2021年1月11日月曜日

日本の2度目の緊急事態宣言とフランスの2度目のロックダウンの共通する緩さ


 日本の感染悪化が進み始めて、1都3県にわたる2度目の緊急事態宣言が発令されて、緊迫している状況の日本の報道をフランスから見ていました。正直、実際には、フランスの方がよほど深刻な状態なのに、何だか日本は、フランスよりもずっと深刻なような感じを受けていました。

 私が知ることができる日本の状況は、日本の報道やツイッターなどで見る情報だけなので、実際の状況とは乖離があるのかもしれませんが、どうやら、今回の緊急事態宣言は、前回のものよりもなぜか緩いという一面があるようです。

 国民が一回目の緊急事態宣言の経験から、この程度なら大丈夫というような、ある程度、その対処法を身につけているために、最初の緊急事態宣言よりもずっと人出が多く、これで大丈夫なのだろうかという意見も少なくないとか・・。

 また、学校なども閉鎖されないことから、やはり、よりこれまでの生活に近い感覚にもなるだろうし、何より、長引く感染回避への対応から経済が逼迫して、生活自体にもどこか必死になっていることから外に出ざるを得ないような状況もあいまっているのかもしれません。

 そんな様子を見て、これは、フランスの2回目のロックダウンの時と似ているな・・(きっと国民の緊迫感や危機感のレベルは桁違いに違うとは思いますが・・)と思ったのです。

 フランスの2回目のロックダウンも10月末には新規感染者数が6万人強、一時は7万人に迫る勢いで、もはや2度目のロックダウンも仕方ないだろうと多くの国民が感じている中での再度のロックダウンでした。

 しかし、いざ、2度目のロックダウンが始まってみると、前回のロックダウンとは、制限の内容も異なり、学校や工場などの職場は閉鎖されることもなく、リモートワークは可能な限り、営業が許可されるお店の範囲も通信機器や家電などにも広げられたこともあり、外出許可証さえ持っていれば、外出は制限時間内、距離も制限範囲内という縛りはありましたが、街中は、何だかいつもとは、変わりないような人出に「これがロックダウンか?」「こんなんで大丈夫なんだろうか?」と不安に感じたのを覚えています。

 それでも日本の緊急事態宣言と違って、一回目のロックダウンより緩くなったとはいえ、大多数の店舗やレストラン、美術館、劇場、映画館は営業時間短縮などではなく営業停止でしたから、その違いは大きいと思いますが、とにかく日中の人出などは、クリスマスを控えていたということもあるのでしょうが、街中は、結構な人出でした。

 これには、国民がこのロックダウンという状況に慣れて、上手く対処する方法を良くも悪くも心得てしまったからで、長く続くロックダウン、ロックダウン解除、そして再びロックダウンという緊張状態とそれぞれに順応していっていることが原因だと思います。

 そもそも人間の極度の緊張状態というものもそうそう長く続くものでもなく、ある程度の緩さは仕方ないのかもしれません。

 ただ、日本の場合は、きっとフランス以上に世間の規範も厳しく、長引くコロナウィルス感染に再び感染悪化のためのロックダウンとはいえ、国の決めた緊急事態宣言以前から、厳しい生活を続け、仕事の上でもプレッシャーも大きく、そこそこの対応を取るしかないのかもしれません。

 何より、日本の営業時間短縮などに対する政府の補償への配慮も国民の不安をさらに大きくしているような気もしています。フランスの営業停止などに対する補償も必ずしも充分とは言えませんが、フランスのロックダウンと補償は常にセットで、前年の売り上げに対するパーセンテージで支払われているので、ある程度は納得しやすいかもしれません。

 そして、ゆるゆるだと思われていた2回目のロックダウンは、約1ヶ月間で驚くほど1日の感染者が減少したので、ある程度緩くはあっても、効果はあるものだ・・とビックリしました。

 日本もこれから緊急事態宣言が拡大される見込みのようですが、緩い緊急事態宣言でも、きっと効果は現れるよ!頑張れ!日本!とそんなことを思ったのです。

 とはいえ、フランスの状況は、日本よりもずっと深刻な状況・・フランスは、下手をすると、現在の夜間外出禁止やレストラン等の営業停止だけでは済まない本格的なロックダウンになる可能性も心配されています。

 昨日、マルセイユでは、イギリスの変異種感染者が50人以上確認されたとか・・しかも、感染経路不明の場合が多く、感染率が高いと言われているだけにとても心配しています。

 また、北東部の他国との国境沿いの地域から感染拡大が広がって、夜間外出禁止前倒し16時に制限される地域も日々、拡大していることから、全く気を許せない状況が続いています。

 今回の日本の緊急事態宣言も緩いと言われながらも、何もせずにはいれない状況のはず。日本は厳しいな・・と思う反面、その厳しさが感染が拡大していると言われている現在でさえ、フランスやヨーロッパに比べては、格段に抑えられている状態なのです。

 この時点で緊急事態で対処する日本は、結局のところ、フランスとは比べものにならないほど、きっちりしているのだと思うのです。

 頑張れ!日本!


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「海外から見る日本の緊急事態宣言」

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2021年1月10日日曜日

フランスのお役所仕事のいい加減さから、娘の帰省の悲劇再び・・

  


 娘のクリスマスの帰省の際に起こった悲劇・・TGV内でスリ被害にあい、お財布を取られたことから、クリスマスイブの思っても見なかった大ハプニングに心穏やかではないクリスマスを過ごすこととなった我が家です。

 お金は大して入っていなかったものの、最も面倒な被害は、IDカードやクレジットカードをもろとも盗られたことで、すぐさま、クレジットカードは、電話でストップし、再発行をしてくれることになり、年末年始のバカンスの時期にも関わらず、10日間ほどで、新しいカードは準備ができましたという連絡が来て、彼女は、これに懲りて、もう一つの海外の銀行の口座を早々に開き、携帯がカード代わりにできる、しかも口座手数料等もかからないシステムを追加したのでした。

 ところが、ことIDカードの再発行に関しては、そう簡単には行きません。まあ、本人を証明するカードですから、本人が自分で申請に行かなければならないのは仕方がありませんが、その書類を提出するには、予約が必要で、その予約も現在、彼女は、ブルターニュでスタージュの真っ最中ゆえ、元来の住所には、住んではいないため、簡単なことではありません。

 平日には、仕事ゆえ、予約が取れるのは、かろうじて、土曜日の午前中のみ。彼女は金曜日の夜にこの予約のためにわざわざ、またTGVに乗って帰省したのでした。

 下手をすると先になればなるほど、もしかしたら、またロックダウンで身動きが取れなくなることも考えられることから、クリスマス(被害直後)から2週間後の土曜日に予約を取っていたのです。

 「どちらにしても、再発行の申請をして、また出来上がった時には、受け取りに来なくちゃいけないね・・」などと、話しながら、彼女は、土曜日の予約の時間、朝9時に市役所に出かけて行ったのでした。

 ついでに銀行に寄って、出来上がっているカードを受け取り、市役所に行くと、「あなたの予約は、今日ではないから、受け付けられない」と言われたそうで、どうやら、電話で予約した日にちが間違って記録されていたようで、先方の落ち度にも関わらず、冷たくあしらわれたそうで・・わざわざ、ブルターニュのど田舎から、そのために来ている娘は、呆気に取られ、また、忙しそうに人が押し寄せているならともかく、暇そうなのに、予約は予約だからと頑として受け付けない様子に彼女から怒りのオーラが湧き出ていたのを察したのか?「一応、書類を見せて・・」と言った担当者。

 しかし、今度は、提出した書類の写真が前回のカードと同じものでは受け付けられないと冷たく却下されて、同じカードを再発行するのになぜ同じ写真ではいけないのか?それならちゃんと書いとけよ!と、結局、また2週間後に予約を取り直して、渋々、彼女は家に帰ってきたのでした。

 そもそも市役所は、自分の住んでいる界隈にあるものなので、足を運ぶこともそれほどの負担ではないのかもしれませんが、(彼女の現在の状況は、特別で、数ヶ月のスタージュのために住所変更するまでもない)それにしても、2度手間、3度手間になることは、気分の良いものではありません。

 フランスは、何かとトラブルの多い、一度で済むはずのことが、何度もの手間がかかることも少なくないのですが、やはり、お役所などの公的機関に関しては、悉く、この種のトラブルが多いような気がします。しかも、感じ悪いことこの上ない!

 何のつもりか知りませんが、人を二度手間、三度手間に追いやることをお役所仕事に携わる人々は何の躊躇いもなく、むしろ、横柄な態度で応対します。ことに公務員、国の組織の場合は、その傾向が強いのです。だって、銀行等はフランスとて、ちゃんとできるのですから・・。

 サービスが悪くても、感じ悪くても、絶対に潰れないお役所、自分は痛くも痒くもない、こんなお役所仕事や国の息のかかった企業がフランスがいつまでも改善されない状況を作っていることをまたまた感じた1日でした。

 しかし、何かと高くつくIDカードの再発行です。

 パリから帰りのTGVでは、マスクをしないと言い張る人と鉄道職員でいざこざが起こり、TGVは、大幅に遅れたそうです。


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「思ってもみなかった娘のクリスマスイブの悲劇」

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2021年1月9日土曜日

ロンドン重大インシデント宣言 英国変異種の脅威

 


 昨年末からイギリスでコロナウィルスの変異種が検出されたことが発表されて以来、その変異種の感染率の高さと悪化の速度の速さの驚異から、多くの国がイギリスからの入国禁止等の制限を取り始めていました。

 フランスも翌日には、イギリスからの入国を禁止し、英国とは、人の流れだけでなく、物流も多いフランスは、配送のトラックがクリスマス直前に足止めを食い、多くのトラックが国境付近で何日も夜明かしを余儀なくされる異常な事態が発生しました。

 その時点では、イギリスの変異種の威力がどの程度であるのかは、具体的には、わかりにくい状況でした。

 しかし、ここ数日のイギリスの感染状況は、かなり深刻な状況になっており、感染拡大が止まらない状況のようです。

 イギリスの感染状況は、日々、記録を更新しており、昨日は、1日の死者が1,325人、新規感染者数は、68,053人を記録し、ロンドンでは、病院での医療体制が崩壊寸前であることから、「重大インシデント宣言」が発令されました。

 すでにロックダウン状態のイギリスで、さらに強い宣言が出されるのですから、その被害状況がいかばかりであるかがわかります。

 フランスでもこのイギリスからの変異種の感染者は出ているようですが、現在のところは、この変異種によるクラスターは、2件。しかし、この変異種がイギリスで発生してから、現在の感染拡大に至るまでは、2ヶ月間かかっており、フランスの場合も決して安心ができる状態ではありません。

 すでに、フランスでのこの変異種の感染者は、イギリスに行ったわけでも、イギリスから来た人に関わったわけでもない感染経路不明の人が多いのです。ということは、すでにフランスにこの変異種がかなり広まっているということなのです。

 フランスの感染状況も数字的には、新規感染者2万人前後のまま、横這い状態ではありますが、北東部を中心に悪化している地域は拡大しており、夜間外出禁止が午後6時に前倒しになる10地域が追加されています。

 フランス全体を見ても、新規感染者数の横這い状態をよそに、昨年の11月23日以来、フランス全土にわたり、感染警戒アラート値を超えてしまいました。

 この不釣り合いな数値(新規感染者が横這い状態なのに警戒アラート値が増加する状態)は、ノエル前に比べて、検査を受けている人数が圧倒的に減少していることから来ているのではないかと私は、思っています。

 12月の感染者数は、ノエル前には、家族との集まりの前になんとか安全にクリスマスを過ごそうと考えていた人たちが最大限検査を受けた結果の数値であり、現在は、一先ず、バカンスにも出かけないし、家族との集まりもないために、検査を受ける人も大幅に減っているわけで、実際の感染者が検査を受けないままに感染者にカウントされていない極めて危険な状況であるような気がしてならないのです。

 現在は、ワクチン接種も急加速して進められる中、ファイザー社やモデルナ社は、イギリスや南アフリカでの変異種に関してもワクチンの有効性は変わらないことを発表しています。

 すでに世界に蔓延しているコロナウィルス、そしてイギリスの変異種の感染拡大、それらを追いかけるように進められているワクチン。次から次へと現れる脅威にワクチンが打ち勝つことができる日は、まだまだ遠い気がしています。


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「イギリスからの入国禁止に踏み切るフランス コロナウィルス変異種警戒」

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「コロナウィルス変異種感染拡大によるイギリスからの入国制限が引き起こした混乱」

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2021年1月8日金曜日

今年のフランスのコロナウィルス対策は、ワクチン接種が最優先事項

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 昨年のロックダウンの段階的な解除の発表にあったとおり、7日、今後のフランスのコロナウィルス対策についてのカステックス首相の会見が行われました。

 年明けの感染状況次第で、これまでの制限に関する再検討を行い、感染状況が改善していた場合は、映画館・劇場などについての営業再開などについての可能性もあり得るとしていました。

 しかし、これは、当初から、ノエルや年末年始の人が集う機会を控えていた12月の後半を過ごした直後には、ちょっと考えづらいことで、予想どおり、11月のロックダウン解除発表時よりも感染状況は、悪化しており、映画館・劇場等の再開は、延期されることになり、1月20日前後には再開か?と見られていたレストランの再開も2月半ばすぎまで延期となりました。

 現在のフランスの感染状況は、1日の新規感染者が2万人強の状態、現在、2万5千人がコロナウィルスのために入院しており、集中治療室の約半分がコロナウィルス患者で占拠されている状態が続いています。

 クリスマスから約2週間が経ちますが、1日の新規感染者が2万人超えとはいえ、ノエルによる極度の感染爆発が起こっている兆候はありません。しかし、年末年始の影響が確認できるのは、来週以降であり、依然としてフランスは、厳しい状況にあり、感染が上昇していることには、変わりなく、今後、数日の感染状況によっては、さらに厳しい制限が追加される可能性があることも示しています。

 実際に現在の15地域での午後6時以降の夜間外出禁止地域に加えて、さらに10地域が追加されることが発表されています。

 イギリスで広がっている変異種も、イギリスとの国境閉鎖をしたにもかかわらず、すでにフランスに広がり始めているという話もあり、また、年末年始影響がまだ、影を潜めていることもあり、今後の感染拡大は、依然として心配される状況であることには変わりありません。

 しかし、今回のカステックス首相の会見では、今年のフランスは、とにかくワクチン接種の拡大を第一目標にしていくことが発表され、この5日間で4万5千件のワクチン接種が行われたことを報告し、さらに、1月18日からは、75歳以上(高齢者施設居住者以外も可能)の人はワクチン接種が受けられるようになり、(65歳以上の人は、3月から可能になる)予約システムが完成し、現在、1月末までには、100万人にワクチン接種が行える準備ができたことを発表しました。

 これまでワクチン接種をするかしないかは、本人の自由選択によるものとしてきたフランスですが、基本的には、その姿勢は、変わらないものの、「ワクチン接種を受けてください!あなたの愛する人がワクチン接種を受けるのを手伝ってあげてください!」と積極的にワクチン接種を呼びかけるようになりました。

 年末からワクチン接種の進行状況が周囲のヨーロッパ諸国に比べて極端に遅れていたことを大バッシングされたフランス政府は、その巻き返しに加えて、今後、ワクチン接種を広げることに一気にアクセルがかかった形となりました。

 これが上手く運んでいけば、まさに災いをアクセルにして、ワクチン接種は、当初の予定よりも早く進むことになります。

 しかし、世論調査によれば、現在のところ、ワクチンを受けると言っている人は、全体の38%、フランス人の45%は、ワクチンを受けたくないと言う人が上回っています。

 この世論を踏まえてか?カステックス首相は、会見の中で、ワクチンは安全なものであり、副作用が起こるのは、10万人に1人の極めて稀なことであることも説明しています。

  ワクチン接種の拡大とともに、次に心配されるのは、2月半ばの冬のバカンスです。スキー場の閉鎖は、とりあえず、2月半ばまで延長されることになったものの、また、冬のバカンスの直前になれば、一悶着あることは、必須です。

 現在、直面している感染の増加への対応とワクチン接種の拡大、それでもカステックス首相の会見は、圧倒的に自信に満ちたワクチン拡大による今年の希望が中心で、本来ならば、延期されるレストランや劇場などの再開問題は、あまり注目されませんでした。

 実際に動向が好転するかどうかはわかりませんが、先日の日本の首相の緊急事態宣言を見たばかり、フランス政府の堂々とした力強い牽引力を余計に感じたのでした。


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「フランスのワクチン接種が大幅に遅れをとっている理由」

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「スキー場オープンか否かで統一が取れないヨーロッパ フランスがダメならフランス人は隣国へスキーに行く」


2021年1月7日木曜日

海外から見る日本の緊急事態宣言

  

 

 ここ数日前から、日本で緊急事態宣言を要請、検討・・というニュースを耳にしてきました。「緊急事態宣言」というのは、「緊急」なのではないのか? 何日、検討しているのだろうか?と思いながら・・。 

 昨年の3月にヨーロッパでのコロナウィルスの感染拡大が始まって以来、コロナウィルスが蔓延し始めたことが公になって、フランスは、あっという間にロックダウンになりました。(フランス政府では、どうやら、これは危険な状態であるということは、2週間ほど前からわかっていたそうですが・・)

 1回目のロックダウンは、衝撃的で、突然、生活必需以外の外出は一切できず、学校も閉鎖というほぼ経済が止まってしまうようなロックダウンでした。なぜ、フランス(ヨーロッパ)でコロナウィルスが広まるのか? フランス人は、マスクをしないし、不潔だし、フランスは、これだからいけないんだ・・などと、色々と感じ、考えながら、この一年を過ごしてきました。

 当初は、ウィルスについても、まるで未知のものであったので、どのように感染が広まっていくのかもわからずに、「日本は大丈夫だろうか?」「日本もコロナウィルスを甘く見てはいけないよ!・・」などと思ったりもしていました。

 しかし、これまで日本は、世界一の高齢化社会であり、人口の過密具合もフランスの比ではないにもかかわらず、フランスのような極端なロックダウンの措置を取ることもなく、自粛要請、緊急事態宣言とあくまでも、国民の規律に頼る形で感染を抑えてきたことは、フランスにおいても、日本の事例や感染症対策を参考に挙げられることも多く、奇跡的なこととして見られてきました。

 そして、私も、このまま日本は、何とかこのコロナウィルスの危機を乗り越えて行くものだろうと思っていました。現在でも1日の新規感染者数を見れば、日本が緊急事態宣言か否かと危機感を高めている数字は、もしも、それがフランスの数字であったならば、もうコロナウィルスはフランスから消滅したとでも言いかねないほどの数字なのですが、どうも日本の報道の様子を見ていると、かなりの緊迫状態のようで、驚いています。

 フランスは、毎日、数万人単位の新規感染者が出ることにももう慣れてしまっていることもあるのですが、日本の医療環境や検査環境の不備の状態には、これが日本なのか?と驚いてしまうこともいくつか聞こえてきます。

 感染拡大を回避するには、日常生活をいかに注意しながら送るかということも大切ですが、注意して生活していても、感染してしまうことも少なくないことから、検査をいかに拡大し、病状が悪化することを防ぐことはもちろんのこと、無症状の感染者が感染を広げることを防ぐことも重要です。

 日頃、フランスで生活していれば、日本では当たり前のことが当たり前にいかないことが多く、大抵のことは、日本の方が数段、便利に合理的にできるので、「ここは日本じゃないんだし、フランスだから仕方ない・・」と諦めることも多く、私の中には、日本の方が優れているという気持ちがあるのです。

 日本の感染者に対するホテル隔離の話なども聞いて、すごいなと思っていたのです。フランスは、陽性になっても自主隔離1週間が普通ですから・・。

 しかし、例えば、肝心のPCR検査に関してなどは、今やフランスでは、薬局でも、誰もが無料で、容易に受けられるものになっていますが、日本は、検査も容易ではない様子。「フランスにできることがなぜ?日本にできない?」と信じ難い気持ちです。

 また、何より、政府の、いつまでも、一方的に国民の善意に頼り続けるはっきりしない曖昧な態度には、やるせなさを感じます。営業時間短縮、営業自粛などを呼びかけ、自粛要請に応じない店舗の店名を公表するなど、強い立場の側から弱い立場の人を吊し上げるなど、脅迫行為、そんなことをフランス政府がしたら、クーデターでも起こりかねません。

 ましてや自粛警察が厳しすぎるほど厳しい日本社会において、そのような店名の公開をすれば、致命的な痛手となることは間違いありません。たまたま日本の友人からのメールに、「フランスは感染者を責める空気がなくて良いですね・・」と書いてあり、なるほど・・と思ったばかりでした。

 みんなが真面目に規則を当たり前のように守っている日本は、素晴らしいなと思う反面、その規則を守ることを皆が見張り合うようなキツキツな感じ、そして、挙げ句の果てには、政府が名前を公表して吊し上げるという緊張状態では、コロナが怖いのか、そんな社会が怖いのかわからなくなってきます。

 これまで、日本が世界から見たら、奇跡的と言えるほどに感染を抑えてこれたのは、ひとえに日本国民の真面目さのおかげであり、この厳しさこそが感染ここまで抑えてこれたのですが、それは日本政府の手柄ではありません。

 緊急と言いながら、ずるずると国民の不安を煽り、国民にお願いばかりの政府は、具体的に1日の感染者数が何人まで下がれば、またコロナ対応のできる病床がどこまで空きがある状態になればなどの目標数値を示し、ここまでになるまで、一緒に頑張ろうと国民に寄り添う熱意ある態度を示さなければ、日本人の緊張状態もそうそう続くものではありません。

 昨日のフランスの新規感染者数は、25,379人、日本は、4,357人、感染が一度波に乗ってしまえば、現在のイギリスのようにしばらくは手が付けられない状態になってしまうので、日本のような狭い土地に莫大な数の人口、しかも多くの高齢者を抱える国で、同じことが起こったら、それこそ大変なことになると思いますが、それにしても、1日、2万5千人以上の感染者を出しながら、日本に比べたら、ずっとのびのびと暮らしているようなフランスに、困ったもんだ・・と思いながらも、どこかホッとしたりもしてしまうのでした。


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「コロナウィルス対応 日本人の真面目さ、辛抱強さ、モラルの高さ、衛生観念はやっぱり凄いなと思う」

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「フランス(ヨーロッパ)でコロナウィルスが広まる理由」

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2021年1月6日水曜日

ワクチン問題、さらに混乱状態のフランス

  


 コロナウィルスのワクチン接種が極端に遅れていることが問題になって以来、政府もワクチン対応に躍起になって、混乱状態の様相を呈してきています。

 明らかに初動態勢に抜かりがあり、華々しくフランスでの最初のワクチン接種の様子を報道したりしたものの、その実、うまく事は運んでいなかったのです。

 まずは、高齢者施設から、1月末までは、100万人、2月からは・・などと、目標数値やスローガンを立派に掲げたものの、実際の接種に際しての準備が追いついていなかったのです。

 このワクチン接種の数字が各国から具体的に上がってきて、フランスの初動失敗の様子が報じられると、政府は、あたふたと昨日は、「5,000人の接種を行った」ことを報道し、その上、ワクチン接種の最優先の縛りを、これまでの高齢者施設の居住者と50歳以上の医療従事者に加えて、50歳以上の救急隊員とホームヘルパーもワクチン接種が受けられるようになったことを発表しました。

 高齢者施設でのワクチン接種が思ったよりもスムーズに運んでいないこともあり、今、より多くの人に少しでもワクチン接種を行っていくことは必要なことでもありますが、これには、とりあえずの数字稼ぎのような気がしないでもありません。

 なぜ、高齢者施設の居住者を最優先にしたか? それがスムーズに行っていないなら、そのための解決策を、まず、取らなければなりません。

 目標とするスローガンや数字を大々的にアピールすることは、フランスの得意とするところではありますが、論理的には可能なことが、スムーズには運ばないのがフランスなのです。そんなフランスの理想と現実がこのワクチン接種では顕著に露呈した一例であったような気がしています。

 また、スムーズに運ばなかったワクチン接種のこれまでの結果から、貴重なワクチンを無駄にしてしまっているかもしれない可能性まで露見し始めています。

 このワクチンは、ー70℃という冷凍状態で輸送、保存する必要があり、投与前に5日間冷蔵庫に保管、準備ができて5時間以内に使用する必要があります。一度、解凍したワクチンは、食品同様、再度、冷凍することは不可能です。

 そして、現在、使われているファイザー、バイオンテックのワクチンは、6回分のワクチンがまとめてパッケージングされており、ある程度、纏まったワクチン接種が行われない場合、解凍されたままのワクチンを無駄にすることになってしまいます。

 これまで実際にワクチン接種が行われた数字と開封されたワクチンから、すでに少なくとも20%のワクチンが無駄になってしまっていることが問題になっています。

 また、このワクチンがさらにややこしいことには、最初のワクチン接種から2〜3週間以内に2回目のワクチン接種を行わなくてはならないところです。ですから、これからワクチン接種が進むに従って、1回目の接種と2回目の接種の人を同時にこなしていかなくてはならないのです。このまま、急激にワクチン接種を増やしていくということは、自ずと2倍3倍の数をこなしていかなければならないわけです。

 そもそもワクチンに関しては、フランスの最大手製薬会社サノフィのワクチン開発が昨年末になって、高齢者への有効性が低いことから、フランスで製造できるワクチンの完成は2021年の年末にずれ込むことが発表された時点から、雲行きが怪しくなってきていました。

 現在は、ワクチンを100%輸入しているフランスは、そのワクチンの確保も容易いことではなく、現在は、50万回分のストックが確保できているとしていますが、現在、認可されているファイザーとバイオンテックに加えて、数日中には、急遽、モデルナ社のワクチンが認可されるようです。

 バカンス後の感染拡大も大いに心配される中、ワクチン問題ばかりに問題が集中していることがかえって不安に思います。

 負けず嫌いでプライドの高いフランスが、ドイツ、イギリス、オランダ、イタリアなど各国と比較されて、極端に劣っているなどとされることは耐えられないことでもあるかもしれませんが、ここは慌てずに、フランスの実情を踏まえて、ワクチンの有効性をできるだけ保てるように慌てず、確実に進めて欲しいと思っています。


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「フランス人のプライド」

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「フランス人は、イタリアを下に見ている」

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2021年1月5日火曜日

フランスのワクチン接種が大幅に遅れをとっている理由



 ノエルのバカンスも終わって、現在のフランスは、このクリスマスから年末年始の休暇をどの程度、感染回避ができて過ごしてこれたかの成績を恐る恐る待っているような状態です。

 漏れ聞こえてくる若者のパーティーの様子などを見る限り、あまり良い成績は期待できないのですが、にわかに人々の関心は、コロナウィルスのワクチン接種に移行しつつあります。もはや頼みの綱はワクチンしかないと思い始めたのでしょうか?

 というのも、ヨーロッパの多くの国では、昨年末からコロナウィルスワクチン接種が始まっており、イギリスやドイツが着々とワクチン接種の数を増やしているのに比べて、フランスのワクチン接種の数が極端に少ないことに、疑問を持ち始めたからです。

 イギリスではすでに95万人に対してのワクチン接種が行われており、ドイツもほぼ、これに続いている数字です。ところが、フランスは、年明けの段階で、まだ数百件という桁違いの少なさに政府に対する避難が高まっているのです。

 私も、当初は、フランスは、慎重を期しているのかと思っていましたが、このあまりの数字の違いは、どうやら、単なる段取りの悪さが原因のようで、ワクチン接種の極端な遅さに対するあまりの非難に、政府も4日の午後にはエリゼ宮でワクチン接種に関するフォローアップ会議が午後中行われ、6日に行われる予定の防衛評議会もワクチン接種が最優先事項となっているようです。

 フランスでワクチン接種が遅れているのは、もしやワクチンがまだフランスに到着していないのでは?と思いきや、少なくとも12月26日には、19,500回分のワクチンはフランスに到着しているのです。これがまだ、数百件のみのワクチン接種とは・・・。

 フランスでは、高齢者施設の居住者と50歳以上の医療従事者を最優先にしていますが、高齢者施設の居住者に対しては、同意書が必須とされており、この同意書作成がノエルのバカンスに中断したために、他国に比べて大幅に遅れをとった理由の一つにあげられています。

 またしても、あくまでもノエル優先のフランスのお国柄が裏目に出てしまったわけです。

 とはいえ、計画では、2月末までには、第1段階の最優先対象者100万人へのワクチン接種を行うことになっています。つまり、1日あたり、1万9000人にワクチン接種を行わなければなりません。しかし、これまでにワクチン接種を行うことができたのは、たった20カ所の施設だけだったようで、これを1月末までに100カ所にまで拡大するそうです。(このあたりにも、これまでの段取りの悪さが垣間見えます)

 これだけの急激な量のワクチン接種には、保存が難しいワクチン(ー70℃以下での保存)の管理の問題もあります。ワクチン接種にかかる人出の問題もあります。問題は山積みです。

 フランスで現在、投与されているワクチンは、ファイザーとバイオンテックの2種ですが、医師との相談により、自分で選択することができるそうです。また、他社のワクチンについての早急な認可も求められています。

 ワクチン接種に関しては、「自由選択」という姿勢をとっているフランスで、アンチワクチン論者も少なくないために進まないのかと思いきや(現在のワクチン接種対象者には、アンチは少ない)、現在、ワクチン接種が滞っているとなれば、大バッシングになるのですから、ややこしいことです。

 このワクチン接種の遅さに対する大バッシングには、マクロン大統領も「不当に遅れることを防ぐ」ことを約束し、オリヴィエ・ヴェラン厚生相なども、必死に弁明しています。

 どちらにしても「物申す」フランス人。主張も結構、目標数値を堂々と掲げるのは、得意ですが、まず、やるべきことを着々と進めてもらいたいものです。

 フランスのコロナウィルスワクチン接種に関する情報は、「CovidVaccine」(コヴィッドワクチン)と呼ばれるワクチン接種監視情報システムに入力されます。 ワクチン接種を希望する人、またはワクチン接種を受けていない人の名前、名、性別、生年月日、住所、電話番号などの個人情報を収集することが、12月末の法令で認可されています。

 ワクチン接種によるコロナウィルスの流行を抑える効果が見えるまでには、少なくとも3月末までに1000万人がワクチン接種を受ける必要があり、まだまだ時間がかかりそうです。

 現在のフランスのコロナウィルスによる入院患者は24,995人(昨日1日で1,258人増加)、ワクチン接種のスピードはコロナウィルスの感染速度に追いつくようになることは、当分、先の状況のようです。


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「フランス・コロナウィルスワクチン接種開始」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/12/blog-post_28.html

「実践よりも、まず、理論のフランスの教育」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/01/blog-post_29.html