2021年2月26日金曜日

感染悪化し続けるフランス・20の地域における監視強化で3月6日まで様子見


 

 これまで、感染悪化が続きながらも、1日の新規感染者は2万人台を行ったり来たりしていたフランスで、24日(水)には、ついに31,519人と3万人の大台を突破してしまいました。

 ロックダウンは、あくまで最終手段としていた政府の方針から、フランス国民の間では、ロックダウンの話題も少し下火になり始めていました。

 ところが、先週あたりから、ニース・アルプ・マリティーム県(プロヴァンス・アルプ・コート・ダジュール地域圏)での記録的な発生率と前例のない集中治療室の占拠率の増加で、この地域では週末だけのロックダウンが発表され、今週の金曜日の午後6時から月曜日の午前6時まで、とりあえず2週間に渡って、週末のみのロックダウンを行うことになっていました。

 ニースでの週末ロックダウン発表の翌日には、同等の感染悪化がみられるダンケルク(オー・ド・フランス地域圏)でも週末ロックダウンが発表されました。

 新規感染者数が3万人を突破したのは、またその翌日のことです。毎日毎日、迫り来る感染悪化のニュースに再び、フランス国民の脳裏には、「ロックダウン」の気配が戻り始めました。

 そのタイミングで、カステックス首相が記者会見をするというので、「これは、もしかしたら・・」という声が一気に広がりました。

 果たして、カステックス首相は、「感染状況は深刻に悪化している。特にイギリス変異種の拡大は深刻で、現在、感染者の50%は変異種による感染になってきている。しかし、我々は、現在の段階では、ロックダウンの選択はしない。特に感染状況が深刻な20地域(アルプマリティーム、イル・ド・フランス、ローヌ、ブーシュ・デュ・ローヌ、ノール、オワーズ、パ・ド・カレー、ソンム、ドローム、モーゼル、ムルト・エ・モーゼルなど)においての取り締まりを強化すること」を発表しました。

 取り締まりを強化するということは、現在以上の制限が加わるわけではありません。

 そして、同時に、もしも今後、一週間の間にさらに感染が悪化した場合には、3月6日の段階で、さらに厳しい制限を敷くことを発表しました。

 特にイル・ド・フランスは、ニース、ダンケルクに次いで感染状態が深刻ですが、なんと言っても人口の多い地域、ロックダウンをした場合の影響も甚大です。

 この感染拡大は、3〜4週間のロックダウンで、完全に収まるものではなく、ロックダウン以外の措置を講ずることで、少しでもロックダウンの時期を後送りにし、生活、教育機関、経済的にも心理的にも負担がかかる時間を少しでも減らし、また、この間にワクチン接種を少しでも広げたいというのが、昨日、発表された政府の方針です。

 とはいえ、監視を強化することで、一週間後に効果が現れるものでもなく、運よく一週間以内に更なる感染悪化がなければ・・という希望的な要素が強い現段階の措置であるとも言えます。

 しかし、この一週間、急に感染悪化がストップするなど奇跡的なこと、一週間後にさらに厳しい措置が敷かれるのは、ほぼ確実、まさに昨年と同じタイミングで感染が爆発する可能性が大です。

 日本は、緊急事態宣言により、感染も少しおさまり始め、ここ数日、1日の新規感染者は、1,000人前後、フランスは1日3万人越えということは、1日で日本の一ヶ月分の感染者が出ているわけです。しかも、フランスの人口は日本の半分であることを考えたら、二ヶ月分です。

 12月から1月にかけてのドイツやイギリスの感染爆発によるロックダウンを横目にみながら、我々は、うまくやっていると自画自賛していたフランスですが、それは、あくまでも、時期がズレただけのことで、その前の10月末から11月の1日の感染者が6万人という壊滅的な状態のためにすでに11月にロックダウンしていた効果が現れていただけのことで、何もフランスがうまくやれていたわけではありません。

 しかも、10月から11月にかけては、変異種による感染拡大ではありませんでした。

 今回の変異種による感染拡大は、2度目のパンデミックとも言われるくらい、感染拡大のパワーが異なっています。感染速度も早く、若い世代でも重症化する傾向にあるのです。

 おまけにフランスは、政府が発表しているワクチン接種の予定は、絵空事で、実際のワクチン接種は、ドイツやイギリスのように進んではいないのです。

 現在、国によっては、コロナ感染者ゼロを本気で目指し、達成しかけている国もあるようですが、少なくともヨーロッパ、ことにフランスは、そんなことを目指せる段階でも状態でもありません。

 だとしたら、少しでも制限を現段階程度で留めた状態を1日でも長く稼いで、凌いでいき、さらに制限の厳しい状態、あるいはロックダウンの期間を少しでも短くできるようにしたいと考えるのもわからないでもありません。

 しかし、実際の医療現場などは、かなり逼迫している上に、これまで1年間続いている厳しい状態に医療従事者の疲弊も激しく、また、3月の始めには、冬休みのバカンスが終わってフランス全土にわたる学校も再開されるため、さらなる感染悪化は確実で、パリ市長は、政府に対して、「もう一刻も待てない!すぐに3〜4週間の完全なロックダウンをすること」を提案しています。

 どちらにしても、まだまだ目が離せないフランス。一週間後にどうなっているのか?

 全く見当もつきません。


<関連>

「ニース・アルプ・マリティーム県 週末のみのロックダウン」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/02/blog-post_23.html


「フランスのコロナウィルス感染第二波が来るのは当然だった・・」

https://www.newsweekjapan.jp/worldvoice/rikamama/2020/10/post-1.php

2021年2月25日木曜日

美食の街・リヨンの学校キャンティーン(給食)の肉排除メニューの波紋


 


 フランスの学校のキャンティーン(給食)のメニューは、たいてい、少なくとも2種類以上のメニューから選べるようになっています。これは、宗教上の理由や、ベジタリアンやアレルギーに対応するために、長いこと行われてきたフランスの学校のキャンティーンの方式です。

 メニューだけ見ると、前菜、メイン、デザートのコースになっていて、栄養のバランス等が一応考えられた立派なメニューになっています。

 フランスの学校は、日本のように教室で給食を食べることはなく、キャンティーン・食事の場に移動して、食事をするので、キャンティーンの混乱を避けるために、学年ごとに食事の時間がずらされて設定されています。

 フランスの学校の先生は、授業を教えることだけが仕事なので、子供たちの食事の世話をしたりすることもありません。(保育園などは別) キャンティーンには、キャンティーンで働く人がいるので、子供の食事を監督する人は、別にいるのです。

 しかし、当然、場所を移動して、それぞれにメニューを選んで食事をするのですから、時間もかかりますが、日本のように給食当番があったりして、子供たちが、食事を配ったりすることもないので、その分、時間的には、差し引きゼロというところでしょうか?

 ここに来て、リヨン市長が、コロナウィルスの感染対策のために、キャンティーンのサービスをスピードアップして、混雑状態を緩和するために、学校のキャンティーンのメニューから肉を排除し、単一メニューにすることを発表し、大きな波紋を呼んでいます。

 感染対策のために、キャンティーンのサービスのスピードアップをして、混雑を防ぐために単一メニューにする・・そこまでは、わかるのですが、それが肉排除のメニューに直結するところに不自然さを感じるのです。

 これがよりによって、フランス国内でも「美食の街」とされているリヨンでのことなので、特に波紋も大きいことなのかもしれません。

 このメニューには、卵や魚まで排除するわけではないので、ベジタリアンメニューではないことや、通常からも肉のメニューよりもより多くの子供たちに受け入れられることで、肉を排除したメニューを選択したなど、理由を連ねていますが、エコロジストのリヨン市長は、かねてより、地球温暖化の原因の一つに肉消費が重く占めていることを主張し続けており、「美食の街で、エコロジストが健康危機を利用して、協議なしにイデオロギー的措置を押し通そうとしている」と、この対応に多くの避難の声が上がっています。

 また、この「学校キャンティーンの肉排除メニュー」導入には、さっそく生産者・ブリーダーのデモも起こっており、ジェラルドダルマニン内務大臣は、ツイッターで「スキャンダラスなイデオロギー」とこの対策を非難。

 「フランスの農民や肉屋に対する容認できない侮辱に加えて、 『緑の党』の道徳的およびエリート主義的政策が下層階級を排除していることは明らかである。下層階級の多くの子供たちは肉を食べる機会はキャンティーンしかない」と抗議しています。

 少なくとも日頃、スーパーマーケットでフランス人の買い物を見ていると、どう見ても肉食の人たち、コロナ対策とはいえ、急に「肉排除のメニュー」を強引に押し通すやり方は、反発を買うのも当然です。

 たしかに、生産者からの反発もあるでしょうし、エコだのビオだのというのは、お金のかかることでもあり、ある程度の階層以上での話で、下層階級で家庭で満足な食事の取れない子供にとってのキャンティーンの食事は、理想ばかりも言っていられない現実もあります。

 少なくとも、肉を排除するか否かの問題以前に、このコロナウィルス対策に乗じて、議論もせずに市が無理矢理に押し通してしまったことが、波紋を呼んでいる原因になっている気がします。

 しかし、これは、少なくとも4月のイースターのバカンスまで続けられるということです。


<関連>

「フランスの学校のキャンティーン・給食」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/10/blog-post_11.html

「やっぱりフランス人は、肉食だなと思わされるパリのスーパーの魚売場」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/01/blog-post_74.html

2021年2月24日水曜日

グループ抗争による2件の乱闘事件で、中学生2名死亡 14歳は危険な年齢か?

  


 犯罪の低年齢化は、どこの国でも叫ばれていますが、ここのところ、フランスでは、「14歳」という年齢を頻繁に耳にします。

 一昨日、エソンヌ県(イル・ド・フランス地域圏)では、24時間以内に2カ所で、グループ抗争による乱闘が凶暴化し、サンシェロンに住む14歳の少女、ブシー・サンタントワンヌに住む13歳の少年が命を落とすという痛ましい事件が相次いで起こっています。

 どちらも人口5,000人、10,000人の小さな街というより村のような一見のどかな場所での出来事、しかも犠牲者が13歳、14歳のティーンエイジャーであったことに衝撃が走っています。

 最初に起こった14歳の少女の刺殺事件は、12人の若者の間で起こった激しい口論に端を発しています。黒い服を着て、フードを被ったこの集団の対立の間にいた少女は、ナイフで腹を刺され、病院に運ばれましたが、その日の夜に死亡しました。

 また、13歳の少年の事件は、約60人が巻き込まれた乱闘の末、1名死亡、他3名も重症を負っています。死亡した少年の刺し傷は、2カ所の刺し傷から喉に達しており、救急車が到着した段階ではすでに彼は心肺停止状態にあり、蘇生することはできませんでした。

 この事件に関与した少年6人はすでに逮捕されています。

 つい先日もパリ15区で14歳の少年が集団暴行により瀕死の重症を負った事件がありましたが、どうにもこの年齢、危険なお年頃なのかもしれません。

 この事件は、学校のバカンス中のことでもあり、しかも18時以降、夜間外出禁止の制限下にある状況で起こっており、未成年のティーンエイジャー、しかも中学生ということで、親の監督責任を疑問視する声も上がっています。

 フランスの学校では、学校の外で起こったことに関しては、学校は一切、感知しないという立場をとっており、以前、勤務先の近くで、学校帰りに路上で暴れて騒いでいた中学生が会社の建物の窓を壊したので、会社から、学校に苦情を申し立てたら、「学校を一歩出た生徒がやることに関しては、一切、学校は関係ありません」と突っぱねられ、謝罪の一言もなく、びっくりしたことがありました。

 そういえば、あれも中学生でした。

 娘が中学生の頃を思い起こすと、お友達のお誕生日会など、特別なことがない限り、夜に外出することなど全くなかったし、夜の外出の際は、誰かしらが、必ず送り迎えをするのが当然の環境だったので、まるで危険を感じたこともありませんでしたが、今から考えると、この年齢は、少しずつ親の干渉を逃れたい時期でもあり、難しい時期なのかもしれません。

 しかし、思い起こすに、娘が中学生の頃、夏のバカンス中のコロニー(合宿のようなもの)で、同室の女の子同士の些細な口論から、一人の女の子がナイフを取り出したという騒ぎになったことがあったことを思い出しました。

 そのコロニー(合宿)はフランス全国からいろんな地域の子供たちが集まってきているもので、普段は決して出会うことのないような、違う環境で育った子供が混ざり、いつも生活している比較的、安定した家庭の子供としか付き合いのなかった娘が、思わぬ事件に遭遇した事件でした。

 勤務先にコロニーの責任者から「おたくのお嬢さんが刺されそうになりましたが、大事には至らなかったので、ご安心ください」と電話があった時には、死ぬほどびっくりして、ツテをたどって、状況把握と、危険対策をとってもらいましたが、コロニーから戻った娘は、全くケロッとしていたのにも驚かされました。

 だいたい、夏のバカンスのコロニーにナイフを持っていく中学生というのは異常ですが、今回の事件もナイフによるもの・・このナイフという凶器を持ち歩いている中学生というのは、思っているよりもいるのかもしれません。

 しかし、今回のエソンヌの事件の犯人のうち数名は、親に付き添われて警察に出頭したとのこと・・まだまだ親の庇護の元にいる少年・少女の犯罪です。犠牲者にとってみれば、まだ13歳・14歳で刺し殺されるなどという命の落とし方、親としたら、耐えられない子供の失い方です。

 しかし、これまであまり聞かなかったこの年齢の凶暴な暴力事件が最近、立て続けに起こっていることが、このコロナウィルスによる制限の多い生活が関係しているような気がしてなりません。

 

<関連>

「おたくのお嬢さんが刺されそうになりました!?・・バカンス中のサマーキャンプでの話」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/07/blog-post_7.html

2021年2月23日火曜日

ニース・アルプ・マリティーム県 週末のみのロックダウン

 

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 ニース・アルプ・マリティーム県(プロヴァンス・アルプ・コート・ダジュール地域圏)での記録的な発生率と前例のない集中治療室の占拠率の増加で、急激な感染悪化が注目され始めたのが、先週末のことでした。

 それ以来、この地域をこのまま放置して良いものか? 少なくとも地域的なロックダウンが必要なのではないか? と、政府の発表を今か今かと週末の間中、皆が注目しながら待っていました。

 この地域に対する措置は、遅くとも日曜日の夜には発表されているとされていましたが、とうとう発表は、週明けにずれ込むことになってしまいました。

 週明けの正午近くに、アルプ・マリティーム県知事から発表された内容は、「今週の金曜日の午後6時から月曜日の午前6時まで、とりあえず2週間に渡って、週末のみのロックダウンを行う」「ロックダウンの形態は、10月の全国的なロックダウンの規則と同じ形態を取る」(外出は、生活必需品の買い物、通院、自宅から半径5 km以内で1時間に制限された歩行などに限る)というものでした。

 先週末の間にこの地域の現状確認に訪れていたオリヴィエ・ヴェラン保健相は、「夜間外出禁止令の強化、あるいは部分的または完全なロックダウンの形をとることができる」と示唆していました。

 週末にかけての協議の結果、このような決断に至ったわけですが、この決定は、全会一致でなされたものではありません。「感染は、主に家族内(屋内)で起こり、屋外での生活を制限する措置を講じ続けているのは、おかしい」「週末だけのロックダウンは、充分な措置ではない」など、議論は、かなり難航した模様です。

 これに対して、「ニースでの感染拡大は、主にスキー場が閉鎖されたために、なだれ込んだ観光客により持ち込まれたことが原因」としている人々もおり、週末にロックダウンすることで、これらの観光客を減少させることができるとしています。

 このニースの週末ロックダウンのニュースに、あらためて、フランス政府の「あくまでも、ロックダウンは最終手段」としていることを思い知らされた気がしました。

 この発表が、政府首脳(首相や保健相)からのものでなかったことや、ロックダウンが地域的なものであることは、まだしも、その上、「週末だけ」という、なんとも中途半端なものであったためです。

 フランスでは、度重なるロックダウン、解除、そしてまた、ロックダウンという状況を「STOP&GO」を繰り返す状態は避けなければならないとしており、一度、ロックダウンしてしまえば、その解除をするタイミングを図ることが難しく、未だロックダウンはしていなくても、さまざまな制限に関しても、感染状況が減少しない限り、この制限を緩和することは、これまでの努力が水泡に帰してしまう結果となるために、一向に緩和することはできないのです。

 奇しくも、このニース・アルプ・マリティーム県の感染爆発が発覚する寸前までは、もしかしたら、減少傾向にあるかもしれないと、美術館などの文化施設の再開が検討され始めていた矢先のことでした。

 しかし、一方では、かなり危険な状況でもロックダウンにはならないと思い始めている国民は、この程度なら大丈夫であると気を緩めている感もあります。

 ところが、深刻な感染悪化は、この地域だけではなく、フランス国内のいくつかの地域は、これに追いつけ追い越せと言わんばかりの急激な感染悪化の状況を迎えており、先日、南アフリカ・ブラジル変異種の急拡大が確認されたモゼル県(フランス北東部)を始めとする北部の地域や、ダンケルク(オー・ド・フランス地域圏)などは、すでに感染率も国内平均の4倍以上、先週までは658人だった10万人あたりの発生率は一週間で901人まで上昇し、集中治療室もほぼ満床状態で、2月に入って以来、50人以上の患者が他の地域に移送されている状況なのです。

 ダンケルクの病院責任者は、敢えて集中治療室の占拠率は発表していませんが、もしかしたら、すでにニースを超えた深刻な状況を迎えている可能性もあり、一刻も現在の状態を放置しておくことはできないと語っており、何らかの措置をできるだけ早く取らなければならないとしています。

 感染が悪化しているどの地域にも共通していることは、顕著な変異種の拡大で、イル・ド・フランス(パリを中心とする地域)に入院しているコロナウィルスの患者の二人に一人は、変異種に感染していると発表されています。

 これまでも、他地域では、まだ営業されていたレストランがマルセイユなどの地域限定で営業禁止になったりしたことはありましたが、週末のみとはいえ、地域限定のロックダウンは、パンデミック以来、フランスでは初めてのことで、今後、さらに他の地域でもニースに続くロックダウンの地域が出るのは、ほぼ確実です。

 もはや、フランスは、綱渡り状態から、崖っぷち状態に移行しつつあります。

 

<関連>

「フランスが恐れるイギリス・南アフリカ・ブラジル変異種の拡大」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/02/blog-post_12.html

「ニースがヤバい 国内平均の5倍の感染値」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/02/blog-post_21.html 




2021年2月22日月曜日

マクロン大統領のユーチューバーとのチャレンジ企画 Mcfly et Carlito(マクフライとカーリト)

  

<彼らがマクロン大統領に依頼されて作った動画><Je me souviens> (clip gèstes barrieres)


 フランス政府は、「あくまでも、ロックダウンは最後の手段」「ロックダウンを回避するために、できる限りのあらゆる努力・試みを行う」という姿勢を貫き続けています。

 それは、コマーシャルセンター内の生活必需品以外の店舗の営業停止であったり、夜間外出禁止や、日常生活においての行動制限に対する取締りの強化であったり、ワクチン接種のスピードアップであったりしてきました。

 これ以上、何ができるのか?と思っていたら、マクロン大統領は、フランスの若者の間で、最も有名なユーチューバー Mcfly et Carlito(マクフライとカーリト)(登録者数630万人)に若者に向けてのソーシャルディスタンスの重要性を訴えかける動画の作成するように、協力を依頼しています。

 当初、エリゼ宮のディレクターから連絡を受け取ったマクフライとカーリトは、よもや、イタズラかデマではないかと疑心暗鬼になり、ディレクターがここが私のオフィスであると、エリゼ宮内の景色を彼らに彼らとの会話中に写して見せている舞台裏の様子もユーチューブにあげられています。

 そして、さらには、その後、彼らは、マクロン大統領自らが、彼らに語りかけている動画を受け取ったのです。


「Mcfly et Carlito(マクフライとカーリト)・マクロンチャレンジの舞台裏暴露の動画」




 マクロン大統領は、この動画の中で、彼らが、医療介護者をサポートするために送った寄付金に感謝を述べ、彼らに対して、新しいチャレンジを提案しています。

 それは、多くの人が、ソーシャルディスタンスを尊重するように促すように訴えかける動画を作成し、その動画の再生回数が1,000万回に達した場合、彼らをエリゼ宮に招待することを約束するものです。

 彼らは、フランスのユーモリスト、ビデオグラファーとして活動していましたが、2016年からユーチューブに参入し、フランスで最も影響力の大きいユーチューバーの一人(二人)として活躍しています。

 彼らは、パンデミック以来、医療介護者をサポートする「Maradon」(マラドン)を立ち上げ、昨年4月に介護者サポートのために行ったユーチューブライブで集めた40万ユーロは、フランス国内の病院に寄付しています。

 彼らは、このマクロン大統領からのチャレンジを受け入れ、21日に公開されるビデオとストリームの収益化を通じて集められたお金を、健康状態に弱っている学生のために協会に送ることを発表しています。

 彼らの人気動画の中には、2500万回以上再生されているものもあり、マクロン大統領が提案している1,000万回再生は、彼らにとって、決して不可能な数字ではありません。

 彼らがこれから作成する動画がどのようなものになるのか、また、どれほどの効果があるのかはわかりませんが、彼らがエリゼ宮でマクロン大統領と共にいる動画もとても楽しみです。

 そして23日、動画アップから3日間で1,000万回再生、達成しました。おめでとう!


 マクロン大統領は、彼らだけではなく、ニュースをグローバルに扱っているユーチューバー HugoDécrypte の取材などにも応じて、動画に出演するなど、若者のメディアにも積極的に参加しています。

 先日のシアンスポ(行政系の特別高等教育機関・エリート養成校)の19歳の学生がマクロン大統領宛てに送った「私たちは、生きながら、死んでいるようだ・・学生を大学や学校から締め出すコロナウィルス対応に抗議する内容の手紙」に対してもマクロン大統領から返事を送っています。

 一学生が送った手紙に大統領が回答するなど、ちょっと想像さえしづらいことです。

 一概に比較できることではありませんが、ユーチューブに自ら呼びかけ、参加して、国民に訴えかけるようなことから、やはり大統領自身が若く、フランス政府全体も若くて、柔軟であることを感じずにはいられません。

 まさか、日本の首相がユーチューバーに呼びかけたりすることなど、ちょっと想像すらできないことです。実際に、前首相が「STAY HOME」を呼びかけようとしてあげた動画は、大バッシングを受ける見当違いのものになっています。

 結果的には、日本よりは、断然、感染状態は、深刻なフランスですが、若い人を巻き込んで国を動かしていこうとしているそんな姿勢は、やはり、好感が持てるのです。

 彼らがマクロン大統領に答えて作った動画。現在、フランス急上昇ランク1位です。

 

<関連>

「フランスの高等教育機関の授業体制への抗議に対するマクロン大統領の手紙」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_16.html

2021年2月21日日曜日

ニースがヤバい 国内平均の5倍の感染値

  


 先週は、大寒波が覆っていたフランスは、氷点下の世界から、今週に入って、気温も徐々に上昇し始め、週末には、パリでさえも最高気温が18℃、ビアリッツでは24℃と、春から初夏を思わせる気候となりました。

 気温の上昇、お天気には、すぐに反応するフランス人ですが、久々にやってきたポカポカ陽気に誘われて、人出も多くなり、これまで「あったかい・・」と感じていたマスクが一気に「息苦しくて、暑くて邪魔」に感じられるようになり、マスク率も急降下している感じです。

 営業停止のままのレストランやカフェなどは、お店の前に乗り出して、ビールやワインのテイクアウトを始め、テイクアウトした飲み物を持って、人が集まるという昨年にも見かけたような光景が広がっています。

 昨年、問題になったサンマルタン運河なども川岸には、隙間なく大勢の若者が座り込み、まるで去年の映像を見ているようでした。

 また、パリ6区、サンジェルマンデプレ界隈のRue de Buci(ビュシ通り)なども、日常のような賑やかさが戻ったような人出になり、人混みの中を警察官が練り歩く異様な光景でした。

 むしろ、レストランやカフェの店内に入れない分だけ、通りには、余計に人が溜まっている気がしてしまいます。

 メガホンを持ちながら、「ソーシャルディスタンスを取ってください!マスクをして下さい!」とがなり立て、日も長くなってきて、18時にはなかなか帰宅しようとしない人々を追い立てるのも、一応の規制ではあるものの、18時になるとウィルスが登場し始めるわけでもあるまいし、日中、あれだけの人が出ていることに手が付けられないでいることに、どこか矛盾を感じるのです。

 気温の上昇が見込まれた今週末は、この人出を見込んで、警察官4,000人を動員し、警戒にあたっています。しかし、制限下にあるとはいえ、何の犯罪を犯しているわけでもなく、いつまでも続くこの状況が悲しくなります。

 気温が低下していると活発化するウィルスも気温の上昇とともに、勢いを弱めてくれるのではないかと思いますが、それ以上に人間の行動の方が活発化するので、どうにもおさまりません。

 フランスは、あいも変わらず、毎日、2万人以上の新規感染者が出続けており、依然として、危険な綱渡り状態です。全体の数字は、若干減少しているのでは??などと見る人も出てくる中、感染者のうちの変異種に感染している割合は、確実に増大しており、ほぼ50%近くまで上昇しています。

 それでも何とか、綱渡りが続いていると思っていたら、アルプ・マリティーム県(プロヴァンス・アルプ・コート・ダジュール地域圏)では、急激な発生率と集中治療室の占拠率の上昇がこれまでの記録を遥かに上回り、ニースでは、10万人あたりの発生率が750件超えになり、(国内平均の5倍の数値)、集中治療室の97%がコロナウィルスによる患者で占められている危機的状況で、いよいよ、地域的なロックダウンが必要ではないか?という声が上がり始め、政府も本格的に検討を開始した模様です。

 とりあえず、ロックダウンか否かの決定より前に、政府は、この地域に向けて、優先的にワクチンを供給することを決定し、来週早々には、この地域の集中的なワクチン接種を強化することを決定しました。

 まさにワクチンとウィルスのイタチごっこです。

 また、さすが? ここまで悪化する地域だけあり、この陽気の良さも手伝って、この深刻な状態にも関わらず、人出が減ることはなく、むしろ、「この地域がここまでの状況になったのには、自分たちの注意が足らなかったのかもしれないけれど、ロックダウンになるかもしれないなら、最後の週末は楽しみたい・・」と外出をやめない人々には、閉口してしまいます。

 これから、3月、4月は、昨年、最も恐ろしい状況に陥ってしまった時期でもあり、変異種の拡大による急激な感染悪化が本当に心配です。

 

<関連>

「コロナウィルスと太陽の誘惑」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/04/blog-post_6.html

 







2021年2月20日土曜日

メグジット ヘンリー王子とメーガン妃の王室離脱 フランス人はイギリス王室の話題が大好き

  


 最近は、ずいぶん変わってきたけれど、例えば、駅などで英語でチケットを買おうとしている観光客が、「ここはフランスなんだから、フランス語で話せ!」などと駅員が冷たくあしらわれているのを何度か見かけたことがあります。

 パリなど観光で多くの収入を得ている街、どこでも英語が通じるようにならなくてどうする?と思うのですが、残念ながら、そうではありません。

 英語とフランス語を比べてみると、読み方が違うだけで、同じ単語も多いので、多分、日本人が英語を学ぶよりもずっと容易いことだと思うのに、なぜか英語を話したがらない人が多いのです。

 彼らは、フランス語に誇りを持っていると同時に、英語が嫌い=アメリカが嫌いなのです。フランス人のアメリカ嫌いは、英語に対する嫌悪というよりも、ある種、アメリカに対する嫉妬に似た感情ではないかと私は、思っています。

 フランス人は歴史、伝統のあるものを尊ぶ傾向が強く、特にある一定の年齢以上の人は、歴史の浅いアメリカを小バカにするようなところがあります。同じ?英語を話す国民でも、フランスにとって、イギリスに対しては、これが当てはまりません。

 それを象徴するように、フランス人は、イギリス王室の話題が大好きです。フランスのように愛国心が強い国民の多い国で、外国の王室の話題がニュースチャンネルで、特集まで組んで、ゴールデンタイムに長々とイギリス王室の話題を放送するのには、ビックリしてしまいます。

 たしかに、お騒がせなニュースが多いイギリス王室ですが、もはやヨーロッパからも離脱した外国の王室の話を延々と報道するのは、それだけ見たい人がいるということです。

 昨日、バッキンガム宮殿が、「ヘンリー王子とメーガン妃のサセックス公爵と公爵夫人などの名誉称号や慈善団体の後援者の役職などは、全てエリザベス女王に一度、返上され、これらは、今後、他の王室メンバーに、あらためて分配され、ヘンリー王子とメーガン妃は王室のメンバーには戻らない」と発表したことから、フランスのメディアは、ブレグジットをもじって、「メグジット」と発表。

 つい先日、メーガン妃が第2子を妊娠したことも騒いでいましたが、さすがに今回は、本格的な王室離脱にさらにヒートアップしています。

 「メグジット」などと、メーガン妃と結婚したことによって、王室を離脱することになってしまったように報道されていますが、複雑な環境で育ったヘンリー王子が、王室を離脱することになったのは、メーガン妃との結婚が拍車をかけたことは否めませんが、もともと彼の中にあった王室への反発であったような気もします。

 フランスのメディアは、彼らの出会いから、結婚、そして、結婚後の王室内のいざこざなどを様々な王室周辺の側近者を証言者として取材しながら、「メグジット」までの経緯をドキュメンタリーにまとめています。

 たしかに、王室のセレモニーは、いかにもフランス人が好きそうな、伝統的な美しいセレモニーで、また、王室内のメンバーは、チャールズ皇太子とカミラ夫人の不倫問題やダイアナ妃がパリで亡くなったり、世代を超えて、お騒がせでスキャンダラスな話題が尽きることがありません。

 フランスには、王室はありませんが、イギリス王室のような伝統的で威厳のあるものへの畏敬の念がフランス人の中にはあるのかもしれません。

 こうして見ていると、イギリスという国は、今やEUからも離脱してしまった外国でありながら、フランスにとっては、特別な国なのかもしれません。ロンドンなどに行くと、気がつくと周りにはフランス語がたくさん聞こえてきて、思わず「ここは、ロンドンだったよね・・」と確認するほど、フランス人がたくさんいることに驚かされます。

 正確な数字はわかりませんが、おそらく、ロンドンにいる観光客の中でフランス人は、相当な割合を占めているのではないかと思います。 

 たしかにユーロスターでパリ・ロンドン間は2時間半ほどで行ける身近な外国。人気があるのも頷けますが、それは単に、距離的な問題だけではないような気がします。

 自らの歴史で王室を崩壊させたフランスが、イギリス王室の話題が大好きというのも、なんとも皮肉な話ではないかと思うのです。


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「アメリカのものが嫌いなフランス人の夫」

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