2021年2月12日金曜日

フランスが恐れるイギリス・南アフリカ・ブラジル変異種の拡大

  


 フランスでは、イギリス変異種に引き続き、南アフリカ・ブラジル変異種の感染拡大が心配され始めています。

 イギリス変異種は、その威力を拡大し続け、先週は、感染者全体の15%程度であったものが、今週には、20〜25%にまで拡大しています。

 そして、さらにモゼル県(フランス北東部・グラン・テスト地域)では、ここ4日間に南アフリカ、ブラジル変異種が300件も検出されており、さらに過去を遡れば、これに加えて200件(つまり合計500件以上)が検出されています。

 このモゼル県での変異種拡大については、ことに心配されているのは、この感染拡大が、海外旅行によるもの、あるいは旅行者からの感染でもなく、クラスターによる感染でもないことで、感染経路が全く不明の状態で、これだけ拡大してしまっていることです。

 南アフリカ・ブラジル変異種に関して、フランス政府がことさら心配しているのは、この変異種は伝染性がこれまでのウィルスに比べて、より伝染性が高く、再感染が可能なことです。しかも、ワクチンの有効性が低いというのですから、余計にたちが悪いウィルスです。

 また、このモゼル県の例を見てもわかるように、感染拡大の経路がわからないことからも、感染のシステムが掴めないことも、この変異種の不気味なところです。

 どこから来たかわからない・・でも、急に湧き出したように、気がついてみたら、こんなに感染者がいた・・そんな感じです。

 これらの変異種の特徴の一つが比較的、年少者・若い世代の間で感染が広まりやすいということから、モゼル県では、小学校、中学校、高校、大学など、全ての学校が12日(金)から閉鎖されることになりました。

 また、全国的にも地域ごとにバカンス明けを迎える全ての小学校において、唾液検査を大規模に展開し、一般化していき、週20万件のテストを行っていく方針を発表しています。

 これまでの鼻咽頭検査と違い、小さな子供にとっても不快感が少なく、受け入れやすく、検査の整合性もこれまでの検査と比較的遜色がないため(実際には、3%〜13%低下)に採用された模様です。

 いずれにしても、今後の感染拡大で最も心配されるのは、イギリス、南アフリカ、ブラジル変異種の感染拡大で、これまでも、昨年末から年明けにかけて、深刻な感染爆発を起こしている3カ国(イギリス、アイルランド、ポルトガル)は、いずれも変異種の影響を大きく受けている国であることがわかっています。

 すでに、年末から厳しいロックダウン状態が続いているヨーロッパの国々も次々とロックダウンの延長を発表しており、昨日もドイツが3月7日までのロックダウンを延長しましたが、ドイツが1日の新規感染者がかなり減少し、1万人を切った状態の現在でさえもロックダウンを延長するのは、このいくつかの変異種の感染拡大を恐れてのことだと言われています。

 ドイツは、昨年の3月から、コロナウィルス感染対策に対して、常にフランスでは注目されている存在ですが、現在は、非常に危険な状態を続けながらも、極力ロックダウンを避ける方針を取っているフランスとは、全く違う「厳しいロックダウンを続けて、感染をとことん減少させていく」体制を取っています。

 一度ロックダウンしてしまえば、下手に解除をすれば、これまでの努力が一瞬にして水の泡となってしまう可能性があり、ロックダウンせずに高い感染状態のまま綱渡りしていれば、ひとたび感染爆発が起これば、危機的な状況を生む可能性を孕んでいます。どちらにしても究極の選択です。

 ロックダウンを行っている周囲のヨーロッパ諸国は、当然のことながら、新規感染者はかなり減少してきており、昨日の段階では、ロックダウンをしないフランスは、新規感染者数は相変わらず、2万人以上というヨーロッパでトップの座を奪還しています。

 感染が減少してきている国々でさえ恐れている変異種に、この状況でフランスが再感染も可能であるという変異種の拡大を特別に警戒するのは当然のことです。

「ロックダウン回避するためにできることは全てやる!」と必死に頑張っているフランス。この危なっかしいギリギリの綱渡り状態で、いいかげん、よくねばるなぁ〜と半ば感心しつつも、次から次へと登場する変異種問題にハラハラさせられっぱなしです。


<関連>

「世界中が警戒しているイギリス変異種」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_14.html

「他国の感染悪化を余裕で語るフランスに唖然とする」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/12/blog-post_14.html

 

2021年2月11日木曜日

娘の日本への留学・再びキャンセル 日本の国立大学は4月以降の留学生を受け付けない

  


 本当なら、我が家の娘は、昨年の9月から、日本の国立大学の大学院に半年間、留学する予定になっていました。

 彼女の通うグランゼコールの最後の1年間は、ほぼ、海外でのスタージュや留学での予定で埋められていました。ところが、このコロナウィルスによるパンデミックにより、予定は、大幅に狂ってしまいました。

 海外留学を予定していた人の多くは、ここ1年間の世界の変わり様で、予定を変更せざるを得なくなった人が多いと思います。

 留学といえば、人生においてのなかなかの重大イベントです。留学する決断をするということも、なかなか勇気のいる決断ですが、それを諦めなければならないというのも、なかなかショッキングなことでもあります。

 前回の9月からの留学のキャンセルは、本当にギリギリまで返事を待って、「到着便、時間を知らせてください」という連絡をもらって、慌ててチケットをとってから出発2週間前になってのまさかのドタキャンで、せっかく取ったチケットもパーになり、その対応の悪さに怒りまくりました。

 その際に、9月からの留学はキャンセルになりましたが、一応、延期という形になり、4月からの留学ということに変更してもらっていたのです。

 ところが、1週間ほど前に、4月からの海外からの留学生は、受け付けませんという連絡が入り、娘の日本への留学は、キャンセルになってしまいました。

 現在の世界の感染状況や感染対策の仕方を見ていると、仕方ないとも思うのですが、彼女は日本人でもあり、72時間前までのPCR検査をして、2週間の隔離生活を過ごせば、普通に日本で生活している人とは、同じ条件になるのに、何で受け入れてくれないのだろう?と、日本の大学側の判断をとても残念に思っています。

 今回は、早めに知らせてくれただけ、まだマシですが、オリンピックの開催中止は決まっていないのに、留学生の受け入れ中止は早々に決めてしまうことも、少々、恨めしく思います。

 彼女は、日本人でありながら、日本には何回も行ったことはあっても、日本で生活したことはなく、長年に渡って、日本への留学やスタージュ(インターンシップ)の機会を探ってきていましたが、どうにも日本の大学も企業も、留学生やスタージュの受け入れに対して、あまり積極的ではありません。(特に企業でのスタージュ・インターンシップに関しては、その位置付けもヨーロッパとは、どうも観念的に違う印象)

 私は、フランスに留学したことはないので、詳しいことはわかりませんが、周囲の人から聞こえてくる話からは、奨学金、健康保険、住宅費援助など、海外からの留学生に対して、フランス政府は、とても寛大です。

 娘は、昨年、夏は、3ヶ月間、イギリスの大学の研究室でスタージュの予定にしていましたが、これも現地には行くことができませんでした。しかし、イギリスの大学は、リモートワークを受け入れてくださり、内容には、多少、変更があったものの有意義な3ヶ月を過ごすことができています。

 日本の大学は、リモートさえも受け入れてくれない模様で、とてもがっかりしています。

 このパンデミックによって、学業、就職などのタイミングに直面していた人の多くは、人生の重大な局面で、色々なことを断念せざるを得なくなってしまった人、予定が狂ってしまった人が大勢いると思います。

 特に人生の重大な転換期にこのパンデミックに遭遇してしまった人々はどれだけ悔しい思い、また不安な思いをしているかと思うと、単に気の毒という言葉では片付けられない気持ちです。

 娘にとっての学生の期間での最後のタイミングに控えていた彼女の念願であった日本への留学も、もうこれ以上先には延期することもできずに、完全に断念して、他の道を考えなければなりません。

 しかし、これも自分ではどうにも変えようのない現実で、これを機に彼女が日本への留学の代わりに選ぶ道が、「結局は、日本へ行くより良かったじゃない!」と言えるような道が開かれることを親バカな私は、ひたすら祈っているのであります。


<関連>

「娘の留学ドタキャン コロナウィルスによる被害」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/09/blog-post_20.html

2021年2月10日水曜日

このままロックダウンせずに乗り切ることは可能なのか? コロナウィルスによる死亡者8万人突破


Image
ワクチン接種よりも肉体美が話題を呼んだオリヴィエ・ヴェラン保健相


 昨日のテレビ番組のインタビューに応じたオリヴィエ・ヴェラン保健相が、現在のフランスの感染状況や感染対策について、「現在も非常に危険な状況にあることに変わりはないが、現在は、コントロールが不可能な感染拡大や医療崩壊は起こっていない」「このまま、ロックダウンしないまま、乗り切れる可能性もある」と発言したことが、大変な反響を生んでいます。

 また、ようやく承認され、接種が開始されたアストラゼネカのワクチンが南アフリカ変異種に対応しないために、南アフリカでのアストラゼネカのワクチン使用を停止になった騒ぎに対しては、自らがアストラゼネカのワクチン接種を行っているところを公開し、フランスでのワクチン戦略は変更しないことを明言しました。

 しかし、この大臣のワクチン接種は、アストラゼネカのワクチンの有効性云々以上に、ワイシャツを左半身脱いで、また、半身を隠した様子が妙に色っぽいとか、なかなか鍛えられた美しい肉体だとか、ワクチンそのもの以外の思わぬ方向で話題をさらっています。

 政府ができることなら、ロックダウンを回避して、このパンデミックを乗り切りたいと思っているということは、わかっていましたが、実際にテレビカメラの前で、「ロックダウンせずに乗り切る可能性もある」と公言することは、意味が違います。

 すでに数週間にわたり、感染者のうちのイギリス変異種の割合が増加しており(一週間で50%ずつ割合が増えている)、科学者、医師、労働組合等は、厳格なロックダウンを要求するために、もう何週間も声をあげ続けているのです。

 奇しくも、彼がこの発言をした日には、フランスのコロナウィルスによる死亡者数が、8万人を突破しました。死亡者数7万人を突破したのが、1月16日、1万人の増加に一ヶ月もかかっていない状況です。

 また、変異ウィルスは重症化する割合(集中治療室に入る割合)が高く、感染者自体は、目に見えて増加している状況ではないにも関わらず、集中治療室に入る人数は増加しています。

 オリヴィエ・ヴェランは、このインタビューの中で、感染状況、医療対応はもちろんのこと、社会的、経済的なバランスを大事に考えていると語っていますが、もはや、着々と増加しつつある死亡者数よりも医療崩壊が起こるかどうかに焦点が当てられています。

 現在の医療対応の状況は、新規感染者数こそ、10月末のような爆発的な上昇にはなってはいないものの、毎日の入院者数、集中治療室の患者数は、ほぼ2回目のロックダウン時と同程度にまで悪化している状態です。

 もっとも、ロックダウンという言葉の定義自体がもはや、疑問で、現在もロックダウンという言葉を使っていないだけで、実質的には、かなりの制限下にあり、レストランやカフェは当然、ずっと営業停止の状態で、一般の小規模の店舗の営業が認められてはいるものの、大規模なコマーシャルセンター等は、2回目のロックダウンでは営業が認められていた通信機器や電気製品店なども休業状態、部分的にはロックダウン時以上に厳しい状態が続いています。

 ロックダウン時には、外出許可が必要でしたが、それもほぼ、外出許可を携帯するかどうかだけのことで、実際には、外出できないわけでもありません。(距離の制限等はありましたが・・)

 こうして考えると、最初のロックダウン時のような、学校から役所などの全てが閉鎖されたロックダウンは別として、国民のショックを抑えるために「ロックダウン」というショッキングな言葉を使わずに、実は、ほぼロックダウンのような制限下のまま、なんとか爆発的な感染拡大を防ぎながら、時間稼ぎをしています。

 その間にワクチン接種を着々と進めながら、2月、3月の寒い時期を乗り切りさえすれば、それ以降は気候の変化の助けも借りることもでき、夏の終わりまでにはワクチン接種も終わらせ、次の秋のシーズンを迎えられることを目指しています。

 「ロックダウンせずに乗り切る」ということは、実は、「ロックダウン」という言葉は使わないというだけのような気もしてきました。


<関連>

「フランス 再びロックダウン・・少なくとも12月1日まで」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/10/12.html



2021年2月9日火曜日

パリで、たまに見かける子供に日本語を教えようとしない日本人の親 バイリンガル教育

  



 娘が生まれて以来、私は、何の疑問もなく、娘に日本語を教えることを自分の使命のように思っていました。日常では、私以外には、日本語を使う人がいない環境で、私が娘に日本語を教えることを諦めてしまえば、絶対に娘は日本語を話すことはできなくなってしまいます。

 日本語ができないということは、日本の私の家族や親戚、友人たちとも関わりを持てない、日本人でありながら、日本人ではないような、日本から一枚の壁を隔てた存在になってしまうということです。

 そして、私が娘にできる教育の中で、日本語を教えるということは、とりあえずは、私にしかできない、私ができることの中で、最も有意義な教育だとも思っていたのです。

 私自身は、やはり日本が大好きですし、海外に出てみれば、余計に、日本の良いところも優れているところも実感し、日本人であることを誇りに思っています。

 言語の習得には、適した年齢というものもあり、言葉を覚えていくときに、それを日常の言語として、自然に覚えていくことができれば、本人にとっては、こんなに楽に言語を習得する機会は、なかなかありません。

 そんな機会をみすみす逃す手はありません。

 それでも、一歩、家を出れば、100%フランス語の世界で、日本語を自然に話すことができるようにするのは、親の側からすると、なかなか根気のいることでもあります。

 私との会話は、日本語のみ、娘が小さい時は、家でのテレビは、ビデオやDVDでの日本の番組のみ、2歳になった頃から公文に通い、フランスの学校に行って、フランス語の読み書きを始める前から日本語の読み書きを始めました。

 毎日、仕事が終わって娘を迎えに行って、帰宅してから、食事の支度をしながら、公文の宿題を5枚ずつやらせるのが、日課でした。大変でしたが、公文をやらない子は日本には、行けない・・と、日本行きを餌にして、ずっと続けてさせてきました。

 そんな娘への日本語教育は、ほとんど私の執念に近いものでもありました。

 娘自身は、日本語を苦労して覚えたという感覚は全くなく、今では、ほぼ普通の日本人と遜色ないほどに日本語を話し、読み書きもできるようになりました。

 結果から見れば、当たり前のことが当たり前にできるようになっただけなのですが、海外在住の場合、子供を放置しておいては、あっさりと日本語ができない子になってしまいます。だって、日常生活には、必要ないのですから・・。

 それでも私は、自分の子供に日本語を教えることは、当然のことだし、私の義務であると思っていました。

 ところが、パリの街中では、たまに、小さい子供連れの日本人で、子供にフランス語で話している人を見かけます。日本語は、教えないとはっきりと言い切る人もいてびっくりすることもあります。

 自分の家族が日本にいながら、子供と自分の家族との繋がりを断ち切ってしまうのでしょうか? それぞれに事情はあるので、一概に否定もできませんが、子供の可能性を奪ってしまっているようで、どうにも残念に思います。

 子供が自然に言語を覚えるには、ある一定の期間しかないのです。もちろん、ある程度の年齢になってから、自分で勉強して語学を習得することはできますが、より楽に確実にできる機会を逃してしまっているのです。

 パリには、日本人でありながら、日本が嫌いな人もいるのも確かですが、海外で生まれ育った自分の子供を自ら、日本から隔離してしまうような状況に追い込むことには、不自然な気もします。何より、自分の生まれ育った国をそこまで嫌うのは、気の毒な気さえしてしまいます。

 また、科学的なデータに基づくものではありませんが、日本語のみに関わらず、複数言語を話す子供には、優秀な子供が多い気もします。これは、私の周りの外国人とその子供を見ていて感じることです。

 それだけ、親が子供の教育に対して熱心であるということもあるかもしれませんが、かなりの割合で概して学校の成績も良い子が多いのです。脳の発達などとも関係があるのかもしれません。

 パリの街中で、自分の子供にフランス語で話しかけている日本人を見かけるたびに、私は、もったいないなぁ〜と思ってしまうのです。


バイリンガル教育

<関連>

「バイリンガルに育てる方法」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/06/blog-post_24.html

「フランスの教育・学校・バイリンガル教育 ①」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/06/blog-post_7.html

「フランスの教育・学校・バイリンガル教育 ②」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/06/blog-post_8.html

「バイリンガルになった娘の日本語 複数言語を使う生活」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/06/blog-post_30.html

「夏の帰国時の日本の学校への編入体験 バイリンガル教育の生体験」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/07/blog-post_15.html

2021年2月8日月曜日

冬休みのバカンスでスペインに出かけるフランス人

  


 先週の冬休みのバカンス突入前のカステックス首相の会見では、バカンスに全く制限が敷かれなかったことには、私もとても、心配していました。

 しかし、もともと、冬休みのバカンスは、クリスマスや夏のバカンスとは違って、バカンスに行かない人も多いため、わざわざ制限するまでもなかったのかな? とも思っていました。

 ましてや、このシーズンのバカンスの一番人気であるスキー場も閉鎖されているままなので、例年に比べれば、格段にバカンスに出かける人は、少ないはずなのです。

 実際にSNCF(フランス国鉄)は、バカンス突入時のタイミングで、例年のような混雑はなく、混乱もないことを発表していました。

 フランス国内は、どこへ行っても18時の夜間外出禁止であり、レストランも、ほとんどの観光施設も閉鎖されているので、バカンスに出かけたところで、思うように楽しむことができず、移動でさえも、宿泊先に18時までに到着しなければならないわけで、制限が多くて、ハードルが高いのです。

 ところが、そのハードルを超えて、スペインやイタリアへバカンスに出かけているフランス人が多いことが、問題となっています。本当は閉鎖されているはずの国境を超えてです。

 スペインは、政府の方針の違いから、マドリッドなどは、レストランやバー、美術館等も営業していて、夜間外出禁止も21時までというフランスと比べると格段に緩い規制です。

 前回、一回目のロックダウンの際もイースターのバカンスの時に国境を超えてスペインのリゾート地に出かけるフランス人が後を絶たずに問題となり、当時、スペインもロックダウン状態だったことから、スペイン人からのひんしゅくを買ったこともありました。

 しかし、今回は、スペインでは、比較的、規制の緩い、自由な生活が許されており、普通の日常を求めてフランス人がやってくると言って、取り立ててスペインで問題になることはありません。

 フランス人は、フランスでは長い期間営業されていないレストランやバーなどで普通に人と食事をする、かつて、当たり前であったはずの日常生活を楽しむためにスペインやイタリアに出かけているのです。

 中でも、マドリッドのレストランなどは、お客さんのうちのかなりの割合はフランス人だと言います。

 すでにEU圏内とはいえ、仕事や特別な理由以外で国外への出入国は禁止されているはずなのですが、公共交通機関を使わずに行ける地続きの国へ、車などでの国境突破は、最初のロックダウンの際にも問題になっていましたが、懲りずにバカンスに出かける人が後を絶ちません。

 スペインのレストランなどで、インタビューを受けているフランス人は、悪びれることもなく、「これが本来の日常生活だ!」と満面の笑みで答えている様子にやるせない気持ちになります。

 その多くは若者ですが、この期に及んで、まだ、「若者は大丈夫」という神話が根強いことを思い知らされます。

 スペインは、フランスのような制限がないからとはいえ、感染自体は、実はフランスよりもさらに深刻な状況なのです。1日の新規感染者数は、ヨーロッパで一番多い状況がもう数週間も続いているのです。

 もともと、フランス人にとって、スペインはバカンスに出かける場所としては、人気の国で、ちょっと余裕のある人などは、セカンドハウスをスペインに持っているという人も多いのです。

 もっとも、スペイン側は、これらの観光客からの収入も含めての経済効果を見込んでの緩い制限を押し通しているわけですから、フランスからの観光客とてウェルカムなのです。

 年末年始の制限に失敗した結果と言われているポルトガルの現在の悲惨な医療崩壊の状況が、この制限の甘いスペインに、果たしてはフランスまでやってきてしまう危険は、すぐそこにあるのです。

 これらの束の間の、以前のような日常を求める気持ちはわかりますが、今、束の間の楽しみのために、どれだけの犠牲者を生み、今後、さらに長い制限下の生活が続くことになるのかを考えると許せない気持ちです。

 バカンスが終わる2月後半から3月にかけての感染拡大が心配されています。

 このタイミングは、まさに一年間、まるまるコロナ禍に飲み込まれ、ちょうど一周して、また元の1回目のロックダウンの時のような感染爆発が起こった時期と重なります。

 

<関連>

「バカンス好きにもほどがある!フランス人の国をまたぐコロナウィルス外出禁止違反」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/04/blog-post_96.html

「バカンスを何よりも優先するフランス人 フランスに Go Toキャンペーンはいらない」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/07/blog-post_12.html

2021年2月7日日曜日

フランスの銀行と日本の銀行

  


 

 私がフランスに来て以来、フランスの銀行口座は、フランスに到着してすぐに作った口座が一つのみで、ずっと20年以上、過ごしてきました。

 私など、大してお金を持っているわけでもなく、いくつもの銀行にばらばらと口座を持っていても、私が死んだ時にできるだけ、面倒をかけないように、シンプルにしておこうと思っていたのです。

 私がこれまで使っていた銀行は、いわゆるフランス大手の銀行ではなく、主人の仕事の関係で、外務省関係の人が多く使うという、ちょっと特殊な銀行で、パリにも店舗が一店舗しかなく、用があれば、そこまでわざわざ出向かなければならないので、ちょっと不便だな・・とは思っていたのですが、これまで長いこと、フランスにありがちなトラブルらしいトラブルもほとんどなく、これがフランス人かと思うくらい、対応も早く、いつも感じがよく、なんとなく、そのままにしていたのです。

 わざわざ銀行に行くのは、面倒だとはいっても、振り込みや支払いもオンラインやカードで済むようになったし、フランスでは、最近、随分と下火にはなったとはいえ、振り込みの代わりに小切手で支払うことも多かったので(特に払った払わないといういざこざ対応のために、小切手の番号で、これで払ったという証明にすることが簡単なので、これまで私は、結構、小切手も使っていました)、実際に銀行に出向くというのは、クレジットカードの期限が切れて新しいカードを受け取りに行く時か、小切手が切れた際に受け取りに行くくらいしか、銀行に行くことは、ありませんでした。

 それが一昨年あたりから、口座管理料(日本の銀行には、ないようですが、フランスでは、口座を持っているだけでお金がかかります)の値段がグングン上がり出したことが、気になり始め、わずかではありますが、一年分の利息が入った時点で、口座管理料がもっと安く、近所にも支店がある銀行に切り替えようと思っていたのです。

 ところが、昨年から半年以上続いていた私のビザ(滞在許可証)書き換えがすんなり進まなかったことから、(ビザがないと公的な手続きは何もできない)銀行口座のことも伸ばし伸ばしになっていました。

 今年に入って、銀行から送られてきた口座管理料は、年間で200ユーロ以上(約25,000円)、(クレジットカードの手数料等は別)大した金額を管理してもらっているわけでもないのに、こんなに取られるのか!と憤慨し、そこまでお金のかからない新しい銀行の口座開設を申し込んだところです。

 そういえば、フランスの銀行には、通帳というものもありません。

 クレジットカードにしても、フランスのカードは、日本のようにポイントを貯めるとか、買い物をした分でマイレージが貯まるとか、そんなお得なシステムもないのは、日本のシステムが恨めしい限りです。

 日本の銀行も金利は、定期預金でも、普通預金でもほぼ変わらないほどの本当にほぼないに等しいくらいの金利ですが、(フランスの銀行の普通預金には、もともと金利というものは、ありません)フランスも金利がここ数年でグングン下り、比較的金利が良いと言われていたLivret A(リブレA)でさえも0.5%にまで下がっています。

 口座開設にあたっては、ネットで手続きを済ませたのですが、銀行から電話があり、予約をとって、足りない書類を持って来てくださいと言われて、久しぶりに銀行に行って、改めて日本の銀行とは違うなぁと思ったのは、人が極端に少ないことや完全予約制であることです。

 予約制は結構なのですが、手続きが一度で完了しないところは、さすがのフランス、最低でもあと一度は行かなければならないようです。

 私は、日本の口座もそのままにしているので、日本に帰国する度になんだかんだと銀行に出向く用事もあるのですが、ここ数年は、帰国する度にこの支店はここに統合されました・・と店舗が減っていきますが、銀行には、お客さんももちろんのこと案内をする人などの数の多いこと・・。

 日本はサービスが至れり尽くせりなので、それなりに人出もいるのかもしれないので、一概に、同じように語ることはできませんが、フランスの銀行と日本の銀行を客観的に見たら、まるで別の機関を運営しているように感じます。

 私は、金融機関については、詳しくないので、どういうわけでこの違いが起こるのかはわかりませんが、考えてみれば、とても不思議なことです。

 たまたま、私の使っている銀行(日本の)だけのことなのかもしれませんが、まず、銀行に入るといる案内係って必要なのか?と思うのです。そして、聞きたいことがあっても、案内係が役に立ったためしがないのです。

 驚いたのは、前回、帰国した際に必要に迫られて、口座を開く羽目になった銀行から、口座開設後に書留親展で封書が届き、何事だろうか?と中を確認すると、担当の行員からの手書きの挨拶状でした。

 口座を新規に開設してくれた人には、手書きの挨拶状を送るというのが、その銀行のマニュアルなのかもしれませんが、いかにも昔の日本の年配の世代の人が言いそうなしきたり?が、今の日本でも、続いているのかということにちょっと唖然としたのでした。

 それとも、私がフランスの生活に慣れてしまって、ドライになってしまったのでしょうか?

 あまり用をなさない案内係や手書きの挨拶状を書留で送るような余分な人を雇うくらいなら、もう少し利息がなんとかならないものか?と思ってしまいます。

 これまで、色々と口座引き落としや自動振り込みにしているものを変更するのも面倒なこともあって、放ったらかしにしていたフランスの銀行の乗り換えも、手続きは、銀行側が全てやってくれるということで(ちゃんとやってくれるか、できるかは、また別問題)、口座管理料やカードの手数料など、結構、差があるので、たまには、見直しするべきかもしれません。

 現在、外出制限で、バカンスにも行けない中、この際、こういう作業を少しずつやって行くのに、良いタイミングなのかもしれません。


<関連>

「私がフランスで、未だに小切手を使う理由」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/08/blog-post_15.html

「滞在許可証更新手続きのトラブル アクセス不能なフランスのお役所」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_22.html

 


2021年2月6日土曜日

オー・ド・フランスの高齢者施設で111人中106人感染のクラスターを起こした新しい変異種の出現

    


 オー・ド・フランス、エーヌ県にある高齢者施設でクラスターが発生していたことが公表され、その感染率等のあまりの数字の高さから、心配する声が上がっています。

 1月の初旬に最初の感染が確認されたこの高齢者施設では、すぐに衛生管理を強化し、隔離等の措置と取ったにもかかわらず、111人の居住者のうち106人が感染し、うち27人が死亡するという悲惨な状況を生んでいます。

 この感染に関するサンプルを検査した結果、これまでにあまり普及していない変異種の存在が明らかになっています。この変異種は、昨年12月末から中東、アメリカで、1月からはスイス、フランス(ブルゴーニュ)で検出されているものと同種のものであると判明しています。

 現在のところは、この新たな変異種がこれまでのコロナウィルス(オリジナル)と比べて、より伝染性、死亡率が高いものかどうかは確認されていません。

 CNR Institut Pasteur(パスツール研究所・国立生物学・医学研究所)は、イギリス、南アフリカ、ブラジルで発見された変異種と同じように、「懸念される変異種」としては、その新変異種を考慮していませんが、このクラスターの発生により、この変異種に関する再調査が行われることになっています。

 しかしながら、111名中106人感染、27名死亡という事実は見過ごすことはできず、これが、高齢者施設というリスクの高い環境であったことが原因であったのか? また、この施設の衛生管理に問題があったのか? 確認はできていません。

 フランスでは、昨年3月からのロックダウン時には、禁止されていた高齢者施設の面会は、以後、解禁されており、外部からの感染も充分に考えられるところです。

 また、開始されているワクチン接種も高齢者施設を最優先にすでに開始しているにもかかわらず、高齢者施設において、このような極度の割合での感染が起こり、クラスターが発生しているということは、ワクチンの有効性にも疑問が生じてきてしまいます。

 もっとも、この高齢者施設の住民のどの程度がワクチン接種を済ましていたのかどうかは、わかりません。

 どちらにしても、少しでも気が緩み、衛生管理が疎かになれば、このようなクラスターは、あっという間に起こる状況にあり、特に高齢者施設のようなリスクの高い場所での面会の制限などは、あって然るべきではないかと思っています。

 ただし、この地域の保健庁は、ここ一週間、職員の間に新しい感染は起こっていないと明言しています。

 フランス人は、もともと日常を清潔に保つ習慣がない人たちなのです。日本人が普通の日常生活送っている状況がおそらく、フランス人が現在、感染にすごく気をつけて生活している状況なのではないかと思うことがあります。

 フランスは、家の中を土足で歩き回り、一度使ったティッシュは再度使わずに捨てましょうと厚生省が呼びかけなくてはならない国なのです。

 ウィルスは、変異していく性質を持っているものですが、また、このクラスターの発生により、新しい変異種の懸念がフランスでは起こり始めているのです。


<関連>

「フランスの駅とトイレの先進国とは信じ難い臭さ」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/08/blog-post_27.html

「フランスのゴミの収集 フランス人の衛生観念」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/02/blog-post_6.html