2020年4月23日木曜日

コロナウィルスによる医療崩壊の事実と社会の崩壊の危機に直面するフランス


Les cas graves de Covid-19 sont placés en réanimation (illustration)


 一昨日のテレビのインタビューに答えたパリにある39の病院を統括するマーティン・ハーシュ氏の、今回のコロナウィルスの、感染拡大から、パリの病院が、これまでの歴史上最悪の医療崩壊に至った経緯の話は、実に衝撃的なものでした。

 私自身は、当初は、詳しい記録は、つけていなかったので、正確な日にちは、覚えていないのですが、私は、2月に、日本へ帰国しており、フランスに戻ったのが、2月末、その頃は、フランス人は、ダイヤモンドプリンセスの件もあり、日本の方が危険な状態だと思っており、また、このウィルスが中国から広まったこともあり、とかく、アジア人を十把一絡げにするところがあるフランス人は、アジア人を見ると、コロナウィルス扱いして差別したり、ましてや、マスク=アジア人=コロナウィルスのような目でコロナウィルスを見ていました。それが2月末から3月の初旬の事です。

 それが、3月の1週目の週末あたりから、どうやら雲行きが怪しくなり始め、とりあえず、フランス人でさえ、マスクや消毒ジェルの買い占めを始めました。しかし、マスクを買い占めているというわりには、街中には、依然として、マスクをしている人はおらず、マスクをしていれば、逆に感染している人として扱われるような雰囲気でした。

 マーティン・ハーシュ氏の談によれば、「前例のない異常な危機に直面している。」と
と確信したのは、疫学者からの報告を受けた3月13日(金)だったと振り返ります。恐ろしいほどの患者数と急激に悪化する病状。そして、これが、さらに深刻な状況になっていく事は、明らかな報告でした。

 彼らは、その現実に必死の対応をしましたが、同時に、今回の感染爆発に対する自分たちの準備しているものが、圧倒的に充分ではないことも自覚したのです。

 そんなことを微塵も知らない国民は、翌日の14日(土)は、まだ、年金問題のデモで騒いでいましたし、15日(日)には、選挙も行われていました。そして、ロックダウンになったのが、17日(火)の正午でした。

 次々と運ばれてくる重症患者、足りない病室、足りない呼吸器、足りないスタッフ、足りない防護服にマスク、病院は、苦しむ患者で溢れ、病院の廊下でさえも、満杯になり、トラックに寝かされた病人をどうしたら良いかに頭を抱えたと言います。

 スタッフは、家にも帰れず、足りない防護服の代わりにゴミ袋を着て、動物用の呼吸器を使い、潜水用のマスクを使い、患者の対応に当たっていたと言います。そんな医療崩壊のピーク状態が、3月31日だったと振り返ります。
 フランスでは、このピークを”TSUNAMI"と報道していました。

 以降は、重症患者を国中の余裕のある地方の病院に搬送することを必死に繰り返し、ロックダウンの効果もあり、ピーク状態からは、少し緩和されるようになりました。しかし、それでも死者は増え続け、21000人(21340人・4月22日現在)を突破しています。

 彼は、この壊滅的な危機の中の希望は、医師、看護師、電気技師、ドライバーなどなど、全ての人の連帯だと語ります。そんな彼の口調は、静かで、普段、強い口調で話す人が多いフランス人には、珍しい気もしましたが、その分、余計に、深く、説得力のあるものでした。

 そして、今、ロックダウンが段階的に解除されることが発表された中、失業者は、1000万人増加し、郊外では、あちこちで、外出制限の検問にあたる警察に反発する若者たちが、花火や爆竹を鳴らしたり、車を燃やしたり、建物を壊したりして、暴動を起こし始めています。

 重症患者数は、減少の傾向にあるとはいえ、未だ、満床状態のフランス、医療崩壊に加えて、社会の崩壊の危機が迫ってきています。

 

2020年4月22日水曜日

犠牲者が出ることを覚悟で臨むフランスのロックダウン解除・コロナウィルスとの共存


Il est peu probable que l'école reprenne le 11 mai en Alsace.


 マクロン大統領が、ロックダウンの延長とともに、5月11日にロックダウンを徐々に解除するという発表から、一週間が経ちました。

 ロックダウンの解除は、あくまでも、国民がルールを守り、ウィルスの拡散が現実的に減速した場合という前提であったにも関わらず、国民の関心事や準備は、一気にロックダウンの解除に向けて、動き始めました。

 もう家に閉じこもりの状態にも、限界に感じ始めていた国民には、張り詰めていた糸が緩みつつある状態です。先週までは、ほとんどの人がマスクをしていたにも関わらず、すでに、マスクなしで出かける人が一気に増え始め、外出規制のコントロールをする警官に反抗して、暴動騒ぎになるなど、今まで我慢していたものが爆発しつつあります。

 もちろん、ロックダウン解除に否定的な専門家もいて、これまでにコロナウィルスに感染したのは、全国民の6%に過ぎず、免疫学的には、70%が免疫を持っていない限り、危険な状態であり、現在の段階では、遥かに遠い数字であると発表しています。

 しかし、経済的な状況や、国民の抑圧された生活も緊迫した状況ではあり、これからも長いこと、このウィルスと戦いながら、生活を続けなければならないことは、もはや明白であることを考えると、徐々にロックダウンを解除していく方法を熟考を重ねながら、なんとか、手探りで始めなければならないことは、理解できます。

 すでに、学校の開始も、学年ごとに、ずらして、しかも、クラスは、一人一人の間隔が取れるようにクラスを分けて、一週間おきに授業を受け、残りは、これまでどおりのオンラインでの授業・・というプランを立て始めています。

 ここのところ、一週間近く、僅かずつではありますが、ICUの重症患者が減少してきていますが、依然として、一日、1800人以上の患者が入院しているのです。

 これから3週間の間にどこまで、減少するかは、わかりませんが、現場の医療関係者の話によれば、5月11日の2〜3週間後のウィルス感染拡大の第二波は、避けられないとの見方が強いようで、最も混乱状態であった、3月31日に、救急にかかる電話が鳴り止まず、病室も呼吸器も確保できずに、病院が崩壊状態になった日のようなことにならないようにと、その後に急遽、病院の外に建てられた病室のために建てられたテントは、撤去しない方針なのだそうです。

 ロックダウンの間も、40万人もの国民が外出禁止のルールを守れずに捕まっているフランス人のロックダウンから解放された時の歯止めのきかなさや、元来の衛生観念の薄さ、日常の生活習慣などから、ロックダウン解除の際の国民のコントロールは、ロックダウン時以上に難しいことになると思います。

 半ば、犠牲者が出ることを覚悟で臨むフランスのロックダウンの解除。
これまでのフランスの感染者数は、158050名、死者数は、20796名(4月21日現在)。
検査数が充分ではないので、正確な数字ではありませんが、単純にこの数字から計算すれば、死亡率は、13%以上です。

 私は、今以上にロックダウン解除後が怖いです。


 

2020年4月21日火曜日

コロナウィルス監禁生活でのストレスの矛先 DV・暴動


Police


 平常時でさえも、フランスでは、深刻な問題であるDV(家庭内暴力)の被害は、ロックダウンから約一ヶ月経った今、さらに深刻な問題になっています。フランスでは、家庭内暴力の通報は、119番で相談、通報できるようになっていますが、この家の中に封じ込めの状態で、助けを求めるのは、普段にも増して、難しい状況なのです。

 以前、私の職場にも、DVの被害に遭っている女性がいましたが、最初は、転んだとか、そんな言い訳をしていて、あまりにそれが、頻繁なことから、発覚したのですが、DVの被害者は、なかなか、それを告白したり、通報したりしないのです。

 それでも、平常時には、仕事に行ったり、日常生活は、一日中家にいるわけではないので、まだ、逃げ場がありますが、このロックダウンの状態では、DVが横行する家庭内は、地獄です。

 ただでさえ、慣れない監禁生活で、ストレスが溜まるところを、普段は、平和に生活を送っている人でさえも、精神的な均衡を保つのは、難しいところです。

 フランスでは、119番に加えて、合言葉まで用意して、全国の薬局でのDV被害者の救済に当たっています。

 ところが、やはり、4月に入った頃から(ロックダウンから2週間ほど)DVの通報が増え始め、一週間の通報件数が3000〜4000に増加しています。

 そして、さらにビックリしたのが、ここへ来て、子供に対しての暴力が急激に増加しているということです。狭い空間で、一日中、家族が共に生活していれば、軋轢も生まれるでしょうが、それが、暴力にまで発展することは、ウィルスの感染に加えての恐怖です。

 平常時さえ、フランス人の熱量というものは、デモや暴動などの様子を見ていても、明らかに、日本人とは、違うと感じることもしばしば・・、しかも、クズ男のクズさ加減も桁違いだと感じることが多いので、DV被害というのは、さぞかし恐ろしい状態なのだと思います。

 フランスのテレビを見ていると、しばしば、流されるコロナウィルスへの警告(人との距離をとりましょう、手を洗いましょう、具合が悪くなったら・・などなど・・)とともに、DVに対する救済(被害にあったら、119番に電話してください)というコマーシャルも頻繁に流されるようになりました。

 また、昨日は、パリの郊外の少なくとも5つ以上の地域で、外出のコントロールにあたっている警官と住民の衝突が発生しています。厳しい警官の封鎖に反抗するために、車に火をつけたり、警官に向かって火薬を投げたり、これに対する警察が、これにゴム弾と催眠ガスで応報するという騒動が、このロックダウン中の街中で起こっているのです。

 そんな騒動に周囲の人たちまで集まってくる騒ぎは、2時間近く続いたと言います。

 ロックダウンのストレスの矛先が、ついには、警戒に当たる警察にまで矛先が向き、いつものデモや暴動さながらの状況が繰り広げられる状態は、これまでの監禁生活が水泡に期す危険を孕んでいます。

 良い時は、情熱的、しかし、悪い時は、やたらと血の気の多いと感じられるフランス人のロックダウン、長くなればなるほど、別の問題も起こってきています。

 とはいえ、昨日で、コロナウィルスによる死亡者も20000人を超えたフランス(20265人・4月20日現在)、まだまだ、自由の身になる日は遠いのです。

2020年4月20日月曜日

ヨーロッパのコロナウィルス感染拡大 国の対策の取り方で明暗を分けた理由


Dépistage coronavirus Covid-19


 ヨーロッパは、今回のコロナウィルスの感染爆発の大きな被害を受けました。
アメリカの感染爆発までは、コロナウィルスの世界の中心でしたが、未だに、多くの犠牲者が増え続けていることには、変わりはありません。

 実のところは、2月の段階で、すでに、ヨーロッパにいた、感染していることに気付かずにいた人たちから、感染がさらに拡大し始めていたのです。2月といえば、日本では、ちょうど、ダイヤモンドプリンセスの客船の中での感染が広まったことで、大騒動になっていた頃です。

 ヨーロッパという、いくつもの国が地続きである地域での感染拡大は、それぞれの国のその後の対応によって、大きく明暗を分けることになりました。それぞれの国の政治が、これほど、国民の命に直結していくことを目の当たりにすることは、そうそうあることではありません。

 国の規模も国民性も違う中、一概に比較することは、できませんが、その経過をたどれば、何が良くて、何が悪かったのかは、知ることができます。

 ヨーロッパでの感染拡大が最も深刻になったイタリアでは、イタリア北部が震源地となりましたが、北部の都市がどうやら、ロックダウンになるという噂が流れ出すと同時に、自分が感染していることに気づいていない北部の国民が、一気にイタリア国内の他の地域に流れ出したのです。

 その事実に慌てた政府は、その後、ロックダウンを全土に拡大しました。これは、日本の緊急事態宣言が東京、大阪を始めとした一部の地域だけであったものを一週間後に全国的な緊急事態宣言に広げたのに似ています。

 また、イタリアが失敗した、もう一つの理由は、院内感染を増やしてしまう危険を考慮せずに、数多くの検査を病院内で行ってしまい、院内感染を広げてしまったことです。

 一方、ヨーロッパの中でも桁違いに犠牲者が少ないドイツでは、当初から、院外での徹底したPCR検査を行い、感染者と感染していない人を分けていったのです。ドイツは、一日、50万件の検査を行っていると発表していますが、(フランスの5倍)これを着々と続けることで、他のヨーロッパとは、まるで違う結果になっており、医療施設や医療器具などもしっかり備えていたドイツは、フランスからの重症患者まで、受け入れてくれています。

 結果は、一ヶ月後の数字にハッキリと表れています。(4月19日現在の数字です。)
ドイツは、死者数が桁違いに少ないのに比べて、快復した人の数が桁違いに多いのです。

       死者数合計  4/19死者  ICU     快復    
・イタリア   23660          345              2635         47055
・スペイン        20453             410              7371         77357
・フランス        19718             395              5744         36578
・ドイツ             4548                 2              2889         88000

 日本の近くでは、韓国が、やはり、徹底的な検査をして、感染の封じ込めに成功しています。

 日本は、PCR検査を、未だに、徹底的にしない理由を、その後の受け入れ先が飽和して、医療崩壊を起こしてしまうから・・と言っていますが、フランスも、医療崩壊を恐れて、具合が悪くても、大多数は、家にいて、安静にしていれば、自然治癒するとし、悪化した状態にならなければ、検査もできず、呼吸が苦しくなるくらい悪化した段階にならなければ、検査を受けることは、できませんでした。

 しかし、悪化してから検査をし、治療に当たるのでは、手遅れになるケースも多く、結果、一気に重篤な患者が増加し、医療崩壊を起こしたのです。

 検査を徹底的にすれば、少なくとも、陽性と診断された人が、街をうろつくことも、職場に出ることはなくなります。

 日本には、リモートワークが可能にもかかわらず、未だに、会社の命令により、通勤を余儀なくされている人もたくさんおり、緊急事態宣言が発令されているにもかかわらず、街を出歩く人が後を立たないのです。

 ヨーロッパの国の明暗で、結果は、見えているのです。時間に猶予はありません。
コロナウィルスは、一人の感染者が10人に感染させることも可能なのです。

 フランスも5月11日から、徐々にロックダウンを解除するにあたって、PCR検査を強化していくと発表していますが、検査は、ロックダウン前から全力でやってほしいと業を煮やしています。自分では気づいていない感染者が街に放たれてしまうからです。

 日本は、まだ、毎日の感染者数の発表で、一喜一憂していますが、感染爆発後は、感染者数よりも、毎日の死者数と重症患者数(ICU)の推移を見るようになります。

 世界中にこれだけ死者が出ているのに、日本だけが、例外だと思いますか? 経済の破綻も大問題ですが、これ以上、感染が広がれば、経済的なダメージもさらに広がるのです。

 どうやったら、失敗するのか、どうやったら、被害を抑えられるのか、すでに、周りの国の結果を見れば、充分にわかるはずなのです。

 

 

 













 










2020年4月19日日曜日

コロナウィルス・ロックダウン下で驚かせられるフランスの変化


Image


















 
 ロックダウン状況下にあるフランスでは、現在、動いているサービスは、病院、警察、銀行、郵便、スーパーマーケット、薬局など、ごくごく限られているので、全ての人とは、言えませんが、この異常事態が訪れてからというもの、私は、フランスの変化にちょっと驚いています。

 最初に感じたのは、その日の正午から、ロックダウンになるという日の午前中に、明日からは、外出許可証などを携帯しなければ、外出できなくなると聞いて、しばらくは、外出もややこしい事になりそうだと(実際は、大して、ややこしいことは、ありませんでしたが・・その代わりに感染の恐怖が増しました。)、とりあえずの食料を買っておこうと思い、近所のカーフールに買い物に行った時のことです。

 その頃は、今ほど、入場制限をしたり、人との距離を取りなさいとか、特に厳しい制限は、まだありませんでしたが、それでも、皆、ひたすら、黙々と、明らかに、いつもとは、違う種類の買い物を大量にしていることにも、「なるほど、フランス人が買いだめをするのは、パスタや小麦粉なんだ〜」などと妙なことに感心したのと同時に、カーフールの店員の様子にも驚かされたのです。

 フランスの日常では、スーパーマーケットなどは、欠品があっても、長いこと、品出しをしないままで、店員は、ダラダラと固まっておしゃべりをし、携帯をいじり、レジの店員同士でおしゃべりをしていて、レジに並んでいる人々は、延々と待たされたりします。

 レジの人が、野菜などの名前がわからなくて、「これ何?」などと、聞かれたりして、(フランスでは、多くの野菜がパックになっておらず、量り売りでない野菜は、そのままレジに持っていくのです。)思わず、「お前が売ってんだろーが!」と思ったりします。

 何か、品物を探したり、何かを店員に尋ねても、「知らない!」「それは、私の仕事ではない!」は、フランス人の常套句です。ところが、ロックダウン直前の日以来、店員は、心なしか足早に店内を移動し、キビキビと働く様子に、本当に驚いたのです。

 私は、フランスに住んで、20年以上になりますが、スーパーマーケットの店員が足早に店内を移動し、キビキビと働いているのを見たのは、初めてでした。この緊急時でもあり、日本なら、日常でも当たり前のことなので、なんら、不思議はないことだと思いますが、フランスでは、驚きのことなのです。

 また、郵便でさえも、いつもは、国内だと、地方に何か送ったりすると、下手をすると、日本への国際便よりも時間がかかったりするのに、今は、配達の日数が減らされているのにも関わらず、わりと、あっさりと届くのです。

 銀行などにしても、普段だと、やたらと、ああでもないこうでもないと言われたり、ミスが多く、何かと物事が滞りがちなところ、あっさりと事が進みます。国からの補助金もあっさりと振り込まれたという話なども耳にします。

 こんな状況下で不謹慎ではありますが、「やれば、できるじゃん!フランス人!」と、私は、こっそりと思っているのです。

 そもそも、フランス人は、不思議な人たちで、日頃は、「これは、私の仕事じゃない!」とか、「これは、私の責任ではない!」とか、およそ、身勝手な感じを受ける事が、多いのですが、実のところは、身近な人で、本当に困っている人、困難な状況に陥ってしまった人に対しては、びっくりするほど親切で、親身になってくれるところがあります。その時の行動力には、日頃とのギャップも相まって、こちらの方が面食らうくらいです。

 今後、いつになるかは、まだ、一向に見込みがつきませんが、いつか、ロックダウンが解除されて、普通の日常が戻ってきたら、フランス人は、また、元のフランス人の仕事っぷりに戻ってしまうのだろうか?などと、そんなことも、ふと思ってしまいます。

 でも、今は、元の働かない、横柄なフランス人でいいから、ごくごく日常を取り戻せる日が一日も早く来ることを祈っています。もしかしたら、そんな日常が戻ったら、以前は、「チッ!」と思っていた、ダラダラとおしゃべりをしているカーフールの店員を見て、私もどこか、ホッとするかもしれません。銀行、郵便、スーパーマーケット、薬局など、ごくごく限られているので、全ての人とは、言えませんが、この異常事態が訪れてからというもの、私は、フランスの変化にちょっと驚いています。

 最初に感じたのは、その日の正午から、ロックダウンになるという日の午前中に、明日からは、外出許可証などを携帯しなければ、外出できなくなると聞いて、しばらくは、外出もややこしい事になりそうだと(実際は、大して、ややこしいことは、ありませんでしたが・・その代わりに感染の恐怖が増しました。)、とりあえずの食料を買っておこうと思い、近所のカーフールに買い物に行った時のことです。

 その頃は、今ほど、入場制限をしたり、人との距離を取りなさいとか、特に厳しい制限は、まだありませんでしたが、それでも、皆、ひたすら、黙々と、明らかに、いつもとは、違う種類の買い物を大量にしていることにも、「なるほど、フランス人が買いだめをするのは、パスタや小麦粉なんだ〜」などと妙なことに感心したのと同時に、カーフールの店員の様子にも驚かされたのです。

 フランスの日常では、スーパーマーケットなどは、欠品があっても、長いこと、品出しをしないままで、店員は、ダラダラと固まっておしゃべりをし、携帯をいじり、レジの店員同士でおしゃべりをしていて、レジに並んでいる人々は、延々と待たされたりします。

 レジの人が、野菜などの名前がわからなくて、「これ何?」などと、聞かれたりして、(フランスでは、多くの野菜がパックになっておらず、量り売りでない野菜は、そのままレジに持っていくのです。)思わず、「お前が売ってんだろーが!」と思ったりします。

 何か、品物を探したり、何かを店員に尋ねても、「知らない!」「それは、私の仕事ではない!」は、フランス人の常套句です。ところが、ロックダウン直前の日以来、店員は、心なしか足早に店内を移動し、キビキビと働く様子に、本当に驚いたのです。

 私は、フランスに住んで、20年以上になりますが、スーパーマーケットの店員が足早に店内を移動し、キビキビと働いているのを見たのは、初めてでした。この緊急時でもあり、日本なら、日常でも当たり前のことなので、なんら、不思議はないことだと思いますが、フランスでは、驚きのことなのです。

 また、郵便でさえも、いつもは、国内だと、地方に何か送ったりすると、下手をすると、日本への国際便よりも時間がかかったりするのに、今は、配達の日数が減らされているのにも関わらず、わりと、あっさりと届くのです。

 銀行などにしても、普段だと、やたらと、ああでもないこうでもないと言われたり、ミスが多く、何かと物事が滞りがちなところ、あっさりと事が進みます。国からの補助金もあっさりと振り込まれたという話なども耳にします。

 こんな状況下で不謹慎ではありますが、「やれば、できるじゃん!フランス人!」と、私は、こっそりと思っているのです。

 そもそも、フランス人は、不思議な人たちで、日頃は、「これは、私の仕事じゃない!」とか、「これは、私の責任ではない!」とか、およそ、身勝手な感じを受ける事が、多いのですが、実のところは、身近な人で、本当に困っている人、困難な状況に陥ってしまった人に対しては、びっくりするほど親切で、親身になってくれるところがあります。その時の行動力には、日頃とのギャップも相まって、こちらの方が面食らうくらいです。

 今後、いつになるかは、まだ、一向に見込みがつきませんが、いつか、ロックダウンが解除されて、普通の日常が戻ってきたら、フランス人は、また、元のフランス人の仕事っぷりに戻ってしまうのだろうか?などと、そんなことも、ふと思ってしまいます。

 でも、今は、元の働かない、横柄なフランス人でいいから、ごくごく日常を取り戻せる日が一日も早く来ることを祈っています。もしかしたら、そんな日常が戻ったら、以前は、「チッ!」と思っていた、ダラダラとおしゃべりをしているカーフールの店員を見て、私もどこか、ホッとするかもしれません。

2020年4月18日土曜日

マクロン大統領が警告 「コロナウィルスの中国の発表をバカ正直に信じてはいけない!」


Le seuil des 150.000 morts dus au coronavirus a été passé le 17 avril 2020.


 フランスのマクロン大統領は、先日の英国、ファイナンシャルタイムズ紙のインタビューで、「中国のコロナウィルス感染の蔓延に関して、中国の発表どおり「バカ正直に信じてはいけない。」「私たちが知らないことが起きているのは、明らかだ。」と警鐘を鳴らしました。

 マクロン大統領からの、この発言も、アメリカのトランプ大統領が、中国寄りの対応だと非難を続けていたWHOに対しての資金拠出停止を発表したあたりから、WHOとともに、感染元であり、当初に情報を隠蔽しようとした中国に対する世界からの非難の声が再燃し始めたことにあります。

 武漢が感染源であることは、今や、隠しきれない事実であり、感染拡大の原因は、最初の感染を隠蔽した中国にあることは、世界中が承知しているにも関わらず、これを今まで言及できなかったのは、どの国も、自国の対応でいっぱいいっぱいの状況で、中国の責任問題を追求する余裕がなかったからです。

 それが、トランプ大統領の発言により、マスコミのインタビューなども、WHOや中国などに及ぶことになり、今回のマクロン大統領の発言に繋がったのです。

 もともと、アメリカのトランプ大統領は、3月の段階から、「中国が事態を公表しなかったことで、世界が大きな代償を払っている。」と中国を非難して、コロナウィルスを中国ウィルスなどと呼んだりしていましたが、ここへ来て、アメリカでの感染拡大がより深刻になり、感染者数、死者数も世界一になったあたりから、アメリカの初動対応の失敗から逃れたいのか、トランプ大統領の発言も対応も過激になり、中国は、事実を隠蔽するばかりでなく、感染者数や死亡者数を偽って発表しているとし、実際にアメリカの諜報機関が現地での調査に入っています。

 フランスのマスコミでは、「選挙を控えたトランプ大統領は、アメリカの感染者、死者が世界一になることに耐えられないのだ・・」などと言っていますが、フランスとて、中国の態度に怒りを感じていることには、違いありません。

 感染源となった武漢が4月の初旬に感染者がゼロになったとして、ロックダウンを解除する様子をまるで、新年を迎えるように華やかにライトアップしたり、花火を上げたりして祝う派手な報道を世界中に流す様子は、いかにも芝居じみていて、それを、いまいましい気持ちで眺めていた人が、世界中でどれだけいたことだろうかと思います。

 世界の国々と中国、それぞれに政治的な問題もありますが、ともかくも、これからのワクチンや治療薬の開発に際しても、感染源となった場所や経過や感染拡大の詳細な事実を情報公開することは、とても重要なことです。

 少なくとも、問題となった武漢の研究所は、カナダ、アメリカ、フランスの資金で設立されているのです。正しい情報公開の義務があります。

 それにしても、不誠実な中国と真っ向から対決する姿勢を見せるアメリカと、「中国の言うことなど、はなから、バカ正直に信じていない。」と、斜め上から見ている感じのフランス。なんとなく、それらしい感じの反応だなと思うのです。

 

2020年4月17日金曜日

リスクを侵してコロナウィルスのロックダウンを解除し始めたヨーロッパ

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テレビで経済的な問題への質問に答える経済財務大臣


 4月13日のマクロン大統領のロックダウン延長とともに、5月11日から、徐々にロックダウンを解除していくという発表があって以来、これまで、一ヶ月以上、ひたすら、コロナウィルスの感染拡大と、その対応や現状について報道されてきましたが、俄かに、フランスは、ロックダウン解除の方法や、経済的な問題が報道されるようになってきました。

 これまでの一ヶ月、そして、最低でも2ヶ月近くになるロックダウンによる経済的なダメージは、いくら、政府からの援助があるとはいえ、充分ではなく、多くの人々が悲鳴をあげているのが現実です。

 今回のコロナウィルスによるパンデミックでは、被害が最大となってしまった(アメリカを除く)ヨーロッパでは、ロックダウンしていた国が少しずつロックダウンを解除する方向に動きつつあります。

 オーストリア、スペイン、ドイツ、スイスなどの国々が、すでに、段階的なロックダウンの解除に踏み切りました。

 先陣を切って、ロックダウンの段階的な解除を発表したオーストリアは、一日あたりの感染者が1千人超えの状態から、4月6日の段階で200人台にまで減少した時点で、14日からのロックダウンを段階的に緩和していくことを発表しました。

 オーストリアでは、すでに、小規模の店舗、園芸店、ホームセンターから営業を再開、5月からは、美容院、ショッピングセンター等、全ての店舗が営業を再開します。(レストラン、ホテル等に関しては、5月中旬から)

 営業再開に際しては、一定のソーシャルディスタンスが保たれるための入場制限とマスクの着用が条件となっています。

 少なくとも、フランスは、これらのロックダウン解除の先陣を切った国々をある程度、参考にできると同時に、近くの国々が次々と経済活動を再開しつつあるのを横目で見ていれば、国民感情としても、自分たちも・・と煽られることになるのも必須です。

 ここ数日、フランスも感染者は、ごくごく僅かですが、減少傾向にあるとはいえ、未だ、新たに感染が確認された患者は、17164名(4月16日現在)もおり、1日の死亡者は、753名、集中治療室の患者は、減少しているとはいえ、6248名、通常の満床状態は、5000床(集中治療室)のところを遥かに上回っている状態です。

 これから、約4週間の間にどれだけ、減少できるかは、全くわからない状態です。

 フランスも、経済的な逼迫も厳しく、「あくまでも、国民がルールを守り、ウィルスの拡散が現実的に減速した場合」という前提での、経済活動再開の発表では、あったものの、今となっては、そんな条件があったかを忘れてしまったかのように、ロックダウン解除に世論が傾きつつあり、もしも、それが叶わなかった場合の国民の落胆は、幾ばくかと、そのショックもまた、想像するのも恐ろしい気がします。

 ある程度、ウィルスと共生していかなければならないという意見もあるようですが、それは、ワクチンや治療薬が開発されてからの話だと思うのです。これ以上の感染拡大は、何としても、避けなければならないのです。

 今も、救急車のサイレンが聞こえない日はありません。