2021年7月23日金曜日

デカトロン(スポーツ用品店)が開始するレンタルサービス

    


 デカトロンは、57ヶ国に2190軒以上の店舗を持つフランスの大手スポーツ用品店で、フランス人では知らない人はいないような、誰もがお世話になったことのあるであろう有名なお店です。

 自転車、キャンプ用品から水着、ダイビング、サッカー、テニス、乗馬、登山、トレーニングウェアなどなど、ありとあらゆるスポーツ用品を扱っているお店は、ここへ行けば、大抵、スポーツに必要なものが揃います。スポーツだけでなく、Tシャツなど、日常から利用できるものなどもかなり扱っています。

 そういう我が家も娘が高校を卒業するまでは、ずいぶんお世話になってきました。

 比較的、値段も手頃で、成長期の子供のスポーツ用品は、どんどんサイズも変わるため、安全でさえあれば、そんなに高価なものは必要ないのです。

 小学校高学年の頃からは、学校のお休みごとにコロニー(サマーキャンプやウィンタースポーツなどなど)でスポーツ三昧だった娘は、学校が休みの前には、必ずデカトロンに行って、必要なものを揃えるのが毎年の恒例行事のようになっていました。

 日頃、学校に履いていく靴の他に、彼女がやっていたスポーツのために、(バレエだけでも毎年2足)ランドネ用(山歩き)、スキー、乗馬など、どんどんサイズが変わっていく娘の足に併せて全ての靴を買い換えなければならないことを恨めしく思い、どうか早く娘の足のサイズアップが止まって欲しい・・と長いこと思い続けていました。

 子供の成長は嬉しいことではありますが、スキーやランドネなどは、一年のうち、そう何回も行くものでもないので、下手をするとワンシーズンで終わり!なんてことにもなってしまうので、その大して使っていない靴が溜まっていくのも恨めしくもありました。

 今もそんな子供の成長に大して使われていない靴やスポーツ用品の山にうんざりしている方も少なくないと思います。

 そんな方々には、これは朗報です。

 デカトロンは、新規事業として、スポーツ用品のレンタルサービスに乗り出しました。現在は、リヨン地域の5つの店舗でこのレンタルサービスのテスト期間中だそうですが、これには、自転車、カヤック、カヌー、パドルのほか、キャンプ用品や釣り道具などが含まれています。

 このテストケースが成功すれば、このサービスはオンラインでも利用できるようになり、レンタルできる製品の種類も広がっていくことになるでしょう。すでに自転車に関しては、サイトでレンタルサービスを開始しているようです。

デカトロン 自転車レンタルのサイト


 デカトロンは、パンデミックのおかげで、キャンプ用品、ハイキング、サイクリングなどのアウトドアスポーツ用品で大幅に売り上げを伸ばしています。この好機に乗って、デカトロンは、次なる戦略に乗り出したわけです。

 もともと年に1〜2回しか行かないキャンプや山歩きなどのために必要な用品を全て揃えて、使用しない期間を家の倉庫、あるいは、棚の奥深くに大きなスペースを占領しているのは、邪魔なことで、しかも、市場にはどんどん新しい商品が登場します。

 物を無駄にしない、環境問題にも配慮した新しい試みです。倹約家のフランス人には、好評に違いないと私は、思っています。

 しかし、この盗難事件の多いフランスで、(特に自転車などは・・)借りたはいいけど、すぐ盗まれそうで、レンタルの際には、保険がかけられることになるのでしょうが、いつでも心配はつきまといます。

 願わくば、もう少し早くこんなサービスができていてくれれば・・とうちにもゴミの山ができなかったのに・・などと思いますが、それでも、少しでもフランスでの生活が便利になっていくことは、嬉しいニュースに違いありません。


Decathlon Paris La Madeleine

23 Blvd.Madeleine 75001 Paris

104 Blvd. Saint-Germain  75006 Paris


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2021年7月22日木曜日

いよいよヘルスパスがスタートしたものの問題は山積み

   


 7月21日から、フランスは、かなりの範囲(文化施設、娯楽施設、ジム、コマーシャルセンター、長距離移動の交通機関などなど)でヘルスパス(ワクチン接種2回証明書、48時間以内のPCR検査陰性証明書、6ヶ月以内にコロナウィルスに感染した証明書)が必要になりました。

 しかし、私が昨日、ヘルスパスが必要とされていたはずのコマーシャルセンターに買い物に行ったところ、全くのノーチェック、友人とバカンスに出た娘は、 TGVに乗車というのに、これまたノーチェック・・まぁまだ初日だから・・とも思うのですが、初日に準備できなくて開始できなくても良いなら、日付を設定する意味があったのか? まあ、フランスなら不思議ではないことではありますが、今さらのように思うのは、最初のロックダウン時の衝撃的なシャットダウンをフランスで行えたことは、スゴいことだったのです。

 しかも今は、バカンスシーズンで、多くの人がバカンスに出ていて、どこも人員不足、それでも、しっかりヘルスパスのチェックを行っていたところもあるようで、ジムや映画館、美術館などで、ヘルスパス不携帯で入場できない人の様子がテレビのニュースでは報道されていました。

 当日になって、カステックス首相は、昼過ぎの国営放送のニュース番組に登場し、このヘルスパスのチェックを機能させるまでに1週間のテスト期間を設けることを発表しています。

 つまり、ヘルスパスの本格的な始動は、8月からということになります。

 また、現在のところは、ヘルスパスのチェックにIDカード(身分証明書)の提示、つまり本人確認が必要ないとのことで、これでは、また新しい商売(ワクチン接種証明書のレンタルや偽証明書の販売など)が発生しそうです。

 なにせ、このヘルスパスのチェックを身分証明書と照らし合わせて本人確認をするとなれば、手間も時間も人出もいることになるのですが、本人のものでなくても良いなら、意味はありません。しかし、一般市民が身分証明書のチェックというのは、いささかお門違いの感もあります。

 現在のところは、それぞれの施設がチェックするのは、ヘルスパスだけで、合間を縫って警察がランダムに身分証明書との照合のチェック(抜き打ち検査)をすることになっています。

 しかし、第4波に突入したフランスには、本当はそんな猶予はなく、急増している1日の新規感染者数は、あっという間に2万1千人超え(一週間で2.4倍)と同様に入院患者数も1週間前と比較すると33%増になっており、ここのところ、家から聞こえる救急車のサイレンの音がまた増えてきたような気がする・・と思っていた私の感覚は、間違いではなかったようです。

 街に出てみると、ちらほら観光客も見られるようになり、美術館を訪れようとしていたアメリカ人観光客がこのヘルスパスのルールを知らずに、「2回のワクチン接種は済ませているのに、観光するのにワクチン接種証明書は持ってきていなかったので、入れてもらえなかった・・」とボヤいている人などもいました。

 エッフェル塔などは、こういう人々のために、エッフェル塔の隣に、PCR検査場を設けて、観光客対応をしているようです。

 しかし、人出不足は、こういった文化施設、娯楽施設、レストランだけではなく、病院でさえも、現在は、バカンスのためにスタッフがフルに待機しているわけではありません。

 スタッフがいなければ、たとえ、病床が空いている状態でも患者を受け入れることはできずに、このまま、入院患者、重症患者が急増していく状況が続けば、あっという間に医療崩壊を起こしてしまいます。まだまだ1ヶ月以上続くバカンスシーズンには、そんな危惧も孕んでいます。

 感染状況が特に悪化している場所では、再び、屋外でのマスクが義務化されたり、23時以降のレストラン・カフェ等の営業が禁止される事態になっていますが、今後、さらに感染が悪化する地域が現れれば、当面は、自治体ごとに対応すると発表されています。

 娘は、現在、パリ市内の病院併設の研究所でスタージュをしていますが、このヘルスパスの発表以来、看護士が退職してしまうケースが出始めていると医者が嘆いていたそうで、自分の職を辞してまで、どうしてもワクチンをしないと言っている頑強な信念を貫こうとしている人も一定数いるようです。

 この種のアンチワクチン派の人は、病院だけでなく、様々な業界にもいるようで、8月30日以降は、病院にかかわらず、入場者にヘルスパスの提示が求められる全ての施設の雇用主は、従業員のヘルスパスをコントロールする義務があり、不携帯を続ける場合は、制裁として無給、事実上の解雇になるのです。

 「労働者(組合)の権利」が甚大であるフランスでは、従業員を解雇するにも、雇用主側にとっては、大変な出費でもあり、レストラン・ホテル業界などは、「ヘルスパスには、反対しないが、このヘルスパス不携帯の(ワクチン接種をしない)従業員の解雇のための補償金に関しては、負担することを拒否する」=「国が払ってくれ!」と発表しています。

 現在、フランスのワクチン接種率は70代以上で80%、60代で77%、50代で73%と、開始のタイミングのズレにより、比較的、高齢の人には、かなり進んでいますが、一番、後回しになってしまった12歳から17歳の年少者に対してのワクチン接種期限を8月30日としていたものを9月30日まで延期するとし、9月の年度初めから、全国の中学校・高校にワクチン接種制度を設置することを発表しました。

 とにかく、政府の提案しているヘルスパスは、人々を解雇することでも締め付けることでもなく、感染をなんとか抑えるためにワクチン接種を拡大するためのものなのです。

 ロックダウンが解除になり、人々がバカンスに出ていることも感染拡大の原因でもありますが、昨年の今頃存在していたウィルスと、現在のデルタ変異種は威力が全然違い、真夏の今でさえも、しかもワクチン接種がかなり進み出しても感染が急増してしまうのですから、ウィルスがさらに活性化すると思われる秋までに、少しでもワクチン接種を進めなければ、大変なことになってしまいます。

 現在、フランスの感染者の96%は、ワクチン接種を受けていなかったことが確認されています。

 自由を守るためにワクチンを拡大しようとしている政府と自由を保持するために、ワクチンに反対する人々に接点を見出すことはできるのでしょうか?


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2021年7月21日水曜日

日本のオリンピックで日本のバブル方式が通用しない理由

  


 遡れば、コロナウィルスがこの世に登場し、それがこんなパンデミックにまで広がる前、最初に世界でコロナウィルスについて騒ぎ出したのは、横浜から出港したクルーズ船ダイヤモンドプリンセス号の乗客で香港で下船した男性が新型コロナウィルスに感染していたことが発覚してからのことでした。

 クルーズ船内での感染が拡大し、乗務員・乗客併せて3,713人のうち、712人の感染が確認され、当時は、コロナウィルスの正体もよくわからないままに、クルーズ船内でのクラスターに、日本(アジア)で起こった新しい感染症くらいにヨーロッパでは捉えられていました。

 ちょうど、そんな騒ぎの最中に日本に帰国していた私は、フランスに帰国する際に飛行機に乗せてもらえるかどうか? はたまたフランスに入国できるかどうか心配したくらいでした。

 しかし、帰国当日、恐る恐る羽田空港に行き、ANAのチェックインカウンターに行き、「フランスへの入国は、問題ありませんか?」と確認したところ、「今のところ、フランス側からは、特別な入国条件は提示してきていません」とのことで、飛行機に乗ったものの、それでも疑心暗鬼でいましたが、フランスへの入国は、全くノーチェックで何の問題もありませんでした。

 ただ、フランスに帰国してみると、やはり、日本から感染を運んできているのでは?と感じている人はいるようで、現に留守の間に猫の世話を頼んでいたフランス人などは、家の鍵を返しに来ると、いつもは延々とおしゃべりをして帰るのに、鍵を渡すと早々に退散していきました。

 しかし、それから間もなく、感染が爆発的に拡大したのは、フランスの方で、あっという間に前代未聞の完全なロックダウン状況に陥り、一日中、閉ざされた家の中で救急車のサイレンが絶え間なく聞こえ続く異常な生活が始まりました。

 「日本も油断していると危ない・・コロナを舐めていてはいけない!」などと思っていましたが、日本は、これまでに一度もフランス(ヨーロッパ)のような、深刻な感染拡大に至ることはありませんでした。

 日本では、法律上の問題などもあるのでしょうが、一度もフランスのような完全な罰金を課せられる厳しいロックダウンをすることなしに、感染を抑えられてきたことは、海外から見れば、奇跡的なことです。

 フランス人にそのことを話しても、「日本人は、マスクをする習慣があるからね・・」などと、軽く受け止めていますが、日本で感染をある程度、抑えてこれたのは、マスクだけではなく、日頃からの日常的な衛生的な生活、衛生観念、清潔に身を保つ習慣、規律正しく、規則を守る真面目な国民性などなど様々な要因に支えられてのことです。

 その習慣的に衛生管理に気を配る生活や、はっきりした規則(罰則)がなくとも自粛するということが外国人には、きっと想像もつかない世界です。

 ある意味、日本の方が特別な国なのです。

 ですから、外国人にとっては、日本で非常事態宣言が出ていると言っても、「お店はやっているし、人は街に出ているし、日本の非常事態宣言ってなに??」と意味がわかっていません。

 その上、感染者数は、ヨーロッパなどとは比較の対象にすらならないほどに少ないし、どれだけ日本人がオリンピックのために自粛生活をしているかは知らずに、この程度の感染者数なら、全然OK(あくまでフランスその他ヨーロッパの基準ですが・・)と思ってしまうのです。

 菅総理大臣は、「日本の状況は数字に表れているので、世界に発信すべきだ」と言っているようですが、ただ、数字を発表しても、世界的に見れば、数字だけでは、全く響かない数字で、世界に発信するならば、日本人がどのようにして、これだけ数字を抑えられてきたのかを具体的に説明しなければ、数字だけを発表しても意味がありません。

 むしろ、逆に受け取られかねません。

 オリンピックは、バブル方式とかいう対策がとられているそうですが、これは、あくまでも日本人の常識の範囲内ならば、通用するものであって、世界各国から集まるそれぞれのウィルスに対する衛生対策への感覚や、規則というものをどのように受け止めるかという民度?は、日本人とは全く違うのです。

 これまでは、日本がある程度、感染を抑えることができていたのは、ことさら、この日本人の民度の高さに支えられてきたところが大きく、世界中から人が集まるオリンピックにこれは、通用しません。

 「日本人は政府の意向を示すと多くの人が従ってくれる」と菅総理は言っていますが、(日本人だって、もう我慢の限界に来ているというのに・・)多くの外国人が入ってくるオリンピックでは、それは通用しません。

 オリンピック選手ならば、自分の体調には少なからず、気を配り、もしも感染すれば、出場できなくなることを考えればまだマシかもしれませんが、選手団のスタッフ、マスコミ関係、IOC関係者に関しては、規則をきっちり守るとは、思い難いのです。

 ましてや、オリンピック関係者やマスコミ関係者などは、とかく「自分たちは特別扱い」に慣れている人々で、周りはダメでも自分たちはOKと思って生活している人が多いのです。

 このオリンピック開催にあたっては、海外の人の日常の生活様式や考え方、行動を予測しなさすぎています。日本の中だけでなら通用する素晴らしい日本人の生活の仕方(衛生対策)は、ある意味、世界的には、かなり特別であるという認識に欠けています。

 日本でオリンピック開催反対のデモなどが起こっている様子はフランスのニュースでも報道されていますが、日本のデモは、お行儀がよくて、常日頃からフランスで起こっている激しいデモを見慣れているフランス人にとっては、恐らく日本人の怒りのほどは伝わっていません。

 残念ながら、第4波を迎えているフランスは、1日の感染者数が1万8千人を超え、一週間で感染者数は、2.6倍に増加しているとはいえ、人々は、バカンスを謳歌し、一部の感染が悪化している地域で、レストラン・カフェの営業が23時までの時短営業になっただけで、大ブーイングが起こっています。

 先日、発表されたヘルスパスに反対するデモも度々、起こっており、数万人の人がほとんどマスクなしで、街を練り歩いています。

 多少、厳しい規則でも、はっきりとわかりやすい規則を提示しなければ、バブルには、穴が飽き続けることは明白です。厳しすぎると言われても、一生それが続くわけでもあるまいし、日本人でも今はなかなか行きづらい日本に行っているのだから、日本はオリンピック関係者に対して、もっと毅然と対応すべきです。

 外国人に対して、曖昧な規則は通用しません。

 オリンピックは、2週間とちょっとで終わりますが、ウィルスを撒き散らし、オリンピックのために自粛を強いられ続けている日本がオリンピック後にも、さらに感染拡大に苦しめられるのは、見ていられません。

 オリンピックはやっていないのに、ものすごい勢いで感染が再拡大しているフランスから見れば、オリンピックは恐怖でしかありません。


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2021年7月20日火曜日

フランス第4波突入宣言 ボルドーのナイトクラブでクラスター ヘルスパスが機能していない現実 

 



 フランスでは、ほぼ1年半にわたって閉鎖されていたディスコ・ナイトクラブが7月9日に再開されて、さっそく、ナイトクラブでクラスターが発生してしまいました。

 先日、このディスコ・ナイトクラブの再開にあたっては、アルコールを扱う場所でもあり、開放的に密になる場所として最も警戒されて、これまでのロックダウン解除が最も先送りにされてきました。

 ナイトクラブの営業再開が許可されたとはいえ、衛生管理を徹底することが難しく、未だ再開できていない場所も多いのです。

 ところが、今回、営業を再開したボルドーのナイトクラブで、クラスターが発生し、問題が再浮上しています。もう開けたら、すぐです!

 7月9日の営業開始直後、このナイトクラブには、670人が集まり、それ以来、多い日には2,000人以上が来場しています。

 このナイトクラブの再開以来、この地域(ヌーヴェル・アキテーヌ=フランス南西部)では、21例のクラスターが発生しています。

 このナイトクラブは、夕刻から入り口にヘルスパスコントロールを設置することを命じられていましたが、このパーティーに参加した人のSNSの投稿によれば、このコントロールは充分ではなく、時間帯によっては、チェックがされていなかったことが指摘されています。

 この投稿をした本人は、ヘルスパスのQRコードを提示し、その時間帯には、全てルールどおりに入場制限が行われており、750人中、80人がヘルスパス不携帯のために入場拒否に遭っていたことがわかっています。

 しかし、午前2時以降の入場者に関しては、ヘルスパスは、ノーチェックになってしまい、事実上、クラスターの格納庫のような状態になってしまったのです。

 ワクチン接種が進み、すっかり日常モードになってきたフランスも、ひとたび、気を緩めれば、あっという間にクラスターが発生してしまうことが証明されてしまったのです。

 このナイトクラブへの入場者のヘルスパス保持者のうち、ワクチン接種済みの人の割合がどの程度であったのかはわかりませんが、ワクチンをすれば、感染しないのではなく、重症化しないだけであって、実は、感染していて、感染を広げてしまう可能性も考えられるわけです。

 ワクチン接種をしている人が圧倒的な割合までに達すれば、それほど深刻な事態にまでは発展しないのかもしれませんが、今は、感染者数だけを見れば、あっという間に1万2千人にまで増加しているフランスは、相変わらず、少しでも気を緩めることができないウィルスとワクチン接種の攻防戦が続いていることを思い知らされます。

 この21例のクラスターは、今後数日で増加する可能性も十分にあり、内務大臣は、18日、「ナイトクラブ・ディスコなどの営業に関しては、ヘルスパスのコントロールについて、最も厳格な警戒が必要であるとし、ヘルスパスの管理を尊重しないナイトクラブの閉鎖を求める声明」を発表しています。

 ヘルスパスがあらゆるところで求められるようになっても、そのチェック機能がうまく働いていない、機能していないのでは、意味がありません。そのための人員の配置や段取りには、いくつかハードルがあるかもしれませんが、これを機に、店舗側も営業停止にならないようにしっかりチェックを行ってもらわなければなりません。

 政府が厳しめの緊急措置を取っても、結果としてそれが機能していないことは、いかにもフランスではありそうなことでもあります。

 しかし、ちょっとの緩みがすぐに、感染増加、クラスターと結果が現れるのです。

 フランスは、ここ2週間ほどで新規感染者が急増しており、一時は、2千人台だったものが、あっという間に1万2千人、これまで減少し続けてきた入院患者も集中治療室の患者数も増加に転じています。

 ワクチン接種を進めているにもかかわらず、入院患者、重症患者が増加するということは、ワクチン接種の速度がウィルスの拡大に追いついていないということで、やはりヘルスパスは必須事項だということです。

 フランスは、19日、政府のスポークスマンが「我々は、第4波に突入しました」と宣言しました。現在のフランスの感染者の80%はデルタ変異種に占められ、入院患者数も増加傾向に転じたことがこの宣言の理由とされています。

 現在のフランスは、多くの人がバカンスで国内を大移動し始めてから、ちょうど2週間、やっぱり、バカンスによる国内大移動や開放感で感染が拡大しないわけはありません。

 5月の初旬の時点で、パスツール研究所(フランスの生物学・医学研究機関)が発表していた、「7月以降に第4波を迎え、再び入院患者が増加することは避けられない」という見解は、見事に的中してしまったことになります。

 特に感染状態が悪化しているピレネ・オリアンタル県(オクシタニー地域圏)(スペインとの国境近く)では、感染状況は、フランス国内平均値の4倍の数値で、すでにレストラン・バーなどの営業が23時までに制限されています。

 このまま放っておいたら、また夜間外出制限などの規制を敷かざるを得なくなり、マクロン大統領のかなり強引とも思われたヘルスパスについての発表は、やはり致し方ないとしか言いようがありません。デルタ・・恐るべし・・。

 

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2021年7月19日月曜日

フランス版メルカリ ヴィンテッド Vintedの急成長



 日本の家のものはもちろんのこと、フランスにも長くなり、不用品をいつの間にか、驚くほど溜め込んでいて、断捨離を初めて、久しくなります。

 ただ、ひたすら、処分する=捨てる・・というのは、忍びないものも多く、当初は、近所にあるエマウス(Emmaus)という慈善団体に持って行って、寄付したりしていました。もうスーツケース何個分も運んで、もらって頂きました。

 ここは、大きな家具なども引き取ってくれるので、頼めば配送のための下見に来てくれたりもします。こちらは、そういった寄付により受け取ったものを販売して、その収益を恵まれない人への寄付金として社会貢献している団体です。

 どうにも劣化しているものは、廃棄するのも致し方ないのですが、まだ充分に使えるものを捨てるのは忍びなく、かと言って、いつまでも抱え込んでいても仕方ないので、その処分に困るところなのは、どこの国でも同じです。

 日本は、一時、買い取り業者などが広まったり、メルカリなどで、不用品を処分することができますが、フランスでも、メルカリのようなネットでの売買ができるサイトがいくつか出てきています。

 私が最初に始めたのは、ルボンカン(leboncoin)というサイトで、2006年にスタートしたようです。このサイトは、扱っている物の範囲がとにかく広く、小さな置き物から、家や車、職探しまでできるようになっています。

 しかし、そのうちにヴィンテッドという別のサイトを見つけてからは、同じものを同時に2つのサイトに載せていますが、ヴィンテッドの方が圧倒的に売れるのが早く、その上、サイトが明瞭で、使いやすくできているので、現在は、ヴィンテッドがほとんどになっています。

 日本のメルカリも一度やってみたくて、日本に一時帰国をした際にやってみたことがあるのですが、システムや販売などの流れが実に上手くできていて感心したのですが、難点を言えば、手数料を取られるところです。

 ヴィンテッドは、手数料もかからず、また、システムもなかなか上手くできていて、取引した相手の評価をつけられるようになっているので、例えば、これから買い物をしようとする相手がどの程度、信頼できる相手なのかをある程度、判断できる基準となっています。

 配送料は、購買する人が負担するので、購入の際に購買者側が配送会社を選び、販売する側は、購買者の指定した配送会社を扱っているお店に商品を預けます。

 配送機関は現在のところ、5種類あり、荷物の大きさにもよりますが、軽いものならば(例えば夏用のワンピースなど)2.88€〜6.45€、配送会社(Mondial RelayやRelay Colis, Cheonopost など)によって幅があります。

 以前、メルカリをやってみた時には、フランスには、これらの配送会社のシステムが拡充しておらず、売るのはいいけど、ちゃんと届くかどうかが不安で、日を決めて手渡しすることも多かったのですが、これらの配送システム(荷物を預かる店舗が荷物を管理する)が普及してからは、荷物が紛失したりすることもほとんどなくなりました。

 これらの荷物預かりポイントは、他のものを売っている店舗が副業としてやっていて、この系列に参加している他地域の店舗に送られるので、トラブルが頻発したら、そのお店は取扱停止となり、責任の所在がはっきりしているためにトラブルがほとんどないのです。

 トラブルが発生した場合は、一応、Vintedが中に入って、仲裁してくれることになっていますが、これまでにトラブルは、ほとんどありません。

 売りたい物の写真を撮ってサイトに載せ、その商品説明を記載して、値段をつけて出品します。その商品ごとに、説明とともに、サイト上には、「買う」「お気に入りに追加する」「メッセージを送る」という欄が表示されるので、そのまま買いたい場合は、「買う」をクリックすれば、それで、商談は成立します。

 メッセージでは、値切りの交渉や商品についての質問が来ますので、それに回答して、やりとりをします。

 化粧品・香水などに関しては、未使用のもの(つまり新品)という決まりがありますが、その他のものに関しては、中古品でもOKです。

 最近は、取扱の国も拡大し、ベルギー、オランダ、イタリア、スペインなど10ヶ国以上の国で利用されており、時には、外国からの購買希望者からメッセージが来たりするのですが、外国語にも対応できており、メッセージとともに、Google翻訳の機能付きになっていて、「このメッセージを翻訳する」をクリックすると、自分の理解できる言語に翻訳してくれ、自分の国の言語でメッセージを送り返すことができます。

 中には、「自分のサイトの中の商品と交換してくれませんか?」(物々交換制度あり)とか、「送料を払いたくないので、手渡しにしてくれませんか?」なんていうのもあったり、「お母さんへのプレゼントにしたいのだけど、私の予算はこれだけなので、この値段で売ってくれませんか?」を滔々と書いてくる人などもいます。

 売買交渉が成立すると、商品に貼り付けるラベルがすぐにダウンロードできるので、それを梱包した荷物に貼り付け、指定された配送機関の荷物を扱ってくれているところに置きに行くだけです。プリンターがない場合は、配送中継地点がプリントしてくれます。

 荷物が届いて、受け取った人が商品を確認した時点で、代金は自分のサイトのお財布に入金され、いつでも自分の指定した口座に振り込むことができます。(手数料無料)

 ヴィンテッドもスタート当初は、古着、アクセサリーなどが中心でしたが、今では、子供のおもちゃ、バッグ、靴、化粧品、香水、テーブルウェア、飾り物などのオブジェ、本など、扱うものがどんどん増えてきました。

 このサービスは、ロックダウン下でさらに急成長した企業でもあり、人々が外に出れずにサイトをのぞいている間に、利用者も急拡大し、今では、テレビのコマーシャルでも見かけるようになりました。

 もともと中古車を始めとして、中古品にあまり抵抗のないフランス人の国民性もこれを後押ししているのかもしれません。

 シーズン毎によって、売れるものも、売れ行きも違いますが、これまでの私の経験からは、ノエルの前、母の日の前が最も売り上げが良かったので、フランスでこれをやってみようと思う方は、このシーズンを狙ってみると良いかもしれません。

 今年の夏のソルド(バーゲン)は、予定どおりに開始されたので、これは、ヴィンテッドもしばらくは、お休みだと思いきや、人々の買い物モードにスイッチが入ったのか、ヴィンテッドの方も結局はサイトを見ている人も増えたのか? 売り上げは上々です。

 といっても、別に私は、これを商売にしているわけでもないので、別に急ぐわけでなし、山ほど溜め込んでいたいらないもので、ずーっと売れずにサイトに残っているものもたくさんありますが、それが忘れた頃にポロッと売れたりもして、ちょっとお小遣い稼ぎができて、喜んでいます。

 昨年、ヴィンテッドのサイトから、「税金申告のお知らせ」とともに、「昨年のヴィンテッドの売り上げを確認してください」いうメールが来たので、一瞬、ギョッとしましたが、結局、「これを、商売にしている人は、税金を申告しなければなりません」ということだったので、私のように不用品を売っている場合は、必要ありませんでした。

 フランスには、この種のサイトは他にもいくつかあります。自分の売りたいものによって、それぞれの得意分野があるようで、例えば、ブランド物(ある程度、高価なもの)(ファッション関係)なら、Vestiaire Collectiveというサイトが高い値段で売れるという噂も聞き、一度、チャレンジしたことがありましたが、高額商品ゆえに、商品に関する詳細な情報入力や審査が厳しく、断念しました。

 私は、これまでに、これで、ちょっとした旅行ができるくらいのおこづかいができました。

 断捨離をしている方、思わぬおこづかいになるので、ちょっとトライしてみたら、いかがでしょうか?

 私は、売るだけですが、買い物も思わぬ掘り出し物があるようです。娘などは、もっぱら、Vintedでしか買い物しないみたいです。この間もニューバランスのスニーカー、ほぼ新品(きっと買っただけで、サイズが合わなかったと思われる人の出品でした)が30€だったそうです。


Vinted ヴィンテッド

Vinted のサイトはこちら


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2021年7月18日日曜日

バカンス中にも関わらず、ヘルスパス反対のデモ

   

Plusieurs centaines de personnes manifestent à Toulouse contre le pass sanitaire, samedi 17 juillet 2021

 

 フランスは、デモの国。何かあれば、すぐにデモ・デモ・デモ。しかし、フランス人らしく、デモよりバカンスが優先で、普通、バカンス期間中には、デモはせず、しかし、だからといって、デモをしないというわけでもなく、デモに関してだけは、段取りよく、バカンスシーズン突入前に、バカンスから戻った9月のデモの日程を予告してバカンスに入ったりします。

 今回の7月12日にマクロンがデルタ株の感染拡大を機に発表したワクチン接種拡大の呼びかけ、ヘルスパス(ワクチン2回接種、48時間以内のPCR検査の陰性証明書、6ヶ月以内のコロナウィルス感染証明書)の発表は、一部は7月21日から、また次の段階は、8月1日からとかなり急なものであった上に、結果的に、「そりゃ、ワクチンするしかないでしょ!」という、かなり強引な内容だったため、これはデモか暴動でも起こるのではないか?と思いました。

 しかし、蓋を開けてみれば、マクロン大統領の発表直後から、ワクチン予約が殺到し、翌日には、1日で792,339人がワクチン接種をするという記録を立ち上げ、その週末には、さらにそれを上回る879,597人と記録を塗り替えました。

 世論調査でも、「ワクチン接種に行く」と答えた人が79%にまで上昇し、「ワクチンはしない」と答えた人は16%のみになりました。

 それでも、やはり、デモは、7月14日の革命記念日(パリ祭)の日から始まりました。マルセイユ、パリ、ナント、モンペリエ、リヨンなどの全国各地で、19,000人ほどの人がデモに参加しました。

 そしてこの週末も再びデモが起こっています。

 彼らの言い分は、「マクロン大統領は、フランスでワクチン接種を開始する際に、義務ではないと言った! それを突然、月曜日の夜に現れて、10分でフランス人の生活をひっくり返した!彼の独裁的なやり方は許せない!」とヘルスパス反対を正当化しようとしています。

 この週末は、パリだけでも18,000人、フランス全土で114,000人の規模のデモが行われました。

 しかし、オリヴィエ・ヴェラン保健相はデモが発生したことについて、「これはあくまでも少数派、ワクチン接種は急務である」と断固とした態度を崩してはいません。

 フランスの人口は6,540万人ですから、数万人のデモとはいえ、少数派であることに違いはありません。前回のデモが起こった時点で、彼は、ツイッターで、「デモ隊の25倍の人がワクチンセンターでワクチンを受けています!」とワクチン接種に賛同している人が大多数であることを示しています。

 確かに今回の発表は、かなり強引で、フランスにしては、かなり強行な独裁的な感じを受けたことも確かではありますが、現実的に、政府も予断を許さない必死な状態で、待ったなしの状況であることにも違いありません。

 7月の初旬には、2,500人程度であった1日の新規感染者数は、2週間ほどで1万人を突破しています。

 また、現在のフランスのコロナウィルスによる入院患者数は6,791人ですが、そのうち重症化している患者の96%がワクチン未接種であることがわかっています。

 フランスのデモは日常のことで、デモをやったからといって、事態がひっくり返ることばかりではありません。現に、昨年から起こっていたグローバルセキュリティ法に反対するデモでさえ、あれだけ派手にデモをして暴動を起こしたりしていたのに、結局は法案は可決されています。

 今回のヘルスパスに関しても、デモは起こっていますが、大多数の人がワクチン接種に走り、多くの国民がワクチン接種をする方向に転じて、実際にワクチン接種が加速化しているので、結局のところは、そのまま施行されると思います。

 しかし、ワクチン接種に反対しているだけあって、この種のデモに参加する人たちは、マスクをしていない人がほとんどで、このデモで感染が広まってしまうことも充分にあり得ることです。

 誰だって、マスクも嫌だし、ワクチンだって本当はしなくて済むならしたくないけど、ロックダウンはもう嫌だし、犠牲者がこれ以上出るのも何としても避けなければなりません。「デモをやりたいなら・・ワクチンが嫌なら、せめてマスクぐらいしろよ!」と思うのです。


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2021年7月17日土曜日

夏休みの日本への一時帰国 日本の小学校体験入学

   


 ここ一年半以上、日本には、一時帰国はできていませんが、もう20年以上にもなる在仏生活の中で、夏休み(夏ではない時もあったけど・・)の日本への一時帰国には、色々なことがありました。

 フランスに来て以来、初めて日本へ行ったのは、娘がちょうど2歳になったばかりの頃で、それまで孫に一度も直にあったことのなかった両親の喜びようは、大変なものでした。その2人の喜びように、今まで私がどんなに親孝行しても(とはいっても大してしてないけど・・)、孫の存在には、叶わないんだな・・などと思ったものです。

 私が娘をバイリンガルにしたかったのは、日本にいる家族ともコミニュケーションがとれるようにという思いもあってのことで、娘が生まれた時から他に日本語を使う人がいない環境で、私は娘とは日本語のみで接してきたので、その頃は、娘もろくな言葉は話せませんでしたが、周囲の言っていることは理解し、初めて会うパピーやマミー(フランス語ではおじいさん、おばあさんのことをパピー、マミーと呼びます)ともすぐに打ち解けました。

 やがて、娘が小学校に入る年頃になると、フランスの学校がお休みになるとすぐに日本に連れていって、実家近くの公立の小学校に2週間ほどですが、編入させていただき、日本の小学校生活も体験させて頂いていました。

 予め、受け入れ先の小学校の教頭先生に連絡をとっておくと、帰国後、すぐに編入させてもらえます。学校に最初に電話した時などは、素晴らしく好意的な印象で、「フランス語ですか〜、英語なら話せる教師はいるんですが・・」などと親身になって考えてくださり、「日本語は、ある程度はできるので、日本語に接する機会でもあるので、ぜひ日本語だけでお願いします」と念を押したくらいです。

 フランスの学校に入学した時などは、面接の際に私が日本人だと知ると、「うちはフランス語だけですからね!」と逆に念を押されたくらいで、その時は、「そんなことわかってるわよ!」とムッとしたくらいだったので、たった2週間の編入のために、気遣ってくださる日本の先生が「日本人て、なんて、優しいんだろう!」と感動したくらいです。

 フランスの学校にはない給食当番や掃除当番なども体験させてみたかったので、「どうぞ、お客様扱いせずにやらせてください」とお願いしました。

 両親が元気なうちは、一緒に山荘に出かけたりもしましたが、やがて、母の心臓病が悪化し始めてからは、母は家にいても寝たり起きたりの生活になり、急に入院して、駆けつけた時にも階段の登り下りが心臓に負担がかかるということで、母のベッドを階下に移したり、寒くないように(その時は冬だった)フローリングの床にカーペットを敷いたり、介護保険の手続きをしたり、日頃、側にはいられない分、なんとか日本にいるうちにできるだけ色々なことをしていこうと、日本への一時帰国は、楽しいだけでなく、かなり忙しいスケジュールギチギチのものになって行きました。

 そのうち、母が亡くなり、父一人の生活になってから、こちらの生活でも色々なことがあり、また、私が夏に休みを取れなくなって、しばらく日本には、帰れない年もありました。

 また、しばらくして、日本に行き始めてからは、一人の生活の父の食事の用意や、父の病院に付き添って、担当の先生に話を聞いたり、いつも父がお世話になっている人々にお土産を渡しがてら挨拶に行ったり、その間に友人と会ったり、買い物をしたり、帰るときには、後で父が少しずつ食べられそうなものを作り置きを小分けにして、冷凍したり、楽しい半分、家を出てフランス行きの飛行機に乗った頃には、正直、半分、ホッとするようなところもありました。

 日本への一時帰国は、美味しいものもたくさん食べられて、会いたい人にも会える楽しいものであると同時に、期間が限られているからこそ、両親(高齢になってから)のために頑張ってしまう期間でもあり、はっきり言って、バカンスとは言い難く、どうしても、忙しく動き回らざるを得なくなってしまい、楽しいことばかりでもありません。

 今は、両親ともに亡くなり、そんな日々が懐かしく、二人がいなくなった家を片付けるくらいで、日本の家では、あまりお料理をすることもなくなりましたが、日頃、側にいられない負い目もあって、できるときには、できるだけのことをしてあげたいと思って忙しく動き回っていた日本への一時帰国をもう何もしてあげることができなくなってしまった今になって、もっともっと、色々してあげたかったと寂しく思うのです。

 現在は、小さなお子様をお持ちのお母さん方も日本の学校に一時的に編入させてあげたくても、2週間の隔離生活が必要なので、きっと日本の学校への編入は難しいと思います。今、ご両親が日本にいて、病気だったりしても、すぐに飛んで行って看病することも、万が一のことが起こっても、駆けつけることはできません。

 日本の学校への編入体験も限られた年齢でしか難しいだろうし、ましてや病気の親に付き添えなかったり、最期の時にも会えなかったり、節目節目の大切な瞬間でさえも、ただでさえ、遠くて困難なところを長引くパンデミックがさらに日本を遠ざけています。

 海外で生活をすると選んだ時点で、ある程度は覚悟はしていたものの、そのような思いをされている方々にとっては、本当に心が張り裂けんばかりの悲しさだと思います。

 1日も早く、元の生活が戻って、行こうと思えば、翌日でも日本に飛んで行くことができる・・そんな世の中に戻って欲しいと思っています。

  


 現在、外務省及び厚生省から、「変異株指定国・地域に指定した国および感染症危険情報レベル3対象国・地域・国については、帰(再入)国を前提とした短期渡航について、当分の間、中止するよう改めて強く要請致します。」という書面が出入国管理庁から出ています。

 私は、現在、無理して日本へ行こうとは思っていませんが、世界各国からオリンピックのために、多くの人が入国している中、日本国民に対して、帰国するなという通達には、反発を感じます。

 海外在住者には、ワクチン接種済みの人も多く、しかも2週間の隔離期間はきっちり守る日本国民なのです。

 これは、オリンピックのための措置に他ならないと思いますが、「日本人を閉め出してまで、そこまでしてオリンピックをやるのか?」と思ってしまいます。

 それならば、せめて、オリンピック関係で入国している人々には、「海外在住の日本人も帰国を許されない中、オリンピックが行われている」ということをしっかり通達し、それほど危険な状態であることをちゃんと知っていてもらいたいと思います。


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