2020年4月7日火曜日

緊急事態宣言が発令された日本 コロナウィルス対応に失敗したフランスから学んで欲しいこと



        Dans un Ehpad parisien (illustration).


 海外からハラハラする思いで見ていた日本にも、ようやく「緊急事態宣言」が発令されることになったと聞いて、それが、早すぎたか、遅すぎたかは、先になってみなくては、わかりませんが、ともかく、少しだけホッとしています。(早すぎたということは、ないとは、思いますが・・)

 日本では、緊急事態宣言を出しても、海外のような都市の封鎖をすることはなく、そのような必要もなく、電車も動くし、スーパーも引き続き営業するとのことですが、フランスでも、この状況の中でも働かなければならない人のために、本数は減りましたが、電車やバスも動いています。

 経済状態を保つのは、もちろん、重要なことですから、最小限に抑えつつも、全く経済が止まらないようにできれば、それに越したことは、ありません。

 あまり、海外のニュースをご覧にならない方でさえも、ヨーロッパの悲惨な状況は、ご存知だと思います。イタリア、スペインほどではないにせよ、フランスもギリギリの状態が続いています。なんなら、減少傾向にあるイタリア・スペインに比べると、フランスは、まだ、増加の一途を辿っています。

 毎晩、発表されるコロナウィルスによる死者数、集中治療室の患者数を、家の中にいることしかできない私も、できの悪い学生が成績表を見るような気持ちで見守っています。
 これまでに8911名(4月6日現在)、7072名が集中治療室に入っています。昨日から、死者は、833人も増えています。

 フランスのコロナウィルスのオーバーシュートの震源地は、Grand Est グランエスト(フランス北東部の地方)Mulhouse(ミュルーズ)の教会で行われた教会のフランス全土から信者を集めての一週間にわたる集会であったと言われています。集会終了後に、感染した人々がフランス全土に散って行ったのです。

 ですから、緊急事態宣言が出たからと言って、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡にいる人は、間違っても、故郷に逃げてはいけません。イタリアもこれで、大失敗しています。日本では、感染者用の隔離用の施設なども確保しているようですし、医療崩壊、感染拡大を防ぐ手立てを打っているようなので、感染者は、重症化する前に隔離されて、これまでよりは、少し、安心な状態になるでしょう。(ただし、感染のスピードと対応の早さの競い合いになりますが・・)

 とにかく、感染を全国的に広げることは、何としても避けなければなりません。誰もが自分は、すでに感染していると思って行動することが必要です。


 もう一つ、フランスで、大問題になっているのは、EHPAD(エパッド)という高齢者施設での感染です。エパッドは、フランスで、最も広く普及している高齢者用施設(医療施設も備わっている)なのですが、3月末に、実は、このエパッドでの犠牲者が莫大な数に上っていることが発覚し、現在は、死者数が発表される際は、エパッドについては、別に数字が上っているほどなのです。
 現在、コロナウィルスによる死者8911名中、2417名がこのEHPADで亡くなっています。

 現在のところ、その運営状況などについて、そのスタッフの労働状況などにも問題があったことは、わかってきていますが、詳しい報告は、上っていません。しかし、もとより高齢者が集団でいる施設。介護の度合いに差はあれど、犠牲者が多く出ても、不思議はない環境です。

 フランス人は、人口が日本のように高齢者に偏ってはいないため、高齢化社会と言われることは、ありませんが、なかなか、平均寿命が高い国で、お年寄りが多い国なのです。

 ましてや、日本のような高齢化社会。高齢者用施設はもちろんのこと、自宅に住んでいても、デイケアやリハビリなどに通っておられる高齢者も多いと思います。

 外出自粛で、人との関わりが減り、運動不足解消などと言って、いくら、衛生的な環境でも、そのような場所に行くことは、賢明ではないと考えます。コロナウィルスの猛威をなめてはいけません。たった一人の感染者でさえ、それは、もの凄い早さで、何倍もの人に感染するのです。

 そして、このような環境下で、働いて下さっている方々を最大限、守ってあげて欲しいのです。医療関係者は、もちろんのこと、スーパーなどでも、フランスでは、人との距離を取れるために入場制限をしています。

 レジの前には、透明のプラスチックのシートが貼られ、現金は、ほとんど使いません。それも、スーパーで働く人の中から、何名かの犠牲者が出てから、作られたシステムです。

 日本は、何かを便利にしようとか、改善しようとか、そういったアクションが、とても早い国ですから、そのような対策は、すぐに取られるであろうことを期待しています。

 もはや、フランスは、長引く外出禁止に気が緩みつつある国民へ、増え続ける犠牲者数を毎日、確認しながら、Restez Chez Vous !(レステ・シェ・ブ!)家にいて下さい!とテレビで一日、何度、聞くことでしょう。

 大切な人を守りたいなら、とにかく、家にいることです。

 



























2020年4月6日月曜日

コロナウィルスと太陽の誘惑




 この週末のフランスは、晴天に恵まれ、気候もすっかり良くなり、暖かく、なりました。外出禁止から3週間が経とうとしているフランスでは、パリを含む地域が学校のバカンスに突入し、天候にも恵まれ、すっかりバカンス気分。

 これが、普通の日常であったなら、こんなに気持ちのいい季節はないのに、この太陽の誘惑が恐ろしい結果を招くことを考えないことは、なかろうに、皆、長期間になってきた、閉じこもり生活に辟易し始め、また、特に、小さい子供を抱えての閉じこもり生活のストレスは、相当なものなようで、この週末は、外出禁止令発令以来、太陽に誘われた人が多く、外出した模様です。

 我が家も娘が小さい頃には、外出禁止などの状況ではなくとも、いかに、娘のエネルギーを発散させるかに、とても苦労しましたから、今の状況で、小さい子供を抱えるご家庭のご苦労は、察するに余りあります。

 バカンス突入に向けて、政府は、16万人の警官を配備し、バカンスに出ようとする人々の警戒をしていたのですが、予想に反して、遠距離の移動をしようとする人は、少なく、それぞれが、近場での散歩や買い物に出る人が、この天気の良さにも誘われて、びっくりするほど、出歩き始めたのです。

 パリには、隣接した、ブーローニュやヴァンセンヌの森がありますが、土曜日のブーローニュの森などは、シート持参で、日光浴やピクニックをする人まで現れ始め、慌てたパリの警察は、日曜日は、ブーローニュの森は、厳重警戒の監視体制が敷かれ、たとえ、外出証明書を持っていたとしても、罰せられることになりました。

 つい、最近までは、医療現場にいる人でなければ、マスクをしても意味がないと言っていた政府も、マスクをした方が良いという風潮に変わり、テレビでも、マスクの正しい付け方・・などという説明をしていたりすることもあり、すっかり、外出する人も、マスクをしている人が多くなり、マスクが手に入らない人は、飛行機で配られるアイマスクを口にしていたりする人までいます。

 逆に、マスクさえしていれば、感染しないと勘違いしているのではないかと思うほどです。

 以前、パリを訪れる日本人を見て、「日本人は、何で、マスクをしているのか?」と、フランス人から、ちょっと、呆れた様子で聞かれたことがありましたが、まさか、フランス人がこんなにマスクをする日が来るとは、思ってもみませんでした。

 テレビのインタビューを受ける、街を出歩く人は、「天気はいいし、日曜日だし・・」と、太陽の光が、コロナウィルスの恐怖を吹き飛ばしてしまっているようです。

 しかし、当然のことながら、こんな街の様子に、医療関係者は、怒っています。「どんなに大変な思いで、私たちがコロナウィルスと戦っていると思っているのか? 今、気を緩めたら、また、更なる感染の拡大になってしまう。家にいろ!」と。

 実際に、フランスのコロナウィルスによる死亡者数は、8078名(4月5日現在)1日で、500人以上が亡くなっているのです。

 それでも、長期化している拘禁状態にある人々は、太陽の誘惑で、明らかに気持ちが緩んできてしまっているのです。よく、考えてみれば、こんなに危険な状況で、小さい子供を連れ歩くことが、どれだけ危険なことなのか、わからないはずはありません。

 日常から、太陽の日差しにあたることが大好きで、排気ガスを吸いながらもカフェでも、外のテラスに座って、コーヒーを飲みながら、おしゃべりをしているフランス人。

 フランス人にとって、きっと、太陽の誘惑は、DNAレベルの誘惑なのです。

 今週のパリも、天気予報によると、悲しいほどお天気なのです。



<関連>
「パリのカフェに見るフランス人の日常の楽しみ方」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/12/blog-post_85.html

2020年4月5日日曜日

コロナウィルス騒動の中のテロとバカンス気分のパリ・サンマルタン運河


事件が起きたロマン・スー・イゼールの街


 コロナウィルスで緊張状態が続いているフランスの南東部、ロマン・スー・イゼール(Romans-sur-Isere)で、朝、10時半頃、街中で、若い刃物を持った男が、無差別に複数の人を襲い、買い物に出ていた人が刺され、2名死亡、5名が負傷という事件が起こりました。

 もとより、フランスは全国、外出禁止のお達しにより、街中には、外出の取り締まりのための警官が多数おり、男は、すぐに、逮捕されましたが、この緊迫した状況の中でのテロ行為に、フランスは、一時、震撼としました。

 犯人は、1987年生まれの33歳の自称、スーダン難民の男で、「アラーアクバル(Allahu Akbar=神は偉大なり)」と叫んでいたといいます。動機は、発表されていませんが、この状況下でのテロ行為は、コロナウィルスとは、別の恐怖を呼び起こしました。

 被害者については、一切、発表されていませんが、大勢の人が、一人でも多くの命を救うために、必死になっている時に、コロナウィルスに怯えながら、ほんの短い時間、買い物に出ていた健康な人が、一瞬にして亡くなってしまう事件は、許し難く、また、そのご家族にとっては、信じ難い事件であったに違いありません。


パリ・サンマルタン運河の近くを出歩く人々

 しかし、依然として、死者の数が、1日で、441名(4月4日現在)もおり、6838名が集中治療室に入っているという深刻な状況が続いている中、パリでは、天気も良く、バカンスにも突入し、閉じこもり生活に疲れ始め、また、外出証明書さえ持っていれば、上手く、取り締まりの警官への言い逃れの術を持ち始めた人々が、フラフラと街に出始め、サンマルタン運河などの、なかなかの人出には、閉口してしまいます。

 取り締まりを逃れることができれば、感染を回避できるわけではないのです。
「自分だけは、大丈夫だろう、少しくらいなら・・。」そんなわけは、ないのです。

 少なくとも、フランスでの感染が広がっていく様子、病状が急に悪化していく様子、どんな風に孤独に人が亡くなり、亡くなった後でさえ、家族と対面もできない様子を毎日のように、この一ヶ月以上、見ているのです。

 私自身は、恐ろしくて、買い物でさえ、できるだけ、外に出たくありません。
マスクでさえ、万全の対策ではありません。

 いつまでも、非常事態宣言を出さない日本の政府にも、業を煮やすところですが、この世界の状況を見て、非常事態宣言が出されないからと言って、いつまでも、フラフラとで歩く人々も、理解できません。

 自分の行動を他に責任転嫁しても、感染は、避けられないのです。自分を自分の家族を守りたいならば、家にいることです。












 



 

































 

2020年4月4日土曜日

コロナウィルスによる外出禁止の中のバカンス突入




 フランスでは、コロナウィルス対策のため、3月16日から、幼稚園から大学まで、全ての学校が閉鎖になっていますが、完全に学校機能がストップしているわけではなく、SNSなどを利用しての授業は続けられています。先生とも連絡を取りながら、通常どおりとは、言えないまでも、学校教育は、続けられているのです。

 報道によれば、これまでの3週間の外出禁止の状態での授業に追いつかなくなったか、教師と連絡がつかなくなってしまった生徒は、全体の5〜8%程とのことで、概ね、なんとか、授業は、継続されているようです。

 日本の学校が閉校の場合は、どうしていたのか? わかりませんが、少なくとも、今後、日本で学校を閉校にするようなケースがあった場合は、全く授業をストップするのではなく、SNS等を利用した授業の方法を利用するべきだと思います。

 通常ならば、というか、通常どおり?、今週末から、フランスの学校は、地域ごとに、春休みのバカンス(Vacance de Pâque・イースターホリデー)が、2週間ずつ、地域ごとにスタートします。

 一応、授業も行われていることから、金曜日の週末から「バカンスだ!」と、バカンス気分になる人も多くなることは、充分、政府も想定していたようで、この間のバカンス休暇のために移動しようとする人を封じ込めるために、この週末は、16万人の警官を動員し、遠距離移動の車やTGVなどで移動しようとする人々の監視を強化しています。

 現在のフランスの外出禁止は、コロナウィルスの感染地域の拡大を防ぐため、たとえ、自分の別荘であっても、お里帰りであっても、移動することは、禁じられています。

 それでも、バカンス気分で移動しようと見られる人出、(特に車での移動)が多いのです。

 もともとは、バカンスを何よりも楽しむフランス人、観光地の混雑や渋滞を避けて、地域ごとにバカンスの時期をずらして設定されているのですが、これが、今のフランスでは、通常なら2週間のバカンスを4週間の間、監視を強化することになってしまっています。

 いみじくも、通常ならば、6月半ばに、一週間みっちりの予定で行われるバカロレア(baccalauréat ・高校卒業資格試験)の実施が、今年は、通常どおりに行うことは、到底、不可能で、今年度は、通常のバカロレアの試験は行わず、例外的に、これまでと7月4日まで続く授業での成績をもとに、点数を配点することが発表され、ネット上では、バカロレアを受験するはずだった学生たちは、「4月の段階で、バカロレアを取れた!」などと喜びの声が上がっています。

 バカンス突入に合わせて、バカロレアのキツい試験から解放された? 若者たちが、一気に気が緩んで、フラフラし始めて、さらに、感染が拡大されることがとても心配です。
一瞬たりとも、ウィルスへの警戒を緩めることは、これまでの努力が水の泡になってしまうのです。

 昨日は、集中治療室に入る患者の数が、少し減ってきたと、少し希望が見えてきたかにも見える状態ではありますが、依然として、ヘリコプターやTGVでの患者の輸送は、ひっきりなしで、一日の死者数は、588名と深刻な状況には、変わりありません。

 学校が閉校になって、遅れを取り戻すために、夏のバカンスは、なくなってしまうかも? と心配している学生も多かったようですが、「必要な人には、補習授業を考えている。」としながらも、夏のバカンスは、通常どおりとのこと・・。

 こんな、非常時にも、バカンスだけは、しっかりとるフランス人、今ばかりは、そんなフランスのバカンスに対してはブレない感じに、どこか、ホッとしたりする妙な感覚です。

 とはいえ、夏のバカンスまでに、この外出禁止状態が解けるかどうかも、今の段階では、全く、見通しがつきません。













2020年4月3日金曜日

フランスのコロナウィルス対応は、どこで間違っていたのか?




 フランスでは、一昨日のフィリップ首相の発言から、ロックダウン解除の方法などが、ニュースのごくごく一部で、話題に上がっています。それは、熟慮しなければいけない問題ではありますが、実際のところ、今はまだ、そんな話をしている場合ではなく、未だ、死者も、感染者も増え続けている状態で、「今、なに言ってるの?」というのが、正直なところです。

 今は、ロックダウン解除よりも、「なぜ、こうなってしまったのか? なぜ、こんな状況が続いているのか?」という声の方が大きいのは、当然のことです。

 ロックダウンのタイミングを振り返る報道により、今から考えると、いかに、悠長に構えていたのが、改めて、わかります。

 昨年から、行われていた年金制度に反対するデモに加えて、昨年12月に始まった、交通機関のストライキによる、フランスでは、考えられないような混雑した電車、間引き運転の中で争う人々、それに伴うデモなどは、今年に入っても、フランス中で行われており、デモは、3月14日まで、続いていました。

 3月12日夜の最初のマクロン大統領の演説で、翌週からの幼稚園から大学までの学校閉鎖などの発表され、14日の深夜から、レストラン、全ての商店(食料品や薬局を除く)や娯楽施設が閉店になりました。

 しかし、パリの街中では、まるで、大晦日のカウントダウンのように、大勢の若者が集まり、15日は、市町村選挙が行われ、「政府も選挙以外は、外出しないように!」と、呼びかけてはいましたが、実際に、選挙自体も感染の媒体となってしまいました。

 選挙の終わりを待っていたように、16日の夜には、17日の正午からのロックダウンが発表され、17日には、パニック状態になった人々が、日用品の買い物に押し寄せました。
この時、すでに感染者は1万人を突破しており、死者は372人となっていました。

 フランスを現在の状況に追いやったのは、ロックダウンの遅れは、何よりも致命的でしたが、原因はそれだけでなく、マスクを始めとする様々な医療品の不足にもよるところも大きいのです。

 フランスは、2011年以降、ゴムを使用していることから、保存期間が5年しかないという理由で、パンデミックの非常時対応のマスクの国としてのマスクのストックを廃止していたのです。

 結果、現在は、マスク争奪戦争と呼ばれ、中国からのマスクは、アメリカとの壮絶な争いになっており、交渉ギリギリまで、行き先の決まらないマスクが最後の段階で、アメリカが3倍の値段で買っていくというケースも報告されています。

 それでも、フランスに届くマスクを乗せたトラックは、今や、空港から警察の車が先導して、物々しく、運ばれていますが、それでも、圧倒的な不足は、一向に緩和されていません。

 それは、医療現場だけではありません。

 今の状況では、信じられないような、マスクも満足にない、感染を避けられないような、劣悪な環境で働かざるを得ないアマゾンの倉庫(労働者が強いはずのフランスでこんなことが起こり得るのかと驚愕します。)で働く人々などの映像や声を聞いていると、あまりに悲惨で、これでは、まだまだ感染は止められないと思うと同時に、この時期、何かを注文して、配達を頼むことにも、罪悪感を感じるのです。

 ロックダウンの前後は、皆、少なからず動揺し、それがしっかりと定着するまでには、ある程度の期間がさらにかかるのです。コロナウィルスの感染の速度は、恐ろしく早いのです。

 今、日本は、緊急事態宣言を躊躇しているようですが、その期間も考慮して、なるべく早い対応をして欲しいと思っています。

 
 

2020年4月2日木曜日

コロナウィルスによる「命がけ」という体験




 フランスのコロナウィルスの勢いは、一向に止まりません。一日の死者は、500人を超え、(509名・4月1日)、これまでに4000人以上(4032名)が亡くなり、集中治療室にいる患者は、6017名(+452名)に膨らんでいます。

 入院患者の数は、24639名ですが、発熱、倦怠感が3日間続き、胸の痛みを訴え、呼吸が苦しくなり始めたという患者でも、医者の診察の上で、まだ、危険な状態だと判断されなければ、自宅で静養という状況での数字です。

 すでに、飽和状態の病院では、その程度?の病状では、受け入れができず、その時点で、治療できれば、快方に向かう患者が、重篤な状態に陥ってしまう悪循環です。

 飽和状態の地域からは、少しでも余裕のある地域へ、TGV、軍用機、ヘリコプターでの搬送に加えて、さらに、医療機器を設置されたバスでの搬送も始まりました。

 足りない呼吸器の代わりに、フランスのスポーツメーカー、DECATHLON(デカトロン)は、潜水用のマスクを大量に供出して、酸素吸入器の代用品として、使われています。

 このような状況の中、働いて下さっている医療関係者、病院の清掃、洗濯業者、警察官、交通機関、スーパー、薬局、葬儀社、などなど、病院はもちろんのこと、人との接触を避けられない仕事をしている方々は、感染の危険を侵して、まさに「命がけ」で仕事に当たってくださっています。
 本当に、いくら感謝してもしきれないほどです。

 日本語には、「命がけでやります!」という表現がありますが、ごくごく普通の日常には、本当に「命がけ」のことなど、そうそうあるものではありません。今の状況を見ていると、今後は、気安く、「命がけ」などとは言えないような気がします。

 私が子供の頃は、「戦争を知らない世代」などと、よく言われましたが、「死」が隣り合わせにある今の状況は、まさに戦争体験です。家の中に閉じこもることを余儀なくされている子供たちにとっても、「外出すれば、死ぬかもしれない!誰かに移して殺してしまうかもしれない!」という体験は、それぞれの人生に大きな影響を与えている体験であることに違いありません。

 身近な人の「死」に接する時、改めて、「死」について、また、「生きること」について、改めて、深く考えたりしますが、日常に「死」が溢れる、死と隣り合わせの体験もまた、人々の人生観や死生観に大きなものをもたらすと思うのです。

 まだ、医学部、看護学部の学生も、インターンとして、最前線の現場に駆り出されている状況で、多くの学生たちは、いきなり深刻な現場で、慣れない人の死にいくつも直面しています。
 彼らが、戸惑いながら、身体的にも、精神的にも、どれだけキツい状況で、必死で働いているかと思うと、心が締め付けられるような気持ちです。

 今はまだ、皆が、一人でも多くの命を救うこと、生きること、生き残ることに必死な状態ですが、ただただ、何もできずに家に閉じこもっている私でさえも、いつか、ロックダウンが解けて、外に自由の身で歩けるようになった時には、世界が変わって見えるような気がしているのです。

 

 
 

2020年4月1日水曜日

宗教が加担したフランスのコロナウィルスの拡散




 ロックダウンから3週目に突入したフランスでは、未だ、その効果は見られず、コロナウィルスによる一日の犠牲者は、増加し続け、死者499人(3月31日現在、合計3523人)、集中治療室には、新たに458人が増え、現在、5565人が重篤な状態にあります。

 フランス国内では、今日もTGV(新幹線)や軍用機、ヘリコプターを使っての患者の搬送があちこちで、行われていました。

 イル・ド・フランスでは、通常の集中治療室が1200床と言われているところに、2000床のベッドが置かれ、他の地方へ、患者の搬送が行われていますが、それでも、間に合わない現場では、集中治療室に入れる患者の選別さえも行われている状態だと言います。

 また、深刻な状況が続いている、Grand Est グランエスト(フランス北東部の地方)からも、31日、午前中には、軍用機、ヘリコプターで、Mulhouse(ミュルーズ)から、ハンブルグに6名が搬送されています。

 イル・ド・フランスは、パリを中心とするフランスの中心都市で、最も人口の多い地域ですから、人の出入りも多く、感染が広がるのも致し方ないところもあるのですが、ミュルーズでのオーバーシュートは、2月17日から、21日にかけて、La Porte Ouverte Chrétienne(クリスチャン・オープンドア教会)というプロテスタントのキリスト教の教会が、感染源と見られています。

 その教会では、毎年25年間にわたって、約2000人の信者を集めて、断食と祈りの週の一環として、フランス全土、海外からの信者を受け入れており、教団側は、その時点で、信者には、コロナウィルスの症状のある者は、いなかったとしていますが、(症状が出なくても感染しているケースが多いのがこのウィルスの恐ろしいところ)結果的には、その中に感染者が数名おり、集会終了後、数名の感染者から感染した信者が、全国に散らばって行ったと考えられます。

 フランス当局は、この集会に参加した信者を通じての感染者は、2500件に登ると発表しています。

 しかし、その時点(2月中旬)では、フランス政府のウィルスに対する警戒も緩く、その翌週に、ようやく5000人以上の集会が禁止された状態でした。

 ですから、教会側を一概に責めることもできないわけですが、その後は、自身も感染した自主隔離生活に身を置いた牧師の一人が、信者に向けての説教で、「コロナウィルスは、世界を破滅に追い込むための悪魔の計画だ!だが、神は我々を見守り、救って下さる。」と述べています。

 この教会については、詳しいことは、わかりませんが、宗教、信仰というものは、時として、危険な状況においても、人を動かし、自分の行動を正当化することにも導くことを忘れてはなりません。

 フランスだけでなく、世界各地で、この危機的状況の中、お祈りを捧げるという宗教団体がいくつもあります。祈りたいのは、わかりますが、祈ることは、集まらずともできるのです。

 このような病気や不安が蔓延した危機的状況には、必ず擦り寄ってくる新興宗教も現れます。

 人を救うはずの宗教が感染爆発の震源地になるのは、あまりに皮肉なことです。


<関連>
「宗教の教育」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/02/blog-post_85.html