フランスのマクロン大統領は、レバノンのベイルートの湾岸倉庫で起こった爆発事故(現在のところ事故と見られている)から48時間も経たない混乱状態のレバノンを訪問しました。
衝撃的な爆発事故による国民のショックは、すでに、潜在的に彼らの中にあった腐敗しているレバノン政府に向けての怒りに変わっていました。爆発の被害に遭い、崩壊した街を歩くマクロンの元には、このご時世には、考えられない群衆が押し寄せていました。
映像を見ると、マクロン大統領は、レバノンの大統領だった??と思うほどに、群衆は、英語やフランス語で、自国の政治の腐敗をマクロンに訴え、叫び、これが、なぜ、自国の大統領ではなく、マクロン大統領が怒りをぶつけられているのか?と嫉妬のような感情が沸きました。フランス人でもない私がおかしな話です。
この爆発事故が起こる前から、レバノンは、一部の政治的な特権階級が支配する金融危機の状態にあり、この事故がそれに拍車をかける形になり、人口のほぼ45%が貧困線以下の状態での生活を強いられていると考えられています。国内の政治家には絶望(というよりも怒り)している彼らは、レバノンとは、一番ゆかりの深いフランスに救いを求めているのです。
「レバノン政府は腐敗しており、もはや国民を保護していません。誰も私たちのことを考えていない!何故なの?」とマクロン大統領に詰め寄り、英語で激しい怒りをぶつける女性に彼は、英語で答え、優しく抱きしめたのでした。
また、「フランスに求めているのは、援助ではなく政治的な行動なのです!」と訴える人に対しては、「私は、フランス人で、レバノン人ではない。これから大統領に新しい内閣に改造することを提案しますが、この国は、あなた方の国です。フランスが政権に関わることは、別の混乱を起こすことになります」と一貫した姿勢を崩すことはありませんでした。
夜になって行われた記者会見では、興奮気味の現地のジャーナリストから、同じ質問が重なる状況に対しても、「フランスは、決してレバノンを見捨てることはありません。そして、破壊された首都の通りで遭遇した苦痛の中でレバノン人からの助けの要請に応えて、政治階級の悪しき習慣を変えるよう奨励する」ことを述べ、「新しい政治協定」の確立を確実にすることを宣言し、同時に、それが成功するかどうかは、レバノン人次第であると主張し、9月1日には、再び、レバノンを訪問することを約束しました。
9月1日といえば、フランスも新年度の始まりの日でもあります。今のフランスのコロナウィルスの感染状況は、ここ数日、一日の新規感染者が、1600人を超えており、7月末に1000人を超えて驚いていた状況から考えるとものすごい増加の仕方です。
このままだと新年度を迎えるに当たって、正常な学校再開は難しいかもしれません。フランス国内でさえも、決して穏やかな状況ではありません。昨日もフランス・南西部・ル・アーブルでは、銀行に人質をとって立てこもるという物騒な事件なども起こっています。
フランス国内での問題も堆積する中、レバノンの援助にも乗り出したマクロン大統領。フランス国内には、このマクロン大統領のレバノン訪問を自己アピールのワンマンショーのようで下品だとする人もいます。
他国の大統領に対して叫ぶように英語やフランス語(外国語)で訴えかけるレバノン国民の必死さと、あくまでも援助をすることは約束しつつも、レバノン人自身が変えていかなければならないと訴えかけるマクロン大統領のブレない姿勢から、フランスとレバノンの関係性が垣間見えるこの訪問は、とても印象的でした。
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