サッカーワールドカップでフランスチームが優勝したら、シャンゼリゼで凱旋パレードを行うつもりにしていたようですが、残念なことにギリギリのところで優勝を逃してしまい、選手たちは、想像以上に悲嘆にくれていたようで、このパレードはどうなるのか?と前日の段階では行方を見守っていました。
観客側からしたら、ギリギリのところで猛反撃して、延長戦、そしてPK戦にまで持ち込む手に汗を握る素晴らしい試合でしたが、選手たちにとっては、本当にあとちょっとのところで優勝を逃してしまったことは、普通の試合であっさり敗れるよりも、ずっと悔しい試合だったのだと思います。
当初、選手たちは、フランスに帰国後、公に姿をあらわすことを望んでいないと伝えられていて、そんな気持ちもわからなくはないと思っていましたが、試合が終わってすぐに、マクロン大統領は、おそらくコンコルド広場に皆があらわれることになると公言していました。
結局、フランスサッカー連盟の説得で選手たちは、カタールからのフライト到着後すぐにサポーターに感謝を伝えるために、コンコルド広場にやってくることになりました。
前日は、フランス敗退と同時にお通夜のようになったシャンゼリゼから一変して、シャンゼリゼと繋がる場所に位置するコンコルド広場には、夕方からサポーターが集まり始め、最寄りのメトロの駅(コンコルドとチュイルリー)は閉鎖され、あたりは通行止めになり、選手たちの到着を選手たちに「ありがとう」の感謝を伝えたいと約5万人の人が集まりました。
選手たちは、コンコルド広場に面したホテル・クリヨン(日本の天皇陛下もご利用になる五つ星の高級ホテル)のバルコニーから挨拶しました。
選手たちの乗った飛行機が到着する様子から、実況中継が始まり、タラップから降りてくる選手をADP(パリ空港公団)の職員が「Paris vous aime」(Paris loves you)と書いたボードを何枚も掲げて迎える様子を中継するレポーターは、「パリだけじゃない、フランス全体、フランス人全部だ!」と訴えていました。
もちろん、決勝戦まで進み、試合内容に皆が感動しているからこそのことですが、負けてなお、このフィーバーぶりを見ていると、頑張った選手たちに感謝を伝えたい、彼らを讃えたい、そして、これからも、さらに支えて応援していきたいという気持ちが集結していることで、むしろ、あっさり優勝するよりも、フランス人の優しさや絆を強めたような印象を受けます。
シャルルドゴール空港に到着した選手たちは、ジャーナリストの質問に答えることもなく、どちらかといえば、硬い表情でしたが、昨夜は落胆に暮れていたフランス国民はすっかり立ち直り、彼らを讃えるために集結して大興奮状態。
すでにノエルのバカンスに突入していることもあり、子供も学生もおじさんもおばさんもみんな歓喜に沸き溢れていました。
選手たちの乗ったバスは、空港から警察車両に先導され、バスが通る道の沿道には、バスを歓迎する人々が立ち止まって大きく手を振る人々。選手たちは、裏口からホテルに入っていきました。
つい、先週も前を通ったばかりのホテルクリヨンは、その時よりもずっと美しく見えました。神々しくライトアップされた全景を見ると、それは宮殿のように美しく、決して広すぎない正面口の前は、セキュリティのために大きくスペースがとられ、その後ろに広がるコンコルド広場と広場を埋め尽くしきれないほどの人・人・人、大群衆、そして、同時に映像に入るエッフェル塔とその前に並ぶシャンゼリゼのイルミネーションと、なかなか見られない驚愕の光景が広がっていました。
バルコニーに現れた選手たちは、この群衆に手を振りながら応えていましたが、むしろ、彼らの態度は冷静で、浮かれた感じは微塵も感じられないところは、さすがにプロフェッショナル・・彼らのサッカーへの想いの深さが見えます。
とにかく、デモならばしょっちゅう人が集結するフランスですが、なにか、共通のポジティブな感情でこれだけの人が集まることは、なかなかないことで、フランスでは、きっと歴史に残る一場面になるような気がしています。
負けてなお、フランス人の心をこんなにも動かすフランスのサッカーは、たしかに国の宝かもしれません。おそらく、サッカー選手は、フランス中の誰よりも人気者で彼らのヒーローに違いありません。
フランスサッカー選手凱旋 コンコルド広場
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