毎年、フランスの革命記念日に行われるパリ祭のシャンゼリゼで行われる軍事パレードは、ここ数年、パンデミックのために中止はされなかったまでも、縮小されたり、観客なしで行われたり、いつもの規模ではありませんでした。
今年のシャンゼリゼはすっかり通常モードの規模に戻っていました。
シャンゼリゼの沿道の緑の樹々はフランス国旗に彩られ、凱旋門からコンコルド広場までを華やかな制服に身を包んだ兵士や各高等教育機関の学生など、今年は6,300人、64機の航空機、25機のヘリコプター、200頭の騎馬隊、181台の機動車両が2時間近くかけてパレードを行いました。
パレードの比較的前半には、トリコロールの噴煙を流しながら飛行機がシャンゼリゼ上空を飛び、我が家の窓からもトリコロールの噴煙がパリの空を舞っていく様子が見えます。
この数日前にたまたまパリの街を歩いていたら、突如、爆音が聞こえて、驚いて空を眺めたら、このデフィレ(パレード)の予行演習で、結構な低空飛行でその音のもの凄さに驚かされました。
中でも私が最も美しいと思うのは、終盤に登場する騎馬隊で、奥に見える凱旋門を背景にトリコロールのフランス国旗に彩られた沿道の緑の樹々に茶色い馬と紺と赤、ゴールドに光る騎馬隊の調和のとれた洗練された美しさには、いつ見ても感動させられます。
その年によって、登場する戦車、軍用車両(時には警察、消防車両など)は少しずつ違いますが、今年は、遠隔操縦機「リーパー」(空軍機)、陸軍は、新型装甲車「グリフォン」(装甲前面車(VAB)の後継車)と偵察車「ジャガー」を登場させています。
中には、こんな可愛いワンちゃんまで登場しています。
今年のパレードのテーマは「Partager la flamme」(炎の共有)と名付けられ、軍隊と国家のつながり、また現在進行形のウクライナでの戦争におけるヨーロッパの連帯のメッセージも込められ、ポーランド、チェコ、スロバキア、ルーマニア、ブルガリア、ハンガリーの軍隊もパレードを行い、東欧の国々に敬意を表しています。
パレードの最後には、東京オリンピック・パラリンピックのメダリストが登場し、オリンピックの炎を2024年のパリオリンピックへ繋げるという「炎の共有」のオチ?のようなシーンもありました。
華やかで美しい、このパリ祭の軍事パレードはフランス人ではない私にとっても、毎年、楽しみな行事で、ひたすら、その美しさに感動し、これを見るたびに、フランスにいてよかった・・などと思うほどなので、フランス人にとっては、何よりもフランスを誇らしく感じる最も華やかな1日なのではないかと思います。
しかし、今年、ウクライナで戦争が始まって、毎日のように悲惨な戦禍の映像が流され、実戦に使われている戦車や大砲などを目にして、これらの軍事装備は本来は華やかにシャンゼリゼをパレードするものではなく、本来は、悲惨な戦場で使われるものであることを複雑な気持ちで見つめていました。
そもそも、フランスという国の強さをアピールする軍事パレードというものをこの圧倒的な美しさとともに国の誇りとして晴れやかに披露し、多くの人が愛国心を募らせるフランスという国の文化をあらためて、日本とは全く違うものなのだ・・と、これまでと違う見方をした今年のパリ祭でした。
ウクライナ戦争を機に多くの国で国防費を拡大し、軍事力を強化する方向に進んでいます。自分の国は自分の国で守る体制を作らなければならない状況であることはわかりますが、どうか、これが軍事パレードに留まり、実戦に使われることがないように・・と祈りながら見つめたシャンゼリゼのパリ祭の軍事パレードでした。
夜にはエッフェル塔での花火も完全復活、ウクライナカラーになる瞬間もありました。
パリ祭 シャンゼリゼ軍事パレード
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