2021年1月28日木曜日

なかなかロックダウンを決断できないフランス政府と国民感情の動き

   



 ロックダウンは必須だと言われながら、フランス政府はなかなかその決断を下さないまま、一週間以上が経過しています。感染状況だけでなく、経済的な逼迫状態からも、そのロックダウンの詳細を決めかねているのは、理解できます。

 政府の決断は、僅かな期待を込めて、夜間外出禁止を前倒しして、18時にした成果を見届ける2週間後の今週末まで、決定を引き延ばしていますが、残念ながら、その効果は全く現れておらず、新規感染者数も集中治療室の患者数も増加し続けています。

 もしも、この夜間外出禁止の時間帯を早めなければ、もっと急激に増加していたかもしれないので、それなりの効果はあるとも考えられますが、どちらにせよ、感染が拡大し続けている以上、更なる措置を取らざるを得ないことは誰もがわかっています。

 しかし、国民もロックダウンや多くの制限に縛られる生活に経済的にも精神的にも疲れてきていることもあり、営業停止になっているはずのレストランが痺れを切らして営業を始めたり、先日は、パリでは、いくつかのレストランが実は営業していて、ランチタイムなどは、かなりの人が入っているのに、現地の警察が見て見ぬふりをして、営業が続けられているという話を聞いたばかりです。

 昨日は、ニースにあるレストランが営業禁止を無視して、営業を再開し、テラス席は、50人ほどの客が集まり、20人の警察が踏み込み、営業終了を待って、レストランのオーナーは逮捕、お客さんには、135ユーロの罰金が課されました。

 かれこれ、最初のロックダウンから1年近く経過したフランス国民は、昨年の3月の時点では、93%がロックダウンに賛同していたものの、4月のロックダウン延長時には、83%、2回目のロックダウンの10月末には67%にまで低下し、現時点では、58%まで低下しています。

 10月末の2回目のロックダウンの際には、12月には、なんとかクリスマスを家族で迎えるためにという明確な目標もあり、まだ希望もありましたが、現在は、イギリス変異種の急激な拡大により、周囲のヨーロッパの国々も厳しい感染状況の中、次々にさらに厳しい規制が敷かれている中、終わりの見えない今回のロックダウンには、抵抗があるのは、もっともでもあります。

 しかし、この状況をこのまま放置するわけにもいかず、特に、感染力も高く、致死率も高いイギリス変異種の拡大は、深刻で、2週間前には、感染の1〜2%程度であった変異種が現在では、パリ地域では、14%まで上昇しており、2週間で10倍以上にも膨れ上がったことになります。近いうちにコロナウィルスの主流は、イギリス変異種がとって変わるのではないかとする見方をする専門家もいます。

 これらの状況を鑑みるに、現在3,100人まで膨れ上がっている集中治療室の患者数は、2週間後には、4,000人、さらに2週間後には、5,000人まで増加すると予想されています。

 集中治療室に5,000人というのは、フランスの医療システムの崩壊状態に限りなく近づく数字です。政府は、10,000床まで集中治療室は、拡大できると言っていますが、ベッドだけあっても、それをケアーする人出は足りません。

 政府の決断が遅れれば遅れるほど、感染者は増え続け、国民感情も動揺して、迷いが生じてきます。被害を少しでも少なく留め、できるだけ早く感染を収束させるためには、本当は、もう猶予できない状態なのです。

 昨日は、5月に予定されていたカンヌ映画祭が7月に延期されることが発表されました。先の予定ばかりが先行して延期になったり、中止になったりしているのに、目の前に迫っているロックダウンが決められないことをとても、私はとても、もどかしく思っています。


<関連>「変異種による2回目のパンデミックが起こる」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_26.html

 

 

 

2021年1月27日水曜日

夜間外出制限をめぐりオランダで暴動 オランダに比べるとフランス人は意外と従順なのはなぜか?

Des policiers font face à des opposants au couvre-feu à Rotterdam, aux Pays-Bas, le 25 janvier 2021. (KILLIAN LINDENBURG / ANP MAG / AFP)


 ここ数日間、オランダでの夜間外出禁止に反対するデモが暴動化している様子がフランスでも報道されています。

 オランダの首都、アムステルダムと南部アイントホーフェンをはじめとする国内10カ所以上で、コロナウィルス感染対策の夜間外出禁止に反発する無許可デモが行われ、警官隊と衝突し、石やゴルフボール、爆竹などが投げられ、車や商店にまで放火される暴動に発展しました。

 ユルク(中部フレヴォラント州)では、コロナウィルスの検査施設までが放火されています。いくらなんでも検査施設に放火は、悪質です。

 この暴動では250人が逮捕され、過去40年間で最悪の政情不安だと言われています。ルッテ首相は、暴力は、抗議ではなく「犯罪」と述べ、これらの暴力行動に対して厳しく対処することを発表しています。

 オランダでは、昨年10月からレストランやバーが閉店、12月15日からは、学校や生活必需品以外の店舗も閉鎖されています。

 今回は、それらの制限に加えて夜間外出禁止(21時〜4時半)が追加されたことに対する反発です。

 しかし、このオランダの様子を見ていて、オランダに比べれば、フランス人は、意外と従順に、ロックダウンや夜間外出制限に従っているのだな・・と、私は、妙な感心をしてしまいました。

 フランスでも、このコロナ禍に、デモは度々、起こっていますし、ブラックブロックなるデモに便乗して暴れる集団により、デモが暴動化することもありましたが、それは、コロナウィルスの行動制限に対してのものではなく、最近のデモは、もっぱら、今は、グローバルセキュリティ法に関するデモが中心で、コロナ対策に対してのものは、あまり、ありません。

 ましてや、フランスの夜間外出制限は、18時から6時まで、これに違反すれば、135ユーロの罰金が課せられます。(オランダは21時から4時半まで、罰金は、95ユーロ) オランダに比べれば、格段、厳しい制限をフランス人は、概ね受け入れています。

 この18時の門限を守るために、日頃は急がないフランス人が、帰途を急いでいる様子には、ちょっとびっくりするくらいです。

 これは、フランスの感染状況がオランダよりも深刻であることも理由の一つであるかもしれませんが、ロックダウンなど制限に対するの国民の努力ををちょいちょい褒めつつも、ギリギリのところで締めているフランス政府のやり方は、少なくとも大きな反発を生んでいないだけでも上手くいっている方なのかもしれません。

 オランダでの今回の暴動は、オランダ政府の一貫性のないメッセージが国民の信頼を形成できなかったことが、原因になっていると見られています。

 コロナウィルス流行の初期には、「オランダ人は、法を遵守する国民性で、マスク着用や外出禁止といった措置を取らない方針」としていたにもかかわらず、年末年始以来の度重なる制限の追加にこれまでの怒りが爆発したとも言われています。

 このコロナウィルス対策のための数々の行動制限に関して、政府の説得力、国民をどう納得させられるのか?も、大きな問題の一つです。

 とりあえず、物申すフランス人が度重なるロックダウンや、厳しい夜間外出制限をなんとか受け入れているのも、ある程度、フランス政府は国民を納得させることができているのだなと思ったオランダの今回の騒動でした。

 しかし、むしろ、夜間外出制限を、外出さえしなけりゃいいだろ!とばかりに、夜間は、家で人が群れているのも、フランスの現状の一つなのですが・・。


<関連>「コロナウィルスに関するマクロン大統領のテレビ放送を見て思うこと」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/03/blog-post_13.html 

 


 


2021年1月26日火曜日

変異種による2回目のパンデミックが起こる

  


 イギリス変異種がヨーロッパで猛威を振るっています。

 イギリスでは、すでに一日1,000人以上の死亡者が出る日が何日も続き、ポルトガルでは、この変異種の影響により、40%以上も感染者が急激に増加し、政府が「限界に近い状況である」と発表する非常事態が起こっています。

 このポルトガルのような状況に陥ってしまうことにフランスは大きな危惧を抱いています。

 フランスでも、現在、新規感染者の7〜9%は、イギリス変異種による感染だと言われています。イギリス変異種は、感染速度も速く、感染率も高く、致死率もこれまでのコロナウィルスよりも30%〜40%高いことが、イギリスのボリス・ジョンソン首相からすでに発表されており、フランスの科学評議会の議長フランソワ・デルフライシー氏は、「イギリス変異種による2回目のパンデミックが起こる」「このままの状況を続ければ、(早急に、さらなる制限を設けなれば)、フランスも3月中旬には、壊滅的な状況に陥る」と警告しています。

 1回目のパンデミックも終わらないうちに2回目のパンデミックが起こるという表現を使うことから、科学技術評議会によって予想されている変異種の拡大と、その猛威への懸念の大きさがわかります。

 つまり、同じ感染者数でも、これまでのコロナウィルスとは、重症化し、死亡する比率が高いわけですから、単にこれまでと同じ推移で感染者数や入院患者数を見ていては甘いということです。

 フランス政府は、現在のところ、ロックダウンが必要であることは充分に認識しつつも、その時期や方法を計りかねています。現在の段階では、3回目のロックダウンとして、

① 店舗の営業は継続、1〜10km以内の外出に制限

② 学校も含めて、ほぼ完全な状態のロックダウン(昨年の3月〜5月のロックダウンと同等程度)

③ 学校は継続、店舗は、生活必需品を扱う店舗のみ営業(昨年11月と同等程度)

の3つの方法が検討されています。

 また、各国が必死に進めているワクチン接種も、HAS(Haute Autorité de Santé)によれば、ワクチンは、イギリス変異種の感染速度に間に合わないであろうと言われています。

 ほとんど待ったなしの現在の状況ながら、フランス政府は、夜間外出禁止前倒し(18時)の効果を今週いっぱい見たタイミングの週末にも今後の対策を決定する模様です。

 いずれにしても、現在以上の制限が敷かれることは、必須で、迫り来るロックダウンのために、準備を始める人も現れ始めています。

 コロナウィルスが出現して、そろそろ一年、感染拡大しては、ロックダウン、解除されれば、しばらくしてまたロックダウン、同じことを繰り返していて、愚かしい気もしますが、それに加えてウィルス事態がパワーアップするのですからたまりません。

 これからの数週間、いや数ヶ月、まだまだ気が抜けない日が続きそうです。


<関連>「世界中が警戒しているイギリス変異種」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_14.html

「フランス全土・夜間外出禁止18時へ 入国制限も強化へ」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/18.html

2021年1月25日月曜日

フランスの3回目のロックダウンは、決定的

  


 フランスの3回目のロックダウンは、もはや、するかしないかではなく、いつ、どのようにするかという段階に入っているようです。フランスの感染状況は、急激に拡大してはいませんが、週平均、1日の感染者が2万人前後という高い数字をずっと保ち続けてながら、じわじわと増加しており、集中治療室の患者数もこれにつれて、少しずつ増加し、現在は、2,965人(1月24日現在)とほぼ、3,000人のボーダーラインに限りなく迫りつつあり、これは、前回のロックダウンに踏み切った時と同じレベルにまで達しています。

 しかも、現在、最も懸念されているのは、イギリス変異種を始めとする南アフリカ、ブラジルなどの変異種の拡大で、新規感染者の20%がイギリス変異種による感染が占めているポルトガルのように、感染が急速に拡大してしまうことを恐れています。

 すでに年末年始にかけて感染拡大が深刻になり、新規感染者の増加だけでなく、多くの死者を出し、ロックダウン状況にあるイギリスやドイツなどに比べると、一見、感染の急激な拡大はみられないフランスは、この期に及んで、「フランスは、ヨーロッパの中では、最も感染対策ができている」などと、お得意の自画自賛の姿勢を崩していませんが、その実、ロックダウンの効果が表れ始めているドイツやイギリスに比べると、なかなか微妙な数字を常に保ち続けており、今のフランスの状況は、単にドイツやイギリスに比べて、早い時期に1日6万9千人という驚異的な新規感染者数を叩き出したために、ロックダウンを早い時期に行った結果であり、その後のイギリス変異種の出現から、イギリスからの入国制限を慌てて行ったものの、実際には、この変異種がかなりの割合で蔓延し始めていることは、幼少者の感染拡大などの数字を見ても明らかです。

 これからが怖いところで、この変異種による感染拡大の波を迎えるかもしれないにあたって、フランスはすでに集中治療室が3,000近く埋まっている状態で迎えてしまうことで、ここから、急激に感染拡大した場合は、間違いなく医療崩壊まっしぐらになります。

 あくまでも経済をできるだけ維持し、学校も閉鎖しない状態を保ちたいフランスは、夜間外出禁止を18時に前倒しにした効果を期待していますが、一週間たった現在もその顕著な効果は確認されていません。

 学校に関しても、どちらにしてもフランスの学校は、あと10日ほどで冬のバカンスに突入するために、その学校のバカンスのタイミングに合わせた形でのロックダウンを考えているのではないかと思われます。

 科学評議会の議長が、少なくとも3週間のロックダウンは必須であると発言しているとおり、あらゆる状況(感染状況や変異種拡大の影響等)を考えてもロックダウンは確実ですが、あとは、そのタイミングや方法(地域的なものにするか、制限の範囲、年齢等)を検討している段階です。

 現在すでに長い期間営業停止されているレストランやカフェの営業停止が先んじて少なくとも4月6日までと延長されたり、3月に予定されていたバカロレアのスペシャリテの試験が中止になり、ずっと先の予定がどんどん中止になっていることも、当然の措置であると思いつつ、政府が目先のロックダウンを一日延ばしにしつつも、2月から3月にかけての感染爆発を充分に見据えている不気味な動きであることを感じずにはいられません。

 また、イギリス変異種に関しては有効性は変わらないとされていたワクチンも、南アフリカ変異種に関しては、有効性を40%低下させるという研究結果も発表されており、世界各国が躍起になっているワクチン接種の効果も効果が危うくなり、まさにウィルスの進化と人間の戦いのいたちごっこのようで、このパンデミックがさらに長く続きそうな気配がしています。


<関連>「学校閉鎖に踏み切る基準 フランスの年少者の感染増加」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_19.html

「世界中が警戒しているイギリス変異種」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_14.html

2021年1月24日日曜日

パリ15区での14歳の少年への集団襲撃事件 


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 1月15日(金)にパリ15区・ボーグルネルで14歳の少年が12人の集団によって殴る蹴る、終いには、バットやハンマーまで使って長時間にわたっての暴行を受ける、恐ろしい画像がツイッター上で拡散されて大問題になり、同時に彼への支援メッセージが後を絶ちません。

 少年は、複数の友人と共にいましたが、この突然の襲撃に遭遇し、友人とともに逃げる途中で、運悪く転び、彼一人がターゲットにされた模様です。

 彼は、その後、まもなく病院に運ばれ、6時間にわたる手術の後、昏睡状態に陥り、意識不明の重体です。彼は、現在も挿管状態で、頭蓋外傷、脳と頭蓋骨の間の血腫、脳挫傷、腕、指の骨折を負っています。

 パリ検察庁は、「集団による殺人未遂事件」として、捜査を開始していますが、まだ犯人は、特定されていません。

 この事件で私が驚いたのは、この事件のあまりに残酷な暴行の模様はもちろんのことですが、この事件が起こったのが、パリ市内では、特に危険と思われている地域ではなかったことです。

 パリ15区は、観光客には、あまり注目される場所ではありませんが、16区ほど地価が高いわけでもないわりには、比較的安全で、在仏日本人の多い地域でもあるのです。

 パリ日本文化会館(Maison de la culture du Japon à Paris)などもあり、韓国レストランなどが多い地域でもあります。

 何よりボーグルネルと言えば、パリ最大級のモダンなショッピングモールで有名なところで、とてもそんな残忍な犯罪と結びつくようなイメージではないのです。

 被害者の少年の母親は、沈痛な面持ちで、しかし冷静な態度で、自らマイクを持ち、テレビのインタビューに答え、まるでレポーターのように、淡々と落ち着いて、息子の被害状況を説明し、「彼は、優等生で、敵を作るタイプの人間ではなく、とても誰かから怨みを買うようなことは考えられません。彼は、一週間昏睡状態が続いていましたが、少しだけ回復の兆しが見え始めました。警察も政府も力付けてくれていて、捜査も進行中ですが、犯人は特定されていません。この事件を目撃した方がいたら、情報を警察に連絡してください」と堂々と顔を出して、訴えかけていました。

 思っても見なかった15歳の息子の事件を堂々とテレビの前で冷静に語ることができる母親に感心したとともに、この比較的安全と思われていた地域で、このような恐ろしい事件が起こることに恐怖を感じるのです。

 事件の真相はまだわかっていませんが、これが、特に彼を狙ったものではなく、無差別に行われた暴力であったとしたら、それは余計に恐ろしいことでもあります。

 コロナウィルスによる様々な制限を強いられているストレスの多い生活が続く中、人々の心も荒れて、犯罪も増加しています。ストレスの発散をこのような暴力的な方法で発散させている一部の人間が、コロナ以外の恐怖を煽っています。


<関連>「ノエルに向けて治安の悪化するパリ」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/12/blog-post_12.html



 







2021年1月23日土曜日

ディエップの病院で260人感染のクラスター発生 ワクチン接種は医療従事者優先にするべき

  


 フランスでは、ディエップ(ノルマンディー地域圏)の病院で、医療従事者141人と患者123人にコロナウィルス感染が拡大するクラスターが発生しています。病院でのクラスター発生は、深刻な事態です。

 ディエップは、イギリス海峡に面した港町で、この港町の病院での急激な勢いでのクラスター発生には、イギリス変異種の影響が強いと見られています。

 この病院では、医療従事者の感染に加えて、コロナウィルスによる入院患者の増加により、緊急ではない手術の30%は、延期せざるを得ない医療逼迫状態に追い込まれています。

 なぜ、ここまで感染が拡大してしまったのか? しかも病院で、医療従事者の間で・・。

 フランスでは、これまでに96万人へのワクチン接種が行われていますが、最優先されているのは、あくまでも高齢者で、医療従事者に対しても50歳以上という制限がつけられています。

 コロナウィルスの治療の第一線で働く、感染リスクが最も高いと思われる医療従事者に対して、ワクチン接種に年齢制限が敷かれていることは、おかしな話です。医療という現場で働く人々は、たとえ感染して重症化する可能性が低かったとしても、感染を拡げてしまう可能性があるのです。

 感染拡大が進んでいる今は特に、彼らこそがワクチン接種を優先されるべきなのです。

 これに関しては、日本は、未だワクチン接種が開始されていない状況ではありますが、政府が示しているコロナウィルスワクチン接種の方針では、医療従事者へのワクチン接種を最優先にしていることは、とても賢明なことだと思っています。

 ましてや、現在、フランスは、ワクチン接種の拡大に懸命になっているものの、ワクチンの供給が間に合っていない状況で、ワクチン接種を急ぐばかりで空回りしている感が否めません。

 現在、ワクチン接種の権利がある75歳以上の一般の高齢者でさえも、予約を取るのも大変で、家から遠い場所に行かなければならなかったり、やっと予約が取れて出向くと、ワクチン切れの状態だったりするアクシデントも起こっています。

 フランスの感染状況は、劇的な感染悪化ではありませんが、徐々に、しかし、確実にじわじわと悪化している微妙で危険な状態が続いています。波が急激に高くならずに徐々に上昇している状況は、知らず知らずのうちにわかりづらい形で自覚しづらい状態で、悪化しているだけに、余計に始末が悪いとも言えます。

 とはいえ、余程のことがない限り、継続すると言っていた学校も、クラスター発生のために閉鎖される学校が増え始め、もはや3回目のロックダウンは避けられない状況であると、誰もが思っています。

 政府は、夜の外出禁止を18時に前倒しした効果が現れることに僅かな期待を抱いているようですが、現実的には、感染悪化の顕著な数字が表れるのを待っているような状態で、同時に、3回目のロックダウンをどのような形にするのか(制限の内容や地域、方法、期間など)を手探りしているようです。

 夜の外出禁止を18時に早めたことで、スーパーマーケットなどの店舗は、朝7時半からの時間前倒しの営業に切り替えたり、日曜日も営業するなどのフランスとしては、異例の対応を取り始め、必死にこの制限に対応していますが、そこまでしても感染の威力は、一向に抑えることができないことは、歯痒いばかりです。

 ワクチン接種が現在、多くの国ではリスクの高い(致死率の高い)高齢者を中心に必死で行われているのが、果たして正しかったのかどうか? と、私は思い始めています。

 感染の抑制をワクチンに頼るならば、医療従事者はもちろんのこと、仕事に出なければならない人々、感染を拡げる可能性の高い人々こそがワクチンを接種しなければならないのではないだろうか?と、チラと頭をかすめたりしているのです。

 しかし、現在のところ、ワクチンの効用性もどの程度なのかは、まだわかりません。即効性があるのかどうかもわからないし、かなりの割合でワクチン接種が進んでいるイスラエルでさえも感染の拡大は止まっていません。

 フランスの専門家は、このままの状態を続ければ、3月には、フランスは、再び、昨年同様、あるいは、昨年以上の壊滅的な状況が怒ると警告を発しています。

 人々が感染回避の努力をすれば、その形を変化させながら、威力を発揮し続けるコロナウィルスにどうしたら、人間は打ち勝つことができるのか?

 3度目のロックダウンで3度目の正直・・感染を止めることができるのか? オリヴィエ・ヴェラン保健相は、今年の8月末までにフランス人全体のワクチン接種を終える予定であることを発表しています。

 あくまでも予定ですが・・。


<関連>「ワクチン問題、さらに混乱状態のフランス」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_6.html

「フランスでコロナウィルスワクチンが浸透しにくい理由」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_12.html

 

 

2021年1月22日金曜日

滞在許可証更新手続きのトラブル アクセス不能なフランスのお役所

 


 私のフランスの滞在許可証は、10年ごとに更新するもので、昨年のロックダウン中にその更新手続きの時期が重なってしまったことが、そもそもの不運の始まりでした。

 いつもなら、滞在許可証の期限が切れる数ヶ月前に、更新のための必要書類と、この日に書類を提出しに来てくださいという通知が届くのですが、今回は、それが届きませんでした。

 何回か電話しましたが、「サイトを見てください!」とだけ言われて、電話は切られ、仕方なくメールで問い合わせると、しばらくして、「今は、手続きが滞っているから、そのうちレターが届くまで、そのままで良いです」との回答。

 なんとも落ち着かない状態が続いていましたが、それから一週間くらいして、更新手続きの呼び出し状が届きました。

 3月から5月にかけての最初のロックダウンでは、ほぼ、全ての人が外出できなかったし、お役所も閉まっていたので、その間の手続き分が滞っているので、仕方なかったとも思いますが、指定された日時に出向くと、もの凄い人。

 日時が決められているのになぜこの状況? しかも、いつものことながら、すこぶる感じが悪いのです。まるで、犯罪者を追いやるような人の整理の仕方にウンザリでした。

 しかし、長時間を要したものの、その日は、書類を提出し、「新しいカードができたら、SNSで連絡します。」と言われて、とりあえずの仮のカードをもらいました。

 その仮のカードの期間が6ヶ月間と異様に長かった時に、嫌な予感はしましたが、まあ、さぞかし、手続きをする人が溜まっているのだろう・・さすがに6ヶ月もあれば、大丈夫だろう・・くらいに思っていたのが甘かったのです。

 私の仮のカードの期限は今年の1月5日までで、なかなか連絡が来ないと思ってはいましたが、この間には、再び、2回目のロックダウンまで挟まったので、また遅れているのだろうと思っていました。

 しかし、この仮のカードの期限の1ヶ月前になっても連絡が来ない状態に、さすがに、私は、焦り始めました。12月は、クリスマス、年末年始と、ただでさえ働かないお役所は、ますます働かなくなり、機能が著しく低下するからです。

 それからは、何回電話しても、「サイトでアクセスしてください!」と言われて、ガチャンと切られ、何回メールを送っても、何の返答もありません。

 これはどうにもならない!と、役所宛に書留で手紙を送りましたが、それでも返事はないままに、とうとう年を越してしまい、ついに期限が切れてしまいました。

 今回は、仮のカードの期限が多少切れても大丈夫・・などという確認も取れない状態で、電話もダメ、メールもダメ、手紙もダメで、全く、アクセス不能です。

 直接、出向いても、予約以外は受け付けないと言われることは承知していましたが、周囲の人に相談しても、「とにかく、直接、行ってみるしかないよ!」と言われて、入れてもらえなかった時は、せめて、渡して来ようと、一度、提出した書類を再び全て、揃えて、手紙も添えた一揃えを持って役所にも再び出向きましたが、役所前には、警官が立ちはだかり、どうしても入れてもらえません。

 警備の警官の方も自分の言われた「予約のない人を入れない」という仕事をしているだけなので、彼らには、それ以外の人を通す権限もありません。

 せめて、受付に用意した手紙と書類を置いてこようと、受付だけにでも行かせて欲しいと頼んでも、受付さえも、コロナ対策のために閉鎖されているとのこと。持って行った書類を渡してくることさえできませんでした。

 このままでは、私は、不法滞在者です。

 絶望的な気持ちで私は、家に帰り、フランス人に相談すると、この種のトラブルの相談に乗ってくれる機関に問い合わせてくれました。

 その機関は、すぐにメールに返信をしてくれて、すぐに弁護士を紹介してくれました。こうなったら、法に訴えるしかないということです。彼女もフランス人だけあって、「満足に働かない役所の人のために、絶対に引き下がってはいけない!諦めちゃいけない!」と落ち込んでいる私を励ましてくれました。

 彼女は、他の色々なケースも調べ上げ、滞在許可証の申請、更新手続きに関して、多くのトラブルが起こっていること、そのためのデモまで起こっていることを教えてくれました。

 しかし、どれだけ多くのトラブルが起こっていようと、それが許容できるものでも、安心できることでもありません。

 年末年始にかけて、いくらこちらが問い合わせても、アクセス不能の状態に、私は、不安が募り、「こんな思いをするくらいなら、もう日本に帰ろうか? いや、滞在許可証がないならば、帰るしかないのではないか?」などと鬱々と夜もよく眠れない日々でした。

 そして、弁護士に送る書類も手紙も全て揃えて、明日には送る・・と思っていた時に、まるで、何事もなかったように、役所から、「あなたの滞在許可証は、すでにできています。このナンバーでサイトで予約をとって、225ユーロの収入印紙とこれまでの滞在許可証、仮のカードを持って、取りに来てください」とメールが入りました。

 全く、何というタイミングなのだろうか? このタイミングで、12月に私が送った手紙を彼らがようやく目にしたということなのでしょうか? 朗報ではありましたが、どうにも狐につままれたような、俄には信じがたい気持ちでした。

 そして、昨日、滞在許可証の受け取りに行くと、あいも変わらず、役所の前には、凄い行列、予約は、人が溜まる前の朝一番に入れたのに、長い行列に怒声を浴びせる警官。

 もうここ一ヶ月のことで、疑心暗鬼になっていた私は、カードを受け取って、しっかり内容を確認するまでは、安心できないと緊張していました。

 しかし、中に入ると、さすがに朝一のこと、大して待たされることなく、あっさりカードを受け取りました。記載されている内容に誤りがあったら、この場ですぐに言わなければ・・と思っていた私は、カードの内容もその場でチェックしてまたビックリ!特別に申請したわけでもないのに、カードは、CARTE RESIDENT PERMANENT(永住)になっていました。

 別に文句をつけることでもないので、そのまま受け取りましたが、この永住になった経緯はよくわかりません。調べてみると、10年の滞在許可証を2回以上更新した場合は申請可能だとなっているのですが、特にそのための申請をしなくても自動的に変更されることは知りませんでした。

 とはいえ、10年後の書き換えがないわけではなく、これは、フランス人のIDの書き換えも15年に一度はしなくてはならないので、同じと言えば、同じです。

 私が何度となく送ったメールにも、手紙にも、結局のところ、返事はないままに、突然の「カードができてます」のメールでおしまい。ここ数ヶ月のゴタゴタは、何だか責任の所在がわからないままに、まるで何もなかったように消えていきます。

 結局のところ、カードの更新は済んだので、良いと言えば良いのですが、役所の不備が全くなかったことのようになってしまうこの状態。

 問題が表面化しないのですから、改善されることは、なさそうです。


<関連>「やっぱりウンザリする10年に一度の滞在許可証の更新」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/07/blog-post_7.html