マクロン大統領は、5月3日から、4段階に分けたロックダウンを解除していく日程を発表しました。数日前に、カステックス首相から、以前に発表されていた5月半ばからのロックダウン解除の日程については、週末にマクロン大統領から発表があることが知らされていたので、国民は、それを待っていました。
ここのところ、フランスでは、ロックダウンにしても解除にしても、実際の発表の前にその内容の概ねは漏れ聞こえてくるか、発表した途端に内容が変更になったり、中止になったり、グタグタの状況で、わけがわからないことが多くなってきています。
そして、ここへ来て、またマクロン大統領から発表されるとされていたロックダウン解除の日程は、プレスへの公開とマクロン大統領自身のツイッターで発表されるという前代未聞の公開の方法が取られました。
— Emmanuel Macron (@EmmanuelMacron) April 29, 2021
まずは、5月3日から、別の地域への移動禁止が終了し、中学校と高校が再開されます。(これは、前回の発表の時にすでに折り込み済みの内容です)
そして、5月19日には、現在閉鎖されているショップ、バー、カフェ、レストランのテラス(1テーブルあたり最大6人)、美術館、映画館、劇場、スポーツ施設が再開。これらの文化的およびスポーツ的な場所では、屋内で800人、屋外で1,000人の入場制限が敷かれます。
また、夜間外出禁止令の時間が、5月19日の午後7時から午後9時までにシフトされます。
6月9日からは、夜間外出禁止は午後9時から午後11時までに拡大され、バー、カフェ、レストランも屋内やスポーツホールで再開できます。オープンする文化的およびスポーツ施設の数は5,000人に増加します。見本市や展示会は、同じゲージで開催される場合があります。
その同じ日に、在宅勤務に関する指示は、企業レベルのソーシャルパートナーと協力して緩和されていきます。
そして、最終段階の6月30日には、夜間外出禁止は、撤廃されます。(ディスコはまだ閉鎖)
これが、若干感染が減少している傾向にあるとはいえ、現在も1日の新規感染者が平均3万人を下ることがなく、1日300人前後の死亡者を出し、集中治療室の占拠率が116%超(イル・ド・フランスでは、152%超)のフランスが出した今後のロックダウン解除の日程です。
もちろん、この計画には、「緊急事態に備えての中止・緊急ブレーキ」が用意されています。発生率が住民10万人あたり400例を超え、急激な感染増加の傾向が見られ、集中治療室が飽和状態になるリスクがある場合、再開はそこで停止されます。
現在のパリ、イル・ド・フランスは、残念ながら、そのロックダウン解除、再開停止のカテゴリーに入っています。このゲージを尊重するのであれば、パリを含むイル・ド・フランスの一部の地域は、ロックダウン解除の日程を進んでいくことはできないことになります。
しかし、この発表がなされる前の段階から、パリではすでにショップ再開の準備が始まっています。すでに、ロックダウンは、ロックダウンではないような状況にもなってきており、規則を尊重しない人が日々、増加しています。
多くの国民が前のめりに、日常生活再開を待っている状況です。失われていた日常が戻ってくるという楽観的なニュースは、どんどん広まっていきます。恐る恐る日常に戻っていくという感覚を持つ期間は、恐らくフランス人には、極めて短い、ほぼないと思います。
いつまで経っても、思うように感染が減少していかない先の見えない状況に国民は疲れ果て、段階的であっても、何らかの指標になるような目安がなければ、もう耐えられないのかもしれません。
みんながかつての日常を待ちきれずにいます。
しかし、この決断は、これまで一年以上の鬱憤が溜まっているフランス人が一気に街に出て、人と触れ合い、行動を爆発させ、感染を再爆発させ、第4波を迎える危険をはらんでいることは言うまでもありません。
ということは、いつでもこの日程が解除される可能性を含んだ発表であるということです。
昨年の6月のロックダウン解除では、「俺たちは、よくやった!」と勝利宣言をしたマクロン大統領ですが、現在の状況を見る限り、どんな選択をしても、厳しい結果しか期待できないマクロン大統領は、恐らく、これまでのように夜8時にマルセイエーズとともにテレビに登場して、大々的に国民に対して強く約束するような形の発表は避け、内容とは裏腹にインパクトの少ない形での発表の仕方を選んだと思います。
今回のロックダウンの段階的な解除の発表の仕方は、パンデミック以来、いつも強気の会見を行ってきたマクロン大統領が選んだ苦肉の策だったような気がしてなりません。
しかしながら、マクロン大統領のババだけでのババ抜き状態は、まだまだ続きそうです。
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