2020年5月31日日曜日

ロックダウンによる業績悪化・ルノー15000人削減・モブージュで従業員数千名による大規模デモ




 昨年末には、カルロスゴーンの日本逃亡劇で日産とともに注目を集めた、フランスの大手自動車メーカー・ルノーは、コロナウィルスのためのロックダウンによる業績不振のため、15000人の削減(フランス国内では、4600人削減)、3年間で20億ユーロをコスト削減をする計画を発表しています。

 ルノーは、コロナウィルスによる経済危機以前から、弱体化しており、(ヨーロッパでは、多くの国でディーラーが閉鎖され、4月の自動車市場は76.3%下落)生産過剰に悩まされています。

 このルノー経営陣の発表を受けて、組合連合の呼びかけにより、従業員数千人がルノー・モブージュ(フランス北部)工場に集まり、市庁舎までの6キロの道のりを経営陣の経営計画(人員削減計画)に反対するデモを行いました。

 あらゆるセクションの集まるこの工場では、約2100人の従業員を抱えており、金曜日の朝から閉鎖され、この工場で扱っているカングー(ルノーの車の車名)の生産を、新しいプラットフォームを継承する約70 km離れたドゥーアイに移管する計画を進めています。つまり、この工場は、大幅に縮小されるわけです。

 2100人のルノーの従業員は、このモブージュという地域の人口の約10%に当たるので、この地域にとっても彼らの仕事を守ることは、その地域を守ることにも繋がるのです。

 いみじくも、2018年にマクロン大統領がこの工場の視察に訪れた際に、「この工場は、ヨーロッパで最高の工場である。何も臆することはない! フランスは、自動車産業を守る。」と約束したこともあり(実際に、政府は、多額の予算を自動車産業に割いている)、このデモでは、「嘘つき!マクロン!約束を守れ!」という叫び声も、多く上がっていました。

 ロックダウン解除の第一ステージ(5月11日の段階)でも、工場再開の際に、工場内の安全性が保たれていないとの従業員との間で騒ぎが起こり、今回の第二ステージ(6月2日から)発表の直後にルノー経営陣からの人員削減の発表での数千人にも及ぶ大規模なデモ発生。同じフランスの自動車メーカーであるシトロエンやプジョーからは、そのような動きは聞こえてこないのに、ルノーばかりがこの騒ぎです。

 ルノー経営陣、フランス政府に反抗、批判するデモの集結地である、モブージュ市庁舎前に集まった人たちが大声で歌うマルセイエーズ(フランス国歌)。

 国歌が、デモに参加している人たちを奮い立たせ、団結させる歌として歌われることにもフランスらしさを感じるのです。デモで反抗の意を表明しつつも、その根底には、強い愛国心があることが感じられます。

 もはや、「10名以上の集まりが禁止」などという禁止事項はどこ吹く風で、このデモを統率している組合連合は、社会的な話し合いの欠如を指摘し、「この決定は、自殺行為」「戦いは、まだ始まったばかり」と声明を発表しています。

 ということは、この規模のデモがまだまだ続くのでしょうか? 今、経営の危機にある会社、政府、社会に訴えたいことがある人は、溢れるほど存在しています。このルノーのデモに触発されて、これ以上、デモが起こらないことを切に願うばかりです。

 コロナウィルスの感染は、まだ、完全におさまってはいないのです。

<関連>「ロックダウン解除後・フランス各地に起こる不穏な動き・フランスのデモ」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/05/blog-post_22.html

 

 

 




2020年5月30日土曜日

コロナウィルスの第一波は去った? 俺たちは、よくやった!日本と対照的なフランス人の自画自賛




 フィリップ首相のロックダウン解除・第2ステージの発表から一夜開けて、フランスのマスコミは、いよいよ、コロナウィルスの第一波は、去った・・と言い出しました。確かに、一日の死者数も集中治療室の患者もグンと減ってきました。フィリップ首相も、一夜明けて、どこかホッと緩んだ表情が印象的です。
 しかし、フランスでのコロナウィルスの感染は、すっかりおさまったわけではありません。未だ死者が50人以上出ています。

 にも関わらず、もうすっかり戦後のようなムードで、マスク姿の人も日々、減ってきています。しかも、コロナウィルスとの戦いを「俺たちは、とても良くやった!2ヶ月のロックダウンを乗り越えて、みんなで協力して、見事に乗り越えた!」と、お得意のフランス人の自画自賛モード、「フランスはすごい!」のモードが満載なのです。

 とりあえず、大きな感染の波が去った今、経済的にも大打撃を受けている状態から、これからは、経済回復の道を探っていかなければなりません。パリのレストラン・カフェなどは、とりあえず、6月2日から営業できるのは、お店のテラスのスペースのみで、これまで、テラスのスペースは持っていなかった店舗も、さっそく、テラスのスペース確保の申請がパリ市役所に、殺到しています。

 基本、自信満々なパリジャンも、ここぞというところで、小難しいことを言い出すのも特徴で、ただ単にお店をオープンするだけでなく、伝統が、文化が、雰囲気が・・と、衛生管理もあくまでも美しくなければいけないと、こだわるところも、いかにもという感じです。

 これまで、ロックダウンのため、壊滅状態であった観光業界について語る際にも、フランスは、世界一の観光大国だ!(だから、打撃も酷いのに・・)どうだ!凄いだろ!フランスは、世界一なんだ!と始まってしまうところが、これまた、いかにもです。世界一の観光大国は、その多くの観光客を外国から受け入れています。ところが、現在は、ようやく国民の100キロ以上の移動が解禁されたのみで、国境は、閉ざされたままなのです。「フランスは、凄いだろ!」と言っている場合ではありません。

 そんな、自画自賛モードのフランスに比べて、日本は、コロナ対策に失敗したように感じている人が多い様子は、とても不思議です。フランスも確かに頑張りましたが、実際のところは、3万人近い死者(現在のところ28714人・5月29日現在)を出し、大失敗しているのです。

 もともと日本では、謙遜、謙虚な態度が尊ばれる国民性もあると思いますが、海外から見ると、日本は、完全に経済を止めることもせず、罰則も与えずに国民が自粛し、高齢者大国の日本が、被害者の数も桁違いの数字に抑えて、海外からは、圧倒的に成功している国として見られており、ジャパンミラクルなどと呼ばれているのに、なぜか、胸を張らないのです。

 色々、問題はあるにせよ、日本は、やっぱり凄い国だと、私は、今回のコロナウィルスの騒ぎで、改めて思っています。日本人は、もっと自信を持って胸を張るべきです。世界に比べたら、やっぱり日本は、衛生面、医療システム、国民のモラルなどなど、世界に誇れる国なのです。

 それにしても、対照的なフランスと日本、受け取り方がこうも違うのは、その中間にいる私としては、それぞれの様子を見ながら、不思議なものだと思うのです。

<関連>「フランス人のプライド」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/08/blog-post_6.html



2020年5月29日金曜日

フランスのロックダウン解除・6月2日から第二ステージへ突入 

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 注目されていたフィリップ首相のロックダウン解除・第二章は、「思っていたよりも、明るい報告となりました。」という言葉から、始まりました。

 全国的にレッドゾーンが広がっていた感染情報マップも、イル・ド・フランス(パリを中心とした地域)以外は、全てグリーンになり、イル・ド・フランスでさえも、赤からオレンジになりました。イル・ド・フランスがオレンジに留まっている大きな理由は、病院の集中治療室の空き状況が充分ではないということが大きな理由です。

 未だ、ウィルスは、消滅したわけではないので、依然として、注意が必要ではあり、制限や制約はあるものの、今まで閉ざされていた場所が6月2日から解放されることになり、日常が戻りつつあることに、国民は、喜びに湧いています。

 これまで禁止されていた100キロ以上の移動も可能になり、学校、美術館、博物館、記念碑等のモニュメント、全てのビーチ、湖なども再開されます。公園、庭園などの緑地は、6月2日を待たずして、今週末から解放されることになりました。しかし、依然として、10人以上の集まりは、禁止されており、屋内でのマスクの着用等が求められます。

 レストランも再開されますが、レストランについては、かなり慎重で、グリーンゾーンでさえも、1テーブル10人まで、テーブルごとに1メートルの間隔を取ること、カウンターで立ったままの飲食は、禁止されています。イル・ド・フランスのレストランについては、店内の営業は、禁止で、お店の外のテラスのスペースのみの営業が許可されることになりました。

 これには、反発の声も上がっており、そもそもテラスのスペースのあるレストランは、全体の4割程度で、半分以上は、依然として営業できないということになります。そもそもパリのレストラン等は、郊外のようにゆったりしたスペースを取れていないお店が多く、営業再開の道は、険しそうです。

 劇場についても、グリーンゾーンは、衛生管理を充分にした上で、再開することができますが、イル・ド・フランスは、未だ営業できません。

 ナイトクラブ、コンタクトスポーツ、ゲームセンター、スタジアム、映画館等に関しては、全国的に閉鎖されたままです。

 また、「STOP COVID」というアプリが6月2日から無料でダウンロードできるようになり、これにより、感染者と1m以内で15分以上接触した可能性のある場合には、通知が来る仕組みになっています。プライバシーは保護されデータは、匿名化されています。検査もさらに拡充し、スピードアップするので、このアプリが有効に使われるとさらに、感染防止に役立ちます。

 これから夏休みにかけて、ハイシーズンを迎える観光地も再開に向けての準備に向かっています。リモートワークが可能であった人は、全体の3割程度、それ以外の人は、2ヶ月以上、仕事ができなかったにも関わらず、やはり、夏にはバカンスに行く気満々なところは、さすがのフランス人です。パリでは、テラスだけとはいえオープンするカフェやレストラン、また今週末には、解放される公園などにも、待ってましたとばかりに人が押し寄せることでしょう。

 毎年、90万人のフランスの子供が利用するコロニー(バカンスのアクティビティをプランニングする会社が運営する子供たちの合宿やキャンプ)も、次回の6月22日のロックダウン解除・第3ステージの発表の際に解禁される模様です。2ヶ月近くあるフランスの学校の夏休みを子供たちは、1ヶ月は家族と、1ヶ月はコロニーで過ごすケースが多いのです。うちの娘も長年にわたり、このコロニーには、ずいぶんお世話になりました。

 これらのバカンス産業もフランスの大きな収入の一つです。

 現段階で、制限されている項目については、全て、さらに次のステージは、夏のバカンスシーズン突入直前の6月22日に発表になる予定になっています。バカンスシーズンの開始直前が、また一つの区切りとなるところが、やっぱりフランス・・と思いますが、いつもなら、バカンス至上主義のフランス人に、どこか半分、呆れたような目で見ている私も、今年ばかりは、何だか、そんないつもどおりのフランス人に、半分は、どこか、ホッとするような気持ちも湧いてくるのです。

 まだ、感染が完全におさまっていない状況での更なる規制緩和で、不安はいっぱいありますが、日常が戻ってくることが、私もやっぱり嬉しいのです。


<関連>
「おたくのお嬢さんが刺されそうになりました!?・バカンス中のサマーキャンプでの話」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/07/blog-post_7.html

 

 

2020年5月28日木曜日

コロナウィルスは、季節性のものなのか? 娘の親友がコロナウィルスの疑い


Dépistage du coronavirus : le déconfinement, dépendant des tests ...


 ロックダウン解除から2週間が経過しましたが、フランスには、現在のところ、感染爆発の第二波の予兆は、表れておらず、一日の死者数や重症患者数も減少してきていることから、コロナウィルスは、季節性のものではないか? これから夏にかけて、コロナウィルスは、その威力を失っていくのではないか?と言い出す人が増えてきました。

 National Weather Serviceは、今年、5月、6月、7月の気温と降水量の上昇を予測しています。例年だと、これは、あまり歓迎されないニュースですが、今年ばかりは、暑くて湿度の高い夏がコロナウィルスにブレーキをかけるかもしれないことが、妙な希望を煽っています。

 これまでに存在してきた呼吸器病原菌、ウイルスは、温度と湿度が上昇するにつれてその力を失っています。しかし、その原因は、解明されていません。また、コロナウィルスに関しては、他のウィルスと同じかどうかも現在のところは、はっきりと証明されてはおらず、夏が私たちを救うかもしれないという明確な証拠はまだありません。感染者数の減少が気温の上昇により、ウィルス自体の威力を弱めているのか?また、気温の上昇による人間の行動の変化によるものなのか? 世界の温帯地域においてもコロナウィルスの感染が起こっていることから、気温や湿度の関係は、考えにくいと発表している学者もいます。

 逆に、気温や湿度の上昇でウィルスが威力を弱めているとすれば、夏が終わり、秋・冬になれば、また感染拡大の可能性が高まるということでもあります。気温が下がれば、感染が広がりやすいということは、暑い夏にもエアコンをつけてはいけないことになる!などと、無謀なことを言い出す人まで出てきました。

 そんな中、娘の高校までのクラスメートである親友に、コロナウィルスの症状が表れました。ロックダウンになって、50日くらい経った頃、5月に入って気温もかなり上昇している時期でした。彼女は、ロックダウン中には、1〜2度、日用品の買い物に出かけたきりで、感染したとすれば、その買い物以外には、感染経路は、見当たりません。

 最初は、風邪のような症状で、全身の倦怠感に襲われ、少しして、咳が出始め、高熱が続きました。時が時だけに、彼女は、恐怖に震えながらも家で安静にしていたのです。

 しかし、一向に回復には向かわずに、呼吸が苦しい症状が表れ始めました。彼女は、子供の頃、喘息を患っていて、風邪を引けば、気管支炎を起こしやすい、いわゆるゼーゼーするような状態に陥りやすいのですが、今回ばかりは、ゼーゼーするような症状ではなく、息が苦しいという症状だったそうです。

 いよいよ、ヤバいということで、かかりつけの医者に連絡し、診察を受け、コロナウィルスのPCR検査を受けた方が良いという医師の判断で、家の近くのクリニックで検査を受けました。鼻の奥をかなり長い時間突かれる検査だったそうです。検査の結果が出るまでは、3日間かかりました。

 結局、検査の結果は、陰性でしたが、結局、彼女の症状は、何の病気であったのかは、わからないままです。解熱剤を飲んだくらいで、特に治療といった治療も受けることなしに、幸いにも彼女は、自力で回復しましたが、現在の状況では、医師もコロナウィルスのことで頭がいっぱいで、まるで、コロナじゃなければ、病気じゃない・・とでも言わんばかりで、結局、彼女の症状の原因が何であったのかは、わからないままです。高熱が続き、呼吸困難まで起こした病気については、放置されたままなのです。

 彼女の受けた検査の精度にも疑問はあります。検査するタイミング、検査の仕方などでも正しい結果が出るかどうかは違ってきます。

 現在は、彼女は回復していますが、本当は、彼女は感染していたのかもしれないし、感染していなかったとしたら、彼女の症状は何か他の病気によるものだったということです。

 これは、現在の医療がコロナウィルスに過度に集中し、(そうせざるを得ない状況であったが・・)それ以外の病気が放置されがちになっているという事実です。

 これは、他の病気の患者が放置されることであり、平常時には発見できた病気が、もしかしたら、手遅れになるということでもあるのです。現在、コロナの影響で、予定していた他の疾患のための多くの検査がキャンセルになっています。コロナウィルスの二次災害が起こらないためにも、一日も早く、日常を取り戻せることを願っています。

<関連>「絶対に入院したくないフランスの病院」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/12/blog-post_53.html
























 

2020年5月27日水曜日

ロックダウン解除でもオープンできないパリのレストラン・カフェの抗議のアクション

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 5月11日に全国的にロックダウンが解除された今でも、未だ、フランスのレストラン・カフェのオープンは、禁止されたままです。一部、テイクアウトや宅配などのサービスは許可されていますが、大多数の店舗は、閉店されたままです。

 5月11日の段階で、ロックダウン解除の更なる段階は、6月2日に、その時点での感染状況を見て、判断、発表するとのことでしたので、6月2日を一週間後に控え、レストラン・カフェ・ホテルの経営者は、営業再開を訴えるアクションを起こすことを呼びかけています。

 レストラン・カフェ・ホテル経営者は、彼らのシンボルであるオブジェ・パンのバスケット、シェフの帽子、コーヒーカップなどを店舗の前に積み上げて、「#ATable」ア・ターブル!(テーブルへ!)と営業再開を求めるアクションを起こしたのです。

 5月7日のロックダウン解除の発表の際には、6月2日の段階で、グリーンゾーンと判断された地域では、レストランのオープンを段階的に行うとのことでしたので、発表以来、レストラン・カフェの経営者は、どのように安全対策をとって営業を再開できるかをこの間、試行錯誤してきたのです。

 6月3日に営業再開が許可されるとしても、具体的な規制への準備を進めるためには、できるだけ早く、その詳細を発表する必要があります。

 そもそもフランスの(特にパリ)レストラン・カフェは、狭いスペースに小さめのテーブルが所狭しと置かれている店舗が多いのです。当然、お客さん同士の間隔も狭く、人と人との1〜2メートルの間隔をとるとなると、通常の半分どころか、3分の1から4分の1くらいのテーブルしか置くことはできません。
 カフェなどは、お店の前の、通り沿いのテラスにもテーブルが置かれていますが、テラスのスペースの拡大なども考慮されています。

 これまでの席数に近い営業をするためには、人とのバリアを作るために透明なバリア等を設置するなどの設備投資も必要になります。

 グルメ大国と言われるフランスではありますが、外食は、もちろん、美味しいものを食べに行くということもありますが、フランス人にとっては、人と話す、集うということも大きな理由です。普段、外食をして、周りを見ていると、フランス人の食事は、とにかく長い。そして、ひたすら喋る。食事のあいだ中、ひたすら喋り、ようやく終わりかと思うとデザートを必ず注文し、シメのコーヒーを飲み終わるまでには、相当な時間がかかります。

 一度にお客さんが入れる人数が限られるとすると、少しでも回転を良くする必要がありますが、それもフランス人相手には、なかなかハードルが高いのです。

 ロックダウン状況になって、あらためて思い知らされるのは、Uber Eatsなどを頼んでも、便利ではあっても、やっぱり何か物足りないし、味気ない。外食は、そのレストランやカフェのお店の雰囲気やデコレーション、素敵な食器、周りの人との何らかのやりとり、更には、何となく聞こえてくるザワザワした周りの人の話し声や食器が合わさる音など全てをひっくるめて楽しいのだということです。

 しばらくは、レストランがオープンしても、これまでとは、違う状況になるでしょうが、いつの日か、また以前のように外食を楽しめる日が、私もそろそろ恋しくなっています。

<関連>「パリのカフェに見るフランス人の日常の楽しみ方」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/12/blog-post_85.html




2020年5月26日火曜日

ロックダウン解除で行われたストラスブールでの無許可のサッカーの試合に400人参加に唖然




 フランス北東部(グランエスト県)に位置するストラスブールでは、先週の日曜日にアマチュアのサッカーの試合が行われ、約400人がサッカーの試合に熱狂しました。グランエストといえば、今回のコロナウィルスの被害が最も甚大であった地域でもあります。

 にもかかわらず、市町村の許可なしに、サッカーの試合が行われ、その様子は、ここ2〜3ヶ月間に、まるで何事もなかったように、その多くの人々がマスクもなしに、歓声をあげ、戯れ、ゴールを決めるたびに、抱き合って喜ぶ様子は、コロナ以前のごくごく日常の生活の一部のようで、そのあまりにためらいのない様子に、驚きを通り越して、唖然としてしまいます。

 この事態に、警察は介入したものの、10人以上の集まりが禁止されている状況にもかかわらず、サッカーの試合を阻止することはできず、罰金を課された人も誰もいないという状況、現在、このサッカーの試合を運営した人に責任を追求するため調査中とのことです。

 しかし、サッカーの試合の運営をした人に罰金を払ってもらったところで、感染拡大の責任を取ることは、できないのです。

 警察の介入により、全員が午後遅くには、解散したと報告されていますが、試合が終わって、夜になって解散するのは当たり前です。警察さえもまともに機能していないことも明白です。

 自分たちが健康であることから、周りの人への感染の危険を考えない、これらの無責任な若者たちが、感染を拡大させる危険を理解できていないというよりも、自分たちの欲望が理性を抑えることができないことに、彼らの未成熟さを感じずには、いられません。

 このサッカーの試合がクラスターになることは、これまでのコロナウィルスの経過を見ていれば、確実なことなのです。

 ロックダウンという55日間の国民全員の努力でようやく勝ち得た制約付きのロックダウン解除も、このような行いにより、再び、制約が増えていきます。まるで、程度の低い学校で、やたらと校則が厳しくなっていくような感じです。

 そもそも、フランスのコロナウィルスの感染爆発は、このストラスブールのあるグランエスト県から広がったもので、その被害もこの地域は、どこよりも甚大で、どこよりも悲惨な状況を身近に見てきたはずなのです。

 こうなったら、ストラスブールだけでも、ロックダウンして、再びこの地域から感染拡大が全国に広がることのないようにして欲しい・・と思っているのは、私だけではないはずです。

 政府は、検査、隔離を徹底していくと言っていますが、こういう人たちは、多少、??と思っても、検査は、受けないのではないかと思います。だって、陽性となれば、隔離されてしまうことに耐えられないでしょうから・・。


<関連>「フランス(ヨーロッパ)でコロナウィルスが広まる理由」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/03/blog-post_19.html

2020年5月25日月曜日

コロナウィルスの第一線に駆り出されたインターンシップの医学生のトラウマ・PTSD

  
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 今回のコロナウィルスの感染爆発により、フランスでは、医療崩壊が起こり、多くの地域の病院では、満床状態になり、病院のベッドだけでなく、医療機器、医薬品、医者、看護師も足りなくなる非常事態が起こりました。

 次々に運ばれてくるコロナウィルス感染患者が病院の廊下にまで溢れ、少しでも余裕のある地域に、TGVや軍用ヘリコプターなどで、患者を搬送したり、足りない呼吸器の補充に動物病院から呼吸器を回収して使用したり、潜水用のマスクを改良して使ったりしていた時期もありました。

 当然、医療に関わる人員も不足し、すでに引退している元医療従事者に呼びかけたり、医学部や看護学部の学生やインターンも多く動員されました。引退している元医療従事者でさえ、そのほとんどは、こレほどの危機的状況に立ち会ったことはないわけで、ましてや、まだ経験のない学生たちにとっては、いきなり、最初の壊滅的な第一線の現場での体験が衝撃的でないはずは、ありません。

 フランスで一番悲惨な状況であった3月末から4月の初めにかけての期間から、一ヶ月以上が経った現在は、イル・ド・フランス(パリ近郊地域)以外は、病院も満床状態からは、回復していますが、少し落ち着き始めた今、いきなり第一線に駆り出されたインターンの学生の3人に1人が心的外傷後ストレス・トラウマの症状を訴えています。

 Intersyndicale Nationale des internees(Isni)が金曜日に発表した調査によると、回答に応じたインターンの学生の47.1%が5月中旬に不安症状を、29.8 %はPTSDの症状を示し、18.4%は抑うつ症状を訴えています。

 医学を志し、勉強中だった学生たちが、突然、コロナウィルスでの危機的状況の中で、目に見えないけれど、強力な威力を持った未知のウィルスと戦う第一線の戦士となり、目の前で、たくさんの人が苦しみ、亡くなっていく場面に遭遇し、足りないベッド、足りない呼吸器、足りない医薬品の現場に時には、命の選択を余儀なくされていた場面もあったことでしょう。

 「悪夢」「怒り」「悲しみ」「恐怖」が連続した日々は、学生たちに、その後の不安症状、トラウマ、PTSDの傷を残したとしても、なんら不思議は、ありません。日常でさえ、医師になって、患者の死に遭遇することは、敗北感に苦しみ、辛いことに違いありませんが、それが、いきなり毎日毎日、得体の知れないウィルスのために、大勢の人が苦しみ、亡くなっていく現場は、彼ら自身をも、精神的に追いつめ、傷つけてしまったに違いありません。

 この学生たちのストレス症状は、非常に重いため、「悪夢、対処できない、それについて話すことができない。イライラ、怒り、不安、悲しみ・・」に苦しみ続け、この症状は、現場に駆り出された学生の間では、一般的な症状として、確認されています。

 フランスは、医療崩壊を起こした結果、将来の医療従事者に深い傷を残してしまっているのです。

<関連>「コロナウィルスによる命がけという体験」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/04/blog-post_2.html