毎週のようにデモが起こり、反対の声は常にある中、フランスは国会でワクチンパスポート法案を採択、憲法評議会の承認を経て、今週末にもワクチンパスは施行されることになりました。
ヘルスパスとアクセスできる場所は、基本的には変わらないものの、これまでヘルスパスでは、PCR検査・抗原検査の陰性証明書が使用できたものの、これが一切、通用しなくなります。
このワクチンパスは、16歳以上の全国民に対して適用されることになります。ですから、ワクチン接種をしない限り、レストラン・カフェ、文化施設、娯楽施設、スポーツ施設、イベント会場へのアクセス、長距離電車やバス、(家族以外の相乗りなどの特定の交通手段も含まれる)、飛行機などの公共交通機関は利用できなくなります。
また、偽ワクチンパスの流通を防ぐために、ワクチンパスのチェックには、ワクチンパス自体の整合性を確認することが必要な場合には、本人確認として、写真つきの公的書類(IDカードなど)を求めることが許されるようになりました。
そして、偽のワクチン証明書に関する罰則が強化され、他人のワクチンパスを使用した場合、または、他人にワクチンパスを譲渡した場合は、現行の135ユーロから1,000ユーロの罰金になるとともに、偽のワクチンパスポートを不正に入手した場合(偽造、第三者からの借用を問わず)は、3年の禁固刑と45,000ユーロの罰金が課されることになり、複数の偽ワクチンパスポートを不正に所持した場合には、5年の禁固刑と75,000ユーロの罰金に引き上げられることになりました。
しかし、このワクチンパスポートには、例外もあり、12歳から15歳の未成年に関しては、これまでどおり、ヘルスパスが(PCR・抗原検査の陰性証明書)がワクチンパスポートと同じ効力を持ちます。
また、前回のワクチン接種から7ヶ月経ってもブースター注射を受けていない人について、有効期間を超えてからの予約しか取れなかった場合、あるいは、医療上の理由で3回目の接種ができていない人に関しては、仮のパスポートを受け取ることができますが、その間は、本来はワクチンパスが求められる施設にアクセスする場合には、PCR・抗原検査の陰性結果を提示する必要があります。
また、ワクチンパスポートの代わりにコロナウィルス感染、回復証明書(6ヶ月間有効)(11日以上6ヶ月未満の感染)を提示することも可能ということになっているようです。
このワクチンパスポート施行は、ワクチン未接種者に圧力をかけて、ワクチン接種に向かわせるためのものであることは言うまでもありませんが、感染した場合にどの程度の免疫ができているのか?ワクチン接種同様の効果?があるのならば、ワクチン未接種者でも感染していれば、6ヶ月間、ワクチンパス証明書はいらないということになります。
ワクチン接種の有効な期間が短くなり、3ヶ月後にブースター接種が可能ということになっているのに(ワクチンパス自体は2回目のワクチン接種から7ヶ月以内にブースター接種をということになっています)、感染した者に関しては、6ヶ月間感染証明書が有効というのも疑問です。
そうでなくとも、フランスには、毎日、30万人程度の新規感染者がいて、1月前半(1日から15日まで)だけでも、累計で4,153,835人の感染者がいます。
こうなってくると、ワクチンパスポートを施行して、ワクチン未接種者を接種に向かわせるということが、なんだか虚しい気もしないではありませんが、現在のフランスは、初回接種から3回目のブースター接種を合わせて、毎日50万人程度がワクチン接種を受けているようで、かろうじて感染者よりは多い数字です。
そもそも、ワクチン接種で感染を防げていたのはデルタ株までの話で、オミクロン株は、ワクチン接種だけでは感染は防ぎきれず、重症化は防げるとされていますが、この変異株の性質上、ワクチンパスの意味合いが、なんだかずれてきてしまっているような気がしています。
ワクチンパスを持っているからといって、感染していないとは言いきれず、これまでワクチンで感染から守られている人のみがアクセスできる場所は、ある程度、安全であると思ってきましたが、必ずしもそうではないわけです。
つまり、現在の状況では、感染そのものを避けることはできないが、感染しても重症化する可能性が低いという人だけがアクセスできる場所がワクチンパスによって、限定されるということです。
そして、それらの場所にアクセスできなくなることから、ワクチン接種をする者が増えるという算段です。
ヘルスパスが施行された時は、画期的なシステムで、感染のリスクが高いと思われる場所でも、少し安心して行けるようになり、感染者も一時、減少しましたが、今回、コロナウィルスの変異によって、そこまで決定的な手段とは思えない気がしてきました。
とはいえ、少しでもワクチン接種が進んで重症化する人が減少すれば、それはよいことに違いありませんが、なんだか少し、期待はずれになってしまった気がしないではありません。
必死にヘルスパス施行に向けて突き進んでいた間に、コロナウィルスの変異により、いつの間にか、少し状況は違ってしまいました。
フランスでは、毎日のように、ピークはいつか?ピークはもうすぐ・・と、ひたすら感染がおさまるのを待っているようで、一部の地域では、感染者数が下がり始めたと言っていますが、ヘルスパスの施行によって、画期的な感染の減少を期待するには、まだまだ時間がかかりそうな気がしています。
フランスワクチンパスポート施行
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