2023年3月28日火曜日

年金改革抗議でルーブル美術館 終日閉鎖

  


 パリに観光に来たら、多くの人が行きたいと思う場所の一つにルーブル美術館が挙げられると思います。ルーブル美術館は、かなり広いので、時間も覚悟も必要ですが、やはり絵や美術品はもちろんのこと、その入れ物、美術館自体が美しいもので、美術品だけが出張してどこかの美術館に行ったりしたものを見るのでは味わえない、それがそこにあることで感激できる感動を味わうことができるのです。

 まぁ、私のような素人は、しばらく見ているうちに、どうにもあまりに見るものが多すぎて、いささか食傷気味になって、飽きてしまううえに、そうとうな距離を歩くことになるので、途中で疲れてしまうのですが、しかし、やはり、せっかくパリに来たら、一度はおススメしたい場所でもあります。

 パリは美術館の多い街ですが、ルーブル美術館とオルセー美術館は月・火とずらしてお休みで、ルーブル美術館は通常は火曜日が休館日です。

 28日(火)は、再び、CGT(全国組合連合)が大規模ストライキとデモを呼び掛けている日で、ルーブル美術館はこれがちょうど休館日にあたるために、前日に前倒しで年金改革問題の抗議運動として、約300人のスタッフによって、朝から美術館の入口4か所を封鎖、CGTの垂れ幕を張って、物々しい騒ぎになり、大勢の観光客は入場することができませんでした。



 現在のフランスの状況を知って来ている外国人観光客も「えっ??ストライキは明日じゃなかったの?」と困惑・・。現在、ルーブル美術館はほとんどが予約制になっているため、あらかじめ、スケジュールを組んでやってきている観光客にとっては、突然の美術館封鎖には、さぞかし腹立たしいことでしょう。

 しかし、ストライカーたちは、全く迷いがない様子で、「私たちは年金改革に反対しており、それを示すという文化がフランスには存在します!」ととうとうと宣言します。

 「これでも今日はずっと静かな抗議。外国人観光客には、腹立たしいことに違いないが、ストライキは憲法上の権利であり、時には、義務でもある!」と叫んでいます。

 ストライキをする権利はともかく、「ストライキは時には義務でもある!」と言い出すとは、もう恐れ入っちゃう感じです。

 27日(月)のルーブル美術館のチケットは払い戻し、他の日時に変更できるそうです。

 3月7日のデモの際には、入場させておいて、モナリザなど数か所の部屋を占拠するという状態でしたが、今回は中に入ることもできない完全ブロック方式で観光客には踏んだりけったりでした。

 せっかくパンデミックがおさまってきて、観光客がパリに戻ってきたというのに、この様子では、当分、パリへの旅行はおススメできません。


ルーブル美術館封鎖


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2023年3月27日月曜日

ゴミ収集業社ストライキから20日後、民間のゴミ収集業社も無期限ストライキ突入

  


 パリのゴミ収集業社のストライキから3週間が経過し、一時はパリに山積みにされているゴミの山は1万トンを超えたと言われてきましたが、一部、ゴミ収集が復活したり、燃やされたりで否応なしに片付けざるを得なかった分のプラスマイナスがあり、現在は7,828トン近くにまで減少?しているようですが、今度は民間のゴミ収集業社が無期限ストライキに突入することを発表し、再び波紋を呼んでいます。

 これまで、ゴミ収集業社のストライキといっても、パリ市内でも区によって差があり、パリ1区~20区のうちの2,5,6,8,9,12,14,16,17,20区(約半分の区)における、パリ市のゴミ収集業社によるものであり、民間のゴミ収集業社に委託している区のゴミは通常どおりゴミ収集が行われてきました。

 これまでのストライキが依然として継続し、一部が復活しただけで、これに覆いかぶさる感じで、民間のゴミ収集業社までストライキに入ることで、今度は、1 区、2 区、4 区、10 区、18 区のゴミ収集が滞ると言われています。

 今回は先行のストライカーのように、年金改革に抗議するのに加えて「最大15%の賃金値上げ」を要求しています。先発隊のパリ市のゴミ収集業者のストライキが想像以上のインパクトがあったために、現時点でのストライキが効果的であることが世間に知れ渡ったためでもあると言えます。

 特に、現在のパリは、デモが当分、鎮まる気配はなく、ゴミを放置しておけば、それが、通常以上に危険な着火剤のような役割を果たしているため、ゴミ収集はいつも以上に必要とされている状況です。

 ストライキで仕事をしなければ、その分の給料は支払われないので、決して高給が支払われているとは言えない彼らにとって、身を削ってのストライキは最も効果的でいかに最もインパクトを与える時期でならなければならないことを考えたら、「今しかない!」となったのかもしれません。

 しかし、美しいはずのパリの街が焼けただれたゴミが異臭を放ったまま放置されるのは、哀しいことです。

 滅多にパリに来ることのない観光客には、まことに気の毒だろうと思いきや、山積みのゴミや、そのゴミに火がつけられている前で記念写真を撮っている観光客も増えたという話もでてきているので、それはそれでレア体験?として、楽しんでしまうのもたくましいです。

 「世界一美しい街パリ」を公言してやまないフランス人にとっては、プライドが傷つくものであるのかと思いきや、これはこれで、自分たちの主張は曲げない1ページだと言わんばかりに「これがパリだよ!」とウィンクして通り過ぎていくパリジャン。それはそれで堂々と胸を張るフランス人は本当に強いなぁと妙に感心させられたりもするのです。


民間ゴミ収集業社 無期限ストライキ突入


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2023年3月26日日曜日

エシレのミルクは超絶、美味しかった・・

 


 日本でも、けっこう有名な「エシレバター」でおなじみの「エシレ」の乳製品シリーズ。

 「エシレバター」はもともと、フランスでも高級品なので、どこのスーパーマーケットにもあるという商品ではありませんが、まあ、日本人も知っている?カーフールとか、モノプリ(Monoprix)(そんなに有名でもないか・・)などには、たいていおいてありますが、バターだけでもかなりの種類が置かれている、その中の一つにすぎません。

 しかし、数あるバターの中でも値段的には、群を抜いて高いので、そんなに売れている感じはしないし、意外とフランス人は「エシレバター」を知らないのにも逆にびっくりさせられるくらいです。

 フランス人は何といってもバターを大量に消費する(パンにバターを塗るというより、のせているという印象だし、お料理にもバターをよく使います)ので、家族が多かったりする場合は特に、大量に消費されるバターにそんな高級バターを買っているわけにもいかないのでしょう。

 私は日常的には、そんなにバターを大量に使うわけではないので、たまに食べるバターはエシレバターにしていますが、お料理などには、もう少しお手軽価格のものを使っています。

 日本に行った時にスーパーマーケットに並んでいるエシレバターやフランスのチーズの値段を見て、目を丸くしますが、まぁそれは、フランスでお醤油が高いのと似たようなものなので、最近はお互い様かもしれないな・・とも思います。

 今は日本で生活している娘が最初に日本で生活し始めた時に、「お醤油ってこんなに安いものだったんだ!」と驚いていたことを思い出します。

 パリには、エシレのお店はありませんが、日本には、何店舗かエシレのお店があるようですし、エシレバターで焼いたクロワッサンとか、エシレのアイスクリーム?ソフトクリームに数時間待ちの行列ができている・・などと言う話を聞いたこともあるので、もしかしたら、エシレは日本での方が有名なのかもしれません。

 日本に一時帰国する際には、みんなに頼まれるので大量のエシレバターを買って帰るので、一度、モノプリのレジのお兄さんに「バター好きなんだね・・」とあきれられたこともあります。

 話は逸れましたが、最近、インフレで全ての値段が上昇し、食料品なども、ちょっと明らかにウッとくるくらいの値上がりぶりで、なんだか金銭感覚が麻痺してきました。

 というのも、どの商品も値上がりしていることに変わりはないのですが、どういうわけか、高級品の方が値上がり率が低いようで、安かったはずの商品が「えっ?これがこんな値段??」となっているので、逆に今まで高いと思って、買わなかったものに、どうせ、高いんなら、良いものの方が良いかな?と妙な理屈が働くこともあるのです。

 「エシレ」はバターだけでなく、生クリームやミルクを出しているのは知っていましたが、私がこれまで買っていたのはバターだけで、一度、お土産用に生クリームを買ってみたことがありましたが、ミルクにまで手をのばしたことはありませんでした。

 それこそ、ミルクはバターなどと違って、コーヒーに入れたり、ポタージュを作ったりと消費量が多少多いために、高級ミルクには手をのばさずにいたのです。

 それがたまたま覗いたチーズ屋さんで、エシレのミルクを売っていて、値段が「1.5€」とついているのを見て、「エシレのミルクってこんなに安かった??」と思ってしまったのは、私の金銭感覚が狂っているのかどうかはわかりません。




 しかし、普段買っている普通のミルクもうろ覚えではありますが、恐らく1.2€程度で、そんなに大きく違うわけでもありません。(隣に並んでいたミルクはもっと高かったし・・)それならば、一度、飲んでみたいな・・とちょっと思っていたエシレのミルクを買ってみることにしました。

 まあ、失敗しても、大して後悔するほどの値段でもありません。

 あまり期待もせずに家に帰って飲んでみると、これが想像以上に「やっぱり、美味し~い!!」と期待を裏切らない(期待せずにといいながら、けっこう楽しみにしていました)すっきりとした飲みくちなのに、しっかり味がある後味のよいミルクで、これはコーヒーや紅茶に入れたりせずに、このままで飲んでも、一つの飲み物として十分に成り立つ飲み物で、大満足しました。

 美味しいものは後味がよいというのが私の中の鉄則で、特にミルク好き・・というわけではない私も、ちゃんと美味しいと感じられるミルクでした。

 これまでミルクには、あまりこだわりはありませんでしたが、これを知ってしまったら、この先、エシレミルクを素通りできないような気がしてきました。

 まあ、大した贅沢ではありませんが、今後、私の小さな喜びが追加された気分で大変、満足しています。


エシレバター エシレミルク エシレ生クリーム


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2023年3月25日土曜日

年金改革デモ・ストライキのため、英チャールズ国王のフランス公式訪問延期へ

 


 いつまでも、年金改革問題抗議デモ・ストライキが一向におさまらないフランスでは、数日まえから、今週末からの英チャールズ国王のフランス公式訪問はどうなるのだろうか?と少しずつ話題になり始めていました。

 23日(木)は、以前からCGT(全国組合連合)が再び(非公式デモが何日も続いているために公式デモが何度目だったかわからない)予告されていた日でもあり、ここ1週間以上、日々、暴動のようになっているデモを大きく上回る大変な動員数になりました。

 また、それに紛れて、ブラックブロックと呼ばれる破壊行動を起こすグループやデモがエスカレートして、暴れ出す人がもうどこにでも登場するようになり、山積みにされたゴミの山への放火もダイナミックになり、また、それだけでは飽き足らずに、キオスクに火がつけられたり、ショーウィンドーが割られたり、スプレーで落書きをされたりと、カオス状態になりました。

 山積みにされたゴミにネズミがたかる・・など、衛生状態が問題視されてもいましたが、これではネズミもびっくりです。

 翌日は、焼けただれたゴミなどは、ざっと片付けられてはいるものの、まだゴミは散らかり、焼かれたアパートの扉やキオスクには立ち入り禁止のテープが貼られていましたが、こんな汚いパリは見たことない・・感じでした。

 パリの中にも、日常から、「えっ?ここ、パリなの?」と思うような地域もあるにはあるのですが、この汚い状態がパリの中心地のまさにパリらしい華麗なイメージの場所でのことなので、歩いていても胸が痛む気がしました。

 いくらなんでも、これはやりすぎで、一般市民の住居であるアパートや商店やキオスクなどが攻撃対象になるのは、酷すぎる話です。

 とにかく、パリ(フランス)は、今、こんな状態で、怒り狂っている暴徒や、同じように政府に対しては怒りつつも、暴力行為に動揺、困惑している国民にとっては、チャールズ国王どころの話ではないのが正直なところだと思います。

 23日の夜にボルドー市庁舎の大扉が勢いよく燃やされている時に、チャールズ国王のフランス公式訪問については、あまり詳細な日程は公開されていない中、ベルサイユ宮殿での晩餐会とともに、訪問先になっていたボルドーは、市長が半泣き状態で、来週初めのチャールズ国王ボルドー訪問について、「我々は時間をかけて万全の警備体制を準備してきているので、国王をお迎えすることに問題はないです」と語っていたのは、とても印象的でした。

 また、内務相も、23日の夜の段階では、チャールズ国王のフランス公式訪問は問題はないと発表していました。

 しかし、翌日になって、エリゼ宮から発表されたのは、「英チャールズ国王のフランス公式訪問は社会情勢を考慮して延期されました」というもので、その日の午前中にマクロン大統領とチャールズ国王が直接電話で話し合い、マクロン大統領の申し出により、延期されたとのことでした。

 もっとも決定的であったのは、チャールズ国王がフランス滞在を予定していた3月26日~29日にぶつけるように、次回のCGTが動員するデモ・ストライキがその期間中の28日に設定されたことにあります。

 ここ1週間ほどのパリ(フランス)の荒れ様を見ていると、デモや暴動は予定された以外の日に起こらない保証はどこにもなく、何よりもブレグジット後にイギリスとフランスの友好的な外交の象徴として計画されていた今回の英チャールズ国王の訪問は、祝福ムードの中で迎えられるべきであるもので、現在のフランスには、祝福モードのかけらもありません。

 また、現在のフランスはデモやストライキ・暴動から日常生活を守るための警備だけでも大変な数の警察官や憲兵隊が動員されており(毎晩最低でも2000人といわれている)、とても、ヴェルサイユで予定されていた夕食会だけでも、ヘリコプター、地雷除去員、800 人の警官が現場に配置される予定であったために、デモと国王の両方の警備はかなり厳しい状態であったに違いありません。

 これは、ともかくも全てフランス側の問題でのキャンセル・・しかも、イギリス国王の予定をキャンセル(延期)するのですから、イギリスのフランスに対するイメージに深刻な打撃を与えるものであり、なんとバッシングを受けても仕方ないことで、何よりもマクロン大統領にとっては大変に屈辱的なことに違いありません。

 反マクロン派の政治家たちは、ここぞとばかりに「フランスの恥!」と声をあげています。

 しかし、英王室の話題が大好きなフランス人は、エリザベス女王のご逝去の際などには、昼夜をあけずに、まるで自分の国の女王様が亡くなったかのごとく大騒ぎしていたものの、チャールズ国王が就任して以来、どうにも熱が冷めてしまった感じもします。

 正直、エリザベス女王ほどには人気がないチャールズ国王のフランス訪問は、この時期ではさらに微妙な感じになってしまう可能性も大でした。

 ついに、国内だけでなく、外交問題にまでも影響が及び始めたフランスの年金改革問題ですが、この英チャールズ国王のフランス公式訪問キャンセルをCGT側はデモの勝利の一つとして掲げようとしており、また、このフランスの恥をさらす事態は反マクロンの声をさらに大きくしつつあります。


英チャールズ国王フランス公式訪問延期


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2023年3月24日金曜日

フランス全土で350万人動員の記録的なデモ 一晩に140ヶ所で炎が立ち上るパリ

 


 

 前日のマクロン大統領のインタビューを聞いて、「なんか火に油を注いだ感じだな・・」と思ったのが、まさに文字どおり、火に油を注いでパリの街はあちこちが燃え盛り、特に今回はオペラ界隈近くのサン・マルク通りなどは、山積みにされたゴミにつけられた火が建物に燃え移る、かなり危険な火災にまで発展したり、ブルバード・イタリアンのキオスクが燃やされたり、もはやゴミが燃やされるだけでなく、建造物が燃やされる火災にまで発展しています。

 49.3条(首相の責任のもと、採択せずに法案を通してしまう法律)発令から8日連続のデモ+暴動騒ぎは収まるどころか、手が付けられない状態になっています。

 依然として続いているゴミ収集業者のストライキのために、あちこちに山積みにされているゴミには火がつけられ、消火された後は、まことに見るに堪えない惨状ぶりを強調しています。

 この日は、以前からCGT(全国組合連合)が大規模なデモ・ストライキを予告していた日で、CGTの発表によるとフランス全土で350万人がデモに参加した(当局の発表によると109万人)とのことで、記録的な動員であったと言われています。

 なにしろ、パリだけでも119,000人動員したというのですから、えらいことです。

 こうなってくると、山積みにされたゴミは、不衛生なだけでなく、近隣の住民や店舗などにとっても、いつ火がつけられるかわからない恐怖の対象でもあります。


 この日はなんと、大小含めて、少なくとも140ヶ所で火がつけられたとのことで、放火や破壊に乗じての略奪行為なども起こり始める危険も孕んでいるため、内務相をはじめとする政府の面々もこれらの暴力行為はとうてい、容認できないとしています。

 これは、パリだけではなく、ボルドー市庁舎の大扉も燃やされています。

 また、警察・憲兵隊もかなり乱暴な場面もみかけないではありませんが、彼らも命がけで、任務についているわけで、この日だけで負傷した警察官・憲兵隊は149人にも上ったということです。

 私の勝手な想像ですが、この警察官や憲兵隊の中にも、同じフランス国民として、抗議デモに参加したいくらいの気持ちの人はいるだろうに、まことに気の毒な気がしてきます。

 もともとの年金改革デモは、長いこと続いていましたが、比較的、暴力的な面が少ないデモだという印象でしたが、一気に暴力的な暴動の様相にシフトしたのは、49.3条発令が発端で、暴力的な行為は許せないことながら、この怒りに火をつけてしまった49.3条というものが、この激しやすい国民を持つフランスで、あってよい法令なのかどうか、考えてしまいます。

 私は年金改革は恐らく必要なことなのだとは理解しますが、やはり、フランス人の国民性を考慮したら、49.3条は使うべきではなかったと思います。やり方を間違えたと思います。

 国会での規定どおりの採決を通すにはリスクがあったためのこの49.3条発令で早道をとったつもりが、このパリの、いやフランス全土の荒れようを見れば、もはや、とんだ回り道になってしまったことは、もはや言うまでもありません。

 49.3条には、「首相の責任のもとに・・」という文言がついていますが、こんな破滅的な状況になって、首相が一人で責任をとれるものでもないでしょう。


年金改革問題 パリ 大規模デモ 暴動 放火


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2023年3月23日木曜日

火に油を注いだマクロン大統領35分間のインタビュー

 


 もはや、今のフランスの大混乱状態でマクロン大統領が何かを話して解決できるとは、あまり期待してはいませんでしたが、ともかくも、49.3条(首相の責任のもと、採択せずに法案を通してしまう法律)発令以来、初めてテレビで公に向けてマクロン大統領が口を開くということで、このインタビューはかなりの注目を集めていました。

 これまでも、ワクチンパスポートを導入した際なども、(ワクチンパスポートを持たない人は飲食店に入れないとか、長距離の交通機関を利用できないとか)かなり強引なやり方を押し通してきたマクロン大統領でしたが、あの時は、当初は相当な反発を生み、大規模なデモなども組織されたりもしましたが、かなりの割合で賛同する人々も多く、また自分達の健康が人質で、タイミング的にも夏のバカンスの直前のタイミングということで、騒ぎは少しずつおさまっていきました。

 結果的には、あの時のワクチンパスポートの導入は、かなり強引な手段であったとはいえ、結果オーライで、後々、評価されており、マクロン大統領にとっては、ある意味、強行突破の成功体験だったかもしれません。

 しかし、今回の年金改革問題、49.3条問題は、どうやら雲行きが違います。正直、私の印象では、2期目になってからのマクロン大統領、マクロン政権はどうにも人が変わったような、暖かみが消え失せたように感じるのです。

 今期の閣僚のメンバー構成のためでもあるとも思うのですが、それを選んだのは、マクロン大統領本人なのです。

 今回のインタビューに関しては、やはり、どうにも、その設定自体からしても、不自然な感じが拭えず(放送時間帯(13時からの生放送)、このインタビューがマスコミが申し込んだものだとしても、エリゼ宮にジャーナリストを招くというカタチをとっており、あくまでこのインタビューの主導権は自分にあるという印象のうえ、質問に答えるという形式をとりつつ、時にはインタビュアーの質問を遮り、自分の言いたいことだけを言っている感じで、途中で聞いているのが苦痛な感じになってきました。

 質問をすりかえ、言いたいことだけを言って、国民を説得しようとするのであれば、いっそのこと、インタビュー形式などとらずに、何かとことあるごとに大統領の演説として夜20時から流すいつものやり方をすれば、まだマシだったかもしれないと思ったくらいです。

 このインタビューの中で彼は「正当性」という言葉を多く使っていますが、そもそもこのような国民の怒りに対しては、ここまで悪化してしまった状況で、国民のデモの在り方の「正当性」を疑問視したり、自分の法案の「正当性」を語ったりしても、もはや、何の解決にもなりません。

 かと思うと、根拠も理由も異なり、ましてや同じ政治的方針をもたない、アメリカ大統領選挙でのドナルド・トランプの敗北を拒否したアメリカの極右による国会議事堂への侵略デモなどを例に挙げたりして、やはり、通常のマクロン大統領なら考えられないおかしな話の展開があったりもしました。

 彼は一貫して、この年金改革の必要性を貫いているし、それこそ、それは正当性があることであるとは思うのですが、どうにも彼の言動は、反発を生むもので、この49.3条発令に際して、辞任か?などと騒がれてもいたボルヌ首相は完全に自分の信頼をおいている人物であるとか、国民の怒りに耳を傾けるとしながらも、現実とは全く正反対の方向へ進んでいるように見えます。

 この場で国民が聞きたかったことは、彼の言う正当性のある「年金改革」を怒り狂っている国民をどう説得するかであり、ただ、これは正しいこと、必要なことというだけでは、もはや、何の解決にもならないことを彼は理解していない印象で、「マクロン大統領からは 19 世紀のブルジョア的で不平等な人間関係の中で築かれた想像力がにじみ出ている・・」などと言われています。

 このインタビューを聞いて、決意を新たに反抗の意思を固めた国民は多そうな感じで、直後の世論調査によると、フランス人の70%は、インタビューで大統領が説得力があるとは思わなかった、また、44%はまったく説得力がないと答え、回答者の 67% は、改革に反対する抗議運動を支持すると答えています。

 概ね、彼のこのインタビューは火に油を注いでしまったという印象で、大統領候補の対抗馬であったマリーヌ・ル・ペンなどは、「現実と、外の世界との接触をすべて失ったように見える孤独な男」と酷評しています。


年金改革問題 49.3条 マクロン大統領インタビュー


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2023年3月22日水曜日

パリだけでも毎晩警察官2000人が動員されている! デモは日に日に過激になっています・・

  


 49.3条(首相の責任のもと、採択せずに法案を通してしまう法律)が発令されて以来、毎晩、続いているデモ?はもうこれで6日連続になりました。

 こんなことが毎日、続いていて良いはずはありません。しかも、このデモは日に日に過激になっている感があり、昨日、年金改正法案がついに通ってしまったのを区切りに、より暴動に近い暴力的な要素が色濃くなってきた感じがあります。

 前夜も夜遅くまで群衆が集結していたパリ・リパブリック広場が昨夜の舞台の中心となりました。

 そもそも、ここ数日のデモは、届け出の出されていない(フランスはデモの権利がとても尊重されていますが、事前の許可を届け出る必要があります)無認可の自然発生的に近いデモで、この日は学生の集団抗議デモが日中から、パリ近郊から12区にかけて行進していました。(この段階ではまだ、暴力的ではなかったようなのですが・・)

 しかし、どこからとなく声があがり始めた「18時リパブリック広場に集結!」の号令に合わせたように、18時を待たずして、夕刻からリパブリック広場には、すごい人が集まり始めました。

 そして、すぐに、山積みにされたゴミとともに近くに停めてあったバイクが勢いよく燃えはじめ、その火の勢いとともに、盛大な黒煙がたちのぼり、一気に物騒な感じになりました。

 また、この集まりは、すでに単にゴミを燃やすだけにはとどまらず、警護にあたる警察、憲兵隊に向けて、ロケット花火が発火されたりして、一時はこの警備隊も後ずさりせざるを得ない、まことに危険な状況に陥りました。

 もうロケット花火などの武器を持参してデモに参加している時点で、これはもうかなり暴力的なものになっているわけで、暴力行為がエスカレートしてきていることは明白で、応戦する警察もたまったものではありません。

 そもそも49.3条が発令された木曜日以来、パリだけでも連日連夜(もう6日間)、毎晩遅くまで2000人の警察官が動員されているそうで、警察も疲れ果てていることと思います。

 もう法案は決定してしまったというのに、この暴動がおさまらないということは、終わりが見えないということです。

 これまで、公にはこの件で沈黙を守ってきたマクロン大統領は、22日、ジャーナリストからのインタビューに答えるという形で生放送でようやく重たい口を開くようですが、また、この放送時間帯が13時ということで、この映像は、繰り返し流されることになるとはいえ、この放送時間帯の視聴者は、すでに引退している人向けの時間帯で、どこか消極的な姿勢が見え隠れする空気もあり、あまり大したことを話すとは見られていません。

 現在のフランスの状況で、マクロン大統領がいつもの調子で正当性を全面にかざして話をしたところで火に油を注ぐだけだと思われます。

 しかし、だからといって、このままで良いわけはなく、どうするつもりなのか、本当にマクロン大統領に聞いてみたいです。

 そもそも3月7日から始まっているパリのゴミ収集業者のストライキはまだ一向に終わる気配もなく、少なくとも来週の月曜日までは続くと言われています。

 このゴミ問題だけでも大変な被害で、ゴミ収集場所の近隣の飲食店などは、さすがのパリジャンも、もう客足の減少が著しく、臭いも強烈で、ましてや毎晩のように山積みのゴミが街中で燃やされているのですから、その燃え上がる炎の映像だけでも衝撃的ですが、映像では伝わらない、街中で数日放置されたゴミが燃える臭いは、強烈です。

 パリの住民もさすがに、もうこれには、辟易してきて、ゴミ収集分の税金を支払わないなどと言いだしている人まで出没しています。

 世の中の動きや政治の動きなどは、長い歴史の中で時間がたってからでないと、その良し悪しが判断できないものが多いですが、今回のこのフランスの年金改革騒動、かなりの痛みを伴っていますが、あとになって、痛みを伴ってでさえも、あの時の判断は正しかった・・となるのかどうか・・ともかくも、痛みは最小限にとどめてもらいたいです。


49.3条 年金改革反対デモ ゴミ問題


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