今回のフランスのロックダウンが発表になったのは、10月末のことでした。日に日にグングン増えていく新規感染者数や病院の逼迫していく様子の報道を見て、言葉どおりにまさに遠くからやってくる波が見えるように大きな波に呑まれていくようでした。
ですから、ロックダウンになった時も、もはや驚く人はあまりいなかったのではないでしょうか?
今回の2回目のロックダウンの発表の際に、今回のロックダウンは経済をできるだけ止めない方法をとるということで、学校も仕事も継続、しかし、商店に関しては、生活必需品と通信機器等のごく一部の商店を除いて営業停止、2週間後に状況が改善していれば、営業再開を検討するということになっていました。
今回のロックダウンは、前回のロックダウンとは違って、全ての商店が営業停止というわけでもなく、食料品、薬局の他に、通信機器、電化製品、ガーデンセンターやDIY(日曜大工用品)ショップなどは営業許可になっていることから、余計に不公平感も高まり、また、ノエル前のかき入れ時ということもあり、営業できないでいた店舗のオーナーは、この2週間後の再検討に一縷の望みを抱いていたのです。
ところが、昨日のカステックス首相の発表では、現在のフランスの状況は、まだまだ深刻な状況、感染のスピードは少し減速してきているものの、感染は増え続け、30秒に一人がコロナウィルスで入院している状況、現在の死亡者の4分の1はコロナウィルスによるもので、ICUの占拠率は95%に達しており、依然として病院の逼迫状態は悪化しているとのこと。
すでにフランスのコロナウィルスによる入院状況については、第1波の時の記録を超えているのだそうです。
よって、現在のロックダウンの制限を緩めることはできない、同時に例外的に失業者の権利を拡大するとの発表がありました。
2週間後には営業できるかもしれないと微かな期待を抱いていた人々には、ショッキングな発表となりました。
しかし、今週に入って新規感染者数が3万人台に落ち着いてきてはいるものの、(一時は6万人を超えていた)依然として一日3万人もの感染者が出ている状態では現在のロックダウンを現時点では緩めることができないのは、当然のことです。
もはや、少々、数字に麻痺してきていますが、例えば、日本で一日3万人の感染者がいたとしたら、大変な騒ぎになることでしょう。それが3万人台まで下がって少しホッとしているのですから、どれだけ異常な事態かがわかります。
私は、今回のロックダウンは、「これがロックダウン??」と思うほど、街には人が出ていて、どちらかというと、このゆるゆるぶりに驚いているくらいです。今日もちょっと買い物に出たら、平日だというのになんだかすごい人出、「今日、何かあるの?」と思ってしまったくらいです。
営業していない店舗がけっこうあるのにこの状況ですから、さらに多くのお店が営業を始めたら、街にはさらに人出が増えるだろうと思うのです。仕事、学校、生活必需品の買い物、一日一時間の運動、ペットの散歩等、外出許可証さえ持っていれば、外出できるので、もはや皆が外出許可証にも慣れきって、気軽に外出するようになっているのです。
遠距離の移動はできませんが、通常の日常生活を送るのには、何の支障もありません。
現在のロックダウンの状況でさえ、充分に緩んでいると思われるのに、現在のフランスの感染状況でこれ以上制限を緩めるのは、ありえないことなのです。
それでも、今は、「ノエルには、家族と過ごすことができるように・・」という少し先のニンジンが鼻先にぶら下げられている状況なので、なんとかフランス人も12月1日までの現在の制限継続は、乗り切ろうとすると思いますが、カステックス首相は、「今年のノエル、年末年始をいつもの年のように盛大に祝えると考えるのは、あまり合理的ではない」と遠回しの言い方でかわしています。
記者会見での記者からの質問もどちらかというと、「12月1日以降は?」とか、「ノエルのための帰省の切符をとっていいか?」など、フライング気味のものが多く、恐らく今後、最も政府の対応が注目されるのは、ノエルのバカンスから年末年始の、本来ならば、フランス人が家族や友人と過ごす会食続きの時期をどのように制限するかだと思います。
フランス人にとって大イベントであるこの時期をどう乗り切るか如何で、その後、感染がさらに爆発するかどうかがかかっています。この時期の制限は政府と国民の大きな軋轢を生みかねません。
すでに今回の発表の際にカステックス首相は述べています。
「敵は、国家でも政府でもない。ウィルスだ!」と。
<関連>
「フランスのロックダウン突入 営業許可と営業禁止の境界線」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/10/blog-post_31.html