2020年6月5日金曜日

ロックダウン解除・約5ヶ月ぶりで、かかりつけの医者へ


いつもと同じの静かな待合室


 私には、もう20年近く、かかっている近所のかかりつけのお医者様がいて、家族揃って、同じお医者様にお世話になってきたので、娘も小さい時からお世話になっていて、娘の成長の過程も家族の歴史も、その間の病歴なども全て、承知していて下さるので、とても、頼りにしています。

 今の地域に引っ越してきたばかりの頃には、近所の他のお医者様にも行ってみたことがあるのですが、結局、小さい頃の娘の希望で(彼女がきれいだから・・という、とても安易な理由でしたが・・)、彼女のところに通うようになりました。

 しかし、娘の直感は、正しく、彼女は、いつも冷静で、的確で、ちょっと見たところは、いかにも育ちが良く、賢そうな、上流階級のフランス人という感じで、少し冷たい印象もありますが、予約時間には、きっちり時間を守って見てくれるし、これまで私たちの身に起こった、なかなかの深刻な状況の時でも、冷静に的確に対応してくれていたし、何と言っても、長い付き合いなので、気心が知れていて、良い関係を保っています。

 私は、数年前から、いくつかの薬を毎日、飲んでいて、定期的に彼女のところに通って、一応のチェックをしてもらい、3ヶ月分の処方箋を書いてもらっています。その際に、既往症とは、関係ない鎮痛剤や軽い安定剤から胃薬、腰痛に効く塗り薬なども、まとめて処方してもらえるように、家の常備薬のための薬のリストを自分で作って持って行って、処方箋に加えてもらっています。そうすることで、大抵の薬は、保険でカバーされるので、我が家は、滅多に薬屋さんでお金を払うことはありません。(パリ節約術です。)

 話は、それましたが、私は、今年の2月に日本に行く予定にしていたので、1月末に彼女のところに行って、いつものように薬を3ヶ月分、処方してもらっていました。

 そして、日本から帰ってきたのが、2月末、それから、あれよあれよという間にロックダウンになり、いつも飲んでいる薬が切れてしまいましたが、当時、コロナ以外では、到底、医者にはかかれない状況から、期限切れの処方箋で2ヶ月間は、薬局で、いつもの薬を出してもらえたので、彼女のところにも行くことはありませんでした。

 しかし、ロックダウンが解除されて、薬が今週末には、切れてしまうので、約5ヶ月ぶりで、彼女のところに行くことになりました。しかし、付き合いも長い彼女、近況を聞くような電話も迷惑だろうし、どうしているのだろう?と、ずっと思っていました。

 けれど、感染がおさまってきたとはいえ、やはり、医者に行くのは、怖い気持ちもあったので、人があまり重ならなそうな、朝一番の時間に予約を入れました。

 果たして、待合室で人と出会わすこともなく、物々しく、警戒のテープが貼られたりしていることもなく、いつもと同じの静かな待合室でした。診察室に入ると、すぐにアルコールジェルを使うように言われたことと、彼女がマスクとフェイスシード付きのメガネをしていること以外は、いつもと変わらぬ診察室でした。

 このあたりでも、たくさんの感染者が出て、ここにもたくさんのコロナウィルスの患者が来たし、ピーク時には、パリのサンルイ島の病院に応援に行っていたという彼女ですが、自分の診療所に戻った今は、これまで医者にかかれなかった人たちの予約でいっぱいのようで、私の診察中にかかってきた電話にも、「今日は、もう予約がいっぱいいっぱい!今日はもう、5分でさえ、時間は取れないの!急ぎでなければ、別の日にして!」と言って、予約を断っていました。

 実際に、コロナウィルスの患者さんとも、たくさん接し、病院での悲惨な状況にも立ち会ってきた彼女は、コロナウィルスの恐ろしさを目の当たりにして、「これから数年は、警戒を怠ってはいけない・・そもそも、中国が早い段階で国をシャットダウンしないから・・」と、いつもは冷静な彼女にしては、珍しく怒りを露わにしていました。

 しかし、診察が終わって、処方箋を書いてくれて、私が彼女の診療所を出るのを見送ってくれる時には、いつものエレガントな彼女に戻っていました。

 ロックダウンからこれまで、確かに医者にかかれなかった人がたくさんいて、今後、しばらくの間は、彼女は、コロナウィルスの患者同様、それ以外の患者さんの対応に追われることでしょう。コロナ以来、医療従事者に対面したのは、初めてのことでしたが、一瞬、彼女が見せた、怒りの表情が忘れられない一日でした。

 何はともあれ、彼女が無事でホッとしました。

<関連>「フランスの医者の大盤振る舞いな薬の処方」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/08/blog-post_67.html

2020年6月4日木曜日

ロックダウン解除・パリのレストラン・カフェもテラス席で営業再開


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 パリのレストラン・カフェに日常の一部が戻ってきました。まだ、店内の営業は、認めたれていないため、店の外のテラス席のみの営業、しかし、実際にテラス席のある店舗は、全体の40%にしか過ぎす、急遽、パリ市役所に申請して、店舗の前の歩道のスペースや道路の駐車スペースなどの公共スペースの一部にテラス席を儲ける許可がおり、細い道路沿いなどは、通行止めになっている場所もあります。

 パリの街は、ロックダウン解除の第2ステージが始まる日の午前0時から、カフェのオープンを待ちわびていた人たちで、賑わいました。当日の夜は、テラス席に予約まで入る盛況ぶりで、予約をしていなかった人の行列ができたほどです。

 日本と違って、並ぶことが大嫌いで、とても苦手なフランス人も、この2ヶ月間のロックダウン生活で、スーパーマーケットなどにも、距離をとって並ばなければならなかったおかげで、ちゃんと列に並ぶという習慣がついたようです。並んでまで、楽しみたいレストランのテラスでのひと時、フランス人にとって、カフェ、テラスは、ほんとうに息をするように当たり前な日常の一部だったことを彼らの満面の笑みから垣間見た気がしました。

 ロックダウンになるという前夜、パリのカフェやバー、レストランは、年末のカウントダウンのように多くの若者が集まる騒ぎになりましたが、今回の解除第2ステージでのカフェ、レストランでの彼らは、若者だけではなく、年配の人も大勢いて、穏やかで、どこか、落ち着きを見せながらも、晴れやかな、日常を取り戻した嬉しさを隠しきれない表情が印象的でした。

 「バカンスでもない、特別なことでもない、カフェのテラスでコーヒーが飲める日常が戻ってきたことが何よりも嬉しい。」と何気ない日常の幸せを噛み締めているのでした。真の喜びというのは、ごくごく普通の日常を噛みしめることなのかもしれません。

 レストラン側も衛生面を考慮して、メニューは、これまで使用していた紙のメニューから、携帯でQRコードをかざすとメニューを読み込むことができるようになっていて、そのまま、携帯で、注文、支払いができるシステムを採用しているお店も多いようです。

 もともと、フランス人は、今回のコロナ対策は、関係なしに、テラス席が大好きです。特に、気候が良くなって、日も長くなった季節には、テラス席は、満席で、店内は、ガランとしている・・なんていうことがよくあるものです。

 私としては、小さなテーブルで、排気ガスにまみれ、人通りも多い落ち着かないテラスのスペースを好むフランス人が理解できないと思っていましたが、改めて、彼らが楽しそうにテラスでの食事やコーヒーを楽しんでいる姿を見ると、やっぱりこれがパリだよね!となんだか嬉しくなるのも不思議です。

 ロックダウン中の美しいパリの景色を何度も映像で見ましたが、やはり、レストランやカフェに人がいる様子は、街が生き返った感じです。

 レストランやカフェの営業のために、駐車スペースがなくなったり、道路が通行止めになったりして、苦情が出ても、おかしくはないのですが、彼らにとっては、むしろ、テラス席が拡大されることは、大歓迎なのかもしれません。

<関連>「パリのカフェに見るフランス人の日常の楽しみ方」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/12/blog-post_85.html
 

2020年6月3日水曜日

ロックダウン解除・第二ステージの幕開けは、2万人規模のデモというフランスの惨状

 
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 昨日は、午後から、やけにパトカーだか、救急車だかわからなかったものの、窓の外から聞こえてくるサイレンの音が途切れませんでした。コロナウィルスの感染拡大以来、ロックダウン中にも、救急車のサイレンは、頻繁に聞こえてきていて、また、誰かが搬送されているんだ・・と思いながら、感染の恐怖を家の中で感じていました。

 ここ数日は、それも少し、おさまって、サイレンの音がずいぶんと減って、感染の度合いもおさまってきたのだな・・と感じていた矢先でしたので、サイレンの音がまた、切れ目なく聞こえてくるのを、「また、感染爆発? まさかね・・」などと思っていました。

 ロックダウンが解除されたわけで、交通事故などもあり得るとは思いながらも、そのサイレンの音がいつまでも続くのには、何かが起こったのだ・・と思わざるを得ませんでした。案の定、事件は、起こっていました。

 ロックダウン解除の第2ステージ(さらなる解除段階)に突入したその日に、パリの裁判所前で、2016年7月19日に警察の逮捕の約2時間後に亡くなったという24歳の黒人男性アダマ・トラオレの死への抗議と正義を訴えるために、約2万人の人が集まり、大規模なデモ・抗議が起こったのです。4年前に起こった事件です。

 これは、明らかに、アメリカで起こったジョージフロイドの警察官による死亡事件に触発されており、彼らは、「アメリカで起こっていることは、フランスで起こっていることを反映している!」と訴えています。

 昼過ぎから始まったデモ・抗議行動は、夜になるにつれてエスカレートし、午後9時頃には、石が投げられ、アメリカの旗がポールに吊りあげられてデモ参加者によって焼かれ、ゴミ箱が焼かれ、パリ(17区)の路上のあちこちに、炎が上がりました。

 物々しいバリアを持った防護体制の警察や憲兵隊、消防が駆けつけ、数時間後には、沈静化しました。

 ロックダウンが解除されたとはいえ、パリは、まだレッドゾーンで、10人以上の集会は禁止されています。10人以上の集会の禁止など、どこ吹く風で、2万人とは、もう呆れ果てて言葉がありません。全く、禁止事項など、意に介していない人が、少なくとも2万人もいるのです。長い監禁生活のストレスもあると思いますが、禁止されているデモが2万人に膨れ上がるまで放置するということは、警察がまともに機能していないということです。

 ロックダウン解除がさらに進んで、フランスには、少しずつですが、日常が戻りつつあります。公園も解放され、レストランやカフェのテラスでは、ようやく取り戻した日常に満面の笑みを讃えて楽しいひと時を過ごす人で賑わいました。

 しかし、残念ながら、こうしたデモや暴動もフランスの日常のひとつなのです。
これで、パリにコロナウィルス感染の第2波が来なかったら、奇跡です。

<関連>「フランス人の熱量」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/01/blog-post_11.html


2020年6月2日火曜日

コロナウィルスによるフランスの経済危機・賃金削減か?人員削減か?


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 パリのカルチェラタンは、学生街で知られる街ですが、多くの書店が並ぶ街でもあります。今回のコロナウィルスによるロックダウン、パンデミックの影響で、カルチェラタンの書店も一つ、また一つと閉店に追い込まれています。

 この界隈は、いわゆる普通の書店から、専門書を扱う書店、また、古本屋さんも数多く並んでいます。フランス人には、古い本を重用する習慣があり、学校の教科書なども年度の始まりに配られると全ての教科書にカバーをし、出来るだけきれいに使うことを心がけ、一年の終わりには、学校に返却することになっていて、紛失したり、破損したりした場合は、弁償させられます。(余談ですが、海外にいても、義務教育の期間は、無料で国民に新品の教科書を配布してくれる日本とは、エラい違いです)

 ですから、比較的、古本を使うことには、抵抗がなく、いらなくなった本を買い取ってもらったり、買いに行ったりすることが多いのです。我が家も、娘がプレパー(グランエコールの準備学校)に通っている頃は、カルチェラタンに学校に指定された教科書を探しに行ったり、いらなくなった本を買い取ってもらいに行ったりしました。

 今回、閉店したのは、考古学、古代史、建築を専門とする書店ですが、この先、次々と閉店する書店が続きそうです。

 また、ボルドー・トゥールーズ、マルセイユに3つの空港に拠点を置くアイルランド系の航空会社ライアンエアーは、コロナウィルスの機器により経営危機に陥り、フランス国内の従業員に対し、2020年7月より、5年間の給与の削減(5年後に、給与100%回復)、退職するかの二者択一を迫っています。パイロットの場合は、最大20%、客室乗務員(労働時間も年間2000時間から1600時間に削減)の場合は、最大10%の給与削減を提案しています。

 経営者側は、会社を崩壊させないための止むを得ない方策としています。

 給与の削減、労働時間の削減を受け入れて、5年間の減給に耐えて、少しでも安定した道を選ぶのか? それとも、この際、思い切って退職して、数年間、失業手当を受けながら、その間、スキルアップのための勉強や準備をして、新しい道を進むのか?(フランスの失業者への手当は、手厚いのです) 

 これは、ライアンエアーに限らず、多くの企業に起こり得ることで、おそらく、選択肢さえない場合も多いと思いますが、たくさんの人が、苦渋の選択を強いられることになります。

 これから先、同様の問題で、度々、摩擦が起こることは、明白です。ごくごく普通の当たり前だった生活が戻るには、なかなか時間がかかりそうです。

 先ほど、郵便物を送りに近所のtabac(タバ・タバコやロト、雑誌などを扱うとともに郵便局も併設するお店)が来週末に閉店するという貼り紙がしてありました。ヤレヤレ、便利だったのに、コロナウィルスの煽りを身近に感じる・・と思っていたら、その後、携帯に、メガネ屋さんから、閉店のお知らせの通知が入りました。当たり前の生活が戻る前に、もはや、立ち直れない状態になっているお店を続々と知るのが、ロックダウン解除の第2ステージの開始の日というのは、残酷な現実です。


<関連>「5月11日のロックダウン解除についてのフィリップ首相の演説 弱者が滅び、強者が生き残る社会」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/04/11.html











2020年6月1日月曜日

「STOP COVID 」フランスの感染者追跡アプリは、国民に浸透するか?





 6月2日正午、ロックダウン解除、第2ステージ突入と同時に、フランスでは、各自のスマホに「STOP COVID」という感染者追跡アプリを無料でダウンロードできるサービスがスタートします。アプリは、非常に簡単にインストールできるようにできています。

 これは、自分を守り、他者を守り、感染の連鎖をすばやく止め、コロナウィルス流行の第2波を回避するための取り組みをサポートすることを目的としています。

 すでに、コロナウィルス感染拡大防止の一環として、韓国、中国、シンガポールは、あらゆる戦略に加えて、2月、3月からモバイルの連絡先追跡アプリケーションを展開していますが、フランスでも、このアプリに関しての取り組みがなされていないことを2ヶ月ほど前から問題視されてきました。

 原則として、STOP COVIDは、半径1メートル以内で15分以上、陽性の診断を受けた人の近くにいる事を75%〜80%を警告することが可能で、個人情報については、すべて隠された中で、個人の自由を犠牲にすることなく、できるだけ早く対応できるようになっています。

 例えば、メトロの誰かの隣に座っている人、スーパーマーケットで並んでいて、もし、近くにいた人が病気であった場合に、その危険を警告してくれます。警告を受けた人は、症状がなくても、できるだけ早く検査を受けて治療するか、ウイルスの伝染の連鎖を断ち切るために監禁することができます。

 この警告は、コロナウィルスのテストで陽性と判定された人が、まず、このアプリを利用することが大前提で、また、より多くの人がこれを利用しない限り、意味のないものになってしまいます。

 しかし、このアプリの利用は、あくまでも任意であり、強制的なものではありません。
ユーザーが自発的にスマホにアプリをダウンロードして、利用しない限り、意味がありません。これが、もし、5月11日の最初のロックダウン解除の段階で利用できるようになっていれば、その時点では、かなり、危機感を持った人も多く、多くの人がこのアプリを利用し、国民の間に浸透していったと思いますが、ロックダウン解除から一ヶ月近く経ち、すっかり、解放されたモードの現在に、このアプリのサービスがスタートしたとしても、利用する人が一体、どれだけいるかは、甚だ疑問です。

 今の解放モードのフランスでは、マスクでさえ、義務化された場所以外では、しなくなっている人が大部分で、人が集まり、集い、大規模なデモまで、起こっている状況です。

 そんな状況の中、アプリを使って、人の動きに注意を払うとは、考えにくいのです。

 自由と権利を主張するフランス人には、強制を強いるか、罰則でも与えない限り、行動制限や、統率を取ることは、甚だ困難なことで、一度、解放してしまった今、感染の第二波を防ぐために・・などと言っても、これまでの監禁生活のストレスも合間って、再び、第二波が本当に起こってしまうまで、残念ながら、統率は、不可能と見ています。

 3月のロックダウン開始についても、国民のショックを考えて、段階的に・・などという方策をとったがために、ロックダウンのタイミングが遅れ、大惨事となってしまいました。今回の「STOP COVID」のアプリのサービススタートにしても、最初のロックダウン解除のタイミングにすべきでした。

 まだ、サービスがスタートする前から、こんな事を言うのもなんですが、せっかくの試みも、タイミングが悪ければ、意味がありません。フランスでは、「国民の良識に委ねる・・」などと言う絵空事は、通用しません。

<関連>「コロナウィルス対応 日本人の真面目さ、辛抱強さ、モラルの高さ、衛生観念はやっぱり凄いなと思う」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/04/blog-post_28.html
















2020年5月31日日曜日

ロックダウンによる業績悪化・ルノー15000人削減・モブージュで従業員数千名による大規模デモ




 昨年末には、カルロスゴーンの日本逃亡劇で日産とともに注目を集めた、フランスの大手自動車メーカー・ルノーは、コロナウィルスのためのロックダウンによる業績不振のため、15000人の削減(フランス国内では、4600人削減)、3年間で20億ユーロをコスト削減をする計画を発表しています。

 ルノーは、コロナウィルスによる経済危機以前から、弱体化しており、(ヨーロッパでは、多くの国でディーラーが閉鎖され、4月の自動車市場は76.3%下落)生産過剰に悩まされています。

 このルノー経営陣の発表を受けて、組合連合の呼びかけにより、従業員数千人がルノー・モブージュ(フランス北部)工場に集まり、市庁舎までの6キロの道のりを経営陣の経営計画(人員削減計画)に反対するデモを行いました。

 あらゆるセクションの集まるこの工場では、約2100人の従業員を抱えており、金曜日の朝から閉鎖され、この工場で扱っているカングー(ルノーの車の車名)の生産を、新しいプラットフォームを継承する約70 km離れたドゥーアイに移管する計画を進めています。つまり、この工場は、大幅に縮小されるわけです。

 2100人のルノーの従業員は、このモブージュという地域の人口の約10%に当たるので、この地域にとっても彼らの仕事を守ることは、その地域を守ることにも繋がるのです。

 いみじくも、2018年にマクロン大統領がこの工場の視察に訪れた際に、「この工場は、ヨーロッパで最高の工場である。何も臆することはない! フランスは、自動車産業を守る。」と約束したこともあり(実際に、政府は、多額の予算を自動車産業に割いている)、このデモでは、「嘘つき!マクロン!約束を守れ!」という叫び声も、多く上がっていました。

 ロックダウン解除の第一ステージ(5月11日の段階)でも、工場再開の際に、工場内の安全性が保たれていないとの従業員との間で騒ぎが起こり、今回の第二ステージ(6月2日から)発表の直後にルノー経営陣からの人員削減の発表での数千人にも及ぶ大規模なデモ発生。同じフランスの自動車メーカーであるシトロエンやプジョーからは、そのような動きは聞こえてこないのに、ルノーばかりがこの騒ぎです。

 ルノー経営陣、フランス政府に反抗、批判するデモの集結地である、モブージュ市庁舎前に集まった人たちが大声で歌うマルセイエーズ(フランス国歌)。

 国歌が、デモに参加している人たちを奮い立たせ、団結させる歌として歌われることにもフランスらしさを感じるのです。デモで反抗の意を表明しつつも、その根底には、強い愛国心があることが感じられます。

 もはや、「10名以上の集まりが禁止」などという禁止事項はどこ吹く風で、このデモを統率している組合連合は、社会的な話し合いの欠如を指摘し、「この決定は、自殺行為」「戦いは、まだ始まったばかり」と声明を発表しています。

 ということは、この規模のデモがまだまだ続くのでしょうか? 今、経営の危機にある会社、政府、社会に訴えたいことがある人は、溢れるほど存在しています。このルノーのデモに触発されて、これ以上、デモが起こらないことを切に願うばかりです。

 コロナウィルスの感染は、まだ、完全におさまってはいないのです。

<関連>「ロックダウン解除後・フランス各地に起こる不穏な動き・フランスのデモ」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/05/blog-post_22.html

 

 

 




2020年5月30日土曜日

コロナウィルスの第一波は去った? 俺たちは、よくやった!日本と対照的なフランス人の自画自賛




 フィリップ首相のロックダウン解除・第2ステージの発表から一夜開けて、フランスのマスコミは、いよいよ、コロナウィルスの第一波は、去った・・と言い出しました。確かに、一日の死者数も集中治療室の患者もグンと減ってきました。フィリップ首相も、一夜明けて、どこかホッと緩んだ表情が印象的です。
 しかし、フランスでのコロナウィルスの感染は、すっかりおさまったわけではありません。未だ死者が50人以上出ています。

 にも関わらず、もうすっかり戦後のようなムードで、マスク姿の人も日々、減ってきています。しかも、コロナウィルスとの戦いを「俺たちは、とても良くやった!2ヶ月のロックダウンを乗り越えて、みんなで協力して、見事に乗り越えた!」と、お得意のフランス人の自画自賛モード、「フランスはすごい!」のモードが満載なのです。

 とりあえず、大きな感染の波が去った今、経済的にも大打撃を受けている状態から、これからは、経済回復の道を探っていかなければなりません。パリのレストラン・カフェなどは、とりあえず、6月2日から営業できるのは、お店のテラスのスペースのみで、これまで、テラスのスペースは持っていなかった店舗も、さっそく、テラスのスペース確保の申請がパリ市役所に、殺到しています。

 基本、自信満々なパリジャンも、ここぞというところで、小難しいことを言い出すのも特徴で、ただ単にお店をオープンするだけでなく、伝統が、文化が、雰囲気が・・と、衛生管理もあくまでも美しくなければいけないと、こだわるところも、いかにもという感じです。

 これまで、ロックダウンのため、壊滅状態であった観光業界について語る際にも、フランスは、世界一の観光大国だ!(だから、打撃も酷いのに・・)どうだ!凄いだろ!フランスは、世界一なんだ!と始まってしまうところが、これまた、いかにもです。世界一の観光大国は、その多くの観光客を外国から受け入れています。ところが、現在は、ようやく国民の100キロ以上の移動が解禁されたのみで、国境は、閉ざされたままなのです。「フランスは、凄いだろ!」と言っている場合ではありません。

 そんな、自画自賛モードのフランスに比べて、日本は、コロナ対策に失敗したように感じている人が多い様子は、とても不思議です。フランスも確かに頑張りましたが、実際のところは、3万人近い死者(現在のところ28714人・5月29日現在)を出し、大失敗しているのです。

 もともと日本では、謙遜、謙虚な態度が尊ばれる国民性もあると思いますが、海外から見ると、日本は、完全に経済を止めることもせず、罰則も与えずに国民が自粛し、高齢者大国の日本が、被害者の数も桁違いの数字に抑えて、海外からは、圧倒的に成功している国として見られており、ジャパンミラクルなどと呼ばれているのに、なぜか、胸を張らないのです。

 色々、問題はあるにせよ、日本は、やっぱり凄い国だと、私は、今回のコロナウィルスの騒ぎで、改めて思っています。日本人は、もっと自信を持って胸を張るべきです。世界に比べたら、やっぱり日本は、衛生面、医療システム、国民のモラルなどなど、世界に誇れる国なのです。

 それにしても、対照的なフランスと日本、受け取り方がこうも違うのは、その中間にいる私としては、それぞれの様子を見ながら、不思議なものだと思うのです。

<関連>「フランス人のプライド」
https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2019/08/blog-post_6.html