「フランスでは、1月3日に死者数が年間最多になる」という話は、四半世紀近くフランスにいる私でも、今まで全然、知りませんでした。
しかし、これは、どうやら紛れもない事実なようで、2004年から2023年の間、1月3日というこの日は、平均1,900人が命を落としています。
この数字は、通常?平均1日1,600人の死者数を19%も上回っているという、ちょっと見過ごせない数字で、この不吉なデータは複数の要因が重なっていると考えられています。
日本なら、毎年、毎年、必ずどこかから聞こえてくる、お正月にお餅を喉につまらせて死亡する事故がありますが、フランスの場合の原因は何なのでしょうか?
その一つには、気温の低下が挙げられており、気温の低下とともにインフルエンザや新型コロナウィルスなどの季節性ウィルスの活発化するためと言われています。
しかし、この気温が低下するのは、なにも1月3日に限ったことではなく、これが大きく起因していることは、紛れもない事実ではありますが、この日の死亡に直接、起因しているとは考え難いかもしれません。
一番に考えられるのは、年末年始のお祝いの席、家族や友人たちとのパーティーで、中でもノエル・クリスマスのお祝いは、フランス人にとってのビッグイベントの一つ。家族によっては、人生の終焉を迎えつつある人が愛する家族と最後の時間を共有するために、なんとか命を振り絞って乗り越えようとすることを望み、このことが、驚くほど強力な生きる力を生み出し、最後の猶予期間を過ごす人も珍しくないようですが、これは、長く続くものではなく、その楽しい家族との時間ののち、力尽きるのが1月3日となる・・というシナリオは、起こり得るものです。
それに加えて、この時期、過剰な食事、アルコール、またその準備のストレスも加わり、これらのすべてが心血管系に大きなダメージを与えます。慢性疾患、特に心臓病を患う人々にとっては、致命的な結果を招きかねないことになります。
INSEE(国立統計経済研究所)によれば、1月3日にこの死者数のピークを迎えるのは、決して偶然ではないと分析しています。
クリスマスがなければ、それまで生き延びられなかった人がこの日を目標に生き延び、命が尽きる場合や、この年末年始のお祝いの暴飲暴食やストレス、もしくは、この席でのウィルスの感染・・などなど、特に高齢者には、最も楽しく、また最も危険なタイミングなのかもしれません。
また、若者にとっても、年末年始は、危険なタイミングでもあり、交通事故が急増(+23%)すると言われるのは、なんと1月1日で、その他、アルコール、疲労、長旅が重なる危険な季節でもあります。
一方、一年で最も死者の少ないのは、8月のバカンスシーズンなのだそうで、近年の温暖化による熱波にもかかわらず、最近の予防対策のおかげで酷暑のために死亡にまで至るケースは減少しているようです。
しかし、考えようによっては、最も大切にしたい家族との楽しい時間を過ごして、その後にあっという間に人生の終焉を迎える・・というのも、悪くない最期の迎え方なのではないか?と思わないでもないのです。
1月3日は最も死者の多い日
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