2020年8月21日金曜日

パリの自転車人口が急激に増えた

 


                           パリの Vélib(ベリブ)貸出自転車


 ほんの数年前までは、フランス人にとって、自転車は、レジャーやスポーツであり、交通手段(移動手段)ではありませんでした。自転車は、街中で乗るものではなく、週末やバカンスの際に車に積んで行って、広々とした自然の中で楽しむものでした。

 街中でも自転車に乗らないわけではありませんでしたが、盗難が酷く、私も買ったばかりのママチャリのような自転車を盗られたことがありました。娘がスイミングの授業にプールに行くのに乗って行って、ちゃんと太い金属製の鎖の鍵をかけていたにも関わらず、ガッチャリ鎖を切られたようで、日中のほんの1〜2時間にも関わらず、彼女がプールから出てきた時には、影も形もなくなっていたのです。

 ですから、フランスの場合、ちょっと自転車で買い物に・・なんて、気楽に自転車で出かけるわけには行かず、よほど、頑丈な鍵をつけておかなければ、買い物が終わって、出てきたら、自転車がない!なんていうことも、充分あり得るので、気安く自転車でお買い物にも行けませんでした。

         


 この写真のように、自転車ごと盗られなくても、タイヤやサドルだけでも盗られてしまうのですから、本当に油断なりません。

 それが、ここ数年、環境問題が叫ばれるようになって、パリには、Vélib(ベリブ)という貸出自転車のシステムができて、パリの多くの場所には、ベリブの自転車が設置され、登録すれば、自分の出発地に近いベリブのステーションから自分の好きな時に自転車を借りて、目的地の近くのベリブのステーションに返すことができるようになって、グッと自転車を使う人が増えました。ベリブなら、盗難の心配をする必要もありません。

 そして、今回のコロナウィルスの感染拡大回避のために公共交通機関を避け、自転車を使って通勤、移動する人がさらに増えました。自転車で通勤する人には、会社が自転車通勤のための援助金を出している場合もあるくらいです。道路にも自転車用の通路が整備され、本当にびっくりするほど、自転車を利用する人が増えました。

 急激に増えた街の中の自転車にちょっとギョッとするほどです。ここ・・パリだよね・・と。

 しかし、ベリブを除けば、個人の自転車は、かなり年期の入った自転車も少なくありません。リュックを背負ったり、ベストを着たり、かなり本格的ないでたちで自転車に乗る人も多いです。そこには、以前のフランス人にとっての自転車のあり方が垣間見える気がします。

  フランス人の車の運転の荒さは有名ですが、自転車用のスペースとはいえ、その自動車とともに車道を走る自転車の事故がないわけはありません。自転車による死亡事故まで起こっています。

 コロナウィルスの感染を避けて、自転車に乗っているのに、自転車事故で亡くなってしまうのは、なんとも皮肉な結果です。

 そういう私も最近は、出来るだけ、バスやメトロの公共交通機関を避けて、かなりの長距離を歩いたり、自転車で移動したりするようになりました。家には、自転車があるので、ベリブは利用せずに、どうにも簡単に切られたりできないほどの強力で重たい鍵を自転車に取り付けて、買い物をしたりする間には、鍵をきっちりとかけています。鍵をかけたり、外したりが面倒で、何軒もはしごして買い物をするのが億劫になる鍵です。

 コロナウィルスを避け、盗難や事故に怯えながら、自転車に乗る生活。健康的ではありますが、どちらにしてもリスク満載な、パリです。


<関連>「パリの盗難被害 パリの泥棒は、なかなか捕まえてもらえない」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/06/blog-post_6.html

「パリで犯罪から身を守る方法は、まず、犯罪の手口を知ること」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/11/blog-post_10.html

2020年8月20日木曜日

フランス人のサッカーへの熱量

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 昨夜の夜のニュースを見ながら、私は、唖然としていました。もはや、意味がわからない、サッカーのチャンピオンシップの試合がポルトガルで行われていて、その試合にフランスのチームが勝利して、決勝進出を決め、サッカーのサポーターがその勝利に酔いしれて、シャンゼリゼを含むパリのいくつかの場所で、何百人もの人々が大騒ぎして、その勝利を喜ぶ人々が街に溢れ出した様子を報道していました。

 彼らの表情には、まるで躊躇いはなく、微塵も後ろめたさも感じられず、まるで、今年は、何事もなかったかのようなはしゃぎようでした。

 テレビのニュースの報道も、興奮に溢れかえる人々を生中継しながらも、「マスクをしていない人がいますね〜」などと時折、言うだけで、人々が興奮して、街に溢れかえる様子に取り立てて、疑問を投げかける様子はありませんでした。

 「ウェ〜イ!ウェ〜イ!」とマスクなどするわけもなく、肩を組みながら跳ね回って、勝利を喜ぶ人々は、当然のことながら、飛沫、飛ばしまくり、シャンゼリゼには、花火まで上がり、発炎筒もあちこちに炊かれ、まるでコロナなどなかったかのような盛り上がりようでした。 

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 私は、この人たちは、ちょっとバカなんじゃないかと思いながら(ちょっとではない)、その映像を呆然と眺めながら、この先、フランスは、どうなっていくのだろうかと、ちょっと言葉がありませんでした。

 なぜ、テレビの報道もこの状態を問題視しないのか? 警察もなぜ?この状態を取り締まらないのか? わけがわかりませんでした。

 一夜明けると、報道も一変して、 「こんなにソーシャルディスタンスも考えず、マスクもせず、大勢の人が騒いでいました・・」みたいに、平然と真逆の報道の仕方をしており、「おまえたちも、昨夜は、普通にサッカーの勝利を讃える報道ばかりしていたではないか?」と、あまりの豹変ぶりにそれはそれで、唖然とさせられるのでした。

 政府も、日曜日に行われる決勝戦に関して、今回のような騒ぎにならないように、シャンゼリゼに関わらず、あらゆる場所での10人以上の人の集まりを禁止する通達を出しました。

 平常時ならば、サッカーの試合で盛り上がって、フランスのチームを応援するのは、楽しく、微笑ましいことですが、今年のような非常時に何もかも忘れたように大勢で集まって熱狂している光景は、本当に理解に苦しみます。

 何もかも忘れて騒ぎたい気持ちはわかりますが、あれほど、何の屈託もなく、大勢でサッカーの勝敗に熱狂する人々に私は、やはり違う血が流れている人たちだと感じずには、いられません。ヨーロッパの人のサッカーへの熱狂ぶりは、恐ろしいものがあります。以前、私がイギリスの障害者施設でスタージュをしていた時に、半身不随で満足に口がきけない若い男の子がいましたが、彼は、サッカーの試合を感染に行って、興奮する観客に巻き込まれての事故で一生、このような障害を追う結果となったと聞いて、びっくりしたことがありました。

 何かに、(サッカーに)熱狂した時の彼らのエネルギーに、私は、ちょっと、桁違いのものを感じるのです。

 来週の日曜日は、チャンピオンシップの決勝戦です。


<関連>「フランス人の熱量」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/01/blog-post_11.html

 



2020年8月19日水曜日

フランス企業 9月1日から社内でのマスク着用義務化 なぜ、9月まで待つのか?

Le port du masque obligatoire dans un centre d\'appel à Favars (Corrèze), en août 2020.


 フランス労働省は、公衆衛生局が観測した現在、増加中の疫学的指標と、公衆衛生高等評議会(HCSP)の勧告に基づき、9月1日から、フランスの企業ではマスクの着用を義務付けることを発表しました。

 現在、フランスで起こっているクラスターの50%以上が会社で起こっていることを考えれば、当然の措置だと思います。むしろ、なぜ?9月1日まで待つのかが疑問なくらいです。

 社内でのマスク着用が義務付けられ、強制的にマスクを着用しなければならない場合は、会社側がマスクを支給しなければなりません。それは、工事現場や工場などでのヘルメットや安全靴の着用が義務付けられているように、雇用主は従業員に適切な安全保護対策を提供する義務があるため、従業員にマスクを提供する義務があるということになります。

 おそらく、9月1日という日付の設定は、そのための会社側の準備期間として猶予期間が設けられたと思われます。

 会社内では、個人のオフィスに一人でいる人を除き、会議室、オープンスペース、廊下、ロッカールーム、カフェなどの全ての共有閉鎖空間でのマスク着用義務を体系化するとしています。

 これに対しては、早くも組合と会社間でのせめぎ合いが始まりそうで、早くも、あまりに強制的なやり方は逆効果、マスク着用によって消耗するので、休憩時間を増やすべき・・などの声と同時に、これに従わない場合に懲戒処分もあり得るなどとの意見も出始めています。

 これを機に、アンチマスクのまたデモやストライキなどの騒ぎになりそうで心配です。

 おそらく、可能な限り、リモートワークにすることが必要だと思われます。

 しかし、現在、会社で多くのクラスターが起こっているということは、現在は、夏休みの学校も、再開すれば、同様の危険が十分考えられるため、一定以上の年齢の学生の集まる学校でも、再開時には、マスクが義務化されることでしょう。

 こんな風に、会社でのマスクの義務化が発表される中、昨日は、フランスのチームがサッカーのチャンピオンリーグの決勝進出が決まったとかで、パリではシャンゼリゼなどで、サポーターたちが大勢集まっての大興奮状態。



 まるで、違う時代の違う世界を見ているような人混みと飛沫飛ばしまくりの熱狂状態に唖然とさせられました。いくら、サッカー観戦の観客数を制限しても、サッカーの勝利の結果がこの状態を生むのであれば、虚しいとしか言いようがありません。いくら、会社や学校でマスクをしても、このようになんだかんだと言っては、集まって騒ぐ一定の人たちがいる限り、フランスの感染は、おさまるはずがありません。

 ちょうど2週間後には、フランスでは新年度が始まります。


<関連>「フランス人の熱量」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/01/blog-post_11.html

 









2020年8月18日火曜日

フランスへの留学を考えている人へ

 


 昨日、日本にいる従姉妹からメッセージが入っていて、彼女の近況とともに、8月末から一年間の予定でフランスに留学する人がいるのだけれど、色々と心配なことがありそうで・・という連絡をもらいました。

 そういえば、これから新年度を迎えるフランスに留学する予定の人、また迷っている人もいると思い、今のフランスへの留学を考えている人へ何か参考になればと思い、できるだけ客観的にフランスの今の状況について書いてみようと思います。

 現在のフランスのコロナウィルスの感染状況は、決して良い状態ではありません。新規感染者数が先週末から3000人以上に増加し、今日の報道では、フランス北東部 Pulnoyという地域にある老人ホームでクラスターが起こり、一週間で一箇所の施設で9名がコロナウィルスのために亡くなっていたことが発覚しています。

 ロックダウン解除後に面会に来ていた家族がマスクを外して入居者に接していたり、ソーシャルディスタンスを十分に取っていなかったことからの感染ではないかと言われていますが、やはり特に高齢者が感染した場合の危険を物語っています。

 中でも、パリを中心とするイル・ド・フランスは、多くの人がバカンスに出ている今でさえ、感染状況がレッドゾーンになっています。その他の地域でもマスク着用が義務付けられている場所が多くあるので、マスク着用は、必須です。

 日本から来られる方には、マスクの着用については、問題はないと思いますが、問題なのは、それでもマスクをしない一定数のフランス人がいることです。マルセイユでは、マスク着用義務化に際して、機動隊を動員することになっています。マスク着用義務化に機動隊まで出動しなければならないということは、どういうことなのかお察し下さい。

 昨日もパリ→ニース行きのTGVの中で、どうしてもマスクを拒否し続けた乗客がTGVから降されたというニュースがありました。そして、マスクをしていない人を注意した人がバットで殴られたとか、襲われたという話もいくつか出ています。最悪の事態は、南仏のバスの運転手が乗客にマスクをするように注意して、暴行を受けて殺された事件も起こっています。

 しかし、今のところ、新規感染者は、かなりの割合で増加してはいますが、感染しても発症していない人が多いため、病院の集中治療室などの状況は、今のところ、深刻な状態にはなっていません。

 現在は、こちらの小中学校の9月の新年度の再開についても、どうやって再開するのか?少しずつ、議論が始まっていますが、今のところ、衛生管理、マスク着用などを考慮して、再開する予定にしているようです。

 衛生管理といっても、常日頃の衛生レベルが日本とは違うので、どこまで徹底できているのかは、疑問ではあります。トイレ一つを取っても、どこへ行ってもウォシュレットがある日本と違って、便座さえないトイレがフランスには、結構あります。今は、衛生管理に気をつけているため、いつもは臭い駅のトイレなども臭いが消えています。

 また、同じパリの中でもお住まいになる地域によって、驚くほど治安は違います。

 色々、驚くことはあるでしょうが、それでも、無事に生活している人がほとんどなので、本人さえ、状況を把握して、それなりの対策を取って対応していけば、暮らしていけるとは思います。私も20年以上、パリで生き延びています。

 そして、コロナウィルスの有無に関わらず、どんな時でも、自分の意思をはっきりと伝えることは、大切です。黙っていても、周りが察してくれるということはないと思った方が良いと思います。自分の意思をはっきりと伝えず、何を考えているのかわからない人は、好まれません。

 逆に、困った時には、遠慮せずに、思い切って頼ってみると、フランス人は意外と親切です。たとえ、意見が違う人と、言い合いになっても、その後は、意外とカラッとしていて、根に持たれることも滅多にありません。

 ・・そんなことを言っている私は、フランスでの留学経験は、ないのですが、フランスは、正規の大学等の留学に対しては、かなり好待遇をしてくれる話をよく聞きます。住宅補助金や健康保険等もしっかり手続きをすれば、受け取ることができるようです。そんな留学生への対応に対して、フランスは、外ヅラが良いと言うフランス人もいます。

 それぞれの立場や受け入れ先の学校によって、状況は違うと思いますので、まずは、受け入れ先の学校へ問い合わせるのが一番だと思いますが、その問い合わせというのが、なかなか、スムーズにすすまないことが多いですが、メール等の文章で、問い合わせれば、少し、時間がかかりますが、メールなら、大抵、返事があります。

 このパンデミックがいつまで続くのかわからない現在では、この状況でできることをしていかなければならないので、必ずしもフランスは、危険だからやめた方がいいとも言えません。後悔のないように、情報を収集して、最後には自分で決断するしかありません。

 しかし、学校によっては、授業が行われない可能性もあるので、事前にしっかりと学校と連絡を取る必要があると思います。もしも、リモートワークしか行われないのであれば、わざわざフランスまで危険を押して来ることはありませんから・・。

 空港でのチェックについては、今のところ、日本は危険地域に指定されていませんので、検査で留め置かれることはありません。

 それから、9月にはすでに複数のデモが予定されています。おそらく、毎週土曜日は、どこかで、必ずデモをやっています。もしも、フランスに来られたならば、日本大使館に在留届を出せば、デモやフランスでの新しい規制などについて、日本語でのお知らせをメールで送ってくれるので、在留届は、必ず出すことをおススメします。

 そういう我が家の娘も10月から、留学の予定になっています。しかし、今のところ、はっきりと予定が決まらず、ペンディングになっています。

 どうするのかは、結局は、自分で考えて決めることなので、私は、できるだけ安全の確保をしながら、彼女には、自分で決断して欲しいと思っています。

 

 ★Twitterでは、フランスのことを中心に発信しております。(関係ないことも多いけど)

 Twitter// @OoieR 


<関連>「フランス(ヨーロッパ)でコロナウィルスが広まる理由」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/03/blog-post_19.html


 

2020年8月17日月曜日

ヨーロッパ各地で起こっているマスク反対(アンチマスク)デモ

Un manifestant contre les mesures anti-virus à Bruxelles ce dimanche


 ヨーロッパでは、コロナウィルスの第2波とも見られる兆候が顕著になってきたことにより、マスク着用が義務付けられたり、ソーシャルディスタンスを取ることを促したりする行動制限の措置を取る国が増えてきました。それにつれて、ヨーロッパ各地では、マスク着用義務化やコロナウィルス対策のための行動制限反対を訴えるデモが起こり始めています。

 ヨーロッパでは、アンチマスク感情が高まっているのです。

 すでにドイツでもマスク反対のデモが起こっていますし、先週末は、ベルギー・ブリュッセルで数百人が集まるアンチマスク、行動制限反対の集会が行われ、スペイン・マドリッドでも首都の中心部にあるコロン広場を飾る巨大なスペインの旗の下に、「自由!」の叫びとともに、ソーシャルネットワークによって動員された群衆が集まりました。

 デモ参加者は、「ウイルスは存在しない!」、「マスクに殺される!」、または「私たちは恐れていない!」と宣言した標識を掲げ、アンチマスク、行動制限反対を訴えています。

 今回のコロナウィルスのパンデミックでは、とりわけ甚大な被害を生んでいるヨーロッパです。現在は、アメリカやブラジルなどの国の被害が目立ちますが、ヨーロッパ全体として括ると16万人近い死者を出しているのです。

 そんな国々の人々がマスクに反対したり、ウィルスは存在しないと言い張ったりしている現状には、全く理解ができません。「私の身体、私の選択で行動する!」「私たちの国でルールを決定するのはウイルス学者や医師ではありません!」など、彼らが掲げている文言は、はっきり言って、めちゃくちゃです。

 それでも勝手にすればいいと言えないのがコロナウィルスの怖いところで、ウィルスは確かに存在しているし、感染の勢いを増しているのです。マスクをしない人だけが感染するわけではないのです。

 ところが、不思議なことに、常日頃は、あれだけデモが大好きなフランスでは、今のところ、アンチマスクのデモは目立って行われてはいないのです。フランスの世論調査では、53%の人がコロナウィルス感染に不安を感じているとの結果が出ていますが、彼らがアンチマスクのデモを起こしていないのは、不安のためにマスクをすることを容認しているからではなく、今のところ、スペインやブリュッセルに比べると、フランスは、そこまで厳しい制限が行われていないこともあると思います。

 しかし、実のところは、現在は、フランス人は、バカンスの真っ最中で、彼らの意識がデモに向かっていないだけだと思います。バカンスが終わって、デモモードにスイッチが入り、アンチマスク感情に火がつけば、私は、フランスでも必ず同じことが起こると思っています。

 以前から、彼らがマスクが嫌いなことは、わかっていましたが、それにしても、彼らのマスク嫌いがここまでとは・・そして、彼らが嫌いなのは、マスクだけでなく、強制されること、行動を制限されることなのです。

 いみじくも、このコロナウィルスとの戦いが始まった時、マクロン大統領は、「我々は、戦争状態にある」と宣言しましたが、まさに、今の状況を見ていると、戦争を知らない私でさえ、国民を統制するために戦時中、上にモノを申すことが絶対的にタブーであった実情を思います。

 戦時中のような統制が正しいとは、全く思いませんが、ウィルスと戦のに国民を統制するために、ヨーロッパはどうすれば良いのでしょうか?

 たかがマスクぐらい、すればいいじゃない?と思うのですが、彼らがアンチマスクや行動制限反対を叫ぶのは、実は、マスクそのものよりも、彼らが培ってきた、ヨーロッパの国境をせめぎあいながら、自分を主張し、自らの道を生きてきた彼らの歴史が背景にある、統制されることへの反抗なのかもしれません。


<関連>「フランス(ヨーロッパ)でコロナウィルスが広まる理由」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/03/blog-post_19.html

 

 



 

2020年8月16日日曜日

とうとう一日の新規感染者が3000人を超えたフランス コロナウィルス第2波

 

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 ここ数日のフランスのコロナウィルスの新規感染者数は、2524人、2669人、2846人と増え続け、とうとう昨日は、3000人の王台を超えて3310人になりました。

 つい、一ヶ月前は、500~600人、せいぜい800人前後であったのが、7月末には、1000人を突破し、8月に入ってもグングン増え続け、とうとう3000人を突破してしまいました。

 7月に入って、ギリギリまでバカンスの予約を躊躇っていたフランス人も、結局は、バカンスを諦めることはせず、行く先を海外から国内に変更したり、公共交通機関を避けて、車での移動に切り替えたりする工夫をしながら、バカンスシーズンに突入しました。

 バカンスシーズンに突入と同時に、各国の経済復興を鑑み、ヨーロッパ内の往来ができるようになりましたが、感染状況が酷いスペインなどには、行かないように呼びかけられたりしていました。

 スペインは、ロックダウン解除後、ヨーロッパの中では、他のヨーロッパの国に比べるとかなり多くの新規感染者を出していましたが、フランスがここへ来て、スペインを追い越しそうな勢いです。

 3000人の壁を超えたのは、いみじくも、本格的に多くのフランス人がバカンスに出るタイミングの8月1日から、ちょうど2週間後のことです。その間も感染が増え続けたため、フランス各地で屋外でもマスク着用が義務化が広がり始めました。

 しかし、マスク着用義務化もフランスでは、なぜか簡単なことではありません。マスク着用義務化の地域が拡大されるたびに、マスクは必要か? どうやって徹底させるか?といったマスク論争が延々と続けられています。折しも先週は、猛暑日が一週間近くも続き、ただでさえマスク嫌いのフランス人にとって、マスク着用は、さらに厳しいものになりました。

 しかし、マスクを付けることが、なぜ、そこまで徹底できないのか、日本人である私には、全く理解ができません。娘に言わせると、マスクをする習慣が全くない人にとっては、大変なことなのだと言います。(彼女はマスクをしていますが・・)

 このタイミングで感染が拡大していることを考えれば、バカンスがフランスの感染拡大の大きな原因になっていることは、明らかですが、もう一つの大きな要因は、「油断」です。

 フランス人の多くは、「まあ、自分たちは、大丈夫だろう・・」と思っているのです。ここへ来て、屋外のマスクの義務化が進む中、会社内でのマスクの義務化をどうするか?という論争になっています。

 一日、8時間以上、マスクをし続けるのは、危険ではないか? 一日中、パソコンの画面に向かって仕事をしているのにマスクは必要ないのではないか? などなど、マスクをしない言い訳を探しています。しかし、そもそも一日中、パソコンに向かっているなら、出社する必要があるのでしょうか? ロックダウン中は、リモートワークが推奨されていた中、ロックダウンが解除になって、リモートワークの割合が減少しています。

 現在は、バカンス期間中ですが、大学生にとっては、一般企業などでのスタージュ(インターンシップ)の期間でもあります。今の状況で、スタージュを受け入れてくれる会社を探すことだけでも大変ですが、実際に、つい先日まで一般企業でスタージュをしていた娘の友人などは、明らかにリモートワークでできる業務内容でありながら、出勤することを余儀なくされていたと言います。社員ではなく、スタージュの学生でさえも出社している・・そんな状況が感染を拡大させる一因となっているのです。

 みんながバカンスに出かけていることで、あたかも安全な状況になっているような錯覚を抱いているのです。少なくとも、マスク問題に関しては、5月11日にロックダウンを解除する時、まだ、コロナウィルスに対して国民がかなりの恐怖心を持っていた時点で、外出の際には、マスク着用を義務化するべきでした。

 その時点から、義務化されていれば、フランス人ももう少し、マスクをすることに慣れていたと思います。

 ロックダウンの2ヶ月間でせっかく減少したコロナウィルスの感染状況が、台無しになりそうな気配です。これまで、スペインが危険だ!とヨーロッパ内ではスペインが避けられていましたが、ここへ来て、イギリスがフランスからの帰国者に対しては、2週間の自宅待機を義務付けることを発表し、フランスに来ていたイギリス人が慌てて帰国し、ユーロスターのチケットが一時、急騰したそうです。

 このような状況でも、フランスでは、コロナウィルスの第2波が来た場合は・・などと話しているのを聞くと、第2波の定義は、何なのか? 今、新規感染者が急増している状態が第2波と言うのではないのか?と疑問に思ってしまいます。

 8月末まであと2週間、現在、フランス国内の中でも、パリとブッシュドローニュ(フランスのプロバンス・アルプ・コートダジュール県)での感染がレッドゾーンとされています。何といっても、人口の多いパリの住民がバカンスから戻って、新年度を迎え、学校も始まり、気温も下がり始めます。

 バカンスに入る前から予定されているデモも9月には、再開されます。

 新規感染者が2000人を超えたのが、一週間前です。一週間で1000人増加は、やはり尋常ではありません。この増加傾向をなんとか抑えないまま9月を迎えれば、大変なことになるのは、必須です。

 

<関連>「猛暑の中の感染拡大・新規感染者2000人超えのフランス」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/08/2000.html

2020年8月15日土曜日

モーリシャス沖合での日本貨物船座礁事故にだんまりを決める日本政府

        


 ここ一週間ほど、フランスでは、インド洋に浮かぶ美しいモーリシャスの沖合が、商船三井が運行する日本の貨物船の挫傷により、重油が流出した事故について、ほぼトップニュースで毎日のように伝えています。

 「WAKASHIO JAPON(ワカシオ・ジャポン)」という言葉が聞こえない日はないほどです。フランスのニュースによると、3800トンの重油と200トンのディーゼルを積んだわかしおは、7月25日にモーリシャスの南東にあるポワントデズニーの海域に座礁し、約800トンの重油が流出し、サンゴ礁、マングローブに覆われるターコイズブルーの海域が真っ黒に汚染され、住民が油膜と戦っている映像が流されています。海の美しさが余計にドス黒く広がる重油の悲惨さを引き立てています。

 この事故をめぐっては、船が座礁してから、一週間以上対策が取られなかったことから、被害が拡大してしまったことも問題視されています。

 モーリシャス共和国の首相は、ツイッターで、フランス国家及びマクロン大統領に支援を求める一方で、「WAKASHIOの沈没は、モーリシャスにとっての重大な危険を及ぼしている」と、環境緊急事態を宣言しました。

 マクロン大統領もモーリシャスからの援助要請に応え、すぐに「モーリシャスの海洋生態系が危機に瀕している現在、緊急な対応が必要です。フランスは、モーリシャスと共にあります。現在、レユニオン島のチームと救援の装備を配備しています。私たちを信頼してください。」とツイートし、実際に、フランスはモーリシャスへの救援活動を開始しています。

 つい先日もレバノンの湾岸倉庫爆発事故で、フランスは、「レバノンを決して見捨てない」とレバノンへも手を差し伸べ、他国と共にレバノンへの援助を開始したばかりです。フランス国内もコロナウィルスの感染が拡大し、大変な経済危機に瀕しているのに、あっちもこっちもと大丈夫か?とも思う反面、頼もしさも感じます。

 船を所有する長鋪汽船は、13日、賠償については、誠意を持って対応すると発表しましたが、実際に長鋪汽船の専門家チーム6名が調査のために現地に到着したのは、事故から3週間後のことでした。

 この「誠意を持って対応する」といういかにも日本らしい曖昧な、まことに誠意が感じられない声明と対応の遅さ。打撃を受けた生態系の回復には、20年かかると言われています。この20年かかると言われている保証は、もはや、一会社単位で賠償できる問題ではありません。

 歴史的な繋がりがあるとはいえ、「モーリシャスと共にいる」と宣言して、即刻、救援行動を起こすマクロン大統領と、関係は薄いとはいえ、加害者である船主会社の国である日本の首相が、まるでだんまりを決め込んでいるのは、どう考えても、情けない限りです。

 だんまりを決め込んで、賠償金を払うだけで、騒ぎがおさまるのを待つつもりかもしれませんが、「だんまり」は、沈黙のもとに、「日本は、こういう国である」ことを世界に発信していることに他なりません。

 日本では、あまり大々的には、報道されていないようですが、世界中では、大きく報道されている事故です。やたらと対面を気にしているのかと思えば、肝心な時に、日本政府が的確な対応ができないことをとても残念に思います。

 「誠意を持って対応する」という船主会社からだけの言葉だけの誠意のなさを、日本は、この事故で世界に発信しています。


<関連>

100年に一度くらいのことが立て続けに起こる年 レバノンでの湾岸倉庫爆発事件」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/08/100.html