2020年11月13日金曜日

フランスのロックダウン 2週間後の首相記者会見 12月1日までは現行どおり


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 今回のフランスのロックダウンが発表になったのは、10月末のことでした。日に日にグングン増えていく新規感染者数や病院の逼迫していく様子の報道を見て、言葉どおりにまさに遠くからやってくる波が見えるように大きな波に呑まれていくようでした。

 ですから、ロックダウンになった時も、もはや驚く人はあまりいなかったのではないでしょうか? 

 今回の2回目のロックダウンの発表の際に、今回のロックダウンは経済をできるだけ止めない方法をとるということで、学校も仕事も継続、しかし、商店に関しては、生活必需品と通信機器等のごく一部の商店を除いて営業停止、2週間後に状況が改善していれば、営業再開を検討するということになっていました。

 今回のロックダウンは、前回のロックダウンとは違って、全ての商店が営業停止というわけでもなく、食料品、薬局の他に、通信機器、電化製品、ガーデンセンターやDIY(日曜大工用品)ショップなどは営業許可になっていることから、余計に不公平感も高まり、また、ノエル前のかき入れ時ということもあり、営業できないでいた店舗のオーナーは、この2週間後の再検討に一縷の望みを抱いていたのです。

 ところが、昨日のカステックス首相の発表では、現在のフランスの状況は、まだまだ深刻な状況、感染のスピードは少し減速してきているものの、感染は増え続け、30秒に一人がコロナウィルスで入院している状況、現在の死亡者の4分の1はコロナウィルスによるもので、ICUの占拠率は95%に達しており、依然として病院の逼迫状態は悪化しているとのこと。

 すでにフランスのコロナウィルスによる入院状況については、第1波の時の記録を超えているのだそうです。

 よって、現在のロックダウンの制限を緩めることはできない、同時に例外的に失業者の権利を拡大するとの発表がありました。

 2週間後には営業できるかもしれないと微かな期待を抱いていた人々には、ショッキングな発表となりました。

 しかし、今週に入って新規感染者数が3万人台に落ち着いてきてはいるものの、(一時は6万人を超えていた)依然として一日3万人もの感染者が出ている状態では現在のロックダウンを現時点では緩めることができないのは、当然のことです。

 もはや、少々、数字に麻痺してきていますが、例えば、日本で一日3万人の感染者がいたとしたら、大変な騒ぎになることでしょう。それが3万人台まで下がって少しホッとしているのですから、どれだけ異常な事態かがわかります。

 私は、今回のロックダウンは、「これがロックダウン??」と思うほど、街には人が出ていて、どちらかというと、このゆるゆるぶりに驚いているくらいです。今日もちょっと買い物に出たら、平日だというのになんだかすごい人出、「今日、何かあるの?」と思ってしまったくらいです。

 営業していない店舗がけっこうあるのにこの状況ですから、さらに多くのお店が営業を始めたら、街にはさらに人出が増えるだろうと思うのです。仕事、学校、生活必需品の買い物、一日一時間の運動、ペットの散歩等、外出許可証さえ持っていれば、外出できるので、もはや皆が外出許可証にも慣れきって、気軽に外出するようになっているのです。

 遠距離の移動はできませんが、通常の日常生活を送るのには、何の支障もありません。

 現在のロックダウンの状況でさえ、充分に緩んでいると思われるのに、現在のフランスの感染状況でこれ以上制限を緩めるのは、ありえないことなのです。

 それでも、今は、「ノエルには、家族と過ごすことができるように・・」という少し先のニンジンが鼻先にぶら下げられている状況なので、なんとかフランス人も12月1日までの現在の制限継続は、乗り切ろうとすると思いますが、カステックス首相は、「今年のノエル、年末年始をいつもの年のように盛大に祝えると考えるのは、あまり合理的ではない」と遠回しの言い方でかわしています。

 記者会見での記者からの質問もどちらかというと、「12月1日以降は?」とか、「ノエルのための帰省の切符をとっていいか?」など、フライング気味のものが多く、恐らく今後、最も政府の対応が注目されるのは、ノエルのバカンスから年末年始の、本来ならば、フランス人が家族や友人と過ごす会食続きの時期をどのように制限するかだと思います。

 フランス人にとって大イベントであるこの時期をどう乗り切るか如何で、その後、感染がさらに爆発するかどうかがかかっています。この時期の制限は政府と国民の大きな軋轢を生みかねません。

 すでに今回の発表の際にカステックス首相は述べています。

 「敵は、国家でも政府でもない。ウィルスだ!」と。


<関連>

「フランスのロックダウン突入 営業許可と営業禁止の境界線」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/10/blog-post_31.html

 


2020年11月12日木曜日

使い捨てマスクは洗って使える???

                                                                                                                                

        Les masques chirurgicaux sont lavables et réutilisables 10 fois, assure l'UFC-Que Choisir


 「これまで使い捨てと言われていたサージカルマスクは洗って何回も使うことができる!」そんな話がフランスでは、出回り始めました。

 3月のロックダウンの頃には、フランスには、マスクは国民に行き渡るほど在庫はなく、政府までもが、「日常生活を普通に送るぶんには、マスクは必要ない」などと言っていたし、医療関係者や基礎疾患などのある人以外は、マスクを買うことはできませんでした。

 私は、「マスクは必要ない」などということは、どう考えても信用できず、した方がいいに決まっていると思っていましたが、当時は、これ幸いとマスクをせずにいた人も多かったと思います。

 しかし、さすがにコロナウィルスに関する情報が出回るにつれ、大量のマスクが輸入され、また、ルイ・ヴィトンやサンローランなどの大手ブランドまでもがマスクを作り始め、マスクはした方がいい・・から、しなければならない・・義務化へ・・となっていきました。

 ロックダウンが解除になった5月の時点では、マスクは今の数倍の値段で、それでも皆が奪い合うようにマスクを買い求めていました。

 長期にわたり、マスクを着用しなければならないことから、市からも洗うことのできるマスクが配られました。市から我が家に送られてきたのは、白いマスクではなく、無地の紺色のマスクでした。

 マスク嫌いのフランス人は、マスク=病気を連想させる嫌なイメージがあるために白いマスクを嫌い、自分で工夫して柄物の生地を使って、マスクを作る人も増えました。メトロなどに乗っていると、それぞれのマスクを見ているだけでも、なかなか色々なバリエーションがあって楽しめます。

 しかし、やはり一番出回っているのは、使い捨てのサージカルマスクです。

 これまでもみんなが本当に使い捨てをしていたかどうかは、怪しいものですが、(街中にポイ捨てはしてある・・)通常は4時間使用後には、廃棄することが前提の使い捨てマスク、いくら値段が下がったとはいえ、毎日毎日、4時間おきにマスクを交換するのには、かなり費用も嵩みます。

 それが、ここへ来て、フランスの消費者団体が市販の使い捨てマスクを数種類テストしたところ、「サージカルマスクは60℃の洗濯機で洗浄可能で、その後、乾燥、アイロンをかけることで10回は使うことができる」「洗浄後も一般の人が日常生活で感染を回避するのに十分な効力を維持している」と発表したのです。

 もともとフランス人は洗濯物をお湯で洗濯する習慣があり、家庭の洗濯機でも温度設定ができるようになっています。また、アイロンをかけるのも一般的に習慣化している家庭が多いです。義姉などは、洗濯をした後にTシャツから下着までを丁寧にアイロンかけをしているのを見て、びっくりしたことがありました。

 この「使い捨てマスクが洗える」という話の信憑性がどのくらいなのかはわかりませんが、これまで4時間で捨てていたものが10回も使えるという話は朗報に違いありません。

 実のところ、マスクの在庫が圧倒的に足りなかった時点で、マスクのリサイクルのために、グルノーブル大学病院では、今回の消費者団体が行ったものとほぼ同じ実験を行っており、ほぼ同じ結果を出していたのです。

 この情報がこれまで出回らなかったのは、フランスの公衆衛生高等評議会が検査不十分として、この大学病院の研究結果を取り上げず、引き続き、使い捨てマスクは使い捨てることを推奨し続けてきたのです。

 しかしながら、洗えるマスクでさえ、どの程度、洗っているかも怪しいところ・・もし、洗えるマスクを洗ってアイロンをかけてまで、感染回避を心がけるのであれば、それだけでも、フランス人にしたら、大きな進歩だと思うのです。


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「ロックダウン解除に向けて、圧倒的にマスクが足りないフランス」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/05/blog-post.html


2020年11月11日水曜日

プランタングループ・フランス国内7店舗閉鎖


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 10日、プランタン(Printemps)がグループの7店舗の閉鎖を発表したのは、はなかなかの衝撃的なニュースでした。

 3月のロックダウンに続いて、今回、10月末からの再度のロックダウンにより、多くの営業を許可されない小売店からは、悲鳴があがっており、衛生基準を十分に尊重して営業できるのになぜ? メトロなどの交通機関の利用が許されているのに・・、学校は継続しているのに・・と大きな不満の声があがっています。

 特に今回のロックダウンは、ノエル前の書き入れ時、多くの店舗は、例年、一年のうちで、わずかこの約一ヵ月間の間にかなりの割合の売り上げをあげる期間であるだけに、今回のロックダウンの営業停止は、前回のロックダウン以上に被害は甚大です。

 それが、小さな店舗だけではなく、まさかのプランタンまでがこれほどまでに逼迫した状態であることは、いかに今回のロックダウンによる経済危機が大きいものであるかを物語る衝撃的、象徴的な出来事のような気がします。

 1865年に設立されたプランタングループは、フランス国内に19のデパートと8か所のシタディウムストアを所有しており、約3,000人の従業員を擁しています。

 今回は、そのうちのパリ、ル・アーブル、ストラスブール、メスの4店舗とパリとトゥーロンの3店舗のシタディウムストアが閉鎖となり、(組合筋によると、関係するパリの店舗は、Italie 2ショッピングセンターにある店舗と、Champs-ElyséesとPlace de la Nationのシタディアム)2021年7月までに450人の雇用を削減する計画。これは、従業員の10%以上に相当します。

 プランタンは、一昨年前からのテロ、黄色いベスト運動のデモ、ストライキなどの大きな社会的な危機からすでに煽りを受け続けており、それに加えて、極めつけの今年のコロナウィルスによるパンデミック。

 しかも、ファッション業界では春夏ものが発表される3月からのロックダウン、たくさんの新作の商品が売れ残る中、また、夏のソルド(バーゲン)までもが、バーゲン期間が例年は6月の最終週から4週間のところを7月15日から4週間に延期され、バーゲンが始まったころには、多くの人がバカンスに出てしまっているという憂き目にあいました。

 そして、現在、一年のうちの最も売り上げのあがる時期のロックダウン、一年を振り返ってみても、そのうちのほとんどが開店休業状態。しかも、プランタンともなれば、通常は、その多くの顧客は海外からの観光客。

 現在のフランスに海外からの観光客などほとんどいません。

 その観光客でさえ、ここ数年は、デパートは、まるで博物館を見学するような買い物しない顧客が増え、日本からの観光客でも、プランタンは、ちょっとのぞいてみたいところではあっても、買い物をしたいなどという話はあまり聞かなくなっていました。

 前回のロックダウンの煽りを受けて、老舗食料品店フォションが倒産した時も、あんな老舗でも倒産するのだ・・と驚きを隠せませんでしたが、よくよく考えてみれば、フォションにしても、ここのところの顧客の購買傾向からも経営危機に陥っていたであろうことは、素人の私でさえも、想像がついたことでした。

 この経済危機の中、小さな商店はもっと大変なのかもしれませんが、老舗だからこそ難しいこと、大所帯だからこそ厳しいことも多いのかもしれません。

 今回のプランタンは、倒産ではなく、フランス国内27店舗のうちの7店舗の閉鎖です。経営陣は、「損失を食い止め、市場の動向に適応し、その長期的な持続可能性を確保するために、モデルを変革する義務がある」と述べています。

 特に、顧客基盤を再構築することを目指しており、「今後2〜3年で毎年4000万ユーロの投資を計画している」と発表していますが、大企業とはいえ、また450人の従業員削減となれば、黙っていないのがフランスの労働組合です。

 先日の業績悪化のために、ブリヂストンのフランス国内の工場を閉鎖し、従業員800名ほどを削減することを発表した際の労働組合の大きな抵抗に加えて、政府の大反対にあって、工場の閉鎖がペンディングとなっていることからも、この店舗の閉鎖についても、話が落ち着くまでは、相当な時間を要することになりそうです。

 しかし、コロナウィルスの煽りとはいえ、ショッピングはどんどんネットに移行しています。買い物をしたい人がいなくなったのではなく、買い物の仕方が変わってきているのです。ロックダウンは、さらなる追い打ち、決定打となりましたが、多くの市場がその形態を変えていかなければならない時でもあるのです。

 フランスは、老舗の格調を保ち、維持していくことは、ある程度、国そのもののあり方と似ているようなところがあり、また、老舗がしっくりとくるエレガントさを持っています。

 老舗のプライドと格調を失わずにどのようにプランタンが立ち直り、復興していくのかを私は楽しみに見守りたいと思っています。

 

「ブリヂストン・フランス・べチューン工場閉鎖 ①」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/09/blog-post_17.html


「フランス・夏のソルド(バーゲン)は、コロナウィルスの影響で7月15日に延期」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/06/blog-post_23.html

2020年11月10日火曜日

フランス人はロックダウンでも着々とノエルの準備をしている

   


 なんでもグズグズと遅くて時間がかかるフランスで、唯一、毎年、感心するのは、ノエルの準備の早さです。

 だいたい、例年、トゥーサン(11月1日前後の万聖節)のバカンスが終わると、あっという間に、街はノエルのデコレーションを始めて、お店もノエル商戦が始まり、キラキラとノエル仕様のデコレーションになり、寒くなる冬でもどこか楽しい雰囲気を味わえる季節に突入します。

 今年は、ロックダウンのためもあるのか、我が家の近所はまだノエルのデコレーションが始まっていないし、だいたい閉店しているお店も多いので、あまりノエル気分ではありません。

 私は、前回のロックダウンの際に、家の中を片付けて断捨離を始めた際に、家の中から出てきた買ったまま使っていなかった洋服、バッグ、アクセサリー、香水、装飾品などをフランス版メルカリのようなサイトに載せてあったのです。

 忘れたころに、ポツポツと売れて、ちょっとしたおこづかい稼ぎになっていました。

 それが、ここへ来て、問い合わせや値切り交渉などのメッセージが急に増え、私としては、品物を送るために、外出したくもないので、あまり今は、売れなくてもいいな・・と思っていたのですが、ここのところ、連日、売れていくのです。

 明らかに多くのフランス人がノエルのプレゼントの準備を始めたのです。

 日本のメルカリは、コンビニなどで、発送を扱ってくれますが、こちらは、クロノポストやモンディアル・リレー、郵便局などが発送を受け付けてくれます。

 売れた商品の発送ラベルを自分でダウンロードして、印刷したものを自分で梱包した商品に貼り付けて、商品の預かりの下請けをしているお店に預けてくるようになっています。

 商品の注文をした人は、自分の家の近くの荷物の取り扱いをしているお店で受け取ることができます。自宅までの配達ではないので、その分、人出を介さないので、配送料も安く、一つ一つの商品に配達人が関わらないので、盗難のリスクも少ないのです。

 これは、最近、フランスに浸透しつつある配送のシステムで私としてはまず荷物がなくなることが減って、なかなか気に入っています。

 その荷物の預かり、受け渡しを専門にやっている店舗もありますが、その多くは、他のお店が副業のようにやっている場所が多く、現在のようなロックダウンの状態では、その本業のお店自体が営業停止になっている場合も多く、当然、荷物の受け渡しも行っておらず、荷物を預けられるお店を探すだけでも大変なのです。

 今日も荷物を預けに行きたくて、念のため、「お店やっていますか?」と電話したところ、「今はロックダウンのためにお店は閉まってます・・でも、欲しいものがあれば、ネットで注文を受け付けるからネットで注文してください・・」とお店の方も必死・・「すみません、クロノポストの荷物を預けたかっただけなんです・・」という私に明らかに落胆する店主と電話で話し込んでしまいました。

 以前から、ノエル前には売れるかな?と思ってはいましたが、今年はノエルもいつもどおりにはなりにくそうだし、あまり出かけたくないから、売れなくてもいいな・・と思っていたのですが、予想に反して、みんな、水面下では着々と始めているんだ・・と何とも複雑な思いにかられるのでした。

 しぶしぶと、どこか腑に落ちない気持ちで外出証明書をダウンロードしながら、買い物にかこつけて、荷物を預けるために外に出ると、外は肌寒いながらも天気が良くて気持ちよく、これでコロナがなければどんなに晴れ晴れとした気分で歩けるだろうに・・と思いながら、それでも、運動不足解消には、散歩がてら出かけるのも悪くない・・と自分に言い聞かせながら、マスクに手袋と重装備で黙々と歩くのでした。

 それにしても、フランス人のノエルへの思い恐るべし・・政府は国民のこのノエルへの思い入れと、このコロナウィルスの第2波とノエルをどうやって乗り越えるのか?

 なかなかな難題になりそうな予感がしています。


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「メルカリとルボンカン(フランス版メルカリ)に見る、やたら礼儀正しい日本人とめんどくさいフランス人」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/01/blog-post_60.html

「ロックダウン解除後のフランス版メルカリサイトの人気商品」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/06/blog-post_6.html

2020年11月9日月曜日

フランスのロックダウン延長は避けられない

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 「判断するのは、時期尚早だ・・」コロナウィルスの感染拡大が始まって以来、やたらと耳にするフレーズです。そして、今、また同じことを言っています。この大変な局面で、様々な制限等の措置は慎重にしなければならないのはわかりますが、数日の判断の遅れがさらに感染拡大に拍車をかけてきています。

 私は、今回のロックダウンのタイミングもいささか遅かったと思っています。しかも、甘い。

 フランスは、10月末に2度目のロックダウンに入って以来、ロックダウンの効果は一向に見えず、新規感染者数は増加するばかり、先週金曜日には、60,486人、土曜日には86,852人(前日からのバグにより正確な数字ではないとされている)と日々、新記録を更新しています。

 (コロナウィルスによる)入院患者も30,217人にまで達し、第1波の際、4月14日に記録した最高記録 32,292人に迫る勢い、また、死亡者も40,000人(40,439人)を突破しています。

 集中治療室の患者も 4,527人とフランスのICU病床の占拠率は91%にも達しています。

 特に今回の第2波で、最も感染状態が深刻なオーベルニュ・ローヌ・アルプの地域では、病床の占拠率が144%と、すでに医療崩壊を起こし、次々と患者の他地域への移送が行われており、来週には、200人ほどの患者の移送が必要になると見られています。

 このような状況の中、すでに集中治療室に入れる患者の選別も始まっています。第1波の際に医師たちが悲痛な面持ちで語っていた命の選別が再び行われ始めているのです。人出が足りずに急遽、駆り出された医学生などは、初めての現場でいきなりこの命の選択の場面に立ち会うことになり、トラウマとなってPTSDを引き起こしてしまった学生も少なくありません。

 フランスの集中治療室の数は5,000床、比較するのもおこがましいですが、ドイツはフランスの5倍の25,000床、フランスの医療体制の貧弱さが再び浮き彫りになっています。

 そもそも第2波は第1波よりも深刻な状況になると言われているのに、ロックダウンは第1波に比べてゆるゆるの状況。

 前回のロックダウンでは、学校も企業もすべて閉めて、街の中には誰もいない状況で、しかも、気候も春に向かう気温が上昇し始めるタイミングで、どうにか感染がおさまり始めるまでに2ヶ月近くかかったのに、今はともすると、これロックダウンなの?と疑問に思うような街中の様子で、しかもこれからさらに気温も下がり始めるこの時期に、そうそう簡単に感染がおさまるわけはないのです。

 そのゆるゆるなロックダウンでさえ、皆、慣れてきていることもあり、日曜日の午後など、外出許可証を持っていればいいだろうと言わんばかりに、家族で散歩に出かける様子などは、日常と大して変わらない風景です。

 学校の授業は継続され続けていますが、さすがに学校での感染も増加しています。うちの子供のクラスの子が感染して・・なんていう話を頻繁に耳にします。

 政府がノエルのバカンスまでなんとか継続したい方針なのはわかりいますが、あと一カ月半近くもある学校、このままにしてよいのかどうか・・第一波の際は学校もすべてリモートワークをしていたのですから、不可能ではないはずなのです。

 緩めのロックダウンで、前回よりも長期間にわたるロックダウンを続けるつもりなのでしょうか?

 ノエルを控えていることもあり、とりあえず、約1ヶ月の予定のロックダウンと発表されましたが、これが12月のはじめにロックダウンが解除されることは恐らく無理だろうということは、みんな薄々わかりはじめています。

 私は、現在のロックダウンの形態を続けるならば、ロックダウンを解除できる日はまだまだ遠いと思っています。ロックダウンの解除どころか、さらに強い制限が必要になってくるような気がします。

 今回のロックダウンの際にマクロン大統領は、目標とする目安は一日の新規感染者数を5,000人程度に抑えたいと言っていました。5,000という数字は、一日5万人、6万人という今の現状からは、想像もつかない遥か遠い道のりです。

 ひたすら、検査数を拡大させると言っていますが、検査を拡大させるだけで、ゆるゆると現在のロックダウンを続けるだけでは芳しい効果は期待はできず、検査の結果、陽性になった人を完全にロックダウンする方法を探すことが、フランスには何よりも必要なことだと思っています。

 とはいえ、バカンスに次いで、ノエルノエルと騒ぐフランス国民を前にして、政府が毅然としてロックダウンの延長を宣言できるかどうか? また、ノエルにさしかかるロックダウンの延長を国民がおとなしく受け入れるかどうか? 

 心配は尽きないのです。


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「フランス 再びロックダウン・・少なくとも12月1日まで」 

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/10/12.html

2020年11月8日日曜日

アメリカ大統領選挙をフランスはどう受け止めているのか?

   

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 ここ数日、フランスは、国内でもデモなどが起こり、コロナウィルスの新規感染者数も6万人を突破し、感染状態も一段と悪化し、深刻化しているというのに、ニュースはどこもアメリカの大統領選挙が大きく占め、テレビ局は、各局のメインジャーナリストをアメリカに送り、生のアメリカの大統領選挙の動向を逐一、報道していました。

 もともと政治の話題が大好きなフランス人、報道が過熱するのもわからないでもありません。それにしても、前回のアメリカの大統領選挙の際は、あまり記憶にないのですが、ここまで熱くなっていただろうか?と思います。

 昨日の夕方(フランス時間18時頃)に、ABC, CBS, NBC, CNN などのアメリカの主要メディアからバイデン氏当確のニュースが流れるとまもなく、フランスのSNS、ツイッターのトレンドは一気にトップにバイデンが躍り上がり、バイデン氏当選の喜びの声で溢れました。

 正直、これだけバイデン氏がフランスで好意的に受け入れられていることに、少し驚きましたが、よくよく思いなおしてみれば、思いあたることもあります。

 すぐに、マクロン大統領もアメリカの新大統領ジョー・バイデン氏と副大統領候補であるカマラ・ハリス氏に向けて「アメリカの新しい大統領が決まりました。おめでとうございます。今、我々には山ほどの課題がある。一緒に頑張りましょう!」とお祝いのコメントを発表しています。

 フランスの大統領がこれだけのスピードでアメリカの大統領当選のお祝いのコメントを発表するのは、異例のことのようです。

 テレビ各局もアメリカの選挙結果を喜ばしいこととして、報道しています。

 だからといって、フランスは特にバイデン氏が取り立てて素晴らしいと言っているわけではなく、トランプ氏じゃなくて良かった・・正直、そんな感じです。

 そして、マクロン大統領がお祝いのコメントをバイデン氏だけではなく、カマラ・ハリス氏との連盟にしていることからも、アメリカでの女性初の副大統領の誕生を大いに祝福していることがわかります。

 マクロン大統領は、フランスの組閣に際しても女性を積極的に登用しており、現在のフランスの閣僚は、首相と担当大臣、閣外相を含む32人全体を見ると、女性が17人、男性15人と女性優勢の体制を敷いてきていることから、バイデン氏の大統領就任以上にカマラ・ハリス氏の副大統領就任を好意的に捉えているようにも取れます。

 トランプ大統領については、特に、このコロナ禍に突入してからの彼の様々な仰天させられる言動には、もはや、マクロン大統領も正面きって相手にすることもなく、どこか少し斜め上くらいのところから、別の立場をとってきたような気がします。

 コロナウィルスが拡散されたとされている中国の研究所(フランスが多額出資している)に関する中国の発表に際して、「中国のいうことをまともに信じてはいけない」と述べ、それに乗じてトランプ大統領が中国に対して攻撃的な言動を始めた際も、それには触れることはせずに、中国とも、アメリカともまともに相手にはしない・・あくまでフランスとしての対応を続けてきたのです。

 コロナウィルスの治療薬として、クロロキンが注目され、トランプ大統領が感染してもいないのにクロロキンを服用し始めたときは、もうフランスのメディアはどこも失笑・・その様子を報道はしていましたが、どの局でも、鼻先で笑うような感じが隠し切れませんでした。

 あのクロロキン服用で、フランスでは、トランプ大統領のおバカぶりが特に印象付けられたような気がします。

 それが、今回のバイデン氏の当確のニュースにマクロン大統領は、「一緒に頑張っていきましょう!」とコメントを発表したのです。彼がこれまで、まともに話ができないトランプ大統領にどれだけ辟易していたのかが、このコメントでわかります。

 もともと、フランスはアメリカを毛嫌いし、どこか小バカにするような人(特に年配の人に多い)も少なくない国、ヨーロッパをどこか上に見てヨーロッパの連帯を尊ぶ人が多い中、それでも大きな力を持つアメリカは、常に気になる存在です。

 これで、アメリカの大統領も決まって、しばらくは、フランスは自国の悲惨な状況への対応に集中してほしいと私は切に思うのです。

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「マクロン大統領が警告 「コロナウィルスの中国の発表をバカ正直に信じてはいけない!」

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「アメリカのものが嫌いなフランス人の夫」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/07/blog-post_16.html





 

2020年11月7日土曜日

フランスの新規感染者6万人突破 フランス各地の高校で起こる衛生管理を求めるデモ

 

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ナントの高校で起こった高校生による衛生管理を求めるデモの果て

   

 ここ連日、フランスの新規感染者数は、新記録を更新し続け、昨日は、とうとう万人を突破し、60486人を記録しました。10月の初旬には、一日の新規感染者数は12000人前後でしたから、一ケ月で約5倍近くなっていることになります。なんという驚異的な増加ぶりでしょうか? 一日6万人の新規感染者となれば、フランスは、世界的にもアメリカに次いで堂々第2位です。

 また、フランスの場合は検査で陽性となっても、隔離がしっかりなされておらず、1週間のみの自粛生活、しかも、検査機関からは、マスクをすれば、生活必需品の買い物は行ってもいいなどと指導されているようで、ほぼ、陽性患者も野放し状態。

 1週間で約33万人の人が感染しているということは、これだけの人がまたさらに他の人に感染させることができるということです。恐ろしいことです。

 現在、ロックダウン中とはいえ、学校は継続し、会社のリモートワークもまだまだ徹底されていません。

 ここ数日、フランス各地の高校では、学生が学校側の衛生管理が十分でないことを訴えるデモがいくつも起こっています。

 ナント(フランス西部・ロワール川河畔に位置する都市)にあるリセ・デブルド二エールでは、数百名の学生が学校の入り口をゴミ箱を山積みにして塞ぎ、学校内の衛生環境に問題があり、自分たちは感染の危険にさらされていることを訴えました。

 デモは、興奮状態になり、近くのバス停付近のごみ箱が燃やされ、警察が介入する事態に発展しています。

 また、リモージュ(フランス中部にあるリモージュ焼で有名な都市)でも、リセ・ゲイルサックで学生約800人によるデモが起こり、他の人を殴打するなどの暴力行為に発展したため、警察は催涙ガスで応対する大騒ぎになりました。

 その多くの問題は、詰め込みすぎの教室やキャンティーン(給食)でのマスクを外した場所での衛生管理についての問題ですが、学生が危険だと感じる環境を、なぜ放置したまま、学校側が改善策をとらないまま授業が続けられているのか? しかも、その問題提起の方法がなぜ、デモにしかならないのか? そして、なぜ暴力化するのかがわかりません。

 大人のデモのやり方をそのまま子供が模倣しています。デモを起こしてゴミ箱を燃やしたりするのは、今やフランスでは、継承されていく伝統芸??

 フランスはデモの国、何かを抗議するには、とりあえずデモですが、衛生管理を訴えるならば、デモという抗議の方法が適切かどうかに、思い至らないのが解せません。

 また、逆にパリの高校では、衛生管理が十分になされていないということで、閉鎖された高校に学生が押し寄せて暴れるという事件も起こっています。

 学校に関しては、リスクが低いことから、ロックダウン中でも授業が継続されているはずなのですが、実際のところ、学校の衛生管理がしっかりとなされているのか? ほんとうに学校は安全なのかということについては、多くの疑問が上がっています。

 これだけの深刻な状況になっているにもかかわらず、概して、学校も会社も危機感が薄く、企業のリモートワークへの移行も十分ではありません。

 娘が現在、スタージュで通っている会社も、彼女の仕事の性質上、リモートワークが可能(少なくとも、毎日、通勤しなくても可能な業務)なのにも関わらず、未だにリモートワークには移行されていません。

 こうした現状から、政府は、学校の衛生管理の取り締まりに加えて、企業のリモートワークへの移行の取り締まりを来週からはさらに厳重に行うことを発表しています。

 ロックダウンしかり、外出する人が後を絶たない街中の取り締まりに始まり、営業しているお店の取り締まり、学校の衛生管理の取り締まり、企業のリモートワークへの移行状態の取り締まり・・取り締まりにも大変な人員を要します。

 ルールがあっても、自分たちは大丈夫・・取り締まりがなければ守らない・・結果として、締め付けがさらにキツくなる・・常に自由と権利を叫びながら、結果として、自分たちがより一層、強い締め付けの状態を作っている・・そんな悪循環のフランスです。


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「フランスは、いつも誰かが何かを訴え、戦っている フランスは、デモの国」

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