2020年12月22日火曜日

イギリスからの入国禁止に踏み切るフランス コロナウィルス変異種警戒

 

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 フランス政府は20日、英国での新型コロナウイルス変異種による感染急拡大を受け、21日午前0時から48時間、英国からの入国を全て停止すると決定しました。ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、オーストリアなども同様の措置を取ることを発表しています。

 今後、欧州連合(EU)で共通の対応を検討していくことになっています。

 イギリスは、日曜日から、ロンドン、イギリス南東部をロックダウンしていますが、このロックダウンは、国内だけでなく、結果として、他のヨーロッパ諸国からのロックダウン状態に発展しています。

 このイギリスからの入国制限は、旅客、貨物双方、また、陸上、航空、海上、鉄道にわたり、全てに渡る制限で、人だけでなく、物流さえも滞る深刻な事態を引き起こしています。とりあえず、48時間の制限とはいえ、この変異種の出現をどれだけ、深刻に考えているのかがわかります。

 とはいえ、急な決定により、まさにイギリスから商品を輸送中だったトラックは、突如、高速道路で足止めを食い、道路の側道で40㎞にわたる待機状態、特に食料品などを輸送中だったトラックは、壊滅的な損害になります。

 2021年には、ブレグジット(Brexit)で、欧州離脱が決まっていたイギリスは、このコロナウィルス変異種による感染急拡大により、妙な形で、欧州からの離脱に突入しています。

 イギリス政府による発表によれば、この変異種はこれまでのコロナウィルスよりも70%伝染性が高く、致死率も高いと言われていることから、まだ、正体のはっきりしないこのウィルスの恐怖がイギリスを孤立させる状況を生んでいるのです。

 ヨーロッパ各国のイギリス・シャットダウンの対応は、この変異種をどれだけ脅威に感じているかということを物語っています。

 イギリスでは、さっそく、今回のロックダウンの措置に反対する人々は街中で警察と衝突する騒動に発展しています。

 この変異種は、コロナウイルスの「スパイク」のタンパク質に、N501Yと呼ばれる変異を持っています。これは、ウィルスの表面にあり、人間の細胞に付着して浸透することができます。

 ウイルスは変異(遺伝子配列のわずかな変化)するものであり、多かれ少なかれ頻繁に定期的に発生します。インフルエンザを引き起こすインフルエンザウイルスは、たとえばコロナウイルスよりもはるかに頻繁に変異することが知られています。しかし、それはすべての突然変異がウイルスの働きや人体で引き起こされる可能性のある症状を変えるという意味ではありません。

 ワクチンはある程度のウィルスが変化することを想定して作られているものですが、今のところ、この変異種に対して、ようやく開発されたワクチンの有効性を低下させるものではないとしています。しかし、それは、まだ証明されてはいません。事によっては、ワクチンの再開発が必要になり、また振り出しに戻るような事態にもなりかねません。

 フランスとイギリスは、ユーロスターで簡単に移動できることもあり、行き来する人も多く、ロンドンでも場所によっては、「えっ?ここフランス?」と思うような場所もあり、また、その逆に、パリなのに、「えっ?ここイギリス?」と思うような場所もあります。

 イギリスに広がり始めた新異種は、もうすでにフランスでも広がり始めている可能性も大きいのです。

 そんな非常に警戒すべき状態にありながら、パリのギャラリーラファイエットなどは、ノエルのデコレーションのショーウィンドーの前には、大変な人だかりができています。

 イギリスからの入国禁止だけでは、足りない状況なのです。

 今日、久しぶりにいつも服用している薬の処方箋をもらいに、お医者さんに行って、「第3波は、来ますか?」と聞いてみたら、何の迷いもなく、「もちろん来るわよ!ノエルで人が集まって、感染が拡大しないわけはないもの・・」と、言われました。

 当然、わかっていることながら、今さらながら、あまりにもあっさりと答えられて、私は、返す言葉がありませんでした。


<関連>

「フランスのコロナウィルスワクチン接種」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/12/blog-post_9.html

「ヨーロッパ各国のコロナウィルス感染拡大への対応強化」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/07/blog-post_29.html

 




 

2020年12月20日日曜日

ヨーロッパを再び襲い始めたコロナウィルス感染 イギリス再ロックダウンの波紋


 昨日、イギリスのボリス・ジョンソン首相がコロナウィルス感染が急激に悪化していることから、ロンドン、イギリス南東部を再ロックダウンすることを発表しました。

 クリスマスを目前に控えたこの発表にジョンソン首相は、厳しい面持ちで、「クリスマスを前にして、過酷な現実だが、国民を守るためには、他に選択の余地はない」と語りました。

 これにより、イギリスのこれらの地域への往復の旅行は禁止、生活必需以外の事業は閉鎖され、クリスマスを含め、他の世帯との接触は禁止、他の地域では、12月25日にのみ許可されます。

 このロックダウン宣言までは、23日から27日の間は、3世帯までは、集うことを許可していただけに、寸前になってのこの発表は、ショックもひとしおです。この突然の発表にロンドンを脱出しようとする人が続出したようです。

 これを受けて、スコットランドの首相ニコラ・スタージョンは、休暇中も含めて、スコットランドと英国の他の地域との間の旅行は禁止することを発表しました。

 世界でどこよりも早くワクチン接種を始め、コロナウィルスからの脱却への道を歩み始めたと思われたイギリスの急転直下のこの事態にヨーロッパ全体に衝撃が走っています。

 また、このロックダウン宣言では、感染の急激な悪化の原因は、コロナウィルスの「変異種」の出現によるものとしており、この変異種は、感染率も致死率も感染の速度も、これまでのコロナウィルスよりも高く、この変異種による感染がすでにこれまでに1,000件以上認められています。

 イギリスは、この「変異種」の検出については、すでにWHOに報告済みとしています。

 このニュースを受け、フランスでもこのコロナウィルスの「変異種」は、フランスにも感染が広がる可能性があるのか? 「変異種」はようやく接種が始めたワクチンが効かないのではないか? などと、物議を醸し始めました。

 とはいえ、フランスは、現在のところ、11月のロックダウンのおかげで感染が他のヨーロッパ諸国ほど急激には、悪化してはおらず、「フランスは、第2波の対応に成功している。イギリスや他のヨーロッパ諸国の感染悪化は、他の要因があるのではないか?」などと豪語している専門家もいます。

 相変わらず、自信たっぷりの様子に聞きながら、ヒヤヒヤします。

 ドイツの感染悪化も深刻ですが、すでに以前から、厳しい対策をとっており、イタリアなどの他のヨーロッパ諸国も続々と厳しい措置を取り始めています。

 オーストリアは、クリスマス直後からのロックダウンをすでに発表済みです。

 いずれにせよ、クリスマスを前にしたこの段階で、さらに厳しい措置を取らざるを得なくなっているヨーロッパの隣国が、結果的には、1月以降には、フランスと逆転する状況を生むのではないか?

 フランスは、このままノエルを迎えて、本当に大丈夫なのだろうか?と、日々、刻々と変化していく状況に心底、ノエルを楽しむ気分には、到底なれないのです。


<関連>

「フランス(ヨーロッパ)でコロナウィルスが広まる理由」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/03/blog-post_19.html

2020年12月19日土曜日

ノエルのバカンスに突入したフランス 夜間外出禁止が裏目に出ている

                                             Vous pouvez programmer vos voyages en train en toute tranquillité jusqu'à la fin de l'année.


 いよいよノエルへのカウントダウンが始まり、学校もノエルのバカンスに入りました。ずっと続いてきた土曜日のデモもバカンス突入と同時にお休みに入るようで、久しぶりに土曜日のデモの予定が出ていません。こんなところは、フランス人のちゃっかりしたところです。

 デモと言えども、バカンス中はお休みなのです。

 今週末からノエルにかけてSNCF(フランス国鉄)は75万人の乗客が、空港では1日5万人の利用客が見込まれています。高速道路は200㎞の渋滞です。

 昨年のノエルの期間のSNCFの利用客は、85万人だったそうで、それでも10万人は移動を控えていることになりますが、今のフランスの状況で昨年比11%減のみというのは、どれだけ、歯止めが効かないのかがわかる気がします。

 このノエルを迎える時期に向けて、フランス政府は、一層、PCR検査を強化し、家族の集まりの前には、PCR検査を受けてから参加するように呼びかけています。

 しかし、ワクチンならばともかく、PCR検査でたとえ陰性であったとしても、すぐに次の瞬間には、感染している危険があるわけで、検査を受けたからといって、安心できるわけではありません。

 ロックダウンが解除になった街中は、レストラン・カフェなどが営業していないことを除けば、ノエルの準備のための買い物と見られる人が日々、増え、プレゼント用の買い物と見られる紙袋を下げた人がいっぱいで、食料品を扱うスーパーマーケットなども、なかなかの人混みになっています。

 倹約家のフランス人がお金を使うのは、バカンスとノエルです。この時期、危険ながらもロックダウンを解除すれば、少なからず、経済が回っているのは、街行く人の買い物の様子を見れば、一目瞭然です。

 マスクの仕方が雑になっているのも気になるところで、一応、マスクをしてはいるのですが、鼻と口からずらしたまま忘れているのか、顎マスクになっている人も少なくなく、中には、若い子たちが集団で騒ぎながら、メトロにマスクなしで乗ってきたり・・気が緩んでいる感じがありありです。

 コマーシャルセンターなどの入り口や街中、所々に設置されたアルコールジェルのマシーンも肝心のアルコールジェルが入っていなかったりすることに遭遇することが増えてきました。

 ノエルの家族での会食に際して、どうやって感染を回避したらいいか?ということをテレビでは、ひっきりなしに語っていますが、実際のところは、やはり国民の感染回避に対する意識は低いと思わざるを得ないことが多いのです。

 その一つは、ノエル前にも関わらず、そして夜間外出禁止令が裏目に出て、家でのパーティーが増えています。これは、充分に想像していたことですが、想像以上です。

 気軽に、何のためらいもなく、「家でアペロしない?」などという誘いがフランス人の、特に若い人の間で行き交っています。

 レストランやバーなどは、営業しておらず、夜間外出禁止さえ守ればいいだろと言わんばかり。そこそこの時間に帰ることもできずに、逆にアペロが夜通し続くことになります。これは、最悪です。

 この一年のほとんどを、ロックダウン、ロックダウン解除を繰り返してきたフランス人がこれまでの鬱憤をノエルで一気に爆発させることは間違いありません。これまで頑張ってきたのだから、ノエルくらいは良いだろうと思うのもわからないではありませんが、このノエルがこの一年で一番危険なシチュエーションであることは言うまでもありません。

 室内、会食、気温の低下と久しぶりの家族との再開という気の緩み。感染悪化の全ての条件が揃っています。

 フランスの新規感染者数は、先々週は、1日平均1万1千人であったところが、先週は、すでに1万3千人に増加しています。

 オーストリアでは、すでにノエル後には、再度、厳格なロックダウンに入ることを今から発表しています。フランスは、発表するまでもなく、限りなくその可能性が高いのですが、今からノエル後のロックダウンを発表などしたら、ノエルでのハメの外し方がさらに加速するかもしれません。

 どちらにしても、これから年末年始、そして1月・2月とさらに気温も下り、本格的な冬に突入して、ウィルスがさらに活発になります。

 どう考えても、フランスの第3波は、もうすぐそこまで来ています。


<関連>

「フランス人の金銭感覚 フランス人は、何にお金を使うのか?」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/10/blog-post_62.html

 

2020年12月18日金曜日

マクロン大統領コロナウィルス感染

                                                                                                                                   


 

 「マクロン大統領がコロナウィルス陽性」まさかの衝撃的なニュースが流れたのは、17日の午前10時半頃でした。

 フランスは、ロックダウンが解除され、バカンス前の学校2日間は、学校に行かずに、感染回避をしましょうなど、ノエルに向けてのコロナウィルス感染への警戒が盛んに呼びかられ始めたばかりの出来事にフランス中が大騒ぎになりました。

 国民も驚きましたが、誰よりも驚いたのは、きっとご本人に違いありません。

 マクロン大統領は、16日の夜に、咳、鼻水、極度のだるさ、身体の痛みなどのコロナウィルスの症状と思われる兆候が現れたために、翌日朝に、PCR検査を実施、結果、コロナウィルス陽性と診断されました。

 コロナ禍中、忙しく動き回っているマクロン大統領が一週間以内に接触した人の数は、計り知れないず、接触人物をリストアップするだけでも、大変なことです。

 日本でも菅首相の夜の会食が問題になっていましたが、マクロン大統領も15日に、エリゼ宮で12人と昼食会議を行っていることが取り上げられています。

 ノエルの会食には、1テーブル6人以内に抑えましょうと言っているのに、12人・・・しかし、一般家庭とは違って、エリゼ宮の食事は、テーブルの大きさも桁違い、隣の人との距離も充分に離れており、部屋の天井も4〜5メートル以上はある空間で、一般的なケースとは、比較にはなりません。

 (ちなみに、関係ないけど、この日のエリゼ宮の昼食のメニューはポトフとシュークリームでした)

 とはいえ、この時期に、昼食を取りながら、会議をする必要があるのかどうか?という点については、疑問は残りますが、政府はあくまでも、充分な衛生管理が取られた上での昼食会議や夕食会議は、国で許可されているものであるとしています。

 また、それを正当化するためなのか? マクロン大統領のコロナウィルス感染に関して、オリヴィエ・ヴェラン保健相は、「マクロン大統領は、エリゼ宮での食事会ではなく、恐らく、数日前(10日)にベルギー・ブリュッセルで開催された欧州評議会で感染したと思われる」と発言しています。

 実際のところ、彼がどこで感染したのかは、わかりませんが、とりあえず、彼が仕事を共にしている政府要人の多くは、1週間の隔離が必要となりました。

 中には、症状がなく、接触したものの感染の危険は考えられないとして隔離を拒否している人もいるようですが、とりあえず、カステックス首相は、1週間の隔離、リモートワークに切り替える宣言をしています。

 また、彼の妻もPCR検査の結果が陰性でしたが、1週間は隔離生活を送ります。

 マクロン大統領は、これまでコロナウィルスに感染した国家のトップであるアメリカのトランプ大統領やイギリスのボリス・ジョンソン首相、ブラジルのボルソナロ大統領のように敢えてマスクをせずにいたわけでもなく、感染には、一般人以上に気遣っていたはずです。

 彼はペンの一本一本までもきれいに消毒していたそうなのです。

 そんな彼が感染したことは、「リスクはどこにでもある」という警鐘を鳴らしたことになります。

 マクロン大統領は、1週間、ベルサイユ近くのラランテルンの大統領官邸で隔離生活を送りながら、リモートで仕事を継続する予定になっています。

 同日の夕刻には、国民の不安を払拭するために、マクロン大統領は、リモートで珍しく紺のハイネックにマスク姿でテレビ出演し、自分がコロナウィルスに感染したこと、1週間の隔離生活をしながら、リモートで仕事を継続することを発表しました。

 彼の症状が悪化することがなければ、1週間後には、ちょうどノエルを迎えます。

 彼のコロナウィルス感染が、感染のリスクとしてフランス国民に少しでも響いてくれれば、こんなに大きな警告はないと思います。

 彼が感染していても症状がなかった人から感染したことは明白です。なんといっても国家のトップとしては、群を抜いて若い42歳の大統領。

 翌日には、Twitterの映像を通して、自分の病状を毎日、報告することを約束し、国民にメッセージを送っていましたが、その姿は、いつもはエネルギッシュな彼とは違うものでした。感染して症状もあるのですから当然ですが・・

 早く順調に回復して、これから恐らく第3波を迎えるフランスのために頑張って欲しいと思っています。


<関連>

「フランスのロックダウン緩和へのステップ マクロン大統領の会見」

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2020年12月17日木曜日

パリから車も人も消えていく パリ絶対伝説の崩壊!?

 


 ロックダウンが解除された代わりに、フランスに戻ってきた夜間外出禁止令。夜20時から朝6時までは、外出禁止になりました。取り締まりもあり、罰金(135ユーロ)付きということもあって、今のところ、夜になると街はシンと静まりかえっています。

 ノエルを控えているということもあるのか、予想以上に皆、この夜間外出禁止の規則を守っているようです。(といっても、まだ2〜3日しか経っていませんが・・)

 むしろ、外出証明書さえあれば、外出できたロックダウン中の方が夜も人がいたような気がするのは、皮肉なことです。

 いつもなら、ノエル前の人出は、相当なものですが、静まりかえって、車さえ、まばらな、イルミネーションだけが輝く夜のシャンゼリゼなどを見ると、やたらと美しいだけに、かえって今年の異常さを改めて感じます。

 3月のロックダウンの時に、家のアパートの駐車場が空っぽになったのには、驚きましたが、(多くの人がロックダウン中をセカンドハウスや故郷の両親の家で過ごしていました)一度目のロックダウンが解除になった5月になっても、車は、あまり戻ってきませんでした。

 私とて、そんなに頻繁に駐車場のチェックをしているわけではないので、詳しい出入りはわかりませんが、一度は、パリに戻ったものの、再び、バカンスに出てしまったのかと思っていました。

 ところが、バカンスが終わっても、車はやっぱり戻ってきませんでした。現在、駐車場のスペースは、半分も埋まっていません。

 うちの駐車場を見る限り、コロナウィルス感染が始まって以来、車を手放したと思われる人がかなりいます。経済危機はもちろんのこと、こう度々、ロックダウンや外出制限があっては、使わない車のための維持費(税金・保険料・駐車場料金・燃料費)もバカにならないのでしょう。

 倹約家のフランス人、当面は、車はあまり使えないとなれば、早々に車を手放すことを考えるのもわからないでもありません。

 もともと、我が家は、大きなコマーシャルセンターがすぐ近くにあるため、買い物などにも車は必要なく、小さい子供がいるわけでもなく、とっくの昔に車を手放しています。車がどうしても必要な時は、レンタカーかタクシーを使います。最近は、結構な距離でも、もっぱら自転車です。

 パリからは、車が減るだけでなく、住居や事務所も移転する人も 増えています。

 仕事がリモートワークが中心になり、これまで首都にいることが必須であった人たちも、リモートで仕事が済ませられることが定着し始めたこともあり、TGVで1〜2時間以内でパリを行き来できる範囲内に移転すれば、家賃が半分以下で、もっと広くて快適な暮らしができる庭付きの物件などに乗り換え始めているのです。

 以前、メトロの駅の広告で、パリの不動産物件を扱うポスターに、「買うなら、パリのアパートに限る!そこは、パリであり、値段は決して下がることはない・・」というようなコピーのポスターを見かけて、「さすがのスゴい、パリのプライドに満ち溢れた余裕のコピーだ・・」と思った記憶があります。

 コロナ禍の今、神話に近いパリ絶対伝説は壊れようとしています。そもそも、フランス人にとって、パリは憧れの地であると同時に嫌われ者でもある場所。ましてやこの経済危機にやたらと高い家賃に狭い空間のアパートに見切りをつける人が増えているのです。

 来年には、ワクチンも広まり始めるようですが、本格的に経済が復興するのは、まだまだ先のこと、収入が減ったり、失くなったりする人が増える中、パリの家賃や車の維持は重くのしかかっているのです。

 フランス政府は、自動車業界支援のために、新車購入のための特別控除・援助などを行っていますが、一般市民にとっては、新車購入どころか、アパートの家賃や車の維持費に頭を抱えている人の方が多いのです。

 今のところ、2024年パリで開催予定のオリンピックの話題は、全く上がっておらず、それどころではない状況のフランスですが、パリに人が戻ってくるかもしれないとしたら、そんなタイミングなのかもしれません。


<関連>

「パリはフランス人に嫌われている」

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2020年12月16日水曜日

ロックダウン解除初日のフランス バカンス前の二日間は学校を休んでもいい


 


       

 フランスは、ロックダウン解除の第2段階に入りました。今朝、買い物に出かけようとして、思わず、携帯を手に取り、外出証明書をダウンロードしかけて、「ああ〜今日から、いらないんだった・・」と出かける時も何か忘れものをしているような、心許ない気分になりました。

 習慣というものは、恐ろしいものです。まあ、楽な方にはすぐに慣れますが・・。

 外出が自由になった代わりに、夜の外出禁止(夜20時までに家に帰らなければなりません)が義務付けられるようになりました。個人的には、夜は出歩かないので、関係ないのですが、20時以降も営業していた店舗にとっては、痛手になります。

 逆にロックダウン中には、時間帯の制限はなかったので、外出証明書さえあれば、夜も買い物に行けたわけで、お店は夜の時間帯も営業できていたのです。


20時閉店と朝8時から営業のお知らせ

 そんな状況を受けて、カーフールなどは、20時に閉店する代わりに、朝の8時から、時間を前倒しにして、営業するというフランスらしからぬ措置に出ています。

 これもひとえにノエルのなせる技、フランスが、寸暇を惜しんで営業するなど、通常ではあり得ないことです。

 ノエルがもうすぐそこまで近付いてきて、今週末からフランスの学校はノエルのバカンスに入りますが、ここへ来て、フランスの文部省は、ノエルを家族と過ごすために(祖父母と過ごすために)、ノエルのバカンスの2日前からは、学校を休んでもいいという通達を出しました。

 これは、「24日のクリスマスイブからちょうど一週間前から、自主隔離をして感染を防ぎましょう!」ということです。

 これは、あまりに急な通達で、ただでさえ、遅れている授業がさらに遅れることや、子供を学校に行かせないとなると、親も仕事に行けなくなるわけで、ノエルから年末にかけては、すでに、休みの予定にしている人が多い中、スケジュール調整は大人にとっても簡単ではありません。

 中には、学校側の衛生管理を信頼してもらっていないと怒り出す学校関係者などもいるのがフランスらしいところで、終いには、「これは、個人の判断で!この二日間は、学校を休む権利があるということです!」などと、若干キレ気味の対応。

 この二日間の学校を休みにする対策は、急なこともあり、混乱の元を増やしたような印象です。

 ここ数ヶ月で、○○日からロックダウン、これは、営業許可、これは禁止、それに加えて、時間の制限なども加わり、ただでさえ、規則を守ることが苦手なフランス人にとって、あまり細い規則の提示は逆効果になりかねません。

 しかも、半端な自己規制を行ったことで、家族と過ごすノエルの日、当日に気が緩む要因にもなりかねません。

 ロックダウン解除の初日、ノエルの犠牲になって、ロックダウンが解除にならなかった劇場、映画館関係者は、同日、オペラ・バスティーユに集まり、デモが行われました。

 移動制限が解除されたことから、TGV(新幹線)も通常運転に復活し、乗車率は、70%程度で、さっそくにスキーを担いで移動する人も見かけられ、(フランス国内はスキーはできないはずなのに・・)23日には、国内大移動のピークを迎えることが見込まれています。

 11月初旬のフランス国会で、「今後のスケジュールは、すべてのフランス人がクリスマスを家族と過ごすことができるように調整しなければならない」という野党の意見が大多数だったことに仰天していましたが、結果的には、全てノエルを照準に当てたスケジュールになっているフランス、間際になって、学校を二日間休みにするという付け焼き刃的な措置もまた、間違いなく、ノエルファーストなフランスの、それでも不安を隠しきれないジタバタした様子が浮き彫りになっています。


<関連>

「フランスの国会を騒がせる「フランス人のクリスマスを迎える権利」」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/11/blog-post_5.html

2020年12月15日火曜日

フランス税務当局、カルロス・ゴーンに追徴課税金と財産差し押さえ

  



 思い起こせば、2020年の年明けは、カルロス・ゴーンの日本からの逃亡劇から始まりました。シャンゼリゼのカウントダウンの様子をテレビで見ていた時に、カルロス・ゴーン逃亡のニュースが流れ始めたのです。

 それからしばらくして、年明け早々、カルロス・ゴーンがレバノンに世界中の記者を集めて、会見を開き、彼自身の行動の弁明と正当性を訴えました。

 しかし、間もなくして、世界は、コロナ禍に飲み込まれ、カルロス・ゴーンどころではなくなりました。

 日産とルノーにまたがる彼の事件は、日本とフランスの両国での追跡で、両国の対応の仕方を見比べられる意味でも、興味深い事件でもありました。

 カルロス・ゴーンの逃亡先のレバノンでは、今年の8月初めに比類のない湾岸倉庫の爆発事件が起こり、30万人が住む家を失ったことから、国民の45%が貧窮生活を送る経済危機状態にあります。

 レバノンは、一部の特権階級が支配する腐敗した政権に反発する動きが高まり、レバノンと関係の深いフランスは、翌日には、マクロン大統領が現地に赴きました。

 フランスでは、経済危機、混乱状態にあるレバノンに所有しているカルロス・ゴーンの資産価値が1億2千万ドルから7千万ドルに目減りしたなどと報道されていましたが、(彼は、レバノン北部にあるワイン畑の40%を保有しているほか、スキーリゾートやレバノン市内に広大な土地を所有しています)コロナウィルスを初め、次から次へと起こる事件に彼の存在も埋もれているかに思われていました。

 しかし、ここへ来て、フランス紙リベラシオンがフランスの税務当局が追徴課税金として、カルロス・ゴーン夫妻の資産、約1300万ユーロ(約16億4000万円)を差し押さえたことを報じています。

 彼は、税法上の住居を2012年にオランダに移していますが、これは、税金回避のためのもので、日本とフランスを行き来していた彼の生活の本拠はフランスにあったとフランスの税務当局が判断したものです。

 彼は、彼の収入に対しての税金は、オランダで支払っていることになっていますが、フランスの税務当局は、この動きは架空のものであると考えているようです。

 逃亡後、彼がレバノンで行った記者会見の際に、フランスの記者からの、「フランス政府に期待することはありますか?」との質問に、「全くありません」と即答していたカルロス・ゴーンですが、まさかのフランスでの資産差し押さえに、フランスも彼を容赦しない態度が公になったことになります。

 私のささやかな日常生活でも、日頃から、公的機関が円滑に回らず、トラブルの多いフランスですが、なぜか税務署だけはキッチリしていて、「ちゃんとできるところもあるんだ・・」と感心しているのです。

 この際、日本の分の恨みも募って、カルロス・ゴーンからも、キッチリと取り返すものは取り返して欲しい、「頑張れ!フランス!」という気持ちになっています。

 それでも、あれほどのことをしてきた彼が、あっさり引き下がるわけはなく、今日から、カルロス・ゴーンは1月18日に開かれる予定の公聴会の準備に入るようです。

 それにしても、世界各地に分散されている彼の資産や、あの有名なベルサイユ宮殿での結婚披露パーティーを見るにつけ、彼の強欲さと、ここまでして、一体、何が欲しいのか?と嘘だらけの人生を必死に生きている彼を虚しく感じるのです。


<関連>
「カルロスゴーン会見に見るフランス人流の自己主張の仕方」

「100年に一度くらいのことが立て続けに起こる年 レバノンでの湾岸倉庫爆発事件」