2020年5月11日月曜日

自己責任に委ねられたフランスのコロナウィルス・ロックダウン解除


Des voyageurs munis d\'un masque en gare de Lyon, à Paris, le 7 mai 2020.


 5月11日のロックダウン解除が発表されたのが、5月7日(木)。地域による段階的な解除とのことだったのに、条件付きとはいえ、レッドゾーンまでの解除に、この三日間は、とにかく決まってしまったことゆえ、皆、必死の準備に追われていますが、特に公共交通機関の現場は、混乱状態のまま、ロックダウン解除に突入します。

 ここのところ、一日の死者数も70人(5月10日現在)までに下がっていますが、ICUにいる重症患者は、減少しているものの、未だ、2812人もおり、その半分以上がイル・ド・フランスに固まっている状態です。つまり、パリ近郊の病院は、未だ、満床状態です。

 そんな、現状を踏まえてか、フランス人の72%は、ロックダウンが解除になっても、再び感染が拡大して、また、ロックダウンになると思っていると言います。

 一番、心配されているのは、パリ、パリ近郊の公共交通機関は、5月11日の段階では、パリの大部分のメトロ、バスは、通常の75%の運行状態で、(1、14号線は、通常どおり、13号線85%、2〜12号線は75%)、郊外線は、60%だといいます。

 依然として、リモートワークが続けられる人が公共交通機関を利用しないことを差し引いても、人と人との距離を取らなければならないことを考えれば、充分な運行状態とは言えません。バスに関しては、乗客は、最大20人までとなっています。

 これまでのストライキの際などの公共交通機関の混乱ぶりを見ていると、今回の交通機関での混乱が起きた場合は、ことさら恐ろしいことになることが考えられます。(だいたい、平常時でも、ストライキでなくとも、パリの交通機関は何かと問題が多いのです。)

 このような規則や、外堀は、どんどん埋められえていますが、実際の労働者のリスクは、守られきれていないのが現状です。国や会社の経営者側は、これまでのロックダウンでのマイナスを少しでも埋めようとロックダウン解除には、前向きですが、実際の労働者たちには、不安が大きいようです。

 労働環境の安全の確保ができていないということで、組合からの物言いがつき、ルノーの工場などは、閉鎖されたままですし、大勢の人が不安に思っている公共交通機関(RATP)の職員(運転手)などからも、今のところ、安全確認への回答を得ていないと訴えています。

 ロックダウンが解除されるということは、保証もなくなるということで、リスクを侵してでも働かなければならないのですから、あとは、自分を守るための自分の保護は、各々が自分でしろ!と、そのリスクは、国民のモラルに大きく委ねられた感が否めません。

 学校の再開にも反対して、子供を行かせないと言っている人が、多いです。

 ここへ来て、ヌーベルアキテーヌ地方では、葬儀の参列を機に、また、オードセーヌでは、学校再開の準備に取り組んでいた人々からの感染の拡大が発表されています。

 しかし、ロックダウン解除になった午前0時、窓の外からは、歓声が聞こえ、まるで12月31日の年明けの瞬間を楽しむように、マルセイユでは、0時を待って、街に繰り出す若者まで・・。やはり、開放感を喜んでいる人も多いことに、あらためて、驚かされます。

 再び、ロックダウンになることを覚悟しつつも、とりあえずは、ひと息つきたいというのが、正直なところなのかもしれません。中には、今回のロックダウン解除は、次のロックダウンへの準備期間と言っている人までいます。

 通勤でなくとも、これからは、どんどん、人が街に溢れ出します。

 パリのジョルジュポンピドゥ病院の緊急責任者は、「今後5週間で感染拡大が再び始まる可能性がある」と警告を鳴らしています。

 しばらくの間、フランスは、ロックダウン中以上の混乱が続くでしょう。










2020年5月10日日曜日

コロナウィルス・ロックダウン中のインターネットのない世界




 ロックダウンから、50日ほど経って、突然、インターネットが使えなくなりました。
 
 ロックダウンで、外出できなくなっても、ネットが通じるおかげで、情報は、入るし、周りの人とも繋がることができたので、インターネットがある時代で、本当に良かった・・と思っていたら、突然、サーバーがダウンしてしまいました。

 ここのところ、ネットが遅くて、利用者が多いのだなぁと思っていたのですが、まさかのダウンとは・・。

 慌てて、サーバー会社に電話すると、現在、対応しきれないので、しばらくお待ちくださいとのこと。こんな時にもさすがのフランス・・ちっとも、対応を急いではくれません。外に出たところで、サーバー会社のお店もやっていないので、仕方なく、修復可能になるまで、インターネットのない生活を送ることになりました。

 インターネットのない生活は、何年ぶりだったでしょうか? 長いこと、ネットに頼った生活をしてきた私ではありますが、考えてみれば、私は、デジタル世代ではなく、人生の半分以上は、自宅では、ネットを使わない生活をしてきたのです。

 すっかりネットに頼る生活に浸かって慣れきって、習慣になってしまって、わからないことがあれば、ネットで検索して調べ、テレビを見ることよりも、YouTubeを見ることの方が多くなっていた生活(今は、非常時でもあるので、テレビでニュースを見るようにしていますが、普段は、ほとんどテレビは、見ません。)、そのYouTubeで、運動不足解消のためにやっていたダンスやヨガなどもできなくなってしまいました。

 毎日、書いていたブログも出せなくなり、一日のルーティーンも崩れそうになってしまいました。自宅の中での狭い生活の中でも、一日のスケジュールを決め、規則正しく生活を送ることで、何とか、自分を保ってきたのです。

 しかし、無理なものを恨んで、イライラしても、始まりません。

 ネットは、あれば、あったで、やたらと使ってしまうので、ネットのない世界を味わってみるのも良いかと腹を据えることにしました。

 実際に、なくなってみると、いつも、どれだけネットに費やしている時間が多いかと思わされるほど、最初は、なんとなく、手持ち無沙汰な感じもありましたが、慣れてくれば、ニュートラルな自分に戻れるような気さえしてきます。

 しかし、一方、自分で色々な情報を収集できないことは、自分での判断が下しづらいことなのだということも痛感しました。

 でも、以前は、こんな風に時間を過ごしていたんだな・・と、ネットのなかった、以前の生活を少しずつ思い出していきました。電気や水道が止まってしまったら、それこそ命に関わる大変なことですが、溢れかえる情報から絶たれた状況も、時には、あっても良いような気さえしてきます。

 考えてみれば、私にとっては、アフリカにいた頃の生活は、今と少し似ているところがありました。あの頃、家には、ネットは通じておらず、電話とて、国際電話などは、そうそうできるものでもなく、外出とて、そう気安くできる状況でもありませんでした。

 大学へ通ったりもしていましたが、それ以外は、家で、ひたすら勉強し、持って行った本を読み、日本語が聞きたくなれば、主人が持っていた日本語学習用のNHKのビデオ(その時は、それしかなかったので・・)などを何度となく、見ていました。

 アパートには、住民共有のプールもありましたが、マラリアの感染が怖くて、早朝か、夜、日が落ちてからしか行けないので、結局は、そんなにプールには、行けませんでした。マラリアの感染に関しては、街中は、普通に生活していれば、問題はありませんでしたが、ラグーンの近くや、貧窮地帯へ行く時などは、注意が必要でした。

 実際に、主人は、仕事関係の視察で、ラグーンの近くにある工場などに出かける機会もあり、何度かマラリアに感染していました。高熱を出して苦しみ、家にお医者様が来てくれたりしていましたが、その時に主人が飲んでいたのが、今、フランスでは、コロナウィルスの治療に希望をもたらしているクロロキンです。

 マラリアは、蚊に刺されることで感染するので、コロナウィルスよりは、わかりやすい病気なうえ、人から感染する病気でもなかったので、その点は、少し違いますが、外に出れば、病気に感染する危険があり、家の中は、毎日、ジャベルで消毒していましたし、感染を恐れるという意味で、今と少し似ているような気がするのかもしれません。

 アフリカに行く際にも、黄熱病の予防注射が義務付けられていて、私などは、その予防注射をしただけで、あまりにだるくて、体調が悪くなり、もう二度とごめんだと思ったものです。

 そういえば、私のベランダでの家庭菜園も、アフリカが初めてで、あの頃は、まだ、初心者で、一生懸命に育てた、わずかばかりの枝豆を、あっという間に一瞬で食べてしまったことも覚えています。

 今も静かな生活の中で、狭いベランダで、あれやこれやと野菜を育てる生活です。アフリカでは、日本語学習用のビデオを見たりしていましたが、今は、日本のドラマや映画などを録画してもらったDVDのストックがたくさんあるので、そんな昔懐かしいドラマを見たりしながら、あの頃(アフリカにいた頃)よりは、快適に家で過ごせるようになったと、ネットのない世界もたまには、いいかなと思い始めていました。

 そして、2日経って、朝、目覚めたら、ネットが繋がっていました。到底、しばらくは無理・・と居直っていただけに、肩透かしを食ったような・・嬉しいけど、ちょっと残念な気さえする妙な気分でした。


 




















2020年5月9日土曜日

フランスのコロナウィルス・ロックダウン中の戦勝記念日のセレモニーとロックダウン解除への混乱


     https://s.france24.com/media/display/10f43ffa-9111-11ea-affe-005056a98db9/w:1240/p:16x9/2020-05-08T094643Z_1721060431_RC29KG9BJHQU_RTRMADP_3_WW2-ANNIVERSARY-FRANCE-MACRON.webp


 フランスは、5月8日は、戦勝記念日で祝日で、毎年、凱旋門でセレモニーが行われています。今年は、75周年にあたる年でしたが、セレモニーは、コロナウィルスのロックダウンの中、ある意味、歴史的な、特別な状況で、行われました。

 セレモニーは、最小限に縮小され、例年は、凱旋門にある世界大戦での犠牲になった戦士のためのモニュメントに大きな花を捧げて慰霊をし、華やかにパレードが行われ、シャンゼリゼの沿道には、多くの見物客が押し寄せます。

 今年は、パリの街は、からっぽで、人の気配が全くない中、マクロン大統領、フィリップ首相、前任者であるニコラサルコジとフランソワオランド、パリのアン・イダルゴ市長、軍関係者等の最小限の出席者のみで、行われました。

 出席者は、敢えて?誰もマスクはせず、人との距離を置く形で行われました。伴奏の楽隊なしで歌われるマルセイエーズ(フランス国歌)が、からっぽの街に響いていました。

 奇しくも今は、戦時中のような状態で、戦争の勝利を記念するセレモニーは、ロックダウン解除を目前にしているフランスには、コロナウィルスに勝利したわけではないにしろ、一つの節目を迎えるタイミングで、ある意味、象徴的な意味合いも感じられました。敢えて、マスクをせずにこのセレモニーに臨んだマクロン大統領のコロナウィルスとの戦いへの勝利、あるいは、勝利への道へのアピールであった気がしています。

 しかしながら、ロックダウン解除に向けて、世間は、その準備に大わらわで、特に、パリ、イル・ド・フランスの交通機関は、必死に安全対策を行なっています。

 SNCF(フランス国鉄)は、50%、RATP(パリ交通公団)は、75%の運転を保証し、パリの60ヶ所の駅は、閉鎖状態のまま留められます。公共交通機関でのマスク着用の義務化(マスクをしていない場合は、罰金135ユーロ)、通勤時間帯とされる 6:30~9:30、16:00~19:00 は、雇用主発行の通勤証明書が求められます。

 駅には、人の間隔の目安になるためのテープやステッカーが床に貼られ、一日に最低でも2回、駅や電車の車両の消毒を行うとしています。

 それをコントロールする人の配置の都合や、準備などで、閉鎖状態の駅が60もあるのでしょうが、その分の人は、他の駅に流れるわけで、開けられた駅での人の密集が心配されます。

 ロックダウン解除となれば、これまでは、ほとんど無くなっていた交通事故などの発生も予想されることから、特に現在も満床状態のパリ、イル・ド・フランスの病院が耐えられるのかも心配されます。

 昨年から長いこと続いた交通機関のストライキの際などは、ほとほと国民も疲れ果て、RATPを文字って、(Rentre Avec Tes Pied)(自分の足で帰れ!)などと言われたほどです。今回も、安全を考えれば、自分の足で通勤しろ!ということになるかもしれません。

 また、昨年のストライキは、年金問題でのストライキでしたが、RATPでは、すでに職員が8名もコロナウィルスで亡くなっており、感染してしまった人も大勢で、この火事場騒ぎのような準備と、危険な状況下での仕事に、再び、ストライキが起こっても、何の不思議もありません。

 フランスのロックダウン解除は、まさに前途多難です。



















2020年5月8日金曜日

フランスのロックダウン解除 フランスは、国民の命と経済の両方を守ることができるのか?

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 フランスは、3月17日以来の約2ヶ月間のロックダウンを5月11日に解除することを発表しました。

 前回のロックダウンの延長と解除の発表以来、地域ごとの段階的な解除ということで、フランスの地図を感染状況、病院の空き状況などによって、赤、黄色、緑の三色に色分けしてきましたが、今日の発表では、赤と緑の2色になりました。

 色分けをし始めてから、赤から黄色、緑へと変わった地域もありましたが、結局のところ、イル・ド・フランス、オー・ド・フランス、グランエスト、ブルゴーニュフランシュコンテの4つの地域、およびマヨット県は、赤のまま、残りました。

 ところが、赤の地域は、解除は、延期と思いきや、厳しい条件付きということで、他の地方と同じ段階で、「ロックダウン解除」という決断を下したのです。

 数日前に、マクロン大統領が小学校(イル・ド・フランス地域にある学校)を訪問し、マスクをして、子供たち(親が医療従事者だったりする家庭の子供が通学している生徒が数人だけの教室)と接したりしている様子を報道したりして、すっかり、解除モードをアピールして、子供たちにも、「来週からは、クラスメートも少しずつ学校に来るようになるよ!」などと、話したりしていたので、まさか・・と思っていたのです。

 わざわざ、色分けしておきながら、同時に解除するのは、解せませんが、それだけ、経済的にも逼迫した状況なのだと思います。ここのところ、一日の死者数も減少してきているし、ICUにいる重症患者数も減ってきています。しかし、レッドゾーン(赤の地域)は、未だ、ICUも満床状態で、余裕がありません。私は、そのための、色分け、段階的な解除と受け取っていましたが、この状態が長引くことは、明白で、リスクを冒してでも、ウィルスとともに生きていくことを模索し始めなければならないと判断したのでしょう。

 検査数を週70万に拡大し、陽性者は、隔離し、感染者の感染源の追跡も開始します。

 特に、イル・ド・フランスは、症例の多さは、予想以上としながらも、ロックダウンを解除することは、人口も多く、依然としてリモートワークが推奨されるものの、公共交通機関の混雑は避けられないイル・ド・フランスは、特にリスクは高いと思われます。

 公共交通機関の利用は、11才以上の乗客には、マスク着用が義務付けられ、マスクをしていない場合は、罰金135ユーロが課されます。また、ラッシュアワー(6:30~10:30, 15:30~19:30)には、職業証明書や外出証明書(通勤以外の止む終えない理由の場合)の携帯が必要となります。
中学は、閉校のまま、公園や庭園なども解放されません。自宅から100キロ以上の移動には、新たな証明書が必要となります。(原則的に禁止)

 とはいえ、カフェやレストラン、映画館などは、営業は、開始できないものの、40万の企業が再開され、87万5千人の人が仕事を再開します。全国の学校の80〜85%が再開するとしており、幼稚園、小学校の一部の学年の授業が段階的に再開されますが、実際に登校する生徒は、せいぜい6人に1人だと予想されています。

 こうした決断には、経済的な逼迫と同時に、近隣のヨーロッパ諸国が、少しずつロックダウン解除を始めていること、特にドイツのロックダウンが順調なことにも影響されているのだと思います。

 しかし、最初から、ドイツは、全く違う対応をしてきているのです。死者数も重症化する患者もフランスとは、桁違いです。当初から、検査・陽性者の隔離を繰り返し、現在も、検査数は、桁違いです。国民性も違います。2ヶ月間の監禁生活でのフランス人のストレスは、相当なものです。

 ドイツが順調だからと言って、フランスが同じように行くと考えるのは、危険です。フランスのロックダウン解除の鍵は、検査と隔離がどれだけ徹底して行うことができるかにかかっていると思います。

 公共機関だけでなく、マスクの着用が推奨されるとの発表以来、各市町村からの住民へのマスクの配布が始まっています。我が家にも昨日、紺色のマスクが届きました。各市町村は、住民からの突き上げを食って、マスクの配布の有無は各市長の政治生命がかかっていると言っても過言ではありません。

 しかし、マスクをすると、マスクをしていることで安心して、フランス人が再び、手を洗わなくなるかもしれない・・などと心配する人がいるような状態でのロックダウンの解除は、本当に心配です。実際に、この解除に猛烈に反対している赤い地域の市長さんもいます。

 今日も、何度、救急車のサイレンを聞いたか、わかりません。

 6月2日には、5月11日以降の感染状況の変化により、解除が広範囲の業種に広まるか、それとも再び、逆戻りするかの発表があるそうです。

 ロックダウン時には、他に選択の余地がない状況でしたが、今回は、他の選択もあったはず。兎にも角にも、国の将来に関わる重大な決断が下されたのです。

 フランスは、国民の命と経済の両方を守ることができるのか?
 



















 

2020年5月7日木曜日

ロックダウン後、2回目の買い物 生まれて初めてフランスでマスクを買いました!




 トイレットペーパーの買い置きは、してあったつもりで、まだまだ、あるある・・大丈夫・・と思っていたのに、いつもと勝手が違う状況で買い物をしたせいか、(単なるドジなのですが・・)買い置きしてあったのが、トイレットペーパーではなく、まさかのキッチンペーパーで、・・ロックダウンが解除になる前、ギリギリの今週末にでも買い物に行こうと思っていたのが、急遽、前倒しで、買い物に行くハメになりました。

 今週から、一般大衆向けにマスクの販売が解禁になったため、人出が多くなっているかと思い、開店と同時に行ったのですが、すでに、少しですが、並んで入場を待つ状態。ロックダウン以来、一度、買い物をしたきりだった私は、トイレットペーパーの他にも買い物が色々とあり、みるみるカートは、いっぱいになりました。

開店前からおとなしく並ぶ人々

 販売されているはずのマスクは、混乱と人だかりを避けるため、店内に陳列されてはおらず、レジで会計の際に頼めば、買えるということでした。

 1ヶ月ぶりのスーパーマーケットは、店内もすっかり、コロナモードが整えられて、透明なプラスチックのバリアや、人と人との距離を取る目安となりやすいために、床のあちこちに、物々しい色のテープが貼られていましたが、店員さんも、お客さんも、この状態に少し慣れたようで、先月、感じられたような、異様な緊迫感は、薄れていました。とはいえ、誰もが話をすることもなく、黙々と買い物をする様子は、いつもとは、全く違う光景です。

店内いたるところにこの表示

街中では、マスクをしていない人が増えているようで、心配していましたが、スーパーマーケットの中は、思ったよりも多くの人がマスクをしていたのには、少し、ホッとしました。欠品が多かった棚にも日常どおりとは、言わないまでも、先月、見たような、まるっきりガランとした棚は、見当たりませんでした。

 前回、意外にもガランとしていたチョコレートの棚も満杯になっていましたが、よく見てみると、いつものラインナップとは、少々、違いました。

 もちろん、トイレットペーパーも補充されていましたが、皆が家にいるために消費量も多いためか? 買い物の回数を減らすことを目的としているのか、あるいは、この際、大量に売ることを目的としているのかは、わかりませんが、大きなパックのものが多く、少々、戸惑いました。

 なかなか買えないと言われていた小麦粉も、どうやら、ポルトガルから輸入したらしい見慣れないパッケージのものが売っており、元々は、輸出用に生産されているものではないらしく、ポルトガル語のみの表記なので、それが、一体、小麦粉なのかどうか、少し迷ってしまいました。
 
 近くにいた男性も、「これ、小麦粉かな?」と迷いながら、手にしていました。いつもなら、ここで、話が始まるはずだ・・と思いつつ、ちょっと寂しい気持ちになっていました。フランス人は、知らない人にでも、わりと気さくに話しかけ、買い物に出ても、結構、知らない人と話をしたりするのですが、そんなことがまるでないのは、やはり、緊張感からなのでしょう。売られている商品の名前や値段の表示もないのも、日本では、あり得ないことだと思いながらも、この状況では、致し方ないのかもしれないな・・と思いながら、2袋の小麦粉を手にしたのでした。

 とりあえず、欲しかった食料品を夢中で、カートに詰め込んでいると、見慣れない新しい商品が登場しているのにも気がつきます。消毒用のアルコールジェルなどが、手に入りにくいためか、お酢を使った除菌スプレーなるものなども見つけました。(私は、買いませんでしたが・・)
 
お酢の除菌スプレー

 買いたい物をたくさん詰め込んで、レジに並ぶ段になって、マスクのことを思い出しました。お客さんの一人が「マスクはないのか?」と叫び出したからです。「マスクはレジにあります!」「マスクは、もうありません!」という声・・。私は、誘導されたレジが運の悪いことに、この期に及んで、小切手で買い物をしようとしているお客さんの後になってしまい、小切手がなかなか通らずに、延々と待たされるハメになりました。

 しかし、ようやく私の支払いの番になって、最後に、一応、「マスクは、ありますか?」と聞いてみたら、意外にも、「あるわよ!」というので、「じゃあ、下さい。」と言ったところで、まさかの割り込み客が登場。残り2パックのみだというので、割り込み客と、「じゃあ、一つずつ・・」と分け合うことにして、マスクを1パック買ってみました。

カーフールで販売しているマスク5枚セット2.9ユーロ

 フランスで、マスクを買ったのは、初めてでした。5枚入りで、2.9ユーロ(約350円)、政府が指定した上限の値段、1枚95セントよりは、安いものの、それでも、やっぱり、高いような気がします。

 想像以上に時間がかかり、帰ってくると、慣れないマスクをしているせいもあり、うっすら汗ばんで、すぐに、買ってきたものを消毒したり、自分も着替えたりして、ガックリ疲れました。

 ロックダウン50日目、2回目の買い物でした。















2020年5月6日水曜日

深刻なコロナウィルスの後遺症 求められる早期の段階の治療


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 これまでの、フランスのコロナウィルスの感染者数は、約17万人(169462名・5月4日現在)、死亡者は、25201人に上っています。単純に計算すれば、死亡率は、15%近くなります。

 そんな状況の中、5万人近くの人が回復しています。

 しかし、回復したとはいえ、その後遺症に苦しみ続けている人も少なくありません。特に、集中治療室での治療を受けていた人には、後遺症が残るケースが多いのです。

 集中治療室での治療の際に行われる人工呼吸器を長い期間、装着することが合併症を引き起こします。挿管され、換気され、鎮静されるという事実は、体の代謝亢進を引き起こします。これは、私たちが過剰なカロリーを消費するため、筋肉が溶けることを意味します。したがって、歩行に戻ることが困難になる可能性があります。

 また、動かないことによる腎不全や血管血栓症のリスクもあります。

 病気によって引き起こされる後遺症のほとんどはウイルス自体によるものではなく、肺だけでなく心臓、腎臓、肝臓、または脳にも損傷を与える可能性のある過度に強い免疫反応によって引き起こされる炎症によるものです。

 ですから、コロナウィルスから回復したとはいえ、その他の臓器等の損傷による後遺症が残る可能性が高いのです。

 回復したと言われている人の多くは、脚部の血栓、筋萎縮、疼痛、倦怠感、心臓疾患、呼吸の苦しさの継続に苦しんでいるのです。また、長期にわたる鎮静状態による影響から、認知障害を引き起こすケースも多いと言います。

 コロナウィルスの最も深刻な症状の一つは、急性呼吸窮迫症候群と呼ばれるもので、これが、肺線維症を引き起こし、肺の結合組織の治療不良を引き起こし、呼吸困難に陥ります。

 呼吸困難を起こして、フランスで入院し、その後、人工呼吸器を装着されてからは、意識がなく、目が覚めたら、ドイツの病院で寝ていたという男性は、今は、回復して(コロナウィルスは陰性になり)、フランスに戻り、自宅に戻っていますが、現在も、歩行困難が残り、会話をしているとすぐに息苦しくなってしまう、倦怠感、頭痛などの症状が残っていると言います。彼は、これから長い期間をかけての日常生活へのリハビリ(長時間の歩行と呼吸の訓練)に取り組むことになっています。

 後遺症の残るケースは、重症化してしまった場合に、より、リスクが高くなることから見ても、早期の段階での治療が必要なのであり、つまりは、広範囲にわたる検査の拡大が必要なのです。

 前回のマクロン大統領の演説では、症状のある人のみの検査を週70万人を目標に行うとしていましたが、症状を感じないまま、回復する人も多いとはいえ、コロナウィルスの特徴からも、自覚なしに感染を撒き散らす危険を考えれば、症状の有無に関わらず、検査をするようにしてほしいと思うのです。





2020年5月4日月曜日

コロナウィルス・ロックダウン解除 安全は、保障されるか?


Des passagers dans le métro, le 16 mars.


 フランスの5月11日のロックダウン解除まで、一週間となりました。フランスでは、ウィルスの感染が収まっていない状況でのロックダウン解除に際しての安全の確保について、盛んに語られています。

 テレビでは、正しいマスクの付け方、はずし方を解説したりしていますが、同時に、そのマスクが、手に入りにくい状況も報じています。今週から、一般大衆に向けて発売されるマスクも、まずは、医療機関に廻すべきではないか?との声も上がっています。

 また、人の往来に不可欠な公共交通機関であるSNCF(フランス国鉄)やRATP(パリ交通公団)は、「今の状況では、5月11日の段階での安全を保障できない」ことを発表しています。「リスクがあることを伝えるのは、とても、大切なこと」としています。

 昨年の12月から長期間、続いた公共交通機関のストライキの際などは、間引き運転で、混雑する電車に乗り込もうとする人々で、我れ先に電車に乗り込もうと争う様子に地獄絵図を見るようだと思いましたが、今回は、それに感染の恐怖が加わるのですから、交通機関の混乱は、安易に予想できます。

 そのため、自転車や車で通勤する人が増えましたが、それが可能な人も限られており、交通機関の安全の問題は、ロックダウン解除の際の大きな課題となります。

 また、「防護」「検査」「隔離」と軸としたロックダウン解除の「検査」に関しても、一週間に70万件という目標を掲げていますが、準備も難航しており、すでに、ミッション・インポッシブルなどと揶揄されています。

 ただ、PCR検査の費用の負担に関しては、国民健康保険でカバーされることも同時に発表されていますので、アメリカのように、生活貧窮者が検査費用の負担を案じて、検査を拒否するようなことには、ならないと思います。

 また、「隔離」に関しては、ここ数日間に、海外にいるフランス人の帰国に際して、空港でのチェックが甘いことが指摘されています。現在、飛行機の便数も極端に減っているため、出発地の空港では、人との距離を取るように、うるさく呼びかけられていたのに、実際に、いざ、飛行機に乗ると、満席状態、入国の際の健康チェックも、あまり厳しいものではなく、入国後は、2週間は、行動を控えるようにとは言われるものの、その後の追跡もなく、大勢の人が、そのまま、野に放たれている状態です。

 もともと、衛生観念の低い、モラルに欠ける人々が2ヶ月間のストレス状態から、ある日、解き放たれたら、どうなるか?

 「今回、ロックダウン解除ができなかった地域に関しては、さらに規制が厳しくなる。」としていますが、あと一週間となった今も、課題は、山積みのようです。