2022年12月20日火曜日

フランスサッカーチーム帰国後のコンコルド広場の盛り上がりは多分、歴史的な出来事

 


 サッカーワールドカップでフランスチームが優勝したら、シャンゼリゼで凱旋パレードを行うつもりにしていたようですが、残念なことにギリギリのところで優勝を逃してしまい、選手たちは、想像以上に悲嘆にくれていたようで、このパレードはどうなるのか?と前日の段階では行方を見守っていました。

 観客側からしたら、ギリギリのところで猛反撃して、延長戦、そしてPK戦にまで持ち込む手に汗を握る素晴らしい試合でしたが、選手たちにとっては、本当にあとちょっとのところで優勝を逃してしまったことは、普通の試合であっさり敗れるよりも、ずっと悔しい試合だったのだと思います。

 当初、選手たちは、フランスに帰国後、公に姿をあらわすことを望んでいないと伝えられていて、そんな気持ちもわからなくはないと思っていましたが、試合が終わってすぐに、マクロン大統領は、おそらくコンコルド広場に皆があらわれることになると公言していました。

 結局、フランスサッカー連盟の説得で選手たちは、カタールからのフライト到着後すぐにサポーターに感謝を伝えるために、コンコルド広場にやってくることになりました。

 前日は、フランス敗退と同時にお通夜のようになったシャンゼリゼから一変して、シャンゼリゼと繋がる場所に位置するコンコルド広場には、夕方からサポーターが集まり始め、最寄りのメトロの駅(コンコルドとチュイルリー)は閉鎖され、あたりは通行止めになり、選手たちの到着を選手たちに「ありがとう」の感謝を伝えたいと約5万人の人が集まりました。

 選手たちは、コンコルド広場に面したホテル・クリヨン(日本の天皇陛下もご利用になる五つ星の高級ホテル)のバルコニーから挨拶しました。

 選手たちの乗った飛行機が到着する様子から、実況中継が始まり、タラップから降りてくる選手をADP(パリ空港公団)の職員が「Paris vous aime」(Paris loves you)と書いたボードを何枚も掲げて迎える様子を中継するレポーターは、「パリだけじゃない、フランス全体、フランス人全部だ!」と訴えていました。

 もちろん、決勝戦まで進み、試合内容に皆が感動しているからこそのことですが、負けてなお、このフィーバーぶりを見ていると、頑張った選手たちに感謝を伝えたい、彼らを讃えたい、そして、これからも、さらに支えて応援していきたいという気持ちが集結していることで、むしろ、あっさり優勝するよりも、フランス人の優しさや絆を強めたような印象を受けます。

 シャルルドゴール空港に到着した選手たちは、ジャーナリストの質問に答えることもなく、どちらかといえば、硬い表情でしたが、昨夜は落胆に暮れていたフランス国民はすっかり立ち直り、彼らを讃えるために集結して大興奮状態。

 すでにノエルのバカンスに突入していることもあり、子供も学生もおじさんもおばさんもみんな歓喜に沸き溢れていました。

 選手たちの乗ったバスは、空港から警察車両に先導され、バスが通る道の沿道には、バスを歓迎する人々が立ち止まって大きく手を振る人々。選手たちは、裏口からホテルに入っていきました。

 つい、先週も前を通ったばかりのホテルクリヨンは、その時よりもずっと美しく見えました。神々しくライトアップされた全景を見ると、それは宮殿のように美しく、決して広すぎない正面口の前は、セキュリティのために大きくスペースがとられ、その後ろに広がるコンコルド広場と広場を埋め尽くしきれないほどの人・人・人、大群衆、そして、同時に映像に入るエッフェル塔とその前に並ぶシャンゼリゼのイルミネーションと、なかなか見られない驚愕の光景が広がっていました。

 バルコニーに現れた選手たちは、この群衆に手を振りながら応えていましたが、むしろ、彼らの態度は冷静で、浮かれた感じは微塵も感じられないところは、さすがにプロフェッショナル・・彼らのサッカーへの想いの深さが見えます。

 とにかく、デモならばしょっちゅう人が集結するフランスですが、なにか、共通のポジティブな感情でこれだけの人が集まることは、なかなかないことで、フランスでは、きっと歴史に残る一場面になるような気がしています。

 負けてなお、フランス人の心をこんなにも動かすフランスのサッカーは、たしかに国の宝かもしれません。おそらく、サッカー選手は、フランス中の誰よりも人気者で彼らのヒーローに違いありません。

 

フランスサッカー選手凱旋 コンコルド広場


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2022年12月19日月曜日

ワールドカップ決勝戦 フランス敗退 喜びも落ち込みも激しいフランス

  


 フランスはサッカー・ワールドカップを勝ち進み、とうとう決勝戦にまで進出し、勝ち進むにつれて、その盛り上がりもどんどん増して、準決勝の時点でも、すでに大騒ぎであちこちで花火が上がり、シャンゼリゼは人に埋め尽くされ、決勝戦は大変なことになると思っていました。

 在仏日本大使館からは、「試合当日には、シャンゼリゼ近辺は混乱が生じたり、思わぬ騒動に巻き込まれる可能性がありますので、試合開催時間以降には、この周辺には、近づかないことをお勧めします」などとお知らせが来ていました。

 私は、特にサッカーファンというわけでもなく、言われなくとも出かけるつもりはありませんでしたが、SNSを通じて、朝、日本のテレビ局から、「ワールドカップで盛り上がっている街の様子を撮影してきてもらえませんか?」というメッセージが入ったので、「取材のご依頼ですか?」と聞いてみたら、「いや、動画を撮影して送って頂くだけですので、取材ではありませんので、お支払い等はできません」とのことで、見ず知らずの人間をパシリに使おうとする日本のテレビ局の勘違い?になかなか不快な気分でお断りしました。

 以前にも、ロックダウンの際に外出禁止の中、街の様子を撮影してほしいとかいう依頼が突然あったりして驚かされたこともありました。

 当日は朝からマイナス3℃、当然、出かけるつもりもなく、試合はフランス時間で午後4時からだったので、それまでは、家の中の仕事をしばらくして、一休みしてから見ようと思っていたら、ついついウトウトしてしまい、突然、隣人の「ウェ~い!」という雄たけびに目を覚まして、サッカーの試合が始まっていることを知りました。

 慌ててテレビをつけると、その時はすでに2-0でフランスが負けており、しばらく見ていましたが、どうにも今回はフランスは精彩にかける感じ、なんだか試合の流れが全くアルゼンチンになっていて、フランスの選手たちの顔つきも冴えないし、依然として2-0で残り15分くらいになったところで、あ~あと15分で2点は無理・・今日はさすがにダメそうだから、なんか、他の映画でも見ようかな?とiPadをつけたとたんに、テレビから歓声があがり、フランスが1点を得点し、それからは試合の風向きが一転して、あっという間に同点になりました。

 こうなってくると、もしかして、一番感動的なパターンかも?とテレビにくぎ付けになりました。

 延長戦に入って、またアルゼンチンに先行されたものの、延長戦でも1点ずつをとって、試合はとうとうPK戦に突入。今回の試合はメッシ対エムバッペのように煽られていましたが、いかにもフランスで最も活躍したのは、エムバッペに違いありません。

 フランスの敗退が決まって、フランスの選手たちは、呆然状態、特にエムバッペ選手は、フィールドに呆然と立ち尽くしていたかと思うと、その後は長いこと、涙するわけでもなく、怒りを爆発させるわけでもなく、ただただ深い感情を押し込めたような表情で足をかかえて座り込んでいました。

 大物はそんな姿・表情もカッコいい・・やっぱり普通の人じゃない・・静かな怒りや悔しさのあらわれまでが、さすが王者の感じ。

 そこへ、彼をなぐさめに現れたのは、まさかのマクロン大統領で、彼に声をかけて、彼の肩を抱き寄せて、励まそうとしていましたが、彼はほとんどマクロンとは目も合わすことなく、うなだれていました。

 マクロン大統領は彼自身、大変なサッカーファンであるということもあり、サッカーはフランスの大切な原動力であると考えているところもあって、以前、エムバッペ選手がレアル・マドリードに移籍の話が上がった時にもマクロン大統領自らが彼のもとに出向いて、「君はフランスの宝だ!」とパリサンジェルマンに引き留めたとも言われています。

 準決勝に続いて、決勝までやってきたマクロン大統領には、「政治利用だ」とか、「こんなことは大統領の仕事ではない」などという声も上がっていますが、政治利用しているかどうかは別として、試合がエキサイトしていくにしたがって、上着を脱いで、両手をあげて歓喜して応援している様子は、一青年のようでもあり、彼のサッカーへの気持ちの表れでもありますが、試合後に、フランス選手のロッカールームに訪れて、「非常に残念だったけど、このチームは多くの人を歓喜させ、チカラを与えている、私たちはあなたたちを誇りに思っています。これからも頑張ってほしいです」というような演説めいたことをした様子が報道され、また物議を醸しています。



 しかし、彼が望むか如何にかかわらず、フランスがワールドカップを勝ち進んだことで、経済効果が上がって、大型テレビを買う人が増えたとか、宅配の売り上げが、ポテトチップスが・・ピザが・・これもあれも売上げ爆上げ・・などとも言われています。

 どこへ行っても彼の存在は大統領なのですが、しかし、選手たちが、それほど大統領に忖度している様子が見られず、ロッカールームに現れたマクロンの話も選手はあまり耳に入らない様子だし、ちょっと浮いている感じがするくらいなところが、また、フランスらしくて、すがすがしい気さえするのです。

 エムバッペ選手はまだ若干23歳にして、すでにレジェンド感満載、今月20日にはお誕生日を迎えて24歳になりますが、まだまだ、これからのフランスサッカーをけん引していってくれることと思います。

 しかし、喜び方も半端ない代わりに、落胆ぶりも甚だしいフランス。勝つ気まんまんだったフランスは、シャンゼリゼからも人が消え去り、おまけに寒さの中、小雨までが降り続き、打ちあがるはずだった花火もあがることなく、早々に通行止めになっていたシャンゼリゼには、車が流れ出し、一挙にお通夜のようになりました。


フランス ワールドカップ決勝戦敗退


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2022年12月18日日曜日

フランスと日本 政府と国民の関係性 防衛費増税

  


 私がフランスに来たばかりの頃は、「なんで?フランスって、こんなにデモやストライキばっかりやってるんだろう?」と、「フランス人って、ほんと、しょうがないな・・少しは我慢しろよ!文句言うまえにしっかり働けよ!」などと腹立たしく、彼らのデモ行為は全く理解しがたいものでした。

 特に学校や交通機関のストライキなどには、もろに被害を被り、学校がストライキをやっているからといって、私は仕事を休むわけにもいかず、子供の預け先に右往左往したり、長期間にわたる交通機関のストライキには、間引き運転のために、通勤時間も倍増し、ひと月近く続いたときには、もうこっちがヘロヘロ状態で、「RATPやSNCF(パリ交通公団やフランス国鉄)の方がよっぽど、労働条件がいいじゃないか・・ストライキをやりたいのはこっちの方だ!」と腹立たしく思ったものでした。

 しかし、デモは、政府の政策に対しても、その大小にかかわらず、たびたび起こるもので、最近で、一番長期化して、暴徒化したのは、有名な「黄色いベスト運動」と呼ばれるもので、一部の地域では、デモの行われる土曜日になると、デモが暴徒化して、危険な事態に陥るために、営業ができずに店のシャッターをおろさなければならないような状態が続きました。

 この「黄色いベスト運動」のそもそもの発端はマクロン大統領が提案した「燃料税増税」で、これに反発した国民がこのデモのシンボルとして黄色いベストを着て、全国規模のデモを集結したのが始まりでした。

 これは、なかなかな規模のデモで、結局、マクロン大統領燃料税値上げは撤回したのですが、もうその時には、勢いは止まらず、違うターゲットがいくつもできあがって飛び火して、収拾がつかない状態になっていました。

 皮肉なことに、この黄色いベストの勢いがストップしたのは、突如やってきたパンデミックによるロックダウンで、デモ隊の熱も勢いもコロナウィルスによりストップしたようなものでした。

 その後、ロックダウンが解除されてから、再び、「黄色いベスト運動シーズン2」などという動きが見られたこともありましたが、現在のところは、日常のデモやストライキはあるのものの、あれほど大きな動きはありません。

 しかし、一歩、間違えれば、このような大騒ぎになるため、フランス政府は国民の反応というものにとても気を使っているのがわかります。時には、政府は国民のご機嫌とりをしているの?と思われるような発言を耳にすることもあります。

 一方、外から日本を見るにつけ、最近は、国民感情が全くつかめていないとしか思えない日本政府に、日本人はおとなしすぎるのではないか?もっと、起こって暴れてもいいんじゃないか?と思っています。

 国葬問題にしても、どうにもわけのわからない状態で押し切り、統一教会の問題にしても、はっきりとした対応をなかなか示さず、今度は、防衛費増税は、あっという間に決めてしまう強引さ。

 日本の税金については、よくわかりませんが、以前にコロナ予備費とかで使途不明金が11兆円もあるなどという話も上がっていたのに、そういう説明のつかないお金の使い方をしておいて、足りないから国民から税金を徴収して補うというのは、全く納得がいかない話。

 これがフランスだったら、「黄色いベスト運動」なみの大騒ぎになるのは必至なのに、黙って我慢して税金を払い続けるしかないなんて、やっぱりおかしいのではないか?と、むしろ、やりすぎなところはあっても、政府の不穏な動きに納得がいかなくて、デモを引き起こすフランスの方が健全なのではないか?とまで思ってしまうのです。

 フランス政府はデモを警戒し、恐れながらも、「主張すること、言論の自由を尊ぶ精神」を誇りにしており、デモの権利を認め続け、反論も甘んじて受けるという姿勢をとりつづけているのは、やはり、大事なことなのかもしれないと思うのです。

 今の日本を見ていると、あれだけ、苦々しく思っていたフランスのデモも、時には、必要なことなんだ・・と思うようになりました。

 デモに乗じて、暴徒化して、暴れたり、破壊行動に出る人が登場するのは、やりすぎで、迷惑極まりない話ことですが、何もしないで政府にやりたい放題にされ、完全に国民をなめ切っている日本にももどかしさと苛立ちを感じます。

 対話どころか、まともに説明もできない、一方通行の日本政府と国民の関係はお行儀がよく、一見、スムーズなのかと勘違いするところもあるかもしれませんが、その実、バランスが悪く、非常に不健全な状態であると言わざるを得ません。

 意見、意思をしっかりと持って、主張しあいながら、議論ができない社会は不健全です。日本の教育に足りないのは、話すこと、主張すること、議論することかもしれません。


防衛費増税 日本政府 デモ 


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2022年12月17日土曜日

ワールドカップ フランス対モロッコの試合 大フィーバーの影の超極右勢力の暴挙

  


 14日のワールドカップの準決勝フランス対モロッコの試合はフランスでは大きな盛り上がりを見せ、さらにフランスが勝利したことで、パリではシャンゼリゼには信じられない数の人々が集まり、その勝利に歓喜していました。

 なにか一つのことに対して、国全体を挙げてこんなに感動でき、人々を喜ばせることができることを素晴らしいと思い、在仏日本人の私としては、フランスの勝利を嬉しく思いつつも、少々、フランスがうらやましいような気もしていたのです。

 この応援や勝利を祝う集い?には、在仏モロッコ人など、どちらが勝っても嬉しいというようなモロッコのユニフォームを着ながらフランス国旗を振り回して喜ぶような人たちもいて、日本を応援しつつも、フランスも応援する自分ともダブる気もして、そんな様子を微笑ましいな・・などとも思っていたのです。

 しかし、このフランス対モロッコの試合に際しては、残念ながら、フランスの超極右勢力の一部の人々がパリ、リヨン、ニース、モンペリエなど、いくつかの都市で動員されており、パリ17区では、12月14日夜から15日にかけて、暴力的な右翼運動関係者38人が逮捕され、拘束されています。

 警察関係者が報道関係者に語ったところによると、彼らの中にはブラスナックルやスパナなどの武器や大量破壊兵器を持っており、シャンゼリゼ通りでモロッコ人サポーターと攻撃しようとした疑いが持たれています。

 彼らは、「暴力や損害を与える目的でグループに参加した」「危険カテゴリーに入る武器を携帯した」「武器や顔を隠した集会への参加」で逮捕され、検察は司法調査を開始し、彼らが「人種差別的な性質の暴力を振るう」ことを望んでいた疑いがあるとしています。

 戦うのはルールにのっとったスポーツの場だけでよく、なにも対戦国のサポーターを攻撃するのはお門違いだと思いますが、彼らにとっては、サッカーの試合は単なるきっかけに過ぎず、彼らは常に攻撃する機会を探っているのだそうです。

 フランスという国は、単に群衆が集まる危険だけでなく、このような危険な集団が何かのお祭り騒ぎに乗じて、ことを図る危険もはらんでいるのです。

 また、次は決勝戦ともなれば、さらに高まる興奮で危険が高まるかと思いきや、政治学者の見解によれば、超極右勢力のターゲットはマグレブ諸国(モロッコ、アルジェリア、チュニジアなどのアフリカ北西部の地域の国々)であり、アルゼンチンとの間に特に争いはないことから、彼らの動員は起こらないのではないかと見ています。

 超極右勢力の活動家はフランス全体でも数十人に過ぎないとも言われていますが、このような機会に乗じて、武器まで携えて、人を埋め尽くしているシャンゼリゼなどに現れれば、騒ぎは大変なことになることは間違いなく、彼らは危険人物としてリストアップされ、内務省によって、追跡されているといいます。

 「フランスが負けるようなことがあって、フランスが屈辱を受けることは許されない」という彼らの理屈は理解できませんが、彼らの目的は攻撃することにあり、サッカーの勝敗などは、口実なのです。

 このような暴力行為が目的の人もいれば、単に興奮して騒ぎを起こすサポーターなど、サッカーの試合は、歓喜を引き起こすとともに、衝突も巻き起こしています。

 それを数千人の警察官がガードしながら、みんなが喜びあうあたり、デモ行進を警察や憲兵隊がガードしつつも、決してデモの権利を損なわないように保つ日常とも似ている気がして、そんな様子もフランスらしいな・・と思うのです。


ワールドカップ 超極右勢力暴動


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2022年12月16日金曜日

カルトヴィタル(健康保険のカード)が壊れた・・

  


 日本ではマイナンバーカードと保険証が一体化するという話を聞きましたが、フランスのIDカードと保険証のカードは別々になっています。

 現在のフランスのIDカードにはICチップが入っていますが、そのICチップまでが必要とされるIDカードのチェックなどは滅多にあるものではなく、たまに身分証明書として求められても、チラッと目を通されるくらいで、IDカードはいつも携帯しているものの、ほとんど持っているだけで使うことはありません。

 それに比べて、カルトヴィタル(健康保険カード)は、考えてみれば、ここのところ、このパンデミックで使用頻度がかなりの割合で増え、通常、たまに医者にかかるとき、処方された薬を買うときなどだけだったカルトヴィタルは、コロナウィルスのワクチン接種、度々行ってきたPCR検査、これまではしなかったインフルエンザのワクチン接種などのたびに必要で、いままでの数倍の頻度で使用することになっていたのです。

 そして、これまた考えてみれば、IDカードの書き換えは10年に1回(ビザの年数にもよるけど)ですが、カルトヴィタルの書き換えはこれまでしたことがありませんでした。

 フランスに来て以来、最初にカルトヴィタルを作って以来、一度、ポルトガルを旅行中にスリに遭い、財布の中に入っていたIDカードやカルトヴィタルまで全て盗られた時に作り直して以来、ずっと同じものを使っていました。それさえも、いつのことだったか、覚えていないくらいです。

 このカルトヴィタルがないと医者にかかれないわけではありませんが、保険で返金される分をいちいち申請するために手続きの用紙を送らなければならなかったりで、その後の手続きがなかなか面倒なのです。

 今回、3ヶ月に一度、常用している薬の処方箋をもらいにかかりつけのお医者さんに行くと、「あなたのカード使えないわよ・・、寒いせいなのか?磁気がおかしくなっているのかわからないけど、確認した方がいいわよ・・今日は払い戻しの用紙を書いておくから、これ記入して送りなさい」と衝撃の事実が発覚・・。一体、いつの間に??

 このカルトヴィタル、時々、「アップデートしてください」とかいう通知がメールで来たりするので、その時は、薬局にある機械に差し込むとアップデートできるようになっているのですが、今回はそれ以前の問題。

 このご時世、いつどんな病気になるかもわからず、カルトヴィタルはある意味、命綱でもあり、使えない状態にしておくわけにはいきません。

 もしや、別の機械なら大丈夫かもしれない・・と儚い期待を抱いて、そのまま、書いてもらった処方箋をもって薬局に行って、カードを出すと、ここでもやっぱり、「あなたのカード、使えないわね・・」と。

 幸い薬局は商売だけあって、すでに登録してあるナンバーと名前とで、支払いすることなく、薬は出してくれましたが、結局、ここでもカードがなぜ使えないのか解明することはできませんでした。

 健康保険組合のサイトで質問してもカードを見なければわからないといい、電話で問い合わせようにも電話もつながらず、「久々に出ました!フランスのこのたらいまわしの感じ!」と思いながら、仕方なく、国民健康保険の事務所にカルトヴィタルの問い合わせに行くことにしました。

 当然と言えば、当然なのですが、以前は何かと行く用事があった健康保険の事務所もかなりの部分をネットで処理できるようになったためか、調べてみると、以前に行ったことのあった事務所は閉鎖されており、場所が格段に減っていて、見ず知らずの「なんで?こんなところにあるの?」という場所まで行くハメになりました。

 その事務所はネットで調べて出かけたのですが、以前、調べてでかけたところがオープン時間と書いてあったにもかかわらず閉鎖されていて、延々歩いて行ってもまた、閉鎖かも・・とあまり期待しないで歩いていきました。

 しかし、幸いにも今回はしっかりオープンしていて、カードを見てもらうと、「これは、カードの磁気がダメになっているから、作り直さないとだめね!」と軽くひとこと。そして「手続きはネットでできるから・・」と冷たいひとこと。

 ネットだといっても、また、「サイトがメンテナンス中・・」などということも多く、常にスムーズに進むわけではありません。これを逃してはまた、いつになるか、また更なるトラブルが積み重なることもありえる・・と、「せっかく、私はここまで来てるんだから、ここで手続きしてください!」と食い下がり、その場で、新しいカードの手続きを済ませてきました。

 考えてみれば、こんなことは久しぶりで、以前はこの手のやりとりが日常茶飯事だったな・・と思いながら、一仕事片付けた感じで少しだけホッとしながら、家に戻ってきました。

 後になってから、カードを見ると、カードを作った日付は、2011年となっていて、なんだかんだでもう10年以上使っていたわけで、銀行のクレジットカードなどもせいぜい2~3年で新しいカードが来るし、もう寿命だったのかな?と思いました。

 しかし、いずれにしても、フランスに住んでいると、すべてが滞りなく、静かに暮らせているという期間は、めったになく、一つ片付けば、また一つなにかトラブルが起こる・・そんな感じです。

 良いように考えれば、このカードの故障がノエルのバカンス期間より少し前に起こってくれたことは、おそらく不幸中の幸いだったということで、ノエルのバカンスから年末年始はただでさえ時間がかかるお役所仕事がさらに輪をかけて進まなくなる時期でそれよりも少し前倒しに手続きできたことはラッキーでした。

 これ以上、トラブルなしに平和に年が越せますように・・。


カルトヴィタル 健康保険カード


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2022年12月15日木曜日

2022年サッカーワールドカップ フランス決勝進出

  


 フランスにとってのサッカーは国民的なスポーツで、今回のようなワールドカップがあったりすると、国民の熱狂ぶりで、サッカーがどれほどの位置を占めているのかを痛感させられることになります。

 今回のワールドカップで、フランスは順調に勝ち進み、昨日のフランス対モロッコの試合は準決勝というのに、決勝並みの大騒ぎで、パリだけでも2,000人、全国で5,000人の警察官が動員され、シャンゼリゼには2万人以上が集まる大フィーバーとなりました。

 今回の準決勝進出を先に決めたのはモロッコでしたが、アフリカ大陸から初の準決勝進出ということや、フランスには、モロッコの人、アラブ系の人々も多いために、その時点でもすでにモロッコ勢はシャンゼリゼに集結し、大いに盛り上がっていました。

 フランスが準決勝進出を決めたときは言うまでもありません。

 モロッコ対フランスの準決勝当日もモロッコを応援する人、フランスを応援する人に紛れて、モロッコのユニフォームを着て、フランス国旗を振っているようなどちらも応援しているような人も少なくありません。

 今回の準決勝には、まさかのマクロン大統領までがカタールに応援に出向くという熱の入り方、しかし、一応、メディアは彼にも注目はしますが、大統領でさえも存在感が小さく感じられるほど、フランスのサッカーチームは、いまをときめくスーパースターなのです。


 サッカーの応援の様子などを見ていると、彼らの興奮の仕方というのは、激しいもので、変な言い方をすれば、血が騒いでいる・・その血が日本人とは違う・・と感じてしまいます。

 先週あたりから氷点下の世界になっているこの寒い気候も、インフレやエネルギー不足に喘いでいるこのご時世も、全てどこかにすっ飛んでしまったようで、試合終了後には、おそらくパリのどこにいても、花火がどこかであがっている様子が聞こえてきて、寒さも忘れて、大して着込むこともなく、心底楽しそうにフランスの勝利を喜んでいる人々を見ると、今の時代にこんなに人を幸せな気持ちにしてくれるものは、なかなかないだろうと思うのです。

 あるチャンネルのジャーナリストたちは、シャンゼリゼが見渡せる場所から(屋外)中継していて、一応の防寒はしているものの、この寒さのわりには軽装で、興奮して寒さもなんのそのになっているところ、1人のおじさんジャーナリストが手袋をしているのを突っ込んで、「この人、こんな時に手袋がいるんですよ・・この人は・・」などと笑いのネタにしているほど、もう氷点下の寒さも吹っ飛ばされているようです。

 今年のシャンゼリゼのイルミネーションはシャンパンカラーのレモンイエローですが、そのシャンゼリゼのイルミネーションの並木の間を大勢の人が埋め尽くし、不謹慎な話ではありますが、その脇を取り囲む警察車両の屋根につけられたブルーの回転灯が映えてとてもきれいでした。

 今年は節電のため、イルミネーションは日付が変わる前に消灯されましたが、人は減らずにいつまでもブルーの回転灯だけがシャンゼリゼを灯し続ける光景も、それはそれでまた幻想的できれいなのでした。

 フランスは過去24年間でワールドカップの決勝進出は4回目、最初に優勝したのは1998年のことで、今回のフランスチームのスーパースター・エムバッペ選手はこの年に生まれており、なにか、運命的なものさえ感じてしまいます。

 24年間で4回決勝に進出し、2回優勝しているということは、あらためてフランスのサッカー人気の理由がわかるような気がします。強いから好きになる、さらに応援したくなる、すると、さらに強い選手が集まり、また強くなる・・ますます人気が上昇する・・とプラスの好循環になっているのです。

 フランスの小さい子供のお稽古事?(男の子)のトップは圧倒的にサッカーで、フランスでの圧倒的な人気スポーツの座は揺るぐことがありません。

 日本では人気の野球は、存在すら確認するのが難しいほどで、やっているという人の話は聞いたことがありません。

 もしかしたら、サッカーのワールドカップはオリンピック以上の盛り上がりではないかと思われるくらい、サッカーを応援する人は、年齢層も広く、底辺の人から、エリートまでの広範囲にわたり、その経済効果も大変なものだと思われます。

 このところ、不景気で不安なことばかりに覆われていたフランスが一機にサッカーで運気が上昇しているような、そんな気にさせられる感じです。

 喜びに沸きあがるエネルギッシュな群衆を見ていると、このエネルギーが生活への不満などで、デモとかテロとかに転じずに、国全体でこんなに熱狂的に喜ぶことのできるものがあることが、なんだかうらやましい気もしているのです。

 決勝戦は日曜日、さらに大変な騒ぎになりそうで、このワールドカップ騒ぎから、すぐにノエル、年末年始のお祭り騒ぎが続きそうな感じです。


2022年サッカーワールドカップ フランス決勝進出


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2022年12月14日水曜日

未成年強姦容疑で身柄拘束されたフランスの人気ユーチューバー YouTube広告収益撤廃

  


 1200万人の登録者を持つフランス第3位の人気ユーチューバーであるノーマン(Norman Thavaud)が、複数の10代の少女や若い女性を巻き込んだ未成年者強姦の容疑でパリ検察庁に身柄を拘束されたという衝撃的なニュースから約1週間、検察庁に身柄拘束された彼は、取り調べに応じ、涙ながらに、陰謀にはめられたとか、相手の女の子があまりにも熱狂的、情熱的だったとか、犯行の事実を否認していると報じられ、結局、48時間の身柄拘束は延長されずに現時点では、起訴されないまま解放されていました。

 しかし、彼の身の潔白が証明されたわけではなく、今後も捜査は継続して行われるとのことで、彼はグレーな存在のままです。

 彼の身柄が拘束されて、すぐに、すでにフランスで最も重要なYouTubeチャンネルを制作しているウェブディア(Webediaグループ)は、「ユーチューバーのNorman Thavaudとのコラボレーションを停止する」と発表していました。

 なにしろ、フランスのユーチューブ界では、大物中の大物の彼、登録者は1200万人近く、これまでの累計再生回数27億回、彼の人気動画には3000万回再生がずらっとならび、中には、8000万回から9000万回再生にもなるものもあるのですから、彼を取り巻くたくさんの人々にも大きな影響が及ぶことになるわけです。

 そして、約1週間経って、Googleプラットフォームは、未成年者へのレイプと汚職で捜査中のユーチューバーのチャンネルから広告を剥奪する制裁を決定しました。YouTubeは数日前から対応を検討しており、ようやくこの制裁を決定したのです。

 YouTubeの広報担当者は、「私たちは、あらゆる形態のセクシャルハラスメントを容認できないと考えています。YouTube動画の内外を問わず、クリエイターの行動が、ユーザー、コミュニティ、エコシステムに害を与えていると判断した場合、被害者を保護するための措置を講じます。」と発表し、現段階での措置は、「無期限での広告剥奪」ですが(動画を公開することはできる)、今後の捜査の進行の結果如何で、また、不適切な事実が確認された場合は、当該アカウントを閉鎖する場合もあるとしています。

 YouTubeがフランスでこのような制裁措置に踏み切ったのは、今回が初めてではなく、同プラットフォームによると、2020年に1件、2021年1件のチャンネルを同様の理由で閉鎖しています。

 このノーマンの騒動で、他にも、8人の女性からレイプと「心理的・性的暴力」で訴えられセクハラで予備調査を受け、また別のレイプ事件の捜査が開始されているユーチューバーがいることも発覚しており、彼に対しても同様の措置がとられる可能性があるとしています。

 いわゆる、これまでの映画やテレビの世界のスター、有名人とは異なり、見せる側も見ている側も、アクセスしようと思えばアクセスできるこれまでにない距離感、独特な存在のユーチューバー。

 人気ユーチューバーは、どこか自由が利きそうではいても、多くの人に顔を晒すという意味では、リスクはつきもので、結局は、非道なこと、あまりに道徳から逸脱したことをすれば、あっという間に晒されてしまうことには、かわりないのです。

 

フランス人気ユーチューバー 広告撤廃


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「インフルエンサーに届く報酬2,000ユーロのファイザー・ビオンテックネガティブキャンペーン依頼メール」