2022年10月6日木曜日

この冬の暖房費節約努力を示すシンボル タートルネック タートルネックは今年のモード?

 


 とにかく、現在のフランスは、節電・省エネアピールが凄まじいのです。

 テレビをつければ、どうやって節電するかを論じ、ここ連日のようにフランス電力からは、こうすれば、値上げを回避できるとか、あなたの家庭での電力消費は・・と、自宅の電力消費を何に何パーセントし使用しているか?を円グラフにして送ってきて、どの部分を削減できるか検討しましょうとか、使っていない部屋の電気は消しましょうとか、使用していない電化製品のコンセントは抜きましょうとか、一番の節電は、消費しないこと・・などいうメールが送られてきます。

 そして、ブルーノ・ル・メール財務相をはじめ、マクロン大統領自らも、いつものスーツにネクタイ姿から、タートルネックのセーターにジャケットを重ねたタートルネックでの防寒アピールで登場し、タートルネックがこの冬の暖房費節約努力を示すシンボルになりつつあり、また、今年の冬のモード(流行)になりつつあります。

 紺や黒、ダークグレーなど、比較的薄手の生地のタートルネックは、首をすっきり見せて、顔を引き締めてみせてくれる感じで個人的には好みです。


 もともと、マクロン大統領のタートルネック姿は、そんなに真新しい感じもなく、たしか、昨年も着ていたような気がするし、コロナウィルスに感染した際にすぐに声明を発表した時にもたしか、タートルネック姿だったような記憶がありますが、今年のエネルギー危機の中では、同じタートルネックでも、訴えかけるものがまるで違ってくるのが不思議なくらいです。

 だいたい、フランスでは、そもそもスーツ姿の人というのは、日本に比べると極端に少なく、オフィスワークの人でも、もともとそんなにスーツにネクタイ・・という人はそんなにいるわけではなく、言われるまでもなく、タートルネック、もしくは、マフラーを上手に巻いたりしている人が多く、あらためて言われるまでもないことのような気もします。

 このエネルギー危機の最初の頃から、ボルヌ首相は10%の節電、暖房は19℃にセット・・などを呼びかけていますが、ここまで節電アピールがエスカレートしていくと、逆になんだか危機感を煽られているような気分になってきます。

 パンデミックの時にも感じたことですが、そもそも、もともとフランスは日本などと比べて自然災害の少ない国、パニックに陥った場合の騒ぎ方も尋常ではありません。

 フランス政府の面々がタートルネックを着て、暖房費節約努力をアピールしたりしていると、必ずそれを茶化すように、「タートルネックはタイトかルーズか?」とか、「カシミアかウールか?」など、果ては「このままエネルギー危機が来年の夏まで続いたら、今度は短パンにビルケンシュトックのサンダルを履いて登場するつもりか?」などと言い出す者まで現れていますが、実際にこの冬に停電などということにでもなれば、そんなことを言っている場合ではなく、そのパニックは大変なことになりそうです。

 そんなにフランスの電気代が高騰するなら、なんならしばらく日本に帰ろうか?と一瞬、頭を掠めましたが、考えてみれば、日本への航空運賃は、電気代の比ではないのでした。


タートルネック暖房費節約努力アピール タートルネック流行


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2022年10月5日水曜日

ガソリンスタンドにガソリンがない トータルエナジーズ ガソリン切れのため一部休業

  


 パリ市内及びパリ近郊にあるフランス大手石油・ガス供給会社トータルエナジーズ(TotalEnagies)のガソリンスタンド40店舗中、17店舗でディーゼルやガソリンのストック切れのため、販売ができなくなり、一部が休業しなければならない事態に陥り、少々、混乱状態にあります。

 よもや、ガソリン不足?とパニックに陥りかけている消費者に向けて、同グループ広報は「トタルエナジーズは在庫を積み上げ、現在定期的に輸入しているため、燃料不足はない」と断言しています。

 トータルエナジーズは、9月の新年度開始以来、1リットルあたり20セントの値下げを導入したため、(政府が導入している1リットルあたりの値下げを併せると1リットルあたり50セントの恩恵を受けることができる)消費者が30%増加したと発表しています。

 しかし、消費量が30%増加することで、供給が途絶えてしまうことなど、ちょっと通常では考えられない事態であることに変わりありません。

 これには、同グループ製油所で行われているストライキ(従業員は10%の賃上げを要求)も影響していると言われていますが、それにしてもストライキなどフランスでは珍しい話でもなく、ガソリンスタンドにガソリンがない・・供給が途絶えるなどという話はこれまで聞いたことがありません。

 運送会社や、通勤などに車が不可欠な人々にとっては値上がりだけでなく、ガソリンがない・・という事態は、深刻な事態に違いありません。

 燃料価格高騰は、インフレの大きな原因の一つにもなっていますが、同社は、原油価格の高騰で過去最高の利益を記録したばかりです。この不況の中、少しでも安いガソリンを求める消費者が集まったことで、トータルエナジーズは成功をおさめているのです。

 何かのトラブルに加えて、ストライキによる影響が加わることは、フランスではよくあることで、今年の夏のバカンスの初めに、CDG空港での空港職員のストライキに加えて、荷物積載のシステムダウンが重なったことで、ロストバゲージが2万個以上発生して、数ヶ月間空港に置き去りにされるという問題が起こりました。

 そもそも、インフレのための賃上げ要求や労働条件改善などを求めてのストライキではありますが、このストライキがさらに問題を大きくしているところがあります。

 その中で、確実に利益を上げている人々もいるのは見過ごされがちなところではあるのですが、今回のトータルエナジーズのガス欠は、そんな一面を露呈した出来事だったかもしれません。

 パリ・パリ近郊のガソリンスタンド品切れは、40店舗中、17店舗のみですが、TF1によると、フランス国内にあるトタルエナジーの3,500店舗のうち、先週末までに100店舗近くがこの燃料不足の影響を受けたと言われています。

 しかし、どうやら、このパニックは、他社のガソリンスタンドにも影響を及ぼし、他でもガソリンを入れるのは長蛇の列ができ始めている模様。そもそもやはり、絶体的なガソリン不足は、否めないのかもしれません。


ガソリン不足 トータルエナジーズ


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2022年10月4日火曜日

今週から始まるフランスの第8波対策ワクチンキャンペーン 3回目のブースター接種も可能になる

  


 すでに夏の始まりから、「秋には必ず第8波がやってくる!」と言われていましたが、その予想どおりに、フランスではコロナウィルス第8波が訪れています。ただ、現在のところ、そこまで、急激な増加にはなっておらず、波は波でも比較的、緩やかな波です。

 ここのところ、気のせいかもしれませんが、一時よりは、ほんの若干ではありますが、マスクをしている人が見られるようになったのは、それなりにマスクが以前より(パンデミック前よりという意味)は、マスクを受け入れる人や、ある程度の予防効果を認める人が生まれたのだなと思っています。

 フランス国立衛生局は、今週から本格的にワクチンキャンペーンを開始するとしており、希望者は誰でもワクチン接種を受けることができますが、特に重症化リスクの高い人、また、これらの重症化リスクの高い人と同居している人が優先されるべきだとしています。



 フランスでは、現段階で、60歳以上の3割強が2回のブースター接種を受けています(計4回ということ)が、今週からは、オミクロン対応の新しいワクチン接種が始まることもあり、すでに2回のブースターを受けた人でも、対象条件を満たせば、この秋に3回目のブースターを受けることが奨励されています。

 対象条件に該当する項目には、60歳以上、高齢者施設、長期介護施設の居住者、免疫不全、既往症があり重症化リスクの高い成人、妊婦、介護者、医療・福祉分野従事者などが挙げられており、最後のワクチン接種から3ヶ月以上が経過していること(80歳以上、高齢者施設居住者、免疫不全者)または、6ヶ月以上(前述以外の場合)が経過していることとしています。

 オミクロンに対応した新ワクチンは、ファイザー社のものとモデルナ社のものを選ぶことができますが、ファイザーは2種類のワクチンを販売しており、一つは、原種に加え、オミクロンBA.4、BA.5の変種をターゲットにしたもので、もう一つは、さらにBA.1亜系をターゲットにしています。2種類があるので、ワクチン接種の際は確認をして、どちらのワクチンを接種したのか、記録は残されると思いますが、確認しておいた方がよいかもしれません。

 モデルナ社のものは、オミクロンBA.1亜系をターゲットにした二価ワクチン1種類ですが、ただし、フランス国立衛生局は、30歳未満の人には、心臓への問題を避けるために、ファイザー社のワクチンの使用を推奨しています。

 また、国立衛生局は、18日から、インフルエンザの予防接種も開始されるので、これら2つの疾病は、いずれも重なった人口に対してリスクが高くなるため、両方を接種すること、また同時接種も可能であると発表しています。

 先日、我が家では、日本で娘がコロナに感染し、私も風邪?をひいて体調を崩したばかり・・他人事ではありません。

 私自身は、2回目のブースター接種を受けたのは、今年の7月だったので、3回目のブースター接種をするなら、来年の1月以降ということになりますが、その前にインフルエンザのワクチン接種を今年もしておこうかと思っています。

 すでに国民健康保険から、インフルエンザのワクチンを受けてくださいという通知は来ているので、今月末にでも受けてこようと思っています。


フランスのワクチンキャンペーン 3回目のブースター接種


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2022年10月3日月曜日

フランスに来て、ペンキ塗りも楽しくなりました


 今の家に引っ越してきて、考えてみれば、そろそろ20年近くが経って、家の中の、あちこちに綻びが見え始め、ここのところ、メンテナンスを心がけています。我が家のアパートは賃貸なので、そもそも備え付けのものは、自分で修理せずにも管理人さんに頼めば、修理の人を寄越してくれたり、交換してくれたりするので、ここのところ、軒並み、トイレの修理を頼んだり、お風呂の湯沸かし器用のバロン(給湯器)を交換してもらったりしました。

 家の中もいつの間にか煤けた感じにもなり、壁紙が剥がれてきてしまったり、猫がガリガリ壁紙で爪とぎをしてしまったり、汚れてきたのが気になり、壁紙を剥がして、ペンキ塗りをするのが最近のマイブームになっています。

 そもそも、パンデミックのロックダウン中に始めたペンキ塗り(ロックダウン中に、外出せずにできること、この際、ペンキ塗りや家の修繕をするという人も多かったために、この手のお店は、ロックダウン中でも営業許可が下りていたお店の一つでもありました)でした。

 家の中にいる時間が増えると、家の中の汚れがやたら気になり始めます。

 以前は、仕事や子供の送り迎えなどで、ほとんど家にいる時間がなく、家の中のことなど、あまり気にならなかったし、1日でもいいから、一度ゆっくり家にいてみたい・・これでは猫のために家賃を払っているみたいだ・・と冗談が出るほどでした。

 しかし、家にいる時間が増えると、それなりに家の中で快適に過ごせるようにしたいと思うものです。

 生活しているスペースでのペンキ塗りは、家具などをどかして、壁紙を剥がして、壁を一旦きれいにしてからやらなければならないので、どちらかというと、ペンキ塗りそのものよりも、その下準備の方が大変なくらいです。

 日本に住んでいたら、決して自分でペンキ塗りするなどという発想はまるでなかったと思うのですが、フランス人はわりと自分の家の手入れ(DIY)(日曜大工)を自分でするのが普通なので、私もなんとなく、ペンキ塗りをすることに、そんなに違和感を感じなくなっていました。

 カステックス前首相が首相を交代した時のインタビューで、「首相を辞めたら、まず何をしますか?」と聞かれて、「ペンキ塗りをしなきゃいけないところがあって・・」と答えていたのを聞いて、普通の人の生活に戻るんだな・・となんか、微笑ましい感じがした気がしました。

 しかし、この間、日本にいる友人と電話で話をしていて、何気なく、「今、ペンキ塗りしていて・・」と言ったら、「えっ??ペンキ塗り?自分でやるの?」と驚かれて、今さらながら、「そういえば、私も日本にいたら、絶対、自分でこんなことはやらないかも?・・」と思ったのです。

 日本でも、そういうことが好きな人はいるとは思いますが、私は決してそういうタイプの人間ではありませんでした。

 しかし、一度、始めてみると、なかなか楽しくもあり、その部屋にある家具などのトーンに合わせた色のペンキを選びに行きます。Leroy Merlin(ルロワメルラン)などのホームセンター(パリ市内にもある)をたまには覗いてみるのも楽しいです。フランスなのに、けっこう便利そうなものが誕生していて、びっくりすることもあります。

 ペンキの色の選択は難しく、実際に塗ってみると、見本の色と違う感じになることもありますが、それはそれで、また仕上がりが楽しみで、出来上がった時には、妙な達成感があります。

 これまでにキッチン、キッチンのテーブル、玄関、娘の部屋などのペンキ塗りが完成し、現在、お風呂場に手をつけたところです。

 こうなってくると、とにかく全部の部屋を制覇したい・・とにかく、どっか塗りたい衝動にかられてきます。

 業者に頼めば、簡単に済む話でもある気もしますが、見ず知らずの他人にあまり家に入ってほしくないこともあり、また、頼んだところで、予約した日時にちゃんと人が来てくれるとも限らないので、そんなことでまたイラつくぐらいなら、自分で好きな時に好きなペースでやる方が都合もよく、また、音楽でも聴きながら、そんな作業を黙々とやるのもなかなか楽しいもので、最近のマイブームにもなっています。

 フランスに来てから学んだ「便利なことばかりが幸せじゃない・・」そんなことをペンキ塗りを楽しみながら思ったりもするのです。


ペンキ塗り DIY 日曜大工


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2022年10月2日日曜日

カマイユ(Camaïeu)倒産に見るカマイユとユニクロ パリの微妙な比較

  


 フランスの服飾メーカー カマイユ(Camaïeu)は設立から38年。惜しまれながら、先週末でその幕を閉じ、フランス国内の512店舗全てが閉店しました。

 カマイユ(Camaïeu)は、1984年に設立し、比較的低価格設定で、需要に応じて供給を調整する手法で、10年間であっという間に200店舗を抱えるフランスの人気ブランドの一つに成長しました。

 急成長の途中、子供服、メンズにも手を広げますが、危機に直面して、これらは撤退。

 2000年の時点でヨーロッパにも出店を始め、国際展開にも乗り出し、ネットワークを広げてロシアや中東のパートナーとも協定を結び、特にハンガリー攻略に乗り出します。

 2015年には、15カ国で展開し、フランス国内の約650店舗を含め、合計900店舗以上にまで拡大しています。その後、2017年には、フランスの繊維小売業が、メルキュールインターナショナルグループと提携したことを機に、フランチャイズモデルでカメルーンに1号店をオープン。

 この後、2018年にガボン、チュニジア、セネガル、カメルーンとアフリカで5店舗を出店します。しかし、結果的に力を入れるべきは店舗数を増やすことではなく、ネット販売への移行へ投資する時期だったのです。

 そして2020年、パンデミックの影響で長期間、店舗は営業できずに大打撃を被り、この期間に海外の仕入れ業者が物流がストップして、カマイユが支払いをしてくれないと騒いでいるのがニュースになっているのを見かけたりしていました。

 とはいえ、我が家も結構、お世話になりました。低価格で、デザインがシンプルで、色がきれいなTシャツとか、セーターとか、娘が中学・高校生くらいの頃なので、10年くらい前になるでしょうか? 近所のショッピングセンターにお店が入っていたこともあり、カラフルな色のグラデーションをきれいに飾った店内に目を惹かれて、また、微妙な色合いのものなどもあったりして、ずいぶん買い物をした気がします。

 しかし、値段が値段なので、文句は言えませんが、生地のクォリティはそれほど良いとも言えず、長く着れるものではなかったかもしれません。そもそも成長期の子供なので、その程度でも充分でもあったのです。

 その頃は、カマイユが店舗数を急拡大していた頃で、いく先々で、こんなところにまでカマイユあるの?と思った気がして、一時、オペラ通りにもあってびっくりしたのを覚えています。

 パリのオペラ通りというのは、このようなお店にとっては、なかなか微妙な通りで、有名な大通りではあるものの、その知名度ほどには、華やかさはなく、これといったお店もたいしてなく、実は店舗の入れ替わりの激しい通りでもあります。

 今から振り返れば、カマイユが店舗数を拡大中は、実はカマイユが傾き始める時期とも重なり、またパリにユニクロが浸透していく時期とも重なっているのは偶然だろうか?とも思います。

 ユニクロのヒートテックがパリでも大人気になり始めた頃、カマイユにも低価格のヒートテックまがいのものがたくさん並ぶようになりましたが、ユニクロとて、日本よりは高いとはいえ、そもそもそんなに高価なものでもありません。

 カマイユに比べて、ユニクロの製品のクォリティはしっかりしていて、間違いがないという信頼をユニクロはパリでも積み重ねていき、今から思い返すと、この頃、パリでやたらとユニクロの紙袋を持っている人をたくさん見かけるようになっていったような気がします。

 もともと締まり屋のフランス人。シンプルなデザインのものであったなら、少々、値段が高くても(カマイユよりも)、品質が確かで長く着ることができるユニクロの方がいいと考えるのではないか?と思うのです。

 けっこう、人気だったはずのカマイユの倒産には、様々な経営戦略(海外展開など)の失敗が重なった上にパンデミックによるロックダウン中の営業停止、その間にネットショッピングが急速に普及したことなど色々、原因はあると思いますが、ユニクロの存在も関係があるような気がしています。

 こういった低価格帯のお店が姿を消していく中、エルメスやディオールなどの高級ブランドは、私にとっては美術館のような存在ですが、桁がいくつも違う価格帯、このインフレもネットもなんのそのの勢いで、店頭には行列、店内でも飛ぶように商品が売れる繁盛ぶり。

 なんだかモヤモヤしないでもありません。


カマイユ(Camaïeu)倒産 ユニクロ


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2022年10月1日土曜日

プーチン大統領のウクライナ領土併合宣言の演説

  


 クレムリンの神々しい大きな黄金の扉から、二人の兵士が大きなアクションで扉を開ける派手な演出の中、プーチン大統領が行った演説は再び世界中を騒がせ、フランスでも大騒ぎしています。

 プーチン大統領は、その荘厳な演出とはうらはらに何やらせかせかと壇上にあがり、せっかく、こんな派手な演出をするならば、堂々と威厳のある感じで登場してもよさそうなものに・・と思いながら、私は演説の中継を見ていました。

 今回の彼の演説は、投票が行われる前から多くの国々がパロディだとか、とんだ茶番劇だと言っているドネツク、ルハンスク、ケルソン、ザポリージャでのロシアへの統合に関する住民投票が行われた時点で予想されていたシナリオどおりで、最初にウクライナに侵攻を始めると発表した時のような驚きはありませんでしたが、この演説が再び、周囲の国々からの制裁を強くし、連帯させ、ウクライナへの援助が追加されることになることは、予想がつくはずのことでした。

 プーチン大統領は、この投票の結果を圧倒的多数でこの4地域をロシアに併合することになったと語り、併合地域の4人の代表者と共に、これらの地域がロシアに加盟することを正式に表明する加盟協定に署名した。彼は「国民投票により、何百万人もの人々の意思に疑いの余地がない選択がなされた」と述べ、「ドネツク、ルハンスク、ケルソン、ザポリージアの住民は我々の市民であり、永遠に我々の市民だ ロシアはあらゆる手段で国土を守る」と宣言しました。

 このウクライナ領土4地域併合の公式発表直後、プーチン大統領はウクライナに対して「すべての軍事行動を停止」し、「交渉のテーブルにつく」ことを要求し「キエフは今日、国民の自由な選択を尊重して考慮しなければならない」とウクライナに「停戦」を求める一方で、プーチン大統領は、南部と東部の4地域の併合問題を今後の交渉で取り上げることを拒否するとも断言し、それが「平和に向かう」道への「基礎段階」であると主張しました。

 相変わらず、身勝手自分本位の主張のみです。

 しかし、ウクライナへの停戦呼びかけについて以外は、演説のほとんどは、欧米、特にアメリカを非難する内容のもので、あらためて、この戦争の根源がプーチン大統領の欧米を敵対視する過去のソ連への幻想に取り憑かれているものであることを感じさせました。

 「ワシントンはロシアに対して、「全世界を略奪」し、ロシアを「植民地」にするという「新植民地主義的なドルの独裁を維持」するために戦いを挑んでいる」、ウクライナの同盟国である欧州連合やバルト諸国は、米国の金で動く「奴隷」である」という過激で極端な論法は、逆に欧米を煽っているような気さえしてしまいますが、これは、ウクライナや欧米に向けられたもの以上にロシア国民に向けた、はったりや洗脳である気もしています。

 また、ロシアのガスをヨーロッパに輸送するために建設されたガスパイプライン、ノルドストリーム1および2に大規模な漏れを引き起こした爆発の背後に欧米がいると非難しました。ウクライナ侵攻の最初からの言い逃れと同じ方法で自分でやっておいて、相手の仕業にする戦法?です。

 「あらゆる手段で国土を守る」と述べることで核兵器使用を匂わせつつ、「アメリカは広島と長崎に原爆を落とし、核兵器使用の前例を作った」と自国の領土を守るために核兵器を使用する正当性を持たせるような発言に、アメリカも大激怒。

 これに対して、バイデン大統領は、プーチン大統領演説の直後に「アメリカと同盟国はNATOの領土を隅々まで守る用意がある」「アメリカと同盟国は脅かされることはない」と警告に加え、この派手な式典はクレムリンの指導者の強さを示すための「見せかけ」であり、逆に「彼が窮地に立たされている」ことを物語っている、と述べています。

 一時は、プーチン大統領とも、ほぼ毎日のように電話会談を行っていたマクロン大統領もEUの議長国の任期が切れたこともあるのか、最近はパッタリと彼との電話会談も減りました。しかし、この演説には、他国同様、「ロシアによるウクライナのドネツク、ルハンスク、ザポリジャ、ケルソンの各州の違法な併合を強く非難する。これは国際法およびウクライナの主権に対する重大な侵害である。フランスはこれに反対し、ロシアの侵略に立ち向かい、全領土に対する完全な主権を回復するためにウクライナの側に立つ」と声明を発表しています。

 ウクライナだけでなく、アメリカ、欧州連合、G7、NATOと全てを敵に回し、ロシアが困っている状況なのは、明白で、30万人を部分的動員にと発表したとたんに、国民からも再び反発をくらって、ロシアから出国しようとする人が20万人を超えていると言われる中、必死の抵抗なのかもしれません。

 しかし、プーチン大統領が「いかなる手段を持ってしても守る」のは、ロシアの領土であり、国民ではないことは、突然、動員されて戦禍の盾に使われようとしている国民にも伝わり始め、その国民の士気を高めるため、そして、ウクライナの攻撃を停止させるのが、一番の目的なのだと思います。

 まことに理解し難い言動ばかりのプーチン大統領ですが、この先のシナリオをどう考えているのか?全然、読めませんが、この戦争がこのまま歳を越してしまうのは必須な感じがしてきました。


プーチン大統領演説 ウクライナ領土併合


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2022年9月30日金曜日

定年退職年齢延長反対と賃上げ労働条件改善のデモ・ストライキ

  


 マクロン大統領が、「誰もがもっと長く働かなければならない」として、法定退職年齢の引き上げや、年金の拠出期間を43年に延長することを提案したことから、フランスでは、大規模なデモが巻き起ころうとしています。

 29日には、パリだけでも少なくとも4万人が集結し、この定年退職年齢引き上げと賃上げ・労働条件改善を訴えるためのデモを行いました。フランス全土では、少なくとも200ヶ所で25万人を動員したなかなか大規模な動きです。

 現行ではフランスでは、法定退職年齢は62歳と定められていますが、これを2023年には62歳4ヶ月、2024年には62歳8ヶ月、2025年には63歳、そして最終的に2031年には65歳にまで延長する計画です。

 これには、おまけがついていて、定年退職年齢より1年早く退職すれば、年金支給額からマイナス5%、1年長く継続すればプラス5%とペナルティーとボーナスの両方が提示されています。

 しかし、考えてみれば、どちらにしてもそのプラス・マイナスの基準となる年齢が引き上げられる以上、これまでの見積り?どおりに退職しようものなら、マイナスにされてしまうわけで、年金支給額をプラスにしようと思うならば、これまでよりももっともっと働かなければなりません。

 年金の計算はフランス人の趣味なのか?と思うほど、年金についてはシビアなフランス人。

 以前の職場にも退職を数年後に控えた同僚などは、暇さえあれば年金の計算をああでもないこうでもない・・と話している様子を私は冷ややかな目で眺めていました。(今さら、計算したところで変わらないでしょ・・っと思って・・)

 しかし、これくらいフランス人は年金を受け取れる日を心待ちにしており、今は亡きフランス人の夫も初めて年金の書類が届いた時には(まだまだ定年退職はず〜っと先のことだったにもかかわらず)ものすごく喜んでいたのを、これまた、ちょっとしらけた気分で見ていました。結局は彼は年金をもらう年齢になる前に亡くなってしまったので、彼が亡くなった時には、「あんなに年金、楽しみにしていたのに・・」と、思ってしまいました。

 もともと夏のバカンス明けには行われる予定だったデモ・ストライキは、前例のないインフレ(8月は5.9%増)に直面して賃上げを求める当初のスローガンに、この定年延長・年金問題が加わり、さらにヒートアップしています。

 インフレだ、節電だと不安定な情勢の中、ただでさえストレスフルでイラつくことの多い現在、だからこそということもあるのでしょうが、このうえ定年退職年齢延長、「もっともっと働け!」と言われて、黙って引き下がるフランス人ではありません。

 今回の定年延長問題には、すべての全国労働組合組織(CFDT、CGT、FO、CFTC、CFE-CGC、FSU、Solidaires、Unsa)が動員をかけており、SNCF(フランス国鉄)やRATP(パリ交通公団)などの公共交通機関をはじめ、教職員組合なども部分的に抗議活動に参加し、ストライキも起こっています。

 「賃上げ要求!」「定年延長反対!」などとともに、「人生を無駄にして稼ぐのはやめよう!」というプラカードには、「長く仕事をし続けるのは人生の無駄・・そんな年齢まで働いていては、人生を楽しめない!」というフランス人の本質も見えて、なるほど・・と思いました。

 自分自身については、もともとフランスで仕事を始めた年齢が遅く、年金の拠出期間を43年間などと言われては、超高齢になるまで働かなければならないため、もともと問題外の話です。

 日本にしても、フランスにしても年金についての制度はどんどん変わり、どちらにしてもいいようには絶対に変わりようがないので、思い悩むのもバカらしく、別の手段を考えるようにしています。

 しかし、この問題、政府スポークスマンのオリヴィエ・ヴェランは、年金について「この改革は、大統領プログラム全体を発展させるために不可欠だ!」と強気に語っていますが、さっそく野党からの反発も強く、「年金支出は2027年までGDPの14%未満にとどまる。2021年には、わが国の年金制度は9億ユーロの黒字になることさえある!」などと言われて、過半数割れしている政権が押し通すことができるかどうか、節電で暖房も控えなければならない冬が熱いことになるかもしれません。

 パンデミック前まで長きに渡り続いていた「黄色いベスト運動」のように、フランスのデモは経済活動の妨げになるケースにまで発展する危険があり、今後、どのように国民と政府が戦っていくのかが注目されます。

 しかし、「人生を無駄にして稼ぐのはやめよう!」とは、さすがフランス人、痺れるな〜〜。


フランス定年退職年齢延長65歳へ


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