フランスでは、イギリス変異種に引き続き、南アフリカ・ブラジル変異種の感染拡大が心配され始めています。
イギリス変異種は、その威力を拡大し続け、先週は、感染者全体の15%程度であったものが、今週には、20〜25%にまで拡大しています。
そして、さらにモゼル県(フランス北東部・グラン・テスト地域)では、ここ4日間に南アフリカ、ブラジル変異種が300件も検出されており、さらに過去を遡れば、これに加えて200件(つまり合計500件以上)が検出されています。
このモゼル県での変異種拡大については、ことに心配されているのは、この感染拡大が、海外旅行によるもの、あるいは旅行者からの感染でもなく、クラスターによる感染でもないことで、感染経路が全く不明の状態で、これだけ拡大してしまっていることです。
南アフリカ・ブラジル変異種に関して、フランス政府がことさら心配しているのは、この変異種は伝染性がこれまでのウィルスに比べて、より伝染性が高く、再感染が可能なことです。しかも、ワクチンの有効性が低いというのですから、余計にたちが悪いウィルスです。
また、このモゼル県の例を見てもわかるように、感染拡大の経路がわからないことからも、感染のシステムが掴めないことも、この変異種の不気味なところです。
どこから来たかわからない・・でも、急に湧き出したように、気がついてみたら、こんなに感染者がいた・・そんな感じです。
これらの変異種の特徴の一つが比較的、年少者・若い世代の間で感染が広まりやすいということから、モゼル県では、小学校、中学校、高校、大学など、全ての学校が12日(金)から閉鎖されることになりました。
また、全国的にも地域ごとにバカンス明けを迎える全ての小学校において、唾液検査を大規模に展開し、一般化していき、週20万件のテストを行っていく方針を発表しています。
これまでの鼻咽頭検査と違い、小さな子供にとっても不快感が少なく、受け入れやすく、検査の整合性もこれまでの検査と比較的遜色がないため(実際には、3%〜13%低下)に採用された模様です。
いずれにしても、今後の感染拡大で最も心配されるのは、イギリス、南アフリカ、ブラジル変異種の感染拡大で、これまでも、昨年末から年明けにかけて、深刻な感染爆発を起こしている3カ国(イギリス、アイルランド、ポルトガル)は、いずれも変異種の影響を大きく受けている国であることがわかっています。
すでに、年末から厳しいロックダウン状態が続いているヨーロッパの国々も次々とロックダウンの延長を発表しており、昨日もドイツが3月7日までのロックダウンを延長しましたが、ドイツが1日の新規感染者がかなり減少し、1万人を切った状態の現在でさえもロックダウンを延長するのは、このいくつかの変異種の感染拡大を恐れてのことだと言われています。
ドイツは、昨年の3月から、コロナウィルス感染対策に対して、常にフランスでは注目されている存在ですが、現在は、非常に危険な状態を続けながらも、極力ロックダウンを避ける方針を取っているフランスとは、全く違う「厳しいロックダウンを続けて、感染をとことん減少させていく」体制を取っています。
一度ロックダウンしてしまえば、下手に解除をすれば、これまでの努力が一瞬にして水の泡となってしまう可能性があり、ロックダウンせずに高い感染状態のまま綱渡りしていれば、ひとたび感染爆発が起これば、危機的な状況を生む可能性を孕んでいます。どちらにしても究極の選択です。
ロックダウンを行っている周囲のヨーロッパ諸国は、当然のことながら、新規感染者はかなり減少してきており、昨日の段階では、ロックダウンをしないフランスは、新規感染者数は相変わらず、2万人以上というヨーロッパでトップの座を奪還しています。
感染が減少してきている国々でさえ恐れている変異種に、この状況でフランスが再感染も可能であるという変異種の拡大を特別に警戒するのは当然のことです。
「ロックダウン回避するためにできることは全てやる!」と必死に頑張っているフランス。この危なっかしいギリギリの綱渡り状態で、いいかげん、よくねばるなぁ〜と半ば感心しつつも、次から次へと登場する変異種問題にハラハラさせられっぱなしです。
<関連>
「世界中が警戒しているイギリス変異種」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_14.html
「他国の感染悪化を余裕で語るフランスに唖然とする」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/12/blog-post_14.html