2022年10月3日月曜日

フランスに来て、ペンキ塗りも楽しくなりました


 今の家に引っ越してきて、考えてみれば、そろそろ20年近くが経って、家の中の、あちこちに綻びが見え始め、ここのところ、メンテナンスを心がけています。我が家のアパートは賃貸なので、そもそも備え付けのものは、自分で修理せずにも管理人さんに頼めば、修理の人を寄越してくれたり、交換してくれたりするので、ここのところ、軒並み、トイレの修理を頼んだり、お風呂の湯沸かし器用のバロン(給湯器)を交換してもらったりしました。

 家の中もいつの間にか煤けた感じにもなり、壁紙が剥がれてきてしまったり、猫がガリガリ壁紙で爪とぎをしてしまったり、汚れてきたのが気になり、壁紙を剥がして、ペンキ塗りをするのが最近のマイブームになっています。

 そもそも、パンデミックのロックダウン中に始めたペンキ塗り(ロックダウン中に、外出せずにできること、この際、ペンキ塗りや家の修繕をするという人も多かったために、この手のお店は、ロックダウン中でも営業許可が下りていたお店の一つでもありました)でした。

 家の中にいる時間が増えると、家の中の汚れがやたら気になり始めます。

 以前は、仕事や子供の送り迎えなどで、ほとんど家にいる時間がなく、家の中のことなど、あまり気にならなかったし、1日でもいいから、一度ゆっくり家にいてみたい・・これでは猫のために家賃を払っているみたいだ・・と冗談が出るほどでした。

 しかし、家にいる時間が増えると、それなりに家の中で快適に過ごせるようにしたいと思うものです。

 生活しているスペースでのペンキ塗りは、家具などをどかして、壁紙を剥がして、壁を一旦きれいにしてからやらなければならないので、どちらかというと、ペンキ塗りそのものよりも、その下準備の方が大変なくらいです。

 日本に住んでいたら、決して自分でペンキ塗りするなどという発想はまるでなかったと思うのですが、フランス人はわりと自分の家の手入れ(DIY)(日曜大工)を自分でするのが普通なので、私もなんとなく、ペンキ塗りをすることに、そんなに違和感を感じなくなっていました。

 カステックス前首相が首相を交代した時のインタビューで、「首相を辞めたら、まず何をしますか?」と聞かれて、「ペンキ塗りをしなきゃいけないところがあって・・」と答えていたのを聞いて、普通の人の生活に戻るんだな・・となんか、微笑ましい感じがした気がしました。

 しかし、この間、日本にいる友人と電話で話をしていて、何気なく、「今、ペンキ塗りしていて・・」と言ったら、「えっ??ペンキ塗り?自分でやるの?」と驚かれて、今さらながら、「そういえば、私も日本にいたら、絶対、自分でこんなことはやらないかも?・・」と思ったのです。

 日本でも、そういうことが好きな人はいるとは思いますが、私は決してそういうタイプの人間ではありませんでした。

 しかし、一度、始めてみると、なかなか楽しくもあり、その部屋にある家具などのトーンに合わせた色のペンキを選びに行きます。Leroy Merlin(ルロワメルラン)などのホームセンター(パリ市内にもある)をたまには覗いてみるのも楽しいです。フランスなのに、けっこう便利そうなものが誕生していて、びっくりすることもあります。

 ペンキの色の選択は難しく、実際に塗ってみると、見本の色と違う感じになることもありますが、それはそれで、また仕上がりが楽しみで、出来上がった時には、妙な達成感があります。

 これまでにキッチン、キッチンのテーブル、玄関、娘の部屋などのペンキ塗りが完成し、現在、お風呂場に手をつけたところです。

 こうなってくると、とにかく全部の部屋を制覇したい・・とにかく、どっか塗りたい衝動にかられてきます。

 業者に頼めば、簡単に済む話でもある気もしますが、見ず知らずの他人にあまり家に入ってほしくないこともあり、また、頼んだところで、予約した日時にちゃんと人が来てくれるとも限らないので、そんなことでまたイラつくぐらいなら、自分で好きな時に好きなペースでやる方が都合もよく、また、音楽でも聴きながら、そんな作業を黙々とやるのもなかなか楽しいもので、最近のマイブームにもなっています。

 フランスに来てから学んだ「便利なことばかりが幸せじゃない・・」そんなことをペンキ塗りを楽しみながら思ったりもするのです。


ペンキ塗り DIY 日曜大工


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2022年10月2日日曜日

カマイユ(Camaïeu)倒産に見るカマイユとユニクロ パリの微妙な比較

  


 フランスの服飾メーカー カマイユ(Camaïeu)は設立から38年。惜しまれながら、先週末でその幕を閉じ、フランス国内の512店舗全てが閉店しました。

 カマイユ(Camaïeu)は、1984年に設立し、比較的低価格設定で、需要に応じて供給を調整する手法で、10年間であっという間に200店舗を抱えるフランスの人気ブランドの一つに成長しました。

 急成長の途中、子供服、メンズにも手を広げますが、危機に直面して、これらは撤退。

 2000年の時点でヨーロッパにも出店を始め、国際展開にも乗り出し、ネットワークを広げてロシアや中東のパートナーとも協定を結び、特にハンガリー攻略に乗り出します。

 2015年には、15カ国で展開し、フランス国内の約650店舗を含め、合計900店舗以上にまで拡大しています。その後、2017年には、フランスの繊維小売業が、メルキュールインターナショナルグループと提携したことを機に、フランチャイズモデルでカメルーンに1号店をオープン。

 この後、2018年にガボン、チュニジア、セネガル、カメルーンとアフリカで5店舗を出店します。しかし、結果的に力を入れるべきは店舗数を増やすことではなく、ネット販売への移行へ投資する時期だったのです。

 そして2020年、パンデミックの影響で長期間、店舗は営業できずに大打撃を被り、この期間に海外の仕入れ業者が物流がストップして、カマイユが支払いをしてくれないと騒いでいるのがニュースになっているのを見かけたりしていました。

 とはいえ、我が家も結構、お世話になりました。低価格で、デザインがシンプルで、色がきれいなTシャツとか、セーターとか、娘が中学・高校生くらいの頃なので、10年くらい前になるでしょうか? 近所のショッピングセンターにお店が入っていたこともあり、カラフルな色のグラデーションをきれいに飾った店内に目を惹かれて、また、微妙な色合いのものなどもあったりして、ずいぶん買い物をした気がします。

 しかし、値段が値段なので、文句は言えませんが、生地のクォリティはそれほど良いとも言えず、長く着れるものではなかったかもしれません。そもそも成長期の子供なので、その程度でも充分でもあったのです。

 その頃は、カマイユが店舗数を急拡大していた頃で、いく先々で、こんなところにまでカマイユあるの?と思った気がして、一時、オペラ通りにもあってびっくりしたのを覚えています。

 パリのオペラ通りというのは、このようなお店にとっては、なかなか微妙な通りで、有名な大通りではあるものの、その知名度ほどには、華やかさはなく、これといったお店もたいしてなく、実は店舗の入れ替わりの激しい通りでもあります。

 今から振り返れば、カマイユが店舗数を拡大中は、実はカマイユが傾き始める時期とも重なり、またパリにユニクロが浸透していく時期とも重なっているのは偶然だろうか?とも思います。

 ユニクロのヒートテックがパリでも大人気になり始めた頃、カマイユにも低価格のヒートテックまがいのものがたくさん並ぶようになりましたが、ユニクロとて、日本よりは高いとはいえ、そもそもそんなに高価なものでもありません。

 カマイユに比べて、ユニクロの製品のクォリティはしっかりしていて、間違いがないという信頼をユニクロはパリでも積み重ねていき、今から思い返すと、この頃、パリでやたらとユニクロの紙袋を持っている人をたくさん見かけるようになっていったような気がします。

 もともと締まり屋のフランス人。シンプルなデザインのものであったなら、少々、値段が高くても(カマイユよりも)、品質が確かで長く着ることができるユニクロの方がいいと考えるのではないか?と思うのです。

 けっこう、人気だったはずのカマイユの倒産には、様々な経営戦略(海外展開など)の失敗が重なった上にパンデミックによるロックダウン中の営業停止、その間にネットショッピングが急速に普及したことなど色々、原因はあると思いますが、ユニクロの存在も関係があるような気がしています。

 こういった低価格帯のお店が姿を消していく中、エルメスやディオールなどの高級ブランドは、私にとっては美術館のような存在ですが、桁がいくつも違う価格帯、このインフレもネットもなんのそのの勢いで、店頭には行列、店内でも飛ぶように商品が売れる繁盛ぶり。

 なんだかモヤモヤしないでもありません。


カマイユ(Camaïeu)倒産 ユニクロ


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2022年10月1日土曜日

プーチン大統領のウクライナ領土併合宣言の演説

  


 クレムリンの神々しい大きな黄金の扉から、二人の兵士が大きなアクションで扉を開ける派手な演出の中、プーチン大統領が行った演説は再び世界中を騒がせ、フランスでも大騒ぎしています。

 プーチン大統領は、その荘厳な演出とはうらはらに何やらせかせかと壇上にあがり、せっかく、こんな派手な演出をするならば、堂々と威厳のある感じで登場してもよさそうなものに・・と思いながら、私は演説の中継を見ていました。

 今回の彼の演説は、投票が行われる前から多くの国々がパロディだとか、とんだ茶番劇だと言っているドネツク、ルハンスク、ケルソン、ザポリージャでのロシアへの統合に関する住民投票が行われた時点で予想されていたシナリオどおりで、最初にウクライナに侵攻を始めると発表した時のような驚きはありませんでしたが、この演説が再び、周囲の国々からの制裁を強くし、連帯させ、ウクライナへの援助が追加されることになることは、予想がつくはずのことでした。

 プーチン大統領は、この投票の結果を圧倒的多数でこの4地域をロシアに併合することになったと語り、併合地域の4人の代表者と共に、これらの地域がロシアに加盟することを正式に表明する加盟協定に署名した。彼は「国民投票により、何百万人もの人々の意思に疑いの余地がない選択がなされた」と述べ、「ドネツク、ルハンスク、ケルソン、ザポリージアの住民は我々の市民であり、永遠に我々の市民だ ロシアはあらゆる手段で国土を守る」と宣言しました。

 このウクライナ領土4地域併合の公式発表直後、プーチン大統領はウクライナに対して「すべての軍事行動を停止」し、「交渉のテーブルにつく」ことを要求し「キエフは今日、国民の自由な選択を尊重して考慮しなければならない」とウクライナに「停戦」を求める一方で、プーチン大統領は、南部と東部の4地域の併合問題を今後の交渉で取り上げることを拒否するとも断言し、それが「平和に向かう」道への「基礎段階」であると主張しました。

 相変わらず、身勝手自分本位の主張のみです。

 しかし、ウクライナへの停戦呼びかけについて以外は、演説のほとんどは、欧米、特にアメリカを非難する内容のもので、あらためて、この戦争の根源がプーチン大統領の欧米を敵対視する過去のソ連への幻想に取り憑かれているものであることを感じさせました。

 「ワシントンはロシアに対して、「全世界を略奪」し、ロシアを「植民地」にするという「新植民地主義的なドルの独裁を維持」するために戦いを挑んでいる」、ウクライナの同盟国である欧州連合やバルト諸国は、米国の金で動く「奴隷」である」という過激で極端な論法は、逆に欧米を煽っているような気さえしてしまいますが、これは、ウクライナや欧米に向けられたもの以上にロシア国民に向けた、はったりや洗脳である気もしています。

 また、ロシアのガスをヨーロッパに輸送するために建設されたガスパイプライン、ノルドストリーム1および2に大規模な漏れを引き起こした爆発の背後に欧米がいると非難しました。ウクライナ侵攻の最初からの言い逃れと同じ方法で自分でやっておいて、相手の仕業にする戦法?です。

 「あらゆる手段で国土を守る」と述べることで核兵器使用を匂わせつつ、「アメリカは広島と長崎に原爆を落とし、核兵器使用の前例を作った」と自国の領土を守るために核兵器を使用する正当性を持たせるような発言に、アメリカも大激怒。

 これに対して、バイデン大統領は、プーチン大統領演説の直後に「アメリカと同盟国はNATOの領土を隅々まで守る用意がある」「アメリカと同盟国は脅かされることはない」と警告に加え、この派手な式典はクレムリンの指導者の強さを示すための「見せかけ」であり、逆に「彼が窮地に立たされている」ことを物語っている、と述べています。

 一時は、プーチン大統領とも、ほぼ毎日のように電話会談を行っていたマクロン大統領もEUの議長国の任期が切れたこともあるのか、最近はパッタリと彼との電話会談も減りました。しかし、この演説には、他国同様、「ロシアによるウクライナのドネツク、ルハンスク、ザポリジャ、ケルソンの各州の違法な併合を強く非難する。これは国際法およびウクライナの主権に対する重大な侵害である。フランスはこれに反対し、ロシアの侵略に立ち向かい、全領土に対する完全な主権を回復するためにウクライナの側に立つ」と声明を発表しています。

 ウクライナだけでなく、アメリカ、欧州連合、G7、NATOと全てを敵に回し、ロシアが困っている状況なのは、明白で、30万人を部分的動員にと発表したとたんに、国民からも再び反発をくらって、ロシアから出国しようとする人が20万人を超えていると言われる中、必死の抵抗なのかもしれません。

 しかし、プーチン大統領が「いかなる手段を持ってしても守る」のは、ロシアの領土であり、国民ではないことは、突然、動員されて戦禍の盾に使われようとしている国民にも伝わり始め、その国民の士気を高めるため、そして、ウクライナの攻撃を停止させるのが、一番の目的なのだと思います。

 まことに理解し難い言動ばかりのプーチン大統領ですが、この先のシナリオをどう考えているのか?全然、読めませんが、この戦争がこのまま歳を越してしまうのは必須な感じがしてきました。


プーチン大統領演説 ウクライナ領土併合


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2022年9月30日金曜日

定年退職年齢延長反対と賃上げ労働条件改善のデモ・ストライキ

  


 マクロン大統領が、「誰もがもっと長く働かなければならない」として、法定退職年齢の引き上げや、年金の拠出期間を43年に延長することを提案したことから、フランスでは、大規模なデモが巻き起ころうとしています。

 29日には、パリだけでも少なくとも4万人が集結し、この定年退職年齢引き上げと賃上げ・労働条件改善を訴えるためのデモを行いました。フランス全土では、少なくとも200ヶ所で25万人を動員したなかなか大規模な動きです。

 現行ではフランスでは、法定退職年齢は62歳と定められていますが、これを2023年には62歳4ヶ月、2024年には62歳8ヶ月、2025年には63歳、そして最終的に2031年には65歳にまで延長する計画です。

 これには、おまけがついていて、定年退職年齢より1年早く退職すれば、年金支給額からマイナス5%、1年長く継続すればプラス5%とペナルティーとボーナスの両方が提示されています。

 しかし、考えてみれば、どちらにしてもそのプラス・マイナスの基準となる年齢が引き上げられる以上、これまでの見積り?どおりに退職しようものなら、マイナスにされてしまうわけで、年金支給額をプラスにしようと思うならば、これまでよりももっともっと働かなければなりません。

 年金の計算はフランス人の趣味なのか?と思うほど、年金についてはシビアなフランス人。

 以前の職場にも退職を数年後に控えた同僚などは、暇さえあれば年金の計算をああでもないこうでもない・・と話している様子を私は冷ややかな目で眺めていました。(今さら、計算したところで変わらないでしょ・・っと思って・・)

 しかし、これくらいフランス人は年金を受け取れる日を心待ちにしており、今は亡きフランス人の夫も初めて年金の書類が届いた時には(まだまだ定年退職はず〜っと先のことだったにもかかわらず)ものすごく喜んでいたのを、これまた、ちょっとしらけた気分で見ていました。結局は彼は年金をもらう年齢になる前に亡くなってしまったので、彼が亡くなった時には、「あんなに年金、楽しみにしていたのに・・」と、思ってしまいました。

 もともと夏のバカンス明けには行われる予定だったデモ・ストライキは、前例のないインフレ(8月は5.9%増)に直面して賃上げを求める当初のスローガンに、この定年延長・年金問題が加わり、さらにヒートアップしています。

 インフレだ、節電だと不安定な情勢の中、ただでさえストレスフルでイラつくことの多い現在、だからこそということもあるのでしょうが、このうえ定年退職年齢延長、「もっともっと働け!」と言われて、黙って引き下がるフランス人ではありません。

 今回の定年延長問題には、すべての全国労働組合組織(CFDT、CGT、FO、CFTC、CFE-CGC、FSU、Solidaires、Unsa)が動員をかけており、SNCF(フランス国鉄)やRATP(パリ交通公団)などの公共交通機関をはじめ、教職員組合なども部分的に抗議活動に参加し、ストライキも起こっています。

 「賃上げ要求!」「定年延長反対!」などとともに、「人生を無駄にして稼ぐのはやめよう!」というプラカードには、「長く仕事をし続けるのは人生の無駄・・そんな年齢まで働いていては、人生を楽しめない!」というフランス人の本質も見えて、なるほど・・と思いました。

 自分自身については、もともとフランスで仕事を始めた年齢が遅く、年金の拠出期間を43年間などと言われては、超高齢になるまで働かなければならないため、もともと問題外の話です。

 日本にしても、フランスにしても年金についての制度はどんどん変わり、どちらにしてもいいようには絶対に変わりようがないので、思い悩むのもバカらしく、別の手段を考えるようにしています。

 しかし、この問題、政府スポークスマンのオリヴィエ・ヴェランは、年金について「この改革は、大統領プログラム全体を発展させるために不可欠だ!」と強気に語っていますが、さっそく野党からの反発も強く、「年金支出は2027年までGDPの14%未満にとどまる。2021年には、わが国の年金制度は9億ユーロの黒字になることさえある!」などと言われて、過半数割れしている政権が押し通すことができるかどうか、節電で暖房も控えなければならない冬が熱いことになるかもしれません。

 パンデミック前まで長きに渡り続いていた「黄色いベスト運動」のように、フランスのデモは経済活動の妨げになるケースにまで発展する危険があり、今後、どのように国民と政府が戦っていくのかが注目されます。

 しかし、「人生を無駄にして稼ぐのはやめよう!」とは、さすがフランス人、痺れるな〜〜。


フランス定年退職年齢延長65歳へ


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2022年9月29日木曜日

パリでお気に入りの生ハム屋さん ヴィアンダス デ サラマンカ VIANDAS de SALAMANCA

 


 私は子供の頃から、断然、和食党だったので、特にフランスに来て、食事に期待はしていませんでした。むしろ、パリは日本食材を扱うお店が他の海外都市よりも多いので、そういう面ではありがたいな・・くらいに思っていました。

 しかし、それとて、どこででも簡単に手に入るわけでもなく、最近こそ、普通のスーパーマーケットでも日本食材は少しずつ置かれるようになり、お寿司などはどこのスーパーでも置いてあるようになったものの、そのクォリティーと値段のバランスはどうにも悪すぎて、とても食指がうごくものではありません。

 となると、日ごろ簡単に手に入るものの中で美味しいものを探し出すわけで、フランスで美味しいと再確認したのは、パンとバター・チーズ、チョコレート、ケーキ・・、そしてもう一つが生ハムです。

 生ハムは、日本でも食べたことはありましたが、私にとっては、あまり身近な食品でもなく、それほど価値を見出してもいませんでした。

 しかし、フランスに来て以来、目醒めてしまったのが生ハムで、シャルキュトリー(Charcuterie)と呼ばれるソーセージ、ハム、サラミ、パテ、テリーヌなどが食文化の大きな位置を占めるフランスで、このシャルキュトリーの中で私が最も魅せられたのは生ハムだったのです。

 普通のスーパーマーケットにも生ハムはたくさん置いてありますが、一旦、深みに入り出すとより美味しい生ハムを求め始めるのです。

 そして、その結果、現在のところ、私のお気に入りの生ハム屋さんは、サンジェルマンデプレにあるヴィアンダス デ サラマンカ VIANDAS de SALAMANCAというお店で、正確に言えば、これはフランスのお店ではなく、スペインの生ハム屋さんなのですが、ここは生ハム好きにとっては至福のスペース。



 お店の外からも見えるショーケースには、生ハムをふんだんに使ったサンドイッチに興奮させられ、店内に入ると、生ハムの原木が壁一面に広がる絶景が・・。

 


 もちろん、その場で切ってもらって買ってくることもできますが、あらかじめ切ってあって、真空パックになったものもたくさん並んでいます。

 嬉しいのはお店のお兄さんがとても親切で、いろいろ質問すれば、なんでも教えてくれることで、これは、普通生ハム用の豚ちゃんは、2歳の豚ちゃんで、それからの熟成期間が2年から2年半、3年ものがあるそうで、また豚の種類もイベリコ豚とイベリコ豚と他品種とのハーフ?もの・・なんていうのもあるそうで、また餌もベジョータ(どんぐり)を食べて育った豚ちゃんとそうでないもの、機械でスライスしたもの、手でスライスしたもの・・それぞれに全て値段も違います。

 


 午前中の比較的早い時間に行くと、準備中で食べ比べをさせてくれることもあります。色々あるグレードの中で、一体、どの程度違うものなのか? 一つ一つの生ハムについて、聞きながら、美味しいとはいえ、なかなかなお値段の生ハムに少しでも安くても美味しいものがいい!と思って、一番安いパックに「これは?」と聞いたら、「あぁ〜それは、サンドイッチ用だから・・」と軽くいなされ、「その言い方は、まるでサンドイッチ用は正規要員?として認められていないみたいじゃない!サンドイッチも十分に美味しいのに・・」と思ったのですが、試食させてもらってみると、幸か不幸か、明らかに味わいは格段に違い、これだけ違えば、やっぱり美味しいのが欲しい・・と納得させられてしまうのでした。

 高級食材にもかかわらず、このお店で他にお客さんがいなかったことはなく、何やら興奮気味にやってきたマダムが「もう、ここに来ると、全部欲しくなっちゃうわね〜」と言いながら、私のようにウダウダ悩むこともなく、「これとこれと、あれね・・」と言いながら、ポンポン買い物をしていくのも、場所柄かな?と思ったりもします。

 


 私もそんなに頻繁にここで買い物をしているわけではありませんが、しかし、近くに行けば、やっぱり覗きたくなってしまうお店なのです。

 ここの生ハムを買って来たときには、十分に味わうために、あらかじめ冷蔵庫から出して常温にしてお皿にならべ、集中して味わいます。風味、味わい、なめらかな舌触りともに最高で、あぶら身の部分でさえも決して捨てられない(むしろ、脂がおいしくて感動する)感動に包まれます。思わず目を瞑って、うっとりと味わってしまいます。

 ちなみにこの間、このお店に行った時もいろいろ生ハム話を聞いたあと、ちなみにここで一番高級な生ハムの原木は?と聞いてみたら、36ヶ月もののイベリコ豚(ベジョータ)で、1本1,000ユーロだそうです。

 1,000ユーロ・・と聞くと、まずは日本行きのチケット料金を思い浮かべる私ですが、「なるほど、今だったら、日本に1回行くよりずっと安いな・・」と思ってしまったのでした。

 

店頭にいる目印の豚ちゃん

⭐️VIANDAS de SALAMANCA   150 Blvd. Saint Germain 75006 Paris            


ヴィアンダス デ サラマンカ VIANDAS de SALAMANCA


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2022年9月28日水曜日

体調不良で一気にダウン・・インフルエンザかコロナか? まずはコロナの検査から・・

 

薬局内の一角にある小部屋の検査用スペース


 先週は、日本にいる娘がコロナウィルスに感染して、高熱が出たり、咳が止まらなかったすると聞いて、心配な1週間を過ごし、いざという時には、日本にかけつけようか?などと、私にしては珍しく、毎日、娘に電話をして、安否?の確認をしたりしていました。

 しかし、まあ、幸いにも彼女は順調に回復し、その間、東京都からの食糧支援物資などを送ってもらったり、何より、隣に住んでいる私の従姉妹が食事をピンポンダッシュのように届けてくれたりしてくれたようで、まだ全快とはいかないまでも、無事に隔離期間を終了し、ヤレヤレ・・どうやら、私が日本に出向くまでもないな・・と安心したところでした。

 それが、今朝、起きたらどうにも具合が悪い私、明らかに熱があり、頭も痛くて、全身がだるく、身体のふしぶしが痛くて、一気に病人になっていました。 我が家には、娘が料理用体温計・・などというわけのわからない温度計すらなく、ただひたすら横になっていたのです。

 具合が悪い時は、たとえ、横になっていたとしても、どうにも身の置き場のない感じがするもので、朦朧としながら、うとうとしていたのです。

 え〜〜??と思いましたが、仕方がない・・とりあえず、ドリプラン(フランスで最も一般的な解熱・鎮痛剤)を飲み、ビタミンCのタブレットを口に放り込んで、ひとまず。もう一寝入りすることに・・。

 数時間後に再び目覚めて、それでも、全く良くなった感じはなく、しかし、ふと、もしかしたら、これはコロナかもしれないと思い至りました。まさか日本にいる娘から感染するはずもありませんが、このところ、フランスも感染者数は上昇傾向・・まさか・・と思いましたが、体調が悪いのに出かけるのも辛いのですが、もし感染していたら、私がここ数日会った人に連絡しなければいけない・・と思い、重い身体を引きずって、隣の薬局へ。

 せめて、薬局が家のすぐ近くにあり、検査をすぐにしてくれることは救いです。

 フランスでは、現在もワクチン接種の証明書と国民健康保険のカードがあれば、予約なしに無料で検査をしてくれます。パンデミック以来、コロナの検査を受けるのは、4〜5回目くらいでしょうか?これまで陽性になったことは一度もありません。

 私は7月の段階で2回目のブースター接種をしているとはいえ、感染する可能性もありえるので、検査をしてもらいました。

 検査は数分で済み、15分後には、うやうやしく検査結果の証明書が携帯に送られて来ます。かなり正式な書面で、こんなのいちいち必要?と思いましたが、まあ良いです。

 検査をしてくれた薬剤師の人に「症状はあるの?いつから具合悪いの?」などと聞かれて、「今朝から・・」と答えると、もしかしたら、検査するのは、タイミング的にちょっと早いかもしれないから、数日経ってもまだ具合が悪いようだったら、もう一回検査をした方がいいかもしれないですよ!」と言われて、とりあえず、家に戻って結果を待つことに・・。

 以前に検査を受けた時には、感染者追跡アプリに「あなたは感染者と接触しています。すぐに検査してください」というメッセージがきて、検査をしたので、別に自分が具合が悪かったわけではありません。

 結果が送られて来て、その結果を見るのもけっこうセキュリティが頑丈で、別途送られてくるパスワードを入力しなければ、見れずに慌てている私にはもどかしい気持ちでした。

 結果は陰性で、ひとまず、ホッとしたものの、これが続けばまた検査か・・とちょっとウンザリしました。

 コロナではなく、インフルエンザなのかもしれませんが、もう少し時間が経たないとわかりません。

 先月に、インフルエンザのワクチン接種の招待状が来ていて、去年、ワクチンを打って、結構そのあとにしんどい思いをしたので、ちょっと躊躇っていた矢先のことです。

 年々、体力には自信がなくなっていますが、ここで、ガンと釘をさされた気分です。

 それにしても、今後も体調を崩すたびに、「えっ?もしかしたら、コロナかも?」と疑わなければならない時がまだまだ続くのかと思うとちょっとウンザリします。


コロナウィルス感染 インフルエンザ


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2022年9月27日火曜日

ドクターストップの制度にメスが入る リモート診療でズル休みが増えた

   


 フランスの病欠には、医師のドクターストップの書類があれば、3日間の待機期間を経て(何のための待機期間なのかは不明)4日目からは、病欠の間の日当が国民健康保険から補償されます。

 そのため、有給休暇を無闇にやたらに消化してしまいたくない人は、ズル休みのために、このドクターストップの制度を利用する人もけっこういるようです。

 もちろん、本当に深刻な病気で長期間病欠しなければならない時、また子供が病気の場合などにも子供の看病のためにこのドクターストップの書類を書いてもらうこともできます。特に病欠が長期間に及ぶ時などは、経済的にも生活が脅かされることになるし、無理して子供を置き去りにして仕事に行かなくても済むために、とても優しい人道的な制度でもあります。また、このあたりは、きっちりしていて、この病気のために休んだ日数は年金換算の際の日数からマイナスされないことに規定されています。

 しかし、やたらとこのドクターストップを安売りしている医者もいたりして、このズル休みの常習犯は、この書類を書いてもらうための医者をマークしていたりもします。基本的に雇用者は病名を問いただしてはいけないことになっているので、これはますます増長されてしまいます。

 そして、これが、さらにパンデミック以来、医者にわざわざ出向かなくても済むリモート診療(遠隔診療)が浸透し、また政府も感染対策の一環として、このリモート診療に関しても健康保険で全面的にカバーすることを決定し、このリモート診療が拡大するとともに、このズル休みのためのドクターストップをカバーするための保険申請が爆発的に増加し、昨年には、この金額はほぼ1億ユーロにまで達しています。

 わざわざ出向かなくてもよくなったために、ズル休みのための病欠のための書類を与えてくれる医者を見つけるまで、何度もオンラインで相談する人が増え、主治医(かかりつけの医者)以外が与える病欠申請が爆発的に増加しているのです。

 この現状を受け、政府は、「主治医(かかりつけの医者)以外のリモート診療による病欠申請には、健康保険は適用外になり、補償金は支払われない」ことになり、また、医者のサイドに対しても、「リモート診療が全体の診療の20%を超えてはならない」と規定されることになりました。

 このような弱い立場の人を援助するための社会補償金のような制度には、逆にそれを利用して利益を得ようとする人が登場するのは、ついて回ることではありますが、せっかくのこの社会補償制度、このような詐欺まがいのことをする人のために、制度自体がなくなってしまうことになっては、本末転倒です。

 医者が発行するこの病欠のためのドクターストップの書類だけでなく、医者の書く処方箋の場合は、広範囲で薬が保険適用でカバーされるため、先日は偽の医者の処方箋を作って大量に薬を手に入れて国外に輸出して儲けていたというグループが摘発されています。

 私の場合、もう現在の住まいに引っ越して来て以来、家族ともども歩いて1分のところにいる女医さんのところにかかっていて、リモートよりも気軽に診てもらっていて、もう色々と説明しなくとも、ほぼ自分の体質や既往症や家族構成、仕事などについてもよく知っていてくれるので、絶体の信頼を寄せているので、安心しています。

 専門医にかかるにしても、一度、彼女に診てもらって相談してから行くようにしているくらいです。

 ずいぶん前に、職場で転んで怪我をして足に血栓ができた時など、「そんなに仕事を休めない・・」と焦っていた私に彼女に、「あなた、死にたいの?」と怒られて、1ヶ月間の病欠の書類を書いてもらったことがありました。

 それにしても、もともと1ヶ月は優にバカンスをとるフランス人、それでも足りずにズル休み・・みんながみんなやっていることではありませんが、それにしても、そのための補償の金額が1億ユーロを突破するとは、やっぱり、そんなに少なくはないのかもしれません。


ズル休み ドクターストップ リモート診療 アレットマラディ


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