2023年1月17日火曜日

12年ぶりの労働組合統一戦線  年金改革抗議の強力なストライキの予定

 


 年がら年中、誰かがデモやストライキをやっている感じがするので、ストライキ自体に少々、麻痺している感じもあります。とはいえ、自分が利用する交通機関などだったりすると、それなりにうんざりして、対策を考えるのですが、個人的には、防ぎようもないことなので、こうなると、あまり怒りすぎないように、大きくため息をつく感じです。

 怒ったときには、一度、大きく深呼吸をするといいといいますが、なるほど、ため息というのは、深く息をつくという意味では、自然発生的に自分がとっている防衛本能の一つかもしれないなどと、つまらないことまで考えます。

 さて、1月10日に政府が提示した年金改革は予想どおりに大きな反発を呼び、もうそれ以来、フランスでは、いつテレビをつけても年金の話ばかり・・、よくもこう年金について話続けることができるのかと思うほど、年金問題一色になっています。

 そんな年金の話題の中には、「日本人はより長く働きたいと思っている・・経済的な問題もあるものの、日本人は仕事を辞めてしまうことで社会との繋がりを絶ちたくないとか、適度に仕事を続けることが健康にもよいと考えている・・」などと説明されてもいます。

 しかし、定年後も仕事以外の生活で楽しむことをしっかり織り込み済みのフランス人には、日本のような事例は理解しにくいかもしれません。

 まあ、年金問題は、どんな人にでも関連する共通の関心事であることに違いなく、私などはフランスで仕事を始めた年齢が遅すぎるので、もう考える余地なしなので、問題外なのです。

 しかし、今回の年金改革の一番の争点は、現在62歳の定年退職が64歳に引き上げられるという点で、これには、職業によって例外はあるものの、要するに年金をもらうまでの年数が2年引き伸ばしになるという点では、すべての職業について共通するところで、つまり、「もっと働け!」ということです。

 ストライキは、できるだけ徒党を組んで大規模にやった方がインパクトは強く、SNCF(フランス国鉄)、RATP(パリ交通公団)はもちろんのこと、空港、航空会社などのほぼすべての交通機関、学校、警察、病院、ガソリン供給会社などのエネルギー部門、公務員からトラックの運転手まで、ほぼすべての機能が麻痺しそうな勢いで、中には、まだ仕事にもついていない高校生までがデモに参加するために、徒党を組んでいるという話まで聞くので、もうこの日は抗うことは考えずに、リモートワークにするか、それができない場合は休むことにした方がよいような気がしています。

 年金改革をしなければ、どうにも現在の年金制度が立ち行かなくなるというのも理解できないではありませんが、これは、国が一律に決めることなのだろうか?と思うこともあります。年金制度としては、そうしなければならないのかもしれませんが、これは働く側の人だけでなく、経営者側にとっても大問題で、2年定年が延長すれば、その2年間分は新しい採用を控えなければならなくなるということで、職種にもよりますが、会社として活性化が悪くなる気もします。

 以前の私の職場では、だいたい、定年が近づいてくると、ロクに仕事もせずに年金の計算ばかりしていた人たちがけっこういたことを思い出しますが、そんな社員を2年余計に雇い続けなければならない会社も気の毒な気もします。

 結局は、どこに一番負担が来るのかわからない今回のフランスの年金改革ですが、とりあえず、今回の1日のストライキで、15億から20億ユーロのコストがかかる(損失を含む)とそんな見積もりまでなされています。

 今回、とりあえず予定されているのは、19日(木)ですが、これが1日で解決するとは考え難く、しかも、12年ぶりとまでいわれる労働組合統一戦線と言われれば、収拾がつくのは一体、いつになることやら、年明け早々、うんざりしています。


年金改革ストライキ デモ


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2023年1月16日月曜日

フランソワーズ・モレシャンのインタビュー記事

  


 偶然、フランソワーズ・モレシャンのインタビュー記事を見つけて、「あ~そういえば、彼女はフランス人だったんだわ・・」と思うほどに、私の中での彼女の記憶は曖昧なのですが、そういえば、「モレシャンさん・・」と呼ばれていた彼女を子供の頃は時々、テレビで見かけることがあり、昭和生まれの人なら記憶があるかもしれません。

 インタビュー記事によると、彼女は私が生まれる前から日本に来ていたらしく、いわゆる外タレの先駆者みたいな存在だったようです。今の日本にいる外タレはビックリするほど日本語が流暢で堪能な人が多い感じがしますが、私の記憶の中での彼女は「ワタシノク二では~~!」と、今から思えば、わざとだった?と思うほど、外国人アクセントで、ちょっとツンとして指をたてながら話す、まったく外国人のままのタレントさんでした。

 1958年に来日して以来、フランス語教師などを経て、1964年にタレントとして初めて日本のテレビに登場し、NHKでフランスの生活様式を紹介する番組の司会などを務めて、タレント活動を開始し、本を出せば、ミリオンセラー、そしてファッションコーディネーターとしても活躍、ジュエリーコレクション、テーブルウェア、着物などのデザイナーとしても活躍、また、ディオール、シャネル、日産などとも協賛で仕事をしたりし、フランスではレジオンドヌール勲章を受章しています。

 60年以上、日本に滞在しているという彼女のインタビューは、なかなか興味深いもので、日本がまだ、豊かとは言えない時代から、上り坂の高度成長の時代を経て、下り坂にかかっている現在までの日本の変化を初めて日本に接して感じた印象を持ちつつ、ずっと、フランス人(外国人)の目で日本を見てきたことを語っています。

 彼女は、現在では、外国人が日本人以上に尊敬している価値観・日本の美学、(わびさび、禅宗に由来する精神性など)をとても尊敬しているが、その日本の価値を若い日本人は何も知らないと言っています。

 「1974年、日本を先進工業国時代に突入させた利口なペテン師、田中角栄首相が就任するまで日本は日本であった。それから、日本のコンクリート化が始まった。あちこちに工場ができ、小さな職人たちの工場は終わりを告げ、もはや本物の日本ではなくなった」

 「1980年代に日本急はに豊かになり、ゴッホの絵を世界中が驚愕する値段で買い落したり、ゴルフ場を買いまくったり、ついには、トヨタが、フランスのノートルダム寺院を借り切って自動車ショーを開催するとまで言い出し、お金にものを言わせて慎みを失ったようだったと言っています。(この自動車ショーの開催は却下された)」・・

 「しかし、バブルがはじけて、自殺者が激増し、日本人は再び謙虚になりました」・・

 この後、彼女は日本の女性の位置づけの変換について、日本の教育について(日本の学校は自分で考えないこと、ひたすら人に従うことを教えている)、男性と女性、夫婦の関係についてなど、延々と語っていますが、最後に目を引いたのは、インタビュアーの「日本は今のアジアのモデルになれるでしょうか?」という問いに対して、「もう手遅れです」とバッサリと答えたことです。

 「日本はもはや中国や韓国、その他の地域の国々のモデルにはなり得ない。日本は消えつつありますが、文化レベルではまだ生きています。そして、このことは特にヨーロッパで顕著です」という文面です。

 同等に語るにはおこがましいのですが、日本に住むフランス人とフランスに住む日本人という逆の立場で、彼女に比べれば、まだ20数年しかフランスにいない私でさえ、この私が日本を離れてからの期間だけに限っても、外国から見る日本という意味でも、少しは客観的に見て、危機感を感じています。

 日本に60年以上住んで、様々な場面に遭遇してきたであろうフランス人の言葉に、なんとなく、わかっている気がしていた内容であっても、グッサリ刺された気がしたのでした。


フランソワーズ・モレシャン 外タレ


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2023年1月15日日曜日

パリに巻き起こる「エミリーパリへ行く」現象と経済効果 Emily in Paris

  


 Netflix の人気シリーズ「エミリーパリへ行く」(Emily in Paris)がその舞台となっているパリで、訪れる観光客やドラマの中に登場するブランドなどに大旋風を巻き起こしているようです。

 新シーズンは、放送開始後わずか5日間で全世界で1億1700万時間の視聴時間を記録したという「エミリーパリへ行く」は、もはや、どんなファッション雑誌よりも影響力が大きく、ドラマに釘付けになっている視聴者、特にテレビから離れてしまっているといわれているティーンエイジャーや若い層(若くない場合もあり)へのアクセスの役割を果たし、彼女たちは、ドラマを見ると同時に、ヒロインと同じバッグ、同じ洋服、アクセサリーをインターネットで探しはじめ、ドラマに出てきたブランドの売り上げが急上昇するのだそうです。

 視聴者にとってあこがれの存在であるヒロインに少しでも近づきたい、ファッションを真似したい、同じ場所を訪れてみたいという感情は珍しいことではありません。

 エミリーに限ったことではありませんが、熱狂的なファンにとって、その映画やドラマの撮影に使われた場所への聖地巡礼のようなことはよくあることです。

 前シーズンに、ヒロインがドラマの中でNach(ナッシュ)(アニマルモチーフの陶器のアクセサリーブランド)のフラワーピアスとインコのネックレスを着用しており、そのアクセサリーは1週間もしないうちに、品切れになり、それ以来、売上高はうなぎ上りを続け、フランス全土、アメリカ、イタリア、日本から注文が殺到し続けているといいます。

 シーズン2、3に登場するボタン・パラダイスのベルトなどもその一つですが、すでに有名なハイブランドと小規模なアーティストのブランドを上手にミックスして登場させているところも巧みなところで、ヒロインが高級マーケティング会社に勤務という設定から、架空のブランドだけでなく、シーズン2では宝飾店のショパール、シーズン3では自動車メーカーのマクラーレンなど実在のブランドの広告キャンペーンを企画することもできています。

 このドラマのヒロインが自由な服やジュエリーを使うことで、このシリーズは多くのフランス人デザイナーのショーウィンドーになっているのです。

 実際にドラマの中で主人公が訪れるフランスのマクドナルドでは、年末から「エミリーインパリ」なるメニュー(バゲットのパンを使ったサンドイッチとポテトとドリンク+デザートにマカロンが付いたセット)が販売されています。

 こんなエミリー効果に沸いているパリは、もっと素直に喜んでもよさそうなものだとも思いますが、世界中の観光客を魅了する絵葉書のような風景を映し出すこのドラマに、真実とはほど遠い「理想化されたパリ」ばかりを映し出していることを指弾するエコロジストの政治家なども出てきて、それはそれで、ちょっと驚きで、閉口してしまいます。

 彼ら曰く、「エミリーが私たちに見せているのは、変わらないパリの写真であり、超中心地区に限定され、富裕層だけが住む、均質で固定された建築遺産を持つパリのディズニーランドに他ならない」のだそうです。

 しかし、私は思うのです。いいじゃない!ドラマなんだから・・と。

 ドラマの中では、決して便利でもなく、いじわるな人もところどころに登場し、適度にパリの嫌なところもシニカルに表現されているところもあるので、せめて美しい場所を映してくれる(美しいところばかりではないのも事実ではあるが・・)このドラマはありがたいものだと思いますが、どうにもイチャモンをつけたがる人はいるものだな・・と思います。

 以前、「アメリ」という映画が人気で、「アメリがクレームブリュレを食べたカフェ」をツアー行程に盛り込んでいる日本の旅行会社のツアーなどがありましたが、今や日本の旅行会社はツアーを組むということがあるのかないのか? 以前のように日本人観光客がツアーでパリを廻ることがあれば、さしずめ、「エミリー巡礼ツアー」なるものが登場していただろうな・・などと、新しい流れに昔を懐かしむ気分でもあるのです。


エミリーパリへ行く 社会現象 Emily in Paris


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2023年1月14日土曜日

ルイヴィトンと草間彌生の仰天コラボ

  


 シャンゼリゼのルイヴィトンが凄いことになっていると聞いて、近くまで行く用事があったついでに、噂につられて、ちょっと立ち寄ってみました。

 ついこの間までクリスマスのデコレーションに彩られていたシャンゼリゼにあるたくさんのお店もノエルのデコレーションが取り払われて、静けさを取り戻しているかのような様子の中、シャンゼリゼの中心にあるルイヴィトンのビルは、ちょっと度肝を抜くほど大きな草間彌生さんの超特大の人形を乗せ、ビル全体には、あのカラフルな水玉?が散りばめられ、ものすごい姿になっていました。

 たしか、ノエルの時には、シャンゼリゼのルイヴィトンのデコレーションはそこそこのデコレーションで、そこまで目を引くものでもなかった気がしますが、あれは、今回の草間彌生とのコラボにまつわるこのキャンペーンの前の嵐の前の静けさであったのか?と思わされるほどです。

 草間彌生さんは、そのお名前と、なんとなくその作風を存じ上げる程度であまり知識はありませんが、ルイヴィトンのサイトに行くと、「新しいルイヴィトンのコレクションは、世界的に著名な日本人アーティストである草間彌生氏とのコラボレーション!その大胆なシルエットや色彩豊かな作風にルイヴィトンのノウハウを融合させ、ルイヴィトンのアイコニックなデザインを草間氏のカラーで蘇らせている」と説明しています。

 ペインテッド・ドット、メタル・ドット、インフィニティ・ドット、サイケデリック・フラワーなどのシグネチャー・モチーフは、ルイ・ヴィトンの世界観の中で抽出されたものであり、彼女のアート、大胆さ、クラフツマンシップ(職人気質)が見事に表現されており、草間彌生氏は、魔力のような才能と決意で自分の存在を変容させて止まない、今日、最も影響力のある比類なき女性アーティストの一人であると大絶賛しています。



 パリ市はなにかと街全体の景観に対する規制が厳しく、マクドナルドでさえも、あのマクドナルドのトレードマークと言われる赤いテントを使えない場所もあるくらいの街です。そんな街で。このインパクトの強いデコレーションには、ちょっと度肝を抜かれる感じでもあります。

 これは、期間限定のものだからなのか? ルイヴィトンだからできるのか? わかりませんが、ちょっと人目を惹く・・なんてレベルのものではないことだけは確かです。

 思い起こしてみれば、シャンゼリゼの店舗はそれほど印象には残っていないものの、ヴァンドーム広場のルイヴィトンの店舗のクリスマスのデコレーションはなかなかインパクトの強いもので、もう元来のショーウィンドーも見えなくなっているほどのデコレーションで、ルイヴィトン・・どうしちゃったの?どこまでいくの?と思ったばかりで、すぐ、その翌月には、この草間彌生コラボキャンペーンです。


昨年クリスマスの時期のヴァンドーム広場のルイヴィトン

 どれだけ主張するの?と思ってしまう最近のルイヴィトン、草間彌生氏の強いインパクトのある作風が今のルイヴィトンの感覚と合致したのかもしれません。


ルイヴィトン 草間彌生 シャンゼリゼ


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2023年1月13日金曜日

フランスの学校に制服は必要なのか?

  


 フランスの公立の学校での制服着用案が議会に提案されているという話を聞いて、ちょっと驚いています。フランスの学校では、ほとんど制服というものを目にすることはなく、また、それが話題にあがることさえ、不思議な気がするほど、フランスの学生の服装は自由でラフな印象があったからです。

 ところが、制服着用を義務化しようという声もあるらしく、また、ブリジット・マクロン(マクロン大統領夫人)がこれに賛同するようなインタビュー記事が流れたりしたことで、この制服論議がにわかに注目されています。

 彼女はこの制服導入に肯定的な立場をとっている人で、自分自身が学生時代に制服を着ていたことは良い経験であった・・「違いをなくし、時間の節約に役立つ」と説明し、彼女自身は、学生時代、15年間、紺のスカートに紺のジャンパーを着用していたと語っています。

 時に、制服は社会的な格差を覆い隠すような役割を果たしたり、服装を管理することで、学校と外の世界との境界を再構築することができるという意見もあるようですが、現実的にフランスの現状を見る限り、制服を導入するには、人々の意識はあまりにかけ離れていて、かなりハードルが高いような気がします。

 だいたい、フランスの場合、義務化する場合は、国がそれを負担するか、援助するのが当然のことで、個人負担で制服導入などということは、ちょっと考えにくく、また実際に、そのためにかかる莫大な費用を考えると、公金を学校教育に使うとしたら、もっと別の方法があるのではないか?という意見もあります。

 そもそも、教師が不足していると言われているのは、公立の学校の教員の給与が低いこともあり、もう少し給与を上げて、質の高い教員を確保することの方が有効なのではないかとも思います。

 私は、日本で生まれ、日本の教育を受けて育ってきましたが、制服のある学校には行ったことがなく、どちらかというと、皆が同じ服を着ているという制服というものには、抵抗があるので、時間や経済的に節約したければ、個人的に学校に行くための服を決めればよいし、制服を着ることで社会的な不平等が埋められるものではないと思っています。

 それでも、やはり、中・高校生くらいになると、子供(学校?)によっては、ハイブランドとまではいわないものの、そこそこのそれなりのブランドのトレーナーや靴、バッグなどを持っている学生も私立の学校などだと、まあまあいて、フランスの学生は質素でシンプルでラフだという印象を持っていた私は、なるほど、ラフでシンプルの中にも、それなりのブランドがあるのだな・・と妙に感心したりしたこともあります。

 しかし、むしろ、自分が着る服ぐらい自分で選ぶ時間も機会もあってよいと思うし、人と違うことを認める、受け入れることも必要なことではないかと思うのです。

 以前、娘が高校生だったころに、日本に一時帰国をしていた時に、電車のホームでたむろする制服姿の日本の高校生を見て、もしも彼女が日本に住んでいたら、こんな制服を着る機会があったかもしれないと彼女の制服姿を想像してみたら、どう考えてもコスプレをしているようにしか思えないだろうな・・と思ったことを思い出します。

 ブリジット・マクロンについては、ちょっと世代も違い(今年70歳)、考え方も違うかもしれないと思いつつも、むしろ、フランスにもそんなことを言い出す人がいることに驚いた次第です。

 そもそも、彼女の本業は教師なので、学校の問題に対しては、特に考えるところがあるのかもしれないと思いつつ、そもそも彼女はファーストレディという微妙な立場。議会で討議されることに対して、公に発言するということにも少々、疑問も感じます。

 しかし、一方では、もしもフランスの学校に制服があったとしたら、もしかしたら、すごくセンスのいい制服ができあがるのでは?と見てみたい気もします。


フランスの学校制服導入法案


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2023年1月12日木曜日

早朝のパリ北駅での6人刺傷事件 容疑者は、OQTF(フランス領土退去命令)の移民

 


 年始早々、しかも早朝のパリ北駅で、刺傷事件が起こり、朝からパリ北駅には、大勢の警察官が押し寄せ、まことに物騒極まりない光景に震撼とさせられました。

 事件が起こったのは、早朝6時半ごろのことで、北駅入り口でナイフを持った男が襲い掛かり、そのままなだれ込むように容疑者が駅構内へと移動していく中、6人がナイフで刺されたのち、駅構内の警備にあたっていた警察官がとりおさえ、容疑者逮捕になりました。

 警察官は現場で容疑者に向けて3発発砲し、容疑者は生と死の間をさまよっている意識不明の重体だそうです。

 内務大臣はしきりと容疑者が犯行を開始してから、1分ほどで取り押さえた警察官の勇敢さを讃えていましたが、一方では、1分間であっという間に6人を切りつけるという容疑者の勢いにも驚かされます。

 被害者のうち1名が重症とのことですが、命に別状はないということです。

 現場に居合わせた人は、駅には人々の叫び声が響き渡り、血まみれになっている被害者を目撃したと証言しています。

 犯行の途中で撃たれた容疑者はそのまま意識不明になったため、動機はもとより、本人の身元確認もできない状態でしたが、指紋鑑定により、彼は20代のリビア人男性であることが判明しています。

 容疑者は3年前にフランスに入国しており、複数の犯罪により、昨年の夏の段階でOQTF(フランス領土退去命令)を受けていたことがわかっていますが、この容疑者の場合も(OQTF命令を受ける人によく聞く)複数の名前を持ち、また彼がリビア人であることから、彼を自国に追放することができずに、彼に対するOQTFは実行されていなかったと言われています。

 リビアへの追放は、同国が現在不安定であることと、リビア人ということを特定するためのフランスとリビアの間の交換ルートがないことで複雑になっているそうです。

 もともと彼がどのような経緯でフランスに入国していたのかわかりませんが、国籍を確認できずに、自国へ追放することができない国の人間がなぜ?滞在し続けられるのか? ビザ(滞在許可証)更新のたびに、すべての書類をそろえながらも、そのたびにヤキモキさせられながら、役所の横柄な態度にもひたすら耐えている身としては、ますます理解に苦しむところではあります。

 結局、犯人が意識不明の状態のため、この犯行の動機はわからずじまいですが、犯行に使われたものが「一般的に市販されているものではなく、自分で作ったものと思われる非常に危険な凶器であった」(これにはちょっと山上容疑者を思いだしました)と発表されており、このテロ行為が組織的なものであった可能性もあり得るという見方もされていますが、現在のところは、確認がとれていません。

 昨年発表された移民対策に対しては、このOQTFのリストを頑強なものにして、徹底的に追跡を行うと昨年末の段階で発表されていたはずですが、実際には、この容疑者のように結局のところ、OQTFが発令されながらも実際には退去させることができないのに、監視対象にもなっておらず、犯罪を重ねたうえにテロ行為に及んでいるということは、看過できない問題です。

 だいたい複数の名前を持っていれば、その追跡自体も困難で、今回のように指紋の照合でもしないかぎり、本人の特定もできない状態で移民問題のハードルの高さを感じさせられます。

 今まで、あまり気が付いていなかったこのOQTFに関して、昨年の大きな犯罪を見ても、このOQTF該当者が多い気がします。そもそもOQTFが発令されている時点で何等かの犯罪にかかわったことがあるということで、再犯を重ねる可能性が高いのも当然のことかもしれません。

 もともとパリ・北駅周辺は治安の悪いところで、私などはあまり近寄らない場所ではありますが、人の多い大きな駅。まさかのこんな騒ぎに警察官が駅構内で発砲するという事態には、さらに腰が引ける感じです。

 年末にもモンパルナス駅で同様の事件が起こったばかりです。

 年明けに、政府のスポークスマンが今年は、大幅に警察官が増員されるので、少し治安が改善され安心できるようになるだろうという発表をしていたばかり。いくら警察官が増員しても、同時に犯罪者が増えれば、結局はあまり変わらないことになります。

 警察官の発砲についても、思うところはありますが、今回のような緊急事態に際しては、致し方ないものなのかもしれません。


パリ北駅刺傷事件


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2023年1月11日水曜日

岸田首相のパリ訪問 海外首脳として初めての工事中のノートルダム大聖堂訪問

  


 日本の岸田首相がパリを訪問しているというニュースはフランスではあまり報道されていないようです。私はマクロン大統領が「Cher Fumio・・G7の議長国としてのヨーロッパ訪問の最初の国に選んで頂いたことを光栄に思います・・」というツイートで岸田首相のパリ訪問を知りました。

 昼間の時間帯はテレビをつけないのでわかりませんが、夜の時間帯のニュースでは、全く扱われない、まるで存在感が感じられない印象です。

 とはいえ、探してみれば、いくつかの報道機関では、ニュースとして取り上げられており、「1年間のG7の議長国を引き受けたばかりの日本の岸田首相が欧州最初の国として、フランスを訪問、アジア太平洋地域の安全保障問題において両国のパートナーシップを強化する意思を示す機会となった」とあります。

 岸田首相は10日にローマ、11日にロンドン、12日にカナダの首都オタワを訪問し、13日にワシントンでジョー・バイデン米国大統領と会談する予定。次回のG7首脳会議は、1945年に史上初の原爆を投下された広島で5月に開催される予定。

 岸田首相は「東シナ海や南シナ海で力による一方的な現状変更の試みが強まり、安全保障環境が緊迫する中、フランスと、合同軍事演習を含む協力を引き続き推進したい」と述べ、「フランスは自由で開かれたインド太平洋空間を実現するための主要なパートナーです」と力説したとか・・、G7に関しても防衛政策を中心にG7を動かしたい意向が伝えられています。

 日本の民生用原子力産業に積極的なフランスは、軍隊と防衛戦略の見直しに着手している日本の軍事産業での存在感を強化する意向だそうです。

 今回の岸田首相のパリ訪問で特に注目されたのは、マクロン大統領が岸田首相を修復工事中のノートルダム大聖堂に招待したことで、マクロン大統領が2019年の火災で破壊されたこの場所に海外からの首脳を招いたのは、初めてのことだそうです。

 マクロン大統領は「逆境に直面しても再建を目指すという共通の意志の象徴として、今回の訪問は、遺産という観点からフランスの並外れたノウハウを紹介する」と述べており、震災などの災害の多い日本という国には、「復興を成し遂げる国」というイメージが深く刻まれていることを感じさせられます。

 2024年修復工事完成予定のノートルダム大聖堂ですが、先日、久しぶりに通りかかって横から眺めたら(中には入れませんが)、想像以上に進んでいなくてビックリしたばかりです。

 ノートルダム大聖堂訪問の後は、エリゼ宮で晩餐会が催され、自動車(ルノー・日産・三菱連合)、原子力、再生可能エネルギー、民間航空分野での二国間協力が話題に上がったと言われています。

 フランスは現在、年金改革問題で話題沸騰中ということもありますが、岸田首相の訪仏はほぼ年金問題にかき消されて、テレビのニュースに上がらないのですが、報道している新聞等では、「最新の世論調査によると、首相の支持率は3.2ポイント上昇し37.4%となり、一方、政府が想定している防衛予算の倍増には48%が反対(39%は賛成)、このプロジェクトの財源として考えられる増税には71%が反対している」などという彼の日本での不人気ぶりまでを併せて報道しているところは、ちょっと微妙な気分です。


岸田首相パリ訪問


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