2022年1月18日火曜日

ワクチンパスポート施行とコロナウィルス感染証明書

   


 毎週のようにデモが起こり、反対の声は常にある中、フランスは国会でワクチンパスポート法案を採択、憲法評議会の承認を経て、今週末にもワクチンパスは施行されることになりました。

 ヘルスパスとアクセスできる場所は、基本的には変わらないものの、これまでヘルスパスでは、PCR検査・抗原検査の陰性証明書が使用できたものの、これが一切、通用しなくなります。

 このワクチンパスは、16歳以上の全国民に対して適用されることになります。ですから、ワクチン接種をしない限り、レストラン・カフェ、文化施設、娯楽施設、スポーツ施設、イベント会場へのアクセス、長距離電車やバス、(家族以外の相乗りなどの特定の交通手段も含まれる)、飛行機などの公共交通機関は利用できなくなります。

 また、偽ワクチンパスの流通を防ぐために、ワクチンパスのチェックには、ワクチンパス自体の整合性を確認することが必要な場合には、本人確認として、写真つきの公的書類(IDカードなど)を求めることが許されるようになりました。

 そして、偽のワクチン証明書に関する罰則が強化され、他人のワクチンパスを使用した場合、または、他人にワクチンパスを譲渡した場合は、現行の135ユーロから1,000ユーロの罰金になるとともに、偽のワクチンパスポートを不正に入手した場合(偽造、第三者からの借用を問わず)は、3年の禁固刑と45,000ユーロの罰金が課されることになり、複数の偽ワクチンパスポートを不正に所持した場合には、5年の禁固刑と75,000ユーロの罰金に引き上げられることになりました。

 しかし、このワクチンパスポートには、例外もあり、12歳から15歳の未成年に関しては、これまでどおり、ヘルスパスが(PCR・抗原検査の陰性証明書)がワクチンパスポートと同じ効力を持ちます。

 また、前回のワクチン接種から7ヶ月経ってもブースター注射を受けていない人について、有効期間を超えてからの予約しか取れなかった場合、あるいは、医療上の理由で3回目の接種ができていない人に関しては、仮のパスポートを受け取ることができますが、その間は、本来はワクチンパスが求められる施設にアクセスする場合には、PCR・抗原検査の陰性結果を提示する必要があります。

 また、ワクチンパスポートの代わりにコロナウィルス感染、回復証明書(6ヶ月間有効)(11日以上6ヶ月未満の感染)を提示することも可能ということになっているようです。

 このワクチンパスポート施行は、ワクチン未接種者に圧力をかけて、ワクチン接種に向かわせるためのものであることは言うまでもありませんが、感染した場合にどの程度の免疫ができているのか?ワクチン接種同様の効果?があるのならば、ワクチン未接種者でも感染していれば、6ヶ月間、ワクチンパス証明書はいらないということになります。

 ワクチン接種の有効な期間が短くなり、3ヶ月後にブースター接種が可能ということになっているのに(ワクチンパス自体は2回目のワクチン接種から7ヶ月以内にブースター接種をということになっています)、感染した者に関しては、6ヶ月間感染証明書が有効というのも疑問です。

 そうでなくとも、フランスには、毎日、30万人程度の新規感染者がいて、1月前半(1日から15日まで)だけでも、累計で4,153,835人の感染者がいます。

 こうなってくると、ワクチンパスポートを施行して、ワクチン未接種者を接種に向かわせるということが、なんだか虚しい気もしないではありませんが、現在のフランスは、初回接種から3回目のブースター接種を合わせて、毎日50万人程度がワクチン接種を受けているようで、かろうじて感染者よりは多い数字です。

 そもそも、ワクチン接種で感染を防げていたのはデルタ株までの話で、オミクロン株は、ワクチン接種だけでは感染は防ぎきれず、重症化は防げるとされていますが、この変異株の性質上、ワクチンパスの意味合いが、なんだかずれてきてしまっているような気がしています。

 ワクチンパスを持っているからといって、感染していないとは言いきれず、これまでワクチンで感染から守られている人のみがアクセスできる場所は、ある程度、安全であると思ってきましたが、必ずしもそうではないわけです。

 つまり、現在の状況では、感染そのものを避けることはできないが、感染しても重症化する可能性が低いという人だけがアクセスできる場所がワクチンパスによって、限定されるということです。

 そして、それらの場所にアクセスできなくなることから、ワクチン接種をする者が増えるという算段です。

 ヘルスパスが施行された時は、画期的なシステムで、感染のリスクが高いと思われる場所でも、少し安心して行けるようになり、感染者も一時、減少しましたが、今回、コロナウィルスの変異によって、そこまで決定的な手段とは思えない気がしてきました。

 とはいえ、少しでもワクチン接種が進んで重症化する人が減少すれば、それはよいことに違いありませんが、なんだか少し、期待はずれになってしまった気がしないではありません。

 必死にヘルスパス施行に向けて突き進んでいた間に、コロナウィルスの変異により、いつの間にか、少し状況は違ってしまいました。

 フランスでは、毎日のように、ピークはいつか?ピークはもうすぐ・・と、ひたすら感染がおさまるのを待っているようで、一部の地域では、感染者数が下がり始めたと言っていますが、ヘルスパスの施行によって、画期的な感染の減少を期待するには、まだまだ時間がかかりそうな気がしています。


フランスワクチンパスポート施行


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2022年1月17日月曜日

フランスで継続するアンチワクチンパスデモとジョコビッチの全豪オープンからの強制退去

   


 ワクチンパス施行を目前とするフランスでは、相変わらず、ワクチンパス反対のデモが続いています。とはいえ、前回のデモに比べると、デモ参加者は大幅に減少し、内務省の発表によると、前回の約105,200人に対して、今回は、約54,000人に減少しています。

 彼らのデモでの訴えは、「ワクチンパス反対」「ワクチン接種そのものに反対」「自由」「政府の強行策に反対」など、毎週のことで、掲げられているプラカードや訴えの内容は、ほぼ同様の内容です。

 しかし、今回のデモで気になったのは、そのプラカードの中に「ジョコビッチは私たちの旗手である!」というものが、混ざっていたことでした。

 このデモが行われた時点では、ジョコビッチの全豪オープンの出場可否に対する最終的な決定が出ていなかったため、これは、ジョコビッチが全豪オープンに出場することになれば、アンチワクチン論者を正当化するものになってしまうのではないか?と、オーストラリア裁判所の決定を不安な思いで、見守っていました。

 フランスのデモ隊にまで影響を及ぼすとは・・ジョコビッチ、恐るべし⁉︎です。

 フランスでも、テニス世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ選手の一連のワクチン未接種での全豪オープン出場可否の騒ぎは、連日、報道されていたので、その影響力の大きさは、テニス界だけでなく、フランスで「アンチワクチン論者の旗手」として、まつりあげられるのは、当然といえば、当然だったかもしれません。

 しかし、今回のジョコビッチ選手のワクチン接種に関しての一連の報道では、「ワクチン未接種の発覚」から、彼のビザは、取り消し、その後、同選手の弁護団から異議申し立てがなされ、「彼自身が12月16日にコロナウィルス陽性であったこと」が申告されましたが、その直後に「隔離もせずに、公の場にマスクなしでマスコミに対するインタビューや公的イベントに参加していたことの発覚」そして、「ビザ申請書は、本人が記載したものではなかった」など、見苦しい応酬が続いて、最終決定は、オーストラリア裁判所の決定に委ねられていました。

 世界ランキング1位のトップアスリートである彼は、彼自身の健康管理についての強い信念をもっていることは、理解できますが、どの選手も同じ条件をクリアして参加している大会に、たとえ、彼が世界ランキング1位であろうとも、例外を認めることは、あり得ないことだと思っていました。

 スポーツマンシップという言葉が適当かどうかはわかりませんが、大会が定めた(大会開催国が定めた)ルールを個人的な理由で守らないというのは、テニスのトッププレイヤーとしては、ガッカリさせられるものでした。

 彼が信念をもって行なっていることなら、姑息なごまかしをせずに、なぜ、堂々とワクチン未接種を公表しなかったのか?と思ってしまいます。

 結局、オーストラリア裁判所は、「オーストラリア社会に健康上のリスクをもたらす可能性がある」という理由で、ビザの撤回を支持する判決」を下しました。

 この決定は、彼自身のウィルス感染のリスクよりも、この世界ランキング1位のジョコビッチの入国、大会出場が「反ワクチン感情を助長すること」や「国民の不安を増大させること」などの社会的な影響を考慮してのものであったことは、言うまでもありません。

 正直、フランスのアンチワクチン論者は、助長されかかっていました。

 オーストラリアは、パンデミック開始以来、感染拡大に対して世界で最も厳しいとされる規制を敷いてきた国の一つでもあります。この事実をジョコビッチが知らなかったはずはなく、ましてや大勢のスタッフを引き連れている彼の周囲の人々もどう考えていたのか?疑問は残ります。

 また、パンデミック以来、テニスの世界大会はいくつも行われてきたにも関わらず、選手のワクチン接種に関するチェックをしてこなかったのかも疑問です。

 次のメジャー大会は3月にインディアンウェルズ(3月10日~20日)とマイアミ(3月23日~4月3日)で開催されるマスターズ1000です。アメリカへの入国には、やむを得ない理由がない限り、完全なワクチン接種のパスポートが必要です。

 フランスにおいても全仏オープンは、まだ先ですが、ワクチンパスポートの施行が始まれば、当然、テニスの試合会場などでは、ワクチンパスポートなしでは、入場できなくなります。

 これで彼がワクチン未接種者であることは、全世界の周知の事実になり、今後の彼の行く先には、大きな壁が立ち塞がることになりました。

 今回のオーストラリアの決定で、どんなタイトルを持つ権力者であっても例外は認められないとされたことは、少なくともアンチワクチン論者を助長させることにはならなかっただけでも正しい決定であったと思っています。

 そもそも、ウィルスは、国籍も権力も地位も差別することはありませんから。


ジョコビッチオーストラリア退去


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2022年1月16日日曜日

いつまでもフランスで感染がおさまらない理由を見た1日

  


 先週末にパリ郊外で会合があり、この感染が蔓延するさなかに、嫌だなと思いつつ、「リモートにすることはできないのですか?」と聞いてみたのですが、「リモートは不可能」と却下され、渋々、参加してきたのです。

 もともとその会合は、1月5日の予定だったのですが、それが感染対策を考慮して延期され、結局のところ、その時点よりも悪化している状況で開催、これ以上、待っても感染はおさまらないという判断なのでしょうか?

 そもそも会合というのは、実際に顔を突き合わせて話し合いができれば、それに越したことはないのですが、実際に行ってみると、どうしてもそれが必要なのかは、甚だ疑問で、しかも、昼食会までもを挟んでの丸一日。

 そして、参加している人々は、もちろんマスクを着用しているものの、マスクをしっかりしている人ばかりではなく、咳をするたびに、なぜかマスクをずらす人や、話に熱がこもってくると、マスクを外してしまう人などもいて、その度に私は、苦々しい思いをしながら、マスクの上からそっと小さな布を覆うのでした。

 マスクを外して、思いっきり席をしたり、大きな声になれば、マスクがより邪魔になるのは、道理ではありますが、実際は、真逆のことをしていることに彼らは気づいていないのです。この話が過熱してきて、マスクをついずらして話をしたりするのは、政治家などにもよく見られる光景です。

 大した内容でもないことに昼食会まで挟んでの会合、百歩譲って、会合をするとしても、さっさと話を進めれば、半日で済むものをダラダラと時間をかけることにも、まるで感染対策に対する対応を感じられません。

 感染対策といえば、入口にマスクとアルコールジェルが置いてあることくらい。感染対策のつもりなのか、どういうわけかトイレのいくつかが閉鎖されていることは不思議なことでした。(手を洗いたいのに、トイレが閉鎖とは・・)

 こんな感じでリモートワークがあまり行われないものなのかとフランスの感染悪化の一端を見た思いでした。

 そして、帰り道、普段は、ほとんど乗ることがないパリ郊外線に乗ると午後5時前、まだ、ラッシュアワーではないから、それでもまだマシだな・・と思っていると、そこはかとないアンモニア臭が漂ってくるではありませんか?

 そういえば、パリのメトロの駅などは、以前は、こういう匂いがよくしてきたものですが、パンデミック以来、駅や車内は清潔になり、久しく嗅いでいない匂いでしたが、どうやら、パンデミック当初には、見かけた、あの清潔に駅や車内を消毒している人もみかけなくなり、すっかり緊張感がなくなっています。

 挙句の果てには、電車の車内でのアンモニア臭とは・・郊外線といえども、パリからそう遠い長距離路線ではありません。

 おまけに、近くの席にすわっている男性数名が、車内でピーナッツを食べながら、ビールを飲んで楽しそうに話しているのには、さらに驚きでした。本来ならば、一言、言いたいところですが、こんな時、酔っ払い相手に注意をして、逆ギレされても怖いので、黙ってそっと席を移りました。

 パリで日常を取り戻すということは、このように不衛生で、無秩序である日常が戻ってくることでもあるのです。

 こんな光景を目の当たりにすると、「日本だったら、みんながきちんとマスクしているし、どこもかしこも衛生的で、ましてや電車の車内でアンモニア臭なんて、あり得ないだろうな・・」と思うと、「もう日本に帰りたいかも・・」とちらっと思ってしまうのです。

 日頃は、行かない場所に行くと、たちまち見えるフランスの現状に、これでは、毎日感染者が30万人いても仕方ないな・・と思った1日でした。


フランス人の衛生観念と無秩序と危機感の欠如


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2022年1月15日土曜日

前代未聞の歴史的規模の学校の感染対策への教職員組合のデモとストライキ

 

  


  IFOP(L'Institut Francaise d'Opinion Publique・フランスの世論調査会社)の調査によると、66%のフランス人(フランス人の約3分の2)がパンデミック発生当初から学校をできる限り閉鎖しなかった行政の選択は正しかったと支持していると発表しています。

 ところが、現在の感染爆発状態のフランスでは、学校を閉鎖しないことには賛同しているものの、学校を継続するための感染対策としての週数回にわたる検査に次ぐ検査、そして隔離、クラス内で感染者が出るたびに、また検査。

 そして感染した教員の代理要員の手配等々、学校の授業を維持するための感染対策のための業務は煩雑を極め、それを繰り返す学校は、「筆舌に尽くし難い大混乱」と悲鳴をあげ、ストライキ・デモを決行するに至りました。

 この全国の教職員組合のデモには、77,500人が参加し、小学校最大の教職員組合であるSNUipp-FSUは、75%がストライキを行なったと報告しています。

 感染対策に振り回される煩雑すぎる作業の繰り返しに加えて、ワクチン接種があまり進んでいない小学生以下の学校教員には、感染のリスクも大きく、また、この煩雑さは、学校教員だけでなく、子供の検査・隔離の繰り返しには、保護者をも巻き込んでいるために、もはや周知の事実で多くの人がこれを認めるところ。

 「このままの状態を続けることはできない」「昨年のようにクラスに1人でも感染者が出た場合は学級閉鎖にするというルールに戻してほしい」「教員の安全を確保してほしい」などの要求をかかげて、デモ・ストライキを決行したのです。

 日常から、学校のストライキは少なくないフランスですが、今回ばかりは、FCPE(Fédération des Conseil de parents d'élève=フランスの代表的な保護者団体)でさえも、ストライキの呼びかけに署名し、保護者にも教師とともに政府の運営に抗議するよう呼びかけられました。この抗議は、全国自治父兄会連合も支持しています。

 このように、今回の教職員組合のデモやストライキは、日常的な学校のストライキとは、原動力を異にする大きな世論に支えられたデモでもあったのです。

 学校を閉鎖しないためにとっている感染対策のために、ストライキで学校が閉鎖してしまう状況では、元も子もない話。政府がこれを捨て置くことはできないのは、当然の結果でした。

 また、このデモ・ストライキの予定が発表された後に「教師がウィルスに対抗してストライキを起こす」とストライキの決行を非難した、教育相ジャン・ミッシェル・ブランカー氏の発言が炎上し、教育相の辞任を求める声までも叫ばれる大騒ぎに発展しました。

 その日の夜には、ジャン・ミッシェル・ブランカー教育相は、緊急記者会見を行い、教職員組合と政府の会談の結果、「学校(特に幼稚園の先生)に500万枚のFFP2マスクを配布すること」、「今後、教職員労働組合、保健省、教育省との間で2週間に一度は会議を開催し、感染対策についての調整を話し合うこと」を発表しました。

 この発表に対して、FFP2マスクの学校への配布は、良しとしても、検査と隔離、学級閉鎖などについての措置の変更には、触れられていないために、納得がいかないという意見の人も少なくないようではありますが、私は、この一連の動きを見ていて、デモやストライキも時には、必要なものだとフランスに来て以来、初めて思いました。

 デモやストライキは、フランスの文化の一つであるといってもよいほど、日常からフランスでは、デモやストライキが絶えることはありません。パンデミック以前にも、黄色いベスト運動やら、年金問題などなど、毎週土曜日(通常は土曜日)に行われるデモは、途切れることはありません。

 パンデミックが始まってからも、マスク義務化反対だのヘルスパス反対、ワクチンパス反対など、デモは途切れることはなく、いい加減、なにかあれば、すぐにデモ・ストライキに発展するフランスには、正直、うんざりすることも少なくありませんでした。

 しかし、今回は、教職員のデモということで、顔ぶれも印象も違い、この感染爆発の中で、学校を継続するために必死に戦っている人々の叫びは理解できるもので、また、今回のデモによって、すぐに全ての要求が通ったわけではありませんが、FFP2マスクは500万枚も教員向けに配布されることになり、現場の意見を聞き、話し合う機会を持つという政府の歩み寄りを勝ち取ったのです。

 先日、マクロン大統領が、ワクチン未接種者に対して、「彼らを本当に怒らせたい!」といった発言が物議を醸しましたが、彼らを怒らせたいということは、彼らに真剣に考えてほしいということに他ならないと思うのです。マクロン大統領は、まさに彼らを怒らせることによって、彼らに闘いを挑んでいるのです。

 今回の学校の感染対策に関しては、教師を怒らせようと思ってしたことではありませんが、結果的に大きな怒りが爆発し、政府に闘いを挑んだ形になりました。

 政府も国民も常に戦闘体制・・そんな感じです。

 フランス人にとっては、デモやストライキはお家芸のようなもので、お手のもの、声を上げることに躊躇いはなく、彼らは自己主張すること、異議を唱えることに慣れており、子供の頃から、そのような教育を受けていますから、この流れはフランス人にとっては、特別なことではありません。

 あまりに日常化しているデモやストライキはどうかとも思いますが、今回のように、本当に深刻な状況の中、子供の将来を考えている双方が、世論を巻き込みながら、政府が国民の意見に歩み寄る態度をもたらすことは、意味のあることではなかったかと初めてフランスのデモも悪いことばかりではないと思った次第です。

 日本にもデモがないわけではありませんが、フランスのデモを見慣れていると、「これ?本当にデモなの?」と思ってしまうくらいびっくりするくらいお行儀が良いです。

 日本には、デモという形が適しているのかどうかはわかりませんが、今の日本政府の行政には、声を上げることが、たくさんあるのではないか?と思うことがあります。

 海外にいると、「日本人は黙って我慢するからダメなんだ・・」と言われることがありますが、日本人は国内の政治に関しても、黙って我慢ばかりしていてはダメなのではないか? 日本国民はもっと怒ってよいのではないか?と今回のフランスの学校のデモ・ストライキを見ていて思ったのでした。


フランス教職員組合歴史的ストライキ・デモ


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「娘の人生を変えたストライキ」


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「理解できないストライキの続行」


 






2022年1月14日金曜日

「ワクチン接種拒否なら集中治療辞退を!」医療従事者の叫び

  


 

 フランスでは、「オリヴィエ・ヴェラン保健相がコロナウィルス感染」というニュースがセンセーショナルに報じられています。

 昨日、朝、閣僚会議に出席していたヴェラン氏は、午後に感染者追跡アプリ(TousAntiCovid)を介して、感染者と接触していることを警告され、最初のテストを受けましたが、陰性であることが証明されました。しかし、昼過ぎに軽い症状が出たため、再度検査したところ、今度は陽性だったそうです。

 1日のうちに2度の検査を行なって、陰性であった結果が陽性になるということにも、ちょっと驚きです。側近によると、「彼は自己診断で抗原検査も陽性であることを確認した」ということです。(彼自身は、本来、医者でもある)

 彼は、10月末に3回目のブースター接種を受けているので、現在、ワクチン接種の間隔を3ヶ月と定めているフランスで、ワクチン接種後3ヶ月以内でも感染するというワクチン接種に対するネガティブキャンペーンに繋がりかねない政府首脳の感染のニュースですが、幸い彼の症状は、軽症で、隔離状態にはなるものの、今後も職務をリモートで続行するそうで、これが「ワクチンをしていれば、重症化しない」キャンペーンになってくれればと思います。

 現在、フランスには、約500万人ほどのワクチン未接種者が残っていますが、この感染爆発状態に、この500万人の中から、続々と病院に入院してくる患者に病院の逼迫状態は進み続けています。

 先週の初めに、パリのピティエ・サルペトリエール大学病院名誉教授のアンドレ・グリマルディ氏のジャーナル・デュ・ディモンシュ(フランスの日曜紙)に「ワクチン接種を拒否する成人には、重症になった場合に蘇生を希望するかどうかという事前指示書を書くように体系的にアドバイスするべきではないか?」「ワクチン接種を受けないという自由な選択を主張する人は、蘇生を受けないという自由な選択を前提に一貫性を持たせるべきではないか?」という疑問を投げかける寄稿が物議を醸しています。

 この寄稿は、パンデミックが始まって以来、そろそろ2年が経とうとしている現在、感染の波をいくつも繰り返し、疲れ果てている医療従事者の怒りの心情を吐露したものです。

 多くの医療従事者の怒りは、政府とワクチン未接種者という2つのターゲットを持っており、その一つである政府に対しては、早い段階で病院スタッフを確保し集中治療室の病床を増やすための手段を取らなかったことを非難しています。

 また、ワクチン未接種者に対しても、特に50万人と言われる80歳以上のワクチン未接種者について、重症化した場合に蘇生術が効かなくなり、理不尽な治療のために長い期間を集中治療室を占領することになり、結果的に起こる患者のトリアージュ(患者の選別)に繋がっており、結果的にその判断を迫られる医療従事者の負担は計り知れないものであるという内容です。

 集中治療が必要な複数の患者に対して、病床が不足している場合に、どちらを優先させるべきか?を合議で決めるのは医療従事者ですが、「この介護者を導くべき原則を議論するのは、学協会、独立機関、倫理委員会、そしてそれ以上に社会全体とその選出代表者に任されるべきではないか?」と問題提起しているのです。

 医療従事者が道徳的な判断を持っていないということではなく、その判断が患者との関係に介入し、彼らの判断に影響を及ぼしてはならないということを彼は注意深く説明しています。

 コロナウィルス以外の患者の集中治療室での平均滞在期間が4〜5日であるのに対し、コロナウィルス感染患者の平均滞在期間が2〜3週間であることを念頭に、コロナウィルス以外の患者(がん患者等)の手術予定が崩され、延期されるたびに感じる怒りとやるせなさ、集中治療室を占領するコロナウィルス患者のほとんどがワクチン未接種者であることに憤りを覚えながら、ワクチン未接種者のコロナ患者に「だから言っただろう・・」と思いながら、この仕事をしながら、初めて患者に共感できなくなっていると語っています。

 彼の寄稿の「ワクチン接種拒否なら集中治療辞退を!」という部分が特に取り上げられて騒がれていますが、ワクチン接種を受けないという決定を苦々しく後悔している患者が毎日、病院に到着するという光景が日常とならないように、そして、集中治療室のコロナウィルスの患者の選別が、医療従事者の責任だけに委ねられていることに疑問を呈しているのです。

 病気に関しては、本来、患者を責めることはできませんが、ワクチン接種という防御の手段がある以上、それを拒否して罹患した場合は、すでにその患者や家族の選択の結果であると言えないこともありません。その選択の結果、人手不足や病床不足のためにおこる命の選別、医療従事者につきつけられる患者の一人一人の命を選別しなければならないという医療従事者が感じる厳しさややるせなさは、計り知れません。


ワクチン接種拒否なら集中治療辞退


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2022年1月13日木曜日

日本の鎖国延長についてのフランスの報道の中で気になったこと

   


 フランスの新型コロナウィルス感染は、とどまることを知らず、2日連続、1日の新規感染者数は、36万人を突破しています。それでもフランス政府報道官ガブリエル・アタルは、「ウィルスが蔓延していても、できるだけ、普通に生活を送ることができることを目標としています」と語っています。

 そのため、「特に学校は閉鎖しない」ことを目標に、非常に厳しい検査と隔離の方針を立ち上げ、このあまりの煩雑さに音を上げた教職員組合がこれまでに例のないほどの規模でのストライキを予定していたりしますが、基本的な「普通に生活を送ることができることを目標とする」姿勢は、摩擦は起こっているものの、このなんとかして学校を存続させようという姿勢に表れています。

 また、イギリスとの国境規制の緩和についても、数日中に発表される予定になっています。どちらかと言えば、この感染者数にも関わらず、規制緩和に動きつつあるのです。

 そんな中、正直、遠い国である日本の国境規制については、それほど大々的に報じられているわけではありませんが、(まさにそれどころではない状況)それでも、完全にスルーされているわけではなく、各国のコロナウィルス(特にオミクロン)対応について、少しずつ紹介されている中、日本のこの「鎖国延長」については、海外のニュースの中では(ヨーロッパを除く)比較的大きく扱われている方でした。

 その中で、かなり辛口のものがあったので、参考までにその報道について、書いておきたいと思います。

 「日本は、ほとんどの外国人の入国制限を2月末まで延長し、オミクロン対策として集団予防接種センターを再開すると発表」

 岸田文雄首相は記者団に対し、「人道的見地から必要な措置を講じ、国益を考慮しながら、2月末まで国境管理措置を維持する」と述べた。

 「地元メディアは、日本人の親族を持つ外国人や留学生を対象に、厳しい措置の例外を検討していると報じたが、結局、正式な発表はなかった。」

 「駐在は凍結され、建設現場は中断され、学習計画は半減し、家族は2つに分断される...。」

 「このニュースは、観光客だけでなく、ここで働くビジネスマン、エンジニア、学生などの外国人をも激怒させた。しかし、現地の人々は拍手喝采である。88%の日本人が、国境を守るため、そして彼らにとって苦痛のない閉鎖を認めている。」

 「日本は、検疫期間や入国者への頻繁な検査など、厳しい国境管理を実施している。しかし、こうした取り組みもオミクロン変異株の蔓延を防ぐことはできず、日常的に報告される件数は急増している。全国レベルでは、先週の週次平均が10倍になっている。」

 「グローバル化しながらも内向きな国、日本」「このパンデミックは、この列島がいまだに孤立主義を培い、外国人を統合しようとしないことを明らかにした。」などなど、事実とともに、かなり辛辣な報道もあります。

 これまで世界的なレベルから考えれば、奇跡的とも思われるほどに、感染を抑えてこられた日本としては、水際対策を強化し、これ以上に感染が蔓延することを抑えようとしていることは理解できますが、「人道的見地から必要な措置を講じ、国益を考慮」と言いながら、日本人の配偶者でさえも、外国人の場合は入国できないという非人道的な対応は、海外からすると理解はできないのが普通の感覚です。

 永久に日本が鎖国措置を続けるわけではないにせよ、このあまりに長く続くパンデミック禍中で、この日本の閉鎖的な対策には、かなり批判的な声が多いのは確かです。

 日本以上に感染が蔓延している国からの入国者に慎重になるのは、必要なことではありますが、外国人に対しては、隔離を自己負担にしたり、日本人が入国する場合と同じ感染対策義務などの方策をとれば、不可能なことではないはずです。

 家族が日本人である場合はもちろんのこと、留学生に対しての措置も同様に、外国人であるということで、入国を制限するのは、世界からは、理解されていません。

 フランスはもちろんのこと、多くの海外の国々は、国によって、隔離の期間や条件が異なることはあっても、留学生の受け入れも続けています。もちろん、日本からの留学生も海外では受け入れられています。

 留学生の受け入れについては、パンデミックのさなかに、我が家の娘も2度にわたり、日本の大学への留学を拒否され、ついに、そのチャンスを逃してしまったので、恨みつらみが募っています。

 「日本で学びたい」と真剣に考えている学生を断ち切ってしまうことは、日本にとっての大変な損失です。将来、もしかしたら、日本で働きたいと思ってくれるかもしれない、少なくとも、日本を知りたい、日本に興味を持ってくれている外国人をシャットアウトしてしまうのは、大変、残念なことであり、大変なイメージダウンです。

 日本は、パンデミックの最中にオリンピックを開催することができた国です。留学生の受け入れも、きちんとした隔離対策さえ取れば、可能なはずです。「なぜ、オリンピックならできて、留学生にはできないのか?」これは、この鎖国延長による日本の閉鎖的な対応がどれほど日本にとってダメージになっているかということは、私は、結構、大きな問題である気がしています。

 最近、「日本政府は、世界のニュースを見ているのか?」「子供の将来、日本の20年先、30年先の未来を考えているのか?」と感じることが多くなりました。

 いみじくも、「グローバル化しながらも内向きな国、日本」と酷評された日本政府は、現在の日本国内にいる日本国民にしか目が向いておらず、世界からのイメージのダメージには、無関心な気がしてなりません。これが進めば、世界の中での日本の役割は減少していきます。

 いざという時に日本のことしか考えない国を世界は、信用しなくなります。

 1日30万人もの感染者を出し、2ヶ月後には、2人に1人が感染している状況になると言われている国にいる人間が言うことではないかもしれませんが、長引くからこそ、数々の摩擦を起こしながらも、日常生活に近い生活を送ろうとしているフランス、ヨーロッパの姿勢を私は、嫌いではありません。

 日本政府には、日本国内だけでなく、世界の中にある日本であるということや、その未来をになっていく若者の将来、未来の日本を考えてほしいと思っています。


日本の鎖国延長


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2022年1月12日水曜日

2ヶ月以内にヨーロッパの半数以上が感染する フランスの1日の新規感染者数36万人突破

  

 

 世界保健機構(WHO)のヨーロッパ支部長のハンス・クルゲ氏は、「現在の世界的な感染率からすると、(Institute for Health Metrics and Evaluation(IHME)の分析)、今後、6〜8週間以内にヨーロッパの人口の50%以上がオミクロン変異種に感染すると予想される」と発表しました。

 感染力の強い変異型の潮流が高速で拡散する中、新規感染者の急増は、すべての大陸で加速しており、パンデミック開始以来の水準に達しています。

 この2週間、米国で新たな感染者数の増加がめまぐるしいですが、欧州でも非常に強い感染者を記録しています。

 医療体制については、入院患者数は増加しているものの、集中治療室への入院率は鈍化しており、死亡率は比較的、安定しているものの、WHOヨーロッパの支部長は、「ワクチン接種率が低い国で、ワクチン未接種者の重症化が進むと、どのような影響が出るかはまだわからない」と懸念しています。

 11月の段階で、WHOが「ヨーロッパが再び感染の震源地になる」と予告したとおりになっている状況です。

 中でもフランスは、そのトップを走っている形になっており、ヨーロッパの中でも最高値を記録、1月11日には、1日の新規感染者数は、再び記録を更新し、368,419人を記録しています。    

2020年10月以来のフランスの新規感染者数


 先週(1月2日〜8日まで)の10万人あたりの発症率は、2,790人を超え、中でもイル・ド・フランス(パリを中心とする地域)の一部の地域では、4,000人を超えています。(単純計算で25人に1人が感染しているということ)

 フランス国立衛生局の発表によると、現在(1月11日現在)のコロナウィルスによる入院患者数は、23,371人(前日から+722人)、集中治療室の患者数は、3,969人(前日から+65人)、1日の死亡者341人を記録しています。

 この莫大な感染者数に比べれば、入院にまで至る確率は、かなり低いとはいえ、確実に病院を圧迫し続けている状況には違いありません。

 また、現在、圧迫しているのは、病院だけではなく、感染者の隔離により、社会のあらゆる場所を圧迫しており、特に、ワクチン接種があまりされていない小学校での感染と検査、隔離の問題は、ことさら深刻になってきています。

 それでもフランスは、「学校は最後に閉鎖する場所であり、最初に再開する場所であるべきだ」という姿勢を崩すことは、ありません。学校は、フランスの未来を担う子供の教育を決して諦めないということに他なりませんが、基本的に、全ての機関を閉鎖せずにこの感染の波を乗り切る姿勢とも重なります。

 この新規感染者数36万人超えという状況からは、2ヶ月以内にヨーロッパの半数以上が感染するという話は、決してあり得ない話ではありませんが、ともすると、「オミクロン株は、感染力は強くても、比較的、症状が軽く、これだけ広がれば、もしかしたら、これが最後の感染の波になるかもしれない」とか、「感染してもワクチンさえしていれば、感染しても問題ない新種の風邪をひいた程度になる」とか、楽観視する意見も持ち上がり始めており、感染症専門家などが出てきて、「その可能性が全くないとは言えないが、現在のフランスの状況は、とても、手綱を緩められる状況ではない。楽観視しすぎてはいけない」と必死でブレーキをかけているような状態です。

 こうした中、コロナウイルスに対するワクチンを統括するWHOの専門家グループは、現在あるワクチンの定期的な増量接種のみに基づく戦略には、「これは適切でも持続可能でもないだろう」と、疑問を呈しています。

 しかし、これだけ、感染が蔓延すれば、周囲の知人にも感染したことのある人が増え続けており、先日、長いこと連絡をとっていなかったフランス人の元同僚から電話があり、昨年、コロナウィルスに感染し、呼吸不全に陥り、味覚も失う経験をした・・」と、「幸い、現在は、回復し、もちろん、その後、ワクチン接種もしたし、感染には、人一倍、気をつけている・・3ヶ月後に4回目のワクチン接種をしなければならないなら、自分はすぐにでもするだろう」と強く語っていました。

 現在のフランスでのワクチン接種の間隔は、3ヶ月後から可能ということになっていますが、4回目のワクチン接種は始められていません。しかし、3ヶ月後にワクチンの有効性が低下し始めることから3ヶ月後からブースター接種が可能ということになっているとすれば、早くにブースター接種をした人は、そろそろ3ヶ月を経過し始めています。

 このヨーロッパ(フランス)の感染のさらなるピークを迎える頃に再び、追加のワクチン接種が必要となる人が増加するとなれば、これはエンドレスな状況になってしまいます。

 現在、赤十字のスタッフなどが、街を歩き、ワクチン未接種者を探し回り、ワクチン接種の必要性を説得し、場合によっては、ワクチンセンターまで付き添って、ワクチン接種を進めるというような地道な努力もしているようです。

 「2人に1人は感染」という状況になったら、私はどうしているのだろうか?と思いつつ、自分にできる感染対策を粛々としていくほかに道はありません。


WHO警告 ヨーロッパの半数以上が感染 36万人突破


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