範囲をどんどん拡大してはいるものの、現在のところ、フランスのワクチン接種状況は、1回でもワクチンを接種した人は、まだ20%程度、5人に一人の割合と、まだまだ、感染拡大を止めるには、ほど遠い状態です。

 ワクチンが思うように届かないという問題もありますが、保存方法の問題から、一番、色々な場所での接種が可能なアストラゼネカワクチンを拒否する一定の割合の人が存在し、せっかく届いているワクチンを開封してから、接種しきれずに廃棄せざるを得ないことを嘆く医者がその現状をSNSで公開して訴えたりしています。

 かと思えば、少しでも早くワクチンを受けたい人が廃棄するぐらいだったら、ワクチンを接種してほしいと、予約なしでも行列を作っていたり、どうにも、まんべんなく、ワクチンを供給することができていないようです。

 マクロン大統領は、思い余って、24時間、年中無休でワクチンを!などとまで、口をすべらしていますが、もともと、効率よく、急いでさっさと事を進めるのが苦手なフランスです。この状況においても、フランスは、急速に事を進めることができません。

 そんな中、唯一の希望であるはずのワクチン接種に危うい状況が浮上してきました。

 85%の居住者がワクチン接種を済ませている状況のモンペリエ(フランス南部・オクシタニー地域圏)近くの高齢者施設 エパッド(Ehpad)で、19人(居住者11人、職員8人)のクラスターが発生したことが報告されています。

 感染者19人のうち14人はワクチン接種済みの人で、ワクチンが完全無欠のものではないことが明らかになった事例となってしまいました。

 ここ数ヶ月の間に、最優先とされていた高齢者のワクチン接種拡大の効果により、高齢者の感染が劇的に減少したことから、ワクチンの効果が期待され、高齢者施設内でも、厳しく敷かれていた面会や、衛生管理の制限を少しずつ緩和していく動きが始まった矢先のクラスター発生にショックは大きく、この高齢者施設では、再びロックダウン状態に逆戻りを余儀なくされています。

 しかし、唯一の救いは、ワクチン接種を受けている人は、症状が出ても、比較的、症状が緩やかで現在のところ重症化はしていないということです。

 とはいえ、フランス領ギアナでは、ワクチン接種済み(ファイザー)の2名が感染、重症化して死亡したという事例もあり、ワクチンのタイミングや間隔などにも問題があったのではないかと調査が続いています。

 3回目のロックダウンにより、若干、感染減少の兆しが見えてきたフランスですが、未だ1日の新規感染者数は、3万人超え、毎日、コンスタントに300人以上の死者がで続けている状態です。

 今は、盛んにこれからのロックダウン解除の日程や、どのように、どこから解除していくかばかりが話題になっていますが、今週から学校も再開し、これ以上に制限を解除して、ワクチンでも完全に防ぎきれないとなれば、まことに不安材料ばかりです。

 また、オリヴィエ・ヴェラン保健相は、ここ1〜2週間で、パリ近郊3県での南アフリカ変異種が6%から10%に上昇してきていることを発表しています。

 この高齢者施設のクラスターの発生から、ワクチンをしても、当分、マスクなしの生活には、戻れそうもないことを思い知らされたのでした。


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2021年4月28日水曜日

コロナ渦中のフランスの歯医者③ ミューチュエル(国民健康保険でカバーしない分をカバーする保険)乗り換え

    


 コロナウィルスのおかげで、ずっと先延ばしにしていた歯の治療に重い腰をあげたのが、昨年の10月初めのことで、最初のロックダウンから半年以上経った頃で、なんといっても、室内でマスクを外さなければ治療を受けられない歯医者さんは、コロナウィルスが蔓延してからは、恐怖だったのです。

 それでも、昨年の最初のロックダウンが解除されて、結局、多くの人がバカンスに出かけたフランスでは、秋頃から、また雲行きが怪しくなってきて、ようやく意を決して、今、行かなければ、またロックダウンかも・・と思いながら、コロナ渦中の歯医者さんに出向いたのでした。

 その時点でも、歯医者さんは、入ってすぐに非接触体温計での体温チェック、プラスチックのガウンと頭に被るカバーまでつけさせられて、持ってきた荷物も預けるというなかなかな衛生対策ぶり・・細かな問題はあるにせよ、フランスにしては、なかなか気を配っている方だろうな・・と思っていました。

 その後、抜歯してから、抜いた後がしっかり固まるまでということで、その後、数回、通っていましたが、まだ、しっかり固まっていないということで、次の段階に進めぬまま、抜いた歯をインプラントにするか、入れ歯にするかの決断を強いられていたのでした。

 結局、食べることが大好きな私としては、やはり歯は何よりも大事。やっぱり多少、お金がかかっても、インプラントにしようと決めると、今度は、抜いた隣の歯が虫歯になりかけているから、まず、その治療をしてからの方がいいと言われて、インプラントと、もう一本の歯の治療の分の見積もりをもらってきたところまでで、前回の治療は中断していたのでした。

 インプラントに加えて、隣の歯まで??とちょっと遺憾に思った私は、一応、日本にいる従姉妹に相談したりして(彼女のご主人は歯医者さん)、結局、両方、やることにしたのですが、その間、歯医者さんに出してもらった見積もりをミューチュエル(健康保険でカバーしきれない分をカバーする保険会社)に送って、いくら戻ってくるのかを確認したりして、(実際は、そんなにレベルの高い保険でもないためにあまり戻ってこない)今回の診察に臨んだのした。

 ちなみにインプラントともう1本の歯の治療でかかる費用は、2,800ユーロ程度(約36万円)そのうち、1,000ユーロ近くが保険で戻るようです。

 もうコロナ禍の診察にも慣れた様子で、体温チェックはありませんでしたが、相変わらず、プラスチックのガウンと頭に被るカバーは継続していて、歯医者さんに「ワクチンは受けましたか?」と聞いたところ、「もちろん!もう2ヶ月以上前に2回目の接種が済んでるわよ!」と即答されて、ちょっと安心・・考えてみれば、防御はしているとはいえ、マスクなしの患者さんと毎日接して、患者さんの飛沫を飛ばしまくるの歯医者さん、かなりリスクの高い仕事です。

 ちなみに私の歯の治療のことで相談に乗ってもらった日本にいる従姉妹の旦那さんは、歯医者さんなのに、まだワクチンできていないと言っていました。

 今回の歯医者さんの治療で、これまで入っていた保険は、毎月支払っている金額にしては、いつの間にか、カバーできる範囲が減っているようで、(毎年、自動更新なので、そのままにしていました)、今年いっぱいで、他のミューチュエルに乗り換えることにし、(それでも、ゼロではないので、今の段階で変えるのはもったいないので)この2本の歯に関しては、年内に治療を終わらせて!と頼んで、いよいよ本格的な治療が開始されました。

 今年は、これまで使っていた銀行も乗り換えたので、それに引き続き、来年は、保険会社も乗り換えすることにしました。

 普段は、大して医者にもかからない私なので、ついつい放ったらかしになっていた保険、しかし、もしもの時が怖くて、そのままにしていたのですが、この際、今まで払っていた分を少しは取り返そうと、今年のうちに、メガネも作り直そうと思い始めたのでした。

 しかし、銀行、保険、歯医者に眼医者(保険でメガネを作るために処方箋が必要)と次から次へとできる用事が医者のハシゴとは・・バカンスにはどこにも行けない分、使うお金も時間も医者通いとは・・年齢を感じるばかりです。


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2021年4月27日火曜日

コロナウィルスワクチンのつもりが生理食塩水を注射されていた140人 エペルネ グラン・テスト地域圏

    


 フランスのエペルネ(グラン・テスト地域圏 マルヌ県)のワクチン接種センターでは、4月20日にファイザー/ BioNTechのワクチンを投与したつもりが、140人に対して、生理食塩水を投与していたことが明らかになりました。

 幸いなことに、これは健康には害のない間違いではありましたが、このワクチン接種センターは、大きな信頼を失う結果となり、ワクチン接種に懐疑的な人の不信感を煽る一旦にもなってしまいました。

 このあり得ないミスに翌朝になって気付いた予防接種センターは、すぐに該当患者に連絡をとり、ワクチンの再接種をすることになりました。

 幸いにも、健康上には、問題のない事故?ではありましたが、国中を揚げて、ワクチン接種に躍起になっているときに、この分の時間と人出と労力が無駄になり、再びワクチン接種の時間とそのためにワクチン接種が遅れることも問題ではありますが、このような間違いが怒ることで、不安と不信感が高まることが何よりも問題です。

 フランスは、日常的に、何かとミスに遭遇する機会が多い国ではありますが、ワクチンしか、もう救われる道はない・・と思われる現在の事態にこのようなミスは、ちょっと見過ごすことはできません。

 そもそも、この事故が起こったグラン・テスト地域圏は、パンデミックが始まって以来、フランスでの感染が大きく広がったのも、この地域からで、当初のこの地域の被害は、フランスの中でも最も甚大であった地域です。

 そして、現在もこの地域の感染状況は、決して、楽観視できる状況ではありません。

 この間違って投与された生理食塩水は、特に創傷の洗浄などのさまざまな治療に使用されたり、注射中の希釈剤として使用されるもので、決して危険なものではありません。

 とはいえ、なぜこのような間違いが起こったのかは、現在のところ、明らかにされていません。このワクチン接種センターの準備システムにエラーが起こる可能性があったことは確実で、これが人為的なミスであった可能性もないとは言えないとされています。

 ミスをしても、「それは、私のせいではない」というのが常のフランスです。間違いは起こってしまったことで、仕方がないことではありますが、皆が「私のせいではない」と言い張って、事を水に流してしまえば、今後も同じようなことが起こる可能性があります。

 失敗は失敗として認めて、反省し、問題点を解明し、予防接種センターのワクチン接種までの流れのシステムを改良していってもらわなければなりません。

 この地域のワクチン接種キャンペーンは、1月15日に開始されて以来、病院センターと私立診療所が仕事を分担しながら急ピッチでワクチン接種が進められてきました。

 3月に新しいワクチン投与量が到着すると、2つのワクチン接種施設は、これまでのペースを維持することがますます困難になり、スペースが不足して、4月19日に単一の予防接種センターが開設されました。

 この事故が起こったのは、その直後のことで、新しいワクチン接種センター開設の際の混乱状態が予想できます。

 終いには、この事故に対する「陰謀説」まで、持ち上がっていますが、健康上には問題のないことから、うやむやになっていく可能性も大です。

 エペルネ市長は、「この種の事故の再発を防ぐために、施設はワクチン接種の安全性、品質、継続性、トレーサビリティ、および管理を保証するためのプロトコルを直ちに強化した」と述べていますが、この事故が起こった原因については、公表していません。

 このミスに関する保健当局の沈黙は、住民を不安にさせ、原因についての透明性だけが不信を解消することができます。健康に関するダメージはないという説明では、充分ではありません。

 ワクチンの安全性も100%とは信じきれずに、ワクチンを受けるにあたっては、誰もがそれなりの覚悟をして受けている段階です。それが、ワクチンを受けたつもりが、ワクチンではなかった・・その拍子抜けした、やるせない気持ちは、想像できます。

 私がワクチン接種をしたのは、かかりつけの長いこと知っている親しいお医者さんで、そんな間違いが起こりえると考えたわけではありませんが、記念に?・・と、私に接種してくれたワクチンの瓶の写真を撮らせてもらいました・・ので、私が接種したのは、生理食塩水ではありません。


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2021年4月26日月曜日

フランスは、ワクチン接種を進めても、イスラエルやイギリスのような劇的な変化は期待できない


Les fêtes clandestines ont le vent en poupe
昨日のパリ19区のビュットショーモン公園での様子


 フランス人は、フランスのことを特別な国だというような表現の仕方をする人が多いのですが、昨日、ニュースを見ていたら、ある医療機関の代表の人が「フランスは、唯一の国だ・・」と話し始めたので、「ハイハイ、何が唯一なんですか?・・」と思って聞いていたら、「フランスは、感染の蔓延がほぼピークに達している中でワクチン接種を必死に進めている唯一の国だ」と言っているのを聞いて、なるほど・・と思いました。

 現在、ワクチン接種がかなり進んでいるイスラエルやイギリスでは、感染者が劇的に減少し、コロナウィルスによる死亡者も桁違いに減少し、コロナ前の日常を取り戻しつつあります。

 彼らがカフェやパブなどで楽しそうにしている様子を指を咥えて見ているフランスです。

 しかし、彼らが今、劇的な感染者の減少という局面を迎えているのは、ワクチン接種の拡大とともに、彼らは2ヶ月以上の厳しいロックダウンを行ってきた結果でもあり、その効果を伴ったものであるということです。

 その点では、フランスでは、夜間外出禁止や、遠距離の移動の禁止や、レストランやカフェ、一部の店舗の営業は禁止されているものの、日中の街中の人の動きはほぼ平常と変わらず、学校閉鎖に踏み切ったのも学校のバカンス期間を含めた4月に入ってからの約4週間のみで、感染状態も若干、減少したものの、未だに1日の新規感染者数は、平均3万人、集中治療室の患者は6千人に迫る勢い、死亡者も1日平均300人ほど出ている状況です。

 この状態で、学校も今週から徐々に再開され、5月3日からは、長距離移動も可能になると発表されています。実際に、ワクチン接種が進んでいる高齢者の感染はフランスでも劇的に減少しているので、「ワクチン接種さえ進めば・・イスラエルのように、イギリスのように・・日常が戻ってくる!!」と祈るように思っていたのですが、考えてみれば、彼らのような劇的な変化はフランスには、期待できないかもしれないのです。

 しかも、先週末もフランスは、警察署で起こった悲惨なテロ事件や2万人単位のデモ、おまけにパリ19区にあるビュット・ショーモン公園では、数百人にものぼる若者たちがほとんどの人がマスクもなしに、陽気に音楽をかけての盛大なパーティーを開き、そのあまりに屈託なく楽しそうにはしゃぐ様子には、言葉を失います。

 取り締まる警察も、テロ対策、コロナ対策と全てに手が回らないのもわからないではありません。



 たしかにもう、このパンデミックには、ワクチン接種以外に道はなく、ワクチン接種さえ進めば、イスラエルのように、イギリスのように、日常生活が戻ってくるとは思いますが、これまで、厳しいロックダウンをしてこなかったツケがフランスには、回ってくる・・つまり、ワクチン接種の拡大とともに、劇的に感染が減少することはなく、この調子では、かなり時間がかかるであろうということは、覚悟しなければならないと思うのです。 


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2021年4月25日日曜日

思いがけずに娘もワクチン接種を受けることができました!

          

娘がワクチン接種をした病院内の様子


 私が思いがけず、新型コロナウィルスのワクチン接種の予約をしたのは、今年の2月26日のことでした。たまたま、いつも飲んでいる薬の処方箋をもらいに近所のかかりつけの医者に行った際に、「ワクチンの申し込みをしますか?」と言われて、(その時は、まさか私にワクチン接種を受ける権利があるとは思っていなかったので・・)「えっ??いいの?」と言いながらも、「あなたは、心臓疾患があるから申し込みできるわよ!」と言われて、「ラッキー!」と、すぐにその翌日に軽い問診を受けて、申し込みをしたのでした。

 申し込みをしてから、おそらく、セキュリテソーシャル(国民健康保険)からの承諾が降りるのに1ヶ月くらいは時間がかかるから(現在はそんなに時間はかからない)、3月半ば以降にまた連絡してみてと言われて、その頃に一度、連絡してみましたが、肝心のワクチンが届かないとのこと。

 それでも私が1回目のワクチン接種をしたのは、4月2日のことでした。

 そして、娘が4月に入ってから、パリ市内の病院に併設された研究所でスタージュ(インターンシップ)に通いはじめ、リモートワークかと思いきや、毎日、通勤とのこと。しかし、病院関係の施設での仕事ということで、病棟とは関係ない研究所内の事務所での仕事ではあるのですが、ワクチン接種の権利をもらえたのです。

 娘は、まだ20代前半で、コロナウィルスにかかった場合にリスクが高いとされる何の既往疾患もなく、本来ならば、ワクチン接種は、一番後回しになる世代です。それが、思わぬチャンスに恵まれたのです。

 「リモートワークのこと、ワクチンのこと、マスク配布についてなどなど、ちゃんと聞いてきなさいよ!」と言って、彼女を仕事に送り出した仕事開始初日が4月6日。

 どうやら、仕事はリモートワークではなく、毎日、通勤しなければならない代わりに、ワクチン接種が受けられることになったといって娘は帰ってきました。

 ワクチン接種は、彼女が働いている病院では行ってはおらず、別の病院に接種に行かなければならないとのことでしたが、娘も思いがけずにワクチン接種を受けられることになったのです。

 すでに職場の周囲の人は、全員、ワクチン接種済みで、彼女は、それから数回、予約を入れるために仕事の合間をぬって、電話をしていましたが、電話がなかなか繋がらなかったり、繋がっても、ワクチンがないと言われたり・・予約が取れたのは、電話を始めて一週間後のことでした。

 そして、先週末に彼女は、1回目のワクチン接種をしてきたのです。

 彼女が受けたのは、彼女の年齢(アストラゼネカは、若年者には、現在のところリスクがあるということで避けられています)から、ファイザー社のワクチンでした。

 病院の中のワクチン接種のスペースは、完全予約制ということで、全てスムーズに流れができていて、病院到着後、数分後に2分ほどの問診の後、ワクチン接種の部屋に入るとワクチン接種までにかかった時間は、1分以内、あっという間にワクチン接種は終わり、「15分ほど待合室で様子を見て、その後はすぐに帰って結構です」とのことで、帰りに用意されたワクチンの証明書をもらって、その場で、2回目の接種の予約を取ることができました。

 なんと、ファイザー社のワクチンは、1回目と2回目の接種の期間が短いということで、彼女の2回目のワクチン接種は、5月末になりました。20日以上前にワクチンを受けた私の2回目のワクチン接種は、6月4日以降となっていて、結果的には、彼女の方が2回目のワクチン接種が早く済んでしまうことになりました。

 しかし、どちらにしても、少しでも感染のリスクが減ったことは、現在のフランスの状況にいる限り、大変、ありがたいことです。

 当日、午前中にワクチン接種を受けた娘は、夜になって、「腕が痛くなってきた・・腕が上がらない・・」などと、痛み止めを飲んでいましたが、それも翌日には、痛みも薄れはじめ、「もう大丈夫!」と言っています。

 パンデミックの影響で、日本への留学が2度もキャンセルになり、結局、日本へは行けなくなってしまった娘ですが、スタージュ先を変えたことで、思わぬ早めのワクチン接種を受けられることができ、不幸中の幸いでした。


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2021年4月24日土曜日

パリ近郊・平和で静かな街 ランブイエの警察を襲ったテロ事件 大胆にも警察に乗り込む手口


Des policiers sécurisent le périmètre après l'attaque au couteau qui a coûté la vie à une fonctionnaire de police, le 23 avril 2021, à Rambouillet (Yvelines). (BERTRAND GUAY / AFP)


 パリ近郊(イル・ド・フランス イヴリーヌ県)の平和で静かな街 ランブイエの警察署で23日の午後2時20分頃、ナイフを持った男が警察署の入り口付近で、警察署勤務の女性の喉をナイフで掻き切るという衝撃的な事件が起こりました。

 犯人は、36歳のチュニジア国籍の男で、2009年に不法に入国して以来、不安定な状態でフランスに滞在し続けていましたが、2019年に例外的な従業員居住許可、2020年12月に居住許可が発給され、2021年末までの滞在許可証を持っていたという、警察筋からはノーマークの男で、昼休みから戻った被害者女性の喉元をナイフで2度刺して殺害、犯行時にこの男が「アッラー・アクバル(神は偉大なり)」と叫んでいたという周囲の証言から、検察は、この犯行をイスラム教関連テロ攻撃と判断して、捜査を開始しています。

 被害者の49歳の女性は、警察署勤務でありながら、警察官ではなく、内務省の行政官であったため、制服も着用しておらず、攻撃を受けた時に彼女自身は、何の武器も持っていない状態でした。

 彼女はランブイエ警察署で28年間、働いていた13歳と18歳の子供を持つ母親で、刺されてすぐに心肺停止状態に陥り、駆けつけた救急隊員の必死の蘇生術も虚しく、その場で息を引き取りました。

 犯人は、すぐに周囲にいた警察官に撃たれて死亡しています。

 警察署で起こった事件だけに、警察の対応も迅速で、その数時間後には、犯人の自宅が家宅捜索され、側近の人物3人が警察に拘留されました。

 迅速な対応は、警察だけにとどまらず、すぐにカステックス首相、ジェラルド・ダルマナン内務相が現場に駆けつけ、「この惨劇の犠牲者の遺族や同僚に対する追悼の意と、テロには、決して屈しない」というコメントを発表しています。

 犯人は、すでに射殺されていますが、2015年12月からのランブイエの住民で、周囲の目撃者から、彼は警察署付近で一定時間、待機して、被害者となった女性が車を降りてきたところで、狙いを定めて被害者を襲撃したと言われています。

 とはいえ、彼が個人的な恨みでこのような犯行に及んだとは考え難く、ある程度、攻撃しやすい相手に狙いを定めて、公権力を保持している人に対するテロと見られています。

 彼の自宅の捜索とともに、彼がランブイエに転居する前に居住していたヴァル・ド・マルヌ地域の、彼が頻繁に出入りしていた家も家宅捜索を受けています。

 この衝撃的なテロに対する悲しみと怒りが静かで平和だったはずの街を震撼とさせています。イスラム教徒によるテロに共通する刃物で首をかき切る、顔を傷つけるという犯行も残忍で衝撃的です。

 このようなテロでやるせないのは、国家に対する怒りが、居合わせた個人の命を奪うことで、健康で善良な一市民が、朝、いつもどおりに出勤したまま、もう二度と帰ってこない人になってしまうことです。

 今なら、家を出る時には、感染に気をつけて、彼女もマスクをつけて、出かけたはずです。

 私は、イスラム教徒のテロの意味を全く理解できませんが、そんなにフランス国家に恨みを持ちつつ、なぜ、外国からわざわざフランスに移住してきて生活しようとするのか? 宗教というものが恐ろしく感じられます。

 信仰を持つ、信じるもの(神)があるということ、信じることができるということは、無宗教の私にとっては、心の平安をもたらすものであって羨ましいと思うこともあるのですが、心の平安どころか、宗教がゆえに国家に対して恨みを抱き、人の命を奪ってしまうような行為にまで至ってしまうということには、救いがありません。

 今回も、犯人は、その場で射殺されてしまいましたが、その場で早急に、さらなる犠牲者を出さないためにという意は理解できますが、この犯行の背景にあるものの追求のために、なんとか、犯人を殺さずに話をさせ、事件の奥底にあるものを追求する機会を無くしてしまうことは残念でなりません。

 そして、この種のイスラム教徒によるテロが起こるたびに、善良なイスラム教徒(私の周りにもいます)がどれだけ心を痛めているかということも同時に思うのです。

 コロナウィルスの感染悪化で、テロもなりを潜めていた感があったフランスですが、学校再開、段階的なロックダウン解除の発表の翌日に、さっそく、このような惨劇が起こってしまうのですから、どちらにしても、フランスに穏やかな日が戻ってくるには、まだまだ長い道のりが待ち構えているようです。


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