2021年1月22日金曜日

滞在許可証更新手続きのトラブル アクセス不能なフランスのお役所

 


 私のフランスの滞在許可証は、10年ごとに更新するもので、昨年のロックダウン中にその更新手続きの時期が重なってしまったことが、そもそもの不運の始まりでした。

 いつもなら、滞在許可証の期限が切れる数ヶ月前に、更新のための必要書類と、この日に書類を提出しに来てくださいという通知が届くのですが、今回は、それが届きませんでした。

 何回か電話しましたが、「サイトを見てください!」とだけ言われて、電話は切られ、仕方なくメールで問い合わせると、しばらくして、「今は、手続きが滞っているから、そのうちレターが届くまで、そのままで良いです」との回答。

 なんとも落ち着かない状態が続いていましたが、それから一週間くらいして、更新手続きの呼び出し状が届きました。

 3月から5月にかけての最初のロックダウンでは、ほぼ、全ての人が外出できなかったし、お役所も閉まっていたので、その間の手続き分が滞っているので、仕方なかったとも思いますが、指定された日時に出向くと、もの凄い人。

 日時が決められているのになぜこの状況? しかも、いつものことながら、すこぶる感じが悪いのです。まるで、犯罪者を追いやるような人の整理の仕方にウンザリでした。

 しかし、長時間を要したものの、その日は、書類を提出し、「新しいカードができたら、SNSで連絡します。」と言われて、とりあえずの仮のカードをもらいました。

 その仮のカードの期間が6ヶ月間と異様に長かった時に、嫌な予感はしましたが、まあ、さぞかし、手続きをする人が溜まっているのだろう・・さすがに6ヶ月もあれば、大丈夫だろう・・くらいに思っていたのが甘かったのです。

 私の仮のカードの期限は今年の1月5日までで、なかなか連絡が来ないと思ってはいましたが、この間には、再び、2回目のロックダウンまで挟まったので、また遅れているのだろうと思っていました。

 しかし、この仮のカードの期限の1ヶ月前になっても連絡が来ない状態に、さすがに、私は、焦り始めました。12月は、クリスマス、年末年始と、ただでさえ働かないお役所は、ますます働かなくなり、機能が著しく低下するからです。

 それからは、何回電話しても、「サイトでアクセスしてください!」と言われて、ガチャンと切られ、何回メールを送っても、何の返答もありません。

 これはどうにもならない!と、役所宛に書留で手紙を送りましたが、それでも返事はないままに、とうとう年を越してしまい、ついに期限が切れてしまいました。

 今回は、仮のカードの期限が多少切れても大丈夫・・などという確認も取れない状態で、電話もダメ、メールもダメ、手紙もダメで、全く、アクセス不能です。

 直接、出向いても、予約以外は受け付けないと言われることは承知していましたが、周囲の人に相談しても、「とにかく、直接、行ってみるしかないよ!」と言われて、入れてもらえなかった時は、せめて、渡して来ようと、一度、提出した書類を再び全て、揃えて、手紙も添えた一揃えを持って役所にも再び出向きましたが、役所前には、警官が立ちはだかり、どうしても入れてもらえません。

 警備の警官の方も自分の言われた「予約のない人を入れない」という仕事をしているだけなので、彼らには、それ以外の人を通す権限もありません。

 せめて、受付に用意した手紙と書類を置いてこようと、受付だけにでも行かせて欲しいと頼んでも、受付さえも、コロナ対策のために閉鎖されているとのこと。持って行った書類を渡してくることさえできませんでした。

 このままでは、私は、不法滞在者です。

 絶望的な気持ちで私は、家に帰り、フランス人に相談すると、この種のトラブルの相談に乗ってくれる機関に問い合わせてくれました。

 その機関は、すぐにメールに返信をしてくれて、すぐに弁護士を紹介してくれました。こうなったら、法に訴えるしかないということです。彼女もフランス人だけあって、「満足に働かない役所の人のために、絶対に引き下がってはいけない!諦めちゃいけない!」と落ち込んでいる私を励ましてくれました。

 彼女は、他の色々なケースも調べ上げ、滞在許可証の申請、更新手続きに関して、多くのトラブルが起こっていること、そのためのデモまで起こっていることを教えてくれました。

 しかし、どれだけ多くのトラブルが起こっていようと、それが許容できるものでも、安心できることでもありません。

 年末年始にかけて、いくらこちらが問い合わせても、アクセス不能の状態に、私は、不安が募り、「こんな思いをするくらいなら、もう日本に帰ろうか? いや、滞在許可証がないならば、帰るしかないのではないか?」などと鬱々と夜もよく眠れない日々でした。

 そして、弁護士に送る書類も手紙も全て揃えて、明日には送る・・と思っていた時に、まるで、何事もなかったように、役所から、「あなたの滞在許可証は、すでにできています。このナンバーでサイトで予約をとって、225ユーロの収入印紙とこれまでの滞在許可証、仮のカードを持って、取りに来てください」とメールが入りました。

 全く、何というタイミングなのだろうか? このタイミングで、12月に私が送った手紙を彼らがようやく目にしたということなのでしょうか? 朗報ではありましたが、どうにも狐につままれたような、俄には信じがたい気持ちでした。

 そして、昨日、滞在許可証の受け取りに行くと、あいも変わらず、役所の前には、凄い行列、予約は、人が溜まる前の朝一番に入れたのに、長い行列に怒声を浴びせる警官。

 もうここ一ヶ月のことで、疑心暗鬼になっていた私は、カードを受け取って、しっかり内容を確認するまでは、安心できないと緊張していました。

 しかし、中に入ると、さすがに朝一のこと、大して待たされることなく、あっさりカードを受け取りました。記載されている内容に誤りがあったら、この場ですぐに言わなければ・・と思っていた私は、カードの内容もその場でチェックしてまたビックリ!特別に申請したわけでもないのに、カードは、CARTE RESIDENT PERMANENT(永住)になっていました。

 別に文句をつけることでもないので、そのまま受け取りましたが、この永住になった経緯はよくわかりません。調べてみると、10年の滞在許可証を2回以上更新した場合は申請可能だとなっているのですが、特にそのための申請をしなくても自動的に変更されることは知りませんでした。

 とはいえ、10年後の書き換えがないわけではなく、これは、フランス人のIDの書き換えも15年に一度はしなくてはならないので、同じと言えば、同じです。

 私が何度となく送ったメールにも、手紙にも、結局のところ、返事はないままに、突然の「カードができてます」のメールでおしまい。ここ数ヶ月のゴタゴタは、何だか責任の所在がわからないままに、まるで何もなかったように消えていきます。

 結局のところ、カードの更新は済んだので、良いと言えば良いのですが、役所の不備が全くなかったことのようになってしまうこの状態。

 問題が表面化しないのですから、改善されることは、なさそうです。


<関連>「やっぱりウンザリする10年に一度の滞在許可証の更新」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/07/blog-post_7.html

 

2021年1月21日木曜日

FFPマスクの義務化の是非とフランス人の義務と補償と権利

  


 どうやら、イギリス変異種がフランスにも拡大し始めていることを受け、フランスでは、マスク論争が再び再燃しつつあります。

 コロナウィルス感染が始まって以来、マスクに関しては、フランスは、紆余曲折を重ねてきました。

 昨年3月の最初の感染爆発の際は、本来は、パンデミック対策としてストックされているはずのマスクが大幅に削減されていた状態で、また、マスクの有効性に関しても、政府は「一般人にはマスクは必要ない」などと臆面もなく発表しており、医療従事者以外は、マスクを買えない状況がしばらく続いていました。

 その後、マスクが国宝級の待遇で輸入され始め、5月のロックダウンに向けて、マスクが一般人に対しても推奨されるようになりました。

 それでも、当初、フランス人にとって、マスクへの嫌悪感は強く、マスクが浸透するには、それなりの時間がかかりましたが、パリ全域でマスクが義務化されたのは、人々がバカンスへ出かけ、第2波を迎え始めた8月末のことです。

 マスクをするしないで、バスの運転手が殴り殺された事件も起こりました。

 秋から冬にかけて、フランスは、感染者が1日6万人強という、立派な第2波を迎え、周囲の国々もフランスへの渡航を禁止する国が続出しました。

 10月末から11月の約1ヶ月間の2回目のロックダウンで、フランスの感染は1日1万人前後にまで減少しましたが、クリスマス、年末年始を過ぎて、イギリス変異種の影響もあるのか、現在のフランスの新規感染者数は、2万5千人前後にまで上昇し、現在は、18時以降の夜間ロックダウン状態です。

 特に現在は、イギリス変異種の驚異で、その感染力の強さから、義務化されているマスクも、ただの布マスクやサージカルマスクでは充分ではないと言われ始め、ドイツの一部の地域などは、FFPマスク着用が義務化されていることから、フランスでもFFPマスク(よりフィルタリング効果の高いマスク)着用が必要なのではないかという意見が出始めています。

 最初にロックダウンが解除になる際には、「マスクが推奨される」という義務ではない状況にも関わらず、ほとんどの市町村から、ロックダウンに間に合うように、国民にマスクが配布されました。

 しかし、今回のFFPマスクは、サージカルマスクや洗って何度も使える布マスクとは違い、価格もサージカルマスクの何倍もかかります。毎日、使うものゆえ、それを抱えるのが国であろうと国民であろうと負担は大きくなります。

 また、医療従事者を優先とするのは、必須ですが、FFPマスクの供給が間に合うとも思えず、当初のマスク問題のように、政府は、このFFPマスクについて、「現在のフランスの感染状態では、一般人には、必要ない。」と発表しています。

 まるで、あの時と同じではないか・・と私は、思ってしまいます。した方が良いマスクを供給できないことから(補償も含めて)、「必要ない」と言うところが・・。

 義務化する以上、何らかの補償を要求するのは、フランス人の最も得意とするところ、コロナウィルス感染対策のために国による規制で営業ができない店舗等に対しては、前年度の実績に対するパーセンテージで補償が支払われています。

 前回のマスク義務化の前には、ロックダウン解除の段階で、一応、マスクが配布されました。思えば、これも補償の一部でした。

 FFPマスク義務化には、そのマスク配布は、補償という面でも、かなりハードルが高いのです。しかし、義務化に伴う補償をフランス人は要求します。

 この危うい感染状況の中で、フランスでは、完全なロックダウンにならない限り、何らかの抗議をするデモやストライキをする権利が常に認められており、また、今週は、RER(イル・ド・フランス圏急行鉄道網)の交通機関のストライキが予定されています。

 この状況の中、ストライキによって起こる交通機関の更なる混雑状況をわざわざ起こすストライキが認められていることは、マスクをサージカルマスクにするかFFPマスクにするか以前のフランスの悪循環の大きな要因の一つです。

 毎週のように土曜日に行われるデモもまた同じです。

 人の行動を大きく制限しながら、主張する権利は決して侵害しないのがフランスです。

 今は、特にコロナ禍ゆえ、そんな悪循環が際立って見えますが、思えば、通常時もこのフランス人の権利を主張するデモやストライキは、常に大きな混乱をもたらしているのです。

 それでも、フランス人は、この権利の主張を誇りに思い、フランスのフランスたる重要な一面であると大切にしているのです。

 

<関連>

「コロナ禍中でも続くフランス人の権利の主張」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/11/blog-post_19.html

「マスク着用を注意したバスの運転手が暴行を受けた末に脳死状態 フランスの治安」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/07/blog-post_8.html

 

 

 

 













2021年1月20日水曜日

ハードルが高いコロナ禍の日本への一時帰国

  


 

 ここのところ、頻繁に日本のJALやANAなどの日本の航空会社から、日本への一時帰国に関する案内のメールが頻繁に入ります。航空業界の業績が著しく悪化しているため、少しでも巻き返しのために必死なのだろうな・・と思いながら、メールを覗いてみました。

 私は、日本へ一時帰国をする際に特に航空会社を決めて使っているわけでもないので、この20年以上の間に直行便、経由便と様々な航空会社を使ってきました。

 しかし、ここ数年は、日本から帰ってくる時は特に、あまりの荷物の多さに(99%食料品)、直行便を使うようになって、しかもエールフランスは、ストライキで何度か、急に帰りの便が勝手に変更されたりして、大変な思いをしたために、すっかり懲りて、必然的にANAかJALを利用することが多くなっていました。

 今は、日本へ行くつもりはないのですが、「日本入国時の制限ならびに検疫強化」のお知らせや、「ご帰国あんしんサービス」なるお知らせのメールを見て、いかに日本への一時帰国のハードルが高いかを再確認しました。

 まず、日本入国時には、72時間以内の新型コロナウィルス検査陰性の証明書を含む、コロナウィルス感染対策に関する誓約書を提出しなければならず、誓約書には、日本到着後の公共交通機関を使用しないこと、14日間の隔離生活を行うこと、スマホに厚生労働省が指定する接触確認アプリを導入し、14日間アプリを利用することなどが記載されています。

 自宅がある場合は、まだ良いとしても、直行便のない地域に住んでいる人などは、日本国内線は14日間利用できないことから、宿泊施設を利用せざるをえないことになります。

 そこで、「ご帰国あんしんサービス」の「ホテル」の蘭を見てみると、まず、「14日間の待機要請」を満たすためには、15泊16日の宿泊手配が必要となります・・」という説明がど〜んと出てきます。

 ただ隔離のための「15泊の宿泊施設の予約」、これは、なかなか高いハードルです。

 だいたい、日本に滞在したい日数プラス2週間の時間を取らなければならないだけでも、なかなか大変なことです。一ヶ月、二ヶ月と滞在するならばともかく、せいぜい数週間の滞在のために2週間の隔離は、あまりに勿体ないことです。

 また、自宅があっても、迎えに来てくれる家族がいない場合は、帰国者用ハイヤー送迎サービスなるものがあるようなのですが、その料金表を見てビックリ!羽田から都内で安いところでも、16,800円、羽田から遠くなれば、2万円以上です。

 日本へ行っても2週間は、誰にも会えず、どこにも出かけられず、ただ引きこもって2週間過ごし、しかも宿泊施設に滞在となれば、大変な費用がかかります。家族数人でなど、とんでもない話です。

 もしも、緊急の用事ができて、日本に行こうとしても、14日間、どこにも外出できず、誰にも会えないのであれば、緊急の意味がありません。

 例えば、もし、親が危篤であっても、たとえ、訃報があったとしても、日本へ行くのはとても難しい話です。

 私は、すでに両親ともに他界してしまっていますが、母の時には、危篤の際に知らせがあって、翌日の飛行機をとって、ギリギリ最後に母に会うことができました。それこそ、成田(その頃は羽田便がなかった)から病院にタクシーで直行でした。

 父の時は、こちらに知らされたのは、訃報でしたが、それでも、なんとか火葬は待って欲しいと親戚に電話で頼んで、慌てて帰り、葬儀には出席できました。その時も「やっぱり、間に合わなかった・・」という気持ちはありましたが、今だったら、それさえも、きっと叶いません。

 海外に住んでいる人は、親の死に目に会えないこともあるかもしれないと誰もが、思っていると思いますが、今は、とりわけ難しそうです。

 私の親戚、叔父・叔母などは、軒並み高齢者ばかり、この状況では、日本に帰っても気安く彼らに会うこともできません。

 このコロナ禍中、なんとか、みんなが無事に生き延びて、また日本で会えるように、いつも言っている「元気でいてね!」という言葉は、いつにも増して切実です。

 せっかく、JALやANAが送ってくれた、「日本入国時の制限ならびに検疫強化」のお知らせや、「ご帰国あんしんサービス」なるお知らせのメールは、残念ながら、「やっぱり、当分、日本へは行けない」ことを再確認をすることになりました。


<関連>

「海外在住者が母を看取る時」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/06/blog-post_10.html

「死ぬ覚悟と死なせる覚悟」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/02/blog-post_2.html

「日本にいる親の介護問題」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/08/blog-post_17.html

「海外生活はお金がかかる」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/10/blog-post_26.html


2021年1月19日火曜日

学校閉鎖に踏み切る基準 フランスの年少者の感染増加

  



 先週の初めから、週末にかけて、3クラスにまたがって、27人の感染者(生徒22人、教師5人)が確認されていたオワーズ県(パリから30㎞ほどの地域)の小学校が18日から26日までの8日間、学校を閉鎖することを発表しました。

 すでに先週から感染が確認されていたために、週の初めに1学級が閉鎖され、キャンティーン(給食)が閉鎖され、週の終わりにさらにもう1学級閉鎖され、それでも次の対策に踏み切らない学校に対して、保護者からは、学校閉鎖の要請が出されており、週明けには、290人の生徒のうち、登校したのは、20人のみとなっていました。

 そもそも5000人しかいない村で、1つの学校での27人の感染は大きなものでしたが、できる限り学校は閉鎖しないという政府の方針や学校閉鎖に踏み切る明確な規則がないことから、学校を閉鎖する決定が保護者が誘導する異例な形となりました。

 年が明けてからというもの、フランスでは、わずか10日間で、10歳未満の陽性率が3%から10%と3倍以上、増加しており、学校の衛生環境やキャンティーン(給食)施設の衛生対策の改善が求められています。

 この年少者の感染の急激な増加の原因は、より年少者に感染が広がりやすいというイギリス変異種の性質が疑われており、この変異種がフランス国内に想像以上に拡大していることが懸念されています。

 政府は、フランスにおけるイギリス変異種は、陽性検査結果の1%と発表していますが、この年少者の急激な感染拡大から、実際には、それ以上に存在している可能性が指摘されています。

 あくまでも、学校閉鎖は、最終的な措置としていたフランス政府ですが、学校閉鎖に関する規定を学級内3人以上の陽性者がでた場合には、学級閉鎖、同学年で複数のクラスにまたがった場合は学校閉鎖を考えるといった基準(今回の場合は、この基準)が必要となってきました。

 現在、フランスでは、ワクチン接種は、リスクの高い高齢者を中心に進められていますが、それを嘲笑うかのような年少者の感染拡大に、ため息が出てしまいます。

 まさに、最も今、恐れられているイギリス変異種は、細胞に直に侵入するために感染力が強いと言われており、ドイツなどは、2月中旬までのロックダウン延長や在宅勤務の厳格化に加えて、特定地域での高性能FFPマスクの着用義務を検討しています。

 フランスでも、一般に広まっているサージカルマスクや布マスクでは、充分に感染が防げないのではないか?という声が上がり始めています。

 クリスマス、年末年始から2週間以上が経過した今、急激な感染爆発は起こっていないものの、1日の新規感染者数が2万人強という高い状態を徐々に増加しながら保っている(集中治療室の患者は2800人突破、1日の死者数は11月末以来の400人突破を記録)フランスは、まだまだ、依然として爆弾を抱えている状態なのです。


<関連>

「世界中が警戒しているイギリス変異種  日本変異種の出現も・・」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_14.html

 




2021年1月18日月曜日

コロナウィルスワクチンに対する世界と日本の温度差

  



 フランスでは、1月18日(月)から75歳以上の希望者には、コロナウィルスのワクチン接種が可能になりました。一週間ほど前から始まった電話やネットでのワクチン接種の予約は、アクセスするだけでも大変なようで、あっという間に来月末までいっぱいになっています。

 ワクチン接種に関しては、ヨーロッパで大幅な遅れをとったことが年明けに発覚して以来、フランス政府は、大バッシングを受け、政府は当初のワクチン接種のスケジュールを見直し、この18日からの75歳以上へのワクチン接種が始まることになったのです。

 フランスでワクチン接種が思うように進まなかったのは、ワクチンの保管に必要な特別な温度を保つ冷凍庫の確保やワクチン接種場所の設置などの段取りの悪さはもちろんのこと、ワクチン接種を高齢者施設の居住者を優先にしたことから同意書を確保することが想像以上に手間取ったことや、ワクチンに対して慎重かつ懐疑的な国民性のためでもあったと言われています。

 しかし、年末から多くの国でワクチン接種が始まり、周囲のヨーロッパ諸国とのあまりのワクチン接種の進行状況の違いが露見するとフランスは、一気に危機感を強めて、ワクチン接種の強化対策に乗り出したのです。

 ワクチン接種に関しては、現在のところ、イスラエルが圧倒的に世界一を独走しており、1日、15万人がワクチン接種を受けており、100人あたりの接種率は11.55%に達しています。(それに次ぐイギリスが1.47%です)

 イスラエルは、パンデミックの初期段階から、ワクチン確保の交渉を始めており、ファイザー・ビオンテックのワクチンを確保し、現在、ファイザーからのワクチンの供給が滞っているヨーロッパと比べても安定した供給を確保しています。

 多くの国でのワクチン接種が進み始め、実際の効果は目に見えない状況ではあるにしろ、特に際立った副作用もあまり見られていない(全くないわけではない)ことから、ワクチン接種に対して、当初は、懐疑的であったフランス国民もワクチンを受けたいと言っている人が56%にまで上昇し(+14%)、ワクチン接種を希望する人がアンチワクチン論者を上回り、65歳以上に限れば、77%がワクチン接種を希望するように変化してきています。

 ロックダウン寸前の多くの制限を強いられている生活に嫌気がさしてきていることも理由の一つであると思いますし、また、通常の日常生活を取り戻すためのワクチンパスポートの計画も水面下では、ヨーロッパ各国で進んでいると言われています。

 そんな中、日本人の私としては、気になるのは、日本のワクチン接種の状況です。

 日本は、あくまでも慎重な態度をとっているのか、あまりワクチン接種に関する進行状況は聞こえてきません。

 日本も感染状況が悪化し、緊急事態宣言が発令されたりしているとはいえ、やはり、ヨーロッパでの感染状況は日本とは桁違いであることから、ヨーロッパは、ワクチンによって日常生活を取り戻したい意向が強く、国の方針も違うのかもしれません。

 とはいえ、ヨーロッパでこれほど躍起になり、多くの国がワクチン接種を進めている中、日本では、2月の下旬からと、のんびり構えていることを私はとても不思議に感じています。

 日本は、これに加えて、絶望的とはいえ、オリンピック開催問題も抱えているのに、ワクチンを急がないのは、やはり、オリンピックは諦めているのかとも思いきや、18日の国会で、菅首相は、「人類が新型コロナに打ち勝った証」として、「世界中に希望と勇気をお届けできる大会を実現するために準備を進める」と語ったようで、どうにもこのチグハグな感じに不安を覚えるのです。


<関連>

「今年のフランスのコロナウィルス対策は、ワクチン接種が最優先事項」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_8.html

「フランスでコロナウィルスワクチンが浸透しにくい理由」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2021/01/blog-post_12.html


















2021年1月17日日曜日

雪でもコロナでもデモはやる でも、18時以降の外出禁止を守るために急ぐフランス人

  

サクレクール寺院の前でスキーをする人まで登場


 土曜日の朝、私が起きるのを待ち構えていた猫のポニョが、いつもは、食事の時以外は、気ままに過ごしているのに、ピッタリと私にくっついて離れず、ずっと私に寄り添ってくれていたので、「どうしたのかな?」と思っていました。

 気がついてみたら、窓の外は、結構な量の雪が舞っていて、「初雪だ〜!」と、私は、のんびり構えていました。

 パリは、寒い所ではありますが、雪が降ることはあまりなく、降ってもすぐにやんでしまうので、滅多に雪が積もることもありません。

 ところが、今回は、すぐに雪がやむことはなく、昼過ぎになる頃には、雪はうっすらと積もり、一面が雪景色になるくらいになっていました。

 雪といえば、子供ばかりではなく、どこか華やいだ気分も湧いてくるのですが、パリでは珍しい雪にサクレクール寺院の前の丘には、スキーをする人まで現れました。

 フランスの1日の新規感染者は、ここのところ、スタンダードに2万人を超える状態になっており、この土曜日から、夜間外出禁止がフランス全土で18時に前倒しになるという規制が強化される状態でありながら、日中のデモは許可されているという不思議な状態なのです。

 雪の中にも関わらず、いつもほどの勢いではありませんでしたが、バスティーユ、レピュブリック広場で、結構な人数がデモに参加。雪でもコロナでもデモは決行です。

 ここまで来ると、あくまでも抗議の姿勢を崩さない意志の貫き方は、ある意味、スゴいなと感心してしまいます。

 それでも、土曜日は、18時以降夜間外出禁止の初日。どの程度、守られるのか?と半信半疑でもありましたが、警察の警戒も厳しく、また店舗も18時には、閉店、消灯、お客さんの方も18時までに家に帰らなければならないというリズムに慣れておらず、普段、時間を守らないことが当たり前のフランス人が時間を守ろうと急いで慌てている様子から、考えてみれば、時間を守るという点においてだけでも、フランス人にとっては、大変なことなのだろうな・・と思ったりもしました。

 これまでも20時以降は外出禁止という規則はあったのですが、夜のこの時間の2時間の前倒しは、かなり厳しいものです。ましてや土曜日という多くの人が休日の一日、来週、仕事や学校が始まってからのこの規制は、やはり、かなり厳しいものになるに違いありません。

 しかし、やはり、罰金付きの規則というのは、スゴいもので、18時を過ぎたパリの街は、ほぼ夜中のような景色。1日、パリには珍しい雪やデモで高揚した街はシンとして、寒いピンとした空気も手伝ってか、思わず、昨年の2月のロックダウン時を思い出してしまいました。

 そこで、ビクビクしてばかりでは終わらないフランス人、さっそく、我が家のアパートの上の階では、どうやら、ガヤガヤと人が集まっている気配。

 全く懲りない、どうしても群れたいこの人たち、罰金を払わずに、なんとか人と集うことを決して諦めはしないのです。


<関連>

「決死のお迎えで、ある日、気付いたこと・・フランス人は、走らない」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/01/blog-post_58.html

2021年1月16日土曜日

フランスの高等教育機関の授業体制への抗議に対するマクロン大統領の手紙


Coronavirus : "Il va falloir encore tenir", Macron répond à une étudiante en détresse


 ストラスブール(フランス北東部・グラン・テスト圏の首府)のシアンスポ(Sciences-Po)(行政系の特別高等教育機関・エリート養成校)の19歳の学生がマクロン大統領宛てに送った「学生を大学や学校から締め出すコロナウィルス対応に抗議する内容の手紙」がフェイスブックに公開され、彼女の意見に賛同する声が多くの学生によって、拡散されたことから、マクロン大統領が彼女に返答する形で彼女宛てに出した手紙とともに、大学以上の高等教育機関の授業体制について、最注目されています。

 多くの教育機関、特に、保育園、幼稚園、小・中学校、高校に関しては、現在、フランス全土が18時以降の夜間外出禁止や様々な生活制限が強いられることになっても、余程の緊急事態にならない限り、学校は閉鎖しない(高校に関しては、一部制限あり)とする態度を貫いているフランス政府も、大学以上の高等教育機関については、ほぼリモートワークが続いているケースが多く、登校が許されない状態が続いています。

 彼女は、大統領宛ての手紙の中で、大学から締め出された形の現在の状況から、「私は生きながら、死んでいるような気がする」「希望がない、自分の人生が無いような気がする」「多くの学生が社会から隔絶された状況から忘れられている」「このコロナウィルス感染の危機、経済危機から、孤独に陥り、精神的にも追い詰められ、大学教育を諦め、中退してしまう人もいる」などを綴り、「授業に戻ることは、多くの学生にとって有益なこと」と対面授業を求める高等教育機関の授業体制の見直しを求めています。

 このパンデミックの中、苦しい環境は、全ての人に共通するものではありますが、人生の重大局面を迎えている将来的に繋がる大切な教育を受け、将来を見据えるタイミングに局面している年頃の学生にとっての苦悩は、計り知れないものであると思われます。

 実際に我が家にも同じ年頃の娘がいるだけに、他人事ではなく、先日、普段は、あまり感情を激さない彼女がこのパンデミックによる若者が被っている困難を家で叫んでいたことを思いました。

 今の時代を生きている人には、それぞれが大なり小なり人生が狂ってしまった人も多いと思いますが、我が家の娘もまた、イギリスの大学の研究室でスタージュするはずだった予定は、全てリモートになり、日本への留学も断念(しかもドタキャン)(一応、延期ということになっている)し、代わりに思っても見なかった会社でスタージュをすることになり(それでもスタージュ先が見つかっただけマシ、多くの人が失業している中、スタージュの機会を得られない学生も多い)、今後の予定も、いくつもの可能性を探りながらも、先が見えない状態です。


 シアンスポの19歳の学生がSNSで社会に呼びかけた訴えにより、マクロン大統領が彼女に宛てて書いた手紙も公開されています。

 マクロン大統領は、「親愛なるハイディ、私は、あなたの怒りがわかります。2020年に19歳という年齢を迎えていることは、どれだけ困難に直面しているか、私は、とても深く考えています。このパンデミックはあなた方から多くのものを奪ってしまっていることも理解しています。それでも、率直に言って、私たちは、まだ頑張らなくてはなりません。これは、単純な公式には、当てはまりません。私は、あなたにもう一度、数週間、努力することをお願いします。あなたを駆り立てる勇気を示すために頑張ってください」という内容の手紙を送っています。

 私は、この19歳の女の子が自分の怒りを大統領宛の手紙を綴り、SNSで世論に訴えかけ、それが拡散されてマスコミを巻き込んで、ついには、大統領からの手紙を受け取ったことにちょっと感心しています。実際に、高等教育機関の授業体制が即座に変更されるかは疑問ではありますが、再検討されるきっかけには、なったのではないかと思っています。

 この深刻な感染状況の中、デモなどという手段ではなく、手紙やSNSを利用した彼女の抗議の仕方は、いかにも現代に生きる若者の賢明なものであったと思います。彼女が起こしたこのようなアクトに、「生きながら死んでいる」と綴っている彼女が、少なくとも困難の中でも賢明に生きていることを感じるのです。

 そんな学生をよそに、土曜日は、また、パリ市内及び、フランス全土で総合治安法案に対する抗議デモをはじめ複数のデモが実施される予定になっています。

 これ以上、デモなどで、感染をさらに拡大し、若者の将来を奪うことを許せない気持ちでいます。


<関連>

「娘の留学ドタキャン コロナウィルスによる被害」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/09/blog-post_20.html