2021年1月25日月曜日

フランスの3回目のロックダウンは、決定的

  


 フランスの3回目のロックダウンは、もはや、するかしないかではなく、いつ、どのようにするかという段階に入っているようです。フランスの感染状況は、急激に拡大してはいませんが、週平均、1日の感染者が2万人前後という高い数字をずっと保ち続けてながら、じわじわと増加しており、集中治療室の患者数もこれにつれて、少しずつ増加し、現在は、2,965人(1月24日現在)とほぼ、3,000人のボーダーラインに限りなく迫りつつあり、これは、前回のロックダウンに踏み切った時と同じレベルにまで達しています。

 しかも、現在、最も懸念されているのは、イギリス変異種を始めとする南アフリカ、ブラジルなどの変異種の拡大で、新規感染者の20%がイギリス変異種による感染が占めているポルトガルのように、感染が急速に拡大してしまうことを恐れています。

 すでに年末年始にかけて感染拡大が深刻になり、新規感染者の増加だけでなく、多くの死者を出し、ロックダウン状況にあるイギリスやドイツなどに比べると、一見、感染の急激な拡大はみられないフランスは、この期に及んで、「フランスは、ヨーロッパの中では、最も感染対策ができている」などと、お得意の自画自賛の姿勢を崩していませんが、その実、ロックダウンの効果が表れ始めているドイツやイギリスに比べると、なかなか微妙な数字を常に保ち続けており、今のフランスの状況は、単にドイツやイギリスに比べて、早い時期に1日6万9千人という驚異的な新規感染者数を叩き出したために、ロックダウンを早い時期に行った結果であり、その後のイギリス変異種の出現から、イギリスからの入国制限を慌てて行ったものの、実際には、この変異種がかなりの割合で蔓延し始めていることは、幼少者の感染拡大などの数字を見ても明らかです。

 これからが怖いところで、この変異種による感染拡大の波を迎えるかもしれないにあたって、フランスはすでに集中治療室が3,000近く埋まっている状態で迎えてしまうことで、ここから、急激に感染拡大した場合は、間違いなく医療崩壊まっしぐらになります。

 あくまでも経済をできるだけ維持し、学校も閉鎖しない状態を保ちたいフランスは、夜間外出禁止を18時に前倒しにした効果を期待していますが、一週間たった現在もその顕著な効果は確認されていません。

 学校に関しても、どちらにしてもフランスの学校は、あと10日ほどで冬のバカンスに突入するために、その学校のバカンスのタイミングに合わせた形でのロックダウンを考えているのではないかと思われます。

 科学評議会の議長が、少なくとも3週間のロックダウンは必須であると発言しているとおり、あらゆる状況(感染状況や変異種拡大の影響等)を考えてもロックダウンは確実ですが、あとは、そのタイミングや方法(地域的なものにするか、制限の範囲、年齢等)を検討している段階です。

 現在すでに長い期間営業停止されているレストランやカフェの営業停止が先んじて少なくとも4月6日までと延長されたり、3月に予定されていたバカロレアのスペシャリテの試験が中止になり、ずっと先の予定がどんどん中止になっていることも、当然の措置であると思いつつ、政府が目先のロックダウンを一日延ばしにしつつも、2月から3月にかけての感染爆発を充分に見据えている不気味な動きであることを感じずにはいられません。

 また、イギリス変異種に関しては有効性は変わらないとされていたワクチンも、南アフリカ変異種に関しては、有効性を40%低下させるという研究結果も発表されており、世界各国が躍起になっているワクチン接種の効果も効果が危うくなり、まさにウィルスの進化と人間の戦いのいたちごっこのようで、このパンデミックがさらに長く続きそうな気配がしています。


<関連>「学校閉鎖に踏み切る基準 フランスの年少者の感染増加」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_19.html

「世界中が警戒しているイギリス変異種」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_14.html

2021年1月24日日曜日

パリ15区での14歳の少年への集団襲撃事件 


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 1月15日(金)にパリ15区・ボーグルネルで14歳の少年が12人の集団によって殴る蹴る、終いには、バットやハンマーまで使って長時間にわたっての暴行を受ける、恐ろしい画像がツイッター上で拡散されて大問題になり、同時に彼への支援メッセージが後を絶ちません。

 少年は、複数の友人と共にいましたが、この突然の襲撃に遭遇し、友人とともに逃げる途中で、運悪く転び、彼一人がターゲットにされた模様です。

 彼は、その後、まもなく病院に運ばれ、6時間にわたる手術の後、昏睡状態に陥り、意識不明の重体です。彼は、現在も挿管状態で、頭蓋外傷、脳と頭蓋骨の間の血腫、脳挫傷、腕、指の骨折を負っています。

 パリ検察庁は、「集団による殺人未遂事件」として、捜査を開始していますが、まだ犯人は、特定されていません。

 この事件で私が驚いたのは、この事件のあまりに残酷な暴行の模様はもちろんのことですが、この事件が起こったのが、パリ市内では、特に危険と思われている地域ではなかったことです。

 パリ15区は、観光客には、あまり注目される場所ではありませんが、16区ほど地価が高いわけでもないわりには、比較的安全で、在仏日本人の多い地域でもあるのです。

 パリ日本文化会館(Maison de la culture du Japon à Paris)などもあり、韓国レストランなどが多い地域でもあります。

 何よりボーグルネルと言えば、パリ最大級のモダンなショッピングモールで有名なところで、とてもそんな残忍な犯罪と結びつくようなイメージではないのです。

 被害者の少年の母親は、沈痛な面持ちで、しかし冷静な態度で、自らマイクを持ち、テレビのインタビューに答え、まるでレポーターのように、淡々と落ち着いて、息子の被害状況を説明し、「彼は、優等生で、敵を作るタイプの人間ではなく、とても誰かから怨みを買うようなことは考えられません。彼は、一週間昏睡状態が続いていましたが、少しだけ回復の兆しが見え始めました。警察も政府も力付けてくれていて、捜査も進行中ですが、犯人は特定されていません。この事件を目撃した方がいたら、情報を警察に連絡してください」と堂々と顔を出して、訴えかけていました。

 思っても見なかった15歳の息子の事件を堂々とテレビの前で冷静に語ることができる母親に感心したとともに、この比較的安全と思われていた地域で、このような恐ろしい事件が起こることに恐怖を感じるのです。

 事件の真相はまだわかっていませんが、これが、特に彼を狙ったものではなく、無差別に行われた暴力であったとしたら、それは余計に恐ろしいことでもあります。

 コロナウィルスによる様々な制限を強いられているストレスの多い生活が続く中、人々の心も荒れて、犯罪も増加しています。ストレスの発散をこのような暴力的な方法で発散させている一部の人間が、コロナ以外の恐怖を煽っています。


<関連>「ノエルに向けて治安の悪化するパリ」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/12/blog-post_12.html



 







2021年1月23日土曜日

ディエップの病院で260人感染のクラスター発生 ワクチン接種は医療従事者優先にするべき

  


 フランスでは、ディエップ(ノルマンディー地域圏)の病院で、医療従事者141人と患者123人にコロナウィルス感染が拡大するクラスターが発生しています。病院でのクラスター発生は、深刻な事態です。

 ディエップは、イギリス海峡に面した港町で、この港町の病院での急激な勢いでのクラスター発生には、イギリス変異種の影響が強いと見られています。

 この病院では、医療従事者の感染に加えて、コロナウィルスによる入院患者の増加により、緊急ではない手術の30%は、延期せざるを得ない医療逼迫状態に追い込まれています。

 なぜ、ここまで感染が拡大してしまったのか? しかも病院で、医療従事者の間で・・。

 フランスでは、これまでに96万人へのワクチン接種が行われていますが、最優先されているのは、あくまでも高齢者で、医療従事者に対しても50歳以上という制限がつけられています。

 コロナウィルスの治療の第一線で働く、感染リスクが最も高いと思われる医療従事者に対して、ワクチン接種に年齢制限が敷かれていることは、おかしな話です。医療という現場で働く人々は、たとえ感染して重症化する可能性が低かったとしても、感染を拡げてしまう可能性があるのです。

 感染拡大が進んでいる今は特に、彼らこそがワクチン接種を優先されるべきなのです。

 これに関しては、日本は、未だワクチン接種が開始されていない状況ではありますが、政府が示しているコロナウィルスワクチン接種の方針では、医療従事者へのワクチン接種を最優先にしていることは、とても賢明なことだと思っています。

 ましてや、現在、フランスは、ワクチン接種の拡大に懸命になっているものの、ワクチンの供給が間に合っていない状況で、ワクチン接種を急ぐばかりで空回りしている感が否めません。

 現在、ワクチン接種の権利がある75歳以上の一般の高齢者でさえも、予約を取るのも大変で、家から遠い場所に行かなければならなかったり、やっと予約が取れて出向くと、ワクチン切れの状態だったりするアクシデントも起こっています。

 フランスの感染状況は、劇的な感染悪化ではありませんが、徐々に、しかし、確実にじわじわと悪化している微妙で危険な状態が続いています。波が急激に高くならずに徐々に上昇している状況は、知らず知らずのうちにわかりづらい形で自覚しづらい状態で、悪化しているだけに、余計に始末が悪いとも言えます。

 とはいえ、余程のことがない限り、継続すると言っていた学校も、クラスター発生のために閉鎖される学校が増え始め、もはや3回目のロックダウンは避けられない状況であると、誰もが思っています。

 政府は、夜の外出禁止を18時に前倒しした効果が現れることに僅かな期待を抱いているようですが、現実的には、感染悪化の顕著な数字が表れるのを待っているような状態で、同時に、3回目のロックダウンをどのような形にするのか(制限の内容や地域、方法、期間など)を手探りしているようです。

 夜の外出禁止を18時に早めたことで、スーパーマーケットなどの店舗は、朝7時半からの時間前倒しの営業に切り替えたり、日曜日も営業するなどのフランスとしては、異例の対応を取り始め、必死にこの制限に対応していますが、そこまでしても感染の威力は、一向に抑えることができないことは、歯痒いばかりです。

 ワクチン接種が現在、多くの国ではリスクの高い(致死率の高い)高齢者を中心に必死で行われているのが、果たして正しかったのかどうか? と、私は思い始めています。

 感染の抑制をワクチンに頼るならば、医療従事者はもちろんのこと、仕事に出なければならない人々、感染を拡げる可能性の高い人々こそがワクチンを接種しなければならないのではないだろうか?と、チラと頭をかすめたりしているのです。

 しかし、現在のところ、ワクチンの効用性もどの程度なのかは、まだわかりません。即効性があるのかどうかもわからないし、かなりの割合でワクチン接種が進んでいるイスラエルでさえも感染の拡大は止まっていません。

 フランスの専門家は、このままの状態を続ければ、3月には、フランスは、再び、昨年同様、あるいは、昨年以上の壊滅的な状況が怒ると警告を発しています。

 人々が感染回避の努力をすれば、その形を変化させながら、威力を発揮し続けるコロナウィルスにどうしたら、人間は打ち勝つことができるのか?

 3度目のロックダウンで3度目の正直・・感染を止めることができるのか? オリヴィエ・ヴェラン保健相は、今年の8月末までにフランス人全体のワクチン接種を終える予定であることを発表しています。

 あくまでも予定ですが・・。


<関連>「ワクチン問題、さらに混乱状態のフランス」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_6.html

「フランスでコロナウィルスワクチンが浸透しにくい理由」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_12.html

 

 

2021年1月22日金曜日

滞在許可証更新手続きのトラブル アクセス不能なフランスのお役所

 


 私のフランスの滞在許可証は、10年ごとに更新するもので、昨年のロックダウン中にその更新手続きの時期が重なってしまったことが、そもそもの不運の始まりでした。

 いつもなら、滞在許可証の期限が切れる数ヶ月前に、更新のための必要書類と、この日に書類を提出しに来てくださいという通知が届くのですが、今回は、それが届きませんでした。

 何回か電話しましたが、「サイトを見てください!」とだけ言われて、電話は切られ、仕方なくメールで問い合わせると、しばらくして、「今は、手続きが滞っているから、そのうちレターが届くまで、そのままで良いです」との回答。

 なんとも落ち着かない状態が続いていましたが、それから一週間くらいして、更新手続きの呼び出し状が届きました。

 3月から5月にかけての最初のロックダウンでは、ほぼ、全ての人が外出できなかったし、お役所も閉まっていたので、その間の手続き分が滞っているので、仕方なかったとも思いますが、指定された日時に出向くと、もの凄い人。

 日時が決められているのになぜこの状況? しかも、いつものことながら、すこぶる感じが悪いのです。まるで、犯罪者を追いやるような人の整理の仕方にウンザリでした。

 しかし、長時間を要したものの、その日は、書類を提出し、「新しいカードができたら、SNSで連絡します。」と言われて、とりあえずの仮のカードをもらいました。

 その仮のカードの期間が6ヶ月間と異様に長かった時に、嫌な予感はしましたが、まあ、さぞかし、手続きをする人が溜まっているのだろう・・さすがに6ヶ月もあれば、大丈夫だろう・・くらいに思っていたのが甘かったのです。

 私の仮のカードの期限は今年の1月5日までで、なかなか連絡が来ないと思ってはいましたが、この間には、再び、2回目のロックダウンまで挟まったので、また遅れているのだろうと思っていました。

 しかし、この仮のカードの期限の1ヶ月前になっても連絡が来ない状態に、さすがに、私は、焦り始めました。12月は、クリスマス、年末年始と、ただでさえ働かないお役所は、ますます働かなくなり、機能が著しく低下するからです。

 それからは、何回電話しても、「サイトでアクセスしてください!」と言われて、ガチャンと切られ、何回メールを送っても、何の返答もありません。

 これはどうにもならない!と、役所宛に書留で手紙を送りましたが、それでも返事はないままに、とうとう年を越してしまい、ついに期限が切れてしまいました。

 今回は、仮のカードの期限が多少切れても大丈夫・・などという確認も取れない状態で、電話もダメ、メールもダメ、手紙もダメで、全く、アクセス不能です。

 直接、出向いても、予約以外は受け付けないと言われることは承知していましたが、周囲の人に相談しても、「とにかく、直接、行ってみるしかないよ!」と言われて、入れてもらえなかった時は、せめて、渡して来ようと、一度、提出した書類を再び全て、揃えて、手紙も添えた一揃えを持って役所にも再び出向きましたが、役所前には、警官が立ちはだかり、どうしても入れてもらえません。

 警備の警官の方も自分の言われた「予約のない人を入れない」という仕事をしているだけなので、彼らには、それ以外の人を通す権限もありません。

 せめて、受付に用意した手紙と書類を置いてこようと、受付だけにでも行かせて欲しいと頼んでも、受付さえも、コロナ対策のために閉鎖されているとのこと。持って行った書類を渡してくることさえできませんでした。

 このままでは、私は、不法滞在者です。

 絶望的な気持ちで私は、家に帰り、フランス人に相談すると、この種のトラブルの相談に乗ってくれる機関に問い合わせてくれました。

 その機関は、すぐにメールに返信をしてくれて、すぐに弁護士を紹介してくれました。こうなったら、法に訴えるしかないということです。彼女もフランス人だけあって、「満足に働かない役所の人のために、絶対に引き下がってはいけない!諦めちゃいけない!」と落ち込んでいる私を励ましてくれました。

 彼女は、他の色々なケースも調べ上げ、滞在許可証の申請、更新手続きに関して、多くのトラブルが起こっていること、そのためのデモまで起こっていることを教えてくれました。

 しかし、どれだけ多くのトラブルが起こっていようと、それが許容できるものでも、安心できることでもありません。

 年末年始にかけて、いくらこちらが問い合わせても、アクセス不能の状態に、私は、不安が募り、「こんな思いをするくらいなら、もう日本に帰ろうか? いや、滞在許可証がないならば、帰るしかないのではないか?」などと鬱々と夜もよく眠れない日々でした。

 そして、弁護士に送る書類も手紙も全て揃えて、明日には送る・・と思っていた時に、まるで、何事もなかったように、役所から、「あなたの滞在許可証は、すでにできています。このナンバーでサイトで予約をとって、225ユーロの収入印紙とこれまでの滞在許可証、仮のカードを持って、取りに来てください」とメールが入りました。

 全く、何というタイミングなのだろうか? このタイミングで、12月に私が送った手紙を彼らがようやく目にしたということなのでしょうか? 朗報ではありましたが、どうにも狐につままれたような、俄には信じがたい気持ちでした。

 そして、昨日、滞在許可証の受け取りに行くと、あいも変わらず、役所の前には、凄い行列、予約は、人が溜まる前の朝一番に入れたのに、長い行列に怒声を浴びせる警官。

 もうここ一ヶ月のことで、疑心暗鬼になっていた私は、カードを受け取って、しっかり内容を確認するまでは、安心できないと緊張していました。

 しかし、中に入ると、さすがに朝一のこと、大して待たされることなく、あっさりカードを受け取りました。記載されている内容に誤りがあったら、この場ですぐに言わなければ・・と思っていた私は、カードの内容もその場でチェックしてまたビックリ!特別に申請したわけでもないのに、カードは、CARTE RESIDENT PERMANENT(永住)になっていました。

 別に文句をつけることでもないので、そのまま受け取りましたが、この永住になった経緯はよくわかりません。調べてみると、10年の滞在許可証を2回以上更新した場合は申請可能だとなっているのですが、特にそのための申請をしなくても自動的に変更されることは知りませんでした。

 とはいえ、10年後の書き換えがないわけではなく、これは、フランス人のIDの書き換えも15年に一度はしなくてはならないので、同じと言えば、同じです。

 私が何度となく送ったメールにも、手紙にも、結局のところ、返事はないままに、突然の「カードができてます」のメールでおしまい。ここ数ヶ月のゴタゴタは、何だか責任の所在がわからないままに、まるで何もなかったように消えていきます。

 結局のところ、カードの更新は済んだので、良いと言えば良いのですが、役所の不備が全くなかったことのようになってしまうこの状態。

 問題が表面化しないのですから、改善されることは、なさそうです。


<関連>「やっぱりウンザリする10年に一度の滞在許可証の更新」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/07/blog-post_7.html

 

2021年1月21日木曜日

FFPマスクの義務化の是非とフランス人の義務と補償と権利

  


 どうやら、イギリス変異種がフランスにも拡大し始めていることを受け、フランスでは、マスク論争が再び再燃しつつあります。

 コロナウィルス感染が始まって以来、マスクに関しては、フランスは、紆余曲折を重ねてきました。

 昨年3月の最初の感染爆発の際は、本来は、パンデミック対策としてストックされているはずのマスクが大幅に削減されていた状態で、また、マスクの有効性に関しても、政府は「一般人にはマスクは必要ない」などと臆面もなく発表しており、医療従事者以外は、マスクを買えない状況がしばらく続いていました。

 その後、マスクが国宝級の待遇で輸入され始め、5月のロックダウンに向けて、マスクが一般人に対しても推奨されるようになりました。

 それでも、当初、フランス人にとって、マスクへの嫌悪感は強く、マスクが浸透するには、それなりの時間がかかりましたが、パリ全域でマスクが義務化されたのは、人々がバカンスへ出かけ、第2波を迎え始めた8月末のことです。

 マスクをするしないで、バスの運転手が殴り殺された事件も起こりました。

 秋から冬にかけて、フランスは、感染者が1日6万人強という、立派な第2波を迎え、周囲の国々もフランスへの渡航を禁止する国が続出しました。

 10月末から11月の約1ヶ月間の2回目のロックダウンで、フランスの感染は1日1万人前後にまで減少しましたが、クリスマス、年末年始を過ぎて、イギリス変異種の影響もあるのか、現在のフランスの新規感染者数は、2万5千人前後にまで上昇し、現在は、18時以降の夜間ロックダウン状態です。

 特に現在は、イギリス変異種の驚異で、その感染力の強さから、義務化されているマスクも、ただの布マスクやサージカルマスクでは充分ではないと言われ始め、ドイツの一部の地域などは、FFPマスク着用が義務化されていることから、フランスでもFFPマスク(よりフィルタリング効果の高いマスク)着用が必要なのではないかという意見が出始めています。

 最初にロックダウンが解除になる際には、「マスクが推奨される」という義務ではない状況にも関わらず、ほとんどの市町村から、ロックダウンに間に合うように、国民にマスクが配布されました。

 しかし、今回のFFPマスクは、サージカルマスクや洗って何度も使える布マスクとは違い、価格もサージカルマスクの何倍もかかります。毎日、使うものゆえ、それを抱えるのが国であろうと国民であろうと負担は大きくなります。

 また、医療従事者を優先とするのは、必須ですが、FFPマスクの供給が間に合うとも思えず、当初のマスク問題のように、政府は、このFFPマスクについて、「現在のフランスの感染状態では、一般人には、必要ない。」と発表しています。

 まるで、あの時と同じではないか・・と私は、思ってしまいます。した方が良いマスクを供給できないことから(補償も含めて)、「必要ない」と言うところが・・。

 義務化する以上、何らかの補償を要求するのは、フランス人の最も得意とするところ、コロナウィルス感染対策のために国による規制で営業ができない店舗等に対しては、前年度の実績に対するパーセンテージで補償が支払われています。

 前回のマスク義務化の前には、ロックダウン解除の段階で、一応、マスクが配布されました。思えば、これも補償の一部でした。

 FFPマスク義務化には、そのマスク配布は、補償という面でも、かなりハードルが高いのです。しかし、義務化に伴う補償をフランス人は要求します。

 この危うい感染状況の中で、フランスでは、完全なロックダウンにならない限り、何らかの抗議をするデモやストライキをする権利が常に認められており、また、今週は、RER(イル・ド・フランス圏急行鉄道網)の交通機関のストライキが予定されています。

 この状況の中、ストライキによって起こる交通機関の更なる混雑状況をわざわざ起こすストライキが認められていることは、マスクをサージカルマスクにするかFFPマスクにするか以前のフランスの悪循環の大きな要因の一つです。

 毎週のように土曜日に行われるデモもまた同じです。

 人の行動を大きく制限しながら、主張する権利は決して侵害しないのがフランスです。

 今は、特にコロナ禍ゆえ、そんな悪循環が際立って見えますが、思えば、通常時もこのフランス人の権利を主張するデモやストライキは、常に大きな混乱をもたらしているのです。

 それでも、フランス人は、この権利の主張を誇りに思い、フランスのフランスたる重要な一面であると大切にしているのです。

 

<関連>

「コロナ禍中でも続くフランス人の権利の主張」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/11/blog-post_19.html

「マスク着用を注意したバスの運転手が暴行を受けた末に脳死状態 フランスの治安」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/07/blog-post_8.html

 

 

 

 













2021年1月20日水曜日

ハードルが高いコロナ禍の日本への一時帰国

  


 

 ここのところ、頻繁に日本のJALやANAなどの日本の航空会社から、日本への一時帰国に関する案内のメールが頻繁に入ります。航空業界の業績が著しく悪化しているため、少しでも巻き返しのために必死なのだろうな・・と思いながら、メールを覗いてみました。

 私は、日本へ一時帰国をする際に特に航空会社を決めて使っているわけでもないので、この20年以上の間に直行便、経由便と様々な航空会社を使ってきました。

 しかし、ここ数年は、日本から帰ってくる時は特に、あまりの荷物の多さに(99%食料品)、直行便を使うようになって、しかもエールフランスは、ストライキで何度か、急に帰りの便が勝手に変更されたりして、大変な思いをしたために、すっかり懲りて、必然的にANAかJALを利用することが多くなっていました。

 今は、日本へ行くつもりはないのですが、「日本入国時の制限ならびに検疫強化」のお知らせや、「ご帰国あんしんサービス」なるお知らせのメールを見て、いかに日本への一時帰国のハードルが高いかを再確認しました。

 まず、日本入国時には、72時間以内の新型コロナウィルス検査陰性の証明書を含む、コロナウィルス感染対策に関する誓約書を提出しなければならず、誓約書には、日本到着後の公共交通機関を使用しないこと、14日間の隔離生活を行うこと、スマホに厚生労働省が指定する接触確認アプリを導入し、14日間アプリを利用することなどが記載されています。

 自宅がある場合は、まだ良いとしても、直行便のない地域に住んでいる人などは、日本国内線は14日間利用できないことから、宿泊施設を利用せざるをえないことになります。

 そこで、「ご帰国あんしんサービス」の「ホテル」の蘭を見てみると、まず、「14日間の待機要請」を満たすためには、15泊16日の宿泊手配が必要となります・・」という説明がど〜んと出てきます。

 ただ隔離のための「15泊の宿泊施設の予約」、これは、なかなか高いハードルです。

 だいたい、日本に滞在したい日数プラス2週間の時間を取らなければならないだけでも、なかなか大変なことです。一ヶ月、二ヶ月と滞在するならばともかく、せいぜい数週間の滞在のために2週間の隔離は、あまりに勿体ないことです。

 また、自宅があっても、迎えに来てくれる家族がいない場合は、帰国者用ハイヤー送迎サービスなるものがあるようなのですが、その料金表を見てビックリ!羽田から都内で安いところでも、16,800円、羽田から遠くなれば、2万円以上です。

 日本へ行っても2週間は、誰にも会えず、どこにも出かけられず、ただ引きこもって2週間過ごし、しかも宿泊施設に滞在となれば、大変な費用がかかります。家族数人でなど、とんでもない話です。

 もしも、緊急の用事ができて、日本に行こうとしても、14日間、どこにも外出できず、誰にも会えないのであれば、緊急の意味がありません。

 例えば、もし、親が危篤であっても、たとえ、訃報があったとしても、日本へ行くのはとても難しい話です。

 私は、すでに両親ともに他界してしまっていますが、母の時には、危篤の際に知らせがあって、翌日の飛行機をとって、ギリギリ最後に母に会うことができました。それこそ、成田(その頃は羽田便がなかった)から病院にタクシーで直行でした。

 父の時は、こちらに知らされたのは、訃報でしたが、それでも、なんとか火葬は待って欲しいと親戚に電話で頼んで、慌てて帰り、葬儀には出席できました。その時も「やっぱり、間に合わなかった・・」という気持ちはありましたが、今だったら、それさえも、きっと叶いません。

 海外に住んでいる人は、親の死に目に会えないこともあるかもしれないと誰もが、思っていると思いますが、今は、とりわけ難しそうです。

 私の親戚、叔父・叔母などは、軒並み高齢者ばかり、この状況では、日本に帰っても気安く彼らに会うこともできません。

 このコロナ禍中、なんとか、みんなが無事に生き延びて、また日本で会えるように、いつも言っている「元気でいてね!」という言葉は、いつにも増して切実です。

 せっかく、JALやANAが送ってくれた、「日本入国時の制限ならびに検疫強化」のお知らせや、「ご帰国あんしんサービス」なるお知らせのメールは、残念ながら、「やっぱり、当分、日本へは行けない」ことを再確認をすることになりました。


<関連>

「海外在住者が母を看取る時」

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「死ぬ覚悟と死なせる覚悟」

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「日本にいる親の介護問題」

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「海外生活はお金がかかる」

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2021年1月19日火曜日

学校閉鎖に踏み切る基準 フランスの年少者の感染増加

  



 先週の初めから、週末にかけて、3クラスにまたがって、27人の感染者(生徒22人、教師5人)が確認されていたオワーズ県(パリから30㎞ほどの地域)の小学校が18日から26日までの8日間、学校を閉鎖することを発表しました。

 すでに先週から感染が確認されていたために、週の初めに1学級が閉鎖され、キャンティーン(給食)が閉鎖され、週の終わりにさらにもう1学級閉鎖され、それでも次の対策に踏み切らない学校に対して、保護者からは、学校閉鎖の要請が出されており、週明けには、290人の生徒のうち、登校したのは、20人のみとなっていました。

 そもそも5000人しかいない村で、1つの学校での27人の感染は大きなものでしたが、できる限り学校は閉鎖しないという政府の方針や学校閉鎖に踏み切る明確な規則がないことから、学校を閉鎖する決定が保護者が誘導する異例な形となりました。

 年が明けてからというもの、フランスでは、わずか10日間で、10歳未満の陽性率が3%から10%と3倍以上、増加しており、学校の衛生環境やキャンティーン(給食)施設の衛生対策の改善が求められています。

 この年少者の感染の急激な増加の原因は、より年少者に感染が広がりやすいというイギリス変異種の性質が疑われており、この変異種がフランス国内に想像以上に拡大していることが懸念されています。

 政府は、フランスにおけるイギリス変異種は、陽性検査結果の1%と発表していますが、この年少者の急激な感染拡大から、実際には、それ以上に存在している可能性が指摘されています。

 あくまでも、学校閉鎖は、最終的な措置としていたフランス政府ですが、学校閉鎖に関する規定を学級内3人以上の陽性者がでた場合には、学級閉鎖、同学年で複数のクラスにまたがった場合は学校閉鎖を考えるといった基準(今回の場合は、この基準)が必要となってきました。

 現在、フランスでは、ワクチン接種は、リスクの高い高齢者を中心に進められていますが、それを嘲笑うかのような年少者の感染拡大に、ため息が出てしまいます。

 まさに、最も今、恐れられているイギリス変異種は、細胞に直に侵入するために感染力が強いと言われており、ドイツなどは、2月中旬までのロックダウン延長や在宅勤務の厳格化に加えて、特定地域での高性能FFPマスクの着用義務を検討しています。

 フランスでも、一般に広まっているサージカルマスクや布マスクでは、充分に感染が防げないのではないか?という声が上がり始めています。

 クリスマス、年末年始から2週間以上が経過した今、急激な感染爆発は起こっていないものの、1日の新規感染者数が2万人強という高い状態を徐々に増加しながら保っている(集中治療室の患者は2800人突破、1日の死者数は11月末以来の400人突破を記録)フランスは、まだまだ、依然として爆弾を抱えている状態なのです。


<関連>

「世界中が警戒しているイギリス変異種  日本変異種の出現も・・」

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