2021年10月22日金曜日

日本のテレビ・情報番組の視聴者からの質問捏造問題を見て感じたこと

 

 

 日本の大手テレビ局の情報・報道番組が視聴者から寄せられた質問を捏造していたことが話題になっていて、さもありなんな話だと思いました。

 この場合、番組が取り上げたい問題に関して、「視聴者から寄せられた質問」として、あたかも視聴者の多くが同じ疑問を抱いているかの如く扱うから、こういったありもしない質問を捏造することに繋がるのであって、恐らく、その方が説得力があると報道する側が考えており、演出の一つの方法で、また、そのようなことが常態化していることから起こるわけで、取り上げたい問題に対して、率直に報道すれば問題はないものの、妙な話だとも思います。

 また、これがなぜ公に暴露されてしまったのかは語られていませんが、内部にこのようなやり方に疑問を持っていた人がいたということでしょうか?

 しかし、私は、ここのところ、何回か、日本のテレビ局の報道番組から、インタビューを依頼されたことがあり、その際に感じたことから、その程度のことは、当然、あるのだろうな・・という感じがしたのです。

 私がご依頼を受けたのは、最近では、ほぼ、フランスのコロナウィルス感染対策や現状についてのテーマが多いのですが、お話を伺って、実際に話が進んでいくうちに、大抵、インタビューをする以前から、シナリオは決まっており、悪い言い方をすれば、局側の言わせたいことをなんとか言わせようとする・・そんな感じを受けたことがあるからです。

 日頃から、私はフランスの生の声、現実を日本の方々にも知っていただきたいと思ってブログを書いているので、日本の方々にそれをテレビというもっと大きなメディアで知って頂けるのは大切なことだと思い、ご協力させていただきたいと思ったのです。

 実際の放送は、フランスからは見ることはできませんが、当然、編集されるであろうインタビューは気になり、友人に頼んで録画したものを送ってもらったり、たまたまYouTubeなどで、ライブ放送されていたりすると見ることができるので、実際に放送された内容も拝見しています。

 しかし、それは、実際のインタビューで話した内容から、都合よく編集されていることがわかります。長いインタビューでも、数分にカットされることは当然のこととして承知していますが、切り取られた部分のあまりの偏りに、少々、憤慨したのです。

 番組ですから、ある程度の仮設やシナリオは必要だとは思いますが、これでは、現地の声としてインタビューまでして、報道する意味があるのだろうか?と思ってしまいます。

 つまり、フランスの現地からの声ということで、そのシナリオに都合の良い部分だけを切り取って証言者にされているわけです。

 例えば、フランスのヘルスパスの問題なども、私はかなり好意的に受け止めており、インタビューの内容の大部分は「ヘルスパスの制度は良かった・・このおかげでワクチン接種も大幅に拡大し、感染減少に繋がって、安心して日常生活を送ることができるようになった」ということを話したのですが、実際に報道されたのは、否定的な面ばかりで、やはり、伝えたいことはブログで・・と思わないわけにはいきませんでした。

 どの局も同じというわけではありませんが、こんな経験をしたことから、今回の「視聴者からの質問捏造事件」の話を聞いても、そんなことは朝飯前だろうし、謝罪をしたからと言って、基本的な報道の体制は変わらないだろう・・と思ってしまうのです。

 考えてみれば、「視聴者からの質問」というやり方も、「現地在住の日本人の証言」も演出のひとつであることに変わりはありません。

 今回の問題は、たまたま公になった氷山の一角に過ぎず、そのような報道の方法を考えるとフランスにだってないとは言えないかもしれないし、なんとなく、報道というものを疑ってかからなければならないと思ってしまうのです。

 情報過多の世の中、やはり、多くのニュースや報道を自分自身で見て、何が真実で、自分はどう考えるのかを見つめていかなければならないのだと私は強く思うのです。


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2021年10月21日木曜日

今、パリで人気のうどん屋さん 喜心 Kisin

   

一番人気の天ぷらうどん うどんと天ぷらは別皿盛り


 パリで人気の日本食屋さんといえば、恐らく軒数でいえば、圧倒的にお寿司屋さんだと思いますが、あまりにお寿司は広まり過ぎて、中国人経営のチェーン店展開のような、なんちゃってお寿司のお店が大半を占め、もはやお寿司は珍しくもなくなり、むしろ日本人の視点から見ると、本物のお寿司屋さんを見つけるのが難しくなりました。

 次に人気なのは、ここ数年で人気を不動のものにしたラーメン屋さんで、その拡大ぶり、人気ぶりは目を見張るものがあります。どのラーメン屋さんも食事時には必ず行列ができ、お店によっては、ちょっとこれがパリ?と思うほどの行列ができています。

 そして、その中に、ちらほら姿を現し始めたのが「うどん屋さん」で、恐らく、パリに最初のうどん屋さんができて久しいですが、国虎屋、十兵(Jubey)、浪花-YA、など、どれも、日本食屋さんが立ち並ぶパリ1区のオペラ界隈・サンタンヌ通り近辺に集中していました。

 中でも私のお気に入りは国虎屋さんで、うどんの本場四国のうどんが美味で、出汁も天ぷらなども、恐らく日本にあるうどん屋さんにも全く引けを取らないクォリティーで、何回か通ったことがありました。(ただし、お値段は若干高めです)

 そして、最近、周囲の友人やSNSなどで大絶賛されているうどん屋さんがあり、ぜひ、行ってみたいと思い、足を運んで見たのです。

  


 喜心(Kisin)というそのお店は、日本食レストラン街(パリ1区)とはちょっと離れたパリ8区、シャンゼリゼからそう遠くない場所にあり、ミシュランにも掲載されている名店です。

 九州産の小麦粉を100%使用しているという手打ちの麺は、喉越しも良く、こしもあり、透明な出汁は、軟水で北海道産の昆布と築地和田久の鰹節を使用して取られており、一口、口にすれば、化学調味料などは一切使われていない丁寧な出汁であることがすぐにわかります。

 透明でさっぱりしていながらも、しっかりした味わいが感じられる出汁です。

 

店内にはうどんを手打ちしている様子の写真が展示されている

  


 こじんまりとした店内は30席ほどですが、店内装飾なども華美ではないものの、しっとりとした日本を感じられるもので、使われている食器などからも、このお店の配慮が行き届いていることが、そのひとつひとつに感じられます。

  

うどんがつかみやすいように切り込みが入れられたお箸

 例えば、お箸も割り箸などは使用しておらずに、お箸が得意ではないフランス人への配慮からか、お箸の先にはうどんがつかみやすいような切り込みが入っており、うどんが入っている器も表面は小さめながら、底が深めでたっぷり入るわりには場所を取らず、冷めにくい配慮が感じられます。

 提供されているメニューひとつひとつに加えて、細部にわたる配慮、全てにお店の本気度が伝わってきます。

 


 一番人気は天ぷらうどんのようでしたが、天ぷらもさっくりカラッと揚がっていて、うどんとは別皿に天つゆ、大根おろし(鬼おろし)と生姜が添えられています。天ぷらもたっぷり、種類に富み、えびが2本とオクラ、かぼちゃ、モロッコインゲン、紫いも、ズッキーニ、マッシュルームなどが盛られており、メニューにはサラダかお漬物(カブや人参、きゅうり、枝豆など)が混ぜられた酢飯のご飯か白米が選べるようになっています。

 サラダのドレッシングもお醤油ベースのゆず風味です。

 店内に入ってすぐにカレーうどんの注文が入っていたのか、店内にスパイシーなカレーの香りが漂っており、一緒に行った娘はお店に行く前から「胡麻坦々うどん」を食べる!と決めていたにもかかわらず、カレーの誘惑に負けてカレーうどんを注文しました。

 しかも、それに加えて揚げ餅入りという炭水化物の揚げ物トッピングという魅惑的なメニュー(牛カレー揚げ餅うどん)を楽しみました。カレーはさほど辛さはありませんが、(フランス人は辛いものが苦手)、充分にスパイスの香りがたち、手打ちうどんともよく絡む絶品。

 


 その上、サイドメニューを酢飯のご飯という炭水化物オンパレードのラインナップでしたが、不思議と(恐ろしくもありますが)ツルツルッと、軽々と彼女の胃の腑に消えていきました。

 これでお値段もカレーうどん(揚げ餅・チーズが選べる)が19ユーロ、天ぷらうどんが20ユーロとクォリティーと内容・量のわりにはお手頃で、人気の理由が伺えます。

   

  

 ラーメン屋さんにしても、うどん屋さんにしても、いつも行くと思うのですが、麺をすするという文化のないフランス人が器用に音を立てずに麺類を食べる様子も、そして、けっこうお箸を上手に使う人が多いのも日本人としては、嬉しい光景でもあります。

 もちろん、ナイフやフォーク(隣の人はナイフとフォークで天ぷらを切りながら食べていました)なども用意されており、頼めば出してくれます。

 しかし、フランスは、もともと小麦粉文化の国、うどんがフランス人に受け入れられないわけはありません。

 日頃から美味しいものがあれば、すっ飛んでいって食べてみたいという衝動に駆られる私ですが、今回のこの「喜心」は、そんな数々のお店の中でも大ビンゴでした!

 お持ち帰りメニューもありましたが、思い止まりました。

 



パリ うどん 喜心 Kisin


⭐️喜心(Kisin)   月曜〜土曜11:45~14:30, 19:00~23:00 日曜・祭日閉店

7-9 Rue de Pnthieu 75008 Paris

メトロ ①⑨番線Franklin D.Roosvelt  ⑨番線 Saint-Philippe-du-Roule




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2021年10月20日水曜日

ミスフランス運営会社・番組制作会社へフランスフェミニズム団体が訴訟状提出

   



 1920年にモーリス・ド・ワレフによって「フランスで最も美しい女性」というタイトルで始まった「ミスフランス」は、世界で最も歴史のある美を競うコンテストの一つです。

 1987年からは、この決勝戦の模様がテレビで生放送されており、芸術、スポーツ、メディアのパーソナリティで構成される審査員の投票によって、優勝者が選出され、この者には、その年の「ミスフランス」のタイトルが付けられます。

 ミスフランスの候補者は、まずフランス本土と海外の地域の代表に選ばれる必要があります。この中からさらに、スタイル、シルエット、スピーチ、行動、および一般的な文化的な教養についてのテストなどに従って、参加している地域のミスの中から15人のミスを事前に選択します。

 その他、審査基準には、相当数の項目があります。

 まず、フランス国籍であること。その年の11月1日の時点で18歳から24歳であること。独身であること(結婚歴がないこと)。身長170㎝以上であること。犯罪歴のないこと。整形手術をしていないこと。

 また、NG事項は、その他にも、刺青、公の場での喫煙行為、宗教的な宣伝性などなど、詳細にわたっています。

 今回のミスフランス選出にあたって、主催者の要求する基準を満たしていないために大会への参加を諦めなければならなかったと主張する3人の女性が、フェミニスト団体とともに、ミスフランス運営会社と番組制作会社を提訴しました。

 彼女(彼)らの申し出によれば、「美しさを代表する」ためのミスフランス選考の募集基準は差別的であり、フェミニスト団体によれば、この性差別的なコンクールは労働法に違反しており、この番組のプログラムは、「労働者の権利を無視しながら、女性を使って儲けようとするものである」と主張しています。

 このフェミニスト団体は、あえて私たちがフェミニストであるかどうかではなく、女性の権利を行使することを求め、具体的に「公の場での喫煙を禁止したり、目立つ刺青やピアスの着用についてのこれらの差別的な条項を規則から削除すること」などを求めています。

 しかし、今回の争点はコンテスト開催者・番組製作者とコンテスト参加者の間に雇用契約に関してと、これに労働法が適用されるものであるかどうかというところにあります。

 そもそもコンテストという誰かを選出する場面で、選考基準は必要不可欠のものであると思われますが、提訴している側からの言い分では、その基準は、現代社会の基準には即しておらず、その栄誉を勝ち取る機会を公平に与えられていないというものです。

 「コンテストへの参加は仕事の提供につながり、差別条項が含まれたミスフランスによって課された規制による、このポストへの応募の可否は雇用における差別に相当する」と言っているのです。

 一方、コンテスト開催側は、「これはコンテストであり、労働法に準拠するものではなく、一種のゲームでもあり、それに規則は存在する」と反論しています。

 多くの国民が一種のお祭りのように楽しんで見ているこの「ミスフランス」にでさえも、またまた登場するフランス人お得意の「権利の主張」。

 訴訟問題とは縁遠い感のあるこの催しに水をさされた感は否めませんが、この問題浮上で今年の「ミスフランス」は例年以上に注目される結果となりそうです。

 今年のミスフランスのコンテストは12月11日に開催される予定です。

ミスフランス


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2021年10月19日火曜日

ナイトクラブでのコロナウィルス感染状況の実験に希望者殺到

 


 17日、パリではANRS(Agence National de recherches sur le sida et les hépatites virales・エイズとウイルス性肝炎に関する国立研究機関)の支援により、AP-HP(Assistance Publique Hôpitaux de Paris)がパリの2ヶ所のナイトクラブ・ディスコでのコロナウィルス感染状況の実験を行いました。

 すでにナイトクラブは、ヘルスパスの提示義務ならびに通常の75%入場者制限という感染対策のもとに再開されることが許可されていますが、この閉鎖空間でのリスクがどの程度リスクを伴うものであるのか、また、この制限の緩和の可能性を検証する実験です。

 つまり、この実験は、閉鎖された場所でワクチン接種された者同士の間で、どの程度の感染のリスクがあるかどうかを科学的に証明するものです。

 以前に同様の実験がコンサート会場で行われたことがありましたが、今回はさらに、リスクが高く危険視されている場所・ナイトクラブでの実験です。

 この実験には、18歳から49歳までの2回のワクチン接種済みの2,200人が午後4時から11時という時間帯に参加しましたが、すでに、さらなる開放を待ちきれない若者たちでこの実験への参加をめぐって抽選が必要になるほどの希望者が集まりました。

 実験の行われたナイトクラブでは、あくまでも通常の状況に近い形で営業され、あえてマスクは着用せず、ソーシャルディスタンスを取ることもありません。コロナ以前のような環境でダンスフロアでは抱き合って踊る人、フロアからそう遠くないソファでは、ドリンクを飲み楽しみます。

 参加者は、到着時に唾液のサンプルを提出し、このサンプルは一週間後に提出する必要のある別のサンプルと比較されます。そして、ナイトクラブ内には3つの空気センサーが設置され、参加者のウィルスと空中のウィルスを照合し、クラブ内で人々が感染しているかどうかを検証します。

 同時に実験はナイトクラブでの実験に参加したグループとともに、ナイトクラブには行かなかったグループにも協力を求め、2つのグループ間で感染した人々の症例数を比較することになっています。

 この実験の主催者は、実験に臨むにあたり、「ワクチン接種を受けた人々の間では、ナイトクラブのような閉鎖され、過密な場所は危険因子はない」という仮説をたてています。

 残念ながら、この結果が明らかになるのは年末ということですが、この実験の結果が良好で、ナイトクラブでの感染のリスクが高くない場合は、現在のナイトクラブ営業の制限の見直しが可能になります。

 この実験を開催した研究者たちは、「この研究は政府と専門家に、最良の状態でのナイトクラブの長期的な営業を確実にするための科学的手段に基づいた具体的な要素を提供できるものになる」と保証しています。

 しかしながら、現在のフランスの感染状況は、ナイトクラブはさておいても、これまで減少を続けてきた感染者数が僅かずつではありますが、上昇傾向に転じている状態で、どうにも楽観的には考えづらい状況にあります。

 以前にナイトクラブの営業が許可されてまもない7月の段階でボルドーのナイトクラブでクラスターが発生したこともありました。あの時点から比べるとワクチン接種率は相当、上昇しているので、やはりワクチン接種がどの程度、このナイトクラブという閉鎖で密な空間においてもどの程度の効果があるものかということがこの実験により解明されます。

 それでも、少しでも日常を取り戻すために、科学的な検証を続けることは、具体的かつ現実的な対策を取ることが可能になり、ひたすら制限ばかりの環境で我慢をするよりは、どちらの結果になったとしても、皆が納得できるものになると思われます。

 しかし、この実験に参加したい人を抽選で選ばなければならないほど希望者がいるとは、そちらの方が私にとっては、驚きでもあったのです。


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2021年10月18日月曜日

意外に注目されないフランスのマスタードの魅力

   

マイーユのラベルを彷彿とさせる黒を基調とした洒落た店構え


 我が家のフランス人の夫は、なぜかマヨネーズを目の敵のようにしています。まぁ、体型上、ダイエットの敵であることは、言うまでもありませんが、それにしても・・と思うほど、なぜか敵視しています。

 私自身はマヨネーズは大好きなのですが、フランスのマヨネーズは概して酸味が足りず、今ひとつこれ!というマヨネーズがなく、どうにか辿り着いたマヨネーズはマスタード風味のマヨネーズ(Mayonnaise à la moutarde)というものでした。

 体型を気にしてマヨネーズを使わないにしては、他の食べ物(チーズやバターなどなど)の食べ方を見ていると、非常に矛盾を感じるのですが、食事をする上であまり必要を感じていない上にそんなものでカロリーを摂取することが許せないのかも知れません。

 その代わりと言ってはなんですが、彼はマスタードを非常に良く使います。肉や魚にはもちろんのこと、茹で野菜などにも欠かすことはありません。

 そんな彼と暮らし始めた頃は、食卓には必ずマスタードが置かれ、何にでもマスタードをつけるのを見て、「この人、変わってるな〜」くらいに思っていたのですが、よくよくフランスでの生活に慣れていくと、ビストロやカフェなどの食事の際には、マスタードが登場することがとても多く、フランス人にとって、マスタードは日本のお醤油やお味噌などのような国民的な存在であることに気付かされました。

  

フランスのスーパーのマスタードコーナー

 そうしてマスタードを食する機会が増えてみると、マスタードというものは、なかなかに味わい深いもので、日本のからしとも違い、独特な風味と酸味があり、なるほど色々な食材に合わせることができる優れた調味料であるとも言えます。

 あらためて、スーパーマーケットなどでマスタードのコーナーを見ても、そこには、膨大な種類のマスタードがあり、また国民食でもあるだけあって、比較的、安価でもあります。

 フランス人のマスタードの年間消費量は一人当たり、年間1キロとも言われ、やはりその人気・・というより彼らの食生活に根付いている底力を窺い知る事ができます。

 また、フランス料理を作る時などにも、マスタードは重用され、簡単に済ませたければ、マスタードに生クリームを加えるだけで、簡単なフランス料理のソースらしくなります。

 個人的には、エシャロットのみじん切りをバターで炒め、マスタードと生クリームを混ぜてちょっとブランデーを垂らしたりしたマスタードソースが気に入っていますが、これを手間を省いて、一気に他の食材と合わせてしまいます。

       


 私が特に気に入っているのは、フライパンにバターを敷いて、フライパンの半分で帆立貝をソテーし、残りの半分でみじん切りにしたエシャロットを炒めて、マスタードと生クリームをエシャロットと合わせて、ひと煮立ちしたら、サッと帆立貝と合わせて、ブランデーを垂らして香りづけをするという簡単で美味しい一品です。

 これは、他の肉や魚などにも応用することができ、なんちゃってフランス料理には、やはりマスタードは欠かせない存在でもあります。また、シチューなどの煮込み料理にも隠し味にマスタードを少し加えます。

 またサラダのドレッシングを作るときにもマスタードは欠かせません。シンプルにオリーブオイルとマスタード、お酢を泡立て器で混ぜ、塩・胡椒で味を整え、我が家の場合はそれにちょっとガーリックパウダーやすりおろした玉ねぎを加えます。シンプルで簡単ですが、飽きの来ない安定の美味しさです。

 恐らく、日本で一番有名なフランスのマスタードはマイーユのものではないかと思われますが、このマイーユのマスタードでさえ、フランスのスーパーマーケットでは、シンプルなものなら、一瓶2ユーロ前後=200円程度で買うことができるので、日本へのお土産としても悪くないかも知れません。(日本では高いみたい・・)

 中でも私のお気に入りは、バルサミコ入りのマスタードですが、他にもトリュフ入りのものやハーブを使ったものやパルメザンを使ったもの、蜂蜜、胡椒など様々なフレーバーのものがあります。

  

その場でマスタードを瓶に詰めてくれます


 マイーユの専門店はパリのマドレーヌ広場の一角にありますが、ここではすでに瓶詰めされたたくさんの種類のマスタードの他、マヨネーズ、ドレッシング、ピクルスなども買うことができますが、せっかくマイーユのお店に行くなら、瓶を買って、その場でマスタードを瓶詰めにしてもらうこともできるので、他では手に入らないものなので、おススメです。

 こうして考えてみると、マスタードはいつの間にか我が家の食卓にもしっかり定着しているもので、年間1キロとまではいかないものの、かなりの量を消費していることは明らかです。

 日本には、他に美味しい調味料がたくさんあり、マスタードは、日本の食卓には登場しないかも知れませんが、ひとたびマスタードの魅力に気付いたら、なかなか奥深い調味料の一つでもあります。

 フランスにいらっしゃる機会があれば、お食事の際は、ぜひ、マスタードに注目してみれば、その魅力に取り憑かれるかもしれません。


<Maille Paris>  6 Place de la Madeleine 75008 Paris


フランスのマスタード


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2021年10月17日日曜日

黄色いベスト運動シーズン2 黄色いベスト運動再開の動き

   


 フランスで黄色いベスト運動(Gilets Jaunes)が始まったのは、2018年11月のことでした。そもそもは、燃料税の増税に端を発したデモであったために、車に関連する蛍光色のベスト(フランスでは車内に蛍光色のベストを常備することが法律で義務付けられています)が安価で入手が容易であるために、この抗議運動のシンボルとして選ばれ、以来、燃料税のみならず、「生活費の高騰」、「政府の税制改革による中産階級への圧迫」、「富裕層に対する連帯税の再導入」さらには、「マクロン大統領の辞任」までもを要求するデモに発展しています。

 2018年に始まった黄色いベスト運動は、度を重ねるごとに過熱していき、街を破壊する行為が続き、一時は土曜日はまともな日常生活が送ることができないほどに、土曜日になるとデモの予定ルートになっている通りの店舗は破壊行動を恐れて、土曜日にはショーウィンドーにバリケードを張って閉店することを余儀なくされ、この黄色いベストのために、観光客も激減、経済状態に影響を及ぼすほどにヒートアップしていました。

 これはかなり長い期間続き、第二次世界大戦以後に起こったフランスのデモの中でも最も長い期間に渡るものと言われています。

 この黄色いベストがストップしたのは、2020年3月のロックダウンで、(ロックダウンになる寸前までデモは続いていました)国民はデモどころか、外出もままならなくなり、黄色いベストどころではない状況がデモを鎮めさせたのでした。

 その後、感染が少しずつ減少し、最初のロックダウンが解除されると、様々な外出制限は残っていた段階から、また別の問題が浮上し、「人種差別問題」、「グローバルセキュリティー法反対」、「年金改革反対」、「ヘルスパス反対」などのデモが途切れることなく行われ続けていましたが、2018年の黄色いベスト運動でのデモ隊の暴徒化を教訓に政府のデモに対する警戒と対策は非常に強いものになり、当時のような被害には及ぶことはありませんでした。

 本来?の「黄色いベスト運動」のデモ隊は、この3年間は、この間に行われていたデモに乗っかる形でちらほらと姿を見せる程度でした。

 しかし、3年後の現在、燃料価格の上昇から、「黄色いベスト・シーズン2(#GiletsjauneSaison2)」として、再び、デモ隊を集結する動きが高まり始めています。

 燃料価格の高騰は、フランスだけではないものの、現在、フランスのガソリン価格は1リットル1.63ユーロ(約215円)という史上最高値に達し、この「黄色いベスト・シーズン2」の再集結呼びかけの引き金になっています。

 このパンデミックにより、経済的に痛手を被った中産階級の怒りは、この3年間の間にさらに膨れ上がり、燃料価格の高騰があらゆる物価の高騰に繋がり、ここ数ヶ月の間にガスや電気の価格も相次いで上昇し、これに伴う商品の値上げも続いています。

 この底知れない国民の燻った怒りに対して、政府は国民に対する援助メカニズムへの扉は閉ざさないことを示し、政府のスポークスマン・ガブリエル・アタル氏は、「燃料価格の上昇が続く場合は、ガスと電気の場合と同様に(ガス・電気料金の上昇に伴い、これらの減税措置を行った)保護措置を検討する」と発表しました。

 「黄色いベスト運動シーズン2」を呼びかけている人々は、「黄色いベスト運動スタートから3年、我々は、新たな長期間にわたる活動を計画しており、必要に応じて、100週間は継続する。私たちは全く疲れてはいない」と、政府が広範囲にわたる社会改革を開始し、「市民への権力」を回復することを期待していると語っています。

 燃料価格の高騰はパンデミックが原因の一端となっているのですが、その肝心なパンデミックさえも終息していない段階で、再び、黄色いベスト運動の再開は感染対策な観点からも、経済的な観点からも、抑えなければならない火種です。

 フランス人にとって、デモは息をするのと同じようなもので、一種の発散の場、時にはレクリエーションではないかと思われる節もあるのですが、過熱すれば、興奮を抑えられない人々。なんとか、政府の対応でこの火種を燻っているうちに消火してくれることを切に願っています。


黄色いベスト運動シーズン2


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2021年10月16日土曜日

3回目のワクチンを拒否するとヘルスパスが無効になるかもしれない

 


 ヘルスパスの適用から一気にワクチン接種率が上昇したフランス。このおかげで、現在、感染状況も落ち着きを見せ、日常生活を取り戻しつつも安定した状況を保っています。

 しかし、1日の新規感染者数は5,000人前後から下がることはなく、引き続きウィルスが確実に存在し続けていることを示しています。そんなフランスの次なる課題は、2回目のワクチン接種から6ヶ月経過すると、その効果が減少することが多くの専門家の研究で明らかにされている今、3回目のワクチン接種をどのように浸透させていくかにあるようです。

 現在のところ、フランスでは、9月から、2回目のワクチン接種が終了して6ヶ月以上経過した65歳以上の人(特に80歳以上を優先)、重症化のリスクの高い人(腎不全、糖尿病、肥満、癌患者、心不全、高血圧、慢性肝疾患、脳卒中、重度の免疫不全などの病歴のある人)に対しては、3回目のワクチン接種が推奨され、すでに開始されています。

 今後、2回のワクチン接種後6ヶ月後に急激に効果が減少し始めると言われている現象がどの程度、感染状況、また、感染悪化の状況に影響してくるかは未知の部分であるために、3回目のワクチン接種をどうやって拡大していくか、また、どの程度、必要性があるかを国民に納得させていくのは容易なことではありません。

 先日、労働相のエリザベット・ボルネがインタビューを受け、「最近の研究ではコロナウィルスに対する免疫がワクチン2回目の投与から6ヶ月後に低下することが示されています。」「したがって、3回目の投与を行うことは絶対に必要です。」と述べています。

 また、この必要性に伴い、「3回目のワクチン接種を拒否した場合は、それ以前のヘルスパスの撤回を検討している」「これは現段階では決定事項ではないものの、あくまでもフランス国民を保護するための重要な検討事項」と述べています。

 「今日、私たちが幸いにも恩恵を受けているワクチンによる保護を継続させることは必要不可欠である」としています。

 「ヘルスパス」の起用の発表も、かなり衝撃的で、強硬的なもので、当初は少なからず反発もありましたが、結果が伴ってきたために、今では国民の大半はこの「ヘルスパス」を受け入れています。

 それが「3回目のワクチン接種をしなければ、これまでのヘルスパスが無効になる」というのもまた、なかなか強硬な手段で反発を生みそうな気もします。

 しかし、これまでヘルスパスによって、ある程度、保護された空間であった場所が、6ヶ月以上経過したワクチンの効果が薄れてきている人も同じ空間にいるということは、ヘルスパスの意味をなさなくなってしまうことになります。

 ヘルスパスの起用は国民をワクチン接種に追い立てる目的とともに、人の集う空間を少しでも保護された場所に保ち、相互に人々を保護する役割も果たしてきたのです。それが6ヶ月以上経過し、ワクチンによる保護が薄れてきた人が混ざってしまうのでは、ヘルスパスの意味がなくなってしまうのです。

 結局、ヘルスパスにより、国民を保護し続けることを考えれば、少々、残酷な気もしますが、6ヶ月以降経過したヘルスパスは無効とするというのは至極、真っ当なことなのかもしれません。

 数度にわたるロックダウン(完全ロックダウンからレストランや店舗の営業停止、外出行動範囲、時間制限など)やヘルスパス、医療従事者のワクチン接種義務化など、フランスはこれまで、感染対策に関しては、かなり強硬な手段を取り続けてきました。

 しかし、フランスは、かなり強硬な手段を取らなければ、統制の取れない国であることは、これまでの感染の経緯を見ても明らかで、彼らは危機管理能力、衛生観念、感染対策の基本的な能力が極めて低い上に、ある程度の個人個人の良識に頼ることが可能な日本と違って、自主的な自粛などはあり得ない話で、強硬的な規則がなければ、感染を抑えることは不可能なのです。

 2回のワクチン接種率が上昇したことを喜んでばかりはおられず、今度は、このワクチン接種の効力が薄れ始めていく対応をしていかなければならないのです。これを放置すれば、また、ふりだしに戻り、さらなる混乱が生じます。

 依然として、コロナウィルス対応は綱渡り状態です。

 ようやく落ち着き始めたと思ったら、今度は3回目のワクチン接種問題とそれに伴うヘルスパス問題。コロナウィルスが完全に終息するか、さらに長期に効力が持続するワクチンができない限り、永遠にこれが続くと思うとうんざりしますが、これも致し方ありません。

 私は2回目のワクチン接種が終了したのが、6月の初めだったので、このままでいくと、3回目のワクチン接種は12月になりそうです。


3回目のワクチン接種 ヘルスパス無効


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