いつもと同じの静かな待合室 |
私には、もう20年近く、かかっている近所のかかりつけのお医者様がいて、家族揃って、同じお医者様にお世話になってきたので、娘も小さい時からお世話になっていて、娘の成長の過程も家族の歴史も、その間の病歴なども全て、承知していて下さるので、とても、頼りにしています。
今の地域に引っ越してきたばかりの頃には、近所の他のお医者様にも行ってみたことがあるのですが、結局、小さい頃の娘の希望で(彼女がきれいだから・・という、とても安易な理由でしたが・・)、彼女のところに通うようになりました。
しかし、娘の直感は、正しく、彼女は、いつも冷静で、的確で、ちょっと見たところは、いかにも育ちが良く、賢そうな、上流階級のフランス人という感じで、少し冷たい印象もありますが、予約時間には、きっちり時間を守って見てくれるし、これまで私たちの身に起こった、なかなかの深刻な状況の時でも、冷静に的確に対応してくれていたし、何と言っても、長い付き合いなので、気心が知れていて、良い関係を保っています。
私は、数年前から、いくつかの薬を毎日、飲んでいて、定期的に彼女のところに通って、一応のチェックをしてもらい、3ヶ月分の処方箋を書いてもらっています。その際に、既往症とは、関係ない鎮痛剤や軽い安定剤から胃薬、腰痛に効く塗り薬なども、まとめて処方してもらえるように、家の常備薬のための薬のリストを自分で作って持って行って、処方箋に加えてもらっています。そうすることで、大抵の薬は、保険でカバーされるので、我が家は、滅多に薬屋さんでお金を払うことはありません。(パリ節約術です。)
話は、それましたが、私は、今年の2月に日本に行く予定にしていたので、1月末に彼女のところに行って、いつものように薬を3ヶ月分、処方してもらっていました。
そして、日本から帰ってきたのが、2月末、それから、あれよあれよという間にロックダウンになり、いつも飲んでいる薬が切れてしまいましたが、当時、コロナ以外では、到底、医者にはかかれない状況から、期限切れの処方箋で2ヶ月間は、薬局で、いつもの薬を出してもらえたので、彼女のところにも行くことはありませんでした。
しかし、ロックダウンが解除されて、薬が今週末には、切れてしまうので、約5ヶ月ぶりで、彼女のところに行くことになりました。しかし、付き合いも長い彼女、近況を聞くような電話も迷惑だろうし、どうしているのだろう?と、ずっと思っていました。
けれど、感染がおさまってきたとはいえ、やはり、医者に行くのは、怖い気持ちもあったので、人があまり重ならなそうな、朝一番の時間に予約を入れました。
果たして、待合室で人と出会わすこともなく、物々しく、警戒のテープが貼られたりしていることもなく、いつもと同じの静かな待合室でした。診察室に入ると、すぐにアルコールジェルを使うように言われたことと、彼女がマスクとフェイスシード付きのメガネをしていること以外は、いつもと変わらぬ診察室でした。
このあたりでも、たくさんの感染者が出て、ここにもたくさんのコロナウィルスの患者が来たし、ピーク時には、パリのサンルイ島の病院に応援に行っていたという彼女ですが、自分の診療所に戻った今は、これまで医者にかかれなかった人たちの予約でいっぱいのようで、私の診察中にかかってきた電話にも、「今日は、もう予約がいっぱいいっぱい!今日はもう、5分でさえ、時間は取れないの!急ぎでなければ、別の日にして!」と言って、予約を断っていました。
実際に、コロナウィルスの患者さんとも、たくさん接し、病院での悲惨な状況にも立ち会ってきた彼女は、コロナウィルスの恐ろしさを目の当たりにして、「これから数年は、警戒を怠ってはいけない・・そもそも、中国が早い段階で国をシャットダウンしないから・・」と、いつもは冷静な彼女にしては、珍しく怒りを露わにしていました。
しかし、診察が終わって、処方箋を書いてくれて、私が彼女の診療所を出るのを見送ってくれる時には、いつものエレガントな彼女に戻っていました。
ロックダウンからこれまで、確かに医者にかかれなかった人がたくさんいて、今後、しばらくの間は、彼女は、コロナウィルスの患者同様、それ以外の患者さんの対応に追われることでしょう。コロナ以来、医療従事者に対面したのは、初めてのことでしたが、一瞬、彼女が見せた、怒りの表情が忘れられない一日でした。
何はともあれ、彼女が無事でホッとしました。
<関連>「フランスの医者の大盤振る舞いな薬の処方」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/08/blog-post_67.html