2023年1月13日金曜日

フランスの学校に制服は必要なのか?

  


 フランスの公立の学校での制服着用案が議会に提案されているという話を聞いて、ちょっと驚いています。フランスの学校では、ほとんど制服というものを目にすることはなく、また、それが話題にあがることさえ、不思議な気がするほど、フランスの学生の服装は自由でラフな印象があったからです。

 ところが、制服着用を義務化しようという声もあるらしく、また、ブリジット・マクロン(マクロン大統領夫人)がこれに賛同するようなインタビュー記事が流れたりしたことで、この制服論議がにわかに注目されています。

 彼女はこの制服導入に肯定的な立場をとっている人で、自分自身が学生時代に制服を着ていたことは良い経験であった・・「違いをなくし、時間の節約に役立つ」と説明し、彼女自身は、学生時代、15年間、紺のスカートに紺のジャンパーを着用していたと語っています。

 時に、制服は社会的な格差を覆い隠すような役割を果たしたり、服装を管理することで、学校と外の世界との境界を再構築することができるという意見もあるようですが、現実的にフランスの現状を見る限り、制服を導入するには、人々の意識はあまりにかけ離れていて、かなりハードルが高いような気がします。

 だいたい、フランスの場合、義務化する場合は、国がそれを負担するか、援助するのが当然のことで、個人負担で制服導入などということは、ちょっと考えにくく、また実際に、そのためにかかる莫大な費用を考えると、公金を学校教育に使うとしたら、もっと別の方法があるのではないか?という意見もあります。

 そもそも、教師が不足していると言われているのは、公立の学校の教員の給与が低いこともあり、もう少し給与を上げて、質の高い教員を確保することの方が有効なのではないかとも思います。

 私は、日本で生まれ、日本の教育を受けて育ってきましたが、制服のある学校には行ったことがなく、どちらかというと、皆が同じ服を着ているという制服というものには、抵抗があるので、時間や経済的に節約したければ、個人的に学校に行くための服を決めればよいし、制服を着ることで社会的な不平等が埋められるものではないと思っています。

 それでも、やはり、中・高校生くらいになると、子供(学校?)によっては、ハイブランドとまではいわないものの、そこそこのそれなりのブランドのトレーナーや靴、バッグなどを持っている学生も私立の学校などだと、まあまあいて、フランスの学生は質素でシンプルでラフだという印象を持っていた私は、なるほど、ラフでシンプルの中にも、それなりのブランドがあるのだな・・と妙に感心したりしたこともあります。

 しかし、むしろ、自分が着る服ぐらい自分で選ぶ時間も機会もあってよいと思うし、人と違うことを認める、受け入れることも必要なことではないかと思うのです。

 以前、娘が高校生だったころに、日本に一時帰国をしていた時に、電車のホームでたむろする制服姿の日本の高校生を見て、もしも彼女が日本に住んでいたら、こんな制服を着る機会があったかもしれないと彼女の制服姿を想像してみたら、どう考えてもコスプレをしているようにしか思えないだろうな・・と思ったことを思い出します。

 ブリジット・マクロンについては、ちょっと世代も違い(今年70歳)、考え方も違うかもしれないと思いつつも、むしろ、フランスにもそんなことを言い出す人がいることに驚いた次第です。

 そもそも、彼女の本業は教師なので、学校の問題に対しては、特に考えるところがあるのかもしれないと思いつつ、そもそも彼女はファーストレディという微妙な立場。議会で討議されることに対して、公に発言するということにも少々、疑問も感じます。

 しかし、一方では、もしもフランスの学校に制服があったとしたら、もしかしたら、すごくセンスのいい制服ができあがるのでは?と見てみたい気もします。


フランスの学校制服導入法案


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2023年1月12日木曜日

早朝のパリ北駅での6人刺傷事件 容疑者は、OQTF(フランス領土退去命令)の移民

 


 年始早々、しかも早朝のパリ北駅で、刺傷事件が起こり、朝からパリ北駅には、大勢の警察官が押し寄せ、まことに物騒極まりない光景に震撼とさせられました。

 事件が起こったのは、早朝6時半ごろのことで、北駅入り口でナイフを持った男が襲い掛かり、そのままなだれ込むように容疑者が駅構内へと移動していく中、6人がナイフで刺されたのち、駅構内の警備にあたっていた警察官がとりおさえ、容疑者逮捕になりました。

 警察官は現場で容疑者に向けて3発発砲し、容疑者は生と死の間をさまよっている意識不明の重体だそうです。

 内務大臣はしきりと容疑者が犯行を開始してから、1分ほどで取り押さえた警察官の勇敢さを讃えていましたが、一方では、1分間であっという間に6人を切りつけるという容疑者の勢いにも驚かされます。

 被害者のうち1名が重症とのことですが、命に別状はないということです。

 現場に居合わせた人は、駅には人々の叫び声が響き渡り、血まみれになっている被害者を目撃したと証言しています。

 犯行の途中で撃たれた容疑者はそのまま意識不明になったため、動機はもとより、本人の身元確認もできない状態でしたが、指紋鑑定により、彼は20代のリビア人男性であることが判明しています。

 容疑者は3年前にフランスに入国しており、複数の犯罪により、昨年の夏の段階でOQTF(フランス領土退去命令)を受けていたことがわかっていますが、この容疑者の場合も(OQTF命令を受ける人によく聞く)複数の名前を持ち、また彼がリビア人であることから、彼を自国に追放することができずに、彼に対するOQTFは実行されていなかったと言われています。

 リビアへの追放は、同国が現在不安定であることと、リビア人ということを特定するためのフランスとリビアの間の交換ルートがないことで複雑になっているそうです。

 もともと彼がどのような経緯でフランスに入国していたのかわかりませんが、国籍を確認できずに、自国へ追放することができない国の人間がなぜ?滞在し続けられるのか? ビザ(滞在許可証)更新のたびに、すべての書類をそろえながらも、そのたびにヤキモキさせられながら、役所の横柄な態度にもひたすら耐えている身としては、ますます理解に苦しむところではあります。

 結局、犯人が意識不明の状態のため、この犯行の動機はわからずじまいですが、犯行に使われたものが「一般的に市販されているものではなく、自分で作ったものと思われる非常に危険な凶器であった」(これにはちょっと山上容疑者を思いだしました)と発表されており、このテロ行為が組織的なものであった可能性もあり得るという見方もされていますが、現在のところは、確認がとれていません。

 昨年発表された移民対策に対しては、このOQTFのリストを頑強なものにして、徹底的に追跡を行うと昨年末の段階で発表されていたはずですが、実際には、この容疑者のように結局のところ、OQTFが発令されながらも実際には退去させることができないのに、監視対象にもなっておらず、犯罪を重ねたうえにテロ行為に及んでいるということは、看過できない問題です。

 だいたい複数の名前を持っていれば、その追跡自体も困難で、今回のように指紋の照合でもしないかぎり、本人の特定もできない状態で移民問題のハードルの高さを感じさせられます。

 今まで、あまり気が付いていなかったこのOQTFに関して、昨年の大きな犯罪を見ても、このOQTF該当者が多い気がします。そもそもOQTFが発令されている時点で何等かの犯罪にかかわったことがあるということで、再犯を重ねる可能性が高いのも当然のことかもしれません。

 もともとパリ・北駅周辺は治安の悪いところで、私などはあまり近寄らない場所ではありますが、人の多い大きな駅。まさかのこんな騒ぎに警察官が駅構内で発砲するという事態には、さらに腰が引ける感じです。

 年末にもモンパルナス駅で同様の事件が起こったばかりです。

 年明けに、政府のスポークスマンが今年は、大幅に警察官が増員されるので、少し治安が改善され安心できるようになるだろうという発表をしていたばかり。いくら警察官が増員しても、同時に犯罪者が増えれば、結局はあまり変わらないことになります。

 警察官の発砲についても、思うところはありますが、今回のような緊急事態に際しては、致し方ないものなのかもしれません。


パリ北駅刺傷事件


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2023年1月11日水曜日

岸田首相のパリ訪問 海外首脳として初めての工事中のノートルダム大聖堂訪問

  


 日本の岸田首相がパリを訪問しているというニュースはフランスではあまり報道されていないようです。私はマクロン大統領が「Cher Fumio・・G7の議長国としてのヨーロッパ訪問の最初の国に選んで頂いたことを光栄に思います・・」というツイートで岸田首相のパリ訪問を知りました。

 昼間の時間帯はテレビをつけないのでわかりませんが、夜の時間帯のニュースでは、全く扱われない、まるで存在感が感じられない印象です。

 とはいえ、探してみれば、いくつかの報道機関では、ニュースとして取り上げられており、「1年間のG7の議長国を引き受けたばかりの日本の岸田首相が欧州最初の国として、フランスを訪問、アジア太平洋地域の安全保障問題において両国のパートナーシップを強化する意思を示す機会となった」とあります。

 岸田首相は10日にローマ、11日にロンドン、12日にカナダの首都オタワを訪問し、13日にワシントンでジョー・バイデン米国大統領と会談する予定。次回のG7首脳会議は、1945年に史上初の原爆を投下された広島で5月に開催される予定。

 岸田首相は「東シナ海や南シナ海で力による一方的な現状変更の試みが強まり、安全保障環境が緊迫する中、フランスと、合同軍事演習を含む協力を引き続き推進したい」と述べ、「フランスは自由で開かれたインド太平洋空間を実現するための主要なパートナーです」と力説したとか・・、G7に関しても防衛政策を中心にG7を動かしたい意向が伝えられています。

 日本の民生用原子力産業に積極的なフランスは、軍隊と防衛戦略の見直しに着手している日本の軍事産業での存在感を強化する意向だそうです。

 今回の岸田首相のパリ訪問で特に注目されたのは、マクロン大統領が岸田首相を修復工事中のノートルダム大聖堂に招待したことで、マクロン大統領が2019年の火災で破壊されたこの場所に海外からの首脳を招いたのは、初めてのことだそうです。

 マクロン大統領は「逆境に直面しても再建を目指すという共通の意志の象徴として、今回の訪問は、遺産という観点からフランスの並外れたノウハウを紹介する」と述べており、震災などの災害の多い日本という国には、「復興を成し遂げる国」というイメージが深く刻まれていることを感じさせられます。

 2024年修復工事完成予定のノートルダム大聖堂ですが、先日、久しぶりに通りかかって横から眺めたら(中には入れませんが)、想像以上に進んでいなくてビックリしたばかりです。

 ノートルダム大聖堂訪問の後は、エリゼ宮で晩餐会が催され、自動車(ルノー・日産・三菱連合)、原子力、再生可能エネルギー、民間航空分野での二国間協力が話題に上がったと言われています。

 フランスは現在、年金改革問題で話題沸騰中ということもありますが、岸田首相の訪仏はほぼ年金問題にかき消されて、テレビのニュースに上がらないのですが、報道している新聞等では、「最新の世論調査によると、首相の支持率は3.2ポイント上昇し37.4%となり、一方、政府が想定している防衛予算の倍増には48%が反対(39%は賛成)、このプロジェクトの財源として考えられる増税には71%が反対している」などという彼の日本での不人気ぶりまでを併せて報道しているところは、ちょっと微妙な気分です。


岸田首相パリ訪問


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2023年1月10日火曜日

マクドナルドの再利用食器盗難続出

 


 フランスでは、今年の1月から、まずは大手のファストフード店から、店内飲食に関しては、これまでの紙の容器使用が禁止になり、その再利用食器の盗難が相次いでいて、大手チェーン店マクドナルドやバーガーキングなどが盗難問題に頭を抱えているという話を聞いて、滅多に行かないファストフード店を覗いてみました。

 大手ファストフードメーカーは、すでにかなりの割合で再利用食器に切り替わっているということだったのに、実際には、私が覗いてみたマクドナルドやバーガーキング、KFC(ケンタッキーフライドチキン)は、見事に店内飲食に関しても、まだ紙の容器を使用していたので、なんだか肩透かしを食った感じでした。

 たま~に食べたくなる程度で、普段はあまり利用しないファストフード店に、その盗難続出しているほど人気らしい再利用容器見たさに覗きに行ったのですが、結局、まだ全然、使われていなくてガッカリしました。

 それともあまりの盗難の多さに何か対策を講じているのでしょうか?

 しかし、この盗難騒ぎは、十分に想像のつく話ではあったものの、今のところは、めずらしくて、にわかコレクターが持って行ってしまったりすることもあるのかもしれませんが、少し、見慣れて落ち着いてくれば、とりたてて、特別感があるわけでなし、すごく可愛いという感じでもないので、そのうち落ち着いていくのだと思います。

 なんなら、その再利用食器、マニアのために販売したら、どうか?とも思います。

 まあ、そんな食器を見たさに覗きに行く私のような野次馬もいるのだし、客よせとしては悪くないことかもしれませんが、そもそも言わせてもらえば、フランスのマクドナルドなどは、日本のように次々と魅力的なメニュー?が出てくるわけでもなく、新しいメニューが出たとしても、チーズやベーコンが出たり入ったりする程度で、大して、あっ!これ食べてみたい!ともならないし、ケンタッキーに至っては、あのケンタッキー独特の(といっても日本のケンタッキーしか知らないのですが)ケンタッキーフレーバーが感じられずに衣ばかりが多くて、そのうえ、そんなに安くもないので、あんまり行かないのです。

 しかし、最近、マクドナルドでは、NETFLIXで人気らしい「エミリーパリに行く」に乗っかって、「Emily in Paris」というメニューができて、ハンバーガーのバンズがバゲットになっているハンバーガーとポテトにドリンク、そしてデザートにマカロンがついてくるというメニューがあって、ちょっと気になっているところです。フランスのマクドナルドもなかなか商魂たくましくなってきたな・・とちょっと感心しています。




 この再利用可能食器に関しては、食器を洗剤で洗って、乾燥させなければならないため、より多くのエネルギー、水、洗剤を使うことになると、一部では、紙製放送よりもエコではないという声も上がっています。

 それでも、フランス人はなんだかんだ言ってもハンバーガーは嫌いなはずもなく、マクドナルドはファストフード業界の中では、やはり一番人気で、1日120万人以上、年間4億4千万人がマクドナルドを利用しているそうで、毎秒29個、9億個以上のビッグマックを販売しているそうです。

 うちの夫はけっこう古い世代のフランス人でもあり、アメリカのものを目の敵にするようなところがあり、マクドナルドなどは、その標的の一つで、「あんな手で食べる下品な食べ物(フランスのサンドイッチだって手で食べるのに・・と私は思う)」などと言うのですが、実のところは、たまにマクドナルドなどを買ってくると、誰よりも勢いよく食べるのは彼なのです。

 しかし、繁華街に行けば、ファストフードのようなお店は、なにもマクドナルドやバーガーキングだけではないわけで、なんか、この規制も不公平感がある感じもしないでもありません。

 ましてや、フランス人は、(まぁどこの国の人もそうかもしれませんが、)なんてことないものでも、ちょっとおしゃれなパッケージやプレゼンテーションだったりすると、喜んで飛びつく(特に食べ物)ところがあるので、このパッケージ問題、一般のお店からしたら、意外と大きく響いてくる話かもしれません。


マクドナルド再利用食器盗難続出


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2023年1月9日月曜日

20日連続10℃超えのパリの暖冬 150年ぶりの記録

 


 今年の冬はエネルギー危機で、1月から2月にかけての冬の寒さが厳しくなり、最も電力消費が激しくなる時期には、停電もありうる・・一時停電だとか、計画停電のシミュレーションだとか、昨年12月には、さんざん騒いでいて、しまいには、マクロン大統領までが登場して、「パニックを起こさないで!」などと、まだ起こってもいない停電騒ぎを鎮火しようとしていたくらいでした。

 ところが、一時、12月に氷点下にまで気温が下がった週が1週間あっただけで、その後は、どういうわけか、気温は真冬とは思えないような10℃超えの気温がもう20日以上も続いています。

 電力消費に関しては、まことに幸いしているこの異常な暖冬は、気象学者によれば150年ぶりの記録だとかで、150年ということは、おそらく現在生きている人が誰も経験したことのない暖冬を経験していることになります。

 この記録は、少なくともあと1週間くらいは更新しつづける見込みと言われています。

 昨年、秋から冬にかけて、エネルギー危機について騒ぎはじめ、政府首脳の面々が「寒けりゃ着ろ!」と言わんばかりに、タートルネックを着て節電アピールしていたのが、あれは、何だったのだろう?と思うくらいにタートルネックも暖房もいらない気候です。

 パニックを必要以上に騒ぎ立てる感があるフランスで、本当に停電になれば、えらい騒ぎになりそうですが、今のところ、この暖冬のおかげで我が家も暖房を入れなくても全然、OKで、助かっています。

 もとより電気代の高騰で、まだ新しい請求書は受け取ってはいませんが、パン屋さんの電気代が去年の7倍になったとか、8倍になったとかいう話を聞いていれば、家庭用の電気代とて、例外ではないはずで、今から恐れをなしているので、暖房がいらないのは、非常に助かる話です。

 とはいえ、気温が穏やかなせいか、そのかわりというべきなのか?天気が悪く雨の日が多くて、「少々、寒くても天気がいい方がいいな・・」などと無いものねだりをしてしまいますが、きっと、「寒けりゃ寒いで文句言ってるんだろうな・・」とも思います。

 フランス気象庁のデータによると、2022年はフランス本土で過去最も暖かい年となり、平均気温は14.5℃、前回の記録(2020年)より0.4℃高くなりました。年明け早々に、この気温が続いているということは、現段階では、間違いなく昨年の記録は更新しているわけで、暖冬は助かるけれど、この分でいくと、一体、夏はどんなことになるんだろうか?と少なからず不安でもあります。

 昔、大学の恩師に「心配してもしなくても変わらないことは、心配することはない・・」と言われたことを思い出しますが、まさにお天気、気候に関しては私が心配してもしなくても変わらないものに違いありません。


150年ぶりの記録 パリの暖冬


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2023年1月8日日曜日

黄色いベストが帰ってきた!

  


 前回、激しく、長く続いた黄色いベスト運動は、パンデミックの訪れとともに沈静化していました。途中、何回か再開の動きは見られましたが結局、そこまでの騒ぎにもならず、継続もせずにいました。

 黄色いベスト運動は、まさにこの黄色いベストという、どの家庭にも1つや2つはありそうな身近なモノ、また蛍光色で目立ち、お手軽なわりには、存在感をアピールすることができる絶好のアイテムでもあり、このデモを盛り上げた一つの重要なツールになっていたかもしれません。

 まさに黄色いベストは、このデモ活動の名前に使われるほど、求心力を持つシンボル的な役割も果たしていました。

 毎週のように土曜日になると登場する黄色いベスト運動は、一時は、日常生活に支障をきたすほどに、盛り上がりを超えて、危険な状態にまで達して、デモ隊の行進するルート近辺の店舗やレストランなども土曜日になるとシャッターを閉めて、休業を余技なくされる事態でした。

 それが突然のロックダウンで街に出られなくなったことで、デモどころではなくなり、否応なしに沈静化したのでした。

 ワクチン接種が進むにつれて、コロナウィルスは常に存在するものの、フランス人の生活は、ほぼ日常を取り戻し、ポツポツとデモは起こっているものの、前回の黄色いベストのような大きなうねりのような動きは現在のところ起こってはいません。

 そんな黄色いベストが年明け早々に戻ってくると聞いて、非常に警戒していましたが、実際には、フランス国内で4700人が参加した(そのうちパリ2000人)程度だったというので、あまり盛り上がりはないようです。

 最初の黄色いベスト運動が発生してからすでに4年半が経ち、実際には、経済状況は、むしろ悪化しているうえ、インフレや年金改革、エネルギーコストの問題など、抗議する内容は、膨れ上がっているのに、どういうわけか、あまり求心力がないようです。

 そもそも、黄色いベスト運動に参加している人には、マクロン大統領の政権に対して、マクロン大統領のやることなすことすべてが気に入らないという人も少なくないのですが、それらは、社会全体を動かしていくような動機としては、成り立たないのかもしれません。

 ある労働組合や社会運動を専門とする歴史家によると、今回の黄色いベストはもはや印象に残るものではなく、勢いがなくなったというよりも、いくつかの過激派のコアに似た動員になっていると言われています。

 社会運動は、自然発生的に起こるものであり、それを同一の形で維持しようとすることは、そもそも不自然であり、失敗に終わることが多いと言われています。彼の見解が正しかったのかどうかはわかりませんが、今回の再結成の動員は、期待されたほどの人を集めなかったようで、とりあえず警備にあたった警察官の数を大きく上回ることはなかったようです。

 年末に100万人の人が集まったシャンゼリゼに比べると、2000人ですから、なんだか貧弱にさえ感じでしまいますが、火種はいくらでもある現在の状況で、これにいつ火がつき、燃え上がるかは、わからない状況です。

 このようなデモの発生を恐れて、政府はエネルギーコストに圧迫されるパン屋さんなどの対応に奔走し、早急に対応策を示したり、「国民の声を注意深く聞く」と訴えかけたり、大きなムーブメントにならないように必死に対応している様子がうかがえます。

 あまりに問題が山積みすぎて、逆に国民の怒りも分散しがちな感もありますが、とりあえず、おそらく、今年、一番の火種になりそうなのは、年金改革問題で、この年金改革に対するデモは、1月21日に予定されています。

 このデモが黄色いベストに変わる何か新しいシンボリックなものを掲げて立ち上がると、大変な騒ぎになる可能性もありえます。

 しかし、今回の黄色いベストを見るかぎり、同じデモを長く続ける・・ましては、一度、沈静化したものを以前の勢いに戻すのは、難しい感じです。やはり、本物の国民の激しい怒りが着火剤になるもので、また、一度ついた火は長い間燃え続けるので、とりあえず着火しないようにと、問題が山積する現在、政府は地雷のうえを歩いているような感じなのかもしれません。


黄色いベスト運動再開


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2023年1月7日土曜日

ガレット・デ・ロワはカロリー爆弾

  


 ガレット・デ・ロワは、年明け1月6日のエピファニー(公現節)に食べるお菓子で、その王様のガレットと呼ばれるとおり、ガレット・デ・ロワを買うともれなく紙の王冠がついてきます。中にはフェーブと呼ばれる小さな陶製のお人形などが入っており、切り分けて食べたときに、そのフェーブが当たった人は、その年、幸運が訪れると言われ、祝福を受けて王冠をかぶせてもらうという古典的なお遊びを含んだお菓子です。

 以前に比べると、このガレット・デ・ロワは、ノエル前からスーパーマーケットなどには、登場するようになっていますが、その本番は、年明け早々のフランスの家族や友人の間での一つの行事のようなもので、この時期にしか並ばないお菓子です。

 年末年始と、ノエルのブッシュ(丸太型のケーキ)やごちそうに始まり、年越しのカウントダウンに続くこのガレット・デ・ロワは、カロリーの過剰摂取の極めつけのような存在で、この時期、家族はもちろんのこと、友人同士や会社などでも、誰かしらがガレットを買ってきて、シャンパンを開けては「Bonne année ボナネ~!」となるため、なかなか罪悪感にかられる代物でもあります。

 以前、甘いものがあまり得意ではなかった私でもこれは好き!と思っていたガレット・デ・ロワは、甘すぎず、サクサクのパイ生地だったりすることもあって、食べやすいのですが、しかし、普段、私はそんなに食べることのないパイ生地というものも、なかなかハイカロリーな上に、中身はアーモンドバウダーのマジパンのようなクリーム、つまり、バター、卵、小麦粉、砂糖、アーモンドパウダーの詰まった計算してみるのも恐ろしいカロリー爆弾なわけです。

 通常、一般的なケーキ類の平均カロリーは、100gあたり338kcalなのに比べると、このガレット・デ・ロワは、456kcalなのだとか・・。もちろん、製品によって、差はあるものの、あらためて、自分が食べた分量に対して反省してしまうカロリー爆弾ぶりです。

 しかし、一年のこの時期だけという言い訳が先に立ち、また行く先々で「ホレホレ~食べないの?」と言わんばかりにこの時期、どこのスーパーマーケットでもブーランジェリーでもこのガレットが見事に並んでいるのを見ると、やっぱり縁起ものだしな・・などと思いながら、ついつい手が伸びてしまうのです。



 値段は、それこそ、かなりばらつきがあるようで、モノプリなどのスーパーマーケットだと6~9ユーロ(約840円~1250円)程度、PAULなどのお店だと小・中・大(4-6-8人分)16.5、24、29ユーロ(約2300円~4000円)くらい、一人分という小さいものもありますが、一人分のものには、フェーブが入っていません。

 また個々のブーランジェリーだと、かなり大きさにバラつきがあって、計り売りなのか、妙に半端な値段で売られていたりもします。




 私は今年は、最近、ドハマりしているストレー(パリ最古のパティスリーと言われているお店)というお菓子屋さんで、今年はこの1個だけ!と誓って少々、高いな・・と思いながら、どうしてもここのガレットが食べてみたくて買いました。

 私史上、最も高いガレット(30ユーロ・4人分)でしたが、材料がいいのか、バターがいいのか、とにかく軽くて、美味しいガレットで、「やっぱりすごい!」と感激しながら、しかし、いやいや・・いくら軽くてもカロリーにかわりはない・・と自分を戒めるのでした。

 とはいえ、感動的に美味しかった・・。

 


 ここのお店には、ドライフルーツに彩られたブリオッシュ生地のガレットもありましたが、ブリオッシュ生地の方は多少、カロリーが下がるようです。


 年末年始のカロリー過剰摂取期間は、一応、このガレットで締めくくられることになりますが、実は、この後、クレープの日(2月)が残っています。  



 ちなみに、今回のフェーブはこちら・・(裏・表)、ひとくち目で当たって、ラッキー!と思ったのですが、なんと、陶器ではなく、金のそら豆型のフェーブでした。フェーブだからそら豆には違いない・・と思いつつ、なんか、歯に詰めたものが取れちゃった・・みたいな感じでもあり、ちょっと微妙な気分でした。