2021年2月19日金曜日

長期コロナ感染症 症状の満ち引きを繰り返す症状 COVID LONG

   


 コロナウィルスによるパンデミックが始まり、約1年が経とうとしています。その間、感染が拡大したり、ロックダウンや夏に向かう気候にも助けられて、一時は減少したりしましたが、秋から冬にかけて、気温の低下とともにウィルスは再び活発化して、感染が拡大し、第1波、第2波、第3波と何回もアップダウンを繰り返しながら、ウィルス自体も変化しながら拡大を続け、オリジナル?のコロナウィルスから、現在、フランスは、当初のコロナウィルスよりもイギリス、南アフリカ、ブラジルなどの変異種が確実に拡大し始めていることに脅威を抱き、警戒を緩めることはできない状態です。

 しかし、ここへ来て、変異種の拡大とは、別に、コロナウィルスに感染した場合に症状が長期にわたって続いている症例が多く報告され、COVID LONG(長期コロナ感染症)として注目され始めました。

 フランスでは、感染者の10%〜15%がこの症状に苦しんでいると言われています。

 最近のコロナウィルス感染患者は、入院しても、当初よりも入院期間が比較的短期で退院が可能になるケースが増えてきており、軽症の場合は、2週間程度、重症でも3週間程度の入院で済む(もちろん、さらに長期入院の人もいる)とされています。

 しかしながら、ある程度、回復しても、一旦、おさまった症状が、数ヶ月後に再び現れたり、退院後も倦怠感、胸の圧迫感が続いたり、少し経ってから、再び、味覚の変化、消化器疾患、吐き気、手足のふるえ、凍った手、体の特定の部分の灼熱感、悪寒、脱毛など、人により、様々な症状があるものの、これらの症状が一時的にひいてはまた、しばらくすると、症状を繰り返す、長期コロナ感染症に苦しみながら生活している人がかなり多いことがわかり始めてきたのです。

 ある27歳の若い女性は、昨年の3月に一度感染して以来、胸部、腹部、全身の筋肉の痛みが継続しており、この約一年の間に、一部の症状が消えると他の症状が現れるという状態が続いていると言います。

 最初の感染での治療終了後は、症状が変化するたびに、PCR検査を受けても、検査結果は陰性なのです。

 もちろん、これらの症状が再感染によるものである場合もあるのですが、彼女のように、検査を行っても陰性であるケースも多く、これは、感染時に身体そのものにダメージを負ってしまっているケースに見られているもので、コロナウィルスが呼吸器、脳、心臓・心臓血管系、腎臓、腸、肝臓、皮膚など、身体のあらゆる部分に影響を及ぼしている結果であるということがわかってきています。

 これは、感染した際に重症化した場合だけでなく、軽症で済んだと思われていた人にも、同じように起こる可能性があることがわかり始めており、あらためて、コロナウィルスの恐ろしさを突きつけられている感じです。

 この長期コロナ感染症は、長期間にわたる後遺症とも言える症状ではありますが、後遺症が一定の症状が継続する一方、この長期コロナ感染症は、症状が治ったり、数ヶ月後に再び現れる波のような症状を繰り返し、軽症者にも見られる症状だけに、ますますタチの悪いものであるとも言えます。

 感染が増加したり、減少したりしながら、パンデミックが長期化していることから、表面化し始めた、この「長期コロナ感染症」へのケアについて、フランス国会は政府に対し、「適応ケアパス」を開発し、職業(仕事)にも影響する病気としての治療の可能性を拡大することにより、深刻で長い形態のコロナウィルスへの対応を強化するように求めています。

 それにしても、次から次へと恐ろしい威力を発揮し、進化し続けるコロナウィルス。軽症とて、決して侮ることはできず、とにかく、かからないに越したことはないようです。


<関連>

「深刻なコロナウィルスの後遺症 求められる早期の段階の治療」

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2021年2月18日木曜日

フランス人は想像以上に日本を知らない


Poulet karaage, riz et légumes cuisinés
フランスの冷凍食品PICARD(ピカール)で売っているどう見てもフライな鳥の唐揚げ


 まさか、さすがにフランス人で「日本」という国を知らない人はいません。しかしながら、日本はアジアにある国の一つの島国で、ある程度、豊かな国であり、なんとなくのそれなりのイメージがあるだけで、実のところは、フランス人は一部の人(アニメ・漫画・YouTubeなどで日本の魅力に取り憑かれている人など)を除いて、日本のことは、よく知らないのが実際のところで、思った以上に日本のことは、知られていないんだな・・と思うことがよくあります。

 最近は、コロナウィルスのおかげで、「みんながマスクをする習慣がある国・・」という印象が強いようです。

 この間、銀行に行った時に、担当をしてくれた女の子に、「バカンスには、行かないの?」と聞いたら、「行きたくても、どこへも行けないし・・」と言うので、「私も日本でさえ、自分の国なのに、もうずっと行けていない・・」と言ったら、「日本は、コロナウィルスはどうなの?」と聞くので、「フランスよりは、全然、感染者も少ないよ・・」と答えたら、「そうよね・・日本は、コロナウィルスの前から、みんながマスクをしてる国だもんね・・」と言われてびっくりしました。

 マスクの有効性が語られる時、フランスのメディアは、日本を始めとして、マスクをする習慣のある国々は、感染拡大が抑えられていると日本を例に挙げて話したりするので、それが拡大解釈されている模様です。

 私自身が初めてヨーロッパに来たときは、やはり実際に生活してみて驚いた発見もたくさんありましたが、きっとフランス人が初めて日本に行った時の衝撃の方が大きいと思うのです。

 今は、知ろうと思えば、ネットでいくらでも情報は収集できますが、日本人がフランスに来る以上に、実際の日本の風景や日本人の生活は、フランス人の想像を超える異文化、異次元の世界なのだろうと思います。

 今は特に、あの清潔な環境が日本では日常であることを、私は、全てのフランス人に知ってもらいたい気持ちでいっぱいです。

 私自身、たまに帰国する度に、空港から家に向かう車から見えるぎっしりと建っているビルや人混みに目がまわりそうな気分になることもあります。

 パリはフランスの中では大都会ではありますが、所詮、東京などに比べれば、山手線のなかに入ってしまうほどの小さい街、すっかり田舎者になったものだと実感させられます。

 身近なところでは、最近、一段と増えたフランスでの日本食は、誤解に満ちたものも多く、時として、「えっ???」と思わされるものもなかなかあります。

 TEMPURA(天ぷら)と書かれたものが、実は、エビフライであったり、TEPPANYAKI(鉄板焼き)と言うものが、焼きそばだったり、冷凍食品のコーナーで、日本食を見つけたりすると、そのあまりにすぐわかる間違い探しが面白かったりします。

 しかし、日本人としては、間違った日本の文化がそのままフランスに伝わっていくのかと思うと微妙な気分でもあります。

 とはいえ、ここ数年(といってもここ一年は除く)は、日本へ観光に行くフランス人は、驚くほど増え、日本へ行くたびに日本行きの飛行機はほぼフランス人で埋まっていて、身近な人でも、友達で日本へ行った人がいて、ものすごく日本人は親切で、どこに行っても綺麗で、ぜひ、自分も日本に行ってみたい!という人が大勢いて、私が日本人だということもあって、日本を褒めてくれることもあるのでしょうが、よく知らないとはいえ、概ね日本のイメージはすこぶる良いことに気を良くしているのであります。

 以前に会社にいた若くてかわいい中国人の女の子が、フランス人に声をかけられると、「日本人じゃないの?とガッカリされるけど、どうしてだろう?」と素直に聞かれたことがあって、ちょっと答えに困ったけれど、内心、中国よりも日本の方が印象がいいのだな・・と思ったりもしました。

 反面、日本人もやたらとフランスを美化して誤解している点もままあるので、結局はお互い様かもしれません。

 いずれにせよ、早くコロナウィルスが収束して、またたくさんのフランス人が日本へ行けるようになって、本当の日本に触れて、もっとフランス人が日本を知ってくれる日が来ることを祈っています。


<関連>

「日本はフランス人になぜ愛されるのか? フランス人は日本をどう見ているのか?」

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2021年2月17日水曜日

緊急事態宣言で感染が減少する日本と、より厳しい制限下でも変わらないフランス

      


 はじめから、桁違いと言えば、それまでですが、日本も年末年始にかけて、感染状況が悪化し始めて、日本での2度目の緊急事態宣言が敷かれたのが、1月7日でした。

 それからもしばらく感染状態は悪化していたものの、1月19日前後にピーク?を迎え、それ以降は順調に感染状況も減少し、ほぼ一ヶ月で、12月上旬程度の感染状況にまで戻っています。

 それに比べてフランスは・・日本よりもずっと厳しい規制が続いているというのに一向に感染者は減りません。

 減らないどころか、変異種がどんどん拡大し、先日、一週間で500件近くも南アフリカ・ブラジル変異種が検出されて、危機感が高まっているモゼル県(フランス北東部・グラン・テスト地域)では、今や感染者の50%は変異種によるものに拡大しています。

 日本の緊急事態宣言は、飲食店の営業時間の短縮(午後8時まで)、不要不急の外出自粛、イベントは最大5000人かつ、収容率50%以下に制限という今のフランスから見たら、夢のような世界です。

 フランスは、営業時間短縮どころか飲食店は、もう何ヶ月も閉店(テイクアウトのみ)、美術館や劇場、映画館でさえも、ずっと閉鎖状態、コマーシャルセンター内などは、生活必需品以外の店舗は全て営業禁止です。

 外出も午後6時まで、6時までに家に帰ればければ、正当な理由(外出証明書)がなければ、135ユーロ(約17,500円)の罰金です。

 こんな日本よりもずっと厳しい制限下にありながら、フランスの感染者は一向に減らないのです。

 おかしなことに、感染者が減少しないことよりも、ロックダウンをせずに爆発的な感染に至っていないことをフランスは、誇りに思っているようなところがあります。(実際には、もうすでに充分、爆発状態だと思うけど・・)

 私は日本人なので、ついつい日本の状態と比べて、フランスは、ホントにだめだな・・とため息が出てしまうのですが、もともと、レベルが全く違い、比較するのもおこがましいのです。

 わかりやすく言えば、以前、麻生太郎氏が「おたくらの国とは民度が違う」と発言して、炎上したことがありましたが、まさにそれ・・彼の言い方や言うタイミングなどは、問題もありますが、彼の言っていたことは正しい・・まさに民度が違うのです。

 自分を律することができず、衛生に気を配り、他人を思いやり生活することができない人が多すぎるのです。ことに衛生観念のレベルの低さは、致命的です。さすがにマスクこそ今では、定着していますが、ちょっと興奮した状態に陥れば、途端にマスクをしない人もチラホラし始めます。

 また、悪いことに先週は、フランス全体を大寒波が襲い、一週間、日中でさえもマイナス6℃〜7℃という氷点下の世界・ウィルスの活性化する気温の低下です。その上、雨や雪が続く天候で、セーヌ川を始めとする、川の氾濫による洪水の被害に見舞われ、避難生活を強いられる人々が続出しました。

 フランスは、もうすでに長引いている厳しい制限下の生活にも慣れ始め(嫌気がさしているともいう)、なんとか厳しい制限の目をかいくぐって、旅行したり、移動したりする人がここ数週間で倍増しています。

 同じ人間なんだから、日本のような制限で感染は減少させることはできるはずなのに・・それができないフランス・・比べても仕方ないと思いつつ、緊急事態宣言の成果がきっちり現れてくる日本はやっぱりスゴいな・・と思うのです。


<関連>

「フランス(ヨーロッパ)でコロナウィルスが広まる理由」

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「フランス人は、マスクさえしていればいいと思っている・・フランスで感染が拡大する理由」

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2021年2月16日火曜日

パリ17区での塩酸による日本人襲撃事件に対するフランスの扱い

  


 先週、パリ17区で在仏日本人が塩酸をかけられた事件は、フランスで起こったことなのに、大きく報道されることもなく、疑問に感じていました。

 それが日本人だと知って狙われたものだったのか? アジア人だと思って狙われたものなのか? 個人的な恨みによるものだったのか? それとも無差別テロのようなものだったのか?は、わかりませんが、いきなり不審な人が近付いてきて、顔に塩酸をかけるというのは、いくら治安が悪化してきているパリとて、そうそうあることではなく、一般市民にとっても、恐ろしい事件であることに変わりはありません。

 そんな事件がなぜ?騒ぎにならないのか不思議でなりませんでした。

 それが、ようやく今になって、仏・フィガロ紙の一部に掲載されたのですが、その掲載の仕方が事件そのものよりも、見出しからして、「パリ・日本大使館が在仏日本国民に対して、日本人が受けた塩酸襲撃事件を警告」というもので、事件そのものを追求したものではなく、日本大使館が在仏日本人に対して警告メールを送ったこと、そして、そのメールの内容を紹介しただけの内容が主でした。

 また、この被害者家族が警察に被害を申し立てたところ、本人不在のため、被害届は提出できず、幸いなことに被害者は軽傷を負っただけであり、更なる法的手続きは望んでいないと記されていました。

 また、このフィガロ紙の報道に対して、パリ17区の区長はツイッター上で、「あれは、特別アジア人を攻撃したものではない。被害者本人が軽傷であるため、警察に訴えることを望んでいない。警察は捜査を続ける。」とコメントを発表しています。

 フィガロ紙の取材に対して、日本大使館は被害者側が事件の詳細な説明を望んでいないために、彼らの意思を尊重して詳細は公表しないとしていますが、一度は被害届を出しに行ったのに、結局は、被害届が正式に出されていないことは、警察側に軽傷だからとまともに扱われなかったか? それとも、被害者が事件が公になって、犯人側の報復行動を恐れたのか? しかし、日本大使館には、報告されている・・どうなっているのか、不可解です。

 17区の市長のコメントも、犯人が捕まったわけでもないのに、なぜ?「特別にアジア人を攻撃したものではない」と言い切れるのか? 全く納得が行きません。

 また、「被害者本人が軽傷であるため、警察に訴える事を望んでいない」と言葉どおりに受け取ることも、軽傷で済んだ事を傘に、曖昧に流して、事を済ませようとしているという印象が否めません。

 どちらかというと、家族が訴えを出しに行ったものの、軽傷であったために、警察がまともに受け取ってくれなかった・・そんな気がしてなりません。

 日本人は大人しく、あっさり引き下がったり、黙って我慢すると思われがちですが、被害はしっかり訴えるべきです。

 言葉の問題や、押し出しがどうしても弱い日本人からしたら、警察に、あっさりと被害を受け付けてもらえない場合にゴリ押しがしにくいのもわかりますが、そんな時は、身近なフランス人に付き添ってもらったりすることが必要な時もあります。

 フランス社会では、トラブルに対しては特に、フランス人対フランス人の場合は、コロッと対応が違うことも多いのです。

 今回は幸いにも軽傷で済んだだけであって、タイミングが少しでもズレていたら、大惨事となっていたのです。

 そして、その犯人は、今もパリの街のどこかに平然と生活しているのです。このままでは、第2、第3の事件が起こる可能性が潜んでいるのです。

 先日、パリの15区で起こった14歳の少年への過激な暴行事件の際には、フランス人の母親が堂々とテレビのインタビューに答えて、自らマイクを握って、被害を訴えたのはとても印象的でした。

 ところが、アジア人に対する事件に関しては、この曖昧な感じで、事件が風化されて終わってしまうことが多いのです。

 被害にあって弱っている時に、辛いことではありますが、このような凶悪犯罪に対しては、少なくとも警察にしっかり訴えを出すことは絶対にしなくてはなりません。強く出なければ、フランスでは、警察でさえも味方になってはもらえないのです。

 日本大使館の注意喚起も、ただ、「周囲の環境に注意を払ってください」というだけでなく、被害に遭った場合は、被害届をしっかり出すこと・・というのを付け加えて欲しいです。


<関連>

「パリ17区で日本人が塩酸を顔にかけられる傷害事件発生」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/02/17.html

「日本人は、黙って我慢すると思われている」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/02/blog-post_4.html


 


2021年2月15日月曜日

フランス保健省 各病院に危機管理体制通告

  


 年が明けて、クリスマス・年末年始の人が集まった結果を警戒していたフランスは、ビクビク怯えながら、年明け早々には、ワクチン接種が周囲の国々に比べて極端に遅れていることが発覚して以来、ワクチン問題で大騒ぎになっていました。

 ワクチン問題とともに、感染の爆発状態には、ならないものの、毎日毎日の新規感染者は、25,000人前後、集中治療室の患者数は、3,300人前後とジワジワと増加を続け、政府からの会見があるたびに、いよいよ3度目のロックダウンか?とドキドキしながら過ごしてきました。

 実際に感染症の専門家達は、ロックダウンの必要性を叫び続ける中、フランス政府は、頑として「あくまでもロックダウンは最後の手段」「ロックダウンをせずにできることは全てやる」という姿勢を崩さないまま、夜間外出制限を18時に前倒しにしたり、コマーシャルセンター内の生活必需品以外の店舗を営業停止にしたり、それらの取り締まりを強化することで、爆発的な感染拡大を現在までは、何とか回避してきました。

 2月に入ったあたりから、イギリス変異種を始めとする南アフリカやブラジル変異種の拡大が顕著になり始め、綱渡り状態の綱がだんだん細く、貧弱になっている感があります。

 ここへきて、今のところ、すぐにロックダウンには、ならないものの、フランス保健省が全国の各病院、クリニック宛に、「危機管理体制」への準備を2月18日(木)までにするようにという通達を出したことが明らかになっています。

 「危機管理体制」とは、具体的には、病院においての急激なコロナウィルスによる患者の増加に備えて、病床を増やすことや、以前から予定している緊急を要する手術以外の手術予定の組み直しをして、感染爆発状態の病院受け入れ体制を取り始めたということです。

 このところ、毎週木曜日に行われる政府からの会見では、依然として大変深刻な状態であることが発表され続けていますが、いつでもロックダウンする準備はあるとしつつも、制限が少しずつ強化されたり、検査を拡大したり、ワクチン接種をさらに急ぐというような対応策の発表のみで、最近は、世間も一時のように今すぐにでもロックダウンになるかもしれないといった気配が薄れつつありました。

 しかし、政府が病院宛に具体的な日付指定でこのような通達を出すということは、この綱渡りの状況が、さらに深刻な状態に陥っているということに他ならない事実です。

 私の母は拡張型心筋症という病気で亡くなりましたが、死後、解剖した結果、想像以上に心臓が肥大しており、「普通の人がいきなりこの心臓の状態になった場合は窒息するほどの苦しさであったでしょう」と言われて、驚いたことを思い出しました。

 母の場合は、病気が発症してから10年をかけて、徐々に悪化していったので、心臓の苦しさに少しずつ慣れていったので、恐らく母はその窒息するような苦しさにも慣れながら生活してきたのであろう・・と。

 今のフランスの状態は、それと似たような状況ではないかと、ふと思ったのです。爆発的ではないとはいえ、徐々に悪化している感染状況も、考えてみれば1日2万5千人の感染者が出て、一週間に2,500人近くの人が亡くなっている状況は、すでに、充分に爆発状態であるのです。

 具体的な危機的な状況全てが、公になることはありませんが、政府が分析している数字は、病人の大量増加に備えての病院の体制を組み替えることを通達するほどの状況になっているのです。

 ロックダウンにならずとも、今のフランスは、綱渡りの綱が切れそうな状況であることを自覚しておかなければなりません。

 昨年3月、4月の悲劇が、同じ時期に、繰り返されるかもしれません。


<関連>

「コロナウィルスによる医療崩壊の事実と社会の崩壊の危機に直面するフランス」

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2021年2月14日日曜日

南アフリカ変異種による再感染患者の重症例が示しているもの

  


 ここのところ、南アフリカ変異種の拡大がモゼル県(フランス北東部・グラン・テスト地域)での感染が多数検出されたことから、不安視されていますが、この南アフリカ変異種が恐れられている理由の一つに「再感染」が可能であることが挙げられていました。

 これまでにも、イギリス、南アフリカ、ブラジルの変異種による再感染の症例はすでに科学文献に記載されていますが、ほとんどの場合、2回目の感染は最初の感染よりも重症度が低くなるというのが定説とされてきました。

 ところが、フランスで、南アフリカ変異種に再感染した58歳の患者が重症化したケースが発表され、これまで「2回目の感染は、重症化しにくい」という説が崩された結果となりました。

 喘息の病歴を持つこの男性患者は、発熱、中程度の呼吸困難を訴え、昨年9月にコロナウィルス陽性と診断されて入院しましたが、症状は、数日内におさまり、12月には、2回に渡るPCR検査の結果、陰性と診断されています。

 ところが、今年の1月に入って、彼は再び発熱と呼吸困難のため、パリ近郊のコロンブにあるルイ=ムリエ病院(AP-HP)の緊急治療室に再入院しました。

 彼のPCR検査は再び陽性であり、遺伝子配列決定は南アフリカの変異体に特徴的な突然変異の存在を示していました。

 彼の症状は再入院の7日後に急性呼吸窮迫症候群を発症し、挿管して生命維持装置に繋がれる重篤な状況に陥りました。

 彼の再入院時に行われた、血清学的検査は、過去の感染を証明する抗体の存在を検出していますが、これは、最初の感染後に免疫が変化したため、南アフリカ変異種による再感染を防ぐことができなかったことを示しています。

 パンデミックの発症から1年後、コロナウイルスに対する免疫の持続期間は依然として、はっきりとしたことがわかっていませんが、ここ数ヶ月でより伝染性の高い変異体の出現によってさらに、免疫に関する疑問は拡大しています。

 それらの変異種の中でも、南アフリカ変異種は特に懸念されています。また、この特定の遺伝的特徴のために、ワクチンの有効性を減少させる可能性も孕んでいます。(実際に南アフリカでは、アストラゼネカのワクチン接種を保留しています)

 免疫があるにもかかわらず再感染するという恐ろしい状況ですが、幸いにも現在、世界中で接種が開始されているワクチンは、免疫を作るというワクチンではなく、RNAという遺伝物質を人工合成して作られているワクチンで、体内の細胞を抗ウィルス薬を製造する細胞として利用するというものです。

 そのため、たとえ、免疫が変異種の再感染を防ぐことはできないとしても、ワクチンの有効性に影響を及ぼすとは考え難いのですが、変異種のウィルス自体がワクチンにより作られた体内の細胞を使って作られた抗ウィルス薬が太刀打ちできない強力な威力を持っているとすれば、また別問題です。

 こうしている間にも、また別の変異種が出現しないとも言えないことを考えると、まだまだこのワクチン開発とウィルスの発達や変異とのイタチごっこが続くのかもしれません。


<関連>

「フランスが恐れるイギリス・南アフリカ・ブラジル変異種の拡大」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/02/blog-post_12.html

「変異種による2回目のパンデミックが起こる」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_26.html

2021年2月13日土曜日

パリ17区で日本人が塩酸を顔にかけられる傷害事件発生 

   

  

 「2月10日(水)夕刻、パリ17区の公共空間において、邦人被害者が友人と3人でいたところ、フードをかぶり、下を向いて歩いてきた3人組(男女不明)から、いきなり顔に向けて液体強酸をかけられるという傷害事件が発生しています」というメールが在仏日本大使館から届きました。

 この事件は、現在のところ、フランスの一般メディアでは一切報じられていないので、詳細やその後の捜査については、わかりませんが、つい先日もパリ15区のボーグルネル(特に危険だと見られていなかった地域)で14歳の少年が10人前後の暴漢から酷い暴行を受けて重症を負うという事件が起こったばかりだったため、パリの治安の悪化を再び思い知らされた気がしました。

 この被害者は、近くに見えた不審なグループに警戒をしていたものの、グループのうちの一人が液体の入ったボトル(工具店などで普通に購入できるもの)を取り出した瞬間に危険を察知し、手で顔をガード。幸にして顔には液体はかからなかったものの、掌に火傷を負ったため、すぐにその場を避難した後に医者の診断を受けたところ、火傷は塩酸によるものであることが判明。もしも、塩酸が目に入っていたら、失明などの取り返しのつかないことになっていました。

 怖い!怖すぎます!

 これが、無差別テロのようなものなのか、個人的な恨みによるものなのか、アジア人狩りとも言われるアジア人を狙っての襲撃なのかわかりませんが、いずれにしても同じ日本人の被害にとてもショッキングな事件です。

 いきなり見ず知らずの人に塩酸を顔にかけられるのですから、こんなに恐ろしいことは、ありません。なぜか、ちょっと危険な雰囲気を醸し出して歩いている人は、必ずヨットパーカーやトレーナーのフードをかぶって歩いているのです。

 この事件で、これから以前にもまして、フードを被っている人を警戒するようになります。ところが、こういう人、結構、多いのです。しかも、最近は、皆マスクまでしているので、怪しいと思えば、ますます怪しく見えてきます。

 コロナウィルスが発生し始めた昨年2月頃から、ウィルスが発生した震源地の中国を疎ましく思う気持ちからか、フランスでは、アジア人差別や「アジア人狩り」なる動きが起こっており、一時は、「全ての中国人を攻撃せよ!」などという呼びかけがSNSで出回り、中国人だけでなくアジア人全体が攻撃対象になり、街中でコロナウィルス扱いを受けて、暴言を吐かれたり、暴力を振われたりした事件が相次いだのです。

 この恐ろしい「アジア人狩り」の動きには、パリ検察庁なども捜査に乗り出し、沈静化したように思われていたのですが、決して根絶したわけではありません。

 もしかしたら、今回のこのパリ17区で起こった傷害事件もこの「アジア人狩り」の一端であった可能性もないわけではありません。

 2019年2月には、メトロ11号線で、2日後には、1号線内において、乗客が硫酸をかけられて重症を負うという事件が起こっていますが、この手の犯罪は、あまり多い事件ではありません。

 とはいえ、現在は、長引くパンデミックによるたくさんの制限の中で生活を続けなければならないストレスから、精神的に不安定になっている人も多いため、攻撃的な暴力を伴う犯罪は増加しています。

 しかし、なぜ、このような危険な事件をフランスのマスコミが取り上げないのか?公にならないのか?は疑問です。日々、犯罪が多発しているフランス、マスコミが事件を追い切れていないのかもしれません。

 もしも、被害に遭った場合、恐れずに声をあげることも必要です。ツイッターでもインスタでもいいから、SNSを使って、被害を受けたことを世間に訴えることが必要です。これにより、犯罪が公になり、警察・検察がようやく本格的に捜査を真剣に進めてくれることにも繋がります。

 犯罪が多発するフランスで、よほどの犯罪でなければ、徹底的に捜査されることはなく、多くの犯罪に埋もれていってしまうのです。そのことが犯罪をのさばらせる悪循環となっています。

 とはいえ、日本大使館がこのような事件を知らせてくれるのは、とても心強いことです。大使館は、このような事件に関することだけでなく、フランス国内での日々、更新される生活制限・渡航制限などに関するニュースなども、オンタイムですぐにメールで知らせてくれるので、とても助かっています。

 在留届を出して、登録すれば、このようなニュースが自動的に送られてくるので、海外で生活されている方は、登録されることをおススメします。

https://www.fr.emb-japan.go.jp/itpr_ja/zairyutodoke.html

 この場を借りて、日本大使館のメールを送ってくださる方、いつもありがとうございます。


パリ・日本人塩酸襲撃事件 

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「コロナウィルスによる中国人・アジア人種差別再燃 「アジア人狩り」」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/11/blog-post.html

「災害に免疫のないフランス人がパニックになり、アジア人全体を傷つけている」