2023年6月に起こった警察官発砲事件で、約3年後、最高裁は事件を暴力事件と分類した判決を覆し、警察官を殺人罪に問う裁判に引き戻すように命じました。
これは、数ある警察官の発砲事件の中でも、私にとっても忘れ難い事件で、この時の国民の怒りの激しさは、類稀なるものでした。
この事件は、パリ近郊のナンテール駅近くで起こったもので、事件当日、車両確認を行っていた警察官が車を停車させようとしたところ、17歳の少年が運転していた車がこれに従わずに逃走しようとしたところを警察官が発砲し、この少年が死亡したものです。
当初、警察官は、この少年が無理に車を発車させたために、警察官が車に轢かれそうになったと供述していましたが、その後、事件現場を撮影していた映像が次から次へとSNSで拡散され始め、この警察官がウソをついていたことが明らかになり、公的権力を持った警察官の横暴に対しての怒りが爆発し、その後、フランス全土で過激な暴動が巻き起こる事態へと発展したのでした。
あの時は、私もとあるコマーシャルセンターで暴動に巻き込まれ、暴徒たちがやってきたといきなりお店の中に閉じ込められ、ようやくコマーシャルセンターを脱出したものの、最寄りの駅はクローズ、その先の駅まで延々と歩くハメになりました。
この事件は警察の残虐行為の象徴的な事件として、フランス全土に大暴動の波を引き起こしました。怒りはもっともだとも思うものの、暴動があまりにもエスカレートしてしまったために、事件の本質が見失われた感があったのも事実です。
その後の裁判の様子は追っていませんでしたが、まず、この警察官の罪名は何なのか?何について裁くのか?ということが問題になっているようです。たしかに、この肝心なところが違っていると、裁判結果もズレたものになってしまうわけです。
どうやら、今回の件は、これまで進められてきた裁判が「警察官の殺人事件」ではなく、「殺意のない暴力による過失致死」として扱われてきたようです。
しかし、今回、最高裁は、この罪状は充分な根拠を示していないという理由でこれまでの流れを覆したのです。
問題の警察官が自発的に銃を使用したにもかかわらず、殺意はなかったという訴えをしていましたが、最高裁は「9㎜口径の銃が至近距離から被害者の生命に関わる部位を狙って使用され、警察官は自分の行為が致命的な危険性を伴うことを当然、認識していた」と判断したのです。
警察官側の弁護士は、「車両が既に重大な犯罪を犯し、人を殺傷する恐れがある場合、警察官は発砲する義務があると規定する法的権限の範囲内で行動したものである」と主張しており、警察関係者からは、当該警察官への同情が集まり、彼の家族へのクラウドファンディングで多額の寄付が集まったりもしていました。
結局、3年経った現在、裁判は仕切り直しということになったようですが、あの当時は、やたらと警察官の発砲事件が多く、たしかに、そんなに簡単に発砲されるのは、怖いな・・と思った記憶があります。
この少年は当時、未成年でもあり、あの頃、拡散されていた映像を見るに、どうみても、警察官の発砲はやり過ぎな感がしたものです。
公的権力プラス武器を携帯している警察官。だからこそ、今回のような事件の裁判が公正に行われる必用があるのです。
ナエル事件
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