2023年1月20日金曜日

フランス全土で112万人動員!想像以上に長引きそうな年金改革のデモとストライキ

 


 今回の年金改革反対の動きは、12年ぶりの労働組合統一の大規模なデモだと言われていましたが、その動員数は、パリだけでも40万人、フランス全土で112万人を動員したと発表されています。

 これは、この動員を呼び掛けていた労働組合にとっも想像以上のものに盛り上がったようで、まだ、その1日が終わらないうちから、次回の動員は1月31日だと発表され、早くも長期戦の兆しを呈しています。

 とはいえ、これに伴うストライキについては、以前の2019年12月の大規模なストライキの時のような大混乱とはならずに、渋滞もさして深刻にはならず、駅も場所によっては、いつもより人が少ない場所もあったようです。

 これは、パンデミックのロックダウンなどの経験により、リモートワークが広がったことや自転車を交通手段として使う人の割合が増えたことにより、いつのまにか公共交通機関のストライキに対する耐性を身に着けていたことも大きいのかもしれません。

 とはいえ、誰もがリモートワークが可能なわけでもなく、また、誰もが自転車通勤が可能なわけでもなく、これが長く続けば、疲弊していくことに変わりはありません。

 私自身、以前、パリ近郊に住んでいた頃に1カ月近く、ストライキのための間引き運転が続いて、心身ともに疲れ果てたこともあり、その月のNavigo(定期券のようなもの)が払い戻しのような対応になったものの、その直後に電車内にキセルのコントロールに回ってきたRATP(パリ交通公団)の職員が「こんなに長いことストライキをやっていたくせに、コントロールとは何事だ!」と周囲の乗客に袋叩きに遭っているのを見かけたこともありました。

 また、学校のストライキが1カ月近く続いたときにも困り果てて、学校がストライキだからと私まで休むわけにもいかずに、勉強も見てくれる娘のベビーシッターを急遽探して頼んだら、私の安い給料などは、ほとんどベビーシッターのためにすっ飛んで、一体、何のために働いているのかわからないと思ったり、何より、明日は学校やっているのか?と不安な状態が続くことに、つくづくウンザリしたこともありました。

 その結果、「なにがなんでも娘はストライキをやらない私立の学校へ入れる!」という決意を固くし、後になってみれば、それが娘にとっては、幸いしたのです。

 今回の年金改革には、国民の80%が反対していると言われており、今回の動員数を見ても、そう易々と解決するとは思えません。

 今後、このデモがどのように発展していくはわかりませんが、デモが単に大勢の人が集まってモノ申すだけにとどまらず、乱暴者が介入し、破壊や放火などにつながる危険がついてまわるため、その日はまともな生活が送れなくなります。

 時間の経過とともに、勢いを失っていくデモもありますが、今回のデモはどうにも今のところ、沈静化していく兆しはないので、余計に盛り上がっていく可能性が高い気がしています。

 定年の年齢が62歳から64歳になったことで、「死ぬまで働かせるつもりか!」と怒っているのですが、特に若い世代にとっては、これがそのうち64歳どころでは済まなくなる・・ということで、職種にかかわらず、男女にかかわらず、年齢にもかかわらず、ほぼすべての人に該当することで、すでに定年を迎えている人でさえ、自分の子供、孫のためにと立ち上がっているのですから、動員数が膨れ上がるのも致し方ないところです。

 長く働くことで、それなりに受給する年金額は増額されることになるのですが、このインフレの折り、その増額はインフレにおいついていないというのも反発を買っている一つでもあります。

 とはいえ、政府に対して声を上げるデモの権利というものは、当然、正当な権利であり、それ自体はこの抗議を受ける側である政府も認めるところではありますが、いずれにしても長期化しても国全体にとってもよいはずはないため、今後、この国民の声に政府がどう対応していくのかは目が離せないところです。

 このようなデモによって、これからの政策がさらに練られていくことは、必要なことで、自分の意見をはっきり主張することを良しとする教育を受けて育っているフランス人にとっては、ごくあたりまえのことなのだろうと思います。

 フランスのこんな様子を見ていると、少しは日本人も政府に対してモノ申せばいいものをと思っても、おとなしく従うことを良しとする教育を受けてきた日本人には、なかなか難しいことで、教育からして、政府の都合のいいようにできているのだな・・と果てしない問題を抱えているようにも思います。

 

フランス年金改革デモ112万人動員


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2023年1月19日木曜日

LVMH モエ・ヘネシー・ルイヴィトングループ 時価総額4,000億ユーロ超の絶好調

  


 2年前の冬、まだまだパンデミックにもっと緊迫感があったころ、それでもクリスマスのイルミネーションは綺麗だろうとパリの街中に出かけて行ったとき、クリスマス前だというのに、人もまばらで、ようやく飲食店以外の店舗の営業ができるようになったものの、シャンゼリゼはもちろんのこと、高級品店が並ぶヴァンドーム広場などは、お店が開いているというのに、お客さんが全然いなくて、暇そうに店員がお店の中でつったている様子を見て、いつもは、忙しそうにしているこれらのお店のお客さんは、ほとんどが観光客だったんだと思わされて、クリスマスのデコレーションでいつも以上に煌びやかにお店が飾られている分、余計に物悲しい感じがしました。

 考えてみれば、ヴァンドーム広場やコンコルド広場などに出るまでの比較的細い道は、いつもは、クリスマスとは関係なくとも、けっこうな人がいて、スムーズには歩きづらいほどなのですが、そういえば、今日はスイスイ歩いてきたな・・などと、ガラガラのお店をみて思ったものでした。

 しかし、こんな状態が続いたら、これらのお店も大打撃だろうな・・と思ったのを覚えています。

 あれから、徐々に観光客も戻り、現在は、ほぼ通常モードに戻っているパリは、ルイヴィトンを筆頭に高級品店は長蛇の列がもとどおりになりました。もとどおりどころか、最近は、その派手なデコレーションやアピールぶりで、さらに否応なしに存在感を増している感じです。

 つい先日、LVMH(モエ・ヘネシー・ルイヴィトン)の時価総額が4,000ユーロを突破し、これは欧州企業では初めてのことだと沸いています。これは株価の上昇によるものなのですが、企業自体が好調であることは言うまでもありません。

 このインフレでガソリンの値段が、バゲットの値段が・・などと騒いでいる時に、ルイヴィトングループなどの高級品店は、インフレの影響をまるで感じさせず、ごくごく日常のものについては買い渋りなどの現象が見られるのに、けた違いの値段の商品が行列を作って人が買っていくのですから、まるで別世界のようです。

 別世界といえば、このグループ、最近はルイヴィトンにしてもディオールにしてもギャラリーや美術館まで拡大しているのがこれまでと違うところで、私などは、お店を覗くだけでも、美術館みたいだ・・と思うのですが、その美術館みたいだ・・と思って、なにも買わずに出てくる私のような人間に、本物の美術館を作って買わない人からも入場料を徴収するというのが凄いところ・・。

 また、このギャラリーなどが、大金を使っているだけあって、なかなか見応えがあり、予約しても行列ができるという大盛況ぶりです。

 そもそもこのグループの一つ一つのブランドは一つずつでも最強なブランドばかりが束になっているのですから、強者がさらに虎の威を借りてさらに強くなっていく相乗作用で、ルイヴィトンをはじめとして、そんなにブランドに詳しくもない私も知っているディオールやをセリーヌ、フェンディ、ティファニー、ショーメ、ブルガリ、ウブロ、ゲラン、ロエベなどなど・・名前を上げれば上げるほど、そりゃそうだよね・・という感じです。

 LVMH モエ・ヘネシー・ルイヴィトングループ会長ベルナール・アルノーは、昨年12月に個人資産もイーロンマスクを抜いて、世界一の資産家となり、彼はなにかと比較の対象となっています。

 今回の4,000億ユーロ超の記録についても、「LMVHベルナール・アルノーは、株式市場でもイーロンマスクに勝っている!」などと見出しがつくほどです。

 このインフレ知らずの強者は雪だるま式に大きくなっていく感じがしますが、よくよく考えてみれば、フランスには、このグループには属していないシャネルやエルメスなどのブランドが控えており、この業界の層の厚さを感じさせられます。

 個人的には、願わくば、LVMHは、そんなに大きくなってくれなくてもいいので、シャネルやエルメスなどは、このLVMHの傘下には入ってほしくないと思うのです。


LVMH モエ・ヘネシー・ルイヴィトングループ 時価総額過去最高


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2023年1月18日水曜日

日本の空き家問題をフランスのニュースで知る 空き家の相続問題



 日本では850万戸の空き家があり、政府は相続人に対する規制を強化することを検討している・・とフランスのニュースで取り上げられているのを見て、「えっ?そうなの?」「空き家が多くなっていることは知ってたけど、それに対する規制を強化・・という話は知らなかった・・」とちょっと斜め読みしていたところ、じっくり読むことにしました。

 「高齢化社会を迎え、団塊の世代が80歳を迎える10年後には、日本の住宅の3軒に1軒は空き家になるという試算もある」

 「多くの国々と同様、日本も深刻な住宅問題に直面しています。毎年人口が減少しているとはいえ、ある程度の広さが必要な家族にとっては住宅価格は高い。特に住宅市場は、相続した人が手入れをしないために空き家のままになっている数百万戸の家屋の存在によって歪んでいる。そのため、日本政府は税制改正を検討しています」

 なんか耳が痛いような話でした。

 そういう私の実家も母が亡くなったあと、長いこと父が一人で暮らしていましたが、その父が亡くなって以来、長いこと空き家になっていました。

 残された私と弟は二人とも海外生活をしていて、相続手続きからして、容易ではありませんでした。それは、父の容態が悪化してからの介護問題から始まっていたのですが、私はかなり前に夫を亡くして、フランスで一人で仕事をしながら子育てをしていたので、介護のために長期で日本に滞在することは不可能で、娘の教育のことを考えると、娘の受験の時期も重なっていたりして、その時点で日本に本帰国することは無理な話で、結局、父は最期を介護施設で迎えました。

 父の死後も落ち着いて、日本に滞在しているわけにも行かず、相続手続きは、すべて銀行に頼んで、なんどか書類を行ったり来たりさせるだけで、最後のサインの時だけ日本に帰国するという感じだったと思います。

 これで両親ともにいなくなってしまったという心理的なショックや家への思い入れなどもあり、家はすぐにどうこうするということは決められずに、とりあえず、家の名義は私と弟の共同名義にして、年に2~3回、日本に帰国しては、家の中を少しずつ片付けていました。

 父が亡くなった翌年だったか、日本の税務署から固定資産税の請求がフランスの家に届いて、「どうして?フランスの住所、知ってるの?こんなに追跡してくるんだ・・」とちょっと焦って、慌てて帰国したこともありました。

 そのうちになんとかしなくちゃ・・と思いながら、ある日、突然、パンデミックで容易に帰国もできなくなり、いよいよ、家は本格的な空き家になっていきました。

 家は住んでいないと傷むと言いますが、そのとおりで、それでも我が家の場合は家の地続きに従妹が住んでいるので、全くの空き家というわけでもなかったのですが、台風が来て、鎧戸が飛んでしまったとか、庭の草木が生い茂り植木屋さんに入ってもらったり、住んでもいない家の庭にお金をかけるのももったいない・・などと、帰国時に必死に草抜きをして、除草シートを張ったり、苦労していました。

 その後、パンデミックのため、色々な番狂わせがあったものの、その間、娘はフランスでの教育課程を修了し、日本で外資系の企業に就職したため、空き家だった家に今は彼女が一人で暮らしています。数年間、無駄にしましたが、現在、彼女が私の実家に住んでくれています。

 彼女が日本で暮らし始めるときに、一緒についていって、家が傷んでいるのにびっくりしましたが、まぁ、彼女にとっては家賃なしで暮らせる場所としては上々なのではないかと思っています。

 とりあえず、空き家問題からは一時回避している私ですが、いつかは、なんとかしなければならない空き家問題。現在は、他にも家をすぐには処分できない理由もあるので、手つかずのままいるのですが、いつかは再び、なんとかしなければならない問題として残されているのです。

 そんなところにこの「日本の空き家問題」のニュースをフランスで見たのは、何かのお告げかしら?とも思ってしまったわけですが、詳細については書かれていないものの、この空き家対策として「条件付き税額控除」を検討中だということです。

 850万戸の空き家は日本の総住宅数の14%に相当するそうで、我が家などは、都内でその気になれば、借り手も買い手もいくらでもいそうなのですが、私たち自身が高齢になっていくにつれて、終の棲家をどこにするのかも考えるし、色々なことが億劫になってきているので、いいかげん、なんとかした方がいいなとは思っています。

 団塊の世代が80代を迎える10年後には、日本の住宅の3軒に1軒は空き家になっているという試算もあり、誰にとっても空き家問題は他人事ではなく、ましてや海外在住の人にとっては、さらにハードルが高い問題なのです。


日本の空き家問題


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2023年1月17日火曜日

12年ぶりの労働組合統一戦線  年金改革抗議の強力なストライキの予定

 


 年がら年中、誰かがデモやストライキをやっている感じがするので、ストライキ自体に少々、麻痺している感じもあります。とはいえ、自分が利用する交通機関などだったりすると、それなりにうんざりして、対策を考えるのですが、個人的には、防ぎようもないことなので、こうなると、あまり怒りすぎないように、大きくため息をつく感じです。

 怒ったときには、一度、大きく深呼吸をするといいといいますが、なるほど、ため息というのは、深く息をつくという意味では、自然発生的に自分がとっている防衛本能の一つかもしれないなどと、つまらないことまで考えます。

 さて、1月10日に政府が提示した年金改革は予想どおりに大きな反発を呼び、もうそれ以来、フランスでは、いつテレビをつけても年金の話ばかり・・、よくもこう年金について話続けることができるのかと思うほど、年金問題一色になっています。

 そんな年金の話題の中には、「日本人はより長く働きたいと思っている・・経済的な問題もあるものの、日本人は仕事を辞めてしまうことで社会との繋がりを絶ちたくないとか、適度に仕事を続けることが健康にもよいと考えている・・」などと説明されてもいます。

 しかし、定年後も仕事以外の生活で楽しむことをしっかり織り込み済みのフランス人には、日本のような事例は理解しにくいかもしれません。

 まあ、年金問題は、どんな人にでも関連する共通の関心事であることに違いなく、私などはフランスで仕事を始めた年齢が遅すぎるので、もう考える余地なしなので、問題外なのです。

 しかし、今回の年金改革の一番の争点は、現在62歳の定年退職が64歳に引き上げられるという点で、これには、職業によって例外はあるものの、要するに年金をもらうまでの年数が2年引き伸ばしになるという点では、すべての職業について共通するところで、つまり、「もっと働け!」ということです。

 ストライキは、できるだけ徒党を組んで大規模にやった方がインパクトは強く、SNCF(フランス国鉄)、RATP(パリ交通公団)はもちろんのこと、空港、航空会社などのほぼすべての交通機関、学校、警察、病院、ガソリン供給会社などのエネルギー部門、公務員からトラックの運転手まで、ほぼすべての機能が麻痺しそうな勢いで、中には、まだ仕事にもついていない高校生までがデモに参加するために、徒党を組んでいるという話まで聞くので、もうこの日は抗うことは考えずに、リモートワークにするか、それができない場合は休むことにした方がよいような気がしています。

 年金改革をしなければ、どうにも現在の年金制度が立ち行かなくなるというのも理解できないではありませんが、これは、国が一律に決めることなのだろうか?と思うこともあります。年金制度としては、そうしなければならないのかもしれませんが、これは働く側の人だけでなく、経営者側にとっても大問題で、2年定年が延長すれば、その2年間分は新しい採用を控えなければならなくなるということで、職種にもよりますが、会社として活性化が悪くなる気もします。

 以前の私の職場では、だいたい、定年が近づいてくると、ロクに仕事もせずに年金の計算ばかりしていた人たちがけっこういたことを思い出しますが、そんな社員を2年余計に雇い続けなければならない会社も気の毒な気もします。

 結局は、どこに一番負担が来るのかわからない今回のフランスの年金改革ですが、とりあえず、今回の1日のストライキで、15億から20億ユーロのコストがかかる(損失を含む)とそんな見積もりまでなされています。

 今回、とりあえず予定されているのは、19日(木)ですが、これが1日で解決するとは考え難く、しかも、12年ぶりとまでいわれる労働組合統一戦線と言われれば、収拾がつくのは一体、いつになることやら、年明け早々、うんざりしています。


年金改革ストライキ デモ


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2023年1月16日月曜日

フランソワーズ・モレシャンのインタビュー記事

  


 偶然、フランソワーズ・モレシャンのインタビュー記事を見つけて、「あ~そういえば、彼女はフランス人だったんだわ・・」と思うほどに、私の中での彼女の記憶は曖昧なのですが、そういえば、「モレシャンさん・・」と呼ばれていた彼女を子供の頃は時々、テレビで見かけることがあり、昭和生まれの人なら記憶があるかもしれません。

 インタビュー記事によると、彼女は私が生まれる前から日本に来ていたらしく、いわゆる外タレの先駆者みたいな存在だったようです。今の日本にいる外タレはビックリするほど日本語が流暢で堪能な人が多い感じがしますが、私の記憶の中での彼女は「ワタシノク二では~~!」と、今から思えば、わざとだった?と思うほど、外国人アクセントで、ちょっとツンとして指をたてながら話す、まったく外国人のままのタレントさんでした。

 1958年に来日して以来、フランス語教師などを経て、1964年にタレントとして初めて日本のテレビに登場し、NHKでフランスの生活様式を紹介する番組の司会などを務めて、タレント活動を開始し、本を出せば、ミリオンセラー、そしてファッションコーディネーターとしても活躍、ジュエリーコレクション、テーブルウェア、着物などのデザイナーとしても活躍、また、ディオール、シャネル、日産などとも協賛で仕事をしたりし、フランスではレジオンドヌール勲章を受章しています。

 60年以上、日本に滞在しているという彼女のインタビューは、なかなか興味深いもので、日本がまだ、豊かとは言えない時代から、上り坂の高度成長の時代を経て、下り坂にかかっている現在までの日本の変化を初めて日本に接して感じた印象を持ちつつ、ずっと、フランス人(外国人)の目で日本を見てきたことを語っています。

 彼女は、現在では、外国人が日本人以上に尊敬している価値観・日本の美学、(わびさび、禅宗に由来する精神性など)をとても尊敬しているが、その日本の価値を若い日本人は何も知らないと言っています。

 「1974年、日本を先進工業国時代に突入させた利口なペテン師、田中角栄首相が就任するまで日本は日本であった。それから、日本のコンクリート化が始まった。あちこちに工場ができ、小さな職人たちの工場は終わりを告げ、もはや本物の日本ではなくなった」

 「1980年代に日本急はに豊かになり、ゴッホの絵を世界中が驚愕する値段で買い落したり、ゴルフ場を買いまくったり、ついには、トヨタが、フランスのノートルダム寺院を借り切って自動車ショーを開催するとまで言い出し、お金にものを言わせて慎みを失ったようだったと言っています。(この自動車ショーの開催は却下された)」・・

 「しかし、バブルがはじけて、自殺者が激増し、日本人は再び謙虚になりました」・・

 この後、彼女は日本の女性の位置づけの変換について、日本の教育について(日本の学校は自分で考えないこと、ひたすら人に従うことを教えている)、男性と女性、夫婦の関係についてなど、延々と語っていますが、最後に目を引いたのは、インタビュアーの「日本は今のアジアのモデルになれるでしょうか?」という問いに対して、「もう手遅れです」とバッサリと答えたことです。

 「日本はもはや中国や韓国、その他の地域の国々のモデルにはなり得ない。日本は消えつつありますが、文化レベルではまだ生きています。そして、このことは特にヨーロッパで顕著です」という文面です。

 同等に語るにはおこがましいのですが、日本に住むフランス人とフランスに住む日本人という逆の立場で、彼女に比べれば、まだ20数年しかフランスにいない私でさえ、この私が日本を離れてからの期間だけに限っても、外国から見る日本という意味でも、少しは客観的に見て、危機感を感じています。

 日本に60年以上住んで、様々な場面に遭遇してきたであろうフランス人の言葉に、なんとなく、わかっている気がしていた内容であっても、グッサリ刺された気がしたのでした。


フランソワーズ・モレシャン 外タレ


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2023年1月15日日曜日

パリに巻き起こる「エミリーパリへ行く」現象と経済効果 Emily in Paris

  


 Netflix の人気シリーズ「エミリーパリへ行く」(Emily in Paris)がその舞台となっているパリで、訪れる観光客やドラマの中に登場するブランドなどに大旋風を巻き起こしているようです。

 新シーズンは、放送開始後わずか5日間で全世界で1億1700万時間の視聴時間を記録したという「エミリーパリへ行く」は、もはや、どんなファッション雑誌よりも影響力が大きく、ドラマに釘付けになっている視聴者、特にテレビから離れてしまっているといわれているティーンエイジャーや若い層(若くない場合もあり)へのアクセスの役割を果たし、彼女たちは、ドラマを見ると同時に、ヒロインと同じバッグ、同じ洋服、アクセサリーをインターネットで探しはじめ、ドラマに出てきたブランドの売り上げが急上昇するのだそうです。

 視聴者にとってあこがれの存在であるヒロインに少しでも近づきたい、ファッションを真似したい、同じ場所を訪れてみたいという感情は珍しいことではありません。

 エミリーに限ったことではありませんが、熱狂的なファンにとって、その映画やドラマの撮影に使われた場所への聖地巡礼のようなことはよくあることです。

 前シーズンに、ヒロインがドラマの中でNach(ナッシュ)(アニマルモチーフの陶器のアクセサリーブランド)のフラワーピアスとインコのネックレスを着用しており、そのアクセサリーは1週間もしないうちに、品切れになり、それ以来、売上高はうなぎ上りを続け、フランス全土、アメリカ、イタリア、日本から注文が殺到し続けているといいます。

 シーズン2、3に登場するボタン・パラダイスのベルトなどもその一つですが、すでに有名なハイブランドと小規模なアーティストのブランドを上手にミックスして登場させているところも巧みなところで、ヒロインが高級マーケティング会社に勤務という設定から、架空のブランドだけでなく、シーズン2では宝飾店のショパール、シーズン3では自動車メーカーのマクラーレンなど実在のブランドの広告キャンペーンを企画することもできています。

 このドラマのヒロインが自由な服やジュエリーを使うことで、このシリーズは多くのフランス人デザイナーのショーウィンドーになっているのです。

 実際にドラマの中で主人公が訪れるフランスのマクドナルドでは、年末から「エミリーインパリ」なるメニュー(バゲットのパンを使ったサンドイッチとポテトとドリンク+デザートにマカロンが付いたセット)が販売されています。

 こんなエミリー効果に沸いているパリは、もっと素直に喜んでもよさそうなものだとも思いますが、世界中の観光客を魅了する絵葉書のような風景を映し出すこのドラマに、真実とはほど遠い「理想化されたパリ」ばかりを映し出していることを指弾するエコロジストの政治家なども出てきて、それはそれで、ちょっと驚きで、閉口してしまいます。

 彼ら曰く、「エミリーが私たちに見せているのは、変わらないパリの写真であり、超中心地区に限定され、富裕層だけが住む、均質で固定された建築遺産を持つパリのディズニーランドに他ならない」のだそうです。

 しかし、私は思うのです。いいじゃない!ドラマなんだから・・と。

 ドラマの中では、決して便利でもなく、いじわるな人もところどころに登場し、適度にパリの嫌なところもシニカルに表現されているところもあるので、せめて美しい場所を映してくれる(美しいところばかりではないのも事実ではあるが・・)このドラマはありがたいものだと思いますが、どうにもイチャモンをつけたがる人はいるものだな・・と思います。

 以前、「アメリ」という映画が人気で、「アメリがクレームブリュレを食べたカフェ」をツアー行程に盛り込んでいる日本の旅行会社のツアーなどがありましたが、今や日本の旅行会社はツアーを組むということがあるのかないのか? 以前のように日本人観光客がツアーでパリを廻ることがあれば、さしずめ、「エミリー巡礼ツアー」なるものが登場していただろうな・・などと、新しい流れに昔を懐かしむ気分でもあるのです。


エミリーパリへ行く 社会現象 Emily in Paris


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2023年1月14日土曜日

ルイヴィトンと草間彌生の仰天コラボ

  


 シャンゼリゼのルイヴィトンが凄いことになっていると聞いて、近くまで行く用事があったついでに、噂につられて、ちょっと立ち寄ってみました。

 ついこの間までクリスマスのデコレーションに彩られていたシャンゼリゼにあるたくさんのお店もノエルのデコレーションが取り払われて、静けさを取り戻しているかのような様子の中、シャンゼリゼの中心にあるルイヴィトンのビルは、ちょっと度肝を抜くほど大きな草間彌生さんの超特大の人形を乗せ、ビル全体には、あのカラフルな水玉?が散りばめられ、ものすごい姿になっていました。

 たしか、ノエルの時には、シャンゼリゼのルイヴィトンのデコレーションはそこそこのデコレーションで、そこまで目を引くものでもなかった気がしますが、あれは、今回の草間彌生とのコラボにまつわるこのキャンペーンの前の嵐の前の静けさであったのか?と思わされるほどです。

 草間彌生さんは、そのお名前と、なんとなくその作風を存じ上げる程度であまり知識はありませんが、ルイヴィトンのサイトに行くと、「新しいルイヴィトンのコレクションは、世界的に著名な日本人アーティストである草間彌生氏とのコラボレーション!その大胆なシルエットや色彩豊かな作風にルイヴィトンのノウハウを融合させ、ルイヴィトンのアイコニックなデザインを草間氏のカラーで蘇らせている」と説明しています。

 ペインテッド・ドット、メタル・ドット、インフィニティ・ドット、サイケデリック・フラワーなどのシグネチャー・モチーフは、ルイ・ヴィトンの世界観の中で抽出されたものであり、彼女のアート、大胆さ、クラフツマンシップ(職人気質)が見事に表現されており、草間彌生氏は、魔力のような才能と決意で自分の存在を変容させて止まない、今日、最も影響力のある比類なき女性アーティストの一人であると大絶賛しています。



 パリ市はなにかと街全体の景観に対する規制が厳しく、マクドナルドでさえも、あのマクドナルドのトレードマークと言われる赤いテントを使えない場所もあるくらいの街です。そんな街で。このインパクトの強いデコレーションには、ちょっと度肝を抜かれる感じでもあります。

 これは、期間限定のものだからなのか? ルイヴィトンだからできるのか? わかりませんが、ちょっと人目を惹く・・なんてレベルのものではないことだけは確かです。

 思い起こしてみれば、シャンゼリゼの店舗はそれほど印象には残っていないものの、ヴァンドーム広場のルイヴィトンの店舗のクリスマスのデコレーションはなかなかインパクトの強いもので、もう元来のショーウィンドーも見えなくなっているほどのデコレーションで、ルイヴィトン・・どうしちゃったの?どこまでいくの?と思ったばかりで、すぐ、その翌月には、この草間彌生コラボキャンペーンです。


昨年クリスマスの時期のヴァンドーム広場のルイヴィトン

 どれだけ主張するの?と思ってしまう最近のルイヴィトン、草間彌生氏の強いインパクトのある作風が今のルイヴィトンの感覚と合致したのかもしれません。


ルイヴィトン 草間彌生 シャンゼリゼ


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